JP6056947B2 - 鋳造性および耐食性に優れた黄銅 - Google Patents
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Description
Snを0.05質量%以上0.2質量%以下、
Sb、AsおよびPからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、その合計で0.05質量%以上0.32質量%以下、
Alを0.1質量%以上0.5質量%以下、
Znを33.0質量%以上40.0質量%以下、
PbおよびBiからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、その合計で0.005質量%以上0.25質量%以下、
Niを0.5質量%以下、
Siを0.5質量%以下、
FeおよびBからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、その合計で0.0001質量%以上0.3質量%以下含んでなり、そして
残部が実質的にCuと不可避不純物とからなり、かつ
見かけ上のZn含有量が36%以上41%以下であることを特徴とするものである。
本発明において、「不可避不純物」とは、特に断らない限り、0.1質量%未満の量の元素を意味する。例えば、マンガン(Mn)およびクロム(Cr)などの元素が不可避不純物に包含される。この不可避不純物の量は、好ましくは0.05質量%未満である。
本発明による黄銅は、PbおよびBi(ビスマス)からなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、合計で0.005質量%以上0.25質量%以下含む。本発明にあっては、Pbの含有量をこのように極めて少ないものとすることができる。本発明の好ましい態様によれば、PbおよびBiからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素の添加量は、その合計で0.15質量%以上0.25質量%以下とされる。また、本発明の別の好ましい態様によれば、Pbの添加量は0.13質量%以上0.23質量%以下とされる。
本発明による黄銅は、Niを0.5質量%以下含む。本発明にあってはNiの含有量をこのように極めて少ないものとすることができる。本発明の好ましい態様によれば、Niの添加量は0.2質量%以下とされ、0.1質量%以下がより好ましい。
本発明による黄銅は、Sb、As(ヒ素)およびP(リン)からなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、その合計で0.05質量%以上0.32質量%以下含む。本発明による黄銅は先述したとおりNiの添加量が微量であるため、耐食性が十分に得られない傾向があるが、Sb、AsおよびPからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、その合計で0.05質量%以上0.32質量%以下含むことにより、耐食性を向上させることができる。この作用効果は後述するSnを所定量添加することで、単独での添加に比べて相乗的に発揮される。これら元素の添加量が0.32質量%を越えると耐食性が顕著に向上しなくなる傾向があるため、経済性を考慮して上限値を0.32質量%とする。本発明の好ましい態様によれば、Sb、AsおよびPからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素の添加量は、その合計で0.056質量%以上0.315質量%以下とされる。また、本発明の別の好ましい態様によれば、Sb、AsおよびPそれぞれの添加量は0.01質量%以上0.30質量%以下、0.001質量%以上0.30質量%以下および0.005質量%以上0.30質量%以下とされる。
本発明による黄銅は、Snを0.05質量%以上0.2質量%以下含む。本発明による黄銅は先述したとおりNiの添加量が微量であるため、耐食性が十分に得られない傾向があるが、Snを0.05質量%以上0.2質量%以下含むことにより、耐食性を向上させることができる。この作用効果は上述したSb、AsおよびPからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を所定量添加することで、単独での添加に比べて相乗的に発揮される。
本発明による黄銅は、FeおよびBからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、その合計で0.0001質量%以上0.3質量%以下含む。本発明は、上述したとおり人体や環境に与える影響を配慮して、その含有量又は浸出量が規制されている又はされようとしているPbおよびNiの添加量を低減して微量に調整しており、これに起因する耐食性の低下を、Sb、AsおよびPからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、並びにSnをそれぞれ所定量添加することにより補完できるものとの知見に基づくものである。その一方で、PbおよびNiの添加量の低減並びにSb等およびSnの添加により、黄銅の鋳造性が十分に得られなくなるおそれがあるが、本発明による黄銅は、FeおよびBからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を上記範囲で含むことにより、鋳造性を改善できることを併せて見出した知見に基づく。すなわち、FeおよびB各々は、結晶(とりわけ初晶β相)の微細化を促進し、鋳造時の割れを有効に防止できる。また、本発明による黄銅は、この微細化の結果、機械的特性についても良好な性能を示す。
本発明による黄銅は、Znを33.0質量%以上40.0質量%以下含む。Znの添加量を33.0質量%以上とすることにより、鋳造の歩留りを良好なものにすることができる。また、Znの添加量を40.0質量%以下とすることにより、耐食性に劣るβ相領域の増大を抑制し、耐脱亜鉛腐食性が低下しないようにすることができる。
本発明による黄銅は、Alを0.1質量%以上0.5質量%以下含む。Alの添加量を0.1質量%以上とすることにより、鋳造性を向上させることができる。具体的には、湯流れ性や鋳肌性状を向上させることができる。本発明において、Alの好ましい添加量は0.3質量%以上である。これにより、湯流れ性や鋳肌性状をより向上させることができる。また、Alの添加量を0.5質量%以下とすることにより、伸び、衝撃値の低下を抑制することができる。
本発明による黄銅は、Siを0.5質量%以下含む。Siは、後記するように、Guilletが提唱したZn当量が10であり、見かけ上のZn含有量が増え、結晶組織中にγ相やκ相といった異相が析出してしまうおそれがある。本発明にあっては、Siの添加量が0.5質量%以下であるため、結晶組織中にγ相やκ相といった異相が析出する蓋然性は低い。本発明の好ましい態様によれば、Siの添加量は0.1質量%以下である。
本発明による黄銅は、上述の元素成分からなる部分の残部が実質的に銅(Cu)と不可避不純物とからなる。本発明の好ましい態様によれば、本発明による黄銅は、Cuを55質量%以上70質量%以下含んでなる。Cuの添加量が70質量%以下であることにより、初晶α相のデンドライト晶出によるクラックの発生を抑制することができる。また、Cuの添加量が55質量%以上であることにより、黄銅としての鋳造性や耐食性、機械的特性の低下を抑制することができる。本発明のより好ましい態様によれば、Cuの添加量の下限は58質量%であり、上限は66質量%である。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による黄銅は見かけ上のZn含有量が36%以上41%以下である。見かけ上のZn含有量がこの範囲にあることにより、鋳造割れが発生しない黄銅を得ることができる。本明細書において、見かけ上のZn含有量とは、Guilletが提唱した以下の式により算出される量を意味する。この式は、Zn以外の添加元素は、Znの添加と同じ傾向を示すという考え方に基づく。
見かけ上のZn含有量(%)=[(B+tq)/(A+B+tq)]×100
式中、A=Cu質量%、B=Zn質量%、tは、添加元素のZn当量、qは、添加元素の添加量質量%を意味する。そして、各元素のZn当量は、Si=10、Al=6、Sn=2、Pb=1、Fe=0.9、Mn=0.5、Ni=−1.3である。BiのZn当量は未だ明確に規定されていないが、本明細書にあっては、文献等を考慮して0.6として計算する。また、それ以外の元素は、添加量が微量であり、Zn当量の値へ及ぼす影響も小さいため「1」とした。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による黄銅は、その結晶組織におけるβ相の比率が15%以下である。このような結晶組織とすることで、耐食性が良好な黄銅が実現できる。また、本発明のより好ましい態様によれば、β相の比率は8%以下である。これにより、水栓金具用の耐食性に優れた金型鋳造用黄銅を実現することができる。とりわけ、水栓金具の耐圧部に適している。なお、本発明において、β相の比率は、結晶断面における面積比を基準とするものであり、例えば光学顕微鏡で撮影した結晶組織写真を画像処理して、β相の面積比率として求めることができる。
本発明による黄銅は、PbおよびNiの含有量が微量に低減されており又はこれらを含まず、一方でその鋳造性および耐食性はPbおよびNiを含む黄銅と同等またはそれ以上の性能を有することから、水栓金具材料に好ましく用いられる。具体的には、給水金具、排水金具、バルブなどの材料として好ましく用いられる。
本発明による黄銅は、鋳造後に熱処理して、その結晶組織におけるβ相の比率を下げることを含んでなる方法により製造されることが好ましい。β相の比率が小さいほど耐食性は向上するため、耐食性に優れた黄銅を得ることができる。本発明の好ましい態様によれば、熱処理は、450℃以上550℃以下で30分以上3時間以下行われる。この熱処理により、β相の比率が15%以下、好ましくは8%以下の黄銅を得ることができ、こうして得られた黄銅は耐食性に優れる。
以下の実施例における各評価試験の詳細は以下の通りとした。
(1)鋳造割れ性試験
鋳造割れ性を両端拘束型試験法により評価した。使用した金型1の形状は図1に示される通りであった。図1において、中央部に断熱材2を設け、中央部の冷却が、両端拘束部3よりも遅れるようにし、また拘束端距離(2L)は100mm、断熱材長さ(2l)は70mmとした。
金型鋳造で作製した直径35mm、長さ100mmの鋳塊を得て、これを試験片として、日本伸銅協会技術標準JBMA T−303−2007に準じて試験を行った。最大侵食深さが100μm以下を◎、150μm以下を○、150μmを超えるものを×と判定した。
下記の表に記載の組成の黄銅を鋳造した。すなわち、電気Cu、電気Zn、Bi地金、電気Pb、Sn地金、Sb地金、Cu−30%Ni母合金、電気Al、Cu−15%Si母合金、Cu−2%B母合金、Cu−30%Mn母合金、Cu−10%Cr母合金、Cu−15%P母合金、Cu−10%Fe、Cu−20%As母合金等を原料として、高周波溶解炉で成分調整しながら溶解し、まず、両端拘束試験金型に鋳造して鋳造割れ性を評価した。
例11−1、11−2、11−8、12−1、12−2,12−8:Sb、AsおよびP
例11−3、11−4、12−3、12−4:Sn
例11−5、11−6、12−5、12−6:Al
例11−7、12−7:Si
例13−1〜13−5、14−1〜14−5:PbおよびBi
例13−6、14−6:Ni
例13−7、14−7:Mn
例13−8、14−8:Cr
表中の例は、以下の添加元素の意義・影響を特に明確にする。
例17−1、17−3、17−5、17−7、18−1、18−3、18−5、18−7:Sb、AsおよびP
例17−2、17−4、17−6、17−8、18−2、18−4、18−6、18−8:Sn
例19−1〜19−8、20−1〜20−8、21−1、21−3、21−5,21−7は:Sb、AsおよびP
例19−1〜19−8、20−1〜20−8、21−2,21−4、21−6、21−8:Sn
例22−1〜22−8:見かけ上のZn含有量
例22−1、22−2、22−5、22−6:Al
例22−3、22−4、22−7、22−8:Zn
Claims (3)
- Snを0.05質量%以上0.2質量%以下、
Sb、AsおよびPからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、その合計で0.05質量%以上0.32質量%以下、
Alを0.1質量%以上0.5質量%以下、
Znを33.0質量%以上40.0質量%以下、
PbおよびBiからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、その合計で0.005質量%以上0.25質量%以下、
Niを0質量%以上0.5質量%以下、
Siを0質量%以上0.5質量%以下、
FeおよびBからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を、その合計で0.0001質量%以上0.3質量%以下含んでなり、そして
残部がCuと不可避不純物とからなり(ただし、ここで不可避不純物がMnである場合には、その量は0.05質量%未満であり)、かつ
見かけ上のZn含有量が36%以上41%以下である、黄銅。 - 請求項1に記載の黄銅の製造方法であって、鋳造後に450℃以上550℃以下で30分以上3時間以下熱処理することを含んでなる、製造方法。
- 請求項1に記載の黄銅からなる、水栓金具。
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