JP2009041088A - 鋳造性に優れた無鉛快削性黄銅 - Google Patents

鋳造性に優れた無鉛快削性黄銅 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、鉛を含まず、かつ切削性、鋳造性、機械特性等に優れた黄銅の提供。
【解決手段】Cuを56wt%以上62wt%未満、Biを0.3wt%以上4.0wt%以下、Alを0〜0.05wt%未満、Feを0.3wt%超過4.0wt%未満、そしてSiを、Fe/Si(重量比)が1.6以下となる量含んでなり、残部が実質的にZnからなることを特徴とする黄銅は、鋳造性に優れ、かつ切削性、機械特性等にも優れる。
【選択図】なし

Description

発明の背景
技術分野
本発明は、鉛を含まない、いわゆる鉛フリーの黄銅に関し、さらに詳しくは鉛を含まないため水栓金具等に好ましく用いられる、切削性、鋳造性、機械特性等に優れた鋳造用黄銅に関する。
背景技術
水栓金具は一般に黄銅や青銅を材料として製造されており、その切削性を向上させるために鉛(Pb)が黄銅では2〜3%、青銅では4〜6%程度添加されている。しなしながら、近年、Pbの人体や環境に与える影響が懸念されるようになり、各国でPbに関する規制の動きが活発化している。例えば、米国カリフォルニア州では、2010年1月より、給水栓のPb含有量を0.25%以下とする規制が発効した。また、米国NSF規制にあっても、Pbの浸出量を11ppmから5ppm程度にする規制の導入が検討されており、将来的には2ppm程度までの規制がなされるであろうと言われている。米国以外の国あっても、その規制の動きは顕著であり、これらPb含有量またはPb浸出量の規制に対応した材料の開発が求められている。
特開平7−310133号公報(特許文献1)には、ビスマス(Bi)は、黄銅においてPbと類似の挙動を示すことから、Pbに代えてをBi添加した黄銅が提案されている。また、特開2005−290475号公報(特許文献2)には、Biを添加した系において、その切削性を改善するためホウ素(B)、ニッケル(Ni)等を添加することが開示されている。さらに、特開2001−59123号公報(特許文献3)には、Biを添加した系において、鉄(Fe)を添加することで結晶を微細化できるとの知見が開示されている。しかしながら、これら従来技術が開示する系は、その鋳造性、とりわけ鋳造時の割れにおいて改善の余地を残すものであった。よって、Pbを含まず、かつ鋳造性、切削性、機械特性等に優れた黄銅への希求が依然として存在しているといえる
特開平7−310133号公報 特開2005−290475号公報 特開2001−59123号公報
本発明らは、今般、Pbに代えてBiを添加した黄銅において、Alの添加を実質的に不可避不純物程度まで低減し、かつFeおよびSiを添加することで、鋳造割れを有効に防止でき、かつ切削性、機械特性等にも優れる黄銅が得られるとの知見を得た。本発明は係る知見に基づくものである。
従って、本発明は、鉛を含まず、かつ切削性、鋳造性、機械特性等に優れた黄銅の提供をその目的としている。
そして、本発明による黄銅は、Cuを56wt%以上62wt%未満、Biを0.3wt%以上4.0wt%以下、Alを0〜0.05wt%未満、Feを0.3wt%超過4.0wt%未満、そしてSiを、Fe/Si(重量比)が1.6以下となる量含んでなり、残部が実質的にZnからなることを特徴とするものである。
発明の具体的説明
Bi
本発明による黄銅は、Biを0.3wt%以上4.0wt%以下の範囲で含む。Biは、黄銅においてPbと類似の挙動を示すことから、Pbに代わりそれと同等の切削性を付与する。本発明において、良好な切削性を得るためにはBiは0.3wt%以上とされる。他方、Biが過剰なると、Biの凝集が生じる傾向にあり、その凝集した部分が鋳造割れの起点となるおそれがあるから、その上限は4.0wt%とされる。本発明の好ましい態様によれば、Biの好ましい下限は0.5wt%以上であり、切削性を考慮すると、より好ましくは1.0wt%であり、また好ましい上限は3.0wt%以下であり、より好ましくは2.0wt%以下である。
なお、本発明によれば、Pbを全く含まなくとも良好な切削性が実現される。Pbは全く含まれないことが好ましく、仮に含まれていたとしても、それは不可避不純物としての存在が許容されるに止まる。
Al
本発明による黄銅は、Alを不可避不純物として含むことが許容され、具体的には0〜0.05wt%未満の量で含む。本発明の好ましい態様によれば、Alは全く含まれない。本発明者らの得た知見によれば、Alは、後記するFeおよびSiの添加の効果、とりわけ鋳造割れの防止の効果を損なうからである。
FeおよびSi
本発明において、FeおよびSiは結晶(とりわけ初晶β)の微細化を促進し、その結果、Biが微細分散され、鋳造時の割れを有効に防止できる。
本発明による黄銅は、Feを0.3wt%超過4.0wt%未満の範囲で含み、好ましくは下限が0.4wt%以上、より好ましくは0.5wt%以上であり、また好ましい上限は1.0wt%以下である。結晶を微細化するとの効果のためには0.3wt%を超えるFeの添加が必要であるが、Feを4.0wt%以上添加すると、Siと硬度の高い金属間化合物がマトリクス上に多数生成し、工具寿命を低下させるおそれがある。また、本発明による黄銅は、Siを、Fe/Si(重量比)が1.6以下となる量含んでなる。Siは、Guilletが提唱したZn当量が10であり、Siの添加がZnの10倍の添加量に相当するため、結晶組織中のβ相が多くなってしまうおそれがある。そこで、本発明の好ましい態様によれば、Siの添加量は3.0wt%未満とすることが好ましく、より好ましくは下限が0.2wt%超過であり、上限が2.0wt%未満である。
本発明の好ましい態様によれば、Feが0.4以上1.0wt%以下の範囲にあり、かつSiが0.3wt%以上3.0wt%未満である組成が、より良好な鋳造性を与えることから好ましい。
Cu、Zn、およびその他成分
本発明による黄銅は、銅(Cu)を56wt%以上62wt%未満含んでなる。Cuが上記範囲を上回ると、初晶α相のデンドライト晶出によるクラックの発生が懸念される。また、Cuが上記範囲を下回ると、α相の影響は受けがたくなるが、黄銅として性能の低下が懸念される。本発明の好ましい態様によれば、Cuの好ましい下限は58wt%であり、好ましい上限は61wt%である。
本発明による黄銅は、上述の成分からなる部分の残部は実質的に亜鉛(Zn)からなる。
本発明による黄銅は、黄銅の特性を改質するために種々の添加物を含むことが可能である。また、本発明にあっては不可避不純物の存在を排除するものではないが、それらは出来るだけ少ないものとされることが好ましい。
本発明の一つの態様によれば、Snは、鋳造性を低下させる元素と言われているが、耐食性を向上させるためには、本発明においても効果的な元素である。Snはβ相中に固溶して耐食性の劣るβ相の耐食性を向上させる。その添加量は、好ましくは0.5wt%以上3.0wt%以下である。
用途
本発明による黄銅は、鉛を含まず、一方でその切削性、鋳造性、機械特性等は鉛を含む黄銅と同等またはそれ以上の性能を有することから、水栓金具材料に好ましく用いられる。具体的には、給水金具、排水金具、バルブなどの材料として好ましく用いられる。
製造方法
本発明による黄銅を材料とする成型品は、その良好な鋳造性から、金型鋳造、砂型鋳造のいずれによっても製造可能であるが、金型鋳造においてその良好な鋳造性の効果をより享受できる。また、本発明による黄銅は、その切削性においても良好であるから、鋳造後に切削加工されてもよい。また、本発明による黄銅は、連続鋳造後に押し出しで成形される切削用棒材や鍛造用棒材、さらに抽伸により成形される線材とされてもよい。
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
評価試験
以下の実施例における各評価試験の詳細は以下の通りとした。
(1)鋳造割れ性試験
鋳造割れ性を両端拘束型試験法により評価した。使用した金型1の形状は図1に示される通りであった。図1において、中央部に断熱材2を設け、中央部の冷却が、両端拘束部3よりも遅れるようにし、また拘束端距離(2L)は100mm、断熱材長さ(2l)は70mmとした。
試験は、拘束部が急冷されて両端が拘束され、その状態でさらに中央部で凝固が進むようにし、発生した凝固収縮応力により、最終凝固部となる試験片中央部で割れが生じるか否かを調べることにより行った。
その結果、割れなしの場合を◎、部分的に割れを生じたが、破断するまでには至らなかった場合を○、割れが発生し破断した場合を×と判定した。
(2)切削性試験
直径35mm、長さ100mmの鋳塊を金型鋳造で作製し、外径部を旋削加工して切削性を評価した。具体的には、切削性は、黄銅鋳物3種(JIS CAC203)に対する切削抵抗指数で評価した。切削条件は、周速80〜175m/min、送り量0.07〜0.14mm/rev.、切り込み量0.25〜1mmとし、切削抵抗指数は下記式で算出した。
切削抵抗指数(%)=CAC203の切削抵抗/試験材の切削抵抗×100
その結果、切削抵抗指数が70%以上を◎、50以上70%未満を○、50%未満を×と判定した。
(3)機械特性試験
直径35mm、長さ100mmの鋳塊を金型鋳造で作製し、JIS Z 2201 14A号試験片に機械加工して引張試験を行った。すなわち、0.2%耐力、引張強さ、破断伸びを測定し、0.2%耐力が100N/mm2以上、引張強さが245N/mm2以上、破断伸びが20%以上を判定基準とした。3項目全てを満足する場合を◎、2項目を満足する場合を○、1項目以下しか満足できない場合を×と判定した。
例1〜29
下記の表に記載の組成の黄銅を鋳造した。すなわち、電気Cu、電気Zn、電気ビスマス、電気Sn、Cu−30%Ni母合金、Cu−10%Fe母合金、電気Al、Cu−15%Si母合金を原料として、高周波溶解炉で成分調整しながら溶解し、まず、両端拘束試験金型に鋳造して鋳造割れ性を評価した。
引き続き、円筒形金型に鋳造して直径35mm、長さ100mmの鋳塊を作製し、鋳塊を共試材として切削性および機械特性を評価した。
その評価結果は以下の表に示される通りであった。
Figure 2009041088
鋳造割れ性を評価する、両端拘束型試験法に使用した金型1の形状を示す図である。
符号の説明
1 金型
2 断熱材
3 両端拘束部

Claims (5)

  1. Cuを56wt%以上62wt%未満、
    Biを0.3wt%以上4.0wt%以下、
    Alを0〜0.05wt%未満、
    Feを0.3wt%超過4.0wt%未満、そして
    Siを、Fe/Si(重量比)が1.6以下となる量含んでなり、
    残部が実質的にZnからなることを特徴とする、黄銅。
  2. Feが0.4以上1.0wt%以下である、請求項1に記載の黄銅
  3. Siが0.2wt%超過3.0wt%未満である、請求項1または2に記載の黄銅。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の黄銅からなる、水栓金具。
  5. 金型鋳造により製造された、請求項4に記載の水栓金具。
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