JPWO2004057081A1 - 複合針 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献2(WO 01/31102A1)は、複合針のタングが針本体のフックを越えて前進する際の摺動抵抗や、ブレードがフックにより左右に押し広げられることによるブレード間の張り出しを検討している。そして特許文献2は、針本体のブレード溝に隔壁を設けて、2枚のブレードを隔壁の左右に収容することを提案している。この結果、タングがフックを越えて前進する際に、2枚のブレードを大きな角度で拡げるのではなく、隔壁の分だけ小さな角度で拡げ、左右の張り出しを小さくしている。またブレード間に隔壁分の隙間があるため、フックとブレードとの摺動抵抗が小さくなる。さらに隔壁は、2枚のブレードを案内し、かつブレードの間に持ち込まれた繊維屑などを擦り落とす役割もしている。
特許文献2の複合針では、ブレード溝から進出した2枚のブレードの間に隙間がある。ここでブレードが編目を保持している場合、編目からブレードに左右横方向の力が加わることがある。例えば編幅の両端の編目やラッキングを受けた編目の場合、編目が横方向に引っ張られているので、この力がブレードに加わる。するとこの力でブレードが反り、ブレードとブレードとの間にフックを捉えることができず、2枚のブレードがフックの片側に寄ってしまうなどのトラブルが生じることがある。このようなことは編成上のエラーの原因となる。
用語法
この明細書において、前後はニードルベッドの針溝に平行な方向を言い、ニードルベッド間の歯口へ向けての移動が前進で、歯口から後退することを単に後退あるいは後進という。またニードルベッドの長手方向に平行な方向で、即ち複合針の長手方向(前後進方向)に直角で、かつニードルベッドの表面に平行な方向が左右方向である。また先端は各部材の歯口側の端部で、基端は歯口から遠い側の端部である。前方/後方は、歯口に近い側を前/歯口から遠い側を後とする。
発明の概要
好ましくは、前記後部で隔壁を相対的に肉薄にする(請求の範囲第2項)。
また好ましくは、前記2枚のブレードがブレード溝内に後退した際に、屈曲部が隔壁の肉薄部や切り欠きに接するようにする(請求の範囲第3項)。言い換えると、ブレードをブレード溝内に後退させた際に、隔壁の肉薄部や切り欠きと接する位置に屈曲部を設けることが好ましい。なおこの時、ブレードの先端は、隔壁の肉厚部の位置にあっても、あるいは肉薄部や切り欠きの位置にあっても良く、実施例では肉厚部と肉薄部との境界に位置させる。なお2枚のブレードはほぼ同じ運動を行うので、一方のブレードに着目している場合を除き、「ブレード」を2枚のブレードの意味で用いることがある。
発明の作用と効果
この発明では、ブレードがブレード溝から前進する際に、隔壁でセンタリングする。次にブレードに編目から横方向の力が加わると、ブレード先端部の後方、例えばブレード先端部のやや後方、の屈曲部が互いに接して、ブレード2枚分の剛性で耐える。このためブレード先端の開口に確実にフックを捉えることができる。ブレードがブレード溝内に後退した際に、隔壁の肉厚が一定であると、屈曲部が隔壁により拡げられ、ブレードの先端はさらに拡がるので、ブレード溝や隔壁との摩擦が増す。これに対して本発明では、隔壁の肉薄部や切り欠きにブレードの屈曲部が接するので、ブレードに屈曲部を設けたことによる、隔壁やブレード溝とブレードとの摩擦の増加を小さくできる(請求の範囲第1項〜第3項)。
図2は図1の複合針の(a)〜(d)の4箇所での断面を示す端面図である。
図3は図1の複合針のブレードの要部平面図である。
図4は図1の複合針の要部を、ブレードがフックへ向けてブレード溝から前進し始めた状態で示す平面図である。
図5は図1の複合針の要部を、ブレードがフックを越えてさらに前進した状態で示す平面図である。
隔壁9は、先端の肉厚部10と、その後部で隔壁9の中央部の肉薄部11,並びに最後部の肉厚部10bの3つの部分からなり、最後部の肉厚部10bを設けず、この部分を肉薄部11に含めてもよい。肉厚部10,10bと肉薄部11間の境界ライン13やブレード溝底部12を、図1に側面視で破線で示す。隔壁9の先端側の肉厚部10とその後部の肉薄部11との間で、境界ライン13はブレード溝8の下後方から上前方へと斜めに配置してある。このため、図1の切断面(c)の位置で隔壁の肉厚はブレード溝8の上下で不均一となり、底部側で厚く上部側で薄くなる。肉厚部10と肉薄部11との境界を、境界ライン13のように斜めに配置することに代え、ブレード溝8の上下で隔壁の厚さを均一にし、肉厚部10から肉薄部11へと、隔壁の厚さが前後方向でテーパー状に変化するなどのようにしてもよい。また隔壁の厚さを、前後方向に沿って肉厚部と肉薄部との間で、階段状に変化させても良い。
14,14は一対のブレードで、図1に側面視で示すように、後部のスライダー本体26と一体となり、複合針2のスライダーを構成する。また図1は、ブレード14,14がブレード溝8,8内に後退した状態を示す。なお針本体4の後部には図示しない本体ジャックがあり、スライダー本体26や本体ジャックは、図示しないバットにより、キャリッジのカムなどにより操作される。ブレードの先端にはタング16があり、ブレード底部17を図1の側面視に破線で示す。ブレード14,14はその先端が左右にやや開いて、図4,図5に示す開口18を形成し、その後部にブレード14,14が弾性的に屈曲して相接する屈曲部19がある。ただし屈曲部19でブレード14,14が相接する必要はなく、例えば屈曲部19でブレード14,14間に僅かな隙間があり、屈曲部19でブレード間の間隔が他の部分よりも狭ければ良い。
ブレード14,14は屈曲部19で相接し、20は屈曲部19の後方のブレード14,14間の隙間で、屈曲部19の後方上部でブレード14,14は拡開されて拡開部22を構成する。ブレード14,14は屈曲部19の位置で相接し、あるいは間隔が最小となるので、ブレード14と隔壁9やブレード溝8との摺動抵抗は、屈曲部19の位置で最大となる。図1に側面視で示す、ガイド25の下面に設けたガイド面24により、拡開部22がガイドされ、後退時にブレード14がブレード溝8内に沈み込むようにガイドする。
図2の(a)〜(d)は、図1の切断面(a)〜(d)に沿っての、針本体4の切断面を拡大して示したものである。ブレード溝8の深さは、隔壁先端の肉厚部10から肉薄部11へと向けて深くなり、(a),(b)の位置では隔壁は肉厚で、(c)の位置では隔壁の上部が肉薄で、下部が肉厚である。また(d)の位置では隔壁の上部から底部までが肉薄になっている。(c)の位置までブレード14,14がブレード溝8,8内を後退すると、ブレード14の先端の開口18の付近が肉厚部10に接し、それよりも後方の屈曲部19の部分は肉薄部11に接している。
図3に1枚のブレード14を単独で示し、図4にブレード14,14がブレード溝内からフック6の手前まで前進した状態を示す。ブレード14,14の先端は左右両外側に開いて開口18を形成し、後部の拡開部22よりも前方の部分がタング16で、フック6の口を閉じたり、目移しやノックオーバーなどのためにループを預かったりする。タング16には、開口18の後部に前記の屈曲部19があり、屈曲部19は、図3に鎖線で示すブレード14の長手方向内側の線よりも内側へと屈曲し、一対のブレード14,14はこの部分で弾性的に接している。ただし屈曲部19,19で、必ずしもブレード14,14を当接させる必要はない。屈曲部19,19でブレード14,14が相接しあるいは間隔が狭くなるので、隔壁との摺動抵抗は屈曲部19に集中する。
実施例の動作を説明する。図1のように、ブレード14,14がブレード溝8,8内に後退している状態では、タング16の部分はブレード溝8,8内に隠れて露出しない。この時、屈曲部19は隔壁の肉薄部11の部分にあり、屈曲部19,19間を隔壁で押し広げることが少なく、隔壁との間の力も小さい。また屈曲部19が肉薄部11に接しているので、開口18でのブレード14,14の広がりも小さくなり、ブレード溝8,8の左右外側の側面との間の力も小さくなる。このように、ブレード14,14はいわばリラックスした状態で、ブレード溝8,8内に収容されている。
図4のように、ブレード14,14をフック6へ向けて前進させ、フック6の口をタング16,16で閉じようとすると、ブレード14,14のフック6に対する位置や向きが問題になる。このためには、ブレード14,14をブレード溝8,8でセンタリングして前進させると共に、タング16、16で保持している編目からの横方向の力でブレードの向きが変化しないようにする必要がある。そこでブレード14,14を肉厚部10でセンタリングして、ブレード溝8,8から前進させる。
次に、旧ループのノックオーバー等によりタング16が編目を保持している場合、この編目からの左右横方向の力が問題になる。例えばこの編目が、編地の左右両端の編目やラッキングを受けた編目等であると、編目には左右方向の張力が加わっている。1枚のブレード14でこの力を受けると、ブレードが反り、フック6の左右片側に2つのブレードが寄って、開口18にフック6を捉えることができなくなる恐れがある。しかし実施例では、屈曲部19,19でブレード14,14が相接しているので、全体としてのブレードの剛性はブレード1枚の場合の例えば2倍に増し、糸張力などによるブレードの反りを防止し、確実にフック6を捉えることができる。なお当初は屈曲部19,19間に僅かな隙間がある場合でも、糸張力が先に加わった方のブレードがこの隙間分変形すると、屈曲部19,19が接してそれ以上の変形を抑制できる。ブレード14,14をさらに前進させ、タング16がフック6を越えた状態を、図5に示す。
以上のように実施例では、隔壁9の肉厚部10でブレード14,14をセンタリングする。また編目からブレード14、14に加わる力に対して、屈曲部19,19で2枚のブレード14,14が相接するようにして、ブレードの反りなどの変形を小さくする。これらの結果、開口18は確実にフック6を捉えることができ、ブレード14,14がフック6と衝突したり、フック6の片側に寄ってしまったりする恐れがない。
ブレード溝8への繊維屑などのゴミの持ち込みについて検討する。タング16,16が糸などに触れると、繊維屑などがその間に挟まり、ブレード溝8,8内に持ち込まれる。このためブレードとブレード溝との摺動抵抗が増し、繊維屑を除くため清掃が必要になる。清掃は例えば、ブレードを前進させ、開口18に加圧空気を吹き付けて行う。実施例では、繊維屑などのゴミは隔壁の肉厚部10により擦り落とされ、肉薄部11の部分ではブレード溝8の幅がブレード14の肉厚よりも大きいので、その隙間に繊維屑が詰まるまで、ブレード14,14は前後進できる。このため、複合針の清掃間隔を長くできる。
実施例では、隔壁に肉薄部11を設ける例を説明したが、肉薄部11を切り欠いても良い。ただし肉薄部11を設けた方が、ブレードの案内がより確実になる。
フック6の厚さを、基部から頭部(フックの先端)へとテーパー状に減らし先細にする場合、タング16でのブレード14,14の形状を工夫することにより、フック6とタング16との摺動抵抗を小さくできる。この変形例で、ブレードの形状を変更する部分は、例えばタング16,16の部分、特に屈曲部19,19からその後方でタング16,16内の部分とする。この部分で、ブレード14,14間の間隔がブレードの上部から下部(底部)へと徐々に大きくなるように、ブレード14,14の下部を左右両外側へ曲げ、あるいは外側へねじる。すると屈曲部19,19でブレード14,14の上部が例えば互いに接し、下部には隙間が生じ、フック6のテーパーにフィットして摺動抵抗が減少する。なお屈曲部19の下部でブレード間の間隔を増して、テーパー状で先細りのフックとの摺動抵抗を小さくすることは、ブレード溝に隔壁9を設けない場合にも有効である。
Claims (3)
- 先端にフックを有する針本体に隔壁付きのブレード溝を設けて、スライダーの2枚のブレードをブレード溝に前後進自在に収容した複合針において、
前記2枚のブレードを、先端部が左右に開いてその後方が内側に屈曲した形状とし、
前記隔壁の肉厚を長手方向に沿って不均一にして、ブレード溝の先端側で相対的に肉厚にし、その後部で相対的に肉薄ないしは隔壁を切り欠いた形状にしたことを特徴とする、複合針。 - 隔壁を前記後部で相対的に肉薄にしたことを特徴とする、請求の範囲第1項の複合針。
- 前記2枚のブレードがブレード溝内に後退した際に、前記屈曲部が隔壁の肉薄部あるいは切り欠きに接するようにしたことを特徴とする、請求の範囲第1項または第2項の複合針。
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