JP2007190785A - ポリエステル積層フィルム - Google Patents

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克宏 藤本
Tomofumi Maekawa
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Abstract

【課題】 本発明は熱可塑性ポリエステルの有する、優れた耐薬品性、耐熱性に加えてヒートシール性、バリヤー性、クッション性といった機能を有しているにもかかわらす、安定して製造することが可能であり、デッドホールド性、易引き裂き性、寸法安定性に優れた積層フィルム、及び、該フィルムの製造法の提供を目的とする
【解決手段】ポリエステル樹脂組成物からなる基材層(A)と、基材層と異なる樹脂組成物からなる1種類以上の層とからなる積層フィルムにおいて、基材層(A)がポリトリメチレンテレフタレートを30〜100重量%含み結晶融点が200〜250℃である樹脂組成物からなり、且つ、基材層(A)の面配向係数が0.03以下である積層フィルムとする。
【選択図】なし

Description

本発明は熱可塑性ポリエステル積層フィルムに関する。更に詳しくは、安定して製造することが可能であり、熱可塑性ポリエステルの有する、優れた耐薬品性、耐熱性に加え、寸法安定性、デッドホールド性、引き裂き性に優れているので折り曲げや打抜き、切断などの加工性が良く、各種の包装フィルムや電子基板製造の際に用いる離型フィルムなどに適した熱可塑性ポリエステル積層フィルム及び該フィルムの製造法に関する。
従来、熱可塑性ポリエステルは、その優れた耐熱性や耐薬品性を生かして、磁気テープや各種包装用フィルムを始めとした各種用途に用いられてきた。
最近は、要求性能の多様化に伴い、熱可塑性ポリエステルの有する耐熱性や耐薬品性といった機能に加え、ヒートシール性、バリヤー性、クッション性といった、本来、相反する機能や一種類の素材では同時に満足することが困難であると思われる機能を同時に満足するフィルムの要求も増えている。
このような要求に対応するために、各種素材を積層したフィルムとすることが行われてきている。
例えば、ヒートシールフィルムとして機械的強度や耐熱性、耐薬品性に優れたポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略す)と、共重合PETからなる熱融着可能な層を有する二軸延伸共押出しフィルムの提案がある(例えば特許文献1、2参照)。
更に、ヒートシールに更にバリヤー性や耐屈曲性、加工性を高めるために、二軸配向ポリエステルフィルムに少なくとも二軸配向ポリアミドとヒートシール層が積層された包装用フィルムなどの提案もある(例えば特許文献3参照)。
しかしながら、上記したような積層フィルムに用いる熱可塑性ポリエステルフィルムとしては、製膜性や耐熱性、耐薬品性といった機能に優れる二軸延伸PETフィルムが用いられている。このため、積層することにより目的とする複数の機能を有することができるものの、二軸延伸や熱処理が必要なこともありフィルムを製造する際の製膜性が悪化してしまったり、フィルム自体が脆くなってしまったりといった積層することに起因する問題を有していたり、デッドホールド性(折り曲げなどの形状保持性、以下「DH性」ともいう。)、易引き裂き性、寸法安定性などを向上することができないといった二軸延伸PETフィルムの弱点に起因する問題を有していたりする。
PETの代わりにポリトリメチレンテレフタレート(以下「PTT」と略す)を用いることも考えられる。
例えば、取扱い性や耐磨耗性、オリゴマーの析出抑制などを狙ったPTTを主成分とするポリマーからなるフィルム層を少なくとも一方の表面に有する二軸延伸積層ポリエステルフィルムの提案がある(例えば特許文献4〜7参照)。また、二軸延伸されたPTTフィルムの少なくとも片面に接着性改良層を設けた積層PTTフィルムの提案もある(例えば特許文献8参照)。しかしながら、いずれの提案においてもPTTは二軸延伸されているために、寸法安定性、特に加熱時の収縮性が悪かったり、引き裂き性、DH性などの加工性が悪かったりする。
また、PTT系樹脂からなる層とポリオレフィン系樹脂からなる層とを含有する少なくとも2層からなる積層ラップフィルムの提案もある(例えば特許文献9参照)。該提案ではTダイを用いた逐次二軸延伸法と環状パリソンを得た後、インフレーションによって延伸するインフレーション法によってフィルムを得ており、前記した提案同様に寸法安定性、特に加熱時の収縮性が悪かったり、引き裂き性、DH性などの加工性が悪かったりする。
この他にPETとPTTのブレンドフィルムと非晶性や低結晶性ポリエステルを共押出しした、成形性、接着性の良好な成形用積層未延伸フィルムの提案もある(例えば特許文献10参照)。しかしながら、本発明者らの検討によると該フィルムはPETの押出温度にて製膜するために共押出しするPTTが分解劣化して着色したり機械強度などが低下したりしてしまう。
このようにこれまでの技術では、製膜性と性能の優れた積層フィルムを得ることはできない。
特開2004−306275号公報 特開2004− 9504号公報 特開2005−104140号公報 特開平11−320793号公報 特開平11−320788号公報 特開平11−207906号公報 特開平11−254617号公報 特開平11−157032号公報 特開平11−105130号公報 特開2002−337297号公報
本発明は熱可塑性ポリエステルの有する、優れた耐薬品性、耐熱性に加えてヒートシール性、バリヤー性、クッション性といった機能を有しているにもかかわらず、安定して製造することが可能であり、デッドホールド性、易引き裂き性、寸法安定性に優れた積層フィルム、及び、該フィルムの製造法の提供を目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる特定の基材層を有する積層フィルムとすることで前記課題を達成できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
(1)ポリエステル樹脂組成物からなる基材層(A)と、該基材層(A)とは異なる樹脂組成物からなる1種類以上の層とからなる積層フィルムにおいて、基材層(A)がポリトリメチレンテレフタレートを30〜100重量%含み結晶融点が200〜250℃である樹脂組成物からなり、且つ、基材層(A)の面配向係数が0.03以下であることを特徴とする積層フィルム
(2)基材層(A)に含まれるポリトリメチレンテレフタレートが結晶化していることを特徴とする(1)の積層フィルム
(3)150℃で30分間熱処理した際の、フィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)における熱収縮率が−5〜5%であることを特徴とする(1)又は(2)の積層フィルム。
(4)総厚みが5〜5000μmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの積層フィルム。
(5)少なくとも片側の最表面にヒートシール層があることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの積層フィルム。
(6)ヒートシール層がポリエチレン樹脂からなることを特徴とする(5)の積層フィルム
(7)少なくとも片側の最表面が基材層(A)であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの積層フィルム。
(8)ポリアミド樹脂、フッ素樹脂及びポリ塩化ビニリデン樹脂より選ばれた1種類以上のバリヤー層を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの積層フィルム。
(9)基材層(A)と該基材層(A)とは異なる樹脂組成物からなる層を、極性を有したポリオレフィン系の樹脂組成物からなる層を介して積層させたことを特徴とする(1)〜(8)のいずれかの積層フィルム。
(10)インフレーション法により製造することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかの積層フィルムの製造法。
(11)溶融キャスト法により製造することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかの積層フィルムの製造法。
(12)(1)〜(9)のいずれかの積層フィルムからなる包装材料。
本発明の積層フィルムは、熱可塑性ポリエステルの有する、優れた耐熱性、耐薬品性に加え、寸法安定性、デッドホールド性、引き裂き性に優れており、しかもヒートシール性、バリヤー性、クッション性といった機能を付加することができる。このように複数の機能を有し、且つ、製膜性や折り曲げや打抜き、切断などの加工性が良いので、各種の包装フィルムや包装容器、電子基板製造の際に用いる離型フィルム、電子部品などを設置する基材など様々な分野に有用である。
本発明について、以下具体的に説明していく。
本発明の積層フィルムは、ポリエステル樹脂組成物からなる基材層(A)と、基材層と異なる樹脂組成物からなる1種類以上の層とからなる積層フィルムにおいて、基材層(A)がPTTを30〜100重量%含み結晶融点が250℃以下である樹脂組成物からなり、且つ、面配向係数が0.03以下である積層フィルムである。
ここでPTTとは、酸成分がテレフタル酸から構成され、グリコール成分がトリメチレングリコール(1,3−プロパンジオールともいう、以下「TMG」と略す)から構成されるポリエステルを示す。PTTの割合は耐熱性、後加工性、及び、生産性の観点より50〜100重量%であることが好ましく、60〜100重量%であることがより好ましく、70〜100重量%であることが特に好ましい。
本発明の積層フィルムは、基材層(A)がPTTを上記した割合で含むことで本発明の積層フィルムに要求される特性を達成することができるようになる。この理由としては、第一に化学的な反応性が低く、耐熱性が良好な芳香族飽和ポリエステルの一種であるというPTTの分子構造からくる化学的・熱的な安定性、第二にPTT固有の適度な到達結晶化度や結晶化速度、第三に非晶部分の剛直性に起因すると想定される易引き裂き性に由来すると考えられる。
本発明におけるPTTは他の共重合成分を含有する場合も含む。共重合成分としては、エチレングリコール、1,1−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−プロパンジオール1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、イソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のエステル形成性モノマーやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらのコポリマーなどが挙げられる。このような共重合成分は、フィルムを製造する際の熱安定性や、フィルムの耐熱性、耐薬品性を高める為には、30モル%以下とすることが好ましく、20モル%以下とすることがより好ましく、10モル%以下とすることが更に好ましく、5モル%以下とすることが特に好ましい。
PTTの重合度は固有粘度[η]を指標として0.5〜4dl/gの範囲であることが好ましい。固有粘度を0.5dl/g以上とすることで十分な強度のフィルムとできるとともに、フィルムの製造が容易になる。一方、4dl/g以下とすることで、フィルムを製造することが容易になる。固有粘度[η]は0.6〜3dl/gの範囲がより好ましく、0.7〜2.5dl/gの範囲が更に好ましく、0.8〜2dl/gの範囲が特に好ましい。
また、PTTはカルボキシル末端基濃度が0〜80eq/トンであることが好ましい。この理由はフィルムの生産性、耐熱性を高めることができるためである。カルボキシル末端基濃度は0〜50eq/トン以下がより好ましく、0〜30eq/トン以下が更に好ましく、0〜20eq/トンが特に好ましく、低ければ低いほど良い。
また、同様の理由よりPTTはエーテル結合を介して結合したグリコール二量体成分であるビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル成分(構造式:−OCHCHCHOCHCHCHO−、以下「BPE」と略す)の含有率が0〜2重量%であることが好ましい。エーテル成分は0.1〜1.5重量%であることがより好ましく、0.15〜1.2重量%であることが更に好ましい。
本発明のPTTを含む樹脂組成物は、PTT以外に各種の有機物質や無機物質及び各種添加剤を含んでいる場合も含む。このような場合でもPTTの割合は前記した範囲であり、且つ、結晶融点が200〜250℃である必要がある。なお、PTTの割合は、溶媒としてHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール):CDCl=1:1を用いたHの核磁気共鳴スペクトル(以下「NMR」と略す)を用いた分析により求めることができる。この際、環状二量体を始めとした各種のオリゴマーやBPEはPTTの割合の中に含めて計算する。また、NMR測定の溶媒に不溶な成分はPTTではないとして計算する。
PTT以外の有機物質としては、環状や線状のPTTオリゴマー、PTTを構成する酸成分やグリコール成分のモノマー及びこれらに由来する低分子量反応物、PTT以外の樹脂、及び、各種添加剤が挙げられる。PTT以外の樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどの熱可塑性ポリエステル、熱硬化性のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などの熱可塑性ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンサルファイト樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、ポリフェニレンエーテル樹脂など、及び、これらの共重合樹脂などが挙げられる。
PTTを含む樹脂組成物に含まれる無機物質としては、ガラス繊維、カーボン繊維、タルク、マイカ、ワラストナイト、カオリンクレー、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、膨潤性マイカなどの層状珪酸塩、炭酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化シリカなどの無機充填剤や無機滑剤、重合触媒残渣などが挙げられる。
また、添加剤としては、有機や無機の染料や顔料、艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶造核剤、増白剤、滑剤、不純物の捕捉剤、増粘剤、表面調整剤などが挙げられる。このうち、熱安定剤や、低分子量の揮発性不純物の捕捉剤を含むことが好ましい。熱安定剤として5価または/および3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物などが好ましく、低分子量の揮発性不純物の捕捉剤としては、ポリアミドやポリエステルアミドのポリマーやオリゴマー、アミド基やアミン基を有した低分子量化合物などが好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、エポキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物及びカルボジイミド化合物を含むことも好ましい。PTTのカルボキシル基濃度低下させて耐候性を高めたり、フィルムの靭性を高めたりすることができるからである。特に、エポキシ基を有する化合物は、耐加水分解性及び色調の観点から、より好ましい。ここでエポキシ基を含有する化合物とは、分子中にエポキシ基(オキシラン環)を1個以上持つ熱硬化性の化合物を示す。具体的には、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により製造されるいわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、フェノールノボラックや線状高分子量クレゾールノボラックをグリシジル化した多官能エポキシであるノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ポリグリシジルアミン型エポキシ、エポキシ基含有エステル化合物、エポキシ基含有エーテル化合物、エポキシ基含有アミド化合物などが挙げられる。特にグリシジル基含有エステル化合物が好ましい。このようなエポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物に対して、0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜3重量%であることがより好ましく、0.3〜1.5重量%であることが更に好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物には耐衝撃性や柔軟性が要求される分野向けには、熱可塑性ポリエステルエラストマーや熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマーや、少量の柔軟なフッ素樹脂を含んでいることも好ましい。このうち特にポリオレフィンエラストマーを含む場合、耐衝撃性や柔軟性に加え、離型性を高めることも可能となる。ここでエラストマーとしてはガラス転移温度が20℃以下であるものが好ましい。
ポリオレフィンエラストマーとしてはエチレンコポリマー(a1)と、反応性官能基を有さないエラストマー(a2)とを配合した樹脂組成物などが挙げられ、これらの配合比率は(a1)/(a2)が1/19〜19/1であることが好ましく、1/9〜9/1であることがより好ましく、1/5〜2/1であることがより好ましい。このようなエラストマーの含有量としては3〜50重量%であることが好ましく、5〜40重量%がより好ましく、10〜30重量%が特に好ましい。
また、滑り性を要求される場合はフッ素系樹脂を含むことが好ましく、フッ素系樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン、エチレン−ポリテトラフルオロエチレンコポリマーなどが挙げられ、含有量としては0.5〜10重量%であることが好ましく、1〜7重量%であることがより好ましく、2〜5重量%であることが特に好ましい。
基材層(A)を構成する樹脂組成物の結晶融点は入力補償型示差熱量計(以下「DSC」と略す)にて昇温速度10℃/分にて測定した際の、結晶融解に起因する吸熱ピークのピークトップとして求めることができる。ピークが2つ以上ある場合は、全てのピーク面積の合計に対して面積が5%以下であるような微小なピークを除いた全てのピークのピークトップが200〜250℃である必要がある。樹脂組成物の結晶融点を250℃以下とすることで製膜温度を下げてPTTの分解が顕著に進むことを抑えることができる。この結果、得られる積層フィルムが脆くなったり、黄色く変色したりすることを抑えることが容易になる。一方、フィルムの耐熱性を高めるためには200℃以上とする必要がある。結晶融点は245℃以下であることが好ましく、240℃以下であることが更に好ましく、235℃以下であることが特に好ましい。
本発明の積層フィルムは、基材層(A)の面配向係数が0.03以下である必要がある。このような面配向係数とすることで寸法安定性、デッドホールド性、易引き裂き性等を良好にすることができる。面配向係数は0.01以下がより好ましく、0.005以下が更に好ましい。このような面配向係数を達成するためには製造時にフィルムに過度の張力をかけたり、延伸を行なったりしない必要がある。面配向係数の下限は特に無いが、通常−0.01以上となる。
また、基材層(A)に含まれるPTTは結晶化していることが好ましい。PTTが結晶化していることで耐熱性、耐薬品性、寸法安定性が向上するとともに滑り性が向上して取扱いが容易となる。
なお、本明細書においては、PTTが「結晶化している」という用語は、PTTについて入力補償型示差熱量計(Differential Scanning Calorimeter;以下「DSC」と略す)にて昇温しながら熱分析を行った際に、0〜180℃の間に観察される結晶化由来の発熱量が0〜30J/gであることを意味する用語として用いる。なお、この発熱量はDSCによる熱分析で、0〜180℃の間に観察される発熱ピークの面積を熱量に換算することによって得られる。
すなわち、PTTが結晶化しているか否かは、DSCにて昇温しながら熱分析を行った際に、0〜180℃の間に観察される結晶化由来の発熱量を指標として判断され、0〜180℃の間に観察される発熱ピークの面積を熱量に換算し、その熱量が0〜30J/gであれば本件発明における結晶化したPTTであるとする。
ここでDSCによる熱分析は、フィルムを0℃で3分間保持した後、10℃/minの設定昇温速度にて0℃から260℃まで昇温して行い、ピーク面積はPTTの重量に対する熱量として計算した。観察される発熱ピークの面積が小さいということは結晶化する余地がないこと、すなわち、結晶化度が高いことを示している。
発熱ピーク面積は0〜20J/gであることが好ましく、0〜10J/gであることがより好ましく、0〜5J/gであることが更に好ましく、観察されないことが最も好ましい。
このようなPTTの結晶化は、フィルムを製造する際の条件を適切に調整することで達成できるが、樹脂組成物中に結晶造核剤を含むことで更に容易に達成することができるようになる。
結晶造核剤としてはタルクやアルカリ金属無機塩等が挙げられる。金属無機塩の具体的な例としてはモンタン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸1水素2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸2水素ナトリウムが挙げられる。これらの含有量としてはPTTに対して0.001〜1重量%であることが好ましく、0.1〜0.5重量%であることがより好ましい。
この他の結晶造核剤としてはアイオノマー樹脂も好ましい。アイオノマー樹脂とは、α−オレフィンと、炭素原子数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸とを主たる構成成分とするコポリマーを、1〜3価の金属イオンで中和したものである。アイオノマー樹脂の含有量としては、0.1〜15重量%であることが好ましく、0.3〜5重量%であることがより好ましい。
また、PTT以外のポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレートなども結晶造核剤としての効果を発揮する。これらの含有量としては1〜30重量%であることが好ましく、2〜25重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることが更に好ましい。
さらに、エポキシ価が0.1〜10meq/gのエポキシ基を含有するスチレン共重合体も、結晶造核剤として好ましい。ここでスチレン共重合体は、エポキシ基を有するビニル単量体とスチレンとを共重合させて得られる。エポキシ基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジルやシクロヘキセンオキシド構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸グリシジルである。これらの含有量としては、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましく、0.3〜3重量%であることが更に好ましい。
また、本発明の積層フィルムは縦方向(MD)及び横方向(TD)いずれも150℃における熱収縮率が−5〜5%であることが好ましく、−2〜2%であることがより好ましく、−1〜1%であることが更に好ましく、−0.5〜0.5%であることが特に好ましい。なお、縦方向(MD)とはフィルム製造時の引き取り方向を示し、横方向(TD)とはその直交方向を示す。このような低い熱収縮率とすることにより、高温にて使用した際のフィルムの変形やしわの発生、他の素材と張り合わせた際のカールを抑えることが容易になる。もちろん縦や横以外の方向も、このような収縮率であることが好ましく、本発明では延伸したフィルムを後処理して熱収縮率を下げていないので、縦横以外の収縮率を下げることも容易である。
積層フィルムの厚みは5μm〜5000μmであることが好ましい。5μm以上とすることでフィルムを製造することが困難でなくなるとともに、強度・剛性が高まって取扱いが容易になる。一方、5000μm以下とすることで生産性と取扱い性が良好となる。厚みは用途に応じて適宜選ぶが、フィルムの生産性や取扱い性の観点より10μm〜2000μmであることがより好ましく、20μm〜1000μmであることが更に好ましく、30μm〜500μmであることが特に好ましい。
本発明の積層フィルムの積層構成は用途、目的に応じて適切に選択することが望ましい。
層構成の例としては、PTTを含む樹脂組成物からなる基材層をA、その他の樹脂組成物からなる層をB、C、D、Eとすると、ABの2層、ABAやBAB、ABCの3層、ABAB、ABAC、ABCA、ABCB、ABCD、BACD等の4層、ABCBA、ABCDE等の5層などが挙げられる。ここでA〜Eの各層は同じ樹脂組成物から構成された複数の層が積層された場合も含み、この場合は積層された状態を1層と数える。また、上記以上に積層される場合も含むが、製造の容易さより考えると5層以下であることが好ましい。
具体的な例としてはヒートシール性をもたせた積層フィルムが挙げられる。このようなフィルムは各種包装容器に好適に用いられる。この場合、少なくとも片側の最表面がヒートシール性を有した樹脂層からなる必要がある。ここでヒートシール性を有した樹脂層とは、加熱した場合に基材層(A)より低い温度で軟化して、ヒートシール層同士を密着させることができる層を示す。ヒートシール層に用いることのできる具体的な樹脂組成物の例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレンメチルメタクリレートコポリマー、エチレンエチルアクリレートコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマーや酸変性ポリオレフィン樹脂、グリシジル変性ポリオレフィン樹脂などの変性ポリオレフィン樹脂、及び、これらの樹脂とポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が0〜80重量%ブレンドされた樹脂組成物などが挙げられ、耐熱性が良く、安価なポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が好ましく、ポリエチレン樹脂が特に好ましい。
ここでポリエチレン樹脂にはα−オレフィン、不飽和カルボン酸のエステル、飽和カルボン酸ビニルのエステル、ジエンなどのコモノマーの複数を含んでいる場合も含む。また、ポリエチレンとしては複数のポリマーのアロイとした場合も含み、少なくとも50mol%、好ましくは75mol%のエチレンを含み、密度が0.86〜0.98g/cmであることが好ましい。MFI(メルトフローインデックス、190℃/2.16kg)は0.1〜100g/10分であるのが好ましく、0.2〜50g/10分であるのがより好ましく、0.3〜10g/10分であるのが更に好ましく、0.5〜5g/10分であることが特に好ましい。
このようなポリエチレン樹脂の例としては低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、メタロセン触媒を用いたポリエチレンなどが挙げられる。
また、積層フィルムの他の例としては、柔軟性と離型性に優れたクッションフィルムが挙げられる。このようなフィルムは電子基板製造用や、銀面不織布やゴムシート等に表面模様を転写する為の型紙などに好適に用いられる。この場合、少なくとも片側の最表面、好ましくは両側の最表面が基材層(A)からなり、他の層が弾性率の低い各種エラストマーや、常温より高く使用温度より低い融点を有する樹脂からなる。この場合基材層(A)は結晶化していることが離型性を高める上で好ましい。
各種エラストマーとしては熱可塑性ポリエステルエラストマーや熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどが挙げられ、具体的にはエチレンコポリマー(a1)と、反応性官能基を有さないエラストマー(a2)とを配合した樹脂組成物、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリブチレンテレフタレートやPETなどが挙げられる。常温より高く使用温度より低い融点を有する樹脂は、使用時に液体となって移動できるので大きなクッション性を発現するようになる。このような樹脂の具体例としてはヒートシール層に用いたのと同じ樹脂が挙げられ、このうちポリエチレン樹脂が好ましい。
この他の積層フィルムの例としては難燃フィルムも挙げられる。難燃フィルムの場合は、各種難燃剤を含んだ樹脂を積層してフィルムを得る。
難燃剤としては、有機難燃剤(ハロゲン系難燃剤,リン系難燃剤),無機難燃剤(無機酸化物、無機水酸化物および金属ホウ酸塩)などが例示でき、これらの難燃剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。難燃剤の使用量は、難燃性、機械的特性、熱的性質などを損なわない範囲で選択でき、通常、難燃性基材層全体に対して10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、さらに好ましくは20〜40重量%、特に好ましくは23〜40重量%程度である。難燃剤のうち有機難燃剤の使用量は、通常、難燃性基材層全体に対して10〜40重量%、好ましくは15〜40重量%、さらに好ましくは20〜35重量%程度である。なお、無機難燃剤は有機難燃剤と併用する場合が多い。無機難燃剤の使用量は、例えば、難燃性基材層全体に対して、0〜30重量%(例えば、0.5〜30重量%)、好ましくは1〜25重量%、さらに好ましくは1〜20重量%程度である。
また、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂等からなる層を積層した、水蒸気や酸素などの透過を抑えることができるバリヤーフィルムも挙げられる。このようなフィルムは食品や半導体などの包装容器などに好適に用いられる。フッ素樹脂の例としてはテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(以下「FEP」と略す)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(以下「PFA」と略す)、ポリクロロトリフルオロエチレン(以下「PCTFE」と略す)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(以下「ETFE」と略す)、低融点エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(以下「LM−ETFE」と略す)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。ポリアミド樹脂の例としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610などの熱可塑性ポリアミド、ポリアミドエラストマーなどが挙げられ、その他の樹脂としてはポリ塩化ビニリデン樹脂などが挙げられる。
積層フィルムにおいて、基材層(A)と接触する層の樹脂が、基材層(A)を構成する樹脂組成物と接着性が良好でない場合は、間に両層と接着性が良い樹脂からなる層を挟んだ構成することが望ましい。こうすることにより層間剥離を抑制することができる。間に挟む樹脂の例としてはヒートシール性やクッション性を出す際に用いる極性の低いポリオレフィン系のポリマーと積層させる場合は層間に極性を有したポリオレフィン系の樹脂であるエチレンメチルメタクリレートコポリマー、エチレンエチルアクリレートコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマーや酸変性ポリオレフィン樹脂、グリシジル変性ポリオレフィン樹脂など、及び、これらの樹脂とポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が0〜80重量%ブレンドされたものなどが挙げられる。
本発明において基材層(A)の厚みは、本発明の特徴を出すために積層フィルムの総厚の5〜99%であることが好ましく、10〜90%であることがより好ましく、20〜70%であることが更に好ましい。
また破損を防ぐためには各樹脂層ともに0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることが更に好ましい。
次に本発明の積層フィルムの製造方法について説明する。
本発明にて用いる樹脂組成物は、従来公知の方法により得ることができる。例えば、PTTはテレフタル酸ジメチルとトリメチレングリコール、及び必要に応じて他の共重合成分を原料とし、チタンテトラブトキシドを触媒として常法によって、常圧、180〜260℃の温度でエステル交換反応を行った後、減圧下、220〜270℃に重縮合反応を行なうことにより得ることができる。
積層フィルムを製造する上で必要な各種添加物は、重合時に添加する方法、重合後に溶融混練などをして添加する方法、或いは、これらを組み合わせる方法などによって添加することができ、添加物の種類や量、要求される性能等により適宜選択することができる。溶融混練して各種の添加剤を添加する場合は、重合して得たPTT組成物を冷却固化した後、或いは、溶融状態のまま一軸、あるいは二軸の押出機等に各種添加剤とともに投入して行う。押出機としては、一軸あるいは二軸押出機、及び、これらを2台以上直列につないだタンデム押出機等が挙げられる。押出機のスクリューは、適用するPTT組成物の性質に応じて最適なものを用いることが好ましい。押出機は未溶融物が残らず、且つ、組成物の熱分解が抑制できる温度に設定することが望ましく、おおよそ組成物の融点+0〜30℃とすることが好ましい。
本発明の積層フィルムの製造方法としては、PTTを含んだ樹脂組成物を始めとした各種の樹脂組成物を、溶融状態にて口金より押出して成形する溶融成形法、樹脂組成物を溶媒に溶解した状態にて口金より押出して成形する溶液キャスト法、溶融成形法、及び/又は溶液キャスト法にて得た1種類以上の樹脂組成物よりなる固体フィルムに、溶融樹脂を積層する押出ラミネーション法、固体フィルムを積層するドライラミネーション法、溶媒に溶解した樹脂を固体フィルム上にキャストする方法などが挙げられる。これらのうち、生産性、環境適性が優れている溶融成形法が最も好ましい。
溶融成形法としてはTダイやIダイなどより押出した溶融樹脂をロールやベルトにキャストして冷却固化させる溶融キャスト法や、水冷式及び空冷式のインフレーション法が好ましい。
溶融成形法において、樹脂組成物は押出機を用いて供給部に供給され、スクリューの回転により溶融され、押出機から送り出されて加熱された流路を通してスリット等の口金より押出される。
PTTを含む樹脂組成物を押出す際の口金温度は、組成物の熱分解を抑制するために、溶融物が固化しない範囲で低く設定することが望ましく、具体的には樹脂組成物の融点+0〜50℃、好ましくは融点+0〜30℃の範囲でできるだけ低く設定することが好ましい。
本発明では、必要に応じて押出機と口金の間にフィルターを設置して異物等を除去したり、また、定量供給性を上げるためにギアポンプなどを設けたり、添加物の分散性を向上させるために静止型ミキサーを設置したり、温度を一定にするために熱交換ユニットを設置する場合も含む。これらの機器を設置する場合も樹脂の未溶融物が残らず、且つ、組成物の熱分解が抑制できる温度に設定することが望ましく、おおよそPTTを含む樹脂組成物の場合は、融点+0〜50℃、好ましくは融点+0〜30℃に設定することが好ましい。
本発明の積層フィルムの製造法において、含まれるPTTを結晶化させる場合は、溶融成形において溶融樹脂を口金より押出して冷却する際に、結晶化が進行するようにゆっくりと冷却固化させるか、あるいは、急冷して非晶状態とした後、PTTが結晶化するように90〜180℃にて加熱処理することが望ましい。
インフレーション法にてゆっくりと冷却固化させて結晶化させるためには、上吹き式、下吹き式ともに、ダイを出た後、樹脂の温度が、結晶化が進行しやすい80〜180℃の間にある時間を適切に調整することが望ましい。この際の時間は樹脂組成物組成や厚みによって調整する必要があるが、3秒以上が好ましく、10秒以上がより好ましく、20秒以上が更に好ましい。上限は特にないが、設備の大きさより考慮すると5分以内とすることが好ましい。
一方、溶融キャスト法では、ダイより押出された溶融樹脂組成物は、ダイ直下、あるいはダイの側方に設置されたロールやベルトなどの支持体にキャストして冷却固化された後に巻き取られる。この際、ダイと支持体の距離を1〜300mm程度として固化する前にキャストすることが好ましい。こうすることにより、分子鎖の歪を少なくして熱収縮率を低くすることが容易になる。
支持体の温度は、該支持体の上で結晶化させる場合は60〜180℃に設定することが好ましく、80〜150℃がより好ましく、100〜130℃が更に好ましい。この際のロール上での時間は樹脂組成物組成や厚みによって調整する必要があるが、1秒以上が好ましく、2秒以上がより好ましく、5秒以上が更に好ましい。
また、支持体上では非晶の状態で冷却固化させ、後に熱処理して加熱結晶化させることもできる。熱処理は加熱ロールや熱風、赤外線ヒーターなどで行なう。この場合の温度は、支持体を好ましくは−20〜55℃、より好ましくは0〜40℃、更に好ましくは5〜30℃に設定し、熱処理設備を好ましくは60〜180℃、より好ましくは80〜150℃、更に好ましくは100〜130℃に設定するのが良い。時間は樹脂組成物組成や厚みによって調整する必要があるが、支持体上では1秒以上が好ましく、2秒以上がより好ましく、5秒以上が更に好ましく、熱処理は3秒以上が好ましく、5秒以上がより好ましく、7秒以上が更に好ましい。これらの時間に特に上限はないが、支持体や熱処理設備の大きさ、スペース等を考慮して適宜決めることが好ましい。
本発明を実施例に基づいて説明する。
なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した
(1)PTT含有率、BPE含有率
PTT含有率(重量%)は、塗料又は塗膜100mgをHFIP:CDCl=1:1に溶解させ、不溶成分をMEMBRANE FILTER(1μm、PTFE)で濾過した後の溶液を用いて、H−NMR測定により求めた。測定機はFT−NMR DPX−400(Bruker社製)を用いた。また、濾過して取り除いた不溶成分は乾燥後に重量測定を行い、PTT含有率やBPE含有率を求める際に用いた。
(2)固有粘度[η]
固有粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C(g/100ミリリットル)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式(1)に従って求めた。
Figure 2007190785
なお、積層フィルムや添加剤を含んだ樹脂組成物の場合は、o−クロロフェノールに溶解した成分全てを含んだ溶液の比粘度と、溶解した成分全ての濃度を求めてPTTの固有粘度とした。
(3)カルボキシル末端基濃度
PTT組成物1gをベンジルアルコール25mlに溶解し、その後、クロロホルム25mlを加えた後、1/50Nの水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定を行い、滴定値V(ml)とPTT組成物が無い場合のブランク値V(ml)より、以下の式に従って求めた。
カルボキシル末端基濃度(eq/トン)=(V−V)×20
なお、積層フィルムや添加剤を含んだ樹脂組成物の場合は、ベンジルアルコールに溶解した成分全てを対象にして上記滴定を行い、溶解分の重量を用いて算出した濃度を用いた。
(4)結晶融点、結晶化由来の発熱ピーク
結晶融点、結晶化由来発熱ピークの有無、及び、発熱ピーク面積は、シートを、DSCにより0℃で3分間保持した後、10℃/minの設定昇温速度にて0℃から260℃まで昇温して熱分析を行って観察した。
(5)面配向係数
アッベの屈折計の接眼側に偏光板アナライザーを取り付け、マウント液にヨウ化メチレンを用い、測定温度25℃にて単色光NaD線でフィルムの縦方向屈折率(nTD)、横方向屈折率(nMD)、及び、厚み方向屈折率(nZ)を測定し、下記式(3)により面配向係数(nS)を求めた
nS={(nTD+nMD)/2}−nZ ・・・(3)
(6)熱収縮
JIS K7133に準拠して、フィルムを150℃、30分間、張力をかけずに熱処理した際の寸法変化を測定して熱収縮率を求めた。
(7)平坦性
幅300mm、長さ1000mmのフィルムを切り出し、目視にて、以下の基準にて評価した。
○ : 全体が平坦
△ : わずかに波打ちやカールが見られる
× : 波打ちやカールが見られる
(8)加工性
フィルムに金属製の抜き型を用いて10mmφの穴あけ加工を行い、目視にて、以下の基準にて評価した。
○ : 加工ミス、バリの発生なく加工できた
△ : まれに加工ミスやバリの発生がみられる
× : 頻繁に加工ミスやバリの発生が見られる
[実施例1]
2台の50mmφ単軸押出機を用いる上吹きの空冷多層共押出しインフレーション法にて、ABAの3層構成を有する総厚100μmの積層フィルムを製造した。基材層(A)としては固有粘度[η]が1.0dl/g、カルボキシル末端基濃度が10eq/トン、BPE含有率が0.5重量%のPTT84.9重量%に対して、燐酸三ナトリウムを0.1重量%、エラストマー成分としてエチレンアクリル酸グリシジルメタクリレートコポリマー(アルケマ(株)製 LOTADER AX8900)5重量%とエチレンアクリル酸エステルコポリマー(アルケマ(株)製 LOTRYL 35BA40)10重量%の併せて15重量%を含んだ樹脂組成物を用いた。またB層として融点95℃のエチレンエチルアクリレートコポリマー(日本ユニカー(株)製 NUC6225)を用いた。なお、PTTを含む樹脂組成物は二軸押出機を用いて事前にコンパウンドしたものを用いた。
製膜ではA、B層の樹脂組成物を、それぞれ240℃、190℃に設定した押出機を用いて溶融した後、240℃に設定した、直径150mm、間隔が0.5mmの上向きの丸ダイよりA/B/Aの3層状に押出し、室温の冷風を当てながら冷却固化してチューブ状に成形した。その後、2枚にスリットして400mm幅の積層フィルムを得た。この際、B層の樹脂の押出量を40kg/hrとし、各層の厚みがA/B/A=10/80/10、総厚が100μmとなるように、基材層(A)樹脂の押出量とフィルムの巻き取り速度を調整した。
製膜は非常に安定して行なうことができ、フィルムの破損はほとんど見られなかった。また、得られたフィルムは平坦性に優れ、厚みムラも±10%以内と変動の小さい優れたフィルムであった。
得られたフィルムを調べたところ、基材層(A)に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった(結晶化熱量は0J/g)。また、基材層(A)の面配向係数も0.002と非常に小さく、熱収縮率も引き取り方向(MD)及び引き取り直交方向(TD)ともに0.2%と小さい寸法安定性の良好なフィルムであった。また、このフィルムは引き裂き性やデッドホールド性にも優れていた。
[実施例2]
B層樹脂の押出量を20kg/hrとし、これに伴って基材層(A)の押出量と引き取り速度を調整することで表1に示したように総厚み40μm、各層の厚みがA/B/A=5/30/5となるように変えた以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。
製膜は非常に安定して行なうことができ、フィルムの破損はほとんど見られなかった。また、得られたフィルムは平坦性に優れ、厚みムラも±10%以内と変動の小さい優れたフィルムであった。
得られたフィルムを調べたところ、基材層(A)に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.92dl/g、カルボキシル末端基濃度が20eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった(結晶化熱量は0J/g)。また、基材層(A)の面配向係数も0.005と非常に小さく、熱収縮率も引き取り方向(MD)及び引き取り直交方向(TD)ともに0.5%と小さい寸法安定性の良好なフィルムであった。また、このフィルムは引き裂き性やデッドホールド性にも優れていた。
[実施例3]
表1に示した様に、基材層(A)として燐酸三ナトリウムの替わりにエチレンメタクリル酸アイオノマー 金属イオン成分Na(三井デュポンポリケミカル(株)製 ハイミラン 1707)を1重量%添加し、該添加剤量に応じたPTT割合とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。
製膜は非常に安定して行なうことができ、フィルムの破損はほとんど見られなかった。また、得られたフィルムは平坦性に優れ、厚みムラも±10%以内と変動の小さい優れたフィルムであった。
得られたフィルムを調べたところ、基材層(A)に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった(結晶化熱量は0J/g)。また、基材層(A)の面配向係数も0.002と非常に小さく、熱収縮率も引き取り方向(MD)及び引き取り直交方向(TD)ともに0.2%と小さい寸法安定性の良好なフィルムであった。また、このフィルムは引き裂き性やデッドホールド性にも優れていた。
[実施例4]
3台の50mmφ単軸押出機を用いる上吹きの多層共押出しインフレーション法にて、ABCBAの5層構成を有する総厚150μmの積層フィルムを製造した。基材層(A)は実施例1と同じ物を用い、B層の樹脂としてマレイン酸変性の接着ポリエチレン(三井化学(株)製 アドマー)を、C層の樹脂として融点110℃のLDPE(日本ユニカー製)を用いた。
製膜ではA、B、C層の樹脂を、それぞれ240、190、190℃に設定した押出機を用いて溶融した後、240℃に設定した、直径200mm、間隔が1.0mmの上向き丸ダイよりA/B/C/B/Aの5層状に押出し、室温の冷風を当てながら冷却固化してチューブ状に成形した後、2枚にスリットして400mm幅の積層フィルムを得た。この際、C層の樹脂の押出量を40kg/hrとし、各層の厚みがA/B/C/B/A=20/5/100/5/20、総厚が150μmとなるように、A、B層樹脂の押出量とフィルムの巻き取り速度を調整した。
製膜は非常に安定して行なうことができ、フィルムの破損はほとんど見られなかった。また、得られたフィルムは平坦性に優れ、厚みムラも±10%以内と変動の小さい優れたフィルムであった。
得られたフィルムを調べたところ、基材層(A)に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった(結晶化熱量は0J/g)。また、基材層(A)の面配向係数も0.002と非常に小さく、熱収縮率も引き取り方向(MD)及び引き取り直交方向(TD)ともに0.2%と小さい寸法安定性の良好なフィルムであった。また、このフィルムは引き裂き性やデッドホールド性にも優れていた。
[実施例5]
3台の50mmφ単軸押出機を用いる多層Tダイ成形法を用いる以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。製膜では両外層である基材層(A)の樹脂組成物を240℃に設定した2台の押出機を用い、内層であるB層の樹脂組成物を190℃に設定した押出機を用いて、それぞれ溶融した後、245℃に設定した、幅700mm、間隔が0.8mmの下向きコートハンガータイプのTダイよりA/B/Aの3層状に押出し、100℃に設定したロールにキャストして冷却固化した後、常法に従って両端のカット、巻き取りを行って500mm幅の積層フィルムを得た。この際、B層の樹脂の押出量を50kg/hrとし、各層の厚みがA/B/A=5/90/5、総厚が100μmとなるように、基材層(A)樹脂の押出量とフィルムの巻き取り速度を調整した。
製膜は非常に安定して行なうことができ、フィルムの破損はほとんど見られなかった。また、得られたフィルムは平坦性に優れ、厚みムラも±10%以内と変動の小さい優れたフィルムであった。
得られたフィルムを調べたところ、基材層(A)に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.92dl/g、カルボキシル末端基濃度が20eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった(結晶化熱量は0J/g)。また、基材層(A)の面配向係数も0.005と非常に小さく、熱収縮率も引き取り方向(MD)及び引き取り直交方向(TD)ともに0.5%と小さい寸法安定性の良好なフィルムであった。また、このフィルムは引き裂き性やデッドホールド性にも優れていた。
[実施例6]
2台の50mmφ単軸押出機を用いる下吹きの水冷式多層共押出しインフレーション法を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。
製膜では丸ダイより押出した溶融物は、室温の冷風を当てた後、室温の流水と接触させて冷却固化してチューブ状に成形した後、2枚にスリットして400mm幅の積層フィルムを得た。
製膜は非常に安定して行なうことができ、フィルムの破損はほとんど見られなかった。また、得られたフィルムは加熱後の平坦性がわずかに悪化するものの実用上は問題無く、厚みムラは±10%以内と変動の小さい優れたフィルムであった。
得られたフィルムを調べたところ、基材層(A)に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化は進んでいるものの、DSCにて評価すると結晶化に由来するピークが認められ、実施例1に比べて結晶化度は若干低かった。(結晶化熱量は20J/g)
また、基材層(A)の面配向係数も0.008と非常に小さく、熱収縮率も引き取り方向(MD)及び引き取り直交方向(TD)ともに1%と小さい寸法安定性の良好なフィルムであった。また、このフィルムは引き裂き性やデッドホールド性にも優れていた。
[実施例7]
2台の50mmφ単軸押出機を用いる上吹きの空冷多層共押出しインフレーション法にて、ABの2層構成を有する総厚100μmの積層フィルムを製造した。基材層(A)としては固有粘度[η]が1.0dl/g、カルボキシル末端基濃度が10eq/トン、BPE含有率が0.5重量%のPTT樹脂組成物99.9重量%に対して、燐酸三ナトリウムを0.1重量%含んだ樹脂組成物を用いた。またB層としてマレイン酸変性の接着ポリエチレン(三井化学(株)製 アドマー)を用いた。
製膜ではA、B層の樹脂組成物を、それぞれ240℃、190℃に設定した押出機を用いて溶融した後、240℃に設定した、直径150mm、間隔が0.5mmの上向きの丸ダイよりA/Bの2層状に押出し、室温の冷風を当てながら冷却固化してチューブ状に成形した。その後、2枚にスリットして400mm幅の積層フィルムを得た。この際、A層の樹脂の押出量を40kg/hrとし、各層の厚みがA/B=90/10、総厚が100μmとなるように、B層樹脂の押出量とフィルムの巻き取り速度を調整した。
製膜は非常に安定して行なうことができ、フィルムの破損はほとんど見られなかった。また、得られたフィルムは平坦性に優れ、厚みムラも±10%以内と変動の小さい優れたフィルムであった。
得られたフィルムを調べたところ、基材層(A)に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった(結晶化熱量は0J/g)。また、基材層(A)の面配向係数も0.002と非常に小さく、熱収縮率も引き取り方向(MD)及び引き取り直交方向(TD)ともに0.2%と小さい寸法安定性の良好なフィルムであった。また、このフィルムは引き裂き性やデッドホールド性にも優れていた。
[実施例8]
層構成をCBABCと変えた以外は、実施例4と同様の設備、樹脂組成物を用いてフィルムを得た。
製膜は非常に安定して行なうことができ、フィルムの破損はほとんど見られなかった。また、得られたフィルムは平坦性に優れ、厚みムラも±10%以内と変動の小さい優れたフィルムであった。
得られたフィルムを調べたところ、基材層(A)に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった(結晶化熱量は0J/g)。また、基材層(A)の面配向係数も0.003と非常に小さく、熱収縮率も引き取り方向(MD)及び引き取り直交方向(TD)ともに0.3%と小さい寸法安定性の良好なフィルムであった。また、このフィルムは引き裂き性やデッドホールド性にも優れていた。
[実施例9]
実施例5と同様の、3台の50mmφ単軸押出機を用いる多層Tダイ成形法にて、下記の樹脂組成物、製膜条件にてフィルムを得た。
基材層(A)としては固有粘度[η]が1.2dl/g、カルボキシル末端基濃度が10eq/トン、BPE含有率が0.5重量%のPTT樹脂組成物99.9重量%に対して、燐酸三ナトリウムを0.1重量%含んだ樹脂組成物を用いた。またB層としては固有粘度[η]が1.2dl/g、カルボキシル末端基濃度が10eq/トン、BPE含有率が0.5重量%のPTT樹脂組成物71重量%に対して、臭素系難燃剤として坂本薬品工業(株)製 SR−T5000を20重量%、難燃助剤として日本鉱社製の三酸化二アンチモン パトックスMを8重量%、フッ素系樹脂としてダイキン工業社製 ポリフロンFA−500を1重量%含んだ樹脂組成物を用いた。
製膜では両外層である基材層(A)の樹脂組成物を240℃に設定した2台の押出機を用い、内層であるB層の樹脂組成物を250℃に設定した押出機を用いて、それぞれ溶融した後、245℃に設定した、幅700mm、間隔が0.8mmの下向きコートハンガータイプのTダイよりA/B/Aの3層状に押出し、100℃に設定したロールにキャストして冷却固化した後、常法に従って両端のカット、巻き取りを行って500mm幅の積層フィルムを得た。この際、B層の樹脂の押出量を30kg/hrとし、各層の厚みがA/B/A=20/50/20、総厚が90μmとなるように、基材層(A)樹脂の押出量とフィルムの巻き取り速度を調整した。
製膜は非常に安定して行なうことができ、フィルムの破損はほとんど見られなかった。また、得られたフィルムは平坦性に優れ、厚みムラも±10%以内と変動の小さい優れたフィルムであった。
得られたフィルムを調べたところ、基材層(A)に含まれるPTTは、固有粘度[η]は1.10dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった(結晶化熱量は0J/g)。また、基材層(A)の面配向係数も0.005と非常に小さく、熱収縮率も引き取り方向(MD)及び引き取り直交方向(TD)ともに0.4%と小さい寸法安定性の良好なフィルムであった。また、このフィルムは引き裂き性やデッドホールド性にも優れていた。
[実施例10]
実施例5と同様の、3台の50mmφ単軸押出機を用いる多層Tダイ成形法にて、下記の樹脂組成物、製膜条件にてフィルムを得た。
基材層(A)としては固有粘度[η]が1.2dl/g、カルボキシル末端基濃度が10eq/トン、BPE含有率が0.5重量%のPTT樹脂組成物99.9重量%に対して、燐酸三ナトリウムを0.1重量%含んだ樹脂組成物を用いた。B層としてはマレイン酸変性の接着ポリエチレン(三井化学(株)製 アドマー)を用いた。C層としては宇部興産(株)社製ナイロン6 1030Bを用いた。
製膜では基材層(A)、B、C層の樹脂組成物をそれぞれ240、190、250℃に設定した押出機を用いて溶融した後、245℃に設定した、幅700mm、間隔が0.8mmの下向きコートハンガータイプのTダイよりA/B/Cの3層状に押出し、100℃に設定したロールにA層が接触するようにキャストして冷却固化した後、常法に従って両端のカット、巻き取りを行って500mm幅の積層フィルムを得た。この際、基材層(A)の樹脂押出量を50kg/hrとし、各層の厚みがA/B/C=50/10/20、総厚が80μmとなるように、B、C層樹脂の押出量とフィルムの巻き取り速度を調整した。
製膜は非常に安定して行なうことができ、フィルムの破損はほとんど見られなかった。また、得られたフィルムは平坦性に優れ、厚みムラも±10%以内と変動の小さい優れたフィルムであった。
得られたフィルムを調べたところ、基材層(A)に含まれるPTTは、固有粘度[η]は1.10dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった(結晶化熱量は0J/g)。また、基材層(A)の面配向係数も0.004と非常に小さく、熱収縮率も引き取り方向(MD)及び引き取り直交方向(TD)ともに0.3%と小さい寸法安定性の良好なフィルムであった。また、このフィルムは引き裂き性やデッドホールド性が若干劣るものの実用上は問題無いレベルのフィルムであった。
[比較例1]
基材層(A)の樹脂として実施例1で用いたのと同じPTTとエラストマーをそれぞれ25重量%と15重量%、燐酸三ナトリウムを0.1重量%、ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ(株)製 NEH2050)を59.9重量%を含んだ樹脂組成物を用い、該樹脂の押出機と丸ダイの温度を290℃に設定した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムは製膜性におとり、厚みムラ、平坦性等には優れているものの、脆く、加工性に劣るものであった。
[比較例2]
基材層(A)の樹脂組成物として平均分子量2000のポリテトラメチレングリコールを20重量%共重合したPBTエラストマーを用いた以外は実施例5と同様にして積層フィルムを得ようとした。しかしながら波打ってしまって平坦性の良好なフィルムを得ることはできなかった。また、平坦性の良好な部分の熱収縮率はMD、TD方向、それぞれ1.5、1.2%と大きかった。
[比較例3]
基材層(A)の樹脂組成物として平均分子量2000のポリテトラメチレングリコールを20重量%共重合したPBTエラストマーを用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得ようとした。しかしながら所定の幅にしようとするとフィルムに穴があいて破損し連続してフィルムを得ることができなかった。幅を狭めてフィルムを採取しようとすると波打ってしまい平坦性の良好なフィルムを得ることはできなかった。
[比較例4]
ロール温度を20℃とした以外は実施例9と同様にして得た積層フィルムを、バッチ式の同時二軸延伸機を用いて60℃に設定して縦方向と横方向にそれぞれ2.4倍延伸した後、定長にて150℃にて熱処理を行い、延伸積層フィルムを得た。
得られたフィルムは結晶化熱量が0J/gと結晶化しており、厚みムラ、平坦性等には優れていた。しかしながら、面配向係数が0.05、熱収縮率もMD、TD方向、それぞれ2.5%、2%と大きかった。また、若干、加工性も劣るものであった。
Figure 2007190785
本発明の積層フィルムは、優れた耐熱性、耐薬品性に加え、寸法安定性、デッドホールド性、引き裂き性に優れているとともに、ヒートシール性、バリヤー性、クッション性といった機能を有している。しかも製膜性や折り曲げや打抜き、切断などの加工性が良いので、各種の包装フィルムや包装容器、電子基板製造の際に用いる離型フィルム、電子部品などを設置する基材など様々な分野に有用である。

Claims (12)

  1. ポリエステル樹脂組成物からなる基材層(A)と、該基材層(A)とは異なる樹脂組成物からなる1種類以上の層とからなる積層フィルムにおいて、基材層(A)がポリトリメチレンテレフタレートを30〜100重量%含み結晶融点が200〜250℃である樹脂組成物からなり、且つ、基材層(A)の面配向係数が0.03以下であることを特徴とする積層フィルム
  2. 基材層(A)に含まれるポリトリメチレンテレフタレートが結晶化していることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム
  3. 150℃で30分間熱処理した際の、フィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)における熱収縮率が−5〜5%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. 総厚みが5〜5000μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 少なくとも片側の最表面にヒートシール層があることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. ヒートシール層がポリエチレン樹脂からなることを特徴とする請求項5記載の積層フィルム
  7. 少なくとも片側の最表面が基材層(A)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
  8. ポリアミド樹脂、フッ素樹脂及びポリ塩化ビニリデン樹脂より選ばれた1種類以上のバリヤー層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
  9. 基材層(A)と該基材層(A)とは異なる樹脂組成物からなる層を、極性を有したポリオレフィン系の樹脂組成物からなる層を介して積層させたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルム。
  10. インフレーション法により製造することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の積層フィルムの製造法。
  11. 溶融キャスト法により製造することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の積層フィルムの製造法。
  12. 請求項1〜9のいずれかに記載の積層フィルムからなる包装材料。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011240547A (ja) * 2010-05-17 2011-12-01 Mitsui Chemicals Inc 離型フィルム及びそれを用いたledパッケージの製造方法
JP2013509493A (ja) * 2009-11-02 2013-03-14 イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー 強化されたポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物およびその成形品
JP2015066805A (ja) * 2013-09-30 2015-04-13 東レ株式会社 離型用二軸配向ポリエステルフィルム
JP2016043594A (ja) * 2014-08-25 2016-04-04 東レ株式会社 離型用二軸配向ポリエステルフィルム

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