JPWO2004069535A1 - ポリ乳酸多層フィルム及びその成形方法 - Google Patents
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Abstract
2種のポリ乳酸(PLA)の中間に弾性率50〜1,000MPaの柔軟な生分解性ポリエステル系樹脂を配置し、ダイスより共押出することによりポリ乳酸多層フィルムを製造する。 非常に柔軟であるが、不透明でブロッキング性を有する生分解性ポリエステル系樹脂を中間層にし、両側を透明で硬いPLAでサンドイッチすることにより、PLA単独の場合の欠点であるしわ、たるみ、フィルムの伸び、及びフィルムインパクトが生分解性ポリエステル系樹脂層の存在のために改良され、逆に生分解性ポリエステル系樹脂層単独の場合の欠点である透明性と耐ブロッキング性はPLAでサンドイッチすることにより改善される。
Description
本発明は、ポリ乳酸(以下、PLAと略す)多層フィルム及びその製造方法に関し、特にPLA無延伸フィルムの大きな問題点であるフィルムが硬くて延びないことによるフィルム成形時のしわ、たるみの解消と、透明で耐ブロッキング性、低温シール性及びフィルムインパクトの良好なPLA多層フィルム及びその製造方法に関する。
PLAは、炭酸ガスと水とから光合成により作られる澱粉を原料とした生分解性樹脂であり、燃焼により発生する熱量も少なく、しかも土中や水中で自然に加水分解し、次いで微生物により無害な分解物となるため、環境に優しい最も有望な生分解性樹脂であるといわれている、加えて、食品用途に使用し得るものとして唯一米国食品医薬局(FDA)にも認可されている生分解性樹脂である。
しかしながら、PLAの通常市販されているグレードの融点は約165℃〜175℃であるが、融点が高いためにフィルム成形温度を200℃以上に上げる必要があり、インフレーション成形用ダイから押し出された円筒状の樹脂(バブル)が変動するために安定成形が困難であった。また、PLAは、T−ダイ方式でシートを成形後、縦と横に二軸延伸したフィルムが既に市販されているが、PLAの二軸延伸フィルムは低温シール性がないので、溶断シール以外の通常のヒートシールができず、透明性を有し、適度の腰のある生分解性を有するシーラントフィルムの開発が望まれていた。
一方、PLAは、L−乳酸とD−乳酸を共重合させると、融点がD−乳酸の共重合率と共に下がるので成形温度を200℃以下に下げることができる。したがって、低温シール性を改良するためには、L−乳酸にD−乳酸を共重合させた方が有利である。また、低融点化により成形温度もそれに応じて下げられ、特にインフレーション方式でフィルムを成形する場合、溶融張力が大きくなり、バブルがより安定化し好都合である。
しかしながら、PLA単独の場合、L−乳酸とD−乳酸を共重合させてPLAの融点を160℃に下げても、バブルはより安定化するが弾性率は約3,000MPaと非常に高いままであるので、依然としてフィルムが硬く、伸度が約5%とほとんど延びないために、特にインフレーション方式でフィルムを成形するときにしわとたるみが発生し、商品価値のあるフィルムの安定生産はできていない。このしわ、たるみ等の問題は成形条件を変えただけでは解決できず、また、フィルムの伸びがないため、フィルムインパクトが小さく、薄物フィルム成形時に破断しやすかった。
一方、特開平9−157408号公報には、滑り性能に優れ、ヒートシール性能及び溶断シート性能に優れると共に熱安定性が付与されたPLAフィルムとして、L−乳酸とD−乳酸の組成比が100:0〜94:6または6:94〜0:100であるポリ乳酸系重合体と、ガラス転移点Tgが0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルとを主成分とし、前記生分解性脂肪族ポリエステルの含有量は前記ポリ乳酸系重合体100質量部に対して3〜70質量部であり、かつ、少なくとも1軸方向に延伸された後に熱処理が施された延伸ポリ乳酸フィルムが開示されている。
本発明者らは、PLAフィルムが硬すぎることによる問題点を解決するために、弾性率70Mpaと非常に柔らかい生分解性ポリエステルのブレンドによる改質を試みた。そうすると、ブレンド率の上昇と共にPLAフィルムは柔軟になるが、40%ブレンドしてもしわとたるみの改良は不十分であった。また、フィルムの伸びも小さく、フィルムインパクトも20%ブレンドで10J/cmと改良の程度が小さく、しかも40%もブレンドすると透明性と耐ブロッキング性が大幅に悪化し、商品価値の高いフィルムを得ることはできなかった。また、生分解性ポリエステルのブレンドによりFDAの審査にはパスしなくなるので、食品用には使用できなくなるという問題点が存在していた。
他方、生分解性ポリエステル単独では、透明性及び耐ブロッキング性が非常に悪く、フィルムの腰もなく、フィルムとしての商品価値は低いが、柔軟でフィルムの伸びとフィルムインパクトは非常に良好であることを確認した。また、透明性が悪い理由は生分解性ポリエステルフィルムの表面肌荒れであり、内部ヘイズは良好であることも確認できた。
以上述べたように、従来のPLA無延伸フィルムは実用化するには多くの改良しなければならない問題点が存在していた。そこで、本発明の目的は、透明性、耐ブロッキング性、フィルム伸び及びフィルムインパクトに優れ、且つしわ、たるみのない表面がPLAで形成されているフィルムを提供することにある。
しかしながら、PLAの通常市販されているグレードの融点は約165℃〜175℃であるが、融点が高いためにフィルム成形温度を200℃以上に上げる必要があり、インフレーション成形用ダイから押し出された円筒状の樹脂(バブル)が変動するために安定成形が困難であった。また、PLAは、T−ダイ方式でシートを成形後、縦と横に二軸延伸したフィルムが既に市販されているが、PLAの二軸延伸フィルムは低温シール性がないので、溶断シール以外の通常のヒートシールができず、透明性を有し、適度の腰のある生分解性を有するシーラントフィルムの開発が望まれていた。
一方、PLAは、L−乳酸とD−乳酸を共重合させると、融点がD−乳酸の共重合率と共に下がるので成形温度を200℃以下に下げることができる。したがって、低温シール性を改良するためには、L−乳酸にD−乳酸を共重合させた方が有利である。また、低融点化により成形温度もそれに応じて下げられ、特にインフレーション方式でフィルムを成形する場合、溶融張力が大きくなり、バブルがより安定化し好都合である。
しかしながら、PLA単独の場合、L−乳酸とD−乳酸を共重合させてPLAの融点を160℃に下げても、バブルはより安定化するが弾性率は約3,000MPaと非常に高いままであるので、依然としてフィルムが硬く、伸度が約5%とほとんど延びないために、特にインフレーション方式でフィルムを成形するときにしわとたるみが発生し、商品価値のあるフィルムの安定生産はできていない。このしわ、たるみ等の問題は成形条件を変えただけでは解決できず、また、フィルムの伸びがないため、フィルムインパクトが小さく、薄物フィルム成形時に破断しやすかった。
一方、特開平9−157408号公報には、滑り性能に優れ、ヒートシール性能及び溶断シート性能に優れると共に熱安定性が付与されたPLAフィルムとして、L−乳酸とD−乳酸の組成比が100:0〜94:6または6:94〜0:100であるポリ乳酸系重合体と、ガラス転移点Tgが0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルとを主成分とし、前記生分解性脂肪族ポリエステルの含有量は前記ポリ乳酸系重合体100質量部に対して3〜70質量部であり、かつ、少なくとも1軸方向に延伸された後に熱処理が施された延伸ポリ乳酸フィルムが開示されている。
本発明者らは、PLAフィルムが硬すぎることによる問題点を解決するために、弾性率70Mpaと非常に柔らかい生分解性ポリエステルのブレンドによる改質を試みた。そうすると、ブレンド率の上昇と共にPLAフィルムは柔軟になるが、40%ブレンドしてもしわとたるみの改良は不十分であった。また、フィルムの伸びも小さく、フィルムインパクトも20%ブレンドで10J/cmと改良の程度が小さく、しかも40%もブレンドすると透明性と耐ブロッキング性が大幅に悪化し、商品価値の高いフィルムを得ることはできなかった。また、生分解性ポリエステルのブレンドによりFDAの審査にはパスしなくなるので、食品用には使用できなくなるという問題点が存在していた。
他方、生分解性ポリエステル単独では、透明性及び耐ブロッキング性が非常に悪く、フィルムの腰もなく、フィルムとしての商品価値は低いが、柔軟でフィルムの伸びとフィルムインパクトは非常に良好であることを確認した。また、透明性が悪い理由は生分解性ポリエステルフィルムの表面肌荒れであり、内部ヘイズは良好であることも確認できた。
以上述べたように、従来のPLA無延伸フィルムは実用化するには多くの改良しなければならない問題点が存在していた。そこで、本発明の目的は、透明性、耐ブロッキング性、フィルム伸び及びフィルムインパクトに優れ、且つしわ、たるみのない表面がPLAで形成されているフィルムを提供することにある。
本発明者等は、上述のようなPLAの問題点を解決すべく種々実験を重ねた結果、PLAと同じエステル基を有する生分解性ポリエステルをPLAの中間層に持ってきて、2種3層ないしは3種3層膜とすることにより、PLA単独の場合の欠点であるしわ、たるみ、フィルムの伸び、及びフィルムインパクトが改良され、逆に生分解性ポリエステル単独の場合の欠点である透明性と耐ブロッキング性はPLAでサンドイッチすることにより改良されると判断し、逆転の発想で本発明を完成するに至ったものである。
本発明の第1の態様は、2枚のPLAの中間に弾性率50〜1,000MPaの柔軟な生分解性ポリエステル系樹脂層が配置されたPLA多層フィルムを特徴とするものである。すなわち、非常に柔軟であるが、不透明でブロッキング性を有する生分解性ポリエステル系樹脂を中間層にし、両側を透明で硬いPLAでサンドイッチすることにより、PLA単独の場合の欠点であるしわ、たるみ、フィルムの伸び、及びフィルムインパクトが生分解性ポリエステル系樹脂層の存在のために改良され、逆に生分解性ポリエステル系樹脂層単独の場合の欠点である透明性と耐ブロッキング性はPLAでサンドイッチすることにより改善され、しわ、たるみが発生せず、フィルムの伸びが大幅に改良され、且つ透明性、耐ブロッキング性のよいPLA多層フィルムが得られる。
係る態様においては、前記2枚のポリ乳酸フィルムは、それぞれポリ乳酸の種類が同じであるか又は相違するものであることが好ましい。ポリ乳酸の種類は、D−乳酸とL−乳酸の重合比率、分子量及び融点等によって決まるものである。かかる構成とすることにより、両面が同じ組成の2種3層のPLA多層フィルムあるいは両面の組成が異なる3種3層のPLA多層フィルムとなるので、多種多様なPLA多層フィルムが得られる。
また、係る態様においては、前記2枚のPLAフィルムは、それぞれ融点が160℃以下のL−乳酸及びD−乳酸の共重合体であることが好ましい。このような態様となすと、PLAの融点が低いので融点に対応して製造時の加熱温度を低くすることができるようになるとともに、低温ヒートシール性も良好になる。より好ましいL−乳酸及びD−乳酸の共重合体の融点は110〜140℃である。融点が110℃未満のものは得難く、また、融点が160℃を超えるものでは成形時の加熱温度が高くなりバブルが不安定になるので好ましくはない。
また、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層が、融点が90〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルからなることが好ましい。この生分解性脂肪族ポリエステルとしては、例えば昭和高分子株式会社製のビオノーレPBSA#3001(弾性率350MPa、融点95℃)やPBS#1903(弾性率700MPa、融点115℃)が好適であり、生分解性脂肪族−芳香族コポリエステルとしては例えばBASF社のエコフレックスFBX7011(弾性率70MPa、融点110℃)が好適である。融点が90℃未満であると、使用時に溶融してしまうおそれがあるので好ましくはなく、また、150℃を超えるものではPLAフィルムの欠点が目立ってしまうので、好ましくはない。
また、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層に結晶核剤を0.05質量%〜1.5質量%添加したものであることが好ましい。このように生分解性ポリエステル系樹脂層に結晶核剤を添加すると生分解性ポリエステル系樹脂層の結晶化速度が向上するので、得られるPLA多層フィルムの透明度が増加する。この場合、結晶核剤添加量が0.05質量%未満であると結晶核剤添加の効果が生じないので好ましくなく、また、1.5質量%を超えて添加しても添加の効果が飽和する。
更に、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層の厚みが全体の20%以上であることが好ましい。かかる構成を採用することにより、PLA多層フィルムのフィルムインパクト、しわ及びたるみを改善することができる。20%未満では改善の度合いが少ないので好ましくはない。より好ましくは40%以上、最も好ましくは60%以上である。
更に、本発明の第2の態様は、ポリ乳酸多層フィルムの製造方法において、2枚のPLAの中間に弾性率50〜1,000MPaの柔軟な生分解性ポリエステル系樹脂を配置し、ダイスより共押出することを特徴とするものである。係る製造方法を採用することにより、前記本発明の第1の態様に示した性質を有するPLA多層膜を容易に製造することができるようになり、加えてPLA/生分解性ポリエステル系樹脂間の接着強度も良好となる。このことは両者の相溶性が良いことを示し、生分解性ポリエステル系樹脂の肌荒れ解消による透明性の大幅改良にもつながる。
好ましくは、前記2枚のポリ乳酸フィルムとして、それぞれポリ乳酸の種類が同じであるか又は相違するものを用いるとよく、また、前記2枚のPLAフィルムとして、それぞれ融点が160℃以下のL−乳酸とD−乳酸の共重合体を用いるとよい。
さらに、好ましくは、前記生分解性ポリエステル系樹脂として、融点が90〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルを用い、前記生分解性ポリエステル系樹脂層の厚みは全体の20%以上とするとよい。係る方法を採用することにより、同じく本発明の第1の態様に示した性質を有するPLA多層膜を容易に製造することができるようになる。
更に好ましくは、前記生分解性ポリエステル樹脂である融点が90℃〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルに結晶核剤を0.5質量%〜1.5質量%添加することにより、成形条件(スクリュー形状、冷却速度、成形速度、成形温度等)によっては結晶化速度の遅さに起因する透明性の悪化を大幅に改良することができると同時に、バブルの安定性も改良できた。この場合、結晶核剤添加量が0.05質量%未満であると結晶核剤添加の効果が生じないので好ましくなく、また、1.5質量%を超えて添加しても添加の効果が飽和する。
また、前記PLA乳酸多層フィルムをインフレーション方式又はT−ダイ方式でフィルム成形することが好ましい。係る方法を採用すれば、容易に本発明の第1の態様に示したPLA多層フィルムを製造することができるようになる。T−ダイ方式よりもインフレーション方式の方が装置が小型で初期投資も少なくてすみ、小ロット、他品種の場合、好都合である。
なお、本発明の第2の態様においては、成形温度は成形方法によって変わるので特に定めないが、インフレーション方式の場合バブル安定性の点で210℃以下、より好ましくは190℃以下である。T−ダイ方式の場合は200℃以上250℃以下が好適である。
本発明の第1の態様は、2枚のPLAの中間に弾性率50〜1,000MPaの柔軟な生分解性ポリエステル系樹脂層が配置されたPLA多層フィルムを特徴とするものである。すなわち、非常に柔軟であるが、不透明でブロッキング性を有する生分解性ポリエステル系樹脂を中間層にし、両側を透明で硬いPLAでサンドイッチすることにより、PLA単独の場合の欠点であるしわ、たるみ、フィルムの伸び、及びフィルムインパクトが生分解性ポリエステル系樹脂層の存在のために改良され、逆に生分解性ポリエステル系樹脂層単独の場合の欠点である透明性と耐ブロッキング性はPLAでサンドイッチすることにより改善され、しわ、たるみが発生せず、フィルムの伸びが大幅に改良され、且つ透明性、耐ブロッキング性のよいPLA多層フィルムが得られる。
係る態様においては、前記2枚のポリ乳酸フィルムは、それぞれポリ乳酸の種類が同じであるか又は相違するものであることが好ましい。ポリ乳酸の種類は、D−乳酸とL−乳酸の重合比率、分子量及び融点等によって決まるものである。かかる構成とすることにより、両面が同じ組成の2種3層のPLA多層フィルムあるいは両面の組成が異なる3種3層のPLA多層フィルムとなるので、多種多様なPLA多層フィルムが得られる。
また、係る態様においては、前記2枚のPLAフィルムは、それぞれ融点が160℃以下のL−乳酸及びD−乳酸の共重合体であることが好ましい。このような態様となすと、PLAの融点が低いので融点に対応して製造時の加熱温度を低くすることができるようになるとともに、低温ヒートシール性も良好になる。より好ましいL−乳酸及びD−乳酸の共重合体の融点は110〜140℃である。融点が110℃未満のものは得難く、また、融点が160℃を超えるものでは成形時の加熱温度が高くなりバブルが不安定になるので好ましくはない。
また、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層が、融点が90〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルからなることが好ましい。この生分解性脂肪族ポリエステルとしては、例えば昭和高分子株式会社製のビオノーレPBSA#3001(弾性率350MPa、融点95℃)やPBS#1903(弾性率700MPa、融点115℃)が好適であり、生分解性脂肪族−芳香族コポリエステルとしては例えばBASF社のエコフレックスFBX7011(弾性率70MPa、融点110℃)が好適である。融点が90℃未満であると、使用時に溶融してしまうおそれがあるので好ましくはなく、また、150℃を超えるものではPLAフィルムの欠点が目立ってしまうので、好ましくはない。
また、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層に結晶核剤を0.05質量%〜1.5質量%添加したものであることが好ましい。このように生分解性ポリエステル系樹脂層に結晶核剤を添加すると生分解性ポリエステル系樹脂層の結晶化速度が向上するので、得られるPLA多層フィルムの透明度が増加する。この場合、結晶核剤添加量が0.05質量%未満であると結晶核剤添加の効果が生じないので好ましくなく、また、1.5質量%を超えて添加しても添加の効果が飽和する。
更に、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層の厚みが全体の20%以上であることが好ましい。かかる構成を採用することにより、PLA多層フィルムのフィルムインパクト、しわ及びたるみを改善することができる。20%未満では改善の度合いが少ないので好ましくはない。より好ましくは40%以上、最も好ましくは60%以上である。
更に、本発明の第2の態様は、ポリ乳酸多層フィルムの製造方法において、2枚のPLAの中間に弾性率50〜1,000MPaの柔軟な生分解性ポリエステル系樹脂を配置し、ダイスより共押出することを特徴とするものである。係る製造方法を採用することにより、前記本発明の第1の態様に示した性質を有するPLA多層膜を容易に製造することができるようになり、加えてPLA/生分解性ポリエステル系樹脂間の接着強度も良好となる。このことは両者の相溶性が良いことを示し、生分解性ポリエステル系樹脂の肌荒れ解消による透明性の大幅改良にもつながる。
好ましくは、前記2枚のポリ乳酸フィルムとして、それぞれポリ乳酸の種類が同じであるか又は相違するものを用いるとよく、また、前記2枚のPLAフィルムとして、それぞれ融点が160℃以下のL−乳酸とD−乳酸の共重合体を用いるとよい。
さらに、好ましくは、前記生分解性ポリエステル系樹脂として、融点が90〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルを用い、前記生分解性ポリエステル系樹脂層の厚みは全体の20%以上とするとよい。係る方法を採用することにより、同じく本発明の第1の態様に示した性質を有するPLA多層膜を容易に製造することができるようになる。
更に好ましくは、前記生分解性ポリエステル樹脂である融点が90℃〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルに結晶核剤を0.5質量%〜1.5質量%添加することにより、成形条件(スクリュー形状、冷却速度、成形速度、成形温度等)によっては結晶化速度の遅さに起因する透明性の悪化を大幅に改良することができると同時に、バブルの安定性も改良できた。この場合、結晶核剤添加量が0.05質量%未満であると結晶核剤添加の効果が生じないので好ましくなく、また、1.5質量%を超えて添加しても添加の効果が飽和する。
また、前記PLA乳酸多層フィルムをインフレーション方式又はT−ダイ方式でフィルム成形することが好ましい。係る方法を採用すれば、容易に本発明の第1の態様に示したPLA多層フィルムを製造することができるようになる。T−ダイ方式よりもインフレーション方式の方が装置が小型で初期投資も少なくてすみ、小ロット、他品種の場合、好都合である。
なお、本発明の第2の態様においては、成形温度は成形方法によって変わるので特に定めないが、インフレーション方式の場合バブル安定性の点で210℃以下、より好ましくは190℃以下である。T−ダイ方式の場合は200℃以上250℃以下が好適である。
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例及び比較例を用いて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
ダイス直径150mmの3種3層インフレーション成形装置を使用し、中間層に脂肪族−芳香族コポリエステルのBASF社製エコフレックス(融点114℃、弾性率70MPa、190℃MFR4)を使用し、両側の外層には三井化学株式会社のPLA(融点150℃、弾性率2,900MPa、190℃MFR3)を用い、樹脂温度190℃で成形した。なお、この時PLAにはブロッキング防止のため平均粒径3μmのシリカを0.20質量%添加した。
得られた多層フィルムの厚みは、10μm/20μm/10μmの合計40μmであり、この時の製品幅440mm(耳スリット前の折径470mm)、引取速度30m/分であり、エアーリングはバブルを安定化させるためベンチュリータイプのデュアルリップ、3段チャンバーで成形した。
上記PLA多層フィルムは耐ブロッキング、滑り、柔軟性が改良され(弾性率1,200MPa、しわとたるみのない透明性の良好なフィルム(ヘイズ8%)であり、フィルム伸び(伸度300%)、フィルムインパクト(100J/cm)は良好であった。なお、エコフレックス単独ではフィルムインパクトは330J/cmと良好であるが、フィルムが不透明であり(ヘイズ50%)、タルク1.2質量%、滑剤0.05質量%添加しても滑り不良でブロッキングした。
(比較例1)
中間層をPLAにした1種3層のフィルムはフィルムが硬く(弾性率2,900MPa)、上記エアーリングの条件やニップロール高さを種々変更したが、しわ、たるみが発生し、商品価値のあるフィルムが得られなかった。また、フィルムの伸びがない(伸度5%)ためフィルムの耳が切断しやすく、フィルムインパクトも小さく(10J/cm)連続生産にも問題があった。
(比較例2)
スクリュー径50mmφの単層インフレーション成形機を使用し、融点130℃、190℃MFR3のPLAを樹脂温度170℃にて成形した。エアーリング条件、ニップロール高さ、膨張比等種々成形条件を変更したが、フィルムが若干脈動し、しわとたるみのない良好なフィルムが得られなかった。得られたフィルムはシリカ0.25質量%添加し、透明でブロッキングしないフィルムが得られたが、フィルムの伸びが5%と小さく、フィルムインパクトも15J/cmと小さく、実用上問題となるレベルであった。
得られた多層フィルムの厚みは、10μm/20μm/10μmの合計40μmであり、この時の製品幅440mm(耳スリット前の折径470mm)、引取速度30m/分であり、エアーリングはバブルを安定化させるためベンチュリータイプのデュアルリップ、3段チャンバーで成形した。
上記PLA多層フィルムは耐ブロッキング、滑り、柔軟性が改良され(弾性率1,200MPa、しわとたるみのない透明性の良好なフィルム(ヘイズ8%)であり、フィルム伸び(伸度300%)、フィルムインパクト(100J/cm)は良好であった。なお、エコフレックス単独ではフィルムインパクトは330J/cmと良好であるが、フィルムが不透明であり(ヘイズ50%)、タルク1.2質量%、滑剤0.05質量%添加しても滑り不良でブロッキングした。
(比較例1)
中間層をPLAにした1種3層のフィルムはフィルムが硬く(弾性率2,900MPa)、上記エアーリングの条件やニップロール高さを種々変更したが、しわ、たるみが発生し、商品価値のあるフィルムが得られなかった。また、フィルムの伸びがない(伸度5%)ためフィルムの耳が切断しやすく、フィルムインパクトも小さく(10J/cm)連続生産にも問題があった。
(比較例2)
スクリュー径50mmφの単層インフレーション成形機を使用し、融点130℃、190℃MFR3のPLAを樹脂温度170℃にて成形した。エアーリング条件、ニップロール高さ、膨張比等種々成形条件を変更したが、フィルムが若干脈動し、しわとたるみのない良好なフィルムが得られなかった。得られたフィルムはシリカ0.25質量%添加し、透明でブロッキングしないフィルムが得られたが、フィルムの伸びが5%と小さく、フィルムインパクトも15J/cmと小さく、実用上問題となるレベルであった。
実施例1でPLAを比較例2で使用した低融点グレードに変更し、樹脂温度を170℃に下げ、層厚比8μm/24μm/8μmと特殊ポリエステル樹脂の比率をアップし、合計40μmで成形した。樹脂温度を下げた効果により、バブル安定性は実施例1より向上し、偏肉も実施例1のR=10μmがR=6μmに改善された。得られたフィルムの物性は実施例1より低温ヒートシール性、フィルム伸び(伸度400%)、フィルムインパクトが更に改善され、ヒートシール温度は110℃から一定となり(15N/15mm)フィルムインパクトは200J/cm)であった。
実施例2で中間層を昭和高分子株式会社のビオノーレPBSA#1903(融点115℃、弾性率700MPa、190℃MFR4.5)に変更した以外は実施例2と同一の成形条件にて成形した。ビオノーレ#1903単独では不透明なフィルムで商品価値が劣っていたが、上記フィルムは透明(ヘイズ9%)でブロッキングもせず、しわとたるみのない良好なフィルムが得られた。
ダイス直径を325mmの3種3層大型インフレーション成形装置に変更し、内外装にカーギルダウ社のPLA(融点125℃、D体のモル分率7%、弾性率2,900MPa、190℃MFR3)を使用し、中間層は実施例1と同じBASF社製エコフレックスを用い、樹脂温度190℃で成形した。このとき、PLAにはブロッキング防止と滑り性改良のため、平均粒径3μmのシリカを0.4質量%添加した。
得られた多層フィルムの厚みは、10μm/20μm/10μmの合計40μmであり、このときの製品幅800mm(耳スリット前の折径840mm)、引取速度40m/分であり、エアーリングはチャンバーなしのデュアルリップタイプを使用し、バブル内部の冷却も行った。
しかし、上記多層フィルムは、他の物性は実施例1とほぼ同等であったが、大型化と成形速度の上昇により、透明性が悪化した(ヘイズ14%)。
この透明性の悪化の原因は、中間層のエコフレックスの結晶化速度が遅いことに起因しており、結晶核剤を0.5質量%添加することにより透明性が大幅に改良され(ヘイズ7%)、バブル安定性も若干改良された。
このときの核剤としてはPBT(ポリブチレンテレフタレート)を使用し、DSCによるエコフレックスの結晶化温度は61℃から81℃に上昇した(DSCの冷却速度20℃/min)。なお、結晶核剤としては、結晶化温度を高めて結晶化速度を速めるものであればPBTに限定されるものではない。
以上述べたように、本発明よりPLA2軸延伸フィルム用の透明でシール性良好なシーラントフィルムが生産可能となり、従来溶断シールしか製袋できなかったが通常の製袋機で生分解性があり、透明性良好な袋の生産が可能となり、食品用、産業用、農業用等の各種分野で使用できる。
なお、本発明のポリ乳酸多層フィルムは、当然のことながら、シーラントフィルムだけでなく、単体のフィルムとしても各種分野で使用され得る。
得られた多層フィルムの厚みは、10μm/20μm/10μmの合計40μmであり、このときの製品幅800mm(耳スリット前の折径840mm)、引取速度40m/分であり、エアーリングはチャンバーなしのデュアルリップタイプを使用し、バブル内部の冷却も行った。
しかし、上記多層フィルムは、他の物性は実施例1とほぼ同等であったが、大型化と成形速度の上昇により、透明性が悪化した(ヘイズ14%)。
この透明性の悪化の原因は、中間層のエコフレックスの結晶化速度が遅いことに起因しており、結晶核剤を0.5質量%添加することにより透明性が大幅に改良され(ヘイズ7%)、バブル安定性も若干改良された。
このときの核剤としてはPBT(ポリブチレンテレフタレート)を使用し、DSCによるエコフレックスの結晶化温度は61℃から81℃に上昇した(DSCの冷却速度20℃/min)。なお、結晶核剤としては、結晶化温度を高めて結晶化速度を速めるものであればPBTに限定されるものではない。
以上述べたように、本発明よりPLA2軸延伸フィルム用の透明でシール性良好なシーラントフィルムが生産可能となり、従来溶断シールしか製袋できなかったが通常の製袋機で生分解性があり、透明性良好な袋の生産が可能となり、食品用、産業用、農業用等の各種分野で使用できる。
なお、本発明のポリ乳酸多層フィルムは、当然のことながら、シーラントフィルムだけでなく、単体のフィルムとしても各種分野で使用され得る。
【書類名】明細書
【技術分野】
本発明は、ポリ乳酸(以下、PLAと略す)無延伸多層フィルム及びその製造方法に関し、特にPLA無延伸フィルムの大きな問題点であるフィルムが硬くて延びないことによるフィルム成形時のしわ、たるみの解消と、透明で耐ブロッキング性、低温シール性及びフィルムインパクトの良好なPLA無延伸多層フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
PLAは、炭酸ガスと水とから光合成により作られる澱粉を原料とした生分解性樹脂であり、燃焼により発生する熱量も少なく、しかも土中や水中で自然に加水分解し、次いで微生物により無害な分解物となるため、環境に優しい最も有望な生分解性樹脂であるといわれている、加えて、食品用途に使用し得るものとして唯一米国食品医薬局(FDA)にも認可されている生分解性樹脂である。
しかしながら、PLAの通常市販されているグレードの融点は約165℃〜175℃であるが、融点が高いためにフィルム成形温度を200℃以上に上げる必要があり、インフレーション成形用ダイから押し出された円筒状の樹脂(バブル)が変動するために安定成形が困難であった。また、PLAは、T−ダイ方式でシートを成形後、縦と横に二軸延伸したフィルムが既に市販されているが、PLAの二軸延伸フィルムは低温シール性がないので、溶断シール以外の通常のヒートシールができず、透明性を有し、適度の腰のある生分解性を有するシーラントフィルムの開発が望まれていた。
一方、PLAは、L−乳酸とD−乳酸を共重合させると、融点がD−乳酸の共重合率と共に下がるので成形温度を200℃以下に下げることができる。したがって、低温シール性を改良するためには、L−乳酸にD−乳酸を共重合させた方が有利である。また、低融点化により成形温度もそれに応じて下げられ、特にインフレーション方式でフィルムを成形する場合、溶融張力が大きくなり、バブルがより安定化し好都合である。
しかしながら、PLA単独の場合、L−乳酸とD−乳酸を共重合させてPLAの融点を160℃に下げても、バブルはより安定化するが弾性率は約3,000MPaと非常に高いままであるので、依然としてフィルムが硬く、伸度が約5%とほとんど延びないために、特にインフレーション方式でフィルムを成形するときにしわとたるみが発生し、商品価値のあるフィルムの安定生産はできていない。このしわ、たるみ等の問題は成形条件を変えただけでは解決できず、また、フィルムの伸びがないため、フィルムインパクトが小さく、薄物フィルム成形時に破断しやすかった。
一方、特開平9−157408号公報には、滑り性能に優れ、ヒートシール性能及び溶断シート性能に優れると共に熱安定性が付与されたPLAフィルムとして、L−乳酸とD−乳酸の組成比が100:0〜94:6または6:94〜0:100であるPLA系重合体と、ガラス転移点Tgが0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルとを主成分とし、前記生分解性脂肪族ポリエステルの含有量は前記PLA系重合体100質量部に対して3〜70質量部であり、かつ、少なくとも1軸方向に延伸された後に熱処理が施された延伸PLAフィルムが開示されている。
本発明者らは、PLAフィルムが硬すぎることによる問題点を解決するために、弾性率70Mpaと非常に柔らかい生分解性ポリエステルのブレンドによる改質を試みた。そうすると、ブレンド率の上昇と共にPLAフィルムは柔軟になるが、40%ブレンドしてもしわとたるみの改良は不十分であった。また、フィルムの伸びも小さく、フィルムインパクトも20%ブレンドで10J/cmと改良の程度が小さく、しかも40%もブレンドすると透明性と耐ブロッキング性が大幅に悪化し、商品価値の高いフィルムを得ることはできなかった。また、生分解性ポリエステルのブレンドによりFDAの審査にはパスしなくなるので、食品用には使用できなくなるという問題点が存在していた。
他方、生分解性ポリエステル単独では、透明性及び耐ブロッキング性が非常に悪く、フィルムの腰もなく、フィルムとしての商品価値は低いが、柔軟でフィルムの伸びとフィルムインパクトは非常に良好であることを確認した。また、透明性が悪い理由は生分解性ポリエステルフィルムの表面肌荒れであり、内部ヘイズは良好であることも確認できた。
以上述べたように、従来のPLA無延伸フィルムは実用化するには多くの改良しなければならない問題点が存在していた。そこで、本発明の目的は、透明性、耐ブロッキング性、フィルム伸び及びフィルムインパクトに優れ、且つしわ、たるみのない表面がPLAで形成されている無延伸フィルムを提供することにある。
【発明の開示】
本発明者等は、上述のようなPLAの問題点を解決すべく種々実験を重ねた結果、PLAと同じエステル基を有する生分解性ポリエステルをPLAの中間層に持ってきて、2種3層ないしは3種3層膜とすることにより、PLA単独の場合の欠点であるしわ、たるみ、フィルムの伸び、及びフィルムインパクトが改良され、逆に生分解性ポリエステル単独の場合の欠点である透明性と耐ブロッキング性はPLAでサンドイッチすることにより改良されると判断し、逆転の発想で本発明を完成するに至ったものである。
本発明の第1の態様は、2枚のPLA無延伸フィルムの中間に弾性率50〜1,000MPaの柔軟な生分解性ポリエステル系樹脂層が配置されたPLA無延伸多層フィルムを特徴とするものである。すなわち、非常に柔軟であるが、不透明でブロッキング性を有する生分解性ポリエステル系樹脂を中間層にし、両側を透明で硬いPLAでサンドイッチすることにより、PLA単独の場合の欠点であるしわ、たるみ、フィルムの伸び、及びフィルムインパクトが生分解性ポリエステル系樹脂層の存在のために改良され、逆に生分解性ポリエステル系樹脂層単独の場合の欠点である透明性と耐ブロッキング性はPLAでサンドイッチすることにより改善され、しわ、たるみが発生せず、フィルムの伸びが大幅に改良され、且つ透明性、耐ブロッキング性のよいPLA無延伸多層フィルムが得られる。
係る態様においては、前記2枚のPLA無延伸フィルムは、それぞれポリ乳酸の種類が同じであるか又は相違するものであることが好ましい。ポリ乳酸の種類は、D−乳酸とL−乳酸の重合比率、分子量及び融点等によって決まるものである。かかる構成とすることにより、両面が同じ組成の2種3層のPLA無延伸多層フィルムあるいは両面の組成が異なる3種3層のPLA無延伸多層フィルムとなるので、多種多様なPLA無延伸多層フィルムが得られる。
また、係る態様においては、前記2枚のPLA無延伸フィルムは、それぞれ融点が160℃以下のL−乳酸及びD−乳酸の共重合体であることが好ましい。このような態様となすと、PLAの融点が低いので融点に対応して製造時の加熱温度を低くすることができるようになるとともに、低温ヒートシール性も良好になる。より好ましいL−乳酸及びD−乳酸の共重合体の融点は110〜140℃である。融点が110℃未満のものは得難く、また、融点が160℃を超えるものでは成形時の加熱温度が高くなりバブルが不安定になるので好ましくはない。
また、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層が、融点が90〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルからなることが好ましい。この生分解性脂肪族ポリエステルとしては、例えば昭和高分子株式会社製のビオノーレPBSA#3001(弾性率350MPa、融点95℃)やPBS#1903(弾性率700MPa、融点115℃)が好適であり、生分解性脂肪族−芳香族コポリエステルとしては例えばBASF社のエコフレックスFBX7011(弾性率70MPa、融点110℃)が好適である。融点が90℃未満であると、使用時に溶融してしまうおそれがあるので好ましくはなく、また、150℃を超えるものではPLAフィルムの欠点が目立ってしまうので、好ましくはない。
また、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層に結晶核剤を0.05質量%〜1.5質量%添加したものであることが好ましい。このように生分解性ポリエステル系樹脂層に結晶核剤を添加すると生分解性ポリエステル系樹脂層の結晶化速度が向上するので、得られるPLA無延伸多層フィルムの透明度が増加する。この場合、結晶核剤添加量が0.05質量%未満であると結晶核剤添加の効果が生じないので好ましくなく、また、1.5質量%を超えて添加しても添加の効果が飽和する。
更に、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層の厚みが全体の20%以上であることが好ましい。かかる構成を採用することにより、PLA多層フィルムのフィルムインパクト、しわ及びたるみを改善することができる。20%未満では改善の度合いが少ないので好ましくはない。より好ましくは40%以上、最も好ましくは60%以上である。
更に、本発明の第2の態様は、PLA無延伸多層フィルムの製造方法において、2種のPLAの中間に弾性率50〜1,000MPaの柔軟な生分解性ポリエステル系樹脂を配置し、ダイスより共押出することを特徴とするものである。係る製造方法を採用することにより、前記本発明の第1の態様に示した性質を有するPLA無延伸多層フィルムを容易に製造することができるようになり、加えてPLA/生分解性ポリエステル系樹脂間の接着強度も良好となる。このことは両者の相溶性が良いことを示し、生分解性ポリエステル系樹脂の肌荒れ解消による透明性の大幅改良にもつながる。
好ましくは、前記2枚のPLA無延伸フィルムとして、それぞれPLAの種類が同じであるか又は相違するものを用いるとよく、また、前記2枚のPLA無延伸フィルムとして、それぞれ融点が160℃以下のL−乳酸とD−乳酸の共重合体を用いるとよい。
さらに、好ましくは、前記生分解性ポリエステル系樹脂として、融点が90〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルを用い、前記生分解性ポリエステル系樹脂層の厚みは全体の20%以上とするとよい。係る方法を採用することにより、同じく本発明の第1の態様に示した性質を有するPLA無延伸多層フィルムを容易に製造することができるようになる。
更に好ましくは、前記生分解性ポリエステル樹脂である融点が90℃〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルに結晶核剤を0.5質量%〜1.5質量%添加することにより、成形条件(スクリュー形状、冷却速度、成形速度、成形温度等)によっては結晶化速度の遅さに起因する透明性の悪化を大幅に改良することができると同時に、バブルの安定性も改良できた。この場合、結晶核剤添加量が0.05質量%未満であると結晶核剤添加の効果が生じないので好ましくなく、また、1.5質量%を超えて添加しても添加の効果が飽和する。
また、前記PLA無延伸多層フィルムをインフレーション方式又はT−ダイ方式でフィルム成形することが好ましい。係る方法を採用すれば、容易に本発明の第1の態様に示したPLA無延伸多層フィルムを製造することができるようになる。T−ダイ方式よりもインフレーション方式の方が装置が小型で初期投資も少なくてすみ、小ロット、他品種の場合、好都合である。
なお、本発明の第2の態様においては、成形温度は成形方法によって変わるので特に定めないが、インフレーション方式の場合バブル安定性の点で210℃以下、より好ましくは190℃以下である。T−ダイ方式の場合は200℃以上250℃以下が好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例及び比較例を用いて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例1】
ダイス直径150mmの3種3層インフレーション成形装置を使用し、中間層に脂肪族−芳香族コポリエステルのBASF社製エコフレックス(融点114℃、弾性率70MPa、190℃MFR4)を使用し、両側の外層には三井化学株式会社のPLA(融点150℃、弾性率2,900MPa、190℃MFR3)を用い、樹脂温度190℃で成形した。なお、この時PLAにはブロッキング防止のため平均粒径3μmのシリカを0.20質量%添加した。
得られたPLA無延伸多層フィルムの厚みは、10μm/20μm/10μmの合計40μmであり、この時の製品幅440mm(耳スリット前の折径470mm)、引取速度30m/分であり、エアーリングはバブルを安定化させるためベンチュリータイプのデュアルリップ、3段チャンバーで成形した。
上記PLA無延伸多層フィルムは耐ブロッキング、滑り、柔軟性が改良され(弾性率1,200MPa、しわとたるみのない透明性の良好なフィルム(ヘイズ8%)であり、フィルム伸び(伸度300%)、フィルムインパクト(100J/cm)は良好であった。なお、エコフレックス単独ではフィルムインパクトは330J/cmと良好であるが、フィルムが不透明であり(ヘイズ50%)、タルク1.2質量%、滑剤0.05質量%添加しても滑り不良でブロッキングした。
(比較例1)
中間層をPLAにした1種3層のフィルムはフィルムが硬く(弾性率2,900MPa)、上記エアーリングの条件やニップロール高さを種々変更したが、しわ、たるみが発生し、商品価値のあるフィルムが得られなかった。また、フィルムの伸びがない(伸度5%)ためフィルムの耳が切断しやすく、フィルムインパクトも小さく(10J/cm)連続生産にも問題があった。
(比較例2)
スクリュー径50mmφの単層インフレーション成形機を使用し、融点130℃、190℃MFR3のPLAを樹脂温度170℃にて成形した。エアーリング条件、ニップロール高さ、膨張比等種々成形条件を変更したが、フィルムが若干脈動し、しわとたるみのない良好なフィルムが得られなかった。得られたフィルムはシリカ0.25質量%添加し、透明でブロッキングしないフィルムが得られたが、フィルムの伸びが5%と小さく、フィルムインパクトも15J/cmと小さく、実用上問題となるレベルであった。
【実施例2】
実施例1でPLAを比較例2で使用した低融点グレードに変更し、樹脂温度を170℃に下げ、層厚比8μm/24μm/8μmと特殊ポリエステル樹脂の比率をアップし、合計40μmで成形した。樹脂温度を下げた効果により、バブル安定性は実施例1より向上し、偏肉も実施例1のR=10μmがR=6μmに改善された。得られたPLA無延伸多層フィルムの物性は実施例1より低温ヒートシール性、フィルム伸び(伸度400%)、フィルムインパクトが更に改善され、ヒートシール温度は110℃から一定となり(15N/15mm)フィルムインパクトは200J/cm)であった。
【実施例3】
実施例2で中間層を昭和高分子株式会社のビオノーレPBSA#1903(融点115℃、弾性率700MPa、190℃MFR4.5)に変更した以外は実施例2と同一の成形条件にて成形した。ビオノーレ#1903単独では不透明なフィルムで商品価値が劣っていたが、上記PLA無延伸多層フィルムは透明(ヘイズ9%)でブロッキングもせず、しわとたるみのない良好なPLA無延伸多層フィルムが得られた。
【実施例4】
ダイス直径を325mmの3種3層大型インフレーション成形装置に変更し、内外装にカーギルダウ社のPLA(融点125℃、D体のモル分率7%、弾性率2,900MPa、190℃MFR3)を使用し、中間層は実施例1と同じBASF社製エコフレックスを用い、樹脂温度190℃で成形した。このとき、PLAにはブロッキング防止と滑り性改良のため、平均粒径3μmのシリカを0.4質量%添加した。
得られたPLA無延伸多層フィルムの厚みは、10μm/20μm/10μmの合計40μmであり、このときの製品幅800mm(耳スリット前の折径840mm)、引取速度40m/分であり、エアーリングはチャンバーなしのデュアルリップタイプを使用し、バブル内部の冷却も行った。
しかし、上記PLA無延伸多層フィルムは、他の物性は実施例1とほぼ同等であったが、大型化と成形速度の上昇により、透明性が悪化した(ヘイズ14%)。
この透明性の悪化の原因は、中間層のエコフレックスの結晶化速度が遅いことに起因しており、結晶核剤を0.5質量%添加することにより透明性が大幅に改良され(ヘイズ7%)、バブル安定性も若干改良された。
このときの核剤としてはPBT(ポリブチレンテレフタレート)を使用し、DSCによるエコフレックスの結晶化温度は61℃から81℃に上昇した(DSCの冷却速度20℃/min)。なお、結晶核剤としては、結晶化温度を高めて結晶化速度を速めるものであればPBTに限定されるものではない。
以上述べたように、本発明により透明でシール性良好なPLA無延伸多層フィルムからなるシーラントフィルムが生産可能となり、従来溶断シールしか製袋できなかったが通常の製袋機で生分解性があり、透明性良好な袋の生産が可能となり、食品用、産業用、農業用等の各種分野で使用できる。
なお、本発明のPLA無延伸多層フィルムは、当然のことながら、シーラントフィルムだけでなく、単体のフィルムとしても各種分野で使用され得る。
【技術分野】
本発明は、ポリ乳酸(以下、PLAと略す)無延伸多層フィルム及びその製造方法に関し、特にPLA無延伸フィルムの大きな問題点であるフィルムが硬くて延びないことによるフィルム成形時のしわ、たるみの解消と、透明で耐ブロッキング性、低温シール性及びフィルムインパクトの良好なPLA無延伸多層フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
PLAは、炭酸ガスと水とから光合成により作られる澱粉を原料とした生分解性樹脂であり、燃焼により発生する熱量も少なく、しかも土中や水中で自然に加水分解し、次いで微生物により無害な分解物となるため、環境に優しい最も有望な生分解性樹脂であるといわれている、加えて、食品用途に使用し得るものとして唯一米国食品医薬局(FDA)にも認可されている生分解性樹脂である。
しかしながら、PLAの通常市販されているグレードの融点は約165℃〜175℃であるが、融点が高いためにフィルム成形温度を200℃以上に上げる必要があり、インフレーション成形用ダイから押し出された円筒状の樹脂(バブル)が変動するために安定成形が困難であった。また、PLAは、T−ダイ方式でシートを成形後、縦と横に二軸延伸したフィルムが既に市販されているが、PLAの二軸延伸フィルムは低温シール性がないので、溶断シール以外の通常のヒートシールができず、透明性を有し、適度の腰のある生分解性を有するシーラントフィルムの開発が望まれていた。
一方、PLAは、L−乳酸とD−乳酸を共重合させると、融点がD−乳酸の共重合率と共に下がるので成形温度を200℃以下に下げることができる。したがって、低温シール性を改良するためには、L−乳酸にD−乳酸を共重合させた方が有利である。また、低融点化により成形温度もそれに応じて下げられ、特にインフレーション方式でフィルムを成形する場合、溶融張力が大きくなり、バブルがより安定化し好都合である。
しかしながら、PLA単独の場合、L−乳酸とD−乳酸を共重合させてPLAの融点を160℃に下げても、バブルはより安定化するが弾性率は約3,000MPaと非常に高いままであるので、依然としてフィルムが硬く、伸度が約5%とほとんど延びないために、特にインフレーション方式でフィルムを成形するときにしわとたるみが発生し、商品価値のあるフィルムの安定生産はできていない。このしわ、たるみ等の問題は成形条件を変えただけでは解決できず、また、フィルムの伸びがないため、フィルムインパクトが小さく、薄物フィルム成形時に破断しやすかった。
一方、特開平9−157408号公報には、滑り性能に優れ、ヒートシール性能及び溶断シート性能に優れると共に熱安定性が付与されたPLAフィルムとして、L−乳酸とD−乳酸の組成比が100:0〜94:6または6:94〜0:100であるPLA系重合体と、ガラス転移点Tgが0℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルとを主成分とし、前記生分解性脂肪族ポリエステルの含有量は前記PLA系重合体100質量部に対して3〜70質量部であり、かつ、少なくとも1軸方向に延伸された後に熱処理が施された延伸PLAフィルムが開示されている。
本発明者らは、PLAフィルムが硬すぎることによる問題点を解決するために、弾性率70Mpaと非常に柔らかい生分解性ポリエステルのブレンドによる改質を試みた。そうすると、ブレンド率の上昇と共にPLAフィルムは柔軟になるが、40%ブレンドしてもしわとたるみの改良は不十分であった。また、フィルムの伸びも小さく、フィルムインパクトも20%ブレンドで10J/cmと改良の程度が小さく、しかも40%もブレンドすると透明性と耐ブロッキング性が大幅に悪化し、商品価値の高いフィルムを得ることはできなかった。また、生分解性ポリエステルのブレンドによりFDAの審査にはパスしなくなるので、食品用には使用できなくなるという問題点が存在していた。
他方、生分解性ポリエステル単独では、透明性及び耐ブロッキング性が非常に悪く、フィルムの腰もなく、フィルムとしての商品価値は低いが、柔軟でフィルムの伸びとフィルムインパクトは非常に良好であることを確認した。また、透明性が悪い理由は生分解性ポリエステルフィルムの表面肌荒れであり、内部ヘイズは良好であることも確認できた。
以上述べたように、従来のPLA無延伸フィルムは実用化するには多くの改良しなければならない問題点が存在していた。そこで、本発明の目的は、透明性、耐ブロッキング性、フィルム伸び及びフィルムインパクトに優れ、且つしわ、たるみのない表面がPLAで形成されている無延伸フィルムを提供することにある。
【発明の開示】
本発明者等は、上述のようなPLAの問題点を解決すべく種々実験を重ねた結果、PLAと同じエステル基を有する生分解性ポリエステルをPLAの中間層に持ってきて、2種3層ないしは3種3層膜とすることにより、PLA単独の場合の欠点であるしわ、たるみ、フィルムの伸び、及びフィルムインパクトが改良され、逆に生分解性ポリエステル単独の場合の欠点である透明性と耐ブロッキング性はPLAでサンドイッチすることにより改良されると判断し、逆転の発想で本発明を完成するに至ったものである。
本発明の第1の態様は、2枚のPLA無延伸フィルムの中間に弾性率50〜1,000MPaの柔軟な生分解性ポリエステル系樹脂層が配置されたPLA無延伸多層フィルムを特徴とするものである。すなわち、非常に柔軟であるが、不透明でブロッキング性を有する生分解性ポリエステル系樹脂を中間層にし、両側を透明で硬いPLAでサンドイッチすることにより、PLA単独の場合の欠点であるしわ、たるみ、フィルムの伸び、及びフィルムインパクトが生分解性ポリエステル系樹脂層の存在のために改良され、逆に生分解性ポリエステル系樹脂層単独の場合の欠点である透明性と耐ブロッキング性はPLAでサンドイッチすることにより改善され、しわ、たるみが発生せず、フィルムの伸びが大幅に改良され、且つ透明性、耐ブロッキング性のよいPLA無延伸多層フィルムが得られる。
係る態様においては、前記2枚のPLA無延伸フィルムは、それぞれポリ乳酸の種類が同じであるか又は相違するものであることが好ましい。ポリ乳酸の種類は、D−乳酸とL−乳酸の重合比率、分子量及び融点等によって決まるものである。かかる構成とすることにより、両面が同じ組成の2種3層のPLA無延伸多層フィルムあるいは両面の組成が異なる3種3層のPLA無延伸多層フィルムとなるので、多種多様なPLA無延伸多層フィルムが得られる。
また、係る態様においては、前記2枚のPLA無延伸フィルムは、それぞれ融点が160℃以下のL−乳酸及びD−乳酸の共重合体であることが好ましい。このような態様となすと、PLAの融点が低いので融点に対応して製造時の加熱温度を低くすることができるようになるとともに、低温ヒートシール性も良好になる。より好ましいL−乳酸及びD−乳酸の共重合体の融点は110〜140℃である。融点が110℃未満のものは得難く、また、融点が160℃を超えるものでは成形時の加熱温度が高くなりバブルが不安定になるので好ましくはない。
また、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層が、融点が90〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルからなることが好ましい。この生分解性脂肪族ポリエステルとしては、例えば昭和高分子株式会社製のビオノーレPBSA#3001(弾性率350MPa、融点95℃)やPBS#1903(弾性率700MPa、融点115℃)が好適であり、生分解性脂肪族−芳香族コポリエステルとしては例えばBASF社のエコフレックスFBX7011(弾性率70MPa、融点110℃)が好適である。融点が90℃未満であると、使用時に溶融してしまうおそれがあるので好ましくはなく、また、150℃を超えるものではPLAフィルムの欠点が目立ってしまうので、好ましくはない。
また、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層に結晶核剤を0.05質量%〜1.5質量%添加したものであることが好ましい。このように生分解性ポリエステル系樹脂層に結晶核剤を添加すると生分解性ポリエステル系樹脂層の結晶化速度が向上するので、得られるPLA無延伸多層フィルムの透明度が増加する。この場合、結晶核剤添加量が0.05質量%未満であると結晶核剤添加の効果が生じないので好ましくなく、また、1.5質量%を超えて添加しても添加の効果が飽和する。
更に、係る態様においては、前記生分解性ポリエステル系樹脂層の厚みが全体の20%以上であることが好ましい。かかる構成を採用することにより、PLA多層フィルムのフィルムインパクト、しわ及びたるみを改善することができる。20%未満では改善の度合いが少ないので好ましくはない。より好ましくは40%以上、最も好ましくは60%以上である。
更に、本発明の第2の態様は、PLA無延伸多層フィルムの製造方法において、2種のPLAの中間に弾性率50〜1,000MPaの柔軟な生分解性ポリエステル系樹脂を配置し、ダイスより共押出することを特徴とするものである。係る製造方法を採用することにより、前記本発明の第1の態様に示した性質を有するPLA無延伸多層フィルムを容易に製造することができるようになり、加えてPLA/生分解性ポリエステル系樹脂間の接着強度も良好となる。このことは両者の相溶性が良いことを示し、生分解性ポリエステル系樹脂の肌荒れ解消による透明性の大幅改良にもつながる。
好ましくは、前記2枚のPLA無延伸フィルムとして、それぞれPLAの種類が同じであるか又は相違するものを用いるとよく、また、前記2枚のPLA無延伸フィルムとして、それぞれ融点が160℃以下のL−乳酸とD−乳酸の共重合体を用いるとよい。
さらに、好ましくは、前記生分解性ポリエステル系樹脂として、融点が90〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルを用い、前記生分解性ポリエステル系樹脂層の厚みは全体の20%以上とするとよい。係る方法を採用することにより、同じく本発明の第1の態様に示した性質を有するPLA無延伸多層フィルムを容易に製造することができるようになる。
更に好ましくは、前記生分解性ポリエステル樹脂である融点が90℃〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルに結晶核剤を0.5質量%〜1.5質量%添加することにより、成形条件(スクリュー形状、冷却速度、成形速度、成形温度等)によっては結晶化速度の遅さに起因する透明性の悪化を大幅に改良することができると同時に、バブルの安定性も改良できた。この場合、結晶核剤添加量が0.05質量%未満であると結晶核剤添加の効果が生じないので好ましくなく、また、1.5質量%を超えて添加しても添加の効果が飽和する。
また、前記PLA無延伸多層フィルムをインフレーション方式又はT−ダイ方式でフィルム成形することが好ましい。係る方法を採用すれば、容易に本発明の第1の態様に示したPLA無延伸多層フィルムを製造することができるようになる。T−ダイ方式よりもインフレーション方式の方が装置が小型で初期投資も少なくてすみ、小ロット、他品種の場合、好都合である。
なお、本発明の第2の態様においては、成形温度は成形方法によって変わるので特に定めないが、インフレーション方式の場合バブル安定性の点で210℃以下、より好ましくは190℃以下である。T−ダイ方式の場合は200℃以上250℃以下が好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例及び比較例を用いて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例1】
ダイス直径150mmの3種3層インフレーション成形装置を使用し、中間層に脂肪族−芳香族コポリエステルのBASF社製エコフレックス(融点114℃、弾性率70MPa、190℃MFR4)を使用し、両側の外層には三井化学株式会社のPLA(融点150℃、弾性率2,900MPa、190℃MFR3)を用い、樹脂温度190℃で成形した。なお、この時PLAにはブロッキング防止のため平均粒径3μmのシリカを0.20質量%添加した。
得られたPLA無延伸多層フィルムの厚みは、10μm/20μm/10μmの合計40μmであり、この時の製品幅440mm(耳スリット前の折径470mm)、引取速度30m/分であり、エアーリングはバブルを安定化させるためベンチュリータイプのデュアルリップ、3段チャンバーで成形した。
上記PLA無延伸多層フィルムは耐ブロッキング、滑り、柔軟性が改良され(弾性率1,200MPa、しわとたるみのない透明性の良好なフィルム(ヘイズ8%)であり、フィルム伸び(伸度300%)、フィルムインパクト(100J/cm)は良好であった。なお、エコフレックス単独ではフィルムインパクトは330J/cmと良好であるが、フィルムが不透明であり(ヘイズ50%)、タルク1.2質量%、滑剤0.05質量%添加しても滑り不良でブロッキングした。
(比較例1)
中間層をPLAにした1種3層のフィルムはフィルムが硬く(弾性率2,900MPa)、上記エアーリングの条件やニップロール高さを種々変更したが、しわ、たるみが発生し、商品価値のあるフィルムが得られなかった。また、フィルムの伸びがない(伸度5%)ためフィルムの耳が切断しやすく、フィルムインパクトも小さく(10J/cm)連続生産にも問題があった。
(比較例2)
スクリュー径50mmφの単層インフレーション成形機を使用し、融点130℃、190℃MFR3のPLAを樹脂温度170℃にて成形した。エアーリング条件、ニップロール高さ、膨張比等種々成形条件を変更したが、フィルムが若干脈動し、しわとたるみのない良好なフィルムが得られなかった。得られたフィルムはシリカ0.25質量%添加し、透明でブロッキングしないフィルムが得られたが、フィルムの伸びが5%と小さく、フィルムインパクトも15J/cmと小さく、実用上問題となるレベルであった。
【実施例2】
実施例1でPLAを比較例2で使用した低融点グレードに変更し、樹脂温度を170℃に下げ、層厚比8μm/24μm/8μmと特殊ポリエステル樹脂の比率をアップし、合計40μmで成形した。樹脂温度を下げた効果により、バブル安定性は実施例1より向上し、偏肉も実施例1のR=10μmがR=6μmに改善された。得られたPLA無延伸多層フィルムの物性は実施例1より低温ヒートシール性、フィルム伸び(伸度400%)、フィルムインパクトが更に改善され、ヒートシール温度は110℃から一定となり(15N/15mm)フィルムインパクトは200J/cm)であった。
【実施例3】
実施例2で中間層を昭和高分子株式会社のビオノーレPBSA#1903(融点115℃、弾性率700MPa、190℃MFR4.5)に変更した以外は実施例2と同一の成形条件にて成形した。ビオノーレ#1903単独では不透明なフィルムで商品価値が劣っていたが、上記PLA無延伸多層フィルムは透明(ヘイズ9%)でブロッキングもせず、しわとたるみのない良好なPLA無延伸多層フィルムが得られた。
【実施例4】
ダイス直径を325mmの3種3層大型インフレーション成形装置に変更し、内外装にカーギルダウ社のPLA(融点125℃、D体のモル分率7%、弾性率2,900MPa、190℃MFR3)を使用し、中間層は実施例1と同じBASF社製エコフレックスを用い、樹脂温度190℃で成形した。このとき、PLAにはブロッキング防止と滑り性改良のため、平均粒径3μmのシリカを0.4質量%添加した。
得られたPLA無延伸多層フィルムの厚みは、10μm/20μm/10μmの合計40μmであり、このときの製品幅800mm(耳スリット前の折径840mm)、引取速度40m/分であり、エアーリングはチャンバーなしのデュアルリップタイプを使用し、バブル内部の冷却も行った。
しかし、上記PLA無延伸多層フィルムは、他の物性は実施例1とほぼ同等であったが、大型化と成形速度の上昇により、透明性が悪化した(ヘイズ14%)。
この透明性の悪化の原因は、中間層のエコフレックスの結晶化速度が遅いことに起因しており、結晶核剤を0.5質量%添加することにより透明性が大幅に改良され(ヘイズ7%)、バブル安定性も若干改良された。
このときの核剤としてはPBT(ポリブチレンテレフタレート)を使用し、DSCによるエコフレックスの結晶化温度は61℃から81℃に上昇した(DSCの冷却速度20℃/min)。なお、結晶核剤としては、結晶化温度を高めて結晶化速度を速めるものであればPBTに限定されるものではない。
以上述べたように、本発明により透明でシール性良好なPLA無延伸多層フィルムからなるシーラントフィルムが生産可能となり、従来溶断シールしか製袋できなかったが通常の製袋機で生分解性があり、透明性良好な袋の生産が可能となり、食品用、産業用、農業用等の各種分野で使用できる。
なお、本発明のPLA無延伸多層フィルムは、当然のことながら、シーラントフィルムだけでなく、単体のフィルムとしても各種分野で使用され得る。
Claims (13)
- 2枚のポリ乳酸フィルムの中間に弾性率50〜1,000MPaの柔軟な生分解性ポリエステル系樹脂層が配置されたポリ乳酸多層フィルム。
- 前記2枚のポリ乳酸フィルムは、それぞれポリ乳酸の種類が同じであるか又は相違するものである請求項1に記載のポリ乳酸多層フィルム。
- 前記2枚のポリ乳酸フィルムは、それぞれ融点が160℃以下のL−乳酸及びD−乳酸の共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸多層フィルム。
- 前記生分解性ポリエステル系樹脂層が、融点が90〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルからなることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸多層フィルム。
- 前記生分解性ポリエステル系樹脂層に結晶核剤を0.05質量%〜1.5質量%添加したことを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸多層フィルム。
- 前記生分解性ポリエステル系樹脂層の厚みが全体の20%以上である請求項1〜5の何れか1項に記載のポリ乳酸多層フィルム。
- ポリ乳酸多層フィルムの製造方法において、2枚のポリ乳酸の中間に弾性率50〜1,000MPaの柔軟な生分解性ポリエステル系樹脂を配置し、ダイスより共押出することを特徴とするポリ乳酸多層フィルムの製造方法。
- 前記2枚のポリ乳酸として、それぞれポリ乳酸の種類が同じであるか又は相違するものを用いたことを特徴とする請求項7に記載のポリ乳酸多層フィルムの製造方法。
- 前記2枚のポリ乳酸として、それぞれ融点が160℃以下のL−乳酸とD−乳酸の共重合体を用いたことを特徴とする請求項7に記載のポリ乳酸多層フィルムの製造方法。
- 前記生分解性ポリエステル系樹脂として、融点が90〜150℃の脂肪族ポリエステル又は脂肪族−芳香族コポリエステルを用いたことを特徴とする請求項7に記載のポリ乳酸多層フィルムの製造方法。
- 前記生分解性ポリエステル系樹脂層に結晶核剤を0.05質量%〜1.5質量%添加したことを特徴とする請求項7に記載のポリ乳酸多層フィルムの製造方法。
- 前記生分解性ポリエステル系樹脂層の厚みが全体の20%以上である請求項7に記載のポリ乳酸多層フィルムの製造方法。
- 前記ポリ乳酸多層フィルムをインフレーション方式又はT−ダイ方式でフィルム成形することを特徴とする請求項7〜12の何れか1項に記載のポリ乳酸多層フィルムの製造方法。
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