JP2009108392A - 曲げ加工性に優れる高強度洋白およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明の課題は、汎用性のある洋白に高い強度と曲げ加工性を兼備させる技術を開発することにある。
【解決手段】 Niを10〜20mass%、Znを10〜30mass%、Mnを0.5mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる洋白であり、最終圧延前の結晶粒度が1μm以下であり、最終圧延後の表面に曲げ加工クラックを誘引する切り欠き状の欠陥がないことを特徴とする曲げ加工性に優れる高強度洋白。
【選択図】 なし
【解決手段】 Niを10〜20mass%、Znを10〜30mass%、Mnを0.5mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる洋白であり、最終圧延前の結晶粒度が1μm以下であり、最終圧延後の表面に曲げ加工クラックを誘引する切り欠き状の欠陥がないことを特徴とする曲げ加工性に優れる高強度洋白。
【選択図】 なし
Description
本発明は、端子・コネクタ等の電子部品に用いられる曲げ加工性に優れた高強度洋白およびその製造方法に関するものである。
C7521、C7541、C7701(JIS H 3130)等の洋白は、優れた加工性と高強度を有し、かつ展延性、耐疲労性、耐食性に優れているため、電子部品および車載用端子・コネクタ等の用途で広く使用されている。
近年は電子部品の軽薄・短小化が従前にも増して著しく、これに対応して部品用の銅合金にも薄板材料が要求されている。しかし、材料が薄肉化した場合、コネクタの接圧等を維持するためには材料自体の強度が高いことが必要とされる。一方、電子部品の小型化のためには、小さなスペースでその機能を果たすために、曲げ加工も小さな曲げ半径で施され、高い曲げ加工性が要求される。従って、高強度でかつ曲げ加工性が良好であるという、相矛盾した特性が材料に要求されている。
近年は電子部品の軽薄・短小化が従前にも増して著しく、これに対応して部品用の銅合金にも薄板材料が要求されている。しかし、材料が薄肉化した場合、コネクタの接圧等を維持するためには材料自体の強度が高いことが必要とされる。一方、電子部品の小型化のためには、小さなスペースでその機能を果たすために、曲げ加工も小さな曲げ半径で施され、高い曲げ加工性が要求される。従って、高強度でかつ曲げ加工性が良好であるという、相矛盾した特性が材料に要求されている。
これに伴い、ベリリウム銅、チタン銅などの高強度型銅合金、コルソン合金、クロムジルコニウム合金などの高導電型銅合金が使用されているが、これらの合金は洋白等と比較して高価であり、汎用品としては好ましくない。
このような観点から当社を含めた伸銅品製造各社は、従来銅合金の中で比較的高強度を有する洋白について強度や加工性の改良を進めてきた(特許文献1参照)。
このような観点から当社を含めた伸銅品製造各社は、従来銅合金の中で比較的高強度を有する洋白について強度や加工性の改良を進めてきた(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載の洋白では、強度的にはベリリウム銅、チタン銅クラスに至らず、軽薄・短小化のニーズに遅れをとっているのが現状である。
こうした現状を踏まえて、本発明の課題は、洋白に高い強度と曲げ加工性(曲げ軸は圧延方向と平行)を兼備させる技術を開発することにある。
こうした現状を踏まえて、本発明の課題は、洋白に高い強度と曲げ加工性(曲げ軸は圧延方向と平行)を兼備させる技術を開発することにある。
洋白は固溶強化型の銅合金であり、粒界強化(熱処理)と転位強化(圧延加工)により高強度化が可能である。一方、曲げ加工性は再結晶焼鈍後が最も良好であり、圧延加工度が高くなるほど劣化する。
本発明者らは均質化焼鈍条件を調整することにより、曲げ加工性を劣化させる原因となるNiの残留偏析を減らし最終圧延後の曲げ加工性を改善した。また、最終焼鈍前の圧延加工度と最終焼鈍条件を調整することにより、結晶粒度が1μm以下の微細結晶粒を安定的に得ることに成功した。さらに、この焼鈍の際に切り欠きの原因となる表面欠陥を発生させない工夫を行うことにより、圧延後の曲げ加工性を改善した。本発明は、次のような特性により定義されうる、曲げ加工性に優れた高強度洋白を提供する。
本発明者らは均質化焼鈍条件を調整することにより、曲げ加工性を劣化させる原因となるNiの残留偏析を減らし最終圧延後の曲げ加工性を改善した。また、最終焼鈍前の圧延加工度と最終焼鈍条件を調整することにより、結晶粒度が1μm以下の微細結晶粒を安定的に得ることに成功した。さらに、この焼鈍の際に切り欠きの原因となる表面欠陥を発生させない工夫を行うことにより、圧延後の曲げ加工性を改善した。本発明は、次のような特性により定義されうる、曲げ加工性に優れた高強度洋白を提供する。
(1)Niを10〜20mass%、Znを10〜30mass%、Mnを0.5mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる洋白であり、最終圧延材または製品の圧延直角断面における、厚み方向のNi濃度平均値をC、厚み方向のNi濃度最大値をCmax、厚み方向のNi濃度最小値をCminとしたとき、δ=(Cmax−Cmin)/Cで求められるδが0.13以下で、かつ最終再結晶焼鈍後の結晶粒径が1μm以下であることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度洋白。
(2)Niを10〜20mass%、Znを10〜30mass%、Mnを0.5mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる洋白であり、最終圧延後の表面に曲げクラックを誘引する切り欠き状の段差がないことを特徴とする(1)に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白。
(3)Niを10〜20mass%、Znを10〜30mass%、Mnを0.5mass%以下含有し、Fe、Si、Ti、Co、Snのいずれか1種類以上を0.01〜0.3mass%含み、残部がCuおよび不可避的不純物からなる洋白であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白。
(4)加工度80%以上の冷間圧延後、最終焼鈍で結晶粒度を1μm以下とし、続いて加工度10〜30%の最終冷間圧延を施すことを特徴とする(1)〜(3)に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法。
(5)加工度60%以上の冷間圧延後、中間焼鈍で結晶粒度を2μm以下とし、その後に加工度50%以上の冷間圧延後、最終焼鈍で結晶粒度を1μm以下とし、続いて加工度10〜30%の最終冷間圧延を施すことを特徴とする(1)〜(3)に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法。
(6)加工度X%の最終冷間圧延を施した引張強さがTS0(MPa)の冷間圧延材を、引張強さTSa(MPa)がTSa<TS0−Xとなるまで歪取焼鈍を施すことを特徴とする、(4)又は(5)に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法。
汎用性のある洋白において、強度的にベリリウム銅やチタン銅に匹敵するような高強度で曲げ加工性に優れた材料を提供することができる。
以下に本発明を構成する各要素の限定理由について、請求項の発明毎に説明する。
(1)請求項1の曲げ加工性に優れた高強度洋白の発明
本発明は、Niを10〜20mass%、Znを10〜30mass%、Mnを0.5mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる洋白であり、最終圧延材または製品の圧延直角断面における、厚み方向のNi濃度平均値をC、厚み方向のNi濃度最大値をCmax、厚み方向のNi濃度最小値をCminとしたとき、δ=(Cmax−Cmin)/Cで求められるδが0.13、好ましくは0.10以下で、かつ最終再結晶焼鈍後の結晶粒径が1μm以下であることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度洋白である。
本発明は、Niを10〜20mass%、Znを10〜30mass%、Mnを0.5mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる洋白であり、最終圧延材または製品の圧延直角断面における、厚み方向のNi濃度平均値をC、厚み方向のNi濃度最大値をCmax、厚み方向のNi濃度最小値をCminとしたとき、δ=(Cmax−Cmin)/Cで求められるδが0.13、好ましくは0.10以下で、かつ最終再結晶焼鈍後の結晶粒径が1μm以下であることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度洋白である。
まず、Niを10〜20mass%、Znを10〜30mass%に指定する理由について説明する。洋白は固溶強化合金であり、Cuの含有量が減少しNi、Znの含有量が増加するに従って合金は高強度化する。0.2%耐力は結晶粒径を微細化することで高強度化することは周知であるが、結晶粒径が1μm以下という超微細な領域で高強度化した洋白の加工性や機械的特性については未知なる部分が多い。本発明者らは、結晶粒度を1μm以下に制御した洋白の特性とNi、Zn含有量との関係を調査し、Ni、Zn量がそれぞれ10mass%以上の場合、強度が向上し、曲げ加工性も良好であることを解明した。ただし、Zn量が30mass%以上になるとβ相が現れる可能性が高くなり、曲げ加工性の低下が懸念されるため、Zn含有量の範囲を上記のように指定した。また、Ni偏析により曲げ加工性は低下する。具体的には、最終圧延材または製品のδが0.13よりも大きくなると、曲げ加工性が著しく低下する。そこで、本発明では圧延材のNiのδを0.13以下と規定した。好ましくは0.10以下がよい。δを0.13以下とするためには、鋳造後のインゴットの均質化焼鈍を十分行う必要があり、従来の焼鈍条件より焼鈍温度を高くするか、焼鈍時間を長くすればよい。具体的な条件は設備によって異なるが、例えば、従来行われている均質化焼鈍が900℃×1時間であれば、900℃×2時間以上にすることで、δを0.13以下となる。なお、δとはNi平均濃度に対するNi濃度のばらつきの割合であり、EPMA(電子線マイクロアナライザ)で最終圧延材または製品の圧延直角断面にてNi濃度の線分析を行い、厚み方向のNi濃度平均値をC、厚み方向のNi濃度最大値をCmax、厚み方向のNi濃度最小値をCminとしたとき、δ=(Cmax−Cmin)/Cで求められる。なお、線分析時の加速電圧は20kV、電流は50〜60nA、ビーム径は1μm、隣接する2分析点の中心間距離は1μm、1分析点当たりの積分時間は1sとした。Niの検出強度は4000カウント/点以上であり、繰り返し分析における強度(=濃度)のばらつきはごく小さい。
(2)請求項2の曲げ加工性に優れた高強度洋白の発明
本発明は、最終圧延後の表面に曲げクラックを誘引する切り欠き状の段差がないことを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白である。
洋白の製造工程においては、最終焼鈍時の高温加熱によって表面に生じた酸化スケールを酸洗で溶解剥離し、スケール下の亜酸化銅皮膜をスコッチバフ等の研磨砥粒で研削除去している。このとき、材料の表面には砥粒の大きさに比例した幅の研削溝が生じるが、この溝は次工程の圧延で潰され、切り欠き状の溝として残ってしまう。この溝は焼鈍後の結晶粒度が2μm以上の場合には曲げ加工性に何等悪影響を及ぼさないが、結晶粒度が2μm未満になると、特に圧延直角方向の曲げ加工でクラックが発生しやすくなっていた。
本発明は、最終圧延後の表面に曲げクラックを誘引する切り欠き状の段差がないことを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白である。
洋白の製造工程においては、最終焼鈍時の高温加熱によって表面に生じた酸化スケールを酸洗で溶解剥離し、スケール下の亜酸化銅皮膜をスコッチバフ等の研磨砥粒で研削除去している。このとき、材料の表面には砥粒の大きさに比例した幅の研削溝が生じるが、この溝は次工程の圧延で潰され、切り欠き状の溝として残ってしまう。この溝は焼鈍後の結晶粒度が2μm以上の場合には曲げ加工性に何等悪影響を及ぼさないが、結晶粒度が2μm未満になると、特に圧延直角方向の曲げ加工でクラックが発生しやすくなっていた。
本発明者らは焼鈍方法を根本的に見直し、研削溝を発生させない方策として光輝焼鈍法を採用することにした。光輝焼鈍は、還元性ガス雰囲気中で焼鈍を行うため材料の表面酸化が発生せず、酸洗や研磨が不要である。焼鈍後の表面は焼鈍前の圧延仕上げ表面と同等であり、最終圧延後の表面には曲げクラックを誘引する切り欠き状の段差がなくなり、曲げ加工性に優れた洋白を得ることができる。なお光輝焼鈍法に限らず、材料表面の研磨が不要である焼鈍方法を採用すれば本発明と同様の改善効果が得られることは自明であり、そのような焼鈍方法は本発明の範囲内に属するものとする。
(3)請求項3の曲げ加工性に優れた高強度洋白の発明
本発明は、洋白に対し、Fe、Si、Ti、Co、Snのいずれか1種類以上を0.01〜0.3%添加するものである。
Fe、Si、Ti、Co、Snは固溶強化を目的として添加する。添加量が0.01mass%未満であると所望の強度が得られず、0.3mass%を超えると熱間加工性、冷間加工性、プレス性、曲げ加工性、コスト面等で不利であり好ましくない。
なお、上記列挙した添加元素は経済的観点からも使用可能な代表的元素を挙げたものであって、これら以外の元素であっても、洋白の導電性等の特性を劣化させずに主として固溶強化を行う元素を副成分として含む洋白合金も本発明の範囲内に属するものである。
本発明は、洋白に対し、Fe、Si、Ti、Co、Snのいずれか1種類以上を0.01〜0.3%添加するものである。
Fe、Si、Ti、Co、Snは固溶強化を目的として添加する。添加量が0.01mass%未満であると所望の強度が得られず、0.3mass%を超えると熱間加工性、冷間加工性、プレス性、曲げ加工性、コスト面等で不利であり好ましくない。
なお、上記列挙した添加元素は経済的観点からも使用可能な代表的元素を挙げたものであって、これら以外の元素であっても、洋白の導電性等の特性を劣化させずに主として固溶強化を行う元素を副成分として含む洋白合金も本発明の範囲内に属するものである。
(4)請求項4の曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法の発明
本発明は、加工度80%以上の冷間圧延後、最終焼鈍で結晶粒度1μm以下の超微細粒組織を製造し、最終冷間圧延にて10〜30%の圧延を行うことによる曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法に関するものである。
より具体的には、冷間圧延と焼鈍を繰り返して製造する洋白において、最終の冷間圧延、その前の最終焼鈍、更にその前の冷間圧延工程を規定した曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法に関するものである。
本発明は、加工度80%以上の冷間圧延後、最終焼鈍で結晶粒度1μm以下の超微細粒組織を製造し、最終冷間圧延にて10〜30%の圧延を行うことによる曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法に関するものである。
より具体的には、冷間圧延と焼鈍を繰り返して製造する洋白において、最終の冷間圧延、その前の最終焼鈍、更にその前の冷間圧延工程を規定した曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法に関するものである。
最終焼鈍前の冷間圧延加工度は焼鈍後の結晶粒度に影響を与え、加工度が高いほど焼鈍後に得られる結晶粒度は微細で均一になる。加工度が低い場合には、最終焼鈍の熱処理条件を調整しても結晶粒度が微細化しにくい。本発明者らは、冷間圧延加工度が80%を超える洋白を適切な条件で焼鈍した後の結晶粒度が0.6〜0.9μmに微細化することを見出した。結晶粒度が微細化した焼鈍材の引張強さは、結晶粒度10μmの通常洋白に比べると約1.3倍と高強度であり、この焼鈍材を冷間圧延した場合の加工硬化による強度上昇は通常洋白と同等である。この結果、同一強度の圧延材を得るための加工度は通常材の約半分になり、加工度が低いことから、通常材よりも優れた曲げ加工性を有する。
(5)請求項5の曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法の発明
本発明は、加工度60%以上の冷間圧延後、中間焼鈍で結晶粒度を2μm以下とし、その後に加工度50%以上の冷間圧延後、最終焼鈍で結晶粒度を1μm以下とし、続いて加工度10〜30%の最終冷間圧延を施すことを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法に関するものである。
請求項4では最終焼鈍前の冷間圧延加工度が80%以上と高いため、製造可能な製品板厚が薄物のみとなるが、本発明による製造方法では、中間圧延加工度が50%でも最終焼鈍を適切な条件で行えば、結晶粒度を1μm以下に微細化できるため、板厚が比較的厚い製品の製造が可能となる。
本発明は、加工度60%以上の冷間圧延後、中間焼鈍で結晶粒度を2μm以下とし、その後に加工度50%以上の冷間圧延後、最終焼鈍で結晶粒度を1μm以下とし、続いて加工度10〜30%の最終冷間圧延を施すことを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法に関するものである。
請求項4では最終焼鈍前の冷間圧延加工度が80%以上と高いため、製造可能な製品板厚が薄物のみとなるが、本発明による製造方法では、中間圧延加工度が50%でも最終焼鈍を適切な条件で行えば、結晶粒度を1μm以下に微細化できるため、板厚が比較的厚い製品の製造が可能となる。
(6)請求項6の曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法の発明
本発明は、上記の洋白において最終圧延後に歪取焼鈍を行い、その歪取焼鈍における引張強さの低下量を規定するもので、その規定は、歪取焼鈍前の引張強さをTS0(MPa)、歪取焼鈍後の引張強さをTSa(MPa)として、TSa<TS0−X(最終冷間圧延の加工度(%))というものである。
本発明は、上記の洋白において最終圧延後に歪取焼鈍を行い、その歪取焼鈍における引張強さの低下量を規定するもので、その規定は、歪取焼鈍前の引張強さをTS0(MPa)、歪取焼鈍後の引張強さをTSa(MPa)として、TSa<TS0−X(最終冷間圧延の加工度(%))というものである。
りん青銅、洋白等は歪取焼鈍が施されることがある。歪取焼鈍は、最終圧延前に施す再結晶焼鈍とは異なり、冷間加工後に延性(加工性)を回復させ、併せてばね性等を向上させる目的で、例えば、ばね用りん青銅(C5210:JIS H 3130)等に、一般的に行われている。
この歪取焼鈍は、最終圧延後にテンションアニーリングライン等により、必要に応じて施すことができる。
この歪取焼鈍は、最終圧延後にテンションアニーリングライン等により、必要に応じて施すことができる。
本発明に係る銅合金は、歪取焼鈍後においても、従来技術で製造した合金より高強度で曲げ加工性が優れている。
さらに、特に結晶粒径の小さな焼鈍材を冷間圧延する場合、延性の低下を少しでも少なくするためには、最終加工度に応じた歪取焼鈍を行うことが有効である。特に曲げ加工性を改善するには、冷間圧延材の最終冷間圧延加工度をX(%)、歪取焼鈍前の引張強さをTS0(MPa)および歪取焼鈍後の引張強さをTSa(MPa)としたときに、TSa<TS0−Xとなる条件にて歪取焼鈍を行う。例えば、最終加工度30%で700MPaまで加工硬化した冷間圧延材の場合、この材料を歪取焼鈍して、670MPa未満となるまで歪取焼鈍を施すと、曲げ加工性が良い材料を得ることができる。
さらに、特に結晶粒径の小さな焼鈍材を冷間圧延する場合、延性の低下を少しでも少なくするためには、最終加工度に応じた歪取焼鈍を行うことが有効である。特に曲げ加工性を改善するには、冷間圧延材の最終冷間圧延加工度をX(%)、歪取焼鈍前の引張強さをTS0(MPa)および歪取焼鈍後の引張強さをTSa(MPa)としたときに、TSa<TS0−Xとなる条件にて歪取焼鈍を行う。例えば、最終加工度30%で700MPaまで加工硬化した冷間圧延材の場合、この材料を歪取焼鈍して、670MPa未満となるまで歪取焼鈍を施すと、曲げ加工性が良い材料を得ることができる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)実施例1(請求項1〜3に係る発明についての検証例)
表1に示した組成の洋白を大気中にて木炭被覆し溶解後、鋳造し、100mmw×40mmt×150mmlの寸法の鋳塊を作製した。次いで、均質化焼鈍を900℃で1、2または3h行うことによりδを調整した。次いで、熱間圧延、及び冷間圧延を行い、洋白板中間材を得た。この洋白板中間材について、再結晶焼鈍と冷間圧延とを必要に応じて少なくとも1回行い、最終の再結晶焼鈍(以下、「最終再結晶焼鈍」と称する。)を行って結晶粒径を調整した。つまり、最終再結晶焼鈍前の加工度、再結晶焼鈍条件、および最終加工度を調整して0.12、0.15、0.20mm厚さの板を得た。その特性を表1に示す。
表1に示した組成の洋白を大気中にて木炭被覆し溶解後、鋳造し、100mmw×40mmt×150mmlの寸法の鋳塊を作製した。次いで、均質化焼鈍を900℃で1、2または3h行うことによりδを調整した。次いで、熱間圧延、及び冷間圧延を行い、洋白板中間材を得た。この洋白板中間材について、再結晶焼鈍と冷間圧延とを必要に応じて少なくとも1回行い、最終の再結晶焼鈍(以下、「最終再結晶焼鈍」と称する。)を行って結晶粒径を調整した。つまり、最終再結晶焼鈍前の加工度、再結晶焼鈍条件、および最終加工度を調整して0.12、0.15、0.20mm厚さの板を得た。その特性を表1に示す。
(試験方法)
a)引張強さ(TS:MPa)は13B号試験片(JIS Z 2201)を圧延方向と並行に採取し、引張試験(JIS Z 2241)により求めた。
b)結晶粒度は、切断法(JIS H 0501)により、所定長さの線分により切断される結晶粒数を数え、その切断長さの平均値を結晶粒度とした。
c)曲げ加工性(MBR/t)は、10mmw×100mmlの寸法の試験片を圧延方向と直角に採取し、W曲げ試験(JIS H 3110)を各種曲げ半径で行い、日本伸銅協会技術標準JBTA T307:1999による評価基準Cランク以上の良好な外観が得られる、割れ、肌荒れが発生しない最小の曲げ半径比(R(曲げ半径)/t(試験片厚さ))を求めた。なお、W曲げ試験の曲げ軸は圧延方向と平行方向である。
d)表面切り欠きの有無については、材料表面を光学顕微鏡で拡大観察し、研磨傷に起因した段差の有無を確認した。
e)Ni平均濃度に対するNi濃度のばらつきの割合δについては、EPMA(電子線マイクロアナライザ)で最終圧延材または製品の圧延直角断面にてNi濃度の線分析を行い、厚み方向のNi濃度平均値をC、厚み方向のNi濃度最大値をCmax、厚み方向のNi濃度最小値をCminとしたとき、δ=(Cmax−Cmin)/Cとし、任意の5断面のδの平均値をその材料の代表値とした。なお、線分析時の加速電圧は20kV、電流は50〜60nA、ビーム径は1μm、隣接する2分析点の中心間距離は1μm、1分析点当たりの積分時間は1sとした。
a)引張強さ(TS:MPa)は13B号試験片(JIS Z 2201)を圧延方向と並行に採取し、引張試験(JIS Z 2241)により求めた。
b)結晶粒度は、切断法(JIS H 0501)により、所定長さの線分により切断される結晶粒数を数え、その切断長さの平均値を結晶粒度とした。
c)曲げ加工性(MBR/t)は、10mmw×100mmlの寸法の試験片を圧延方向と直角に採取し、W曲げ試験(JIS H 3110)を各種曲げ半径で行い、日本伸銅協会技術標準JBTA T307:1999による評価基準Cランク以上の良好な外観が得られる、割れ、肌荒れが発生しない最小の曲げ半径比(R(曲げ半径)/t(試験片厚さ))を求めた。なお、W曲げ試験の曲げ軸は圧延方向と平行方向である。
d)表面切り欠きの有無については、材料表面を光学顕微鏡で拡大観察し、研磨傷に起因した段差の有無を確認した。
e)Ni平均濃度に対するNi濃度のばらつきの割合δについては、EPMA(電子線マイクロアナライザ)で最終圧延材または製品の圧延直角断面にてNi濃度の線分析を行い、厚み方向のNi濃度平均値をC、厚み方向のNi濃度最大値をCmax、厚み方向のNi濃度最小値をCminとしたとき、δ=(Cmax−Cmin)/Cとし、任意の5断面のδの平均値をその材料の代表値とした。なお、線分析時の加速電圧は20kV、電流は50〜60nA、ビーム径は1μm、隣接する2分析点の中心間距離は1μm、1分析点当たりの積分時間は1sとした。
表1において、本発明例1〜10と、δが0.13より大きい場合の比較例11〜20と、表面切り欠きがある場合の比較例21〜30と、従来の結晶粒度材の比較例31〜34を、便宜上区別して示した。なお、発明例1〜5、7〜10および比較例21〜34の均質化焼鈍条件は900℃×2h、発明例6の均質化焼鈍条件は900℃×3h、比較例11〜20の均質化焼鈍条件は900℃×1hである。900℃で2時間以上の均質化焼鈍を施すことでδが0.13以下になることが分かる。
発明例1〜6は板厚が0.12mmの場合で、中でも発明例6のδは0.10より小さくMBR/tは0.6で最も良好である。また、発明例7〜10は板厚が0.15mm及び0.20mmの場合で、発明例1〜6よりもわずかに曲げ加工性が劣るが、比較例の同一板厚材よりも曲げ加工性が優れている。
比較例11〜20は結晶粒が1μm以下と微細で、材料表面に切り欠き傷は存在しないが、均質化焼鈍が不十分で、δが0.13より大きいため、本発明例1〜10と同程度の板厚、引張強さでは曲げ加工性が劣る。
比較例21〜30は結晶粒度が1μm以下と微細で、δが0.13以下であるが、材料表面に切り欠き傷が存在するために、本発明例1〜10と同程度の板厚、引張強さでは曲げ加工性が劣る。
比較例31〜34は結晶粒度1.6μm及び10μm材であるが、本発明例と同強度にするために加工度は35%及び50%が必要であった。この圧延材の曲げ加工性R/tは2.0〜3.5であり、本発明例の曲げ加工性が向上していることがわかる。
(2)実施例2(請求項4〜5に係る発明についての検証例)
組成がCu−18Ni−26Znの洋白について、冷間圧延加工度と再結晶焼鈍後の結晶粒度の関連を表2に示す。冷間圧延加工度が請求項4又は5の規定から外れた場合、最終再結晶粒度は1μm以下に微細化せず、再結晶化が終了した時点での結晶粒度は1μm以上になる。再結晶化の途中で焼鈍を止めると、組織は圧延組織と再結晶粒との混粒状態となり、その場合の曲げ加工性は更に劣化した。
組成がCu−18Ni−26Znの洋白について、冷間圧延加工度と再結晶焼鈍後の結晶粒度の関連を表2に示す。冷間圧延加工度が請求項4又は5の規定から外れた場合、最終再結晶粒度は1μm以下に微細化せず、再結晶化が終了した時点での結晶粒度は1μm以上になる。再結晶化の途中で焼鈍を止めると、組織は圧延組織と再結晶粒との混粒状態となり、その場合の曲げ加工性は更に劣化した。
(3)実施例3(請求項6に係る発明についての検証例)
組成がCu−18Ni−26Znの洋白について、最終冷間圧延加工度を25%としたとき、歪取焼鈍前(圧延上がり)及び歪取焼鈍後の、引張強さ(TS)、ばね限界値(Kb)および曲げ加工性(MBR/t)の関連を表3に示す。
組成がCu−18Ni−26Znの洋白について、最終冷間圧延加工度を25%としたとき、歪取焼鈍前(圧延上がり)及び歪取焼鈍後の、引張強さ(TS)、ばね限界値(Kb)および曲げ加工性(MBR/t)の関連を表3に示す。
表3において、歪取焼鈍による引張強さの低下量が25未満の場合、曲げ加工性は歪取焼鈍前の圧延材よりも劣り、低下量が25以上のときの曲げ加工性は圧延材よりも優れ、ばね限界値も十分に向上する。
Claims (6)
- Niを10〜20mass%、Znを10〜30mass%、Mnを0.5mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる洋白であり、最終圧延材または製品の圧延直角断面における、厚み方向のNi濃度平均値をC、厚み方向のNi濃度最大値をCmax、厚み方向のNi濃度最小値をCminとしたとき、δ=(Cmax−Cmin)/Cで求められるδが0.13以下で、かつ最終再結晶焼鈍後の結晶粒径が1μm以下であることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度洋白。
- Niを10〜20mass%、Znを10〜30mass%、Mnを0.5mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる洋白であり、最終圧延後の表面に曲げクラックを誘引する切り欠き状の段差がないことを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白。
- Niを10〜20mass%、Znを10〜30mass%、Mnを0.5mass%以下含有し、Fe、Si、Ti、Co、Snのいずれか1種類以上を0.01〜0.3mass%含み、残部がCuおよび不可避的不純物からなる洋白であることを特徴とする請求項1又は2に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白。
- 加工度80%以上の冷間圧延後、最終焼鈍で結晶粒度を1μm以下とし、続いて加工度10〜30%の最終冷間圧延を施すことを特徴とする請求項1〜3に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法。
- 加工度60%以上の冷間圧延後、中間焼鈍で結晶粒度を2μm以下とし、その後に加工度50%以上の冷間圧延後、最終焼鈍で結晶粒度を1μm以下とし、続いて加工度10〜30%の最終冷間圧延を施すことを特徴とする請求項1〜3に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法。
- 前記最終冷間圧延の加工度をX%、歪取焼鈍前の引張強さをTS0(MPa)および歪取焼鈍後の引張強さをTSa(MPa)としたとき、TSa<TS0−Xの式を満たすまで歪取焼鈍を施すことを特徴とする、請求項4又は5に記載の曲げ加工性に優れた高強度洋白の製造方法。
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RU2528530C1 (ru) * | 2013-12-12 | 2014-09-20 | Юлия Алексеевна Щепочкина | Сплав на основе меди |
CN105483428A (zh) * | 2014-09-16 | 2016-04-13 | 陈国良 | 一种白铜眼镜架生产工艺 |
KR102196333B1 (ko) * | 2020-02-18 | 2020-12-30 | 신원금속 주식회사 | Cu-Ni-Zn 양백 합금 |
CN114196844A (zh) * | 2020-09-02 | 2022-03-18 | 中国兵器科学研究院宁波分院 | 一种高强度活塞销孔衬套的制备方法 |
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2007
- 2007-10-31 JP JP2007284392A patent/JP2009108392A/ja active Pending
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