JPWO2005019913A1 - 光導波路デバイスおよび進行波形光変調器 - Google Patents
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Abstract
Description
こうした通常タイプの光変調器は、基板、光導波路、信号電極および接地電極からなる変調電極、バッファ層を有しており、比較的に複雑な形態をしている。これら各要素の寸法については、各種提案されており種々検討が行われてきた。
本出願人は、特開平10−133159号公報、特開2002−169133号公報において、進行波形光変調器の基板の光導波路の下に肉薄部分を設け、この肉薄部分の厚さを例えば10μm以下に薄くすることを開示した。これによって、酸化珪素からなるバッファ層を形成することなしに高速光変調が可能であるし、駆動電圧Vπと電極の長さLとの積(Vπ・L)を小さくできるので、有利である。
また、マルチメディアの発展に伴い、通信のブロードバンド化の需要が高まり10Gb/sを超える光伝送システムが実用化され、さらに高速化が期待されている。10Gb/s以上の電気信号(マイクロ波信号)を光に変調するデバイスとしてLN光変調器が使用されている。
光変調器の変調帯域を広帯域化するために、光導波路基板を薄くすることによりマイクロ波と光波の速度整合をとる構造が発明されている。また、光導波路基板を薄くする構造において、速度整合条件を満足するためには光導波路部周辺の基板厚みを10μm程度にする必要があり、光モードフィールドパターンの偏平化を防止し、基板薄型および溝加工による表面ラフネス、ダメージの影響で発生する光の伝搬損失を抑制するために2段裏溝構造を特開2002−169133号公報で出願した。さらに、2段裏溝構造の作製においては、基板を均一に薄くした後に溝構造を形成することも可能であり、この場合にデバイスの機械的強度を保持するために補強基板を設ける構造を特願2001−101729号で出願した。
特開平9−211402号公報に記載のデバイスにおいては、補強基板に空気層を設けることで速度整合条件を満たす構造になっている。また、特開2001−235714号公報に記載のデバイスにおいては、光導波路が保持基体との接着面上にある。
しかし、特開2002−169133号公報、特願2001−101729号に記載のデバイスにおいては、変調器基板の裏面側に溝を設け、この変調器基板と補強基板とを、低誘電率材料で形成される接着層により接合している。このような構造は、熱衝撃試験や温度サイクル試験などの信頼性試験で過大な負荷を加えたときに、温度ドリフトやDCドリフトが大きくなることがあることが判明してきた。
本発明の課題は、電気光学結晶基板、光導波路および変調電極を備えており、少なくとも変調電極による電界印加領域における基板の厚みが30μm以下である光導波路デバイスにおいて、消光比特性とON時パワー出力特性を改善することである。
また、前記問題を解決するために、本出願人は、特願2002−330325号において、厚さ30μm以下の薄い光導波路基板の背面側に、厚さが略一定の接着層を設けて保持基体を接着することを想到した。
しかし、光導波路基板と保持基板との熱膨張差による応力が原因でDCドリフトが発生し、消光比カーブにヒステリシスが現れることがあった。図21に光導波路基板としてLN基板を使用し、熱膨張差が大きい石英ガラスを保持基板とした場合の消光比カーブを示す。1KHz、ピーク電圧10Vの正弦波信号を印加したときの光パワーには、図21に示すようなヒステリシスが現れることがあった。図20はヒステリシスのほとんどない状態を示す。
光変調器を駆動させる場合には、一般的に、オートバイアスコントロール回路にて光パワーの最大値と最小値の中間点(V(π/2))にバイアス点を移動して駆動する。しかし、図21のようなヒステリシス現象があると、この中間点にバイアスを移動することができなくなり、光変調器を動作させることができなくなる。
更に、長期DCドリフトが発生し、上記のバイアス点がドリフトし、オートバイアスコントロール回路で追随できなくなる場合があった。
本発明の課題は、光導波路デバイスにおいて、信号電圧を印加したときの光パワーにおけるヒステリシス現象を防止し、かつ長期DCドリフトを抑制することである。
第一の態様に係る発明は、電気光学結晶基板、光導波路および変調電極を備えており、少なくとも変調電極による電界印加領域における電気光学結晶基板の厚みが30μm以下であり、光導波路形成時に生ずる凸部の高さH(オングストローム)と凸部の幅W(μm)との積(H・W)が7150オングストローム・μm以下であることを特徴とする、光導波路デバイスに係るものである。
また、第一の態様に係る発明は、電気光学結晶基板、光導波路および変調電極を備えており、少なくとも変調電極による電界印加領域における電気光学結晶基板の厚みが30μm以下であり、少なくとも前記光導波路の出口部の少なくとも水平方向が単一モード化していることを特徴とする、光導波路デバイスに係るものである。
本発明者は、上述した波長による消光比の変動の原因について詳細に検討し、以下の発見に到った。すなわち、基板の厚さが例えば30μm以下の薄い場合に、さらには、特に15μm以下の薄い場合には、光導波路がマルチモード化しており、特に高次モード導波光の水平方向(LN基板表面と平行方向)のスポットサイズが小さくなる傾向を示して、これらが印加電圧の動作点の変動や波長による消光比の変動の原因になることを突き止めた。
本発明者はこの知見に基づき、電気光学結晶基板の厚みが30μm以下の場合には、少なくとも光導波路の出口部の少なくとも水平方向を単一モード化させることによって、印加電圧の動作点の変動や波長による消光比の変動を抑制できることを見いだした。ここで出口部はY分岐光導波路から合波した後の直線部分の光導波路のことをいう。
従来、光導波路基板厚さ30μm以下の場合に、印加電圧の動作点の変動や波長による消光比の変動が生じ、この原因が、光導波路のマルチモード化、特に導波光の水平方向のスポットサイズの縮小にあることはまったく知られていなかった。
本発明はこのような問題点とその原因の発見に基づいて初めて可能となったものであり、産業上の利用価値は大きい。
更に、本発明者は、光導波路の少なくとも水平方向をシングルモード化するために、光導波路の作製条件を検討した結果、光導波路形成時に拡散部分が凸状に盛り上がり、凸部の形状と光導波路のモード条件に相関性があることを見出した。具体的には、光導波路および凸部の形状は、レーザー顕微鏡により検査を行った。その結果、光導波路の少なくとも水平方向をシングルモード化するための条件は以下のとおりであることを見いだした。
(光導波路形成時に生ずる凸部の高さH(オングストローム)と凸部の幅W(μm)との積(H・W)≦7150オングストローム・μm)
これによって、消光比特性を改善することに成功した。
この観点からは、H×Wは、6900オングストローム・μm以下であることが更に好ましく、6000オングストローム・μm以下であることが一層好ましい。
H×Wが小さくなりすぎると、モード径が大きくなり、外部の光ファイバーとの結合損失が大きくなる。この結合損失を低減するという観点から、H×Wは、3000オングストローム・μm以上であることが更に好ましく、3400オングストローム・μm以上であることが一層好ましい。
好適な実施形態においては、H≦1100オングストローム、およびW≦6.5μmの条件が満足される。これによって、消光比カーブの頂点および谷の位置の電圧依存性を低減することができる。
本発明者は更に以下の発見に到った。すなわち、光導波路のを少なくとも水平方向をシングルモード化したとき、モードサイズが広がり、マッハツェンダ干渉導波路部(電極との相互作用部)において、光導波路間とのモード結合が大きくなる。この結果、合波する際に分岐比がずれてしまい、消光比が劣化することがあった。そして消光比の波長依存性が大きくなった。
これに対して、分岐光導波路間の間隔を46μm以上まで大きくすることによって、消光比を20dB以上とすることができ、消光比の波長依存性も小さくできることを見いだした。
第二の態様に係る発明は、光導波路基板、この光導波路基板を保持する保持基体、および光導波路基板と保持基体とを接着する接着層を備えている光導波路デバイスであって、
光導波路基板が、電気光学材料からなり、相対向する一方の主面と他方の主面とを備えている厚さ30μm以下の平板状の基板本体、基板本体に設けられている光導波路、および基板本体に設けられた電極を備えており、接着層によって保持基体と基板本体の他方の主面とが接着されており、保持基体における熱膨張係数の最小値が基板本体における熱膨張係数の最小値の1/5倍以上であり、かつ保持基体における熱膨張係数の最大値が基板本体における熱膨張係数の5倍以下であることを特徴とする。
本発明では、厚さ30μm以下の平板状の基板本体を使用し、接着層によって保持基体と基板本体とを接着した。これにより光導波路基板において応力集中個所がなくなるため、応力が分散され、光導波路基板に加わる最大応力を低減できることがわかった。更に、基板薄型加工に研磨を使用することができるため、適切な方法により加工ダメージを飛躍的に除去でき、同時に破壊強度の劣化を防止することが可能である。
これと共に、保持基体における熱膨張係数の最小値を光導波路基板における熱膨張係数の最小値の1/5倍以上とし、かつ保持基体における熱膨張係数の最大値を光導波路基板における熱膨張係数の最大値の5倍以下とすることによって、信号電圧を印加したときの光パワーにおけるヒステリシス現象を防止し、かつ長期DCドリフトを抑制することができる。
このような作用効果が得られた理由は明確ではない。しかし、NTT宮沢、三冨ら「1994年電子情報通信学会SA−9−3」においては、歪みとDCドリフトの相関を指摘している。したがって、本構造の場合に、基板本体と光導波路基板との間の熱膨張差による内部歪みにより、DCドリフトが発生していたものと考えられる。
図2は、デバイス4を概略的に示す横断面図である。
図3は、分岐部間において基板に溝5cが設けられたデバイスを示す横断面図である。
図4は、光導波路2b、2cの状態を示す拡大図である。
図5は、種々の形態の凸部と高さHおよび幅Wの関係を示す模式図である。
図6は、本発明の一実施形態に係るデバイス11を概略的に示す断面図である。
図7は、本発明の他の実施形態に係るデバイス11Aを概略的に示す断面図である。
図8は、本発明の更に他の実施形態に係るデバイス11Bを概略的に示す断面図である。
図9は、本発明の更に他の実施形態に係るデバイス11Cを概略的に示す断面図である。
図10は、本発明の更に他の実施形態に係るデバイス11Dを概略的に示す断面図である。
図11は、比較例のデバイスによる消光比の印加電圧依存性を示すグラフである。
図12は、本発明例のデバイスによる消光比の印加電圧依存性を示すグラフである。
図13は、比較例のデバイスによる消光比の波長依存性を示すグラフである。
図14は、本発明例のデバイスによる消光比の波長依存性を示すグラフである。
図15は、P値の算出方法を説明するためのグラフである。
図16は、導波路アーム間距離(L)と消光比との関係を示すグラフである。
図17は、導波路アーム間距離(L)とΔPとの関係を示すグラフである。
図18は、導波路アーム間距離(L)と消光比との関係を示すグラフである。
図19は、導波路アーム間距離(L)とΔPとの関係を示すグラフである。
図20は、本発明の実施例のデバイスにおける光パワーと電圧との関係を示すグラフである。
図21は、比較例のデバイスにおける光パワーと電圧との関係を示すグラフである。
基板本体5は平板形状をしている。基板5の一方の主面5aの上には接地電極1A、1Cおよび信号電極1Bが形成されている。本例では、いわゆるコプレーナ型(Coplanar waveguide:CPW電極)の電極配置を採用している。光導波路2は、入り口部2a、出口部2dおよび一対の分岐部2b、2cを備えている。電界印加領域10においては、隣接する電極の間に一対の光導波路分岐部2b、2cが配置されており、各光導波路2b、2cに対して略水平方向に信号電界を印加するようになっている。光導波路2は、平面的に見ると、いわゆるマッハツェンダー型の光導波路を構成している。分岐部2bと2cとの間隔Lは、好ましくは46μm以上である。
本発明者は更に以下の発見に到った。マッハツェンダ干渉導波路部(電極との相互作用部)において、光導波路間とのモード結合が大きくなる問題に対して、図3に示すように分岐光導波路間に溝5cを形成することによって、光導波路間のモード結合を抑制できることを見いだした。この結果、光導波路の少なくとも水平方向をシングルモード化した場合には、消光比を20dB以上とすることができ、消光比の波長依存性も小さくできることを見いだした。
図4は、光導波路2b、2cを示す拡大断面図である。光導波路2b、2c形成時には、チタン等の適当な拡散剤を主面5a上に載置し、加熱処理する。この際、主面5a上には、拡散時に凸部6が形成される。凸部の形状パターンは、図5に示すように様々であるが、凸部の高さHは隆起したピーク値であり、幅Wは高さHの5%の値の点を結んだ最も長い距離と定義した。これに基づいて、凸部6の幅Wと高さHとの積は、本発明に従い7150オングストローム・μm以下とする。
基板本体と電極との間にはバッファ層を設けることができる。また、本発明は、電極配置が非対称コプレーナストリップライン型である場合にも適用可能である。
基板本体は、強誘電性の電気光学材料、好ましくは単結晶からなる。こうした結晶は、光の変調が可能であれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、ニオブ酸カリウムリチウム、KTP、及び水晶などを例示することができる。
接地電極、信号電極は、低抵抗でインピーダンス特性に優れる材料であれば特に限定されるものではなく、金、銀、銅などの材料から構成することができる。
バッファ層は、酸化シリコン、弗化マグネシウム、窒化珪素、及びアルミナなどの公知の材料を使用することができる。
光導波路は、基板本体に内拡散法やイオン交換法によって形成された光導波路であり、好ましくはチタン拡散光導波路、プロトン交換光導波路であり、特に好ましくはチタン拡散光導波路である。電極は、基板本体の一方の主面側に設けられているが、基板本体の一方の主面に直接形成されていてよく、バッファ層の上に形成されていてよい。
光導波路の特に好適な形成条件は以下の範囲である。
Ti厚み 450〜1000 オングストローム、拡散温度 950〜1100℃
拡散時間 4〜11 時間、導波路マスクパターンの幅 3〜7μm
基板本体においては、特に好ましくは結晶の分極軸が基板の一方の主面5aと略水平である。この場合には、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶からなるX板あるいはY板が好ましい。図1〜図5には、本発明をX板あるいはY板に適用した例について示した。
また、他の好適な実施形態においては、結晶の分極軸が基板の一方の主面5aと略垂直である。この場合には、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶からなるZ板が好ましい。Z板を使用した場合には、光導波路は電極の直下に設ける必要があり、光の伝搬損失を低減するために、基板の表面と電極との間にはバッファ層を設けることが好ましい。
本発明においては、図2に示すように、基板本体5を別体の保持基体7に対して接合することができる。保持基体7によるマイクロ波の伝搬速度への影響を最小限とするという観点からは、保持基体7の材質は、電気光学単結晶の誘電率よりも低い誘電率を有する材質であってもよい。こうした材質としては、石英ガラス等のガラスがある。
光導波路基板5と保持基体7との接合方法は特に限定されない。好適な実施形態においては、両者を接着する。この場合には、接着剤の屈折率は、基板本体5を構成する電気光学材料の屈折率よりも低いことが好ましい。
接着剤の具体例は、エポキシ系接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化性接着剤などで、ニオブ酸リチウムなどの電気光学効果を有する材料と比較的近い熱膨張係数を有する接着剤が好ましい。
以下、適宜図面を参照しつつ、第二の態様に係る発明の好適な実施形態を更に詳細に説明する。
図6は、主として第一の発明の実施形態に係る光変調器11を概略的に示す断面図である。図6においては、進行波形光変調器における光の進行方向に対して略垂直な横断面を示す。
光変調器11は、光導波路基板29と保持基体12とを備えている。基板本体14、基体12は共に平板形状をしている。基板本体14の厚さは30μm以下である。基板本体14の一方の主面14aの上には所定の電極17A、17B、17Cが形成されている。本例では、いわゆるコプレーナ型(Coplanar waveguide:CPW電極)の電極配置を採用しているが、電極の配置形態は特に限定されない。例えばACPS(Asynmetric coplanar strip−line)タイプであってよい。本例では、隣接する電極の間に一対の光導波路15b、15cが形成されており,各光導波路15b、15cに対して略水平方向に信号電圧を印加するようになっている。この光導波路は、平面的に見るといわゆるマッハツェンダー型の光導波路を構成しているが、この平面的パターンそれ自体は周知である(後述)。基板本体14の他方の主面14dと保持基体12の接着面12aとの間に、厚さが略一定の接着層13が介在し、基板本体14と保持基体12とを接着している。
本光導波路デバイス11においては、厚さ30μm以下の平板状の基板本体を使用し、接着層によって保持基体と基板本体とを接着し、かつ保持基体の接着面12aを略平坦面とした。これによって接着層13の厚さが略一定となり、光導波路基板29において応力集中個所がなくなるため、応力が分散され、光導波路基板29に加わる最大応力を低減できる。更に、基板本体4を厚さ30μm以下に薄型加工する際に、平面研磨を使用することができるため、適切な方法により加工ダメージを飛躍的に除去でき、同時に破壊強度の劣化を防止することが可能である。
本発明において、基板本体14は厚さ30μm以下の平板からなる。ここで言う平板とは、主面14dに凹部や溝が形成されていない平板を意味しており、つまり他方の主面14d(接着面)は略平坦である。ただし、主面14dが略平坦であるとは、加工に伴い表面に残留する表面粗さは許容する趣旨であり、また、加工に伴う湾曲や反りも許容する趣旨である。
本発明においては、基板本体14の一方の主面14a側に光導波路15b、15cを設ける。光導波路は、基板本体の一方の主面に直接形成されたリッジ型の光導波路であってよく、基板本体の一方の主面の上に他の層を介して形成されたリッジ型の光導波路であってよく、また基板本体の内部に内拡散法やイオン交換法によって形成された光導波路、例えばチタン拡散光導波路、プロトン交換光導波路であってよい。具体的には、光導波路が、主面14aから突出するリッジ型光導波路であってよい。リッジ型の光導波路は、レーザー加工、機械加工によって形成可能である。あるいは、高屈折率膜を基板本体14上に形成し、この高屈折率膜を機械加工やレーザーアブレーション加工することによって、リッジ型の三次元光導波路を形成できる。高屈折率膜は、例えば化学的気相成長法、物理的気相成長法、有機金属化学的気相成長法、スパッタリング法、液相エピタキシャル法によって形成できる。
光導波路基板を構成する基板本体は、強誘電性の電気光学材料、好ましくは単結晶からなる。こうした結晶は、光の変調が可能であれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、ニオブ酸カリウムリチウム、KTP、GaAs及び水晶などを例示することができる。ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶が、特に好ましい。
基板本体においては、特に好ましくは結晶の分極軸が基板の一方の主面(表面)と略水平である。この場合には、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶からなるX板あるいはY板が好ましい。図6〜図10には、本発明をX板あるいはY板に適用した例について示した。
また、他の好適な実施形態においては、結晶の分極軸が基板の一方の主面(表面)と略垂直である。この場合には、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶からなるZ板が好ましい。Z板を使用した場合には、光導波路は電極の直下に設ける必要があり、光の伝搬損失を低減するために、基板の表面と電極との間にはバッファ層を設けることが好ましい。
本発明においては、保持基体における熱膨張係数の最小値が光導波路基板における熱膨張係数の最小値の1/5倍以上であり、かつ保持基体における熱膨張係数の最大値が光導波路基板における熱膨張係数の最大値の5倍以下である。
ここで、基板本体、保持基体をそれぞれ構成する各電気光学材料に熱膨張係数の異方性がない場合には、基板本体、保持基体において最小の熱膨張係数と最大の熱膨張係数とは一致する。基板本体、保持基体を構成する各電気光学材料に熱膨張係数の異方性がある場合には、各軸ごとに熱膨張係数が変化する場合がある。例えば、基板本体を構成する各電気光学材料がニオブ酸リチウムである場合には、X軸方向、Y軸方向の熱膨張係数が16×10−6/℃であり、これが最大値となる。Z軸方向の熱膨張係数が5×10−6/℃であり、これが最小値となる。従って、保持基体の熱膨張係数の最小値は1×10−6/℃以上とし、保持基体の熱膨張係数の最大値は80×10−6/℃以下とする。なお、例えば石英ガラスの熱膨張係数は0.5×10−6/℃であり、例えば1×10−6/℃未満である。
本発明の作用効果の観点からは、保持基体の熱膨張係数の最小値を、基板本体における熱膨張係数の最小値の1/2倍以上とすることが更に好ましい。また、保持基体の熱膨張係数の最大値を、光導波路基板の基板本体の熱膨張係数の最大値の2倍以下とすることが更に好ましい。
保持基体の具体的材質は、上記の条件を満足する限り、特に限定されない。基板本体にニオブ酸リチウム単結晶を使用する場合には、保持基体は、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、ニオブ酸カリウムリチウムなどを例示することができる。この場合、熱膨張差の観点では、基板本体と同じニオブ酸リチウム単結晶が特に好ましい。
電極は、基板本体の一方の主面側に設けられているが、基板本体の一方の主面に直接形成されていてよく、低誘電率層ないしバッファ層の上に形成されていてよい。低誘電率層は、酸化シリコン、弗化マグネシウム、窒化珪素、及びアルミナなどの公知の材料を使用することができる。ここで言う低誘電率層とは、基板本体を構成する材質の誘電率よりも低い誘電率を有する材料からなる層を言い、光とマイクロ波の速度整合条件を満たすという観点では誘電率が低い材料ほど好ましい。この低誘電率層がない場合には、基板本体の厚さは20μm以下であることが更に好ましい。
好適な実施形態においては、保持基体12の接着面12aが略平坦である。ただし、接着面12aが略平坦であるとは、加工に伴い表面に残留する表面粗さは許容する趣旨であり、また、加工に伴う湾曲や反りも許容する趣旨である。
本発明の観点からは、接着層13の厚さT1は1000μm以下であることが好ましく、300μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが最も好ましい。また、接着層13の厚さT1の下限は特にないが、マイクロ波実効屈折率の低減という観点からは、10μm以上であってもよい。
さらに、速度整合の観点からは、接着層は基板本体である電気光学材料の誘電率よりも低い必要があり、誘電率5以下が好ましい。
図7は、本発明の他の実施形態に係る光導波路デバイス11Aを概略的に示す断面図である。図7においては、進行波形光変調器における光の進行方向に対して略垂直な横断面を示す。
光変調器11Aは、光導波路基板29と保持基体32とを備えている。基板本体14は平板形状をしており、基板本体14の厚さは30μm以下である。光導波路基板29の構成は、図6に示した光導波路基板29の構成と同様である。基板本体32の接着面32a側には少なくとも電極との相互作用部に凹部ないし溝32bが形成されている。溝32bは、光の進行方向(紙面に垂直な方向)へと向かって延びている。
本例においては、基板本体14の他方の主面14dと保持基体32の接着面32aとの間に接着層33が介在し、基板本体14と保持基体32とを接着している。これと共に、光導波路15b、15cの形成領域においては、主面14d下に溝32bが形成されており、溝32b内には、接着剤からなる低誘電率部分36が充填されている。
本光導波路デバイス11Aにおいては、厚さ30μm以下の平板状の基板本体14を使用し、接着層33によって保持基体32と基板本体14とを接着し、かつ接着層33の厚さT1を200μm以下とした。これによって光導波路基板29において応力の分散が促進され、光導波路基板29に加わる最大応力を低減できる。
ただし、本実施形態においては、接着層33の厚さT1に比べて、接着剤からなる低誘電率部分36の厚さT2が大きくなっており、このために接着剤の厚さに(T2−T1)の段差が生ずる。このため、接着層の厚さが全体に略一定の場合とは異なり、段差の周辺において基板本体14へと応力の集中が生じ易い形態になる。このような応力集中によるDCドリフトや温度ドリフトを低減するためには、接着層33の厚さT1を200μm以下とすることが好ましい。この観点からは、接着層33の厚さT1は200μm以下であることが必要であるが、150μm以下であることが更に好ましく、110μm以下であることが最も好ましい。また、接着層33の厚さT1の下限は特にないが、基板本体14に加わる応力を低減するという観点からは、0.1μm以上であってもよい。
本発明においては、接着層が、光導波路の形成領域において他方の主面と保持基体とを接着していてよい。例えば図6、図7の光導波路デバイス11、11Aはこの実施形態に係るものである。この場合には、図6に示すように、接着層の厚さが略一定であることが特に好ましい。ただし、接着層の厚さが略一定とは、製造上の誤差は許容する趣旨である。
また、本発明においては、光導波路の形成領域において他方の主面と保持基体との間に、基板本体を構成する電気光学材料の誘電率よりも低い誘電率を有する低誘電率部分を設けることが好ましい。これによって、前述のような速度整合を実現することが容易になる。
低誘電率部分の種類は特に限定されない。好適な実施形態においては、低誘電率部分が空気層である。また、他の実施形態においては、低誘電率部分が接着剤からなる(図6、図7の例)。この場合には、前記電気光学材料の誘電率よりも低い誘電率を有する接着剤を使用する必要がある。
また、他の実施形態においては、低誘電率部分が、前記電気光学材料の誘電率よりも低い誘電率を有する低誘電率材料からなっており、この低誘電率材料が接着剤に属していない。
図8は、光導波路デバイス11Bを概略的に示す断面図である。光変調器11Bは、光導波路基板29と保持基体32とを備えている。基板本体14は平板形状をしており、基板本体14の厚さは30μm以下である。基板本体32の接着面32a側には凹部ないし溝32bが図7と同様に形成されている。溝32bは、光の進行方向(紙面に垂直な方向)へと向かって延びている。
本例においては、基板本体14の他方の主面14dと保持基体32の接着面32aとの間に接着層43A、43Bが介在し、基板本体14と保持基体32とを接着している。これと共に、光導波路15b、15cの形成領域においては、主面14d下に溝32bが形成されており、低誘電率部分30が設けられている。本例の低誘電率部分30は、接着剤43A、43Bとは異質の低誘電率材料からなる。
図9は、光導波路デバイス11Cを概略的に示す断面図である。光変調器11Cは、光導波路基板29と保持基体12とを備えている。基板本体14は平板形状をしており、基板本体14の厚さは30μm以下である。保持基体12の接着面12aは略平坦である。
本例においては、基板本体14の他方の主面14dと保持基体12の接着面12aとの間に接着層43A、43Bが介在し、基板本体14と保持基体12とを接着している。これと共に、光導波路15b、15cの形成領域においては、主面14d下に空気層31が形成されている。空気層31は低誘電率部分として機能している。
図10は、光導波路デバイス11Dを概略的に示す断面図である。光変調器11Dは、光導波路基板29と保持基体32とを備えている。基板本体14は平板形状をしており、基板本体14の厚さは30μm以下である。基板本体32の接着面32a側には凹部ないし溝32bが形成されている。
本例においては、基板本体14の他方の主面14dと保持基体32の接着面32aとの間に接着層43A、43Bが介在し、基板本体14と保持基体32とを接着している。接着層43A、43Bの厚さT1は200μm以下である。これと共に、光導波路15b、15cの形成領域においては、主面14d下に空気層35が形成されている。空気層35は低誘電率部分として機能している。
速度整合の観点からは、低誘電率部分30、35、36の厚さT2は10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることが更に好ましい。光導波路基板への応力集中を抑制するという観点からは、低誘電率部分30、35、36の厚さT2は0.5μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることが更に好ましい。
本発明は、いわゆる独立変調型の進行波形光変調器に対しても適用できる。
電極は、低抵抗でインピーダンス特性に優れる材料であれば特に限定されるものではなく、金、銀、銅などの材料から構成することができる。
接着剤の具体例は、前記の条件を満足する限り特に限定されないが、エポキシ系接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化性接着剤、ニオブ酸リチウムなどの電気光学効果を有する材料と比較的近い熱膨張係数を有するアロンセラミックスC(商品名、東亜合成社製)(熱膨張係数13×10−6/K)を例示できる。
また接着用ガラスとしては、低誘電率で接着温度(作業温度)が約600℃以下のものが好ましい。また、加工の際に十分な接着強度が得られるものが好ましい。具体的には、酸化珪素、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素等の組成を複数組み合わせた、いわゆるはんだガラスが好ましい。
また、基板本体14の裏面と保持基板との間に接着剤のシートを介在させ、接合することができる。好ましくは、熱硬化性、光硬化性あるいは光増粘性の樹脂接着剤からなるシートを、基板本体4の裏面と保持基板との間に介在させ、シートを硬化させる。
X−カットのニオブ酸リチウム基板上にTi拡散導波路およびCPW電極を形成した(図1、図2参照)。中心電極1Bと接地電極1A、1Cとのギャップを25μmとし、中心電極1Bの幅を30μmとし、各電極の厚みを28μmとし、電極長を32mmとした。光導波路間のアーム間距離Lは55μmとした。次に薄型研磨を行い、低誘電率層と支持基板(Xカットのニオブ酸リチウム基板)からなる薄型変調器を作製した。変調器基板5の厚みは8.5μmであり、低誘電率層6は誘電率3.8、厚み50μmとした。その後、光ファイバの接続部を端面研磨し、ダイシングにてチップ切断した。上記変調器チップは、光ファイバと光軸調整し、UV硬化樹脂にて接着固定した。デバイス作製後に測定した光導波路2の凸部6の高さHおよび幅Wは、表1に示すように変更した。また、表1には積H×Wの値も示す。得られた各デバイスについて、モード観察を行った。この結果を表1に示す。
また、電気光学結晶基板の厚さを1mmと厚くした場合について、前記と同様に、光導波路の隆起の高さHおよび幅Wを、表2に示すように変更し、モード観察を行った。この結果を表2に示す。
表1、表2を比較すると分かるように、電気光学結晶基板の厚さが大きい場合(表2)にはシングルモードであるような寸法条件下においても、表1においては広範囲にわたってマルチモード化していることが分かった。
また、基板厚みが1mmの場合には、光導波路の隆起の高さHが1000Å以下においては、光導波路幅6μm以下では、光導波路がカットオフとなり光が導波することができなかった。しかし、基板厚みを30μm以下にすることで、光導波路幅6μm以下、例えば3μmでも光がシングルモード(単一モード)で導波するようになることも分かった。そして、このように光がシングルモードで伝搬するような条件を満足することによって、印加電圧の動作点の変動や波長による消光比の変動を抑制できる。
そして、電気光学結晶基板の厚さ30μm以下の薄型変調器においては、H×Wを7150オングストローム・μm以下とすることが、シングルモードを得る上で必要であることが分かった。
[実施例2]
実施例1において、光導波路間のアーム間距離Lを55μmとし、光導波路2の凸部6の高さHを860オングストロームとし、幅Wを6μmとし、両者の積を5160オングストローム・μmとした。
デバイスについて、S21を測定したところ、50GHz以下の波長範囲においてリップルがなく、スムーズなカーブを示し、30GHzを超えてから初めて−6dB低下した。また、S11は、測定周波数である50GHzまで、−10dB以下であった。さらに、光学特性として、モード観察を行った結果、シングルモードであり、消光比は1530nmから1610nmで20dB以上であり、消光カーブの電圧依存性は小さく±5%以下であった。
本例での消光比と印加電圧との関係を図12に示す。各ピークの高さがほぼ一定であり、また消光比曲線のピークおよび谷の位置が一定している。
また、消光比凹凸の波長依存性を図14に示す。ここで言う「ON光強度」(ΔP)は以下のようにして測定する。すなわち、図15において、隣接する3つのピークP1、P2、P3の各高さを測定し、印加電圧が0Vに近いP2に対し、隣接するP1とP3の比、例えば(P1−P2)×100/P2(%)として算出する。この結果、図14に示すようにON光強度の波長依存性は±5%以下と小さい。
[実施例3]
実施例1において、中心電極1Bと接地電極1A、1Cとのギャップを40μmとし、中心電極1Bの幅を30μmとし、各電極の厚みを28μmとし、電極長を40mmとした。光導波路間のアーム間距離Lを70μmとし、光導波路2の凸部6の高さHを860オングストロームとし、幅Wを6μmとし、両者の積を5160オングストローム・μmとした。
デバイスについて、S21を測定したところ、50GHz以下の波長範囲においてリップルがなく、スムーズなカーブを示し、25GHzを超えてから初めて−6dB低下した。また、S11は、測定周波数である50GHzまで、−10dB以下であった。さらに、光学特性として、モード観察を行った結果、シングルモードであり、消光比は1530nmから1610nmで20dB以上であり、消光カーブの電圧依存性は小さく±5%以下であった。
[実施例4]
実施例2と同様にして薄型変調器を作製した。ただし、光導波路間のアーム間距離は55μmとした。光導波路2の凸部6の幅Wを6μmとし、高さHを1150オングストロームとし、両者の積を6900オングストローム・μmとした。デバイスについて、S21を測定したところ、50GHz以下の波長範囲においてリップルがなく、スムーズなカーブを示し、30GHzを超えてから初めて−6dB低下した。また、S11は、測定周波数である50GHzまで、−10dB以下であった。さらに、光学特性として、モード観察を行った結果、シングルモードであり、消光比は1530nmから1610nmで20dB以上であった。しかし、消光カーブの電圧依存性は大きく、±5%以上になった。
[実施例5]
実施例2と同様にして薄型変調器を作製した。ただし、中心電極を20μmとし光導波路間のアーム間距離は45μmと小さくした。光導波路2の凸部6の高さHを860オングストロームとし、幅Wを6μmとし、両者の積を6900オングストローム・μmとした。デバイスについて、S21を測定したところ、50GHz以下の波長範囲においてリップルがなく、スムーズなカーブを示し、30GHzを超えてから初めて−6dB低下した。また、S11は測定周波数である50GHzまで、−10dB以下であった。さらに、光学特性として、モード観察を行った結果、シングルモードであった。消光比は1530nmから1610nmの間で20dB未満にまで低下することがあり、消光カーブの電圧依存性は±5%以上になった。
[実施例6]
実施例2と同様にして薄型変調器を作製した。実施例5と同様に、中心電極を20μmとし光導波路間のアーム間距離は45μmと小さくした。光導波路2の凸部6の高さHを860オングストロームとし、幅Wを6μmとし、両者の積を6900オングストローム・μmとした。次に図3に示すように、中心電極1Bの直下の部分全長にわたって変調器基板5の裏面5bから幅20μm、深さ3μmの溝5cを形成した。溝加工にはエキシマレーザを使用した。デバイスについて、S21を測定したところ、50GHz以下の波長範囲においてリップルがなく、スムーズなカーブを示し、30GHzを超えてから初めて−6dB低下した。また、S11は測定周波数である50GHzまで、−10dB以下であった。さらに、光学特性として、モード観察を行った結果、シングルモードであった。消光比は1530nmから1610nmの間で20dB以上になり、消光カーブの電圧依存性も±5%以下になった。
(比較例1)
実施例2と同様にして薄型変調器を作製した。ただし、光導波路間のアーム間距離は55μmとした。光導波路2の凸部6の幅Wを6.5μmとし、高さHを1150オングストロームとし、両者の積を7475オングストローム・μmとした。デバイスについて、S21を測定したところ、50GHz以下の波長範囲においてリップルがなく、スムーズなカーブを示し、30GHzを超えてから初めて−6dB低下した。また、S11は測定周波数である50GHzまで、−10dB以下であった。
さらに、光学特性として、モード観察を行った結果、マルチモードであり、消光比は1530nmから1610nmで20dB未満となることがあり、消光カーブの電圧依存性は大きく、±5%以上であった。
本例での消光比と印加電圧との関係を図11に示す。各ピークの高さが不揃いであり、消光比曲線のピークおよび谷の位置が一定していない。
また、消光比凹凸の波長依存性を図13に示す。この結果、ON光強度の波長依存性は大きく、±15%にのぼる。
[実施例7]
実施例2と同様にしてデバイスを作製した。ただし、凸部の高さを860オングストロームとし、幅を5μmとし、両者の積を4300オングストローム・μmとした。そして、導波路アーム間距離(分岐部2bと2cとの間隔L)を、図16、図17に示すように変更した。そして、消光比のLに対する依存性を図16に示し、ΔPのLに対する依存性を図17に示した。この結果から分かるように、アーム間距離Lを46μm以上とすることによって、広い波長範囲にわたって消光比は20dB以上となり、またΔPを±5%以下に制御できた。この観点からは、Lは50μm以上であることが一層好ましい。
[実施例8]
実施例2と同様にしてデバイスを作製した。ただし、凸部の高さを1150オングストロームとし、幅を5μmとし、両者の積を5750オングストローム・μmとした。そして、導波路アーム間距離(分岐部2bと2cとの間隔L)を、図18、図19に示すように変更した。そして、消光比のLに対する依存性を図18に示し、ΔPのLに対する依存性を図19に示した。この結果から分かるように、アーム間距離Lを46μm以上とすることによって、広い波長範囲にわたって消光比は20dB以上となる。また本例では、ΔPを±5%以下に低減することはできなかった。
[実施例9:図6のデバイス11]
図6の光変調器11を製造する。具体的には、Xカットした3インチウエハー(LiNbO3単結晶)からなる基板を使用し、チタン拡散プロセスとフォトリソグラフィー法とによって、ウエハーの表面にマッハツェンダー型の光導波路15b、15cを形成する。光導波路のサイズは、例えば1/e2で10μmとできる。次いで、メッキプロセスにより、CPW電極を形成する。中心電極17Bと接地電極17A、17Cとのギャップを40μmとし、電極厚みを28μmとし、電極長を40mmとした。次に薄型研磨のために研磨定盤に研磨ダミー基板を貼り付け、その上に変調器基板を電極面を下にして熱可塑性樹脂で貼り付ける。さらに、横型研磨およびポリッシング(CMP)にて10μm厚みまで基板本体14を薄型加工する。その後、平板状の保持基体12を基板本体14に接着固定し、光ファイバの接続部を端面研磨し、ダイシングにてチップ切断する。接着固定用の樹脂は、樹脂厚50μmのエポキシ樹脂フィルムを使用した。チップの幅および補強基板を含めたトータルの厚みは、それぞれ4.4mmと1mmとした。入力側には1.55μm帯パンダファイバを保持した単芯ファイバーアレイを、出力側にはシングルモードファイバを保持した単芯ファイバアレイを進行波形光変調器チップ11に結合し、光ファイバーと光導波路とを調芯し、紫外線硬化型樹脂によって接着する。
本例においては、Xカットした3インチウエハー(LiNbO3単結晶)からなる基板を使用した。このX軸方向、Y軸方向の熱膨張係数が16×10−6/℃であり、Z軸方向の熱膨張係数が5×10−6/℃である。保持基体2の材質は、Xカットしたニオブ酸リチウム単結晶とした。
1KHzの信号に対する消光比カーブを図20に示す。この結果から分かるように、光パワーにヒステリシスが現れなかった。また、100℃にてDCドリフト特性を評価した結果、DCバイアスのシフト量は初期印加電圧に対し50%以内の変動であった。
[実施例10:図9のデバイス11C]
図9のデバイス11Cを製造した。具体的には、実施例9と同様にして光導波路基板29を製造した。基板本体14の厚さtは12μmとした。ただし、図9に示すように空気層31を設けた。本例においては、XカットしたLiNbO3単結晶からなる基板本体を使用した。保持基体12の材質は、Xカットしたニオブ酸リチウム単結晶とした。
1KHzの信号に対する消光比カーブはヒステリシスが現れなかった。また、100℃にてDCドリフト特性を評価した結果、DCバイアスのシフト量は初期印加電圧に対し50%以内の変動であった。
[実施例11:図7のデバイス11A]
図7のデバイス11Aを製造した。具体的には、実施例9と同様にして光導波路基板29を製造した。その後、幅0.3mmおよび深さ0.2mmの溝32bが形成されている保持基体32に光導波路基板29を接着固定し、光ファイバの接続部を端面研磨し、ダイシングにてチップ化切断した。この際、保持基体32の溝32b内には接着樹脂36を充填した。従って、T1は50μmであり、T2は250μmである。本例においては、XカットしたLiNbO3単結晶からなる基板本体を使用した。保持基体12の材質は、Xカットしたニオブ酸リチウム単結晶とした。
1KHzの信号に対する消光比カーブはヒステリシスが現れなかった。また、100℃にてDCドリフト特性を評価した結果、DCバイアスのシフト量は初期印加電圧に対し50%以内の変動であった。
[実施例12:図10のデバイス11D]
図10のデバイス11Dを製造した。具体的には、実施例1と同様にして光導波路基板29を製造した。基板本体14の厚さは12μmとした。その後、幅0.3mmおよび深さ0.2mmの溝32bが形成されている保持基体32に光導波路基板29を接着固定し、光ファイバの接続部を端面研磨し、ダイシングにてチップ化切断した。この際、保持基体32の溝32b内は空気層35とした。T1は50μmであり、T2は250μmである。本例においては、XカットしたLiNbO3単結晶からなる基板本体を使用した。保持基体12の材質は、Xカットしたニオブ酸リチウム単結晶とした。
1KHzの信号に対する消光比カーブはヒステリシスが現れなかった。また、100℃にてDCドリフト特性を評価した結果、DCバイアスのシフト量は初期印加電圧に対し50%以内の変動であった。
[実施例13:図6のデバイス11]
図6と同様な構造において、保持基板12の材質をタンタル酸リチウム単結晶とした。本例においては、Xカットした3インチウエハー(LiNbO3単結晶)からなる基板を使用した。このX軸方向、Y軸方向の熱膨張係数が16×10−6/℃であり、Z軸方向の熱膨張係数が5×10−6/℃である。保持基体2を構成するタンタル酸リチウム単結晶のX軸方向、Y軸方向の熱膨張係数は、15×10−6/℃であり、Z軸方向の熱膨張係数が1.2×10−6/℃である。
1KHzの信号に対する消光比カーブはヒステリシスが現れなかった。また、100℃にてDCドリフト特性を評価した結果、DCバイアスのシフト量は初期印加電圧に対し50%以内の変動であった。
(比較例2 :図6のデバイス11)
本例においては、Xカットした3インチウエハー(LiNbO3単結晶)からなる基板を使用した。このX軸方向、Y軸方向の熱膨張係数が16×10−6/℃であり、Z軸方向の熱膨張係数が5×10−6/℃である。保持基体2の材質は石英ガラスとした。石英ガラスの熱膨張係数は、50×10−6/℃である。
この結果、1KHzの信号に対する消光比カーブはヒステリシスが現れた(図21参照)。また、100℃にてDCドリフト特性を評価した結果、DCバイアスのシフト量は初期印加電圧に対し50%以上の変動であった。
第二の態様に係る発明によれば、光導波路デバイスにおいて、信号電圧を印加したときの光パワーにおけるヒステリシス現象を防止し、かつ長期DCドリフトを抑制することができる。
Claims (18)
- 電気光学結晶基板、光導波路および変調電極を備えており、少なくとも前記変調電極による電界印加領域における前記電気光学結晶基板の厚みが30μm以下であり、前記光導波路形成時に生ずる凸部の高さH(オングストローム)と凸部の幅W(μm)との積(H・W)が7150オングストローム・μm以下であることを特徴とする、光導波路デバイス。
- 前記凸部の高さHが1100オングストローム以下であり、前記凸部の幅Wが6.5μm以下であることを特徴とする、請求項1記載の光導波路デバイス。
- 電気光学結晶基板、光導波路および変調電極を備えており、少なくとも前記変調電極による電界印加領域における前記電気光学結晶基板の厚みが30μm以下であり、少なくとも前記光導波路の出口部の少なくとも水平方向が単一モード化していることを特徴とする、光導波路デバイス。
- 前記電界印加領域において前記光導波路が分岐部を有しており、前記分岐部における前記光導波路の間隔が46μm以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の光導波路デバイス。
- 前記電界印加領域において前記光導波路が分岐部を有しており、前記分岐部間で前記電気光学結晶基板に溝が形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の光導波路デバイス。
- 電気光学結晶基板、光導波路および変調電極を備えており、前記変調電極による電界印加領域において前記光導波路が分岐部を有しており、前記分岐部間で前記電気光学結晶基板に溝が形成されていることを特徴とする、光導波路デバイス。
- 前記電気光学結晶基板を保持する保持基体、および前記電気光学結晶基板と前記保持基体とを接着する接着層を備えており、前記保持基体における熱膨張係数の最小値が、前記電気光学結晶基板における熱膨張係数の最小値の1/5倍以上であり、かつ前記保持基体における熱膨張係数の最大値が前記電気光学結晶基板における熱膨張係数の最大値の5倍以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の光導波路デバイス。
- 前記保持基体が、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体およびニオブ酸カリウムリチウムからなる群より選ばれた一種以上の材質からなることを特徴とする、請求項7記載の光導波路デバイス。
- 前記保持基体がニオブ酸リチウム単結晶からなることを特徴とする、請求項8記載の光導波路デバイス。
- 光導波路基板、この光導波路基板を保持する保持基体、および前記光導波路基板と前記保持基体とを接着する接着層を備えている光導波路デバイスであって、
前記光導波路基板が、電気光学材料からなり、相対向する一方の主面と他方の主面とを備えている厚さ30μm以下の平板状の基板本体、この基板本体に設けられている光導波路、および前記基板本体に設けられた電極を備えており、前記接着層によって前記保持基体と前記基板本体の前記他方の主面とが接着されており、前記保持基体における熱膨張係数の最小値が、前記基板本体における熱膨張係数の最小値の1/5倍以上であり、かつ前記保持基体における熱膨張係数の最大値が前記基板本体における熱膨張係数の最大値の5倍以下であることを特徴とする、光導波路デバイス。 - 前記保持基体の接着面が略平坦であり、前記接着層が前記電気光学材料の誘電率よりも低い誘電率を有することを特徴とする、請求項10記載の光導波路デバイス。
- 前記接着層の厚さが200μm以下であることを特徴とする、請求項10または11記載の光導波路デバイス。
- 前記接着層が、前記光導波路の形成領域において前記他方の主面と前記保持基体とを接着することを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一つの請求項に記載の光導波路デバイス。
- 前記接着層の厚さが略一定であることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一つの請求項に記載の光導波路デバイス。
- 前記光導波路の形成領域において前記他方の主面と前記保持基体との間に、前記電気光学材料の誘電率よりも低い誘電率を有する低誘電率部分が設けられていることを特徴とする、請求項10〜14のいずれか一つの請求項に記載の光導波路デバイス。
- 前記保持基体が電気光学材料からなることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか一つの請求項に記載の光導波路デバイス。
- 前記保持基体が、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体およびニオブ酸カリウムリチウムからなる群より選ばれた一種以上の材質からなることを特徴とする、請求項16記載の光導波路デバイス。
- 請求項10〜17のいずれか一つの請求項に記載の光導波路デバイスを備えている進行波形光変調器であって、前記光導波路中を伝搬する光を変調するための電圧を前記電極によって印加することを特徴とする、進行波形光変調器。
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