JPWO2004083476A1 - 高圧水素ガス用ステンレス鋼、その鋼からなる容器および機器 - Google Patents
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Abstract
Description
現在、燃料電池自動車に関しては、燃料の水素をどのように生成させ、かつ貯蔵するかが実用化への最大の課題となっており、種々の研究開発が進められている。
代表的な方法としては、水素ガスボンベを搭載する方法、メタノールやガソリンを車載の改質器で改質して水素を得る方法、および水素を吸収させた水素吸蔵合金を搭載する方法等がある。
これらの方法にはそれぞれ一長一短があるが、我が国においては平成14年(2002年)12月に水素ガスボンベを搭載した燃料電池自動車が世界に先駆けて市販され、国土交通省などの公用車として既に数台が使用されている。
しかしながら、現状の燃料電池自動車は、最高速度が約150km/h、出力が約100馬力で自家用車としてはガソリン自動車に近い性能を実現できているものの、ボンベサイズの制約から航続距離が高々300kmであり、これが普及の障害になっている。
改質器を搭載してメタノールやガソリンを燃料として用いる方法には、メタノールが毒性を有すること、また、ガソリンでは脱硫の必要性があるなどの問題に加えて、現状では高価な触媒を必要とする上に改質効率が不十分なため、コストがかかる割にはCO2の排出削減効果が十分期待できないなどの問題が残っている。
水素吸蔵合金を用いる方法には、水素吸蔵合金が極めて高価な上に、燃料の充填に相当する水素の吸収に長時間を要することや、水素の吸収−放出を繰り返すことで水素吸蔵合金の性能が劣化していくなどの技術的問題もあり、実用化までには未だ時間を要すると考えられている。
以上のような背景から、我が国においては高圧ガスボンベを搭載した燃料電池自動車の改良と低コスト化によって、次世代のクリーン自動車の普及を促進すべく、種々の研究開発が加速されているが、そのためには以下のような課題を克服する必要がある。
即ち、航続距離の延長、普及に必要な水素ステーション等の設備環境の整備、および水素に関する安全性向上技術の開発などである。
航続距離を、例えば500kmにまで延長するためには、車載ボンベに収容する水素ガスの圧力を現状の35MPaから70MPaへ高圧化することが必要であると試算されている。また、既存のガソリンスタンドに代わる水素ガスステーションが必要になるが、ここでは高圧水素ガスの生成、輸送および貯蔵と迅速な充填(車への供給)が必要になる。
また、水素ガスは可燃性のため、その取り扱いには細心の注意を要するが、特に50MPaを超える超高圧水素ガスと構造機器部材との相互作用については不明な点も多く、機器の安全利用技術の確立が強く望まれている。
平成14年(2002年)に市販された燃料電池自動車の高圧水素ガス機器には、現在その健全性が広く認知されている既存のオーステナイト系ステンレス鋼(JIS SUS 316系材料)が使用されている。これは、35MPa程度までの水素ガス環境下では、耐水素脆化感受性が他の構造用鋼、例えば、JISのSTS 480のような炭素鋼やSUS 304系のステンレス鋼に比較して良好であることと、加工性、溶接性などに優れ、利用技術が確立しているためである。
ところが、このSUS 316をガス圧を35MPaから70MPaに高めた高圧水素ガス配管用に使用するためには、例えば、従来の外径26.2mm、内径20mm(管肉厚3.1mm)の配管を、外径34.7mm、内径20mm(管肉厚7.35mm)としなければならない。即ち、管の肉厚は2倍以上、重量では3倍にもならないと強度的には耐えられない。従って、車載重量の大幅増や、ガスステーションの大型化が避けられず、実用上の重大な障害になってくる。
オーステナイト系ステンレス鋼は、冷間加工によって強度が上昇することが知られており、引抜き、抽伸および圧延等の冷間加工によって高強度化して管肉厚の増大を避けることが可能である。
しかしながら、これらの冷間加工によって強化された場合には、高強度は得られるものの、延性および靱性の低下が著しく、また、加工に起因する異方性が問題となる。これらに加えて、冷間加工されたオーステナイト系ステンレス鋼は、高圧水素ガス環境下での水素脆化感受性が著しく増大することが明らかとなり、高圧水素ガスの取り扱い上の安全性を考慮すると、冷間加工による管の高強度化は、採用できないことが判明した。
オーステナイト系ステンレス鋼の強化方法としては、特開平5−65601号公報および特開平7−188863号公報によって、窒素(N)を多量に固溶させる、いわゆる固溶強化法が知られている。また、特開平5−98391号公報では、炭化物や窒化物を析出させる析出強化法が提案されている。しかし、これらの従来技術による強化法では延性および靱性の低下が不可避で、特に靱性の異方性が増大して、高圧水素ガス環境下での使用においては、冷間加工の場合と同様な問題を引き起こしかねない。
さらに、特開平6−128699号公報および特開平7−26350号公報では、N(窒素)を多量に添加して耐食性向上を狙ったステンレス鋼も提案されている。しかし、これも高圧水素ガス環境に対応できる特性は兼ね備えておらず、上記と同様の理由により安全性の確保が容易でない。
水素ガススタンドは、海浜地帯に設置されることがある。また、自動車も走行や保管の際には塩分を含む環境に曝されることがある。従って、水素ガスの貯蔵容器等の材料には、塩素イオンに起因する応力腐食割れの懸念がないことも要求される。
ステンレス鋼の耐応力腐食割れ性を改善する手段の一つは、Cr含有量を高めることである。しかし、単にCr含有量を高めるだけでは、Cr窒化物やシグマ相の多量析出を招き、高圧水素ガス用の鋼材に要求される特性を持ち得ない。
高圧水素用の容器や配管およびこれらに付属する機器は、溶接して使用されることが多い。その溶接継手においても、次のような問題がある。即ち、継手の溶接金属では溶融凝固により、また溶接熱影響部では溶接熱サイクルにより、それぞれ強度低下が起きる。溶接熱影響部の強度低下は、溶接後に適当な熱処理を施すことによって防止できる。しかし、溶接金属は粗大な凝固組織であるため、単なる溶接後熱処理だけでは強度の改善はできない。
本発明の第2の目的は、上記のステンレス鋼で製造された高圧水素ガス用の容器、配管およびその他の機器を提供することである。
本発明の第3の目的は、優れた特性を持つ溶接継手を含む上記の容器、配管およびその他の機器を提供することである。
まず、本発明の基礎となった知見について述べる。
本発明者らは、種々の材料について、高圧水素ガス環境下での機械的性質と耐食性に及ぼす材料の化学組成および金属組織(ミクロ組織)との関係について検討した。特に、塩素イオンを含む環境下での耐応力腐食割れ性の改善を意図して、22%以上のCrを含有するオーステナイト系ステンレス鋼について検討した。その結果、次のような新しい知見を得た。
1)従来のCr含有量が22%を超えるオーステナイト系ステンレス鋼では、CrN、Cr2Nが析出し、またシグマ相が多量に析出して延性および靱性の著しい低下を来していた。しかし、このような鋼であっても、Mn、Ni、CrおよびNの適正バランスを保てば、良好な機械的性質と海浜地帯で問題になるような塩素イオンによる応力腐食割れに対して優れた耐性を有するに到る。
2)既存のオーステナイト系ステンレス鋼を高強度化するには、一般に知られるようにNによる固溶強化が最も有効である。N添加量の増加と共に強度は向上するが、延性および靱性が低下すると共に、その異方性が顕著となる。しかしながら、Mn、Cr、Ni、Cなどの構成元素の種類と含有量を適正に調整することによって、この延性および靱性の低下を抑制することができ、さらに異方性をも解消することができる。
2)既存のオーステナイト系ステンレス鋼に固溶限を超えるNを添加すると、CrN、Cr2NなどのCr窒化物が生成する。これらの窒化物は、微細に分散していれば、高強度化に寄与する。しかし、粗大な窒化物は、延性および靱性を劣化させるばかりでなく、水素脆化感受性を増大させる。
3)CrN、Cr2N等の窒化物の結晶構造が六方晶系で、オーステナイト母相との整合性が悪いため、容易に凝集粗大化するためである。ところが、Ni、Crなどの構成元素の種類および含有量を調整した鋼に、さらにVを添加すると、Cr窒化物にもVが含まれるようになる。そのような窒化物は、六方晶系のままであっても、オーステナイト母相との整合性が改善されて、粗大化し難くなる。また、Vを含むCr窒化物は、少なくとも一部が立方晶系の窒化物に変化する。この立方晶系窒化物は、母相との整合性が良好で、微細に分散析出させることが可能である。要するに、鋼中にVが含有されていれば、Cr窒化物は、六方晶系であっても微細に分散するようになり、更に一部が立方晶系になれば、微細分散が一層確かなものになる。
4)上記のCr窒化物の結晶構造に起因する分散状態の違いによって、オーステナイト系ステンレス鋼の強度、延性および靱性、さらには耐水素脆化感受性が著しく変化する。
5)一般に、オーステナイト系ステンレス鋼の結晶粒径を微細化すると耐力が増加するが、同時に延性も低下することが知られている。しかしながら、N添加とMn、Cr、NiおよびCなどの構成元素の種類および含有量を調整した鋼は、高強度で、しかも高延性の鋼となる。
6)母材では高MnにしてNの溶解度を高めたうえで適正量のVとNを含有させ、かつ適正な熱処理を施すことによって高強度が得られる。しかし、前記のとおり溶接継手の溶接金属は、粗大な凝固組織であるために、単に溶接後熱処理を施しても強度は改善されない。ところが、溶接金属のNieqとCreqとの関係を特定することにより、強度その他の機械的性質の改善と耐水素脆化特性の改善が可能になる。
本発明は、以上の知見を基にして完成されたもので、その要旨は下記(1)のステンレス鋼ならびに(2)および(3)の容器等にある。なお、以下の記述において、成分含有量の%は「質量%」を意味する。
(1)C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22%を超えて30%まで、Ni:17〜30%、V:0.001〜1.0%、N:0.10〜0.50%およびAl:0.10%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下、Ti、ZrおよびHfがそれぞれ0.01%以下であり、かつ、Cr、MnおよびNの含有量が下記の(1)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用ステンレス鋼。
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
但し、式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)である。
このステンレス鋼は、下記の第1群から第3群までの少なくとも1群から選んだ少なくとも1種の元素を含むことができる。
第1群元素…Mo:0.3〜3.0%、W:0.3〜6.0%、Nb:0.001〜0.20%およびTa:0.001〜0.40%。
第2群元素…B:0.0001〜0.020%、Cu:0.3〜5.0%およびCo:0.3〜10.0%。
第3群元素…Mg:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0001〜0.0050%、La:0.0001〜0.20%、Ce:0.0001〜0.20%、Y:0.0001〜0.40%、Sm:0.0001〜0.40%、Pr:0.0001〜0.40%およびNd:0.0001〜0.50%。
また、このステンレス鋼は、下記(a)〜(d)の組織状態であることが望ましい。
(a)オーステナイトの平均粒径が20μm以下であること、
(b)0.5μm以下の微細窒化物が0.01体積%以上分散析出していること、
(c)上記の0.5μm以下の微細窒化物が、その中にVを10質量%以上含有するものであること、
(d)上記の0.5μm以下の微細窒化物の結晶構造が面心立方晶であること。
(2)上記(1)のステンレス鋼からなる高圧水素ガス用の容器、配管およびそれらの付属機器。
ここで、容器とはボンベ、タンク等の貯蔵容器、配管とはこれらの容器の間または容器と他の機器とをつなぐ管であり、付属機器とはバルブ等の容器や配管に付属するものである。
(3)上記(1)のステンレス鋼で製作され、その溶接継手の溶接金属が、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22を超えて30%まで、Ni:8〜30%、V:0.001〜1.0%、Mo:0〜3.0%、W:0〜6.0%、N:0.1〜0.5%、Al:0.10%以下、Ti、Nb、Zr、HfおよびTa:それぞれ0〜0.01%であり、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下で、かつ、下記の(2)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用の容器、配管およびそれらの付属機器。
−11≦Nieq−1.1×Creq≦−8 ・・・・・・(2)
但し、Nieq=Ni+30×(C+N)−0.5×Mn ・・・・(3)
Creq=Cr+Mo+1.5×Si ・・・・・・・・・(4)
なお、上記(3)式および(4)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)である。
上記の溶接金属は、先に述べた第2群の元素および第3群の元素の中から選んだ少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。
図2は、本発明鋼のオーステナイト母相に析出した微細窒化物の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
図3は、本発明鋼の0.5μm以下の微細窒化物とその化学組成(組成はメタル成分の割合)を示すX線スペクトル図である。
図4は、本発明鋼、従来鋼および比較鋼のN含有量と、引張強度(TS)との関係を示す図である。
図5は、本発明鋼、従来鋼および比較鋼のN含有量と、延性(伸び)との関係を示す図である。
図6は、本発明鋼、従来鋼および比較鋼のN含有量と、靱性(シャルピー吸収エネルギー)との関係を示す図である。
図7は、本発明鋼と従来鋼および比較鋼のPmcn2(5Cr+3.4Mn−500N)と、引張強度(TS)との関係を示す図である。
図8は、本発明鋼と従来鋼および比較鋼のPmcn(5Cr+3.4Mn−500N)と、引張延性(伸び)との関係を示す図である。
図9は、本発明鋼と従来鋼および比較鋼の引張強度と、延性(伸び)との関係を示す図である。
図10は、本発明鋼と従来鋼の「1/(平均粒径)0.5」と耐力との関係を示す図である。
図11は、本発明鋼と従来鋼の「1/(平均粒径)0.5」と伸びとの関係を示す図である。
図12は、本発明鋼の0.5μm以下の微細窒化物の量(体積%)と、強度との関係を示す図である。
図13は、本発明鋼の0.5μm以下の微細窒化物中のV濃度(窒化物中のメタル組成;質量%)と、強度との関係を示す図である。
図14は、本発明鋼の窒化物の結晶構造と、靱性との関係を示す図である。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼を構成する成分の作用効果と含有量の限定理由について、以下に詳しく説明する。
C:0.02%以下、
本発明鋼では、高耐食性、特に優れた耐応力腐食割れ性を得るためにCr含有量を多くしている。このような高Cr鋼では、M23C6型炭化物(MはCr、Mo、Feなど)の生成傾向が大きく、靱性低下が起きやすい。この炭化物の析出を抑制するためには、Cは0.02%以下にする必要がある。なお、Cはできるだけ少ない方がよいが、極端なC含有量の低減は精錬コストの上昇を招くので、実用上、0.0001%以上であることが望ましい。
Si:1.0%以下
Siは、ある種の環境での耐食性向上に有効な元素として知られているが、多量に含有されるとNi、Crなどと金属間化合物を形成したり、シグマ相などの金属間化合物の生成を助長して、熱間加工性を著しく低下させる場合がある。そのため、Siの含有量は1.0%以下とした。さらに好ましいのは0.5%以下である。なお、Siは少ない方がよいが、精錬コストを考慮すれば、0.001%以上であることが望ましい。
Mn:3〜30%
Mnは、安価なオーステナイト安定化元素である。本発明鋼においてはCr、Ni、Nなどとの適正な組み合わせによって、高強度化と延性および靱性の向上に寄与する。そのため、Mnは3%以上含有させるが、30%を超えると熱間加工性や耐候性が低下する場合があるので、3〜30%が適正含有量である。なお、Mnの更に望ましい含有量は、5〜22%である。
Cr:22%を超えて30%まで
Crは、高圧水素ガス環境下における耐食性および塩素イオンを含む環境での耐応力腐食割れ性を向上させる元素として、必須の成分である。これらの効果を得るために22%を超える含有量が必要である。しかし、30%を超えると延性および靱性に有害なCrN、Cr2N等の窒化物やM23C6型炭化物が多量に生成しやくなる。従って、Crの適正含有量は、22%を超えて30%までである。
Ni:17〜30%
Niは、オーステナイト安定化元素として添加されるが、本発明鋼においてはCr、Mn、Nなどとの適正な組み合わせによって、高強度化と延性および靱性の向上に寄与する。特にCrおよびMnの含有量が多い場合は、Niを増やしてシグマ相の生成を抑える必要がある。そのため、Ni含有量は17%以上とするが、30%を超えると効果の増大は小さく、材料コストの上昇を招くので、17〜30%が適正含有量である。
V:0.001〜1.0%
Vは、本発明鋼にあっては六方晶系のCr窒化物の母相との整合性を改善してその粗大化を防止し、また、立方晶系のCr窒化物の生成を促進して、高強度化と延性および靱性の向上、ならびに耐水素脆化性の向上に大きく寄与する。そのためには0.001%以上の含有が必要である。一方、1.0%を超えても効果の増大は小さく材料コストを上昇させるので、上限は1.0%とする。なお、立方晶系のCr窒化物の生成量を増大させるために望ましいVの含有量は0.05〜1.0%であり、最も望ましいのは0.1〜1.0%である。
N:0.10〜0.50%
Nは、最も重要な固溶強化元素であり、Mn、Cr、Ni、Cなどの適正含有量範囲内において高強度化に寄与すると共に、シグマ相等の金属間化合物の生成を抑制して、靱性の向上にも寄与する。そのためには0.10%以上の含有が必要である。しかし、0.50%を超えると、CrN、Cr2N等の粗大な六方晶系の窒化物の生成が不可避となるので、適正含有量は0.10〜0.50%である。但し、本発明鋼においてはMn、CrおよびNのバランスが下記▲1▼式を満足するとき、高強度と高延性を最もよく両立させることができる。なお、(1)式中の元素記号は、それぞれの含有量(質量%)を意味する。
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
上記の(1)式のCr、Mnの係数はNの固溶限に及ぼすCrとMnの寄与率、およびシグマ相の生成傾向から得られたものである。
Al:0.10%以下
Alは、脱酸剤として重要な元素であるが、0.10%を超える多量の残留は、シグマ相等の金属間化合物生成を助長する。従って、本発明の意図する強度と靱性の両立に対しては望ましくない。なお、脱酸の効果を確実にするには0.001%以上の含有が望ましい。
本発明のステンレス鋼の一つは、以上に述べた成分の他、残部がFeと不純物からなるものである。なお、不純物中の特定の元素の規制については後述する。
本発明のステンレス鋼の他の一つは、次に述べる第1群から第3群までの少なくとも1群の中から選んだ少なくとも1種の元素を更に含むものである。
第1群に属する元素は、Mo、W、NbおよびTaである。これらは、立方晶系窒化物の生成と安定化を促すという共通の作用効果を有する。それぞれの含有量の限定理由は以下のとおりである。
Mo:0.3〜3.0%、W:0.3〜6.0%
MoおよびWは、立方晶系窒化物を安定にする作用を有し、また固溶強化元素でもあるから、必要に応じて一方または両方を添加する。それぞれ、0.3%以上でその効果がある。しかし、多量添加するとオーステナイトが不安定化するので、これらを添加する場合は、その含有量をそれぞれ0.3〜3.0%および0.3〜6.0%とするのがよい。
Nb:0.001〜0.20%、Ta:0.001〜0.40%
NbおよびTaも、Vと同様に立方晶系窒化物を形成するので、必要に応じて一方または両方を添加する。その効果はそれぞれ0.001%以上で顕著になる。しかしながら、多量添加するとオーステナイトが不安定化するため、これらを添加する場合、それぞれ0.20%以下、0.40%以下にとどめるのがよい。
第2群に属する元素は、B、CuおよびCoである。これらは本発明鋼の強度の向上に寄与する。それぞれの含有量の限定理由は次のとおりである。
B:0.0001〜0.020%
Bは、析出物の微細化とオーステナイト結晶粒径を微細化し、強度を上げるので、必要に応じて添加することができる。その効果は0.0001%以上で発揮される。一方、含有量が過多になると低融点の化合物を形成して熱間加工性を低下させる場合があるので、その上限を0.020%とする。
Cu:0.3〜5.0、Co:0.3〜10.0%
CuおよびCoは、オーステナイト安定化元素である。本発明鋼においてはMn、Ni、CrおよびCとの適正な組み合わせによって、より高強度化に寄与するため、一方または両方を必要に応じてそれぞれ0.3%以上含有させることができる。しかし、効果と材料コストとの兼ね合いから含有量の上限はそれぞれ5.0%および10.0%とする。
第3群に属するのは、Mg、Ca、La、Ce、Y、Sm、PrおよびNdである。これらの作用効果と含有量の限定理由は下記のとおりである。
MgとCaおよび遷移金属の中でLa、Ce、Y、Sm、PrおよびNdは、本発明鋼の成分範囲内では鋳造時の凝固割れを防止する働きと、長時間使用後の水素脆化による延性低下を低減する効果を有する。従って、必要に応じて1種以上を含有させてもよい。それぞれ、0.0001%以上で効果が発現する。但し、含有量が多すぎると、いずれも熱間加工性を低下させるので、上限はMgとCaでそれぞれ0.0050%、LaとCeでそれぞれ0.20%、Y、SmおよびPrでそれぞれ0.40%、Ndで0.50%とする。
次に不純物の規制について述べる。本発明のステンレス鋼では、不純物の中のP、S、Ti、ZrおよびHfをそれぞれ下記のように規制する。
P:0.030%以下、S:0.005%以下
PおよびSは、いずれも鋼の靱性等に悪影響を及ぼす元素である。従って、可及的に少ない方がよいが、それぞれ0.030%以下、0.005%以下であれば、本発明鋼の特性に顕著な劣化は認められない。
Ti、Zr、Hf:それぞれ0.01%以下
Ti、ZrおよびHfは、Vと同様に立方晶系窒化物を形成するが、Vに優先して高温域から窒化物を生成するため、V系窒化物の生成を阻害する。その上、Ti、ZrおよびHfの窒化物は、オーステナイト母相との整合性が良好でないため、それ自身凝集粗大化しやく、強度向上の効果が乏しい。そのため、本発明鋼ではこれらの含有量をそれぞれ0.01%以下に制限する。
5Cr+3.4Mn≦500N
Cr、MnおよびNの含有量が上記の式((1)式)を満たす必要があるのは、後述の図7および図8に示すとおり、式(1)が満たされるとき、即ち、Pmcn2≦0のとき、鋼の引張強度が高く、しかも伸びが大きくなるからである。なお、図7および図8の横軸のPmcn2は「5Cr+3.4Mn−500N」である。
本発明のステンレス鋼は、熱間加工のまま、または700〜1200℃で1回以上の熱処理を施して使用される。熱間加工の加熱温度や加工後の冷却条件次第で、熱間加工のままでも下記の望ましい組織状態が得られる。熱間加工後に、または熱間加工後さらに種々の加工を経た後、上記の熱処理を施せば、より確実に下記の望ましい組織状態になる。
本発明のオーステナイトステンレス鋼は、下記の組織状態であることが望ましい。
(a)オーステナイトの平均粒径が20μm以下であること:
一般に、結晶粒径が小さくなると強度、特に降伏強度(0.2%耐力)が上昇するが、逆に延性と靱性は低下する。しかし、後述の図10および図11に示すとおり、本発明鋼の成分範囲内ではオーステナイト粒径が20μm以下であれば、必要な伸びと靱性を確保した上で、高い強度を持たせることができる。なお、平均粒径とは、JIS G 0551に規定される粒度測定法によって得られる結晶粒径の平均値を意味する。
(b)0.5μm以下の微細窒化物が0.01体積%以上分散していること:
SUS310系の23〜25%のCrを含有する従来の高Crオーステナイト系ステンレス鋼にNを多量添加していくと、CrN,Cr2N等の窒化物が生成する。これらの窒化物は、0.5μm以下の微細な状態で析出している場合には、鋼の高強度化に寄与する。しかし、前記のように、単にNを多量添加しただけの鋼に生成するCr窒化物は、六方晶であるためにオーステナイト母相との整合性が良くないため、凝集粗大化しやすく、粗大化すると延性と靱性の低下原因となる。
上記の整合性とは、窒化物とオーステナイトとの結晶構造と格子定数の差に起因する両者のマッチング性であり、同一構造で同一格子定数のとき、最も整合性が良好となる。したがって、本発明鋼においては、窒化物を利用する場合には、0.5μm以下の微細な状態の窒化物を0.01体積%以上分散析出させるのが望ましい。
なお、ここで窒化物のサイズは、窒化物の切断面の形状を等価円に換算した場合の最大直径で評価する。
(c)0.5μm以下の微細窒化物が、その中にVを10質量%以上含有していること:
従来の高Crオーステナイト系ステンレス鋼にNを多量添加した場合には、通常、CrN,Cr2Nの窒化物が最も安定に存在するが、オーステナイト母相との整合性が良好でないため、凝集粗大化しやすい。ところが、その窒化物中にVが固溶していくと、たとえCr窒化物が六方晶系のままであっても、窒化物の格子定数が徐々に変化し、オーステナイト母相との整合性が改善され、強度および靱性の向上に寄与する。そのためには窒化物中にVが10質量%以上含有されているのが望ましい。
(d)0.5μm以下の微細窒化物の結晶構造が面心立方晶であること。
窒化物の結晶構造がオーステナイト母相と同じ面心立方晶である場合、窒化物はオーステナイト母相と整合析出し、凝集粗大化しにくくなる。そのため、Cr窒化物の少なくとも一部は、その結晶構造が面心立方晶であることが望ましい。
実施例にも示すとおり、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、高強度でありながら延性および靱性にも優れている。しかも、高圧水素環境下でも水素脆化感受性が小さい。従って、この鋼は高圧水素用の容器、配管およびこれらの付属機器の材料としてきわめて有用である。なお、高圧水素ガスとは、50MPa以上の圧力、特に70MPa以上の圧力の水素ガスを意味する。
2.本発明の容器等
本発明の容器等は、前記のステンレス鋼で作製された高圧水素ガス用の容器、配管およびこれらの付属機器である。その容器等が溶接継手を含む場合には、その溶接金属は、前記の化学組成を有することが望ましい。以下、溶接継手を特徴づける溶接金属の成分について説明する。
C:0.02%以下
Cが0.02%を超えると炭化物を形成して溶接金属の延性および靭性の低下が大きくなる。従って、Cは0.02%以下で少ないほど望ましい。
Si:1.0%以下
Siは、脱酸元素として必要な元素であるが、溶接金属では金属間化合物を生じて靭性を劣化させるため、その含有量は1.0%以下で少ない方がよい。望ましいSiの含有量は0.5%以下、さらに望ましいのは0.2%以下である。下限は不純物量でよい。
Mn:3〜30%
Mnは、Nの溶解度を高めて溶接中のNの離脱を抑える元素として有効である。その効果を得るために3%以上とする。一方、溶接材料を製造するに際して、線材に加工するときの熱間加工性の上からは低い方が良いので上限は30%とする。より望ましい上限は25%である。
Cr:22%を超えて30%まで
Crは、高圧ガス環境下での耐食性を向上させ、さらに耐応力腐食割れ性を確保するために必要な元素である。その効果を得るために溶接金属においても22%を超える含有が必要である。しかし、Crが過剰になると靭性、加工性といった機械的性質を損なうことになるので、30%を上限値とする。
Ni:8〜30%
Niは、溶接金属のオーステナイト相の安定化に必要な元素であり、その効果を発揮させるには、8%以上必要である。しかし、効果の点からは30%で十分であり、それを超えて含有させるのは溶接材料の価格上昇を招くので好ましくない。
V:0.001〜1.0%
Vは、溶接金属中では、NieqとCreqが前記(2)式を満たす状態において次のような作用効果を有する。即ち、(2)式を満たす範囲では、溶接金属の凝固モードが初晶δフェライト相となり、凝固中期以降から共晶反応によりオーステナイト相となる場合には、Vの残存液相中への濃化が抑制されるので、初晶デンドライト樹枝間にVが偏析することがなくなる。その結果、Vは凝固過程で効率よくNと結びついて微細なVNを形成する。これにより靱性劣化を抑えることが可能になる。その効果は、0.001%以上で顕著となるが、1.0%を超えて過剰に存在してもその効果は飽和し、コスト面の不利のみが顕著となる。
Mo:0〜3.0%、W:0〜6.0
MoおよびWは、溶接金属の強度および耐食性の向上に有効な元素であり、必要に応じて添加される。過剰に添加すると偏析して延性の低下を招くため、添加する場合の含有量の上限をMoは3.0%、Wは6.0%とする。
N:0.1〜0.5%
Nは、溶接金属の強度確保のために必要である。Nは溶接金属中に固溶して強化に寄与するとともに、Vと結合して微細な窒化物を形成して析出強化にも寄与する。0.1%未満ではこれらの効果が小さい。一方、Nの過剰添加はブローホール等の溶接欠陥をもたらすので、その含有量の上限を0.5%とする。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸元素として有効な元素であるが、Nと結びついて窒化物を形成して、N添加の効果を減殺する。従って、Alの含有量は0.1%以下に抑えるのがよい。望ましい含有量は0.05%以下、さらに望ましいのは0.02%以下である。
Ti、Nb、Zr、HfおよびTa:それぞれ0〜0.01%
これらの元素は、溶接金属の凝固過程において微細な窒化物を形成し、強度向上に寄与するので必要に応じて添加する。しかし、過剰の添加は、粗大な窒化物の形成を招き強度向上に寄与しないばかりか、靭性を損なう。従って、添加する場合、それぞれ0.01%以下の含有量とするのがよい。なお、添加する場合は、それぞれ0.001%以上の含有量とするのが望ましい。
P:0.030%以下
Pは、溶接金属の靱性を劣化させる好ましくない不純物である。0.030%以下でできるだけ少ない方がよい。
S:0.005%以下
Sは、溶接金属の粒界に偏析して結晶粒の結合力を弱め、溶接性を劣化させる極めて有害な元素であるから、上限の規制が必要である。0.005%以下でできるだけ少ない方がよい。
溶接金属は、(2)式で定められる条件を満たす必要がある。(2)式とは下記の式である。
−11≦Nieq−1.1×Creq≦−8 ・・・(2)
但し、 Nieq=Ni+30×(C+N)−0.5×Mn ・・・(3)
Creq=Cr+Mo+1.5×Si ・・・(4)
である。
まず、Nieq−1.1×Creq≦−8であれば、Vの凝固偏析が緩和され、溶接後熱処理だけでVNの微細析出が可能になる。これは、凝固モードを初晶δフェライト相とし、凝固中期以降から共晶反応によりオーステナイト相とすることで、Vが残存液相中に濃化し、デンドライト樹枝間にVが偏析することを防ぐからである。
一方、溶接金属の低温靭性と耐水素脆化特性は、−11≦Nieq−1.1×Creqとすることによって改善される。この条件を満たせば、溶接金属の凝固冷却後の常温での水素割れ感受性が小さくなり、かつ低温では脆弱なδフェライトの量を抑えることにより、優れた低温靱性が確保できる。
上記の溶接金属は、先に述べた第2群の元素および第3群の元素の中から選んだ少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。これらの元素の作用効果および含有量の限定理由は、本発明のステンレス鋼における場合と同じである。
本発明の容器等の溶接継手では、母材と溶接材料が混合溶融した結果得られた溶接金属の組成が前述の要件を満たしていればよい。実際には、用いる母材の組成に応じて溶接材料を選ぶ必要があるが、溶接金属の組成における母材組成の割合として定義される母材希釈率は、溶接法によって決まり、TIGおよびMIG溶接では5〜30%程度、サブマージアーク溶接では40〜60%程度である。従って、母材の組成が決まれば、想定される母材希釈率の範囲で溶接金属組成が前記の範囲内となるように計算して溶接材料の組成を選定することができる。溶接後には、550〜700℃で30〜100時間程度の時効熱処理を行うことにより引張強さ800MPa以上の高強度の溶接継手が得られる。
表1および表2に示された組成の鋼を150kg真空誘導溶解炉を用いて溶解し、造塊し、次いで1200℃で4時間均熱した後、1000℃以上にて熱間鍛造して、厚さ25mm、幅100mmの板状とした。その後、1000℃で1時間加熱保持した後に水冷する固溶化処理を施して、供試材とした。
図1は、本発明鋼(表1のNo.3の鋼)の光学顕微鏡写真である。
図2は、本発明鋼(表1のNo.6の鋼)のオーステナイト母相に析出した微細窒化物の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
図3は、本発明鋼(表1のNo.6の鋼)の0.5μm以下の微細窒化物とその化学組成(組成はメタル成分の割合)を示すX線スペクトル図である。
本発明鋼は、いずれも図1に示すようなオーステナイト単相組織、または図2に示すようなオーステナイト母相に窒化物(図中の黒点)が分散析出した組織であった。そして、図3に示すとおり、その窒化物のメタル組成中の10質量%以上はVであった。
前記の板状供試材から直径:4mm、GL:20mmの引張試験片と、直径:2.54mm、GL:30mmの水素ガス環境下引張試験片、10mm×10mm×55mm−2Vノッチ付きのシャルピー衝撃試験片および2mm×10mm×75mm−0.25Uノッチ付き4点曲げ応力腐食割れ試験片を切り出し、引張試験は室温にて、シャルピー衝撃試験は0℃にて実施し、水素ガス環境下引張試験は室温にて75MPaの高圧水素ガス環境下で歪み速度10−4/sにて、実施し、従来鋼および比較鋼との性能対比を行った。
応力腐食割れ試験は、90℃の人工海水飽和蒸気中で1.0σyの応力負荷により72時間浸漬して行い、割れの有無を判定した。結果を表3、表4および図4〜図11に示す。
No.1〜20の本発明鋼は、室温にてTS(引張強度)が1GPa以上、YS(耐力)が600MPa以上、伸びが30%以上である。靱性(vE0:吸収エネルギー)も50J以上で、極めて高強度、かつ高延性、高靱性である。また、水素ガス環境下での引張試験の延性で評価した水素脆化感受性も極めて低い。更に耐応力腐食割れ性も良好である。
一方、No.G〜Yの比較鋼は、少なくとも一つの成分の含有量、またはPmcn2の値が本発明で規定する範囲をはずれている。これらは、本発明鋼に比べて強度、延性、靱性、耐水素脆化のどれかが良好でない。
図4から図6までに示すように、本発明鋼、従来鋼および比較鋼において強度はN添加量と共にほぼ一義的に増大するが、延性(伸び)および靱性(吸収エネルギー)は、本発明鋼の方が顕著に優れている。さらに、図7に示すPmcn2と引張強度との関係、および図8に示すPmcn2と伸びとの関係から、Pmcn2が0(ゼロ)以下、即ち、(1)式を満たす場合に高い強度と優れた延性が得られることが明らかである。この事実は、図9に示す強度と延性(伸び)の関係からも明白である。
図10および図11は、本発明鋼のNo.1と従来鋼のNo.Aを用いて、熱間加工後の固溶化処理温度を950℃から1100℃までの範囲で変化させて、オーステナイト粒径と耐力および延性(伸び)の関係を比較したものである。本発明鋼では細粒化に伴って耐力は向上し、延性(伸び)はあまり低下せず、平均粒径20μm以上の場合は耐力800MPa以上の超高強度が得られている。一方、従来鋼では細粒化によって高強度化するものの、延性の低下が顕著となっている。
図12〜図14は、本発明鋼のNo.6を使用し、1100℃で1時間加熱した後に水冷する固溶化処理を施した後、700℃から1100℃の温度で2時間の熱処理を行って、析出した窒化物の結晶構造、0.5μm以下の微細窒化物の量(体積%)およびV濃度(窒化物中のメタル組成;質量%)を測定し、さらに強度(引張強度:TS)と靱性(吸収エネルギー:vE0)の比較を行った結果を示したものである。
図示のとおり、本発明で規定する組織とすることによって、強度、靱性の何れかを一層向上させることが可能である。
厚さ25mm、幅100mm、長さ200mmの板材に片側20度のV開先を設け、同じ成分の板材を突き合わせ、表5に示す溶接材料を表6および表7に示すように母材と組み合わせて、開先内にTIG溶接にて多層溶接して溶接継手を作製した。溶接条件は、溶接電流130A、溶接電圧12V、溶接速度15cm/minとした。
上記の溶接継手から、外径6mm、長さ30mmの平行部を持ち、その平行部の中央に溶接金属を有する引張試験片、および外径2.54mm、長さ30mmの平行部を持ち、その平行部の中央に溶接金属を有する水素ガス環境下での引張試験片を、それぞれ溶接線と直交する方向に採取した。また、溶接金属中央に深さ2mmのVノッチをもつ10×10×55mmのシャルピー衝撃試験片を溶接線と直交方向に採取した。
常温にて引張試験、−60℃にてシャルピー衝撃試験をそれぞれ実施し、溶接継手の強度および靱性を評価した。また、水素ガス環境下での引張試験は、常温にて75MPaの高圧水素ガス環境下で歪み速度10−4にて実施した。
結果の評価については、引張強さが800MPa、靭性はシャルピー吸収エネルギーが20J以上、耐水素脆化特性は水素ガス環境下と大気中での引張試験時の破断伸びの比が0.8以上を良好(○印)と判断して表7に示した。
表7から明らかなとおり、溶接金属が本発明の要件を満たしている継手のA1からA4まででは、引張強さ、靭性およびシャルピー吸収エネルギーがいずれも前記の基準を上回っている。また、耐水素脆化特性は水素ガス環境下と大気中での引張試験時の破断伸びの比が0.8以上であった。即ち、これらの継手は、高強度でありながら優れた靭性と耐水素脆化特性を示している。
これに対して、各元素個々の含有量が本発明で定める範囲内にあっても、前記の(2)式を満たさないB1とB2では、最も重要な凝固の後期段階で、液相中から別の凝固核を形成し、それを中心に別の固相が成長するため、結果として、高強度ではあっても優れた靭性と耐水素脆化特性は得られていない。
また、本発明の容器等は、溶接継手が含まれていても、その溶接金属が低温靭性および耐水素脆化特性の優れた高強度のものであるから、高圧水素ガスの配管、容器等に好適である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水素ガス環境下において優れた機械的性質(強度・延性)と耐食性を有し、更に海浜環境のように塩素イオンの存在する環境においても優れた耐応力腐食割れ性を有するステンレス鋼、およびその鋼からなる高圧水素ガス用の容器、配管およびそれらの付属機器に関する。これらの容器等とは、主に自動車用燃料電池および水素ガススタンドなどの高圧水素ガス環境下に曝される構造機器部材、特にボンベ、配管、バルブ等である。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車は水素と酸素を燃料として電気動力を得るため、従来のガソリン自動車やディーゼル自動車のように二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX)などの有害物質を排出しない次世代のクリーン自動車として注目され、我が国においても経済産業省の主導で2020年までに500万台の導入が計画されている。
【0003】
現在、燃料電池自動車に関しては、燃料の水素をどのように生成させ、かつ貯蔵するかが実用化への最大の課題となっており、種々の研究開発が進められている。
【0004】
代表的な方法としては、水素ガスボンベを搭載する方法、メタノールやガソリンを車載の改質器で改質して水素を得る方法、および水素を吸収させた水素吸蔵合金を搭載する方法等がある。
【0005】
これらの方法にはそれぞれ一長一短があるが、我が国においては平成14年(2002年)12月に水素ガスボンベを搭載した燃料電池自動車が世界に先駆けて市販され、国土交通省などの公用車として既に数台が使用されている。
【0006】
しかしながら、現状の燃料電池自動車は、最高速度が約150km/h、出力が約100馬力で自家用車としてはガソリン自動車に近い性能を実現できているものの、ボンベサイズの制約から航続距離が高々300kmであり、これが普及の障害になっている。
【0007】
改質器を搭載してメタノールやガソリンを燃料として用いる方法には、メタノールが毒性を有すること、また、ガソリンでは脱硫の必要性があるなどの問題に加えて、現状では高価な触媒を必要とする上に改質効率が不十分なため、コストがかかる割にはCO2の排出削減効果が十分期待できないなどの問題が残っている。
【0008】
水素吸蔵合金を用いる方法には、水素吸蔵合金が極めて高価な上に、燃料の充填に相当する水素の吸収に長時間を要することや、水素の吸収−放出を繰り返すことで水素吸蔵合金の性能が劣化していくなどの技術的問題もあり、実用化までには未だ時間を要すると考えられている。
【0009】
以上のような背景から、我が国においては高圧ガスボンベを搭載した燃料電池自動車の改良と低コスト化によって、次世代のクリーン自動車の普及を促進すべく、種々の研究開発が加速されているが、そのためには以下のような課題を克服する必要がある。
【0010】
即ち、航続距離の延長、普及に必要な水素ステーション等の設備環境の整備、および水素に関する安全性向上技術の開発などである。
【0011】
航続距離を、例えば500kmにまで延長するためには、車載ボンベに収容する水素ガスの圧力を現状の35MPaから70MPaへ高圧化することが必要であると試算されている。また、既存のガソリンスタンドに代わる水素ガスステーションが必要になるが、ここでは高圧水素ガスの生成、輸送および貯蔵と迅速な充填(車への供給)が必要になる。
【0012】
また、水素ガスは可燃性のため、その取り扱いには細心の注意を要するが、特に50MPaを超える超高圧水素ガスと構造機器部材との相互作用については不明な点も多く、機器の安全利用技術の確立が強く望まれている。
【0013】
平成14年(2002年)に市販された燃料電池自動車の高圧水素ガス機器には、現在その健全性が広く認知されている既存のオーステナイト系ステンレス鋼(JIS SUS 316系材料)が使用されている。これは、35 MPa程度までの水素ガス環境下では、耐水素脆化感受性が他の構造用鋼、例えば、JISのSTS 480のような炭素鋼やSUS 304系のステンレス鋼に比較して良好であることと、加工性、溶接性などに優れ、利用技術が確立しているためである。
【0014】
ところが、このSUS 316をガス圧を35 MPaから70 MPaに高めた高圧水素ガス配管用に使用するためには、例えば、従来の外径26.2mm、内径20mm(管肉厚3.1mm)の配管を、外径34.7mm、内径20mm(管肉厚7.35mm)としなければならない。即ち、管の肉厚は2倍以上、重量では3倍にもならないと強度的には耐えられない。従って、車載重量の大幅増や、ガスステーションの大型化が避けられず、実用上の重大な障害になってくる。
【0015】
オーステナイト系ステンレス鋼は、冷間加工によって強度が上昇することが知られており、引抜き、抽伸および圧延等の冷間加工によって高強度化して管肉厚の増大を避けることが可能である。
【0016】
しかしながら、これらの冷間加工によって強化された場合には、高強度は得られるものの、延性および靱性の低下が著しく、また、加工に起因する異方性が問題となる。これらに加えて、冷間加工されたオーステナイト系ステンレス鋼は、高圧水素ガス環境下での水素脆化感受性が著しく増大することが明らかとなり、高圧水素ガスの取り扱い上の安全性を考慮すると、冷間加工による管の高強度化は、採用できないことが判明した。
【0017】
オーステナイト系ステンレス鋼の強化方法としては、特開平5-65601号公報および特開平7-188863号公報によって、窒素(N)を多量に固溶させる、いわゆる固溶強化法が知られている。また、特開平5-98391号公報では、炭化物や窒化物を析出させる析出強化法が提案されている。しかし、これらの従来技術による強化法では延性および靱性の低下が不可避で、特に靱性の異方性が増大して、高圧水素ガス環境下での使用においては、冷間加工の場合と同様な問題を引き起こしかねない。
【0018】
さらに、特開平6-128699号公報および特開平7-26350号公報では、N(窒素)を多量に添加して耐食性向上を狙ったステンレス鋼も提案されている。しかし、これも高圧水素ガス環境に対応できる特性は兼ね備えておらず、上記と同様の理由により安全性の確保が容易でない。
【0019】
水素ガススタンドは、海浜地帯に設置されることがある。また、自動車も走行や保管の際には塩分を含む環境に曝されることがある。従って、水素ガスの貯蔵容器等の材料には、塩素イオンに起因する応力腐食割れの懸念がないことも要求される。
【0020】
ステンレス鋼の耐応力腐食割れ性を改善する手段の一つは、Cr含有量を高めることである。しかし、単にCr含有量を高めるだけでは、Cr窒化物やシグマ相の多量析出を招き、高圧水素ガス用の鋼材に要求される特性を持ち得ない。
【0021】
高圧水素用の容器や配管およびこれらに付属する機器は、溶接して使用されることが多い。その溶接継手においても、次のような問題がある。即ち、継手の溶接金属では溶融凝固により、また溶接熱影響部では溶接熱サイクルにより、それぞれ強度低下が起きる。溶接熱影響部の強度低下は、溶接後に適当な熱処理を施すことによって防止できる。しかし、溶接金属は粗大な凝固組織であるため、単なる溶接後熱処理だけでは強度の改善はできない。
【発明の開示】
本発明の第1の目的は、高圧水素ガス環境下で優れた機械的性質と耐食性を有するのみならず、優れた耐応力腐食割れ性をも備えた高強度ステンレス鋼を提供することである。
【0022】
本発明の第2の目的は、上記のステンレス鋼で製造された高圧水素ガス用の容器、配管およびその他の機器を提供することである。
【0023】
本発明の第3の目的は、優れた特性を持つ溶接継手を含む上記の容器、配管およびその他の機器を提供することである。
【0024】
まず、本発明の基礎となった知見について述べる。
【0025】
本発明者らは、種々の材料について、高圧水素ガス環境下での機械的性質と耐食性に及ぼす材料の化学組成および金属組織(ミクロ組織)との関係について検討した。特に、塩素イオンを含む環境下での耐応力腐食割れ性の改善を意図して、22%以上のCrを含有するオーステナイト系ステンレス鋼について検討した。その結果、次のような新しい知見を得た。
【0026】
1)従来のCr含有量が22%を超えるオーステナイト系ステンレス鋼では、CrN、Cr2Nが析出し、またシグマ相が多量に析出して延性および靱性の著しい低下を来していた。しかし、このような鋼であっても、Mn、Ni、CrおよびNの適正バランスを保てば、良好な機械的性質と海浜地帯で問題になるような塩素イオンによる応力腐食割れに対して優れた耐性を有するに到る。
【0027】
2)既存のオーステナイト系ステンレス鋼を高強度化するには、一般に知られるようにNによる固溶強化が最も有効である。N添加量の増加と共に強度は向上するが、延性および靱性が低下すると共に、その異方性が顕著となる。しかしながら、Mn、Cr、Ni、Cなどの構成元素の種類と含有量を適正に調整することによって、この延性および靱性の低下を抑制することができ、さらに異方性をも解消することができる。
【0028】
3)既存のオーステナイト系ステンレス鋼に固溶限を超えるNを添加すると、CrN、Cr2NなどのCr窒化物が生成する。これらの窒化物は、微細に分散していれば、高強度化に寄与する。しかし、粗大な窒化物は、延性および靱性を劣化させるばかりでなく、水素脆化感受性を増大させる。
【0029】
4)CrN、Cr2N等の窒化物の結晶構造が六方晶系で、オーステナイト母相との整合性が悪いため、容易に凝集粗大化するためである。ところが、Ni、Crなどの構成元素の種類および含有量を調整した鋼に、さらにVを添加すると、Cr窒化物にもVが含まれるようになる。そのような窒化物は、六方晶系のままであっても、オーステナイト母相との整合性が改善されて、粗大化し難くなる。また、Vを含むCr窒化物は、少なくとも一部が立方晶系の窒化物に変化する。この立方晶系窒化物は、母相との整合性が良好で、微細に分散析出させることが可能である。要するに、鋼中にVが含有されていれば、Cr窒化物は、六方晶系であっても微細に分散するようになり、更に一部が立方晶系になれば、微細分散が一層確かなものになる。
【0030】
5)上記のCr窒化物の結晶構造に起因する分散状態の違いによって、オーステナイト系ステンレス鋼の強度、延性および靱性、さらには耐水素脆化感受性が著しく変化する。
【0031】
6)一般に、オーステナイト系ステンレス鋼の結晶粒径を微細化すると耐力が増加するが、同時に延性も低下することが知られている。しかしながら、N添加とMn、Cr、NiおよびCなどの構成元素の種類および含有量を調整した鋼は、高強度で、しかも高延性の鋼となる。
7)母材では高MnにしてNの溶解度を高めたうえで適正量のVとNを含有させ、かつ適正な熱処理を施すことによって高強度が得られる。しかし、前記のとおり溶接継手の溶接金属は、粗大な凝固組織であるために、単に溶接後熱処理を施しても強度は改善されない。ところが、溶接金属のNieqとCreqとの関係を特定することにより、強度その他の機械的性質の改善と耐水素脆化特性の改善が可能になる。
【0032】
本発明は、以上の知見を基にして完成されたもので、その要旨は下記(1)のステンレス鋼ならびに(2)および(3)の容器等にある。なお、以下の記述において、成分含有量の%は「質量%」を意味する。
【0033】
(1)C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22%を超えて30%まで、Ni:17〜30%、V:0.001〜1.0%、N:0.10〜0.50%およびAl:0.10%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下、Ti、ZrおよびHfがそれぞれ0.01%以下であり、かつ、Cr、MnおよびNの含有量が下記の(1)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用ステンレス鋼。
【0034】
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
但し、式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)である。
【0035】
このステンレス鋼は、下記の第1群から第3群までの少なくとも1群から選んだ少なくとも1種の元素を含むことができる。
【0036】
第1群元素…Mo:0.3〜3.0%、W:0.3〜6.0%、Nb:0.001〜0.20%およびTa:0.001〜0.40%。
【0037】
第2群元素…B:0.0001〜0.020%、Cu:0.3〜5.0%およびCo:0.3〜10.0%。
【0038】
第3群元素…Mg:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0001〜0.0050%、La:0.0001〜0.20%、Ce:0.0001〜0.20%、Y:0.0001〜0.40%、Sm:0.0001〜0.40%、Pr:0.0001〜0.40%およびNd:0.0001〜0.50%。
【0039】
また、このステンレス鋼は、下記(a)〜(d)の組織状態であることが望ましい。
【0040】
(a) オーステナイトの平均粒径が20μm以下であること、
(b) 0.5μm以下の微細窒化物が0.01体積%以上分散析出していること、
(c) 上記の0.5μm以下の微細窒化物が、その中にVを10質量%以上含有するものであること、
(d) 上記の0.5μm以下の微細窒化物の結晶構造が面心立方晶であること。
(2)上記(1)のステンレス鋼からなる高圧水素ガス用の容器、配管およびそれらの付属機器。
【0041】
ここで、容器とはボンベ、タンク等の貯蔵容器、配管とはこれらの容器の間または容器と他の機器とをつなぐ管であり、付属機器とはバルブ等の容器や配管に付属するものである。
(3)上記(1)のステンレス鋼で製作され、その溶接継手の溶接金属が、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22を超えて30%まで、Ni:8〜30%、V:0.001〜1.0%、Mo:0〜3.0%、W:0〜6.0%、N:0.1〜0.5%、Al:0.10%以下、Ti、Nb、Zr、HfおよびTa:それぞれ0〜0.01%であり、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下で、かつ、下記の(2)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用の容器、配管およびそれらの付属機器。
【0042】
−11≦Nieq−1.1×Creq≦−8 ・・・・・・(2)
但し、Nieq=Ni+30×(C+N)−0.5×Mn ・・・・(3)
Creq=Cr+Mo+1.5×Si ・・・・・・・・・(4)
なお、上記(3)式および(4)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)である。
【0043】
上記の溶接金属は、先に述べた第2群の元素および第3群の元素の中から選んだ少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
1.本発明のステンレス鋼
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼を構成する成分の作用効果と含有量の限定理由について、以下に詳しく説明する。
【0045】
C:0.02%以下、
本発明鋼では、高耐食性、特に優れた耐応力腐食割れ性を得るためにCr含有量を多くしている。このような高Cr鋼では、M23C6型炭化物(MはCr、Mo、Feなど)の生成傾向が大きく、靱性低下が起きやすい。この炭化物の析出を抑制するためには、Cは0.02%以下にする必要がある。なお、Cはできるだけ少ない方がよいが、極端なC含有量の低減は精錬コストの上昇を招くので、実用上、0.0001%以上であることが望ましい。
【0046】
Si:1.0%以下
Siは、ある種の環境での耐食性向上に有効な元素として知られているが、多量に含有されるとNi、Crなどと金属間化合物を形成したり、シグマ相などの金属間化合物の生成を助長して、熱間加工性を著しく低下させる場合がある。そのため、Siの含有量は1.0%以下とした。さらに好ましいのは0.5%以下である。なお、Siは少ない方がよいが、精錬コストを考慮すれば、0.001%以上であることが望ましい。
【0047】
Mn:3〜30%
Mnは、安価なオーステナイト安定化元素である。本発明鋼においてはCr、Ni、Nなどとの適正な組み合わせによって、高強度化と延性および靱性の向上に寄与する。そのため、Mnは3%以上含有させるが、30%を超えると熱間加工性や耐候性が低下する場合があるので、3〜30%が適正含有量である。なお、Mnの更に望ましい含有量は、5〜22%である。
【0048】
Cr:22%を超えて30%まで
Crは、高圧水素ガス環境下における耐食性および塩素イオンを含む環境での耐応力腐食割れ性を向上させる元素として、必須の成分である。これらの効果を得るために22%を超える含有量が必要である。しかし、30%を超えると延性および靱性に有害なCrN、Cr2N等の窒化物やM23C6型炭化物が多量に生成しやくなる。従って、Crの適正含有量は、22%を超えて30%までである。
【0049】
Ni:17〜30%
Niは、オーステナイト安定化元素として添加されるが、本発明鋼においてはCr、Mn、Nなどとの適正な組み合わせによって、高強度化と延性および靱性の向上に寄与する。特にCrおよびMnの含有量が多い場合は、Niを増やしてシグマ相の生成を抑える必要がある。そのため、Ni含有量は17%以上とするが、30%を超えると効果の増大は小さく、材料コストの上昇を招くので、17〜30%が適正含有量である。
【0050】
V:0.001〜1.0%
Vは、本発明鋼にあっては六方晶系のCr窒化物の母相との整合性を改善してその粗大化を防止し、また、立方晶系のCr窒化物の生成を促進して、高強度化と延性および靱性の向上、ならびに耐水素脆化性の向上に大きく寄与する。そのためには0.001%以上の含有が必要である。一方、1.0%を超えても効果の増大は小さく材料コストを上昇させるので、上限は1.0%とする。なお、立方晶系のCr窒化物の生成量を増大させるために望ましいVの含有量は0.05〜1.0%であり、最も望ましいのは0.1〜1.0%である。
【0051】
N:0.10〜0.50%
Nは、最も重要な固溶強化元素であり、Mn、Cr、Ni、Cなどの適正含有量範囲内において高強度化に寄与すると共に、シグマ相等の金属間化合物の生成を抑制して、靱性の向上にも寄与する。そのためには0.10%以上の含有が必要である。しかし、0.50%を超えると、CrN、Cr2N等の粗大な六方晶系の窒化物の生成が不可避となるので、適正含有量は0.10〜0.50%である。但し、本発明鋼においてはMn、CrおよびNのバランスが下記(1)式を満足するとき、高強度と高延性を最もよく両立させることができる。なお、(1)式中の元素記号は、それぞれの含有量(質量%)を意味する。
【0052】
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
上記の(1)式のCr、Mnの係数はNの固溶限に及ぼすCrとMnの寄与率、およびシグマ相の生成傾向から得られたものである。
【0053】
Al:0.10%以下
Alは、脱酸剤として重要な元素であるが、0.10%を超える多量の残留は、シグマ相等の金属間化合物生成を助長する。従って、本発明の意図する強度と靱性の両立に対しては望ましくない。なお、脱酸の効果を確実にするには0.001%以上の含有が望ましい。
【0054】
本発明のステンレス鋼の一つは、以上に述べた成分の他、残部がFeと不純物からなるものである。なお、不純物中の特定の元素の規制については後述する。
【0055】
本発明のステンレス鋼の他の一つは、次に述べる第1群から第3群までの少なくとも1群の中から選んだ少なくとも1種の元素を更に含むものである。
【0056】
第1群に属する元素は、Mo、W、NbおよびTaである。これらは、立方晶系窒化物の生成と安定化を促すという共通の作用効果を有する。それぞれの含有量の限定理由は以下のとおりである。
【0057】
Mo:0.3〜3.0%、W:0.3〜6.0%
MoおよびWは、立方晶系窒化物を安定にする作用を有し、また固溶強化元素でもあるから、必要に応じて一方または両方を添加する。それぞれ、0.3%以上でその効果がある。しかし、多量添加するとオーステナイトが不安定化するので、これらを添加する場合は、その含有量をそれぞれ0.3〜3.0%および0.3〜6.0%とするのがよい。
【0058】
Nb:0.001〜0.20%、Ta:0.001〜0.40%
NbおよびTaも、Vと同様に立方晶系窒化物を形成するので、必要に応じて一方または両方を添加する。その効果はそれぞれ0.001%以上で顕著になる。しかしながら、多量添加するとオーステナイトが不安定化するため、これらを添加する場合、それぞれ0.20%以下、0.40%以下にとどめるのがよい。
【0059】
第2群に属する元素は、B、CuおよびCoである。これらは本発明鋼の強度の向上に寄与する。それぞれの含有量の限定理由は次のとおりである。
【0060】
B:0.0001〜0.020%
Bは、析出物の微細化とオーステナイト結晶粒径を微細化し、強度を上げるので、必要に応じて添加することができる。その効果は0.0001%以上で発揮される。一方、含有量が過多になると低融点の化合物を形成して熱間加工性を低下させる場合があるので、その上限を0.020%とする。
【0061】
Cu:0.3〜5.0、Co:0.3〜10.0%
CuおよびCoは、オーステナイト安定化元素である。本発明鋼においてはMn、Ni、CrおよびCとの適正な組み合わせによって、より高強度化に寄与するため、一方または両方を必要に応じてそれぞれ0.3%以上含有させることができる。しかし、効果と材料コストとの兼ね合いから含有量の上限はそれぞれ5.0%および10.0%とする。
【0062】
第3群に属するのは、Mg、Ca、La、Ce、Y、Sm、PrおよびNdである。これらの作用効果と含有量の限定理由は下記のとおりである。
【0063】
MgとCaおよび遷移金属の中でLa、Ce、Y、Sm、PrおよびNdは、本発明鋼の成分範囲内では鋳造時の凝固割れを防止する働きと、長時間使用後の水素脆化による延性低下を低減する効果を有する。従って、必要に応じて1種以上を含有させてもよい。それぞれ、0.0001%以上で効果が発現する。但し、含有量が多すぎると、いずれも熱間加工性を低下させるので、上限はMgとCaでそれぞれ0.0050%、LaとCeでそれぞれ0.20%、Y、SmおよびPrでそれぞれ0.40%、Ndで0.50%とする。
【0064】
次に不純物の規制について述べる。本発明のステンレス鋼では、不純物の中のP、S、Ti、ZrおよびHfをそれぞれ下記のように規制する。
【0065】
P:0.030%以下、S:0.005%以下
PおよびSは、いずれも鋼の靱性等に悪影響を及ぼす元素である。従って、可及的に少ない方がよいが、それぞれ0.030%以下、0.005%以下であれば、本発明鋼の特性に顕著な劣化は認められない。
【0066】
Ti、Zr、Hf:それぞれ0.01%以下
Ti、ZrおよびHfは、Vと同様に立方晶系窒化物を形成するが、Vに優先して高温域から窒化物を生成するため、V系窒化物の生成を阻害する。その上、Ti、ZrおよびHfの窒化物は、オーステナイト母相との整合性が良好でないため、それ自身凝集粗大化しやく、強度向上の効果が乏しい。そのため、本発明鋼ではこれらの含有量をそれぞれ0.01%以下に制限する。
5Cr+3.4Mn≦500N
Cr、MnおよびNの含有量が上記の式((1)式)を満たす必要があるのは、後述の図7および図8に示すとおり、式(1)が満たされるとき、即ち、Pmcn2≦0のとき、鋼の引張強度が高く、しかも伸びが大きくなるからである。なお、図7および図8の横軸のPmcn2は「5Cr+3.4Mn−500N」である。
【0067】
本発明のステンレス鋼は、熱間加工のまま、または700〜1200℃で1回以上の熱処理を施して使用される。熱間加工の加熱温度や加工後の冷却条件次第で、熱間加工のままでも下記の望ましい組織状態が得られる。熱間加工後に、または熱間加工後さらに種々の加工を経た後、上記の熱処理を施せば、より確実に下記の望ましい組織状態になる。
【0068】
本発明のオーステナイトステンレス鋼は、下記の組織状態であることが望ましい。
【0069】
(a) オーステナイトの平均粒径が20μm以下であること:
一般に、結晶粒径が小さくなると強度、特に降伏強度(0.2%耐力)が上昇するが、逆に延性と靱性は低下する。しかし、後述の図10および図11に示すとおり、本発明鋼の成分範囲内ではオーステナイト粒径が20μm以下であれば、必要な伸びと靱性を確保した上で、高い強度を持たせることができる。なお、平均粒径とは、JIS G 0551に規定される粒度測定法によって得られる結晶粒径の平均値を意味する。
【0070】
(b) 0.5μm以下の微細窒化物が0.01体積%以上分散していること:
SUS310系の23〜25%のCrを含有する従来の高Crオーステナイト系ステンレス鋼にNを多量添加していくと、CrN,Cr2N等の窒化物が生成する。これらの窒化物は、0.5μm以下の微細な状態で析出している場合には、鋼の高強度化に寄与する。しかし、前記のように、単にNを多量添加しただけの鋼に生成するCr窒化物は、六方晶であるためにオーステナイト母相との整合性が良くないため、凝集粗大化しやすく、粗大化すると延性と靱性の低下原因となる。
【0071】
上記の整合性とは、窒化物とオーステナイトとの結晶構造と格子定数の差に起因する両者のマッチング性であり、同一構造で同一格子定数のとき、最も整合性が良好となる。したがって、本発明鋼においては、窒化物を利用する場合には、0.5μm以下の微細な状態の窒化物を0.01体積%以上分散析出させるのが望ましい。
【0072】
なお、ここで窒化物のサイズは、窒化物の切断面の形状を等価円に換算した場合の最大直径で評価する。
【0073】
(c) 0.5μm以下の微細窒化物が、その中にVを10質量%以上含有していること:
従来の高Crオーステナイト系ステンレス鋼にNを多量添加した場合には、通常、CrN,Cr2Nの窒化物が最も安定に存在するが、オーステナイト母相との整合性が良好でないため、凝集粗大化しやすい。ところが、その窒化物中にVが固溶していくと、たとえCr窒化物が六方晶系のままであっても、窒化物の格子定数が徐々に変化し、オーステナイト母相との整合性が改善され、強度および靱性の向上に寄与する。そのためには窒化物中にVが10質量%以上含有されているのが望ましい。
【0074】
(d) 0.5μm以下の微細窒化物の結晶構造が面心立方晶であること。
【0075】
窒化物の結晶構造がオーステナイト母相と同じ面心立方晶である場合、窒化物はオーステナイト母相と整合析出し、凝集粗大化しにくくなる。そのため、Cr窒化物の少なくとも一部は、その結晶構造が面心立方晶であることが望ましい。
【0076】
実施例にも示すとおり、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、高強度でありながら延性および靱性にも優れている。しかも、高圧水素環境下でも水素脆化感受性が小さい。従って、この鋼は高圧水素用の容器、配管およびこれらの付属機器の材料としてきわめて有用である。なお、高圧水素ガスとは、50MPa以上の圧力、特に70MPa以上の圧力の水素ガスを意味する。
【0077】
2.本発明の容器等
本発明の容器等は、前記のステンレス鋼で作製された高圧水素ガス用の容器、配管およびこれらの付属機器である。その容器等が溶接継手を含む場合には、その溶接金属は、前記の化学組成を有することが望ましい。以下、溶接継手を特徴づける溶接金属の成分について説明する。
C:0.02%以下
Cが0.02%を超えると炭化物を形成して溶接金属の延性および靭性の低下が大きくなる。従って、Cは0.02%以下で少ないほど望ましい。
【0078】
Si:1.0%以下
Siは、脱酸元素として必要な元素であるが、溶接金属では金属間化合物を生じて靭性を劣化させるため、その含有量は1.0%以下で少ない方がよい。望ましいSiの含有量は0.5%以下、さらに望ましいのは0.2%以下である。下限は不純物量でよい。
Mn:3〜30%
Mnは、Nの溶解度を高めて溶接中のNの離脱を抑える元素として有効である。その効果を得るために3%以上とする。一方、溶接材料を製造するに際して、線材に加工するときの熱間加工性の上からは低い方が良いので上限は30%とする。より望ましい上限は25%である。
【0079】
Cr:22%を超えて30%まで
Crは、高圧ガス環境下での耐食性を向上させ、さらに耐応力腐食割れ性を確保するために必要な元素である。その効果を得るために溶接金属においても22%を超える含有が必要である。しかし、Crが過剰になると靭性、加工性といった機械的性質を損なうことになるので、30%を上限値とする。
【0080】
Ni:8〜30%
Niは、溶接金属のオーステナイト相の安定化に必要な元素であり、その効果を発揮させるには、8%以上必要である。しかし、効果の点からは30%で十分であり、それを超えて含有させるのは溶接材料の価格上昇を招くので好ましくない。
【0081】
V:0.001〜1.0%
Vは、溶接金属中では、NieqとCreqが前記(2)式を満たす状態において次のような作用効果を有する。即ち、(2)式を満たす範囲では、溶接金属の凝固モードが初晶δフェライト相となり、凝固中期以降から共晶反応によりオーステナイト相となる場合には、Vの残存液相中への濃化が抑制されるので、初晶デンドライト樹枝間にVが偏析することがなくなる。その結果、Vは凝固過程で効率よくNと結びついて微細なVNを形成する。これにより靱性劣化を抑えることが可能になる。その効果は、0.001%以上で顕著となるが、1.0%を超えて過剰に存在してもその効果は飽和し、コスト面の不利のみが顕著となる。
【0082】
Mo:0〜3.0%、W:0〜6.0
MoおよびWは、溶接金属の強度および耐食性の向上に有効な元素であり、必要に応じて添加される。過剰に添加すると偏析して延性の低下を招くため、添加する場合の含有量の上限をMoは3.0%、Wは6.0%とする。
【0083】
N:0.1〜0.5%
Nは、溶接金属の強度確保のために必要である。Nは溶接金属中に固溶して強化に寄与するとともに、Vと結合して微細な窒化物を形成して析出強化にも寄与する。0.1%未満ではこれらの効果が小さい。一方、Nの過剰添加はブローホール等の溶接欠陥をもたらすので、その含有量の上限を0.5%とする。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸元素として有効な元素であるが、Nと結びついて窒化物を形成して、N添加の効果を減殺する。従って、Alの含有量は0.1%以下に抑えるのがよい。望ましい含有量は0.05%以下、さらに望ましいのは0.02%以下である。
【0084】
Ti、Nb、Zr、HfおよびTa:それぞれ0〜0.01%
これらの元素は、溶接金属の凝固過程において微細な窒化物を形成し、強度向上に寄与するので必要に応じて添加する。しかし、過剰の添加は、粗大な窒化物の形成を招き強度向上に寄与しないばかりか、靭性を損なう。従って、添加する場合、それぞれ0.01%以下の含有量とするのがよい。なお、添加する場合は、それぞれ0.001%以上の含有量とするのが望ましい。
【0085】
P:0.030%以下
Pは、溶接金属の靱性を劣化させる好ましくない不純物である。0.030%以下でできるだけ少ない方がよい。
【0086】
S:0.005%以下
Sは、溶接金属の粒界に偏析して結晶粒の結合力を弱め、溶接性を劣化させる極めて有害な元素であるから、上限の規制が必要である。0.005%以下でできるだけ少ない方がよい。
溶接金属は、(2)式で定められる条件を満たす必要がある。(2)式とは下記の式である。
【0087】
−11≦Nieq−1.1×Creq≦−8 ・・・(2)
但し、 Nieq=Ni+30×(C+N)−0.5×Mn ・・・(3)
Creq=Cr+Mo+1.5×Si ・・・(4)
である。
【0088】
まず、Nieq−1.1×Creq≦−8であれば、Vの凝固偏析が緩和され、溶接後熱処理だけでVNの微細析出が可能になる。これは、凝固モードを初晶δフェライト相とし、凝固中期以降から共晶反応によりオーステナイト相とすることで、Vが残存液相中に濃化し、デンドライト樹枝間にVが偏析することを防ぐからである。
【0089】
一方、溶接金属の低温靭性と耐水素脆化特性は、−11≦Nieq−1.1×Creqとすることによって改善される。この条件を満たせば、溶接金属の凝固冷却後の常温での水素割れ感受性が小さくなり、かつ低温では脆弱なδフェライトの量を抑えることにより、優れた低温靱性が確保できる。
【0090】
上記の溶接金属は、先に述べた第2群の元素および第3群の元素の中から選んだ少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。これらの元素の作用効果および含有量の限定理由は、本発明のステンレス鋼における場合と同じである。
【0091】
本発明の容器等の溶接継手では、母材と溶接材料が混合溶融した結果得られた溶接金属の組成が前述の要件を満たしていればよい。実際には、用いる母材の組成に応じて溶接材料を選ぶ必要があるが、溶接金属の組成における母材組成の割合として定義される母材希釈率は、溶接法によって決まり、TIGおよびMIG溶接では5〜30%程度、サブマージアーク溶接では40〜60%程度である。従って、母材の組成が決まれば、想定される母材希釈率の範囲で溶接金属組成が前記の範囲内となるように計算して溶接材料の組成を選定することができる。溶接後には、550〜700℃で30〜100時間程度の時効熱処理を行うことにより引張強さ800MPa以上の高強度の溶接継手が得られる。
【実施例】
【0092】
実施例により本発明の効果を具体的に説明する。
【0093】
[実施例1]
表1に本発明のオーステナイトステンレス鋼、表2に従来鋼および比較鋼の化学組成(質量%)を示す。なお、各化学組成が(1)式を満足するか否かを示すために、「Pmcn2=5Cr+3.4Mn−500N」の値を併記した。Pmcn2≦0の場合は、(1)式、即ち、5Cr+3.4Mn≦500Nを満足していることになる。
【0094】
表1および表2に示された組成の鋼を150kg真空誘導溶解炉を用いて溶解し、造塊し、次いで1200℃で4時間均熱した後、1000℃以上にて熱間鍛造して、厚さ25mm、幅100mmの板状とした。その後、1000℃で1時間加熱保持した後に水冷する固溶化処理を施して、供試材とした。
【0095】
図1は、本発明鋼(表1のNo.3の鋼)の光学顕微鏡写真である。
【0096】
図2は、本発明鋼(表1のNo.6の鋼)のオーステナイト母相に析出した微細窒化物の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
【0097】
図3は、本発明鋼(表1のNo.6の鋼)の0.5μm以下の微細窒化物とその化学組成(組成はメタル成分の割合)を示すX線スペクトル図である。
【0098】
本発明鋼は、いずれも図1に示すようなオーステナイト単相組織、または図2に示すようなオーステナイト母相に窒化物(図中の黒点)が分散析出した組織であった。そして、図3に示すとおり、その窒化物のメタル組成中の10質量%以上はVであった。
【0099】
前記の板状供試材から直径:4mm、GL:20mmの引張試験片と、直径:2.54mm、GL:30mmの水素ガス環境下引張試験片、10mm×10mm×55mm−2Vノッチ付きのシャルピー衝撃試験片および2mm×10mm×75mm−0.25Uノッチ付き4点曲げ応力腐食割れ試験片を切り出し、引張試験は室温にて、シャルピー衝撃試験は0℃にて実施し、水素ガス環境下引張試験は室温にて75MPaの高圧水素ガス環境下で歪み速度10-4/sにて、実施し、従来鋼および比較鋼との性能対比を行った。
【0100】
応力腐食割れ試験は、90℃の人工海水飽和蒸気中で1.0σyの応力負荷により72時間浸漬して行い、割れの有無を判定した。結果を表3、表4および図4〜図11に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
No.1〜20の本発明鋼は、室温にてTS(引張強度)が1GPa以上、YS(耐力)が600MPa以上、伸びが30%以上である。靱性(VE0:吸収エネルギー)も 50J以上で、極めて高強度、かつ高延性、高靱性である。また、水素ガス環境下での引張試験の延性で評価した水素脆化感受性も極めて低い。更に耐応力腐食割れ性も良好である。
【0105】
一方、No.G〜Yの比較鋼は、少なくとも一つの成分の含有量、またはPmcn2の値が本発明で規定する範囲をはずれている。これらは、本発明鋼に比べて強度、延性、靱性、耐水素脆化のどれかが良好でない。
【0106】
図4から図6までに示すように、本発明鋼、従来鋼および比較鋼において強度はN添加量と共にほぼ一義的に増大するが、延性(伸び)および靱性(吸収エネルギー)は、本発明鋼の方が顕著に優れている。さらに、図7に示すPmcn2と引張強度との関係、および図8に示すPmcn2と伸びとの関係から、Pmcn2が0(ゼロ)以下、即ち、(1)式を満たす場合に高い強度と優れた延性が得られることが明らかである。この事実は、図9に示す強度と延性(伸び)の関係からも明白である。
図10および図11は、本発明鋼のNo.1と従来鋼のNo.Aを用いて、熱間加工後の固溶化処理温度を950℃から1100℃までの範囲で変化させて、オーステナイト粒径と耐力および延性(伸び)の関係を比較したものである。本発明鋼では細粒化に伴って耐力は向上し、延性(伸び)はあまり低下せず、平均粒径20μm以上の場合は耐力800MPa以上の超高強度が得られている。一方、従来鋼では細粒化によって高強度化するものの、延性の低下が顕著となっている。
【0107】
図12〜図14は、本発明鋼のNo.6を使用し、1100℃で1時間加熱した後に水冷する固溶化処理を施した後、700℃から1100℃の温度で2時間の熱処理を行って、析出した窒化物の結晶構造、0.5μm以下の微細窒化物の量(体積%)およびV濃度(窒化物中のメタル組成;質量%)を測定し、さらに強度(引張強度:TS)と靱性(吸収エネルギー:VE0)の比較を行った結果を示したものである。
【0108】
図示のとおり、本発明で規定する組織とすることによって、強度、靱性の何れかを一層向上させることが可能である。
【0109】
[実施例2]
表5に示す化学組成の母材(M1およびM2)を、50kg真空高周波炉で溶解した後、鍛造により25mm厚の板材とし、1000℃で1時間保持し水冷する熱処理を施して供試材とした。また同じく表5に示す化学組成のW1、W2、Y1およびY2の合金を、50kg真空高周波炉で溶解した後、外径2mmの線材に加工して溶接材料とした。溶接性を評価するため、以下に示す要領で溶接継手を作製して評価試験を実施した。
【0110】
厚さ25mm、幅100mm、長さ200mmの板材に片側20度のV開先を設け、同じ成分の板材を突き合わせ、表5に示す溶接材料を表6および表7に示すように母材と組み合わせて、開先内にTIG溶接にて多層溶接して溶接継手を作製した。溶接条件は、溶接電流130A、溶接電圧12V、溶接速度15cm/minとした。
【0111】
上記の溶接継手から、外径6mm、長さ30mmの平行部を持ち、その平行部の中央に溶接金属を有する引張試験片、および外径2.54mm、長さ30mmの平行部を持ち、その平行部の中央に溶接金属を有する水素ガス環境下での引張試験片を、それぞれ溶接線と直交する方向に採取した。また、溶接金属中央に深さ2mmのVノッチをもつ10×10×55mmのシャルピー衝撃試験片を溶接線と直交方向に採取した。
【0112】
常温にて引張試験、−60℃にてシャルピー衝撃試験をそれぞれ実施し、溶接継手の強度および靱性を評価した。また、水素ガス環境下での引張試験は、常温にて75MPaの高圧水素ガス環境下で歪み速度10-4にて実施した。
【0113】
結果の評価については、引張強さが800MPa、靭性はシャルピー吸収エネルギーが20J以上、耐水素脆化特性は水素ガス環境下と大気中での引張試験時の破断伸びの比が0.8以上を良好(○印)と判断して表7に示した。
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【0116】
【表7】
表7から明らかなとおり、溶接金属が本発明の要件を満たしている継手のA1からA4まででは、引張強さ、靭性およびシャルピー吸収エネルギーがいずれも前記の基準を上回っている。また、耐水素脆化特性は水素ガス環境下と大気中での引張試験時の破断伸びの比が0.8以上であった。即ち、これらの継手は、高強度でありながら優れた靭性と耐水素脆化特性を示している。
これに対して、各元素個々の含有量が本発明で定める範囲内にあっても、前記の(2)式を満たさないB1とB2では、最も重要な凝固の後期段階で、液相中から別の凝固核を形成し、それを中心に別の固相が成長するため、結果として、高強度ではあっても優れた靭性と耐水素脆化特性は得られていない。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、優れた機械的性質と耐食性(耐水素割れ性)を有し、また耐応力腐食割れ性にも優れた鋼である。この鋼は、高圧水素ガスを取り扱う容器や機器、主に燃料電池自動車のボンベ、水素ガススタンドの水素保存容器などの機器部材として極めて有用である。
【0118】
また、本発明の容器等は、溶接継手が含まれていても、その溶接金属が低温靭性および耐水素脆化特性の優れた高強度のものであるから、高圧水素ガスの配管、容器等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
図1は、本発明鋼の光学顕微鏡写真である。
【0120】
図2は、本発明鋼のオーステナイト母相に析出した微細窒化物の分散状態を示す電子顕微鏡写真である。
【0121】
図3は、本発明鋼の0.5μm以下の微細窒化物とその化学組成(組成はメタル成分の割合)を示すX線スペクトル図である。
【0122】
図4は、本発明鋼、従来鋼および比較鋼のN含有量と、引張強度(TS)との関係を示す図である。
【0123】
図5は、本発明鋼、従来鋼および比較鋼のN含有量と、延性(伸び)との関係を示す図である。
【0124】
図6は、本発明鋼、従来鋼および比較鋼のN含有量と、靱性(シャルピー吸収エネルギー)との関係を示す図である。
【0125】
図7は、本発明鋼と従来鋼および比較鋼のPmcn2 (5Cr+3.4Mn−500N)と、引張強度(TS)との関係を示す図である。
【0126】
図8は、本発明鋼と従来鋼および比較鋼のPmcn (5Cr+3.4Mn−500N)と、引張延性(伸び)との関係を示す図である。
【0127】
図9は、本発明鋼と従来鋼および比較鋼の引張強度と、延性(伸び)との関係を示す図である。
【0128】
図10は、本発明鋼と従来鋼の「1/(平均粒径)0.5」と耐力との関係を示す図である。
【0129】
図11は、本発明鋼と従来鋼の「1/(平均粒径)0.5」と伸びとの関係を示す図である。
【0130】
図12は、本発明鋼の0.5μm以下の微細窒化物の量(体積%)と、強度との関係を示す図である。
【0131】
図13は、本発明鋼の0.5μm以下の微細窒化物中のV濃度(窒化物中のメタル組成;質量%)と、強度との関係を示す図である。
【0132】
図14は、本発明鋼の窒化物の結晶構造と、靱性との関係を示す図である。
Claims (15)
- 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22%を超えて30%まで、Ni:17〜30%、V:0.001〜1.0%、N:0.10〜0.50%およびAl:0.10%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下、Ti、ZrおよびHfがそれぞれ0.01%以下であり、かつ、Cr、MnおよびNの含有量が下記の(1)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用ステンレス鋼。
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
但し、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)である。 - 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22%を超えて30%まで、Ni:17〜30%、V:0.001〜1.0%、N:0.10〜0.50%、Al:0.10%以下、および下記の第1群元素の中から選ばれた少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下、Ti、ZrおよびHfがそれぞれ0.01%以下であり、かつ、Cr、MnおよびNの含有量が下記の(1)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用ステンレス鋼。
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
但し、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)である。
第1群元素…Mo:0.3〜3.0%、W:0.3〜6.0%、Nb:0.001〜0.20%およびTa:0.001〜0.40%。 - 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22%を超えて30%まで、Ni:17〜30%、V:0.001〜1.0%、N:0.10〜0.50%、Al:0.10%以下、および下記の第2群元素の中から選ばれた少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下、Ti、ZrおよびHfがそれぞれ0.01%以下であり、かつ、Cr、MnおよびNの含有量が下記の(1)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用ステンレス鋼。
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
但し、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)である。
第2群元素…B:0.0001〜0.020%、Cu:0.3〜5.0%およびCo:0.3〜10.0%。 - 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22%を超えて30%まで、Ni:17〜30%、V:0.001〜1.0%、N:0.10〜0.50%、Al:0.10%以下、および下記の第3群元素の中から選ばれた少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下、Ti、ZrおよびHfがそれぞれ0.01%以下であり、かつ、Cr、MnおよびNの含有量が下記の(1)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用ステンレス鋼。
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
但し、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)である。
第3群元素…Mg:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0001〜0.0050%、La:0.0001〜0.20%、Ce:0.0001〜0.20%、Y:0.0001〜0.40%、Sm:0.0001〜0.40%、Pr:0.0001〜0.40%およびNd:0.0001〜0.50%。 - 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22%を超えて30%まで、Ni:17〜30%、V:0.001〜1.0%、N:0.10〜0.50%、Al:0.10%以下、および下記の第1群元素の中から選ばれた少なくとも1種および下記の第2群元素の中から選ばれた少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下、Ti、ZrおよびHfがそれぞれ0.01%以下であり、かつ、Cr、MnおよびNの含有量が下記の(1)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用ステンレス鋼。
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
但し、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)である。
第1群元素…Mo:0.3〜3.0%、W:0.3〜6.0%、Nb:0.001〜0.20%およびTa:0.001〜0.40%。
第2群元素…B:0.0001〜0.020%、Cu:0.3〜5.0%およびCo:0.3〜10.0%。 - 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22%を超えて30%まで、Ni:17〜30%、V:0.001〜1.0%、N:0.10〜0.50%、Al:0.10%以下、および下記の第1群元素の中から選ばれた少なくとも1種および下記の第3群元素の中から選ばれた少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下、Ti、ZrおよびHfがそれぞれ0.01%以下であり、かつ、Cr、MnおよびNの含有量が下記の(1)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用ステンレス鋼。
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
但し、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)である。
第1群元素…Mo:0.3〜3.0%、W:0.3〜6.0%、Nb:0.001〜0.20%およびTa:0.001〜0.40%。
第3群元素…Mg:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0001〜0.0050%、La:0.0001〜0.20%、Ce:0.0001〜0.20%、Y:0.0001〜0.40%、Sm:0.0001〜0.40%、Pr:0.0001〜0.40%およびNd:0.0001〜0.50%。 - 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22%を超えて30%まで、Ni:17〜30%、V:0.001〜1.0%、N:0.10〜0.50%、Al:0.10%以下、および下記の第2群元素の中から選ばれた少なくとも1種および下記の第3群元素の中から選ばれた少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下、Ti、ZrおよびHfがそれぞれ0.01%以下であり、かつ、Cr、MnおよびNの含有量が下記の(1)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用ステンレス鋼。
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
但し、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)である。
第2群元素…B:0.0001〜0.020%、Cu:0.3〜5.0%およびCo:0.3〜10.0%。
第3群元素…Mg:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0001〜0.0050%、La:0.0001〜0.20%、Ce:0.0001〜0.20%、Y:0.0001〜0.40%、Sm:0.0001〜0.40%、Pr:0.0001〜0.40%およびNd:0.0001〜0.50%。 - 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22%を超えて30%まで、Ni:17〜30%、V:0.001〜1.0%、N:0.10〜0.50%、Al:0.10%以下、および下記の第1群元素の中から選ばれた少なくとも1種、下記の第2群元素の中から選ばれた少なくとも1種および下記の第3群元素の中から選ばれた少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下、Ti、ZrおよびHfがそれぞれ0.01%以下であり、かつ、Cr、MnおよびNの含有量が下記の(1)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用ステンレス鋼。
5Cr+3.4Mn≦500N ・・・(1)
但し、(1)式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)である。
第1群元素…Mo:0.3〜3.0%、W:0.3〜6.0%、Nb:0.001〜0.20%およびTa:0.001〜0.40%。
第2群元素…B:0.0001〜0.020%、Cu:0.3〜5.0%およびCo:0.3〜10.0%。
第3群元素…Mg:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0001〜0.0050%、La:0.0001〜0.20%、Ce:0.0001〜0.20%、Y:0.0001〜0.40%、Sm:0.0001〜0.40%、Pr:0.0001〜0.40%およびNd:0.0001〜0.50%。 - オーステナイトの平均粒径が20μm以下であることを特徴とする請求の範囲第1項から第8項までのいずれかに記載の高圧水素ガス用高強度ステンレス鋼。
- 0.5μm以下の微細窒化物が0.01体積%以上分散析出していることを特徴とする請求の範囲第1項から第9項までのいずれかに記載の高圧水素ガス用高強度ステンレス鋼。
- 0.5μm以下の微細窒化物が、その中にVを10質量%以上含有するものであることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の高圧水素ガス用高強度ステンレス鋼とその鋼。
- 0.5μm以下の微細窒化物の少なくとも一部の結晶構造が面心立方晶であることを特徴とする請求の範囲第10項または第11項に記載の高圧水素ガス用高強度ステンレス鋼。
- 請求の範囲第1項から第12項までのいずれかに記載のステンレス鋼からなる高圧水素ガス用の容器、配管およびそれらの付属機器。
- 母材が請求の範囲第1項から第12までのいずれかに記載のステンレス鋼であり、溶接継手の溶接金属が、質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22を超えて30%まで、Ni:8〜30%、V:0.001〜1.0%、Mo:0〜3.0%、W:0〜6.0%、N:0.1〜0.5%、Al:0.10%以下、Ti、Nb、Zr、HfおよびTa:それぞれ0〜0.01%であり、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下で、かつ、下記の(2)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用の容器、配管およびそれらの付属機器。
−11≦Nieq−1.1×Creq≦−8 ・・・・・・(2)
但し、Nieq=Ni+30×(C+N)−0.5×Mn ・・・・(3)
Creq=Cr+Mo+1.5×Si ・・・・・・・・・(4)
なお、上記(3)式および(4)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)である。 - 母材が請求項1から12までに記載のステンレス鋼であり、溶接継手の溶接金属が、質量%で、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:3〜30%、Cr:22を超えて30%まで、Ni:8〜30%、V:0.001〜1.0%、Mo:0〜3.0%、W:0〜6.0%、N:0.1〜0.5%、Al:0.10%以下、Ti、Nb、Zr、HfおよびTa:それぞれ0〜0.01%であり、下記の第2群元素の中から選ばれた少なくとも1種または/および下記の第3群元素の中から選ばれた少なくとも1種を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のPが0.030%以下、Sが0.005%以下で、かつ、下記の(2)式を満たすことを特徴とする高圧水素ガス用の容器、配管およびそれらの付属機器。
第2群元素…B:0.0001〜0.020%、Cu:0.3〜5.0%およびCo:0.3〜10.0%。
第3群元素…Mg:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0001〜0.0050%、La:0.0001〜0.20%、Ce:0.0001〜0.20%、Y:0.0001〜0.40%、Sm:0.0001〜0.40%、Pr:0.0001〜0.40%およびNd:0.0001〜0.50%。
−11≦Nieq−1.1×Creq≦−8 ・・・・(2)
但し、Nieq=Ni+30×(C+N)−0.5×Mn ・・・(3)
Creq=Cr+Mo+1.5×Si ・・・・・・・・(4)
で、(3)式および(4)式の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を示す。
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