JPWO2004073774A1 - 2室型プレフィルドシリンジ - Google Patents
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Abstract
Description
上記従来の2室型プレフィルドシリンジ(50)は、プランジャーロッド(63)を押進してエンド栓体(54)を先端側へ移動させると、前記の第2室収容成分(58)を介してミドル栓体(53)が押圧され移動する。これにより、第1室(55)の内圧が高まってフロント栓体(52)も移動する。前記の針装着部(60)内には栓体収容室(64)が形成してあり、この栓体収容室(64)の内周壁には凹状の連通溝(65)を形成してある。このため、前記のフロント栓体(52)が移動して上記の栓体収容室(64)内に入り込むと、前記の第1室(55)が上記の連通溝(65)やフロント栓体(52)と栓体収容室(64)内面との隙間を介して注射針(61)内の液通路に連通する。この状態でさらにプランジャーロッド(63)を押進すると、上記のミドル栓体(53)が移動してバイパス(59)形成位置に達する。これにより、前記の第1室(55)と第2室(57)とがバイパス(59)を介して連通するので、プランジャーロッド(63)の押進により上記の第2収容成分(58)がバイパス(59)を通過して第1室(55)内へ流入し、前記の第1収容成分(56)とこの流入した第2収容成分(58)とが混合される。
しかしながら上記の従来技術では、前記の第1室(55)と第2室(57)との連通初期において、バイパス(59)を通過する液状の第2収容成分(58)が大きな運動エネルギーを有する。このため、プランジャーロッド(63)を過剰に速く押し進めると、上記の第2収容成分(58)がバイパス(59)を通り抜けて勢いよく飛び出し、その一部が前記の針装着部(60)に達して、前記の栓体収容室(64)内のフロント栓体(52)と栓体収容室(64)内面との隙間や前記の連通溝(65)内に流入する惧れがある。
そして、上記の連通溝(65)内等に一旦流入した第2収容成分(58)は、第1室(55)内へ容易に戻れないことから、その後にプランジャーロッド(63)を押進させると第1室(55)内の空気とともに押し出されて注射針(61)の先端から漏出する。この結果、2室型プレフィルドシリンジ(50)の周囲を液状の第2収容成分(58)で汚損するばかりか、上記の第1収容成分(56)の分散・溶解に必要な液量が不足し、適正に分散・溶解されなくなる等の惧れがあった。
本発明は上記の問題点を解消し、第1室と第2室との連通操作において第2室内の液状の収容成分が第1室内へ流入する際に、この収容成分の一部が第1室を通り抜けて筒体先端の針装着部へ到達することを防止した、2室型プレフィルドシリンジを提供することを技術的課題とする。
即ち、筒体(2)の第1端(2a)である先端に針装着部(3)を設け、この筒体(2)内に、第1端(2a)側から順に、フロント栓体(6)とミドル栓体(7)とエンド栓体(8)とを保密状に装着する。フロント栓体(6)とミドル栓体(7)との間には第1室(9)を形成し、この第1室(9)内に第1収容成分(11)を収容する。ミドル栓体(7)とエンド栓体(8)との間には第2室(10)を形成し、この第2室(10)内に液状の第2収容成分(12)を収容する。筒体(2)の内面に凹溝状のバイパス(14)を形成し、このバイパス(14)の、筒体(2)の軸心方向に沿った長さを、ミドル栓体(7)よりも長くする。上記の第1室(9)と第2室(10)とは、ミドル栓体(7)が第1端(2a)側へ移動してバイパス(14)形成位置に達することで、このバイパス(14)を介して互いに連通するように構成する。そして、ミドル栓体(7)が第1端(2a)側へ移動してその後端(7b)がバイパス(14)の後端部(19)に達した際の、筒体(2)の第1端(2a)とフロント栓体(6)の後端(6b)との間の筒体内容積(VS)を、第2収容成分(12)の容積(VC)の60%以上に設定する。
本発明は、次のように作用する。
投薬準備の際には、針装着部を上方に向け、プランジャーロッドを押進してエンド栓体を第1端側へ移動させる。これによりミドル栓体が第1端側へ移動してバイパス形成位置に達し、上記の第1室内と第2室内とがはじめて連通する状態(以下、液移行開始状態という)となる。このとき、上記のミドル栓体の移動により第1室内も昇圧するので、フロント栓体も筒体内面との摩擦力に抗して第1端側へ移動している。
上記の液移行開始状態からさらにエンド栓体を押し進めると、第2室内の液状の第2収容成分が上記のバイパスを経て上記の第1室内へ移行する。この第2収容成分の流入により第1室の内圧が高まるので、上記のフロント栓体は筒体内面との摩擦力に抗して第1端の針装着部に向かって移動する。
このとき、上記のエンド栓体を過剰に速く移動させると、上記の第2収容成分が第1室内へ勢い良く流入し、第1室内を通過しようとする。しかし上記のフロント栓体は筒体内に保密状に装着されているため、上記の第2収容成分はこのフロント栓体の後端に衝突するだけで、針装着部には達しない。フロント栓体は、第1室内への上記の第2収容成分の流入により移動するが、筒体との摩擦力に抗して移動するため、上記の第2収容成分の流入に対し、遅れて移動する。上記の液移行開始状態における筒体の先端とこのフロント栓体の後端との間の筒体内容積(以下、基準容積という)は、上記の第2収容成分の容積の60%以上に設定してあるので、フロント栓体は上記の第2収容成分の移行が完了するまで筒体内に位置しており、筒体先端側の封止状態が維持される。
上記のエンド栓体の移動を遅い速度で操作すると、上記の第2収容成分の第1室内への流入に対してフロント栓体の移動の遅れが少なくなるので、上記の基準容積を上記の第2収容成分の容積よりも小さく設定した場合、第2収容成分の移行が完了する前にフロント栓体の全体が針装着部内の栓体収容室に入り込む場合がある。しかしながら、適正な速度やこれよりも遅い速度でエンド栓体を押し進めた場合は、上記の第2収容成分の第1室内への流入が緩やかであるため、フロント栓体の全体が栓体収容室に入り込んだのちに、前記の第2収容成分が第1室内を通り抜けて針装着部に達する惧れはない。
本発明は次の利点を有する。
第1室と第2室との連通操作において上記の第2収容成分が第1室内へ流入する際に、エンド栓体を過剰に速く移動させても、第2収容成分の移行が完了するまでフロント栓体が筒体の第1端側を封止していることから、第2室内からバイパスを経て第1室内へ勢い良く流入した第2収容成分は、フロント栓体の後端に衝突するだけであり、この第2収容成分が筒体の針装着部へ到達することが効果的に防止される。この結果、2室型プレフィルドシリンジの周囲を上記の第2収容成分で汚損することを防止できるうえ、第1室内の第1収容成分とこの第1室内へ移行させた第2収容成分とを適正に分散・溶解させることができる。
上記の基準容積は、上記の第2収容成分の容積に対して大きいほど、フロント栓体の移動遅れが少なくても筒体先端側を確実に封止できることから、第2収容成分の容積の75%以上に設定するのが好ましく、80%以上に設定するとさらに好ましい。
上記の基準容積は、上記の第2室内の第2収容成分の容積と同等よりも大きければ、上記の第2収容成分が全て第1室内へ流入してもフロント栓体の全体が筒体先端を越えて上記の栓体収容室に入り込むことがない。しかしながら、上記の基準容積を大きくすると筒体が不必要に長くなる惧れがある。また、フロント栓体を押し進める距離が長くなる分、長いプランジャーロッドが必要となる。このため、筒体の後端部に設けた鍔部とプランジャーロッドの後端との間に指先を掛ける上記の連通・混合操作は、手が小さい作業者にとっては特に、困難となる惧れがある。さらに上記の筒体が過剰に長くなると投薬操作の際に針先が不安定となり易く、患者に刺通した針先が震えて無用の苦痛を与える惧れもある。
このため、上記の基準容積は、上記の第2収容成分の容積と同等か、若しくはこれよりも小さくすることが好ましい。具体的には、液移行開始状態における上記の筒体の先端と上記のフロント栓体の後端との間隔は、30mm以下にするのが好ましく、25mm以下にするとさらに好ましい。
上記のバイパスは、保管中、ミドル栓体による封止性能を確保するため、このミドル栓体と重ならない位置に形成する必要がある。しかしこのバイパスを筒体先端(第1端)からできるだけ離れた位置に形成し、バイパスの後端部とミドル栓体の前端とをできるだけ近接させて形成すると、液移行開始状態までのミドル栓体の移動距離が少なく済む。この結果、液移行開始状態までのフロント栓体の移動距離も少なくできるので、上記の液移行開始状態での基準容積を大きくすることができ、好ましい。
上記の第2収容成分は密封収容されたのち蒸気滅菌などされるが、その後に第1室へ収容される第1収容成分が湿気による影響を受けないように、通常、上記のミドル栓体は第1室側と第2室側の2個の栓体が用いられる。このミドル栓体の全長は、密封性能や移動時の転倒防止等のため、特に内径の小さい筒体にあっては、筒体内径よりも大きな寸法に設定されている。例えば内径10.5mmの筒体にあっては、長さが6mmの栓体を2個、合計で12mmのミドル栓体が用いられている。
これに対し、上記のミドル栓体の全長を短く、例えば筒体内径の75〜100%の寸法に設定すると、前記のバイパスを筒体先端から離れた位置に形成することができるうえ、液移行開始状態までのミドル栓体の移動距離が短く済み、従って、この液移行開始状態までのフロント栓体の移動距離も少なくできるので、上記の基準容積を大きくすることができ、好ましい。またこのミドル栓体の全長を短くした場合、液移行開始状態までのミドル栓体の移動距離が短いので、ミドル栓体の移動による第1室内の圧力上昇が少なく済むことから、この第1室の容積を小さくしてもミドル栓体が長い場合と同等の効果を得ることができ、筒体の全長を短くすることもできる。
上記の2個の栓体を用いたミドル栓体は、両栓体を共に短い同じ寸法に形成すると部品管理が容易になる利点がある。これに対し、一方の栓体を他方の栓体よりも長く形成することもでき、この場合には、この長く形成した栓体に短い他方の栓体が支持されるので、好ましい。特に、第1室側の栓体の長さは、液移行時にバイパスを通過する液体の圧力等で転倒しないように、筒体内径の50%以上の寸法に設定するのが好ましい。
上記のミドル栓体の全長を短い寸法に設定すると、上記のバイパスの長さを短くしても良好に液移行させることができる。そしてこのバイパスの長さを短くすると、筒体先端とバイパスの前端部との距離が長くなり、液移行時にバイパスを飛び出した第2収容成分が筒体先端に達しにくくなるので、好ましい。
上記のバイパスを筒体先端から離れた位置に形成してその後端部をミドル栓体に近接させたり、ミドル栓体の全長を短くしたりすることで、液移行完了時のミドル栓体と筒体先端との距離を長くすることができる。この結果、投薬準備の際に第1収容成分と第2収容成分とを混合するための空間容積を大きくすることができ、混合操作を容易にできるので、より好ましい。
第4図と第5図は、第2収容成分の挙動についての測定結果を示す対比表であり、第4図は、フロント栓体の装着位置を変化させたときの測定結果を示す対比表1であり、第5図は、バイパス形成位置とミドル栓体の全長とを変化させたときの測定結果を示す、対比表2である。
第6図は従来技術を示す第1図相当図である。
第1図に示すように、この2室型プレフィルドシリンジ(1)は筒体(2)の第1端である先端(2a)に針装着部(3)を備えており、この針装着部(3)に注射針(4)を取り付け、この注射針(4)を覆う状態に保護キャップ(5)を被せてある。
なお、本発明では、上記の注射針(4)を、この実施形態のように予め針装着部(3)へ着脱可能に取り付けておいてもよく、或いは、投薬準備を完了した後に針装着部(3)へ取り付けるように構成してもよい。
上記の筒体(2)内には、先端側から順にフロント栓体(6)とミドル栓体(7)とエンド栓体(8)とを保密状に装着しており、フロント栓体(6)とミドル栓体(7)との間には第1室(9)が形成され、ミドル栓体(7)とエンド栓体(8)との間には第2室(10)が形成されている。上記の第1室(9)内には粉末薬剤等の第1収容成分(11)が収容され、上記の第2室(10)内には溶解液などの第2収容成分(12)が収容されている。
なお、この実施形態では第1収容成分として粉末薬剤を用いたが、本発明で用い得る第1収容成分はこの実施形態のものに限定されず、凍結乾燥剤など他の固形剤のほか、液状成分であってもよい。また、上記の第2収容成分は溶解液や分散液に限定されず、薬液等であってもよい。
上記の第1室(9)の側壁には、例えば筒体(2)の略中央部に、筒体(2)の軸心方向に沿って膨出部(13)が形成してあり、この膨出部(13)の内面に、前記のミドル栓体(7)の長さよりも長い凹溝状のバイパス(14)を形成してある。このバイパス(14)の形成位置は、筒体(2)の先端(2a)から離れ過ぎると、ミドル栓体(7)やエンド栓体(8)が筒体先端(2a)から離れた位置に装着されることとなり、筒体(2)の全長が長くなる問題を生じる。しかしこのバイパス(14)は、好ましくは、ミドル栓体(7)の装着位置等に影響しない範囲で、後端部(19)をミドル栓体(7)に近接させて筒体(2)の先端(2a)からできるだけ離れた位置に形成される。
上記の第1収容成分(11)は、上記の第2収容成分(12)を第2室(10)に密封収容して蒸気滅菌したのち、第1室(9)へ収容される。このとき、この第1収容成分(11)が湿気による悪影響を受けないように、上記のミドル栓体(7)は第1室側の栓体と第2室側の栓体とから構成してある。ただし本発明では上記のミドル栓体(7)を1つの栓体から構成してもよいことはいうまでもない。
上記のミドル栓体(7)は、全体の長さ(LM)が筒体(2)の内径よりも長いものを、例えば筒体(2)の内径が10.5mmの場合には全長(LM)が12mmのものを用いてもよい。しかし、このミドル栓体(7)は、例えば筒体(2)内径の75〜100%の寸法のように、その全長が短いものを用いるとより好ましい。このとき、2個の栓体でミドル栓体(7)を構成する場合は、第1室(9)側の栓体の長さを、筒体(2)内径の50%以上とするのが好ましい。
上記の筒体(2)の後端部外面には鍔部(15)が設けてあり、筒体(2)後端の開口にプランジャーロッド(16)が挿通され、このプランジャーロッド(16)の先端が上記のエンド栓体(8)に固定してある。上記のプランジャーロッド(16)を介してエンド栓体(8)を押し進める場合は、例えばこのプランジャーロッド(16)の後端に親指を掛け、上記の鍔部(15)に他の指先を掛けて操作される。
なお、上記のプランジャーロッド(16)は、2室型プレフィルドシリンジ(1)の保管中はコンパクトにするため取外しておき、投薬準備の際にエンド栓体(8)へ固定するように構成してもよい。
前記の筒体(2)の先端に固定した針装着部(3)には、内部に栓体収容室(17)が形成してある。この栓体収容室(17)の内周壁には凹状の連通溝(18)が形成してあり、フロント栓体(6)が先端(2a)側へ押し進められてこの栓体収容室(17)内に入り込むと、前記の第1室(9)と注射針(4)内の液通路とがこの連通溝(18)やフロント栓体(6)と栓体収容室(17)内面との間隙を介して連通する。
投薬準備の際に、上記のプランジャーロッド(16)でエンド栓体(8)を押し進めるとミドル栓体(7)が移動して、第2図に示すように、このミドル栓体(7)の後端(7b)が上記のバイパス(14)の後端部(19)に達し、上記の第1室(9)と第2室(10)とがバイパス(14)を介してはじめて連通する液移行開始状態(S)となる。
このとき、第1室(9)の内圧が高まるので、前記のフロント栓体(6)が先端(2a)側へ移動する。このフロント栓体(6)と筒体(2)内面との間には摩擦力が発生するので、上記のフロント栓体(6)の移動は、エンド栓体(8)やミドル栓体(7)の移動に対して遅れを生じる。
上記のフロント栓体(6)の移動遅れや移動寸法は、上記の摩擦力に応じて異なり、摩擦力が大きいと移動遅れが大きくなり、移動寸法が小さくなる傾向がある。この摩擦力は、筒体(2)への装着の際の栓体(6・7・8)の直径方向への圧縮率や、筒体(2)に対する栓体(6・7・8)の接触面積、筒体(2)内面の平滑さや内面処理法などにより異なるが、摩擦力が大き過ぎるとプランジャーロッド(16)の押圧操作を円滑に行えなくなる惧れがあり、一方、摩擦力が小さ過ぎると、例えば輸送等で外圧や温度の急激な変化等の影響を受けて栓体(6・7・8)が不用意に移動する惧れがある。そこで、上記の各栓体(6・7・8)と筒体(2)内面との間には、適当な摩擦力を生じるように栓体(6・7・8)の寸法が設定され、また通常は、上記の筒体(2)内面にシリコン処理等が施される。
上記の液移行開始状態(S)での、上記の筒体(2)の先端(2a)と上記のフロント栓体(6)の後端(6b)との間の筒体内容積、即ち基準容積(VS)は、上記の第2収容成分(12)の容積(VC)の60%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上に設定されている。
また、上記の筒体(2)が過剰に長くならないように、上記の基準容積(VS)は、好ましくは、第2収容成分(12)の容積(VC)と同等か、これりよりも小さい値に設定されており、具体的には上記の筒体(2)の先端(2a)と上記のフロント栓体(6)の後端(6b)との間隔(L)が30mm以下に、好ましくはこの間隔(L)が25mm以下に設定されている。
上記の液移行開始状態(S)から、注射針(4)の針先を上方に向けた姿勢でさらにプランジャーロッド(16)を押し進めると、エンド栓体(8)が移動して上記の第2収容成分(12)が上記のバイパス(14)を経て第1室(9)内に流入する。このとき、プランジャーロッド(16)の移動を、例えば5〜7mm/秒程度の適正な速度や、これよりも遅い速度で操作すると、上記のバイパス(14)を通過する第2収容成分(12)の勢いが弱くなり、第1室(9)内へ緩やかに流入する。しかし、プランジャーロッド(16)の移動を、例えば20mm/秒程度の過剰に速い速度で操作すると、上記の第2収容成分(12)が第1室(9)内へ勢い良く流入し、フロント栓体(6)の後端(6b)に突き当る。
このとき、上記のフロント栓体(6)の後端(6b)は筒体(2)内に位置しており、しかもこのフロント栓体(6)は第2収容成分(12)の流入量に対して遅れて移動することから、この第2収容成分(12)の移行が完了するまで、筒体(2)の先端側がフロント栓体(6)で封止される。この結果、第1室(9)内へ勢い良く流入した第2収容成分(12)が第1室(9)を通り抜けて前記の針装着部(3)に達することが防止される。
上記のプランジャーロッド(16)の押進によりエンド栓体(8)が移動してミドル栓体(7)に当接すると、上記の第2収容成分(12)の移行が完了する。この液移行完了状態からさらにプランジャーロッド(16)を押し進めて、第3図に示すように、ミドル栓体(7)を、その先端がバイパス(14)の先端部を越えて筒体(2)の所定位置に形成した指示線(20)に達するまで移動させる。このとき、上記のフロント栓体(6)は全体が筒体(2)の先端(2a)を越え、前記の栓体収容室(17)に入り込む。そして上記の第1収容成分(11)を第2収容成分(12)に分散・溶解させた後、気泡抜きを行って投薬準備の操作を完了する。
次に、上記の2室型プレフィルドシリンジにおいて、フロント栓体の装着位置を変化させたときの、上記の第2収容成分の挙動について測定した。各実施例と比較例の条件は以下のとおりである。
第1実施例では、内径が10.5mm、全長が95mmの筒体を用い、長さが7mmのフロント栓体を用いた。そしてこのフロント栓体を、その後端と筒体の先端との間隔が22mmとなる位置に装着した。
第2実施例では、第1実施例と同様の筒体とフロント栓体を用い、このフロント栓体を、その後端と筒体の先端との間隔が27mmとなる位置に装着した。
第1比較例では、第1実施例と同様の筒体とフロント栓体を用い、このフロント栓体を、その後端と筒体の先端との間隔が17mmとなる位置に装着した。
第3実施例では、内径が10.5mm、全長が90mmの筒体を用い、第1実施例と同じフロント栓体を用いた。そしてこのフロント栓体を、その後端と筒体の先端との間隔が22mmとなる位置に装着した。
第4実施例では、第3実施例と同様の筒体とフロント栓体を用い、このフロント栓体を、その後端と筒体の先端との間隔が27mmとなる位置に装着した。
第2比較例では、第3実施例と同様の筒体とフロント栓体を用い、このフロント栓体を、その後端と筒体の先端との間隔が17mmとなる位置に装着した。
なお、上記の第1〜第4実施例、および第1、第2比較例では、第2収容室に1.1mLの液状の第2収容成分を収容した。
第5実施例では、内径が14.0mm、全長が106mmの筒体を用い、長さが第1実施例と同様、7mmのフロント栓体を用いた。そしてこのフロント栓体を、その後端と筒体の先端との間隔が22mmとなる位置に装着した。
第6実施例では、第5実施例と同様の筒体とフロント栓体を用い、このフロント栓体を、その後端と筒体の先端との間隔が27mmとなる位置に装着した。
第3比較例では、第5実施例と同様の筒体とフロント栓体を用い、このフロント栓体を、その後端と筒体の先端との間隔が17mmとなる位置に装着した。
なお、上記の第5実施例、第6実施例、および第3比較例では、第2収容室に1.65mLの液状の第2収容成分を収容した。
上記の各2室型プレフィルドシリンジを操作して、液移行開始状態での筒体の先端とフロント栓体の後端との間の筒体内容積(基準容積)を測定するとともに、第2収容成分が針装着部に達する、いわゆる液飛び現象の発生を測定した。その結果を第4図の対比表1に示す。
この対比表1から明らかなように、プランジャーロッドの押進を適正速度である7mm/秒で操作した場合には、各実施例及び比較例はいずれも液飛び現象を生じなかった。しかしながら、プランジャーの押進速度を20mm/秒に速めた場合には、基準容積が第2収容成分の容積の60%未満である各比較例ではいずれも液飛び現象が多数発生するのに対し、基準容積が第2収容成分の容積の60%以上ある本発明の実施例では液飛び現象の発生が少なく、特に75%以上に設定した第1、第2、第4、第5、及び第6実施例では、液飛び現象の発生が皆無であった。
次に、上記の2室型プレフィルドシリンジに対し、バイパス形成位置とミドル栓体の全長とを変化させたときの、上記の第2収容成分の挙動について、上記と同様に液飛び現象の発生を測定した。その結果を第5図の対比表2に示す。
即ち、上記の第3実施例や第2比較例では、バイパスを、その後端部と筒体先端との距離が49mmとなる位置に形成し、ミドル栓体は全長が12mmのものを用いた。
これに対し、第7実施例では、バイパスを、その後端部と筒体先端との距離が52mmとなる位置に形成し、ミドル栓体の全長は10.5mmのものを用いた。その他の条件は第3実施例と同様とした。
また、第8実施例では、バイパスを、その後端部と筒体先端との距離が54mmとなる位置に形成し、ミドル栓体の全長は9mmのものを用いた。さらに、フロント栓体を上記の第2比較例と同様、その後端と筒体の先端との間隔が17mmとなる位置に装着した。その他の条件は第3実施例と同様とした。
上記の第7実施例と第3実施例との対比から明らかなように、バイパスを筒体先端から離れた位置に形成してその後端部をミドル栓体に近接させ、さらにミドル栓体の全長を短くすると、液移行開始状態までのミドル栓体の移動距離が少なく済むため、フロント栓体の移動距離も少なくすることができ、この結果、容積比率を大きくすることができて、プランジャーの押進速度を20mm/秒に速めた場合にも、液飛び現象の発生が防止された。
また、第8実施例と第2比較例や第3実施例等との対比から明らかなように、バイパスを筒体先端から更に離れた位置に形成してその後端部をミドル栓体に近接させ、ミドル栓体の全長を更に短くすると、液移行開始状態までのミドル栓体の移動距離が一層少なく済み、フロント栓体の移動距離も少なくできた。この結果、容積比率を大きくできるので、フロント栓体を筒体先端に近づけて装着した場合にプランジャーの押進速度を速めて操作しても、液飛び現象の発生が皆無であった。
Claims (4)
- 筒体(2)は第1端(2a)を有するとともに、この第1端(2a)に針装着部(3)を備え、
フロント栓体(6)とミドル栓体(7)とエンド栓体(8)とが、筒体(2)の第1端(2a)側から順に、筒体(2)内に保密状に装着され、
第1室(9)が筒体(2)内のフロント栓体(6)とミドル栓体(7)との間に形成されて、この第1室(9)内に第1収容成分(11)が収容され、
第2室(10)が筒体(2)内のミドル栓体(7)とエンド栓体(8)との間に形成されて、この第2室(10)内に第2収容成分(12)が収容され、
フロント栓体(6)とミドル栓体(7)はそれぞれ第1端(2a)から遠い側に後端(6b・7b)を備え、
凹溝状のバイパス(14)が筒体(2)の内面に形成され、このバイパス(14)は筒体(2)の軸心方向に沿った長さがミドル栓体(7)よりも長く、且つ、第1端(2a)から遠い側に後端部(19)を備えており、
第1室(9)と第2室(10)とは、ミドル栓体(7)が第1端(2a)側へ移動してバイパス(14)形成位置に達することでこのバイパス(14)を介して互いに連通する、2室型プレフィルドシリンジであって、
ミドル栓体(7)が第1端(2a)側へ移動してその後端(7b)がバイパス(14)の後端部(19)に達した際の、筒体(2)の第1端(2a)とフロント栓体(6)の後端(6b)との間の筒体内容積(VS)が、第2収容成分(12)の容積(VC)の60%以上であることを特徴とする、2室型プレフィルドシリンジ。 - ミドル栓体(7)の後端(7b)がバイパス(14)の後端部(19)に達した際の、筒体(2)の先端(2a)とフロント栓体(6)の後端(6b)との間の筒体内容積(VS)が、第2収容成分(12)の容積(VC)以下である、請求項1に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
- ミドル栓体(7)の後端(7b)がバイパス(14)の後端部(19)に達した際の、筒体(2)の先端(2a)とフロント栓体(6)の後端(6b)との間隔(L)が、30mm以下である、請求項1または請求項2に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
- 筒体(2)の軸心方向に沿ったミドル栓体(7)の長さを、筒体(2)の内径の75〜100%の寸法に設定した、請求項1から3のいずれか1項に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
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