JP4784239B2 - ティグ溶接用フェライト系ステンレス鋼溶加棒 - Google Patents
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満たすことにより片側溶接で完全溶け込みにより安定的に裏波ビードを形成する知見を得た。本発明の溶接継手はJIS Z 3001重ねすみ肉の片側溶接である。
1 質量%で,C:0.009%以下,N:0.01%以下,Si:0.25〜0.40%,Mn:0.10〜0.20%,P:0.020%以下,S:0.002%以下,Cr:18.5〜19.5%, T.Al:0.050〜0.060%,O:0.0070%以下,Mo:1.85〜1.95%,Nb:0.01〜0.30%,Ti:0.20〜0.50%, Ca:0.0005%以下を含有し,Ti/Al<5および(Ti+Nb)/(C+N)>30の条件を満たし,残部がFeおよび不可避不純物からなることを 特徴とするティグ溶接用フェライト系ステンレス鋼溶加棒。
但し、Ti,Al,Nb,C及びNは各元素の含有量を質量%で表現したものである。
Cは溶接金属の靭性向上のため含有量はできるだけ少なくする必要がある。また,Crと結合して結晶粒界に炭化物として析出すると耐食性を低下させるため少なくする必要があり,Cは0.009%以下に限定した。
NはCと同様に,多量に含有していると炭窒化物を生成し,溶接金属の靭性劣化の原因となる。よって,Nは0.01%以下に限定した。
Siは脱酸元素であり,溶鋼の流動性を向上させるが,0.25%未満では効果が不十分であり,0.25%以上含有させることが必要である。一方,多量に含有していると溶接金属の靭性劣化の原因となるので,0.40%以下とした。よって,Siは0.25〜0.40%の範囲に限定した。
MnはSiと同様に脱酸効果を有するが0.10%未満では効果はなく,一方,多量に含有すると耐食性を劣化させるので,含有量を低下させる必要があり,0.20%以下とした。よって,Mnは0.10〜0.20%の範囲に限定した。
Pは多量に含有すると溶接割れを生じ易くなる.よって,0.020%以下に限定した。Sは多量に含有していると溶接割れを生じ易くなるとともに,耐食性を低下させる。よって,0.002%以下に限定した。
Crは耐食性保持の点から不可欠な元素であり,温水環境下においてはとくに耐食性維持のため18.5%以上の添加が必要であるが,19.5%を超えて含有すると溶接材料製造時の冷間線引工程において割れが発生しやすくなるので18.5〜19.5%の範囲に限定した。
Moは耐孔食性向上の観点から不可欠な元素であり,本発明の目的を達成するためには1.85%以上の添加が必要である。一方,1.95%を超えて含有すると強度が上昇し,延性が低下する.よって,Moは1.85〜1.95%の範囲に限定した。
NbはC, Nを炭・窒化物として固定し,粒界腐食を防止するため不可欠な元素である。しかしながら、溶接金属中に含有されるべき量はTiとの合計量であり、鋼板からの希釈を考慮した場合、溶接ワイヤから添加しなくても耐食性の低下は認められないことより0.01%以上とした。0.30%を超える添加は溶接金属の靭性を損なうので、Nb含有量は0.01〜0.30%の範囲に限定した。
TiはCと結合して,溶接金属中の炭化物析出を抑えて耐食性を向上させる.0.20%以上の添加が有効であるが,0.50%超えの添加は溶接ワイヤの製造性,溶接部の延性・靭性を低下させる。よってTiは0.20〜0.50%の範囲に限定した。
T.Alは本発明において重要で溶接部の溶け込み深さに影響し,0.050%未満ではその効果が小さく,0.060%を超えると溶け込み深さを低下させる。よって,T.Alは0.050〜0.060%の範囲に限定した。
Oは多量に含まれると溶接部の靭性および延性を阻害する。よって,Oは0.0070%以下とした。
Caは多量に含まれると溶接時のアーク安定性が低下し,スパッタ発生量が増加するので,Caは0.0005%以下にした。
Ti/Alが高すぎるとティグ溶接時の溶融池の湯流れの内向きの流れが強くなり,溶接ビードの裏波は出易くなるものの,安定的に裏波ビードを形成しづらくなる。よって,Ti/Al<5とする。
NbとTiは溶接金属中のCおよびNを炭窒化物として固定し,粒界腐食を防止するため低すぎると耐食性が低下するため(Ti+Nb)/(C+N)>30とした。但し、Ti,Al,Nb,C及びNは各元素の含有量を質量%で表現したものである。
Niは溶接金属の靭性を向上させるために有効である。0.10%以上の添加が有効であるが,0.35%を超えると応力腐食割れ感受性が高くなるので0.35%以下に限定した。
Cuは低温靭性と加工性の両方を向上させるのに有効な元素である。その効果は0.03%以上の添加が有効である。しかし,多量に添加すると加工性を阻害する。よって,Cuは0.03〜0.07%の範囲に限定した。
Bは多量に含有していると靭性が劣化するので0.0005%以下とした。
Vは炭・窒化物生成元素であり,靭性および延性に有害なCやNを固定する作用があり,0.03%以上の添加が必要であるが,0.07%を超える添加は溶接金属の靭性を損なうので,V含有量は0.03〜0.07%の範囲に限定した。
Tiは溶接部の溶け込み形状に影響し、安定的に裏波ビードを形成するためには、0.005%
以下とするとよい。
NbはC,Nを炭窒化物として固定し、粒界腐食を防止するため不可欠な元素であり、0.26%以上の添加が好ましいが、0.30%を超える添加は溶接金属の靭性を損なうのでNb含有量は0.26〜0.30%の範囲に限定した。
Crは耐食性保持の観点から不可欠な元素であり、温水環境下においては特に耐食性維持のため18.5%以上の添加が好ましいが、19.5%を超えて含有すると脆化が発生しやすくなるので、18.5〜19.5%の範囲に限定した。
Moは耐孔食性向上の観点から不可欠な元素であり、本発明の目的を達成するためには1.85%以上の添加が好ましい。一方、1.95%を超えて含有すると強度が上昇し、延性が低下する。よって、Moは1.85〜1.95%の範囲に限定した。
に示す鋼板を用いて,表3に示す溶接条件で2枚の鋼板を冶具に固定し,重ねすみ肉継手溶接をティグ溶接で行った。溶接後,X線透過試験により割れの有無を評価した。
Claims (5)
- 質量%で,C:0.009%以下,N:0.01%以下,Si:0.25〜0.40%,Mn:0.10〜0.20%,P:0.020%以下,S:0.002%以下,Cr:18.5〜19.5%, T.Al:0.050〜0.060%,O:0.0070%以下,Mo:1.85〜1.95%,Nb:0.01〜0.30%,Ti:0.20〜0.50%, Ca:0.0005%以下を含有し,Ti/Al<5および(Ti+Nb)/(C+N)>30の条件を満たし,残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とするティグ溶接用フェライト系ステンレス鋼溶加棒。
但し、Ti,Al,Nb,C及びNは各元素の含有量を質量%で表現したものである。 - 質量%で,C:0.009%以下,N:0.01%以下,Si:0.25〜0.40%,Mn:0.10〜0.20%,P:0.020%以下,S:0.002%以下,Cr:18.5〜19.5%, T.Al:0.050〜0.060%,O:0.0070%以下,Mo:1.85〜1.95%,Nb:0.01〜0.30%,Ti:0.20〜0.50%, Ca:0.0005%以下、さらに,Ni:0.10〜0.35%,Cu:0.03〜0.07%,B:0.0005%以下,V:0.03〜0.07%の1種または2種以上を含有し、Ti/Al<5および(Ti+Nb)/(C+N)>30の条件を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とするティグ溶接用フェライト系ステンレス鋼溶加棒。
但し、Ti,Al,Nb,C及びNは各元素の含有量を質量%で表現したものである。 - 板厚0.7〜1.2mmの鋼材を重ねすみ肉の片側溶接で完全溶け込みにより安定的に裏波ビードを形成する際、質量%で,C:0.009%以下,N: 0.01%以下,Si:0.25〜0.40%,Mn:0.10〜0.20%,P:0.020%以下,S:0.002%以下,Cr:18.5〜19.5%, T.Al:0.050〜0.060%,O:0.0070%以下,Mo:1.85〜1.95%,Nb:0.01〜0.30%,Ti:0.20〜0.50%, Ca:0.0005%以下を含有し,Ti/Al<5および(Ti+Nb)/(C+N)>30の条件を満たし,残部がFeおよび不可避不純物からなるティグ溶接用フェライト系ステンレス鋼溶加棒で溶接することを特徴とするティグ溶接継手の製造方法。
但し、Ti,Al,Nb,C及びNは各元素の含有量を質量%で表現したものである。 - 板厚0.7〜1.2mmの鋼材を重ねすみ肉の片側溶接で完全溶け込みにより安定的に裏波ビードを形成する際、質量%で,C:0.009%以下,N: 0.01%以下,Si:0.25〜0.40%,Mn:0.10〜0.20%,P:0.020%以下,S:0.002%以下,Cr:18.5〜19.5%, T.Al:0.050〜0.060%,O:0.0070%以下,Mo:1.85〜1.95%,Nb:0.01〜0.30%,Ti:0.20〜0.50%, Ca:0.0005%以下,さらに,Ni:0.10〜0.35%,Cu:0.03〜0.07%,B:0.0005%以下,V:0.03〜0.07%の1種 または2種以上を含有し、Ti/Al<5および(Ti+Nb)/(C+N)>30の条件を満たし,残部がFeおよび不可避不純物からなるティグ溶接用フェライト系ステンレス鋼溶加棒で溶接することを特徴とするティグ溶接継手の製造方法。
但し、Ti,Al,Nb,C及びNは各元素の含有量を質量%で表現したものである。 - 前記鋼材が、質量%でC:0.004〜0.005%、Si:0.29〜0.31%、Mn:0.14〜0.19%、P:0.028〜0.036%、S:0.0015〜0.0017%、Ti:0.005%以下、Nb:0.26〜0.30%,Cr:18.5〜19.5%,Mo:1.85〜1.95%、残部がFeおよび不可避不純物を含有することを特徴とする請求項3または4に記載のティグ溶接継手の製造方法。
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