JPWO2004037924A1 - ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法 - Google Patents

ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

貯蔵安定性に優れ、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性、加工性等の被膜性能に優れる樹脂被膜を形成することができる、低酸価で高分子量のポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法を提供する。酸価が2mgKOH/g以上、8mgKOH/g未満であり、数平均分子量が5,000以上であるポリエステル樹脂(A)、塩基性化合物(B)および水(C)を含有するポリエステル樹脂水性分散体であって、ポリエステル樹脂(A)の含有率が1〜70質量%であり、水(C)の含有率が10質量%以上であり、界面活性剤を含有しないことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。また、これを転相乳化で製造するにあたり、転相乳化を40℃以下で行うことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。

Description

本発明は、貯蔵安定性に優れ、各種基材に塗布され被膜性能に優れる樹脂被膜を形成することができるポリエステル樹脂水性分散体に関するものである。
ポリエステル樹脂は、被膜形成用樹脂として、被膜の加工性、有機溶剤に対する耐性(耐溶剤性)、耐候性、各種基材への密着性等に優れることから、塗料、インキ、接着剤、コーティング剤等の分野におけるバインダー成分として大量に使用されている。
特に近年、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善の立場から有機溶剤の使用が制限される傾向にあり、上記の用途に使用できるポリエステル樹脂系バインダーとして、ポリエステル樹脂を水性媒体に微分散させたポリエステル樹脂水分散体の開発が盛んに行われている。
例えば、特許文献1〜4には、酸価が小さく、高分子量のポリエステル樹脂を水性媒体中に分散させたポリエステル樹脂水分散体が提案され、かかる水分散体を用いると加工性、耐水性、耐溶剤性等の性能に優れた被膜を形成できることが記載されている。しかしながら、これらの文献に記載されたポリエステル樹脂水分散体は、いずれもポリエステル樹脂のカルボキシル基を塩基性化合物で中和することにより水性媒体中に分散させた、いわゆる自己乳化型のポリエステル樹脂水分散体であり、ポリエステル樹脂を水性媒体中へ安定に分散させるために、使用するポリエステル樹脂は8mgKOH/g以上の酸価に対応するカルボキシル基を有している必要があった。その結果として、ポリエステル樹脂の分子量が制限されることや、耐水性が不十分な場合があるという問題があった。
また、特許文献5、6には、ポリエステル樹脂を塩基性化合物と非イオン界面活性剤を用いて水性分散体を製造する方法が提案されている。しかしながら、これらの文献に記載されたポリエステル樹脂水分散体は、いずれもポリエステル樹脂に対する界面活性剤の含有量が多く、このようなポリエステル樹脂水分散体を使用して樹脂被膜を形成した場合には、樹脂被膜中に大量の界面活性剤が残存することになり、樹脂被膜の耐水性が悪くなるという問題があった。
また、特許文献6は実質的にW/O型のエマルジョンであり、被コーティング材(基材)の種類によっては、ポリエステル樹脂水分散体の含有する有機溶剤によってダメージを受けるという問題を生じていた。
また、特許文献7には、特定の化学構造を有するモノマーを共重合成分とするポリエステル樹脂を水性媒体中に分散させたポリエステル樹脂水性分散体が提案されており、分子量が小さくても耐水性に優れる樹脂被膜が形成されることが記載されているが、分子量が小さいため、形成された樹脂被膜の加工性が悪いという問題があった。
特許文献1;特開平9−296100号公報
特許文献2;特開2000−26709号公報
特許文献3;特開2000−313793号公報
特許文献4;特開2002−173582号公報
特許文献5;特公昭51−24375号公報
特許文献6;特公昭53−14101号公報
特許文献7;特許第3162477号公報
(発明が解決しようとする技術的課題)
このような状況下、本発明の課題は、貯蔵安定性に優れ、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性、加工性等の被膜性能に優れる樹脂被膜を形成することができる、低酸価で高分子量のポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法を提供することにある。
(その解決方法)
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、転相乳化の際の温度を制御することにより、界面活性剤を使用しなくても、低酸価で高分子量のポリエステル樹脂を水性媒体中に安定に分散でき、このようにして得られた水性分散体から形成される樹脂被膜が良好な被膜性能を有することを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明の要旨は、
第一に、酸価が2mgKOH/g以上、8mgKOH/g未満であり、数平均分子量が5,000以上であるポリエステル樹脂(A)、塩基性化合物(B)および水(C)を含有するポリエステル樹脂水性分散体であって、ポリエステル樹脂(A)の含有率が1〜70質量%であり、水(C)の含有率が10質量%以上であり、界面活性剤を含有しないことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体である。
第二に、転相乳化によりポリエステル樹脂(A)の有機溶剤溶液を塩基性化合物(B)とともに水に分散させて、ポリエステル樹脂水性分散体を製造する方法であって、転相乳化を40℃以下で行うことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体の製造方法である。
第三に、転相乳化後に有機溶剤を除去する工程を含むことを特徴とする上記ポリエステル樹脂水性分散体の製造方法である。
(従来技術より有効な効果)
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、基材への密着性、耐水性、耐溶剤性等の被膜性能に優れる樹脂被膜を形成することができるので、塗料、コーティング剤、接着剤として単独であるいは他成分を混合してバインダー成分として好適に使用でき、PETフィルム、ポリオレフィンフィルム、蒸着フィルム等、各種フィルムのアンカーコート剤や接着性付与剤(易接着)、アルミ板、鋼板およびメッキ鋼板等、各種金属板のアンカーコート剤や接着性付与剤(易接着)、プレコートメタル塗料、紙塗工剤、繊維処理剤、紙、金属板、樹脂シート等の基材を貼り合わせるための接着剤、インキのバインダー等の用途に用いて、それらの性能を向上させることができる。また貯蔵時や製造時の分散安定性にも優れている。
図1は、転相乳化工程におけるポリエステル樹脂の酸価と、その際に使用する塩基性化合物の好ましい量との関係を示す図である。尚、図1において、塩基性化合物の量は、ポリエステル樹脂のカルボキシル基の総モル量に対する当量比として示す(式(1)の範囲)。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体(以下、水性分散体とする)は、
(A)酸価が2mgKOH/g以上、8mgKOH/g未満であり、数平均分子量が5000以上であるポリエステル樹脂、
(B)塩基性化合物および、
(C)水
を含有し、界面活性剤を使用せずに、ポリエステル樹脂(A)が水(C)を含む水性媒体中に分散されてなる液状物である。
まず、(A)のポリエステル樹脂について説明する。
本発明において、ポリエステル樹脂の酸価は2mgKOH/g以上、8mgKOH/g未満であり、3mgKOH/g以上、8mgKOH/g未満であることが好ましく、4.1mgKOH/g以上、8mgKOH/g未満であることがより好ましく、4.6mgKOH/g以上、8mgKOH/g未満であることがさらに好ましい。酸価が8mgKOH/g以上である場合には、ポリエステル樹脂の分子量が小さくなり、樹脂被膜の加工性が悪くなる傾向にあり、さらには耐水性が不十分である場合がある。また、酸価が2mgKOH/g未満である場合には、均一な水性分散体を得ることが困難になる傾向がある。
ポリエステル樹脂には樹脂被膜の耐水性を損なわない範囲で水酸基が含まれていてもよく、その水酸基価は30mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以下であることがより好ましく、10mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
また、ポリエステル樹脂の数平均分子量は5,000以上であり、7,000以上であることが好ましく、9,000以上であることがより好ましく、11,000以上であることがさらに好ましく、13,000以上であることが特に好ましく、15,000以上であることが最も好ましい。数平均分子量が5,000未満では、樹脂被膜の加工性が不足する傾向にある。なお、数平均分子量の上限については特に限定されないが、貯蔵安定性の良好な水性分散体が得やすいという点から、ポリエステル樹脂の数平均分子量は50,000以下であることが好ましく、40,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることが特に好ましい。
ポリエステル樹脂の分子量分布の分散度については特に限定されないが、水性分散体の貯蔵安定性が優れる傾向にあることから、分子量分布の分散度は8以下が好ましく、5以下がより好ましい。ここで、分子量分布の分散度とは、重量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(以下、Tgとする)は、特に限定されないが、水性分散体の貯蔵安定性が優れる傾向にあることから、−50〜120℃が好ましく、0〜85℃がより好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂は本来それ自身で水に分散または溶解しないものであり、多塩基酸と多価アルコールとから実質的に合成されたものである。以下にこれらのポリエステル樹脂の構成成分について説明する。
ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分としては、芳香族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、脂環式多塩基酸等が挙げられる。芳香族多塩基酸のうち芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族多塩基酸のうち脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。脂環式多塩基酸のうち脂環式ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸及びその無水物、テトラヒドロフタル酸及びその無水物等が挙げられる。
また、多塩基酸成分として、3官能以上の多塩基酸、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が含まれていてもよいが、ポリエステル樹脂製造時のゲル化を抑制するために、ポリエステル樹脂の多塩基酸成分に占める3官能以上の多塩基酸の割合は、5モル%以下にとどめることが好ましい。
さらに、多塩基酸成分として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等、カルボキシル基や水酸基以外の親水性基を有する多塩基酸成分も使用することができるが、水性分散体より形成される樹脂被膜の耐水性が悪くなる傾向にあるので、このような多塩基酸成分は使用しない方が好ましい。
上記した多塩基酸成分の中でも、芳香族多塩基酸が好ましく、ポリエステル樹脂の多塩基酸成分に占める芳香族多塩基酸の割合は、50ル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましい。芳香族多塩基酸の割合を増すことにより、脂肪族や脂環式のエステル結合よりも加水分解され難い芳香族エステル結合が樹脂骨格に占める割合が多くなるので、水性分散体を長期保存した場合でも、ポリエステル樹脂の分子量の低下を小さくすることができる。また、芳香族多塩基酸の割合を増すことにより、水性分散体より形成される樹脂被膜の硬度、耐水性、耐溶剤性、加工性等が向上する。
芳香族多塩基酸としては、工業的に多量に生産されているので安価であることからテレフタル酸とイソフタル酸が好ましく、ポリエステル樹脂の多塩基酸成分に占めるテレフタル酸とイソフタル酸の合計の割合としては、49モル%以上であることが好ましく、59モル%以上であることがより好ましく、69モル%以上であることがさらに好ましい。
ポリエステル樹脂の多塩基酸成分に占めるテレフタル酸の割合としては、25モル%以上であることが好ましく、45モル%以上であることがより好ましく、65モル%以上であることがさらに好ましく、85モル%以上であることが特に好ましい。テレフタル酸の割合を増すことにより、樹脂被膜の硬度や耐溶剤性等が向上する傾向にある。
ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコール等が挙げられる。炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等が挙げられ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられ、エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。なお、エーテル結合が多くなるとポリエステル樹脂の耐水性、耐溶剤性、耐候性等を低下させる場合があるので、ポリエステル樹脂の多価アルコール成分に占めるエーテル結合含有グリコール含有グリコールの割合は、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。
また、多価アルコール成分として、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのようなビスフェノール類(ビスフェノールAやビスフェノールS等)のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加体等も使用することができる。
多価アルコールとしては、工業的に多量に生産されているので安価でありることからエチレングリコールとネオペンチルグリコールが好ましく、ポリエステル樹脂の多価アルコール成分に占めるエチレングリコールとネオペンチルグリコールの合計の割合としては、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が特に好ましい。エチレングリコールは特に樹脂被膜の耐薬品性を向上させ、ネオペンチルグリコールは特に樹脂被膜の耐候性を向上させるという長所を有するので、ポリエステル樹脂の多価アルコール成分として好ましい。
また、3官能以上の多価アルコール、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が含まれていてもよいが、ポリエステル樹脂製造時のゲル化を抑制するために、ポリエステル樹脂の多価アルコールに占める3官能以上の多価アルコールの割合は、5モル%以下にとどめることが好ましい。
ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコール、ヒドロキシカルボン酸が共重合されていてもよく、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール、ε−カプロラクトン、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸等を用いることができる。
ポリエステル樹脂は上記の多塩基酸成分の1種類以上と多価アルコール成分の1種類以上とを公知の方法により重縮合させることにより製造することができ、例えば、全モノマー成分及び/又はその低重合体を不活性雰囲気下で180〜260℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応を行い、引き続いてエステル交換反応触媒の存在下、130Pa以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めてポリエステル樹脂を得る方法等を挙げることができる。
ポリエステル樹脂に所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、上記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価アルコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合を行う方法等を挙げることができる。
解重合した際に樹脂中に泡が発生し、払出しの際、泡のためにペレット化できない場合があるが、このような場合は、解重合後、系内を再減圧し脱泡すればよい。再減圧を行なう際の減圧度は67,000Pa以下が好ましく、10,000Paがより好ましい。減圧度が67,000Paよりも高いと再減圧しても脱泡するのに要する時間が長くなるので好ましくない。
また、ポリエステル樹脂に所望の酸価を付与する方法として、上記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸無水物をさらに添加し、不活性雰囲気下、ポリエステル樹脂の水酸基と付加反応する方法も挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂は、多塩基酸を用いて上記の解重合および/または付加反応によりカルボキシル基を導入したポリエステル樹脂であることが好ましい。解重合および/または付加反応によりカルボキシル基を導入することにより、ポリエステル樹脂の分子量や酸価を容易にコントロールすることができる。また、この際に使用する多塩基酸としては、3官能以上の多塩基酸であることが好ましい。3官能以上の多塩基酸を使用することにより、解重合によるポリエステル樹脂の分子量低下を抑えながら、所望の酸価を付与することができる。また、3官能以上の多塩基酸を使用することにより、詳細は不明であるが、より貯蔵安定性の優れた水性分散体を得ることができる。
解重合および/または付加反応で用いる多塩基酸としては、ポリエステル樹脂の構成成分で説明した多塩基酸成分が挙げられるが、その中でも、芳香族多塩基酸が好ましく、芳香族多塩基酸の中でも、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸や3官能の多塩基酸であるトリメリット酸、無水トリメリット酸が好ましい。特に無水トリメリット酸を使用した場合には、解重合と付加反応が平行して起こると考えられることから、解重合によるポリエステル樹脂の分子量低下を極力抑えながら、所望の酸価を付与することができるので、無水トリメリット酸を使用することが特に好ましい。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は単独でも、また2種類以上を混合して使用してもよい。
本発明の水性分散体に含有されるポリエステル樹脂(A)の含有率は、該分散体全量に対して1〜70質量%であり、5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましく、15〜40質量%であることが最も好ましい。ポリエステル樹脂(A)の含有率が70質量%を超えると水性分散体の粘度が非常に高くなり、実質的に樹脂被膜を形成させることが困難になる傾向があり、その含有率が1質量%未満では実用的ではない。
次に(B)の塩基性化合物について説明する。
本発明の水性分散体には、塩基性化合物が含まれていることが必要である。塩基性化合物によって、ポリエステル樹脂のカルボキシル基が中和されてカルボキシルアニオンが生成し、このアニオン間の電気反発力によって、ポリエステル樹脂微粒子は凝集せず安定に分散する。
塩基性化合物としては、樹脂被膜形成時に揮散しやすい点から、沸点が250℃以下、好ましくは160℃以下の有機アミン、あるいはアンモニアが好ましい。好ましく用いられる有機アミンの具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられ、中でも、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンを使用することが好ましい。
塩基性化合物(B)の含有率は、本発明の水性分散体が所望の分散安定性、特に貯蔵安定性を達成できる限り、特に制限されるものではないが、塩基性化合物は、ポリエステル樹脂(A)の酸価をE(mgKOH/g)とし、使用される塩基性化合物(B)の、ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基総モル量に対する当量比をFとした場合、下記式(1)の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは下記式(2)の範囲、さらに好ましくは下記式(3)の範囲で使用される。式(1)の範囲を図1に示す。
−0.25×E+2.5≦F≦−5×E+50 (1)
−0.3×E+3.2≦F≦−4.25×E+42 (2)
−0.375×E+4≦F≦−3.5×E+34 (3)
図1は、上記式(1)で示される転相乳化工程におけるポリエステル樹脂(A)の酸価と、必要な塩基性化合物(B)の、ポリエステル樹脂のカルボキシル基の総モル量に対する当量比の関係を図示したものである。図1から、使用するポリエステル樹脂の酸価が小さくなる程、使用される塩基性化合物(B)の、ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基の総モル量に対する当量比の下限は大きくなることがわかる。具体的には、ポリエステル樹脂の酸価が2mgKOH/gの場合には、ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基の総モル量に対して2倍当量以上の塩基性化合物(B)を使用することが好ましく、ポリエステル樹脂の酸価が8mgKOH/g付近では、ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基の総モル量に対して0.5倍当量程度の塩基性化合物(B)を使用することで本発明の水性分散体を得ることが可能である。
塩基性化合物(B)の、ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基総モル量に対する当量比とは、詳しくは塩基性化合物(B)の使用モル量を、ポリエステル樹脂(A)の遊離カルボキシル基総モル量で除して得られる値である。ポリエステル樹脂(A)の遊離カルボキシル基総モル量は当該樹脂の酸価より算出可能である。
Fが「−0.25×E+2.5」よりも小さい場合には、得られる水性分散体の体積平均粒径が大きくなる傾向にあり、そのため貯蔵安定性が悪くなる場合がある。一方、Fが「−5×E+50」を超える場合には、得られる水性分散体に塩基性化合物が多量に残存することになり好ましくない。また、後述する脱溶剤工程において、ポリエステル樹脂が凝集して沈殿する傾向があり、好ましくない。
塩基性化合物を上記のような範囲で使用した場合の水性分散体中の含有率は通常、0.005〜10質量%、特に0.01〜8質量%、好ましくは0.015〜6質量%である。
水性分散体に含有される水(C)は特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水等が使用可能であるが、好ましくは蒸留水またはイオン交換水を使用する。
水(C)の含有率は分散体全量に対して10質量%以上であり、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。水(C)の含有率が10質量%未満では、もはや水性分散体とは言い難い。水(C)の含有率の上限は、(A)、(B)、(D)成分の量に応じて適宜決定される。
本発明の水性分散体には、更に有機溶剤(D)が含有されていてもよい。有機溶剤は作業環境を悪化させたり、被コーティング材の種類によってはダメージを与える場合があるので、有機溶剤(D)の含有率は小さいことが好ましく、本発明においては、水性分散体に含有される有機溶剤(D)の含有率は分散体全量に対して0〜85質量%であり、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜10質量%であることがさらに好ましく、0〜1質量%であることが特に好ましく、0〜0.5質量%であることが最も好ましい。有機溶剤(D)の含有率は小さい程、水性分散体を長期保存した場合に、ポリエステル樹脂の分子量が低下し難くなる傾向がある。具体的には、有機溶剤(D)の含有率が0〜30質量%である場合には、水性分散体の分子量保持率が90%以上となり、有機溶剤(D)の含有率が0〜10質量%である場合には、水性分散体の分子量保持率が95%以上となるという優れた長所を有する。
また、有機溶剤(D)の含有率が小さい程、環境温度変化による粘度変化が小さいという特徴を有し、樹脂被膜形成時の厚み制御がし易いという作業上の利点を有している。具体的には、有機溶剤(D)の含有率が0〜10質量%である場合には、10℃での粘度と40℃での粘度の差が10mPa・S以下となる。
本発明の水性分散体において、水性分散体に含まれる水(C)と有機溶剤(D)の質量比「(D)/(C)」は0/100〜100/100の範囲であることが好ましい。水(C)と有機溶剤(D)との関係がこの範囲であることにより、水性分散体に含まれる有機溶剤が低減され、作業環境に優れた水性分散体となる。同様の観点から、水(C)と有機溶剤(D)の質量比「(D)/(C)」は0/100〜40/100の範囲であることがより好ましく、0/100〜15/100の範囲であることがさらに好ましく、0/100〜1.5/100であることが特に好ましい。
有機溶剤(D)としては、後述する水性分散体の製造方法において、溶解工程で使用する有機溶剤を挙げることができる。
本発明の水性分散体の体積平均粒径、すなわち、水(C)を含む水性媒体中に分散しているポリエステル樹脂の体積平均粒径は、400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、150nm以下であることが特に好ましい。体積平均粒径が400nmを超えると、得られた水性分散体中のポリエステル樹脂が沈降しやすくなり、貯蔵安定性が損なわれる傾向にある。
本発明の水性分散体は界面活性剤を含有しないものであり、界面活性剤を含有しなことから、得られる樹脂被膜の耐水性等の被膜性能に優れる。
次に、本発明の水性分散体を製造する方法の一例について詳細に説明する。
本発明の水性分散体の製造は、実質的に、溶解工程および転相乳化工程の2工程よりなり、さらに、必要に応じて、脱溶剤工程が付け加えられる。溶解工程は、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させる工程であり、転相乳化工程は、有機溶剤に溶解したポリエステル樹脂溶液を塩基性化合物とともに水に分散させる工程である。脱溶剤工程は、得られた水性分散体から、ポリエステル樹脂の溶解工程で用いた有機溶剤の一部またはすべてを系外に除去する工程である。
以下、各工程について説明する。
まず、溶解工程では、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させる。このとき、得られる溶液中のポリエステル樹脂の濃度を10〜70質量%の範囲とすることが好ましく、20〜60質量%の範囲がより好ましく、30〜50質量%の範囲が特に好ましい。溶液中のポリエステル樹脂の濃度が70質量%を越える場合には、次の転相乳化工程において、水と混合した場合に粘度の上昇が大きくなり、このような状態から得られた水性分散体は体積平均粒径が大きくなる傾向にあり、貯蔵安定性上好ましくない。また、ポリエステル樹脂の濃度が10質量%未満の場合には、次の転相乳化工程により、さらにポリエステル樹脂の濃度が下がることや脱溶剤工程の際に多量の有機溶剤を除去することになり不経済である。ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解するための装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであれば特に限定されない。また、ポリエステル樹脂が溶解しにくい場合には、加熱してもよい。
有機溶剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ケトン系有機溶剤、芳香族系炭化水素系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、含ハロゲン系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、エステル系有機溶剤、グリコール系有機溶剤等が挙げられる。ケトン系有機溶剤の具体例としては、例えば、メチルエチルケトン(2−ブタノン)(以後MEKと記す)、アセトン、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2−ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)(以後MIBKと記す)、2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが例示できる。芳香族炭化水素系有機溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等が例示できる。エーテル系有機溶剤の具体例としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが例示できる。含ハロゲン系有機溶剤の具体例としては、例えば、四塩化炭素、トリクロロメタン、ジククロロメタン等が例示できる。アルコール系有機溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等が例示できる。エステル系有機溶剤の具体例としては、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等が例示できる。グリコール系有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が例示できる。さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等の有機溶剤が挙げられる。
これらの有機溶剤としては、上記したものを単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができるが、本発明の水性分散体を得るためには、ポリエステル樹脂を10質量%以上溶解することができるように有機溶剤の選択を行うことが好ましく、20質量%以上溶解することができる有機溶剤がより好ましく、30質量%以上溶解することができる有機溶剤がよりさらに好ましい。このような有機溶剤としては、アセトン、MEK、MIBK、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン単独や、アセトン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MEK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、MIBK/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、ジオキサン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、テトラヒドロフラン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、シクロヘキサノン/エチレングリコールモノブチルエーテル混合溶液、アセトン/イソプロパノール混合溶液、MEK/イソプロパノール混合溶液、MIBK/イソプロパノール混合溶液、ジオキサン/イソプロパノール混合溶液、テトラヒドロフラン/イソプロパノール混合溶液、シクロヘキサノン/イソプロパノール混合溶液等が好適に使用できる。混合溶液を用いる場合には、任意の混合比の混合溶液を作成しておき、その混合溶液にポリエステル樹脂を溶解させるか、あるいは、よりポリエステルに対して溶解力がある有機溶剤で、ポリエステルをあらかじめ溶解しておき、後述する転相乳化工程前に規定量の別の有機溶剤を加えてもよい。
次に、転相乳化工程では、溶解工程で得られたポリエステル樹脂溶液を、水、塩基性化合物と混合して転相乳化を行う。本発明においては、塩基性化合物をポリエステル樹脂溶液に加えておき、これに水を徐々に投入して転相乳化を行うことが好ましい。水の添加速度が速い場合には、ポリエステル樹脂の塊が形成され、この塊は、もはや水性媒体に分散しなくなる傾向があり、最終的に得られる水性分散体の収率が悪くなり、経済的ではない。
本発明において「転相乳化」とは、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液に、この溶液に含まれる有機溶剤量を超える量の水を添加して、系を有機溶剤相からO/Wエマルション分散系に変化させることを意味する。
転相乳化工程は40℃以下で行い、30℃以下で行うことが好ましく、20℃以下で行うことがさらに好ましく、15℃以下で行うことが特に好ましい。40℃以下で転相乳化工程を行うことにより、得られる水性分散体の体積平均粒径が小さくなり、貯蔵安定性の優れた水性分散体を得ることができる。また、後述する脱溶剤工程の際に、水性分散体が凝集することによって生じるポリエステル樹脂の沈殿の生成を抑えることができ、その結果、収率が向上し経済的である。なお、転相乳化工程を上記のような比較的低温で行った場合に、体積平均粒径が小さな水性分散体が得られるメカニズムの詳細は明らかではない。転相乳化工程を40℃を超えて行うと、得られる水性分散体の体積平均粒径が大きくなり、貯蔵安定性が悪化する。
上記した転相乳化工程の温度は、この工程を通じて40℃以下に保たれていることが好ましいが、攪拌による剪断熱などにより液温が上昇しやすいため、系の温度を維持しにくい場合がある。そのような場合においても、ポリエステル樹脂溶液に含まれる有機溶剤の0.8倍量の水を加え終えるまでは40℃以下に(40℃を超えないように)制御することが好ましく、より好ましくは、1倍量の水を加え終えるまで、さらに好ましくは、1.1倍量の水を加え終えるまで上記温度に制御することが好ましい。
転相乳化工程を行う装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであれば特に限定されない。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機(例えばホモミキサー)として広く当業者に知られている装置があげられる。ホモミキサーなど剪断の大きい乳化機を用いる際には、剪断熱により液温が上昇することがあるため、冷却しながら用いることが好ましい。転相乳化工程は常圧、減圧、加圧下いずれの条件で行ってもよい。
脱溶剤工程は、転相乳化工程で得られた水性分散体に含まれる有機溶剤を蒸留し、その一部またはすべてを水性分散体から除去する工程である。この工程は、減圧下または常圧下で行うことができる。常圧下で脱溶剤すると凝集物が発生しやすい場合もあるが、そのようなときは、減圧下で行い、内温を70℃以下、好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下となるように調節するとよい。脱溶剤工程を行う装置としては、液体を投入できる槽を備え、適度な攪拌ができるものであればよい。転相乳化工程後に、脱溶剤工程行なうことにより、転相乳化工程後の水性分散体に含まれ、ポリエステル樹脂の中和に寄与していない塩基性化合物の一部またはすべてが除去されることもある。
このような製造方法により、本発明の水性分散体は、外観上、水性媒体中に沈殿、相分離といった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない均一かつ安定な状態で得られる。
水性分散体の製造にあたっては、異物等を除去する目的で、工程中に濾過工程を設けてもよい。このような場合には、例えば、300メッシュ程度のステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を設置し、加圧濾過(空気圧0.2MPa)を行えばよい。
次に、本発明の水性分散体の使用方法について説明する。
本発明の水性分散体は、被膜形成能に優れているので、公知の成膜方法、例えばディッピング法、はけ塗り法、スプレーコート法、カーテンフローコート法等により各種基材表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥及び焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な樹脂被膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である基材の種類等により適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、60〜250℃が好ましく、70〜230℃がより好ましく、80〜200℃が特に好ましく、加熱時間としては、1秒〜30分間が好ましく、5秒〜20分がより好ましく、10秒〜10分が特に好ましい。
本発明の水性分散体を用いて形成される樹脂被膜の厚さは、その目的や用途によって適宜選択されるものであるが、0.01〜40μmが好ましく、0.1〜30μmがより好ましく、0.5〜20μmが特に好ましい。
本発明の水性分散体には、必要に応じて硬化剤、各種添加剤、保護コロイド作用を有する化合物、水、有機溶剤、界面活性剤、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料、染料、他の水性ポリエステル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性オレフィン樹脂、水性アクリル樹脂等の水性樹脂等を配合することができる。
硬化剤としては、ポリエステル樹脂が有する官能基、例えばカルボキシル基やその無水物および水酸基と反応性を有する硬化剤であれば特に限定されるものではなく、例えば尿素樹脂やメラミン樹脂やベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物及びその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有重合体、フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。
添加剤としてはハジキ防止剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、滑剤等が挙げられる。
保護コロイド作用を有する化合物としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を一成分とするビニルモノマーの重合物、ポリイタコン酸、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、膨潤性雲母等を例示することができる
有機溶剤としては、前述した水性分散体の製造方法において、溶解工程で使用される有機溶剤を挙げることができる。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等、すべての界面活性剤が含まれる。非イオン性界面活性剤としは、ノニルフェノール、オクチルフェノール等のアルキルフェノールのアルキレンオキシド加物や高級アルコールのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。このような非イオン性界面活性剤としてはAldrich社製のIgepalシリーズ、三洋化成株式会社製のナロアクティーN−100、ナロアクティーN−120、ナロアクティーN−140等のナロアクティーシリーズ、サンノニックSS−120、サンノニックSS−90、サンノニックSS−70等のサンノニックSSシリーズ、サンノニックFD−140、サンノニックFD−100、サンノニックFD−80等のサンノニックFDシリーズ、セドランFF−220、セドランFF−210、セドランFF−200、セドランFF−180等のセドランFFシリーズ、セドランSNP−112等のセドランSNPシリーズ、ニューポールPE−64、ニューポールPE−74、ニューポールPE−75等のニューポールPEシリーズ、サンモリン11等が挙げられる。
上記した硬化剤、各種添加剤、保護コロイド作用を有する化合物、顔料、染料、水性樹脂等は、ポリエステル樹脂の溶解工程、転相乳化工程および脱溶剤工程、いずれの工程時にあらかじめ添加されてもよい。
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(1)ポリエステル樹脂の構成
H−NMR分析(バリアン社製,300MHz)より求めた。また、H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
(2)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを50mlの水/ジオキサン=1/9(体積比)に溶解し、クレゾールレッドを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHのmg数をポリエステル樹脂1gあたりに換算した値を酸価として求めた。
(3)ポリエステル樹脂の水酸基価
ポリエステル樹脂3gを精秤し、無水酢酸0.6ml及びピリジン50mlとを加え、室温下で48時間攪拌して反応させ、続いて、蒸留水5mlを添加して、更に6時間、室温下で攪拌を継続することにより、上記反応に使われなかった分の無水酢酸も全て酢酸に変えた。この液にジオキサン50mlを加えて、クレゾールレッド・チモールブルーを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHの量(W1)と、最初に仕込んだ量の無水酢酸がポリエステル樹脂と反応せずに全て酢酸になった場合に中和に必要とされるKOHの量(計算値:W0)とから、その差(W0−W1)をKOHのmg数で求め、これをポリエステル樹脂のg数で割った値を水酸基価とした。
(4)ポリエステル樹脂の数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。なお、このGPC分析により、ポリエステル樹脂の重量平均分子量も求めることができ、重量平均分子量を数平均分子量で除した値として、分子量分布の分散度を求めることができる。
(5)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度(Tg)とした。
(6)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を約1g秤量(Xgとする)し、これを150℃で2時間乾燥した後の残存物(固形分)の質量を秤量し(Ygとする)、次式により固形分濃度を求めた。
固形分濃度(質量%)=Y×100/X
(7)水性分散体中の有機溶剤の含有率
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−UNIPORT HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n−ブタノール]を用い、水性分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
(8)水性分散体の貯蔵安定性
50mlのガラス製サンプル瓶に、水性分散体を30ml入れ、25℃で60日保存した後の外観変化を目視にて観察した。
(9)水性分散体の体積平均粒経
水性分散体を0.1%に水で希釈し、日機装製、MICROTRAC UPA(モデル9340−UPA)を用いて体積平均粒径を測定した。
(10)樹脂被膜の厚さ
厚み計(ユニオンツール社製、MICROFINEΣ)を用いて、基材の厚みを予め測定しておき、水性分散体を用いて基材上に樹脂被膜を形成した後、この樹脂被膜を有する基材の厚みを同様の方法で測定し、その差を樹脂被膜の厚さとした。
(11)樹脂被膜の密着性
卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いて、基材上に水性水分散体をコーティングし、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、基材上に厚み約1μmの樹脂被膜を形成させ、次いで、この樹脂被膜上にJIS Z1522に規定された粘着テープ(幅18mm)の端部を残して貼りつけ、その上から消しゴムでこすって十分に接着させた後に、粘着テープの端部をフィルムに対して直角としてから瞬間的に引き剥がした。この引き剥がした粘着テープ面を表面赤外分光装置(パーキンエルマー社製SYSTEM2000、Ge60°50×20×2mmプリズムを使用)で分析することにより、粘着テープ面に樹脂被膜が付着しているか否かを調べ、下記の基準によって樹脂被膜の基材に対する密着性を評価した。尚、基材としては、二軸延伸PETフィルム(ユニチカ株式会社製、厚さ12μm)を使用した。
○:粘着テープ面に樹脂被膜に由来するピークが認められない。
×:粘着テープ面に樹脂被膜に由来するピークが認められる。
(12)樹脂被膜の耐水性
卓上型コーティング装置を用いて、上記の二軸延伸PETフィルム上に水性分散体をコーティングし、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、厚み約1μmの樹脂被膜を形成させた後、この樹脂被膜が形成されたPETフィルムを、80℃の熱水に浸漬させ、10分後に静かに引き上げ、風乾させた後、樹脂被膜の外観を目視にて観察し、下記の基準により評価した。
○:外観変化が全く認められない。
△:部分的に白化が見られ、実用上問題がある。
×:全体的に白化が見られる。
(13)樹脂被膜の耐溶剤性
卓上型コーティング装置を用いて、上記の二軸延伸PETフィルム上に水性分散体をコーティングし、130℃に設定されたオーブン中で1分間加熱することにより、厚み約1μmの樹脂被膜を形成させた後、この樹脂被膜が形成されたPETフィルムを、25℃のエタノールに浸漬させ、10分後に静かに引き上げ、風乾させた後、樹脂被膜の外観を目視にて観察し、下記の基準により評価した。
○:外観変化が全く認められない。
×:部分的に白化や溶解が見られる。
(14)水性分散体の分子量保持率
水性分散体を25℃で60日保存した後、水性分散体を40℃で24時間真空乾燥して樹脂成分を得、これを上記(4)と同様にGPC分析を行い数平均分子量を求め、この数平均分子量(G)と水性分散体に使用した表1に記載のポリエステル樹脂の数平均分子量(H)とから、次式により分子量保持率を求めた。
分子量保持率(%)=G×100/H
(15)水性分散体の粘度
株式会社トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、10℃、40℃における水性分散体の回転粘度をそれぞれ測定した。
(16)樹脂被膜の加工性
卓上型コーティング装置を用いて、厚み0.19mmの金属板(ティンフリースティール板)に水性分散体をコーティングし、200℃に設定されたオーブン中で3分間加熱することにより、厚み3μmの樹脂被膜を形成させた。得られた金属板を樹脂被膜が外側になるように折り曲げるにあたって、内側の折り曲げ部に上記と同じ厚さの金属板を何枚か挟んだ状態でプレス機で折り曲げた。屈曲部の樹脂被膜に割れが発生するかどうかを目視にて観察して判定した。このとき屈曲部に挟む金属板の枚数を変化させ、上記の割れが発生しない最小枚数nを加工性の指標とし、nTと標記した。このときnが小さいほど、加工性の優れていることを示す。
実施例及び比較例で用いたポリエステル樹脂は、下記のようにして得られた。
(ポリエステル樹脂P−1)
テレフタル酸2492g、イソフタル酸415g、セバシン酸1516g、エチレングリコール1210g、ネオペンチルグリコール1484gからなる混合物をオートクレーブ中で、250℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として酢酸亜鉛二水和物3.3gを添加した後、系の温度を270℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、265℃になったところで無水トリメリット酸29gを添加し、265℃で2時間攪拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂P−1を得た。
(ポリエステル樹脂P−2)
テレフタル酸2077g、イソフタル酸2077g、ポリテトラヒドロフラン1000が1125g、ネオペンチルグリコール1510g、エチレングリコール1358gからなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加し、系の温度を255℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、250℃になったところで無水トリメリット酸31gを添加し、250℃で2時間撹拌して、解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂P−2を得た。
(ポリエステル樹脂P−3)
テレフタル酸1246g、イソフタル酸1246g、エチレングリコール1195g、ネオペンチルグリコール1510g、アジピン酸1461gからなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として三酸化アンチモン2.9gを添加し、系の温度を270℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、5時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、260℃になったところでトリメリット酸32gを添加し、260℃で2時間撹拌して、解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂P−3を得た。
(ポリエステル樹脂P−4)
テレフタル酸2492g、イソフタル酸415g、セバシン酸1516g、エチレングリコール1210g、ネオペンチルグリコール1484gからなる混合物をオートクレーブ中で、250℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として酢酸亜鉛二水和物3.3gを添加し、系の温度を270℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続けた後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出し、室温で放冷後、シート状のポリエステル樹脂P−4を得た。
(ポリエステル樹脂P−5)
テレフタル酸2077g、イソフタル酸2077g、エチレングリコール1102g、ネオペンチルグリコール1666gからなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として酢酸亜鉛3.3gを添加し、系の温度を265℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、260℃になったところで無水トリメリット酸29gを添加し、260℃で2時間撹拌して、解重合反応を行った。その後、系の圧力を除々に減じて0.5時間後に13Paとし、その後1時間、脱泡を行った。次いで、系を窒素ガスで加圧状態にして、ストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングして、ペレット状(直径約3mm、長さ約3mm)のポリエステル樹脂P−5を得た。
(ポリエステル樹脂P−6)
テレフタル酸2907g、イソフタル酸1246g、エチレングリコール1133g、ネオペンチルグリコール1614gからなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として三酸価アンチモン1.8gを添加し、系の温度を280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、250℃になったところでトリメリット酸53gを添加し、250℃で2時間撹拌して、解重合反応を行った。その後、系の圧力を除々に減じて0.5時間後に13Paとし、その後1時間、脱泡を行った。次いで、系を窒素ガスで加圧状態にして、ストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングして、ペレット状(直径約3mm、長さ約3mm)のポリエステル樹脂P−6を得た。
(ポリエステル樹脂P−7)
テレフタル酸4153g、エチレングリコール388g、1,2−プロパンジオール2568gからなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で3時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートを5.1g添加し、240℃を保ちながら、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに6時間重縮合反応を続けた後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングして、ペレット状(直径約3mm、長さ約3mm)のポリエステル樹脂P−7を得た。
(ポリエステル樹脂P−8)
テレフタル酸2907g、イソフタル酸1246g、エチレングリコール1133g、ネオペンチルグリコール1614gからなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として三酸価アンチモン1.8gを添加し、系の温度を280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間重縮合反応を続けた後、系を窒素ガスで加圧状態にして、ストランド状に樹脂を払い出し、水冷後、カッティングして、ペレット状(直径約3mm、長さ約3mm)のポリエステル樹脂P−8を得た。
(ポリエステル樹脂P−9)
テレフタル酸2907g、イソフタル酸1246g、エチレングリコール1133g、ネオペンチルグリコール1614gからなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として三酸価アンチモン1.8gを添加し、系の温度を280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、6時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、250℃になったところでトリメリット酸79gを添加し、250℃で2時間撹拌して、解重合反応を行った。その後、窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。そしてこれを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−9として得た。
(ポリエステル樹脂P−10)
テレフタル酸2907g、イソフタル酸1246g、エチレングリコール1133g、ネオペンチルグリコール1614gからなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。次いで、触媒として三酸価アンチモン1.8gを添加し、系の温度を280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、6時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、250℃になったところでトリメリット酸289gを添加し、250℃で2時間撹拌して、解重合反応を行った。その後、窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。そしてこれを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−10として得た。
上記のようにして得られたポリエステル樹脂の特性を分析または評価した結果を表1に示す。
Figure 2004037924
[溶解工程]3Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂P−1を500gとMEKを500g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度50質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。
[転相乳化工程]次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン29.1gを添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水470.9gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に15℃以下であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が25質量%の水性分散体を得た。
[溶解工程]3Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂P−1を400gとMEKを600g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。
[転相乳化工程]次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン23.3gを添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水476.7gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に15℃以下であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が20質量%の水性分散体を得た。
[溶解工程]3Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂P−1を400gとMEKを480g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、続いて、エチレングリコールモノブチルエーテルを120g添加して、10分ほど攪拌した後、固形分濃度40質量%ポリエステル樹脂、48質量%MEK、12質量%エチレングリコールモノブチルエーテルの溶液を得た。
[転相乳化工程]次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン23.3gを添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水476.7gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に15℃以下であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が20質量%の水性分散体を得た。
[脱溶剤工程]実施例1の水性分散体を800gと蒸留水115.4gを2Lフラスコ入れ、内温が50℃以下になるように調整しながら減圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は留去量が約300gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、この水性分散体の固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して、水性分散体を得た。
[脱溶剤工程]実施例2の水性分散体を800gと蒸留水52.3gを2Lフラスコ入れ、内温が50℃以下になるように調整しながら減圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は留去量が約360gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、この水性分散体の固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して、水性分散体を得た。
[脱溶剤工程]実施例3の水性分散体を800gと蒸留水52.3gを2Lフラスコ入れ、内温が50℃以下になるように調整しながら減圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は留去量が約360gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、この水性分散体の固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して、水性分散体を得た。
[脱溶剤工程]実施例2の水性分散体を800gと蒸留水52.3gを2Lフラスコ入れ、常圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は留去量が約360gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、この水性分散体の固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して、水性分散体を得た。
塩基性化合物をジメチルアミノエタノールに変更し、これを20.5g添加すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を479.5gに変更すること以外は、実施例5と同様の方法で水性分散体を得た。
ポリエステル樹脂をP−2に変更すること、トリエチルアミンを22.2g添加すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を477.8gに変更すること以外は、実施例5と同様の方法で水性分散体を得た。
ポリエステル樹脂をP−3に変更すること、トリエチルアミンを22.9g添加すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を477.1gに変更すること以外は、実施例5と同様の方法で水性分散体を得た。
ポリエステル樹脂をP−4に変更すること、トリエチルアミンを22.5g添加すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を477.5gに変更すること以外は、実施例5と同様の方法で水性分散体を得た。
ポリエステル樹脂をP−5に変更すること、トリエチルアミンを22.7g添加すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を477.3gに変更すること以外は、実施例5と同様の方法で水性分散体を得た。
ポリエステル樹脂をP−6に変更すること、トリエチルアミンを8.5g添加すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を491.5gに変更すること以外は、実施例5と同様の方法で水性分散体を得た。
ポリエステル樹脂をP−7に変更すること、トリエチルアミンを22.7g添加すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を477.3gに変更すること以外は、実施例5と同様の方法で水性分散体を得た。
(比較例1)
実施例2と同様の操作を、トリエチルアミンを添加せずに行ったところ、蒸留水添加中にポリエステル樹脂が攪拌羽に絡まり、水性分散体が得られなかった。
(比較例2)
トリエチルアミンの量を1.9gに変更すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を498.1gに更変する以外は、実施例5と同様の方法で水性分散体を得た。
(比較例3)
トリエチルアミンの量を62.0gに変更すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を438.0gに変更する以外は、実施例5と同様の方法で行ったが、脱溶剤の際に、ポリエステル樹脂が凝集して、水性分散体が得られなかった。
(比較例4)
[溶解工程]3Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂P−1を400gとMEKを600g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。
[転相乳化工程]次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン23.3g、界面活性剤としてナロアクティーN160(三洋化成株式会社製)を15g添加し、続いて100g/minの速度で約13℃の蒸留水476.7gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に15℃以下であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が21質量%の水性分散体を得た。
[脱溶剤工程]次いで上記の水性分散体を800gと蒸留水52.3gを2Lフラスコ入れ、内温が50℃以下になるように調整しながら減圧で脱溶剤を行った。脱溶剤は留去量が約360gになったところで終了し、室温まで冷却後、300メッシュのステンレス製フィルターで濾過した。次いで、この水性分散体の固形分濃度を測定した後、固形分濃度が30質量%になるように蒸留水を添加して、水性分散体を得た。
(比較例5)
ポリエステル樹脂をP−8に変更すること、トリエチルアミンを5.4g添加すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を494.6gに変更すること以外は、すべて実施例2と同様の操作を行ったが、蒸留水添加中にポリエステル樹脂が攪拌羽に絡まり、水性分散体が得られなかった。
(比較例6)
ポリエステル樹脂をP−9に変更すること、トリエチルアミンを8.7g添加すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を491.3gに変更すること以外は、すべて実施例5と同様の操作を行って水性分散体を得た。
(比較例7)
ポリエステル樹脂をP−10に変更し、トリエチルアミンを14.6g添加すること、および、転相乳化工程で添加する蒸留水を485.4gに変更すること以外は、すべて実施例5と同様の操作を行って水性分散体を得た。
(比較例8)
[溶解工程]3Lのポリエチレン製容器にポリエステル樹脂P−1を400gとMEKを600g投入し、約60℃の温水で容器を加熱しながら、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂をMEKに溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液を得た。
[転相乳化工程]次いで、ジャケット付きガラス容器(内容量2L)に上記ポリエステル樹脂溶液500gを仕込み、ジャケットに冷水を通して系内温度を45〜50℃に保ち、攪拌機(東京理化株式会社製、MAZELA1000)で攪拌した(回転速度600rpm)。次いで、攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン23.3gを添加し、続いて100g/minの速度で46℃の蒸留水476.7gを添加した。蒸留水を全量添加する間、系内温度は常に45〜50℃であった。蒸留水添加終了後、30分間攪拌して固形分濃度が20質量%の水性分散体を得た。
[脱溶剤工程]次いで、上記の水性分散体を800gと蒸留水52.3gを2Lフラスコ入れ、内温が50℃以下になるように調整しながら減圧で脱溶剤を行ったところ、脱溶剤工程中にポリエステル樹脂が凝集し、水性分散体が得られなかった。このため、評価においては脱溶剤前のものを使用した。
表2には、実施例および比較例で用いた塩基性化合物のポリエステル樹脂のカルボキシル基の総モル量に対する当量比、式(1)の左辺、右辺の値、用いたポリエステル樹脂の酸価、および得られた水性分散体の有機溶剤含有率、体積平均粒径、貯蔵安定性について調べた結果を示した。尚、有機溶剤含有率について、脱溶剤を行わなかったものについては、転相乳化時の仕込み量から算出し、脱溶剤を行ったものについては、ガスクロマトグラフでの測定結果を含有率とした。
表3には、水性分散体から形成された樹脂被膜の密着性、耐水性、耐溶剤性を調べた結果、および水性分散体の分子量保持率と10℃および40℃での粘度の値および加工性を示す。なお、表2および表3には水性分散体が得られなかった比較例1、3および5については表記していない。
Figure 2004037924
Figure 2004037924
以上の実施例および比較例から、本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、貯蔵安定性に優れること、またこれより形成される樹脂被膜は基材への密着性、耐水性、耐溶剤性、加工性に優れることがわかる。また更に、本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、分子量保持率が高いことや、有機溶剤含有率が小さい場合には、10℃と40℃での粘度の差が小さいことがわかる。また、転相乳化工程を40℃を超える温度で行った場合には、貯蔵安定性に優れた水性分散体が得られない場合があることがわかる。また、転相乳化工程において、式(1)の範囲外で塩基性化合物を含有させた場合には、水性分散体が得られないか、また、得られたとしても、貯蔵安定性に劣る場合があることがわかる。

Claims (9)

  1. 酸価が2mgKOH/g以上、8mgKOH/g未満であり、数平均分子量が5,000以上であるポリエステル樹脂(A)、塩基性化合物(B)および水(C)を含有するポリエステル樹脂水性分散体であって、ポリエステル樹脂(A)の含有率が1〜70質量%であり、水(C)の含有率が10質量%以上であり、界面活性剤を含有しないことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
  2. 更に有機溶剤(D)を含有し、該有機溶剤(D)の含有率が0〜85質量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  3. ポリエステル樹脂水性分散体の体積平均粒径が400nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  4. ポリエステル樹脂が、多塩基酸を用いて解重合および/または付加反応によりカルボキシル基を導入したポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  5. 多塩基酸が3官能以上の多塩基酸であることを特徴とする請求項4に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  6. ポリエステル樹脂が、その構成多塩基酸成分として芳香族多塩基酸を50モル%以上含むポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂水性分散体。
  7. 転相乳化によりポリエステル樹脂(A)の有機溶剤溶液を塩基性化合物(B)とともに水に分散させて、ポリエステル樹脂水性分散体を製造する方法であって、転相乳化を40℃以下で行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
  8. 転相乳化後に有機溶剤を除去する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
  9. 塩基性化合物(B)の使用量が下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項7または8に記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
    −0.25×E+2.5≦F≦−5×E+50 (1)
    [式(1)中、Eはポリエステル樹脂(A)の酸価(mgKOH/g)、Fは塩基性化合物(B)の、ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基の総モル量に対する当量比を示す。]
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