JP2005097572A - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 機械的特性に優れ、高い結晶性を有し、金属板との貼合わせにおいてフィルムの融点付近又は融点以上に熱処理しても白化せず意匠性に優れ、フィルムのへき開がなく、突き刺し強度の良好なポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)と前記樹脂(A)とは異なる結晶性ポリエステル樹脂(B)とを、樹脂(A)と樹脂(B)の合計量を基準として、樹脂(A)10〜90重量%及び樹脂(B)90〜10重量%の割合で配合したポリエステル系樹脂組成物からなるフィルムであって、フィルム断面方向の透過型電子顕微鏡によるフィルム内部の樹脂の分散状態を表す指標であるフーリエ像におけるストリーク長の1/2の値が30nm-1以上であることを特徴とするポリエステルフィルム。樹脂(B)は、ポリブチレンテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートから選ばれる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、各種食品包装用、一般工業用、光学用、電気材料用、成形加工用などの各種用途に適し、また、フィルムラミネート金属板の構成材料として有用なポリエステルフィルムに関する。
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、力学的特性、耐熱性などから様々な用途に展開されている。しかし、ポリエステルフィルムは、柔軟性や成形加工性に劣るため、使用できない用途も見られる。一方、6−ナイロンに代表されるポリアミドフィルムは、柔軟性、耐ピンホール性やガスバリア性に優れるため、食品包材などに多く使用されている。しかし、ポリアミドフィルムは、吸湿に対する寸法安定性が乏しいため、ボイル、レトルト食品用途や工業用途には使用することが難しい。
そのため、ポリアミドフィルムの特性の一つである柔軟性をポリエステルフィルムに付与することが検討されている。これらの大半は、共重合ポリエステルを基材樹脂の全て又は一部に使用することにより、フィルムに柔軟性を付与するものである。しかなしがら、共重合ポリエステルの使用により、フィルムの力学的強度や弾性率が低下するため、印刷などの加工時に問題となることがある。
また、結晶性ポリエステルを用いて、フィルムに柔軟性を付与する検討も行われている。例えば、特開2002−37993号公報、特開2003−2987号公報などには、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートをブレンドしたフィルムが開示されている。
また、缶ラミネート用フィルムにおいてもポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートをブレンドしたフィルムが検討されている。例えば、特許第2882985号公報、特許第3020731号公報、特開平10−195210号、特開平10−110046号公報、特開2003−20348号公報などには、ポリエチレンテレフタレート(PET系)ポリエステル樹脂とポリブチレンテレフタレート(PBT系)ポリエステル樹脂とを配合したポリエステルフィルムが提案されており、フィルムの熱特性と面配向度を最適化することにより、金属板の変形に対するフィルムの追従性と、ラミネート後の熱処理(結晶化処理)によるフレーバー性を向上させている。このとき、フィルムにおける上記2種のポリエステル相互間でエステル交換反応が進行しすぎていると結晶化度を大きくすることができないため、フィルム形成時の樹脂の溶融時間やそれ以降の延伸、熱処理工程においてフィルムにかかる熱量を下げるような工夫がされている。
さらに、特開2002−179892号公報、特開2002−321277号公報においても、PETとPBTのブレンドフィルムが提案されており、成形転写用、成形容器用、金属貼り合わせ用などに使用できることが開示されている。これらは、ブレンドフィルムでありながら、PET相とPBT相が独立した結晶を有することにより、熱融着と成形性を維持することができ、そのために、ベント式押出機を使用してブレンド樹脂を押出すことが開示されている。
しかしながら、上述した公知のポリエステルブレンドフィルムでは、実質的にフィルムをその融点付近又は融点よりも高い温度で溶融して金属板などに貼り合わせてから降温した場合に、フィルムに白化が生じてしまい、フィルムの意匠性が損なわれるという問題が避けられなかった。また、フィルムをそのまま成形加工する場合においても、フィルムの融点付近又は融点よりも高い温度で溶融する場合は、冷却と共にフィルムに白化が生じてしまい、フィルムの意匠性が損なわれるという問題が避けられなかった。
特開2002−37993号公報 特開2003−2987号公報 特許第2882985号公報 特許第3020731号公報 特開平10−195210号公報 特開平10−110046号公報 特開2003−20348号公報 特開2002−179892号公報 特開2002−321277号公報
公知のポリエステルブレンドフィルムにおける前記白化の問題は、以下のとおりと推察される。上述した公知のポリエステルブレンドフィルムの製造においては、ブレンドすべき複数種のポリエステル樹脂チップを溶融前から混合(ドライブレンド)して、得られた混合チップを押出機に投入し、溶融・混合する。そのため、複数種のポリエステル樹脂チップは実質的にほぼ同時に溶融が開始され、長時間にわたって溶融、混合される。長時間の溶融、混合によって、共重合化(エステル交換反応の進行)が起こっているか、又は共重合化が起こっていなくても実質的に相溶性の複数種のポリエステルは非常に微分散された状態となると考えられる。複数種のポリエステルが共重合化せず、互いに実質的に独立した分散状態での結晶性を有していても、非常に微分散された状態において相互の影響を受け合いやすい。そのため、個々のポリエステルについて、より高いレベルでの結晶性の独立性が維持されず、その結果、溶融状態からの降温時において結晶化が進みにくく、フィルムの白化が生じると推察される。
前記白化の問題を解決するためには、ブレンドすべき複数種のポリエステル、例えばPETとPBTの分散状態を粗くすることにより、個々のポリエステルの結晶化速度を高めることが望まれる。しかし、分散状態を粗くしすぎるとフィルムのへき開が発生したり、突き刺し強度が劣るという問題が生じることが考えられる。従って、適度に粗い分散状態に制御され、それらをすべてバランスするフィルムが求められる。
本発明の目的は、機械的特性に優れ、高い結晶性を有し、金属板との貼合わせにおいてフィルムの融点付近又は融点以上に熱処理しても白化せず意匠性に優れ、フィルムのへき開がなく、突き刺し強度の良好なポリエステルフィルムを提供することにある。本発明の目的は、前記特性に優れ、各種食品包装用、一般工業用、光学用、電気材料用、成形加工用などの各種用途に適し、また、フィルムラミネート金属板の構成材料として有用なポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、検討した結果、フィルム内部の樹脂の分散状態を表す指標としてフィルム断面方向の透過型電子顕微鏡によるフーリエ像におけるストリーク長を用い、このストリーク長が30nm-1以上であるポリエステルブレンドフィルムによって、前記目的が達成されることを見いだした。
本発明には、次の発明が含まれる。
(1) ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)と前記樹脂(A)とは異なる結晶性ポリエステル樹脂(B)とを、樹脂(A)と樹脂(B)の合計量を基準として、樹脂(A)10〜90重量%及び樹脂(B)90〜10重量%の割合で配合したポリエステル系樹脂組成物からなるフィルムであって、フィルム断面方向の透過型電子顕微鏡によるフィルム内部の樹脂の分散状態を表す指標であるフーリエ像におけるストリーク長の1/2の値が30nm-1以上であることを特徴とするポリエステルフィルム。
(2) 結晶性ポリエステル樹脂(B)は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂及びポリトリメチレンテレフタレート系樹脂から選ばれる、(1)に記載のポリエステルフィルム。
(3) ポリエステルフィルムの還元粘度が0.80以上である、(1)又は(2)に記載のポリエステルフィルム。
(4) 金属板ラミネート用である、(1)〜(3)のうちのいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(5) 成形加工用である、(1)〜(3)のうちのいずれかに記載のポリエステルフィルム。
本発明によれば、機械的特性に優れ、高い結晶性を有し、金属板との貼り合わせにおいてフィルム融点付近または融点以上に熱処理しても白化せず意匠性に優れ、フィルムのへき開がなく、突刺し強度の良好なポリエステルフィルムが提供される。
本発明のポリエステルフィルムは、前記特性に優れ、力学特性、耐熱性、柔軟性や成形加工性にも優れるため、各種食品包装用、一般工業用、光学用、電気材料用、成形加工用、金属または金属酸化物の蒸着用などの各種用途に適し、特にフィルムラミネート金属板の構成材料として有用である。
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)と前記樹脂(A)とは異なる結晶性ポリエステル樹脂(B)とを、樹脂(A)と樹脂(B)の合計量を基準として、樹脂(A)10〜90重量%及び樹脂(B)90〜10重量%の割合で配合したポリエステル系樹脂組成物から構成される。
本発明において用いられるポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)は、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするものであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)のホモポリマーであってもよく、他の共重合可能な成分が共重合されたコポリマーであってもよい。コポリマーの場合には、ポリエチレンテレフタレート構成成分をポリエステル成分の80モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。共重合可能な酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコ酸などの脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(2−オキシ酪酸)、及びそれらの誘導体が挙げられる。共重合可能なアルコール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びそれらの誘導体が挙げられる。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)の還元粘度は、好ましくは0.55〜1 .10であり、より好ましくは0.58〜1.00である。樹脂(A)の還元粘度が0.55より小さくなると、実用に供することのできる機械的強度を有するフィルムが得られにくくなり、一方、樹脂(A)の還元粘度が1.10を超えると、フィルムの金属板への熱圧着性が損なわれやすい。
本発明において用いられる結晶性ポリエステル樹脂(B)は、共重合したPETも使用できるが、好ましくはポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂およびポリトリメチレンテレフタレート(PTT)系樹脂のうちから選ばれる。また、これらの樹脂を複数用いることも可能である。
ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂は、ポリブチレンテレフタレートのホモポリマーであってもよく、他の共重合可能な成分が共重合されたコポリマーであってもよい。コポリマーの場合には、ポリエステルの高結晶性を損なわないために、ポリブチレンテレフタレート構成成分をポリエステル成分の80モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。同様に、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)系樹脂は、ポリブチレンテレフタレートのホモポリマーであってもよく、他の共重合可能な成分が共重合されたコポリマーであってもよい。コポリマーの場合には、ポリエステルの高結晶性を損なわないために、ポリトリメチレンテレフタレート構成成分をポリエステル成分の80モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。
PBT系樹脂やPTT系樹脂について、共重合可能な酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコ酸などの脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(2−オキシ酪酸)、及びそれらの誘導体が挙げられる。共重合可能なアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びそれらの誘導体が挙げられる。
樹脂(B)の還元粘度は、好ましくは0.80〜2.20であり、より好ましくは0.85〜1.30である。樹脂(B)の還元粘度が0.80より小さくなると、実用に供することのできる機械的強度を有するフィルムが得られにくく、一方、樹脂(B)の還元粘度が2.20を超えると、フィルムの金属板への熱圧着性が損なわれやすい。
また、PET系樹脂(A)の還元粘度と、PBT系樹脂及び/又はPTT系樹脂(B)の還元粘度との差を小さくするとブレンドフィルムのへき開(はく離)は生じにくくなる。そのための目安として、両者の還元粘度の差が0.0以上0.45以下が好ましく、0.0以上0.3以下がより好ましい。0.45を超えるとフィルムのへき開が起こりやすくなることもある。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)と結晶性ポリエステル樹脂(B)との配合割合は、樹脂(A)と樹脂(B)の合計量を基準として、樹脂(A)10〜90重量%及び樹脂(B)90〜10重量%であり、好ましくは樹脂(A)10〜70重量%及び樹脂(B)90〜30重量%であり、より好ましくは樹脂(A)35〜65重量%及び樹脂(B)65〜35重量%である。樹脂(A)が90重量%よりも多い(すなわち、樹脂(B)が10重量%よりも少ない)と、フィルムの成形加工性が低下し、特にフィルムが金属板にラミネートされたラミネート金属板の製缶時に製缶不良を起こし、フィルムが損傷しやすくなる。一方、樹脂(A)が10重量%よりも少ない(すなわち、樹脂(B)が90重量%よりも多い)と、フィルムをその融点付近又は融点よりも高い温度で溶融した後に降温した場合に、フィルムに白化が生じやすい。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム断面方向の透過型電子顕微鏡によるフィルム内部の樹脂の分散状態を表す指標であるフーリエ像におけるストリーク長の1/2の値が30nm-1以上である。
前記ストリーク長は、ポリエステル樹脂(A)及び(B)のフィルム中での分散状態を表す指標であり、以下のようにして求められるものである。切り出したポリエステルフィルムの断面を染料で染色し透過型電子顕微鏡で撮影することにより、染色度の差からポリエステル(A)及び(B)のうちのいずれか一方が海、いずれか他方が島となる海島構造が確認できる。しかし、この海島構造は、ポリエステル(A)及び(B)の物理的特性及び分子構造が近似しているため、非常に見えにくく、ポリエステル(A)と(B)との境界は鮮明ではない。そのため、透過型電子顕微鏡で撮影した画像を、染色度の違いによる濃度の違いとしてコンピュータに取り込み、フーリエ変換をかけることによりフーリエ像を得て、そのフーリエ像において発現したストリークの長さを求める。本発明においては、ストリークの長さの1/2の値をもって規定する。
このストリークの有無は、相状構造の存在、分散度(構造の大きさ)、2相間の電子顕微鏡写真上の強弱などに依存するものである。概略としては、分散度がある程度以上に粗い場合には、ストリーク長は相状構造の大きさと反比例の関係にある。分散度が粗くなる(存在する相構造が大きくなる)ほどストリーク長は小さい値を取るが、分散度が細かくなる(存在する相構造が小さくなる)に従って次第にストリーク長は大きくなる。しかしながら、分散度がさらに分子分散に近くなるまで細かくなると、電子顕微鏡の写真上においてストリーク散乱を与える原因となる2相構造の区別ができなくなり、最終的には区別がつかなくなる。散乱理論的な取り扱いは1相(構造が非常に大きい場合)からなる散乱パターンのケースと同値であるため、分散度が分子分散に近づいて細かくなるほど逆にストリーク長は小さい値を取る。まとめると、フィルム系内でのポリエステル(A)及び(B)の分散度が適当な場合、ストリークを観測することができる。ストリーク長の大小はフィルム系内の分散度の適当さを反映する指標と考えることができる。なお、ストリーク長は単位nm-1で表される。必ずしも適切な表現ではないかもしれないが、慣例に従い本明細書においてこの表記を用いる。またこのストリーク長値は、画像をピクセル数としてデータを取り込み、フーリエ変換をかけて得ることができるため、任意性を保つことが可能である。
本発明のポリエステルフィルムのストリーク長の1/2の値は30nm-1以上であり、好ましくは50nm-1以上、より好ましくは70nm-1以上である。ストリーク長の1/2の値が30nm-1以上であれば、フィルム系内においてポリエステル(A)と(B)の適度に粗い分散度が達成されており、個々のポリエステル(A)と(B)の結晶化速度は高められているので、フィルムの融点付近又は融点以上に熱処理した場合でも白化が生じることが非常に抑制され、フィルムの突き刺し強度も良好である。突き刺し強度が良好になるのは、ポリエステル(A)と(B)のそれぞれの独立性を保つことにより、(B)のPBT及び/又はPTTの効果によるものと考えられる。また、ポリエステル(A)と(B)の分散度が粗すぎることはなく、フィルムのへき開の問題も起こらない。ストリーク長の1/2の値が30nm-1未満では、ポリエステル(A)と(B)の微分散化及び/又は共重合化が進みすぎているため、フィルムの白化が生じたり、突き刺し強度が不良となる。
ストリーク長の1/2の値の上限については特に限定されることはないが、物理的特性及び分子構造が近似したポリエステル(A)と(B)からのブレンドでは、ストリーク長の1/2の値が2000nm-1を超えるフィルムを得ることは非常に難しいと考えられる。このことから、ポリエステルフィルムのストリーク長の1/2の値は30nm-1以上2000nm-1以下であり、例えば、30nm-1以上500nm-1以下であり、好ましくは50nm-1以上500nm-1以下であり、より好ましくは70nm-1以上500nm-1以下である。
なお、フィルム内部に層構成が確認されることもある。それは、A、Bの樹脂はそれぞれ溶融されたあと、溶融状態のまま、好ましくはスタティックミキサに導かれる。スタティックミキサはたとえばノリタケカンパニー製のように、樹脂流路に長方形の板を180度ねじった形のエレメントを交互に繰り返し配列させたもので、このエレメントをひとつ通過するごとに層数が2倍になる。よって論理上は、n個のエレメントを通過すると2n層になるが、実際には流路径、吐出量および各樹脂の粘度や表面張力などの関係で変化することもあるようだ。本発明においては、少なくともフィルムの厚み方向での中央部、2μm厚みの領域の層数が、5層以上、好ましくは30層以上、さらに好ましくは100層以上、特に400層以上、さらに2000層以上であることが好ましい。
また、上限値は理論上存在しないが、実際には100000層以下である。また、ポリエステルAとBを別々の原料としていても、押出機やその後の溶融管内で共重合化または高度に均一混合されてしまうと、1層に見えてしまい、これは本発明においては不適切である。1層に見えてしまう場合は、ストリーク長の1/2の値が30nm-1となる。
また、本発明のポリエステルフィルムの還元粘度(ηsp/c)は、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.90以上、最も好ましくは0.95以上である。フィルムの還元粘度を0.80以上とすることにより、フィルムの耐擦傷性が向上する。フィルムの還元粘度が0.80未満では、金属板にラミネート後のフィルムの硬度が不足し、ラミネート金属板の加工時に傷がつきやすくなったり、製缶時にアルミやスチール板が変形したり、部分的に破壊される原因となる。ポリエステルフィルムの還元粘度の上限については、特に限定されることはないが、例えば1.50以下、好ましくは1.30以下である。
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造について説明する。
本発明のポリエステルフィルムを製造するには、フィルム系内においてポリエステル(A)と(B)の適度に粗い分散度を達成するために、以下のような製造方法をとることが好ましい。
本発明において、PET(A)とPBT及び/又はPTT(B)とをそれぞれ個別に溶融し、溶融状態のPET(A)とPBT及び/又はPTT(B)とを所定の配合割合で混合し、得られた混合樹脂を成形する。具体的には、(A)と(B)とを別々の押出機に投入し個別にそれぞれの適温(融点+30℃以下)で溶融し、溶融状態の(A)と(B)とを所定の配合割合で混合して、得られた混合樹脂をダイに導き、溶融押出する方法である。
従来からの一般的なポリエステルフィルムの製造において、単一のフィルム層を構成する材料は単一の押出機に投入され、溶融、押出されて、フィルムが成形される。背景技術の欄で例示した特許文献においても、2種類以上の異なるポリエステル材料が用いられているが、押出機としては単一の押出機が使用され、前記2種類以上の異なるポリエステル材料は一括して溶融混合されている。これは、製膜時の安定性及び経済性を考慮した結果と推察される。そのため、より高い品質のフィルムの製造は困難であったようである。
従来法において、例えば、一軸又は二軸スクリューを有する単一の押出機のみを使用して、PET(融点255℃)とPBT(融点220℃)とのブレンドフィルムを作成する場合では、両者の融点の差が30℃以上あることから、両者を樹脂チップの段階からブレンドすると押出機の温度は、PETの融点以上に設定する必要があり、通常は、生産の安定性などを考慮し280℃以上に設定される。PBTは260℃以上で分解が始まり、さらには280℃付近から分解速度がより速くなるため、280℃以上に設定された押出機の熱によりPBTの分子量が小さくなる。その結果、PBTとPETとの相溶性が向上し、より均一化の方向に進むため、共重合化(エステル交換反応)しやすくなる。あるいは、PBTとPETとが共重合化せず、独立に近い状態の結晶性を有していても、非常に微分散された状態において相互の影響を受けやすく、より高いレベルでの結晶性の独立性が維持されない。そのため溶融状態からの降温時において結晶化が進みにくく、結果としてより高いレベルでの白化の防止ができなかったと推察される。
PET樹脂(A)とPBT及び/又はPTT樹脂(B)との間でエステル交換反応が起こると、樹脂(A)と樹脂(B)との共重合体が生成することになり、PET樹脂(A)の主成分構造であるエチレンテレフタレート構造がランダム化し、その特徴である剛直性が損なわれ、一方、PBT及び/又はPTT樹脂(B)の主成分構造であるブチレンテレフタレート構造、又はトリメチレンテレフタレート構造がランダム化し、その特徴である高結晶性が損なわれる。その結果、結晶化速度が遅くなり、白化の原因となる粗大球晶が発生しやすい。
従来法において、特に緩圧縮型の押出機を使用した場合、圧縮比の大きい(例えば、2.0より大きい圧縮比)押出機を使用した場合、及びL/Dの大きい(例えば、35より大きいL/D)押出機を使用した場合には、見かけの設定温度は低くできるが、押出機の圧縮部(コンプレッションゾーン)における自己発熱量が大きくなり、設定温度以上に樹脂の温度は高くなり、そのために融点の低いPTT、PBTなどは分解しやすいようである。
このような従来法の問題を解消すべく、本方法では、PET(A)とPBT及び/又はPTT(B)とをそれぞれ個別に溶融し、溶融状態の(A)と(B)とを混合する。この製造方法を採ることにより、(A)と(B)との共重合化(エステル交換反応)や、微分散化を抑制でき、製膜の安定性を維持しつつ、品質の向上したフィルムが得られることがわかった。
PET(A)とPBT及び/又はPTT(B)の個別の溶融工程では、2台以上の押出機を並列に使用することが好ましい。このような押出機としては、公知の種々のものを用いることができる。また、2台以上の押出機の並列使用に代わりに、単一の押出機を使用して個別の溶融を行うことも可能である。
ただし、単一の押出機を使用して個別の溶融を行う場合には、一軸押出機においてスクリューの圧縮部(コンプレッションゾーン)がダブルフライト型のもので、且つ急圧縮型で圧縮比の小さいもの(2.0以下の圧縮比)のものを使用する必要がある。ここで、「ダブルフライト型」とは、スクリューの圧縮部(コンプレッションゾーン)を二重らせん構造にし、主フライト間に主フライト外径よりもやや小さい外径のサブフライトを設けた構成を意味し、サブフライトによってポリマーの固相部と溶融部とが分離されるという特徴を有する。スクリューの圧縮部がダブルフライト型であれば、先に溶融を始めたPBT(及び/又はPTT)(B)とその時点では固体を維持しているPET(A)とは、圧縮部の前半のフライトで分離されるため、(A)と(B)との個別の溶融が行われる。そして、(A)と(B)との溶融状態での接触時間が短くなり、適度に粗い分散が達成されると考えられる。このような圧縮部(コンプレッションゾーン)がダブルフライト型のスクリューを有する押出機としては、例えば、三菱重工社製のUBシリーズ(商品名)が挙げられるが、その全てで本発明に合致するポリエステルフィルムの製造が達成されるとは限らず、前述した条件を満たす必要がある。単一の押出機の使用方法では、条件の許容範囲が狭いため、2台以上の押出機を並列で使用する方法が好ましい。
溶融状態の(A)と(B)との混合工程において、それぞれ溶融したポリエステルを混合する機台としては、通常の一軸押出機、二軸押出機、ダイナミックミキサー、スタティックミキサー(ノリタケカンパニー製など)などを用いる。この際、溶融状態の(A)と(B)とがあまり均一に混合され相溶化しすぎないように、通常の一軸押出機や二軸押出機を使用する場合は、圧縮比の小さいもの(例えば1.1〜3.8、好ましくは1.3〜3.0)、押出機スクリュー全体のL/Dが小さいもの(例えば20〜35、好ましくは20〜30)及び圧縮部のL/Dが小さいもの(例えば5〜25、好ましくは10〜20)が望ましい。
この混合工程において、より最適な(A)と(B)との分散度を得るために、スタティックミキサーを用いることが好ましい。スタティックミキサーのエレメント数を9以上32以下とすることが好ましく、12以上28以下とすることがより好ましい。
このようなエレメント数のスタティックミキサーを用いることによって、適度に粗い分散度が得られやすく、白化が生じることなく、突き刺し強度にも優れ、且つへき開の問題も起こらない良好なフィルムが得られる。エレメント数が12未満では、ポリエステル(A)と(B)が極端な相構成を発現しやすく、フィルムのへき開が生じることがある。一方、エレメント数が32を超えると、ポリエステル(A)と(B)の混合が進みすぎ微分散が進行しすぎるため、白化や突き刺し強度の低下が起こりやすい。
また、本発明において、樹脂(A)及び樹脂(B)を含むフィルム組成物中に、エステル交換等の副反応を抑制するために、特定のリン化合物を添加することも好ましい。従来より、ポリエチレンテレフタレート系樹脂とその他の結晶性ポリエステル樹脂とを含むフィルム組成物中でのエステル交換等の副反応を抑制する手段として、さまざまな手段が公知となっている。しかし、工業的フィルム生産の場で応用するには、特定のリン化合物をフィルム組成物中に添加することにより、触媒作用によるエステル交換反応を抑制することが好ましい。また、混合する際の樹脂チップのサイズを制御することも好ましい。
このようなリン化合物としては、また押出機内での安定性を考えると融点が200℃以上、分子量は200以上のものがよい。例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキシド、メチルジフェニルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの有機リン化合物の1種又は2種以上を用いることができる。リン化合物はあらかじめ樹脂に予備混練しておくことが好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂のチップに予備混練しておくことがより好ましい。
リン化合物の添加量はリン化合物の種類によっても異なるが、エステル交換反応抑制の観点から、樹脂(A)及び樹脂(B)の合計量に対して0.01〜0.3重量%程度が好ましい。なお、ポリエステルフィルムを飲料缶など食品用途に使用する場合はFDA(米国食品医薬品局)、ポリオレフィン等衛生協議会などの基準を満たす化合物及び量で使用する必要がある。
また、本発明において、樹脂(A)及び樹脂(B)を含むフィルム組成物中に、結晶化の核剤となるものを添加するとさらに好ましい。そのための核剤としては、有機微粒子、無機微粒子のいずれもが使用でき、シリカ、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ポリエチレングリコール、タルクなどが挙げられ、好ましくはタルクである。これら結晶核剤の1種又は2種以上を用いることができる。結晶核剤の添加量は、一般的に、樹脂(A)及び樹脂(B)の合計量に対して0.0001〜0.1重量%程度が適当である。
得られた溶融状態の混合樹脂を押し出す。樹脂の押出条件において、樹脂温度は265℃以下で且つシリンダ部からT−ダイまでの温度設定において275℃以上、好ましくは270℃以上の領域を作らないことが必要である。温度が高くなった時点で、ポリエステル樹脂(A)及び樹脂(B)の相溶性が高まり、微分散状態となる。その結果、フィルムの白化が生じやすく、粘度低下の原因となり、フィルム硬度が低下しやすい。
本発明のポリエステルフィルムは、以上の条件を満たせば、通常のフィルムの製膜設備によってインフレーション法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などで製造することが可能である。また溶融押出されたシートを未延伸のまま使用したり、1軸だけ延伸してもよい。
また、本発明においては、好ましくは延伸終了後に140〜270℃、好ましくは200〜270℃において熱処理するとよい。この際、縦方向及び/又は横方向に2%以上緩和させながら熱処理することにより、フィルムの金属板への接着性と製缶時の操業性の良好なポリエステルフィルムが得られる。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは3〜1000μm、より好ましくは5〜70μmである。また、通常、溶融混合に際し、ポリエステル組成物に滑剤を添加して成形してフィルムとされる。滑剤としては、シリカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸カルシウム等の無機系滑剤、シリコーン粒子等の有機系滑剤が挙げられるが、無機系滑剤が好ましい。滑剤の添加量は、一般的に、樹脂(A)及び樹脂(B)の合計量に対して0.01〜5重量%程度、好ましくは0.02〜0.2重量%が適当である。また、溶融混合に際し、滑剤の他に、必要に応じて、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、帯電防止剤等の各種添加剤を含有させることができる。
以上の製造方法によって、ストリーク長の1/2の値が30nm-1以上とされた本発明のポリエステルフィルムを得ることができる。
得られたポリエステルフィルムを金属板にラミネートすることにより、ラミネート金属板とする。この場合、ローラー又は金属板を150〜270℃に加熱しておき、金属板とポリエステルフィルムとをローラーによって貼り合わせた後、急冷し、金属板に接するフィルムの少なくとも表層部を溶融融着させればよい。ラミネート速度は、例えば1〜200m/分、好ましくは2〜150m/分である。また、ポリエステルフィルムを金属板上に載置した後、フィルムを金属板にラミネートしてもよい。
本発明のポリエステルフィルムは、金属板ラミネート用途のみならず、各種食品包装用、一般工業用、光学用、電気材料用、成形加工用などの各種用途に用いることができる。より詳しくは、一般包装用、帯電防止用、ガスバリア用、ヒートシール用、防曇、金属蒸着、易引裂性、易開封、製袋包装用、レトルト包装用、ボイル包装用、薬包装用、易接着性、磁気記録用、コンデンサ用、インクリボン用、転写用、粘着ラベル用、スタンピングホイル用、金銀糸用、トレーシング材料用、離形用、シュリンクフィルム用などの各種用途に用いることができる。これらのうちでも、本発明のポリエステルフィルムは、成形加工用(フィルム単独を成形して目的の物品とする際の成形材料)、金属板ラミネート用(フィルムラミネート金属板の構成材料)に特に好適である。
このとき、突き刺し強度は0℃では、0.7N/μm以上、好ましくは0.9N/μm以上、10N/μm以下が望まれる。20℃では、1.2N/μm以上、好ましくは1.3N/μm以上、10N/μm以下が望まれる。
ここでいう突き刺し強度とは、以下の測定による値を意味する。
サンプルを20mm幅160mm長の短冊状に切り出して引張試験機(島津製作所(株)製 オートグラフ AG−5000A)の上側チャックに下向きに周長約100mmの輪を作るように固定し、下側チャック上部に先端曲率半径0.35mmの鋼製針を、針先が下向きになるよう、かつ試験片の中央に針先が当たるよう固定する。引張速度50mm/minで試験片を上部に引張って針を試験片に突刺し、針が貫通するまでの最大荷重を測定した。試験片は10枚用意し、突刺す面を変え5枚ずつ測定した。求めた最大荷重の平均値を求め、その値を厚さ1μmあたりに換算してフィルムの突刺強度(N/μm)とした。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例においてポリエステルの各特性値は、次のようにして測定した。
1.還元粘度(ηsp/C)
ポリマー0.125gをフェノール/テトラクロロエタン=6/4(重量比)25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて25℃で測定した。単位はdl/gである。
2.分散の指標であるストリーク長の1/2の値
フィルムの断面相構成を透過型電子顕微鏡を用いて観察した。まず、サンプルフィルムをエポキシ樹脂中に包埋した。エポキシ樹脂としては、ルアベック812、ルアベックNMA(以上ナカライテスク社製)、DMP30(TAAB社製)を、100:89:3の重量割合で良く混合したものを用いた。サンプルフィルムをエポキシ樹脂中に包埋した後、温度60℃に調整したオーブン中に16時間放置し、エポキシ樹脂を硬化せしめ包埋ブロックを得た。
得られた包埋ブロックを、日製産業製ウルトラカットNに取り付け、超薄切片を作成した。まず、ガラスナイフを用いてフィルムの観察に供したい部分の断面がレジン表面に現れるまでトリミングを実施した。次に、ダイアモンドナイフ(住友電工製、スミナイフSK2045)を用いて超薄切片を切りだした。切りだした超薄切片をメッシュ上に回収した後、室温で四酸化ルテニウム蒸気中に30分間静置して染色し、薄くカーボン蒸着を施した。
電子顕微鏡観察は、日本電子製JEM−2010を用いて、加速電圧200kVの条件で実施した。フィルム断面の電子顕微鏡撮影で得られた像をイメージングプレート(富士写真フイルム製、FDL UR−V)上に記録した。イメージングプレート上に記録した信号をデジタルルミノグラフィー(日本電子製、PixsysTEM)を用いて読み出し、ウインドウズパソコン上にデジタルの画像情報として記録した。
この画像ファイルをマッキントッシュパソコンに転送した後、ソフトウエアNIHイメージを用いてフーリエ像を計算した。NIHに内蔵のマクロで組まれたFFT(2次元高速フーリエ変換)ルーチンを用いて計算した。フーリエ像には、実像に見られる相が走っている方向とは直角方向にストリークが出ていることが認められた。このストリークの長さの1/2の値(nm-1)を求めた。このストリークは実像に見られる相の存在有無やコントラスト、相間の相関の強弱によって現れるものである。
3.フィルム内部の層数
フィルムの断面方向に対して中央部の2μm×2μmの領域に、2.の方法で電子顕微鏡観察した場合のポリエステルAおよびBの染色度の差から確認される層の数を数えた。
4.フィルムの白化
フィルムを以下の条件でアルミ板にラミネートし、280℃、1分間ギアオーブン中に放置した。その後、25℃の空気を風速20m/分でラミネート板のフィルム面に当てることにより冷却した。冷却後のフィルムを目視で次のように判定した。
(ラミネート条件)
ラミネート温度:220℃
線圧:10N/cm
◎:全く白化がなく、フィルム面の光沢度合いが高い
○:僅かに白化が見られるが、フィルム面の光沢度合いは高い
△:白化が見られ、フィルム面の光沢度合いは低い
×:白化が著しく、フィルム面の光沢度合いは低い
本発明においては、実用的観点から評価○が必要であり、好ましくは評価◎が求められる。
5.突き刺し強度
サンプルを20mm幅160mm長の短冊状に切り出して引張試験機(島津製作所(株)製オートグラフ AG−5000A)の上側チャックに下向きに周長約100mmの輪を作るように固定し、下側チャック上部に先端曲率半径0.35mmの鋼製針を、針先が下向きになるよう、かつ試験片の中央に針先が当たるよう固定する。引張速度50mm/minで試験片を上部に引張って針を試験片に突刺し、針が貫通するまでの最大荷重を測定した。試験片は10枚用意し、突刺す面を変え5枚ずつ測定した。求めた最大荷重の平均値を求め、その値を厚さ1μmあたりに換算してフィルムの突刺強度(N/μm)とした。
また、測定温度は0℃と20℃で実施した。
本発明では、0℃では、0.7N/μm以上、好ましくは0.9N/μm以上、10N/μm以下が望まれる。20℃では、1.2N/μm以上、好ましくは1.3N/μm以上、10N/μm以下が望まれる。
6.フィルム劈開指数
いわゆる碁盤目試験を行った。サンプルフィルム表面に1mm間隔の碁盤目状に切り込みを入れ、区切られた100個の区域を作製した。このサンプルフィルム表面にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り全体に1kg/cm2 の荷重を10秒間かけた後、貼り付けられたセロハンテープをフィルムと垂直方向にはがした時、碁盤目状に区切られた100個の区域のうち、セロハンテープ側にフィルム表面が付いた個数を求めた。この個数をフィルム劈開指数とした。本発明においては、フィルム劈開指数は、5個以下であることが必要で、好ましくは3個以下、より好ましくは1個以下である。
[実施例1〜4]
ポリエステル樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(還元粘度0.85、東洋紡績製)を60mmφ押出機(I)(L/D=29,圧縮比4.2)に投入し、275℃で溶融した。一方、ポリエステル樹脂(B)としてポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック製、NV5010AS、還元粘度1.10)を別の60mmφ押出機(II)(L/D=29,圧縮比4.2)に投入し、240℃で溶融した。その後、押出機(I)及び押出機(II)から、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート=5/5(重量比)となるように、両樹脂を溶融状態のままスタティックミキサー(ノリタケカンパニー製、N20)中に導き、混合、溶融し、T−ダイから押出し、厚さ200μmの未延伸シートを得た。なお、スタティックミキサーのエレメント数は、6(実施例1)、12(実施例2)、18(実施例3)、及び24(実施例4)の4水準で行った。この際、スタティックミキサーのシリンダ部、及びフィルタ部(200メッシュ)の温度は260℃とし、フィルタ部からT−ダイまでは255℃とし、T−ダイから出た樹脂の温度は257℃となるようにした。
この未延伸シートを、ロール延伸機に導き、縦方向に70℃で3.3倍に延伸し、さらにテンターにて横方向に95℃で3.5倍に延伸し、そのままテンター内で横方向に3%緩和しながら150℃で熱固定を行い、厚さ17μmのフィルムを得た。
[実施例5]
比較例1においてエレメント数を9とした以外は同様の方法において、ポリエステルフィルムを得た。
[比較例1、実施例6〜7]
ポリエステル樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(還元粘度0.70、東洋紡績製)を60mmφ押出機(I)(L/D=29,圧縮比4.2)に投入し、275℃で溶融した。一方、ポリエステル樹脂(B)としてポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ製、1200S、還元粘度1.30)を別の60mmφ押出機(II)(L/D=29,圧縮比4.2)に投入し、240℃で溶融した。その後、押出機(I)及び押出機(II)から、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート=5/5(重量比)となるように、両樹脂を溶融状態のままスタティックミキサー(ノリタケカンパニー製、N20)中に導き、混合、溶融し、T−ダイから押出し、厚さ200μmの未延伸シートを得た。なお、スタティックミキサーのエレメント数は、6(比較例1)、12(実施例6)、及び18(実施例7)の3水準で行った。この際、スタティックミキサーのシリンダ部、及びフィルタ部(200メッシュ)の温度は260℃とし、フィルタ部からT−ダイまでは255℃とし、T−ダイから出た樹脂の温度は257℃となるようにした。
この未延伸シートを、ロール延伸機に導き、縦方向に70℃で3.3倍に延伸し、さらにテンターにて横方向に95℃で3.5倍に延伸し、そのままテンター内で横方向に3%緩和しながら150℃で熱固定を行い、厚さ17μmのフィルムを得た。
[実施例8〜9]
樹脂(A)と樹脂(B)との重量混合比率を(A)/(B)=25/75(実施例7)及び75/25(実施例8)とした以外は、実施例3と全く同様にしてポリエステルフィルムを得た。
[比較例2]
ポリエステル樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレート樹脂(還元粘度0.85、東洋紡績製)と、ポリエステル樹脂(B)としてポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック製、NV5010AS、還元粘度1.10)とを、重量混合比率(A)/(B)=5/5でチップブレンドし、60mmφ押出機(II)(L/D=29,圧縮比4.2)に投入し、270℃で溶融した。その後は、実施例1と同様の方法で製膜し、ポリエステルフィルムを得た。
[実施例10]
ポリブチレンテレフタレートの代わりに、ポリトリメチレンテレフタレート(還元粘度0.92)を用いた以外は、実施例3と全く同様にしてポリエステルフィルムを得た。
[実施例11]
実施例2において、PETの還元粘度を0.75とした以外は同様の方法において、ポリエステルフィルムを得た
[実施例12]
実施例2において、PBTの代わりに、分子量2000のポリエチレングリコールを共重合したPET(還元粘度 0.80)とした以外は同様の方法でポリエステルフィルムを得た
得られた各ポリエステルフィルムの特性結果を表1に示す。
Figure 2005097572
表1より、ストリーク長の1/2の値が30nm-1以上である本発明のポリエステルフィルム(実施例1〜11)はいずれも、白化の問題がなく、突刺し強度及びへき開強度にも優れていた。特に、ストリーク長の1/2の値が70nm-1以上である実施例2〜4、及び7〜10のポリエステルフィルムは非常に良好な特性を示した。
比較例2では、実施例1〜4と同じポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートを用いたにも係わらず、チップブレンドした後、一括溶融したために、著しい白化が見られた。
また、比較例1及び実施例6〜7において用いたPETとPBTの還元粘度差(0.60)は、実施例1〜3で用いたPETとPBTの還元粘度差(0.25)よりも大きいものであった。そのため、同じエレメント数のスタティックミキサーを用いた場合、PETとPBTとがより大きな相構造をとり分散が不十分で、それぞれストリーク長が小さくなった。より優れたポリエステルフィルムを得るためには、PETとPBT(及び/又はPTT)の還元粘度差が小さくなるように、PETとPBT(及び/又はPTT)とを選択するとよいことが明らかとなった。

Claims (6)

  1. ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)と前記樹脂(A)とは異なる結晶性ポリエステル樹脂(B)とを、樹脂(A)と樹脂(B)の合計量を基準として、樹脂(A)10〜90重量%及び樹脂(B)90〜10重量%の割合で配合したポリエステル系樹脂組成物からなるフィルムであって、フィルム断面方向の透過型電子顕微鏡によるフィルム内部の樹脂の分散状態を表す指標であるフーリエ像におけるストリーク長の1/2の値が30nm-1以上であることを特徴とするポリエステルフィルム。
  2. ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)10〜90重量%とAとは異なる結晶性ポリエステル樹脂(B)90〜10重量%とを配合したポリエステル系樹脂組成物からなるフィルムにおいて、フィルム断面方向の透過型電子顕微鏡により観察されるフィルム内部の層数が5層以上であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。ただし、フィルム内部の層数とは、厚み方向に断面に切り出した場合に2μm×2μmの領域に含まれる層の総数をいう。
  3. 結晶性ポリエステル樹脂(B)は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂及びポリトリメチレンテレフタレート系樹脂から選ばれる、請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
  4. ポリエステルフィルムの還元粘度が0.80以上である、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
  5. 金属板ラミネート用である、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
  6. 成形加工用である、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
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