JP3540094B2 - ポリエステルよりなる異形押出成形品 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルよりなる異形押出成形品およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、高い溶融粘度を有し、しかも高剪断速度では低粘度で且つ低剪断速度では高粘度である非ニュートン性を有するポリエステルを用いて形成された、寸法精度、透明性、耐衝撃性、外観、表面状態などに優れ、しかも機械的特性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、ガスバリヤー性、安全性などの特性においても優れる異形押出成形品およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステルは、透明性、力学的特性、耐薬品性、熱安定性、ガスバリヤー性などの諸特性に優れ、しかも成形品にした際にも残留モノマーや有害添加剤の心配が少なく、衛生性および安全性に優れていることから、従来汎用されてきた塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂に代わるものとして、中空容器などの包装分野で近年近年広く使用されるようになっている。
【0003】
また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートの上記した諸特性を活かして、これらのポリエステルを、押出ブロー成形などによって製造されることの多い上記した中空容器とは別に、異形押出成形品の製造に用いることが試みられている。しかし、従来汎用されているポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートは一般に溶融粘度が低く、そのため異形押出成形に行いると、押出後のサイジング時に変形が生じ易く、複雑なダイの形状に沿って良好な寸法精度で異形押出成形品を製造することができないという欠点がある。
【0004】
そのため、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる異形押出成形品は従来殆ど製造されておらず、異形押出成形品の製造に当たっては、高い溶融粘度を有していてダイの形状どおりにサイジングが可能な塩化ビニル樹脂やポリオレフィンが主に用いられている。
しかしながら、塩化ビニル樹脂の異形押出成形品は、可塑剤や金属系安定剤などの有害添加物を含有しているため、その溶出による衛生面や安全面での問題があり、しかも使用済みの成形品を焼却すると有害ガスを発生するという欠点がある。また、ポリエチレンなどのポリオレフィン製の異形押出成形品では、結晶に由来する白濁が生じ易く、透明性や外観が不良になり易いという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、溶融粘度が低くて異形押出成形が困難であるという、ポリエステルにおける上記した問題点を解決して、ダイ形状に沿った高い寸法精度を有し、しかも透明性、耐衝撃性、外観、表面状態などの特性に優れ、しかもポリエステル自体が本来備えている良好な機械的特性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、ガスバリヤー性、安全性などの諸特性をも有している、商品価値の高いポリエステル製の異形押出成形品を提供することである。
そして、本発明の目的は、ポリエステルを用いて上記した優れた諸特性を有する異形押出成形品を製造する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らが検討を重ねた結果、テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方からなるジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであって、特定の溶融粘度挙動を示すポリエステルを用いて異形押出成形品を製造すると、ポリエステル自体が本来備えている優れた諸特性と共に、ダイ形状に沿った高い寸法精度を有し、しかも透明性、耐衝撃性、表面状態および外観などの特性にも優れる、高品質の異形押出成形品が得られることを見出して本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリエステルよりなる異形押出成形品であって、下記の要件(i)〜(iii)を満足するポリエステル;
(i) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方からなるジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルである;
(ii) 250〜320℃の範囲の溶融状態にある任意の温度において、剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜5×106ポイズであり、且つ剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が5×103〜5×105ポイズである;および
(iii) 前記の溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が下記の数式▲1▼を満足する;
【0008】
【数3】
−0.7≦(1/3)log10(η2/η1)≦−0.2 ▲1▼
を用いて形成したことを特徴とする異形押出成形品である。
【0009】
そして、本発明は、上記した要件(i)〜(iii)を満足するポリエステルを用いて異形押出成形を行うことを特徴とする異形押出成形品の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
まず、本発明でいう「異形押出成形品」には、溶融押出成形によって製造される成形品であって、その押出方向と直角の方向の断面形状(横断面形状)が、方形、円形、円環形、楕円形および楕円環形以外の異形形状を有している成形品のいずれをも包含する。但し、溶融押出を伴うものであっても、ブロー成形を伴ういわゆる押出ブロー成形品は本発明の異形押出成形品には包含されない。本発明の異形押出成形品は、異形の横断面形状を有する押出成形品である限りは、その形状、構造、成形品全体の大きさ、各部の寸法などは何ら制限されず、例えば、中実の異形押出成形品であっても、中空の異形押出成形品であっても、一部が開放した構造の異形押出成形品であっても、その他の形状および構造の異形押出成形品であってもよい。
また、本発明の異形押出成形品の大きさも何ら制限されず、例えば、大型のもの、中型のもの、小型のもの、微小サイズのもののいずれであってもよい。そのうちでも、本発明は、窓枠用、配線ダクト用、雨樋用、カートリッジ用などに適した形状や大きさの異形押出成形品においてより良好な効果を発揮することができる。
【0011】
本発明では、異形押出成形品に用いるポリエステルが、まず、テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方からなるジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであるという上記の要件(i)を有していることが必要である。すなわち、本発明では、異形押出成形品を構成するポリエステルが、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるか、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるか、またはテレフタル酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位から主としてなることが必要である。
【0012】
本発明の異形押出成形品に用いる上記したポリエステルは、一般に、テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方からなるジカルボン酸単位(両ジカルボン酸単位を有する場合はその合計単位)とエチレングリコール単位との合計割合(モル%)が、ポリエステルを構成する全構造単位の合計モル数に対して、約70モル%以上であるのが好ましく、約90モル%以上であるのがより好ましい。ポリエステルにおけるテレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方とエチレングリコール単位の合計割合が70モル%未満であると、ポリエステルの耐薬品性、ガスバリヤー性、耐熱性などの特性が低下するので好ましくない。
また、本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルでは、そのジカルボン酸単位が、テレフタル酸単位から主としてなり2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を少割合で有していても、または2,6−ナフタレンジカルボン酸単位から主としてなりテレフタル酸単位を少割合で有していてもよい。
【0013】
さらに、本発明では、異形押出成形品に用いるポリエステルが上記の要件(ii)、すなわち、「250〜320℃の範囲の溶融状態にある任意の温度において、剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜5×106ポイズであり、且つ剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が5×103〜5×105ポイズである」という要件を満足するものであることが必要である。ここで、この要件(ii)は、250〜320℃の範囲内の温度で且つポリエステルが溶融している温度のいずれかの温度で測定した場合において、溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)がそれぞれ5×104〜5×106ポイズの範囲、および5×103〜5×105の範囲の値にあることを意味する。
【0014】
ポリエステルにおける前記の溶融粘度(η1)が5×104ポイズ未満であると、ダイから押し出された溶融体の変形が著しくなってダイの形状に沿った異形押出成形品が得られなくなる。一方ポリエステルにおける前記の溶融粘度(η1)が5×106ポイズを超えると、ダイスウェルが大きくなって成形品の厚み斑が著しくなり、異形押出成形品の断面形状の精度が低下する。しかも、ダイ内部における樹脂圧力が高くなるために押出斑を生じ成形品の形状が不良となる。
また、ポリエステルにおける前記の溶融粘度(η2)が5×103ポイズ未満であると効率よく異形押出を行うことが困難となって生産性が低下する。一方、ポリエステルにおける前記の溶融粘度(η2)が5×105ポイズを超えると、ポリエステルの熱分解や押出時の押出斑の発生、ウエルドラインの発生が著しくなり、異形押出成形品の色調、形状、強度などが不良となる。
【0015】
さらに、本発明では、異形押出成形品に用いるポリエステルが上記の要件(iii)を満足するものであること、すなわち上記した溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が、下記の数式▲1▼;
【0016】
【数4】
−0.7≦(1/3)log10(η2/η1)≦−0.2 ▲1▼
を満足するものであることが必要である。上記の数式▲1▼を満足するポリエステルは、適度な非ニュートン性を発揮して、高剪断速度において適度に低い溶融粘度を示すと共に低剪断速度においては適度に高い溶融粘度を示すことから、異形押出成形時に樹脂の押出が良好に行われて、ダイ形状に沿った寸法精度の高い異形押出成形品が得られる。
【0017】
本発明の異形押出成形品の寸法精度および形状をより良好なものになし得るという点から、上記した数式▲1▼における、(1/3)log10(η2/η1)の値が、−0.60〜−0.25の範囲内であるのが一層好ましい。また、上記の数式▲1▼において、(1/3)log10(η2/η1)は、溶融粘度を縦軸とし、剪断速度を横軸とする両自然対数グラフにおける溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)の2点を結ぶ直線の傾きとして求められる。
なお、本願明細書でいう溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)の値は、下記の実施例の項に記載した方法で測定したときの値をいう。
【0018】
本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルは、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルである限りは、いずれのポリエステルであってもよい。そのうちでも、本発明の異形押出成形品は、上記した要件(i)〜要件(iii)を備える下記の(A)〜(D)に例示するポリエステルから好ましく製造される。
【0019】
[本発明の異形押出成形品に用いる得る好ましいポリエステル]
(A) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであって、且つ
○ カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(a)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜0.5モル%の割合で有しているポリエステル[以下これを「共重合ポリエステル(A)」ということがある]。
【0020】
(B) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであって、且つ
○ カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(a)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜1モル%の割合で有し;そして
○ モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体からなる単官能化合物の少なくとも1種から誘導される単官能化合物単位(b)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.0005〜20モル%の割合で有している;
ポリエステル[以下これを「共重合ポリエステル(B)」ということがある]。
【0021】
(C) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであって、且つ
○ カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(a)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜0.5モル%の割合で有し;
○ エチレンテレフタレート単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位以外のジカルボン酸単位、ジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2官能化合物単位(c)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.5〜7モル%の割合で有している;
ポリエステル[以下これを「共重合ポリエステル(C)」ということがある]。
【0022】
(D) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであって、且つ
○ カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(a)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜1モル%の割合で有し;
○ モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体から選ばれる単官能化合物の少なくとも1種から誘導される単官能化合物単位(b)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.0005〜20モル%の割合で有し;そして
○ テレフタル酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位以外のジカルボン酸単位、ジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2官能化合物単位(c)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.5〜7モル%の割合で有している;
ポリエステル[以下これを「共重合ポリエステル(D)」ということがある]。
【0023】
以下に、本発明において好ましく用いられる上記した共重合ポリエステル(A)〜共重合ポリエステル(D)[以下共重合ポリエステル(A)〜共重合ポリエステル(D)を総称して単に「共重合ポリエステル」ということがある]についてさらに詳細に説明する。
上記から明らかなように、共重合ポリエステル(A)〜共重合ポリエステル(D)において、多官能化合物単位(a)の割合は、それらの共重合ポリエステルが単官能化合物単位(b)を有していない場合[共重合ポリエステル(A)および共重合ポリエステル(C)の場合]は、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜0.5モル%であるようにするのがよく、共重合ポリエステルが単官能化合物単位(b)を有している場合[共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)の場合]は、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜1モル%であるようにするのよい。
【0024】
共重合ポリエステルにおいて、多官能化合物単位(a)の割合が、0.005モル%未満であると、溶融粘度が充分に高くならず、適正な溶融粘性、すなわち非ニュートン性が生じず、溶融押出体がダイ形状を維持できず、寸法精度に優れる異形押出成形品が得られにくくなる。特に、中空の異形押出成形品を製造する場合には、溶融押出体の閉塞やつぶれが生じ易くなって、所望の形状および寸法の異形押出成形品が得られにくくなる。
【0025】
一方、単官能化合物単位(b)を有しない共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(A)および共重合ポリエステル(C)]において多官能化合物単位(a)の割合が0.5モル%を超えると、また単官能化合物単位(b)を有する共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)]において多官能化合物単位(a)の割合が1モル%を超えると、共重合ポリエステル中における架橋構造部分が多くなり過ぎて、低剪断速度での溶融粘度が高くなり過ぎて、ダイスウェルが大きくなって成形品の厚み斑が著しくなり、成形品の断面形状の精度が不良なものとなり易い。しかもダイ内部における樹脂圧力が高くなって、押出斑を生じて成形品の形状が不良になり易い。しかも、過架橋構造に由来するゲルが生ずるため、成形品を製造した場合にブツの発生、白化などのトラブルを生じて、透明性、外観、触感などが損なわれる。そして、ゲルを生じないように共重合ポリエステルの重合度を低下させると、分子間の絡み合いが低下して、充分な機械的強度が得られなくなる。さらに、成形品を製造する際に結晶化速度が速くなり過ぎて球晶が生成して成形品に白化を生じて透明性が低下するなどの問題を生じ易い。
【0026】
溶融粘度が充分に高くなって異形押出成形を一層良好に行うことができるという点、異形押出成形品の白化および賦形不良を円滑に防止することができるという点、しかも機械的強度に一層優れる異形押出成形品を得ることができるという点から、共重合ポリエステルにおける多官能化合物単位(a)の割合が、単官能化合物単位(b)を有しない共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(A)および共重合ポリエステル(C)]では0.01〜0.4モル%であるのが好ましく、単官能化合物単位(b)を有する共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)]では0.01〜0.5モル%であるのが好ましい。
【0027】
多官能化合物単位(a)としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基から選ばれる1種または2種以上の基を3個以上有する多官能化合物から誘導される単位であれば特に制限されず、多官能化合物単位(a)を誘導するための多官能化合物は、カルボキシル基のみを3個以上有する多官能化合物であっても、ヒドロキシル基のみを3個以上有する多官能化合物であっても、またはカルボキシル基とヒドロキシル基を合計で3個以上有する多官能化合物であってもよい。
【0028】
多官能化合物単位(a)の好ましい例としては、トリメシン酸、トリメリット酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸などの芳香族ポリカルボン酸;1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸などの脂肪族ポリカルボン酸;1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2−[3−(2−ヒドロキシエチル)−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−2−(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンなどの芳香族ポリアルコール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、1,3,5−シクロヘキサントリオールなどの脂肪族または脂環式のポリアルコール;4−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、プロトカテク酸、没食子酸、2,4−ジヒドロキシフェニル酢酸などの芳香族ポリヒドロキシカルボン酸;酒石酸、リンゴ酸などの脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸;それらのエステル形成性誘導体から誘導される多官能化合物単位を挙げることができる。上記した共重合ポリエステルは、多官能化合物単位(a)として、上記した多官能化合物単位の1種のみを有していてもまたは2種以上を有していてもよい。
【0029】
上記したうちでも、本発明の異形押出成形品に好ましい用いられる共重合ポリエステルは、多官能化合物単位(a)としてトリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールから誘導される多官能化合物単位の1種または2種以上を有しているのが、共重合ポリエステルの製造の容易性および製造コストの点から好ましく、ゲル化を抑制する観点から、トリメリット酸、トリメシン酸、2−[3−(2−ヒドロキシエチル)−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−2−(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンから誘導される多官能化合物単位であるのが特に好ましい。
【0030】
さらに、本発明の異形押出成形品に好ましく用いられる共重合ポリエステルは、上記した多官能化合物単位(a)とともに、モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体の少なくとも1種の単官能化合物から誘導される単官能化合物単位(b)を有していることが好ましい。この単官能化合物単位(b)は、共重合ポリエステルに対する末端封止化合物単位として機能し、共重合ポリエステルにおける分子鎖末端基および/または分枝鎖末端基の封止を行い、共重合ポリエステルにおける過度の架橋およびゲルの発生を防止する。
【0031】
本発明の異形押出成形品に好ましく用いられる共重合ポリエステルのうちで、上記した共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)は、単官能化合物単位(b)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.0005〜20モル%の割合で有していることが好ましい。単官能化合物単位(b)の割合が前記した0.0005モル%未満であると、過架橋状態となってゲルが生じ易くなり、成形品を製造した際に、ブツ、白化などのトラブルが発生して、外観が不良になったり、透明性が失われたりする場合がある。
一方、共重合ポリエステルにおける単官能化合物単位(b)の割合が20モル%を超えると、共重合ポリエステルを製造する際の固相重合速度が遅くなって、十分な重合度を有する共重合ポリエステルが得られにくくなり成形品の機械的強度が低くなる場合があり、しかも共重合ポリエステルの生産性が低下し易くなる。共重合ポリエステルの製造の容易性、製造コスト、共重合ポリエステルから得られる異形押出成形品の外観、透明性、機械的強度などの点から、共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)では、単官能化合物単位(b)を割合が、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.001〜15モル%であることが好ましく、さらに下記の数式▲2▼を満足する割合であるのがより好ましい。
【0032】
【数5】
{20×(p−2)×a}≧b≧{0.1×(p−2)×a} ▲2▼
[式中、aは共重合ポリエステルにおける多官能化合物単位(a)の割合(モル%)、bは共重合ポリエステルにおける単官能化合物単位(b)の割合(モル%)、そしてpは多官能化合物単位(a)を誘導する多官能化合物の平均官能基数を表す]
【0033】
上記の数式▲2▼において、多官能化合物単位(a)を誘導する多官能化合物の平均官能基数pとは、共重合ポリエステルを形成するのに用いた全多官能化合物の官能基の平均値を表し、例えば多官能化合物として3官能化合物のみを用いた場合はp=3であり、多官能化合物として3官能化合物と4官能化合物を50:50のモル比で用いた場合はp=3×0.5+4×0.5=3.5となり、多官能化合物として3官能化合物と4官能化合物を20:80のモル比で用いた場合はp=3×0.2+4×0.8=3.8となる。
したがって、限定されるものではないが、例えば、多官能化合物単位(a)が3官能化合物から誘導される3官能単位であって且つ共重合ポリエステルにおける多官能化合物単位(a)の含有割合が0.1モル%の場合には、上記の数式▲2▼において、p=3およびa=0.1(モル%)であるから、単官能化合物単位(b)の好ましい含有割合は、2(モル%)≧b≧0.01(モル%)、すなわち0.01〜2モル%となる。
【0034】
上記した単官能化合物単位(b)は、モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体の少なくとも1種から誘導される単位であればいずれでもよく特に制限されないが、単官能化合物単位(b)の好ましい例としては、安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸、o−メチル安息香酸、m−メチル安息香酸、p−メチル安息香酸、2,3−ジメチル安息香酸、2,4−ジメチル安息香酸、2,5−ジメチル安息香酸、2,6−ジメチル安息香酸、3,4−ジメチル安息香酸、3,5−ジメチル安息香酸、2,4,6−トリメチル安息香酸、2,4,6−トリメトキシ安息香酸、3,4,5−トリメトキシ安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、2−ビフェニルカルボン酸、1−ナフタレン酢酸、2−ナフタレン酢酸などの芳香族モノカルボン酸;n−オクタン酸、n−ノナン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸;前記のモノカルボン酸のエステル形成性誘導体;ベンジルアルコール、2,5−ジメチルベンジルアルコール、2−フェネチルアルコール、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトールなどの芳香族モノアルコール;ペンタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリテトラメチレングリコールモノアルキルエーテル、オレイルアルコール、シクロドデカノールなどの脂肪族または脂環式のモノアルコールなどの単官能化合物から誘導される単位を挙げることができる。共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)]は、単官能化合物単位(b)として、上記した単官能化合物単位の1種のみを有していても、または2種以上を有していてもよい。
【0035】
そのうちでも、共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)]は、単官能化合物単位(b)として、安息香酸、2,4,6−トリメトキシ安息香酸、2−ナフトエ酸、ステアリン酸およびステアリルアルコールから選ばれる単官能化合物の1種または2種以上から誘導される単位を有しているのが、共重合ポリエステルの製造の容易性および製造コストの点から好ましい。
【0036】
そして、本発明の異形押出成形品に用いる共重合ポリエステルは、テレフタル酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位、エチレングリコール単位、多官能化合物単位(a)および場合により含有する単官能化合物単位(b)と共に、ジカルボン酸単位、ジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2官能化合物単位(c)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、0.5〜7モル%の割合で有しているのが好ましい[すなわち前記した共重合ポリエステル(C)および共重合ポリエステル(D)]。共重合ポリエステル中に、2官能化合物単位(c)を0.5〜7モル%の割合で含有させておくと、冷却効率の低い厚いものの異形押出成形品を製造する場合に、共重合ポリエステルの結晶化速度が適当なものとなって、溶融成形時に球晶の生成が一層良好に抑制されて、透明性に一層優れ且つ耐衝撃性に一層優れる成形品を得ることができる。特に、共重合ポリエステル中に2官能化合物単位(c)を1〜5モル%の割合で含有させておくと、共重合ポリエステルの溶融粘度が一層適当な範囲となって異形押出成形を一層良好に行うことができ、且つ白化がなくて透明性に一層優れ、その上機械的強度にも一層優れる異形押出成形品を得ることができる。
【0037】
一方、共重合ポリエステル中に2官能化合物単位(c)を含有させる場合に、2官能化合物単位(c)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて7モル%を超えると、共重合ポリエステルの結晶性および融点が低くなり過ぎて固相重合が行えなくなったり、または固相重合が行える場合であってもその固相重合速度が極端に遅くなって重合度が充分に高くならず、それに伴って得られる共重合ポリエステルおよびその成形品の機械的強度が劣ったものとなり、しかも共重合ポリエステルの溶融時の熱安定性や得られる成形品のガスバリヤー性および耐熱性が低下するものとなるので、2官能化合物単位(c)の割合を7モル%以下にすることが必要である。
【0038】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステル中に好ましい単位として含有させることのできる2官能化合物単位(c)としては、テレフタル酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位以外のジカルボン酸単位、ジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位であれば、脂肪族の2官能化合物単位、脂環式の2官能化合物単位、芳香族の2官能化合物単位のうちのいずれでもよい。
その場合の、脂肪族の2官能化合物単位の例としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;10−ヒドロキシオクタデカン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオールなどの脂肪族ジオールなどから誘導される2価の構造単位を挙げることができる。脂肪族の2官能化合物単位が、ネオペンチルグリコール単位である場合は、共重合ポリエステルの製造が容易になり、しかも該共重合ポリエステルから得られる異形押出成形品の耐熱性を一層良好なものとすることができる。
【0039】
また、脂環式の2官能化合物単位の例としては、シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシメチルノルボルネンカルボン酸、ヒドロキシメチルトリシクロデカンカルボン酸などの脂環式ヒドロキシカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環式ジオールなどから誘導される2価の構造単位を挙げることができる。
脂環式の2官能化合物単位が、シクロヘキサンジメタノール単位および/またはシクロヘキサンジカルボン酸単位である場合は、共重合ポリエステルの製造が容易になり、しかも該共重合ポリエステルおよびそれから得られる異形押出成形品の機械的強度を大きなものとすることができる。
【0040】
ここで、上記におけるシクロヘキサンジメタノール単位とは、1,2−シクロヘキサンジメタノール単位、1,3−シクロヘキサンジメタノール単位および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位から選ばれる少なくとも1種の2価の単位を意味する。また、上記におけるシクロヘキサンジカルボン酸単位とは、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸単位、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸単位および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2価の単位を意味する。
上記した脂環式の2官能化合物単位のうちでも、入手の容易性、共重合ポリエステルおよびそれから得られる異形押出成形品の機械的強度が一層優れたものになるという点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位および/または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位がより好ましい。
【0041】
また、芳香族の2官能化合物単位としては、芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ヒドロキシカルボン酸単位および/または芳香族ジオール単位のいずれであってもよい。芳香族の2官能化合物単位の例としては、イソフタル酸、フタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、2,6−ナフタレンジカルボン酸以外のナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸およびそられらのエステル形成性誘導体;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシトルイル酸、ヒドロキシナフトエ酸、3−(ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体;ビスフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物などの芳香族ジオールなどから誘導される2価の単位を挙げることができる。
【0042】
また、共重合ポリエステルにおける主たるジカルボン酸単位がテレフタル酸単位の場合は、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を2官能化合物単位(c)として少量含有させてもよく、また共重合ポリエステルにおける主たるジカルボン酸単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の場合はテレフタル酸単位を2官能化合物単位(c)として少量含有させてもよい。
2官能化合物単位(c)が芳香族ジカルボン酸単位である場合は、テレフタル酸単位(主たる単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の場合)、イソフタル酸単位、フタル酸単位、4,4’−ビフェニルジカルボン酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位(主たるジカルボン酸単位がテレフタル酸単位の場合)の少なくとも1種であると、共重合ポリエステルの製造が容易であり、好ましい。
【0043】
また、2官能化合物単位(c)として、
(1) 下記の一般式(I);
【0044】
【化1】
[式中、A1およびA2はそれぞれ独立して式:−CH2CH2−または式:−CH(CH3)CH2−で示される基、B1は2価の炭化水素基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子または直接結合(−)、R1およびR2はそれぞれ不活性置換基、jおよびkはそれぞれ独立して0〜8の整数、そしてsおよびtはそれぞれ独立して0〜4の整数を表す]
で表されるジオール単位(I);および
(2) 下記の一般式(II);
【0045】
【化2】
[式中、A3およびA4はそれぞれ独立して式:−CH2CH2−または式:−CH(CH3)CH2−で示される基、R3は不活性置換基、mおよびnはそれぞれ独立して0〜8の整数、そしてuは0〜4の整数を表す]
で表されるジオール単位(II);
から選ばれる少なくとも1種の芳香族の2官能化合物単位を共重合ポリエステル中に導入すると、共重合ポリエステルおよびそれから得られる異形押出成形品の機械的強度を大きなものとすることができるので好ましい。
【0046】
上記のジオール単位(I)は、下記の一般式(III);
【0047】
【化3】
[式中、A1およびA2はそれぞれ独立して式:−CH2CH2−または式:−CH(CH3)CH2−で示される基、B1は2価の炭化水素基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子または直接結合(−)、R1およびR2はそれぞれ不活性置換基、jおよびkはそれぞれ独立して0〜8の整数、そしてsおよびtはそれぞれ独立して0〜4の整数を表す]
で表されるジオール(III)などから誘導される構造単位であり、また上記ジオール単位(II)は、下記の一般式(IV);
【0048】
【化4】
[式中、A3およびA4はそれぞれ独立して式:−CH2CH2−または式:−CH(CH3)CH2−で示される基、R3は不活性置換基、mおよびnはそれぞれ独立して0〜8の整数、そしてuは0〜4の整数を表す]
で表されるジオール(IV)などから誘導される構造単位である。
【0049】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルは、ジオール単位(I)およびジオール単位(II)の両方を有していても、または一方のみを有していてもよい。その場合に、A1、A2、A3およびA4のいずれもが、式:−CH2CH2−で示される基(エチレン基)であっても、または式:−CH(CH3)CH2−で示される基(1,2−プロピレン基)であっても、或いはA1、A2、A3およびA4の一部がエチレン基で、残りが1,2−プロピレン基であってもよい。そのうちでも、ジオール単位(I)のA1およびA2の両方、および/またはジオール単位(II)のA3およびA4の両方がエチレン基であるのが共重合ポリエステルの製造の容易性や製造コスト、異形押出成形品の色調が良好になるなどの点から好ましい。
【0050】
また、ジオール単位(I)におけるB1は、上記したように、2価の炭化水素基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子または直接結合(−)である。B1が2価の炭化水素基である場合は、炭素数1〜8のアルキレン基、アルキリデン基、または2価の芳香族基であるのが好ましく、具体的には、メチレン基、ジクロロメチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基、プロピリデン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、エチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルプロピリデン基、1,2−ジメチルエチレン基、ペンチリデン基、1−メチルブチリデン基、ペンタメチレン基、1−エチル−2−メチルエチレン基、1,3−ジメチルトリメチレン基、1−エチルプロピリデン基、トリメチルエチレン基、イソプロピルメチレン基、1−メチルブチリデン基、2,2−ジメチルプロピリデン基、ヘキサメチレン基、1−エチルブチリデン基、1,2−ジエチルエチレン基、1,3−ジメチルブチリデン基、エチルトリメチルエチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、1,1−シクロペンチリデン基、1,1−シクロヘキシリデン基、1,1−シクロヘプチリデン基、1,1−シクロオクチリデン基、ベンジリデン基、1−フェニルエチリデン基などを挙げることができる。
【0051】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルでは、共重合ポリエステル中に存在するジオール単位(I)における基B1がすべて同じ基であってもまたは異なる基であってもよい。そのうちでも、基B1がイソプロピリデン基、スルホニル基および/または1,1−シクロヘキシリデン基であるのが、共重合ポリエステルの溶融時の熱安定性になり、共重合ポリエステルを用いてなる異形押出成形品の色調が良好になる点から好ましい。
【0052】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルにおいて、ジオール単位(I)およびジオール単位(II)におけるj、k、mおよびnはそれぞれ独立して0〜8の整数である。ジオール単位(I)およびジオール単位(II)におけるj、k、mおよびnは同じ数であってもまたは異なった数であってもよい。そのうちでも、共重合ポリエステルの製造の容易性、溶融時の熱安定性および共重合ポリエステルを用いてなる異形押出成形品の色調が良好になる点から、ジオール単位(I)およびジオール単位(II)におけるj、k、mおよびnがそれぞれ独立して1または2であるの好ましく、j、k、mおよびnが1であるのがより好ましい。
【0053】
上記したように、本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルのジオール単位(I)およびジオール単位(II)において、ベンゼン核は不活性な置換基(R1、R2、R3)で置換されていてもよく、その場合の置換基R1、R2およびR3としては、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基などの低級アルキル基;塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子であるのが好ましい。また、ジオール単位(I)およびジオール単位(II)において不活性置換基の数を表すs、tおよびuはそれぞれ0〜4の整数であり、0〜2の整数であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
【0054】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルを構成するジオール単位(I)としては、上記したジオール単位であればいずれでもよいが、ジオール単位(I)の好ましい例としては、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2−{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}−2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、{4−[2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、ビス{4−[2−(ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1−{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ))エトキシ]フェニル}−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}シクロヘキサン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2,3,5,6−テトラブロモフェニル]プロパンなどから誘導されるジオール単位を挙げることができる。上記したジオール単位のうちでも、ジオール単位(I)が2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン単位またはビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン単位である場合は、共重合ポリエステルの製造が容易であり、共重合ポリエステルの溶融安定性を高くすることができ、また共重合ポリエステルを用いてなる異形押出成形品の色調を良好にすることができる。
【0055】
また、本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルを構成するジオール単位(II)としては、上記したジオール単位であればいずれでもよいが、ジオール単位(II)の好ましい例としては、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン、1,4−ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼンなどから誘導されるジオール単位を挙げることができる。そのうちでも、ジオール単位(II)が1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンである場合は、共重合ポリエステルの製造が容易になり、しかも共重合ポリエステルの溶融安定性を高くすることができ、また共重合ポリエステルを用いて製造される異形押出成形品の色調を良好にすることができる。
【0056】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルは、2官能化合物単位(c)として、上記した構造単位のうちの1種のみを有していても、または2種以上を有していてもよい。
【0057】
本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルの極限粘度は、0.6〜1.5dl/gの範囲内であるのが好ましく、特に得られる異形押出成形品の機械的強度、外観、成形品製造時の生産性などの点から、0.8〜1.4dl/gの範囲内であるのがより好ましい。特に、異形押出成形を行う場合に、ポリエステルの極限粘度が0.6dl/g未満のときは、異形押出成形時にダイから押し出した溶融押出体の変形が大きくなって成形品の形状が不良となり易く、さらに得られる成形品の機械的強度が低下し易い。一方、異形押出成形を行う場合に、ポリエステルの極限粘度が1.5dl/gよりも大きいときは、溶融粘度が高くなり過ぎて、成形品にウエルドラインが生じ易くなり、さらにダイスウェルが著しいため得られる成形品の形状が不良となり易く、しかも押出時にトルクが高くなるために押出量が不均一になり易いなどの成形上の問題を生じ易くなる。
【0058】
本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルは、冷結晶化温度が160℃以下であり、且つ冷結晶化における結晶化熱量が25J/g以下であることが好ましい。ポリエステルの冷結晶化温度が160℃よりも高い場合、または冷結晶化における結晶化熱量が25J/gを超える場合は、いずれも球晶の成長速度が速くなって、得られる成形品に白化を生じて透明性が劣ったものになり易い。溶融成形時に球晶の生成速度を充分に遅延させて、透明性に優れる成形品を良好な賦形性で得るためには、ポリエステルの冷結晶化温度が150℃以下であり、且つ冷結晶化における結晶化熱量が20J/g以下であるのが一層好ましい。なお、ここでいう冷結晶化温度および冷結晶化における結晶化熱量は示差熱分析法(DSC)によって測定したときの値をいい、その詳細は下記の実施例の項に記載したとおりである。
【0059】
本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルは、ポリエステルの溶融安定性、着色防止、成形品における壁面荒れの抑制の点から、そのカルボキシル基濃度が30μ当量/g以下であるのが好ましく、20μ当量/g以下であるのがより好ましい。ポリエステルにおけるカルボキシル基濃度が30μ当量/gを超える場合は、異形押出成形品の着色が著しくなる上に、分子量低下が顕著となる。
【0060】
また、本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルの製造方法は何ら制限されないが、好ましくは次のようにして製造することができる。
すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびテレフタル酸の少なくとも一方またはそれらのエステル形成性誘導体よりなるジカルボン酸成分とエチレングリコールよりなるジオール成分から主としてなる反応原料を用いてエステル化反応またはエステル交換反応させた後、それを溶融重縮合させてポリエステルプレポリマーを形成し、そのポリエステルプレポリマーを固相重合して共重合ポリエステルを製造する方法において、
(1) 共重合ポリエステル(A)の場合は、上記の反応原料として更にカルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種を、該多官能化合物から誘導される多官能化合物単位(a)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜0.5モル%になるような量で含んでいるものを用いることにより;
(2) 共重合ポリエステル(B)の場合は、上記の反応原料として、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種を該多官能化合物から誘導される多官能化合物単位(a)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜1モル%になるような量で含み;且つモノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体からなる単官能化合物の少なくとも1種を、該単官能化合物から誘導される単官能化合物単位(b)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.0005〜20モル%になるような量で含んでいるものを用いることにより;
(3) 共重合ポリエステル(C)の場合は、上記の反応原料として、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種を該多官能化合物から誘導される多官能化合物単位(a)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜0.5モル%になるような量で含み;且つ2,6−ナフタレンジカルボン酸および/またはテレフタル酸並びにエチレングリコール以外のジカルボン酸、ジオールおよびヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体からなる2官能化合物の少なくとも1種を、該2官能化合物から誘導される2官能化合物単位(c)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.5〜7モル%になるような量で含んでいるものを用いることにより;そして、
(4) 共重合ポリエステル(D)の場合は、上記の反応原料として、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種を該多官能化合物から誘導される多官能化合物単位(a)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜1モル%になるような量で含み;モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体からなる単官能化合物の少なくとも1種を、該単官能化合物から誘導される単官能化合物単位(b)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.0005〜20モル%になるような量で含み;且つ2,6−ナフタレンジカルボン酸および/またはテレフタル酸並びにエチレングリコール以外のジカルボン酸、ジオールおよびヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体からなる2官能化合物の少なくとも1種を該2官能化合物から誘導される2官能化合物単位(c)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.5〜7モル%になるような量で含んでいるものを用いることにより;
それぞれ目的とする共重合ポリエステルを短時間で生産性よく製造することができる。
【0061】
そして、上記した共重合ポリエステルの製造方法では、多官能化合物、単官能化合物、2官能化合物として、共重合ポリエステル中に多官能化合物単位(a)、単官能化合物単位(b)、2官能化合物単位(c)を導入するための化合物として、本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルに関して上記で例示したそれぞれの化合物を使用することができる。
【0062】
上記した方法で共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(A)〜(D)]を製造するに当たっては、(全ジオール成分):(全ジカルボン酸成分)のモル比が1.1:1〜1.5:1になるようにするのが好ましく、そして単官能化合物単位(b)を有しない共重合ポリエステル(A)および共重合ポリエステル(C)では、さらに(多官能化合物成分):(全ジカルボン酸成分)のモル比が0.0001:1〜0.01:1になるようにして反応原料の調製を行い、また単官能化合物単位(b)を有する共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)では、さらに(多官能化合物成分):(全ジカルボン酸成分)のモル比が0.0001:1〜0.02:1であり且つ(単官能化合物成分):(全ジカルボン酸成分)のモル比が0.00001:1〜0.4:1になるようにして反応原料の調製を行うのが好ましい。
【0063】
上記のエステル化反応またはエステル交換反応は、通常、常圧下または絶対圧で約5kg/cm2以下の加圧下に、200〜300℃の温度で、生成する水またはアルコールを留去させながら行うとよい。そして、それに続いて、必要に応じて重縮合触媒、着色防止剤などの添加剤を添加した後、通常、5mmHg以下の減圧下に、200〜300℃の温度で、所望の粘度のポリエステルプレポリマーが得られるまで溶融重縮合を行ってポリエステルプレポリマーを形成させる。その場合に、ポリエステルプレポリマーの取り扱い性などの点から、ポリエステルプレポリマーの極限粘度は0.40〜0.75dl/gの範囲内であることが好ましい。
【0064】
上記した溶融重縮合反応において重縮合触媒を使用する場合は、ポリエステルの製造に通常用いられているものを使用することができ、例えば、酸化アンチモンなどのアンチモン化合物;酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのチタン化合物;ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテートなどの錫化合物などを挙げることができ、これらの触媒化合物は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。重縮合触媒を用いる場合は、ジカルボン酸成分の重量に基づいて0.002〜0.8重量%の範囲内の量であるのが好ましい。
【0065】
また、着色防止剤を使用する場合は、例えば、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフェートなどのリン化合物を用いることができ、これらのリン化合物は単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。上記したリン化合物からなる着色防止剤を使用する場合は、ジカルボン酸成分の重量に基づいて0.001〜0.5重量%の範囲内であるのが好ましい。
また、ポリエステルの熱分解による着色を抑制するために、ジカルボン酸成分の重量に基づいて0.001〜0.5重量%、より好ましくは0.05〜0.3重量%のコバルト化合物、例えば酢酸コバルトなどを添加するのがよい。
【0066】
更に、上記したように、ポリエステル中にジエチレングリコール単位が多く含まれるとポリエステルのガラス転移温度が低下し、それに伴って耐熱性の低下や着色などが起こり、それから得られる異形押出成形品の耐熱性、強度、色調などが不良なものとなる場合があるため、上記したエステル化反応、エステル交換反応および/または溶融重縮合反応を、ジカルボン酸成分の合計重量に対して0.001〜0.5重量%のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の有機アミンなどのジエチレングリコールの副生抑制剤の存在下に行うと、ポリエステル中におけるジエチレングリコール単位の割合を低減させることができるので好ましい。
【0067】
次いで、上記した溶融重縮合反応により得られるポリエステルプレポリマーをダイス状、円柱状などの任意の形状のチップやペレットとし、それを通常190℃以下の温度で予備乾燥した後、その極限粘度、MFRなどが所望の値になるまで固相重合を行って、目的とする共重合ポリエステルを形成させる。固相重合は、真空下、減圧下または窒素ガスなどの不活性ガス中で行うのが好ましい。また、ポリエステルプレポリマーのチップやペレット同士が膠着しないように、転動法、気体流動床法などの適当な方法でチップやペレットを動かしながら固相重合を行うのが好ましい。固相重合は通常180〜250℃の範囲内の温度で行うのが好ましく、190〜240℃の範囲内の温度で行うのがより好ましい。更に、固相重合の温度は、チップやペレット間の膠着を防止する観点から、前記した範囲内の温度であって、しかも製造を目的としているポリエステル(最終的に得られるポリエステル)の融点より15℃以上低い温度、好ましくは20℃以上低い温度とするとよい。また、固相重合の重合時間は通常約5〜40時間の範囲とするのが生産性などの観点から好ましい。
そして、上記した一連の工程を行うことによって、本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルを短時間に生産性よく製造することができる。
【0068】
本発明の異形押出成形品に用いるポリエステル、特に好ましく用い得る共重合ポリエステル(A)〜共重合ポリエステル(D)は、溶融成形性、透明性、耐熱性、力学的特性などに優れているので、異形押出成形によって各種形態の異形押出成形品を効率よく成形することができ、得られた成形品は、寸法精度、透明性、耐衝撃性やその他の機械的強度、表面状態、外観、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などの諸特性に優れている。
【0069】
本発明の異形押出成形品の製造に当たっては、熱可塑性樹脂に対して従来から知られている異形押出成形法を採用して行うことができる。例えば、上記の要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルを希望の異形断面形状のダイリップをあけたダイから溶融押出し、引き取りながら、冷却装置、サイジング装置で冷却、サイジングして所定の形状および寸法に整えながら冷却固化した後、巻取ったり、所望の長さに切断して異形押出成形品を製造することができる。
その場合に、異形押出成形装置の構造や種類などは特に制限されず、製造しようとする異形押出成形品の形状、構造、寸法などの応じて選択することができる。例えば、ダイ構造はプレートダイ、流線形ダイなどのいずれでもよく、また別の観点からいうと、製造する異形押出成形品の形状や構造に応じて、例えば厚みが一様な形状ダイ、くさび形ダイ、不等厚みの分岐あるダイ、ソリッドダイなどを使用することができる。
【0070】
また、ダイから押出された溶融押出体のサイジング方式としては、例えば多板式サイジング方式、すべりサイジング方式、加圧サイジング方式、内面サイジング方式、真空サイジング方式などを用いることができる。また、サイジングをしながら、またはサイジングの前または後に押出体の冷却を行うが、冷却は従来の異形押出成形において採用されているのと同様の方法を採用して行うことができる。そのうちでも、ダイから溶融押出しした押出体を冷却用液体媒体中に浸漬して冷却を行う(冷却用液体中に押出す)のが好ましく、特に押出体を80℃以下の温度の冷却用液体媒体中に浸漬して(押出して)ガラス転移点以下の温度に冷却するのが好ましい。その場合の冷却用液体媒体としては一般に水が好ましく用いられるが、勿論、水以外の冷却用液体媒体、例えばグリセリン、ジフェニルエーテル、シリコンオイルなどを用いることもできる。そのような冷却方式を採用することによって、異形押出成形品の結晶化度を10%以下にして、透明性および耐衝撃性に一層優れる異形押出成形品を製造することができる。一般に、冷却用液体媒体の温度が80℃よりも高いとポリエステルの結晶化度が10%を超えて、成形品の透明性や耐衝撃性が低いものとなり易い。
また、引き取り装置としては、例えば、ローラ式、ベルト式、キャタピラー式などの引き取り装置を用いることができ、切断機としては、例えば、ロータリーカッター式、ギロチンカッター式、丸鋸式、丸刃式、砥石カッター式などの切断機を用いることができる。
【0071】
上記した方法や装置を用いて異形押出成形を行うに当たっては、ポリエステルを、(ポリエステルの融点+10℃)〜(ポリエステルの融点+70℃)の範囲内の温度に溶融して異形押出成形を行うのが、成形性などの点から好ましく、(ポリエステルの融点+10℃)〜(ポリエステルの融点+40℃)の範囲内の温度で溶融押出を行うのがより好ましい。
【0072】
さらに、本発明において、“異形押出時の樹脂温度対応温度での樹脂の剪断応力”が5×106dyne/cm2以下、より好ましくは4×106dyne/cm2以下であるようにして異形押出成形を行うと、成形品における表面荒れの現象が顕著に抑制されて、透明性をはじめとして外観や触感などにおいて特に優れる異形押出成形品を得ることができる。その理由は明確ではないが、上記した剪断応力でポリエステルを異形押出成形すると、ポリエステル溶融体と押出機のダイとの間で弾性的な法線応力の著しい解放が抑制されることによるものと推定される。なお、ここでいう、“異形押出時の樹脂温度対応温度での樹脂の剪断応力”とは、キャピラリー式溶融粘度測定装置によってキャピラリーノズルを用いてストランド状に押出したときの剪断応力をいい、その詳細は下記の実施例の項に記載するとおりである。
【0073】
本発明の異形押出成形品には、その押出方向と直角の方向の断面形状(横断面形状)が方形、円形、円環形、楕円形および楕円環形以外である異形の横断面形状を有する押出成形品のいずれも包含され、特に制限されず、その寸法なども何ら制限されないことは上述したとおりであり、限定されるものではないが、本発明の異形押出成形品の例としては、例えば、窓枠用、配線ダクト用、雨樋用、カートリッジ用など異形押出成形品を挙げることができる。
【0074】
更に、本発明の異形押出成形品は、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステル単独で形成されていても、他のプラスチック、金属、繊維、布帛などの他の材料との積層体の形態になっていても、またそれ以外の複合形態を有する異形押出成形品であってもよい。何ら制限されるものではないが、本発明の異形押出成形品が積層体である場合は、例えば、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルと、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの他のプラスチックとの多層異形押出成形品であることができ、より具体的には、例えばPET層/該ポリエステル層/PET層からなる三層異形押出成形品、PET層/該ポリエステル層/PET層/該ポリエステル層/PET層からなる五層異形押出成形品などを挙げることができる。
【0075】
また、必要に応じて、本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルは、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂、ポリエステル系樹脂に対して従来から使用されている各種の添加剤、例えば染料や顔料などの着色剤、紫外線吸収剤などの安定剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、潤滑剤、可塑剤、無機充填剤などを含有していてもよい。
【0076】
【実施例】
以下に本発明を実施例などによって具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、ポリエステル(共重合ポリエステルまたは単独重合ポリエステル)の各構造単位の含有率およびポリエステルの物性の測定、並びにポリエステルの異形押出成形性(異形押出成形品の形状保持性および厚み保持性)、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および耐衝撃性の評価は次のようにして行った。
【0077】
(1)ポリエステルにおける各構造単位の含有率:
重水素トリフルオロ酢酸を溶媒としたポリエステルの1H−NMRスペクトル(日本電子社製「JNM−GX−500型」により測定)により確認した。
【0078】
(2)ポリエステルの極限粘度:
ポリエステルにおけるジカルボン酸単位がテレフタル酸単位から主としてなる場合はフェノールとテトラクロルエタンの等重量混合溶媒中、30℃で、ウベローデ型粘度計(林製作所製「HRK−3型」)を用い、またポリエステルにおけるジカルボン酸単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位から主としてなる場合はp−クロロフェノールとテトラクロルエタンの等重量混合溶媒中、30℃で、ウベローデ型粘度計(林製作所製「HRK−3型」)を用いて測定した。
【0079】
(3)プレポリマーのメルトフローレイト(MFR):
メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)を用いて測定した。具体的には、プレポリマーのチップを、内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、プレポリマーの溶融温度(ポリエステルにおけるジカルボン酸単位がテレフタル酸単位から主としてなる場合は270℃の温度、そしてジカルボン酸単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位から主としてなる場合は290℃の温度)で溶融した後、溶融したプレポリマーに対して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーによって均等に荷重をかけ、シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより押出されたプレポリマーの流出速度(g/10分)を測定し、これをメルトフローレイト(MFR)とした。
【0080】
(4)ポリエステルの溶融粘度(η1およびη2):
メカニカルスペクトロメーター(レオメトリックス社製「RMS−800」)により、パラレルプレートを用いて、ポリエステルの溶融温度(ポリエステルにおけるジカルボン酸単位がテレフタル酸単位から主としてなる場合は270℃の温度、そしてジカルボン酸単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位から主としてなる場合は290℃の温度)における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)(ポイズ)、およびポリエステルの前記溶融温度における剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)(ポイズ)をそれぞれ動的に測定した。
【0081】
(5)ポリエステルのガラス転移温度(Tg)および融点(Tm):
JIS K7121に準じて、示差熱分析法(DSC)により、熱分析システム「メトラーTA3000」(メトラー社製)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0082】
(6)ポリエステルの冷結晶化温度(Tcc)および冷結晶化熱量(△Hcc):
JIS K7121に準じて、示差熱分析法(DSC)により、熱分析システム「メトラーTA3000」(メトラー社製)を用いて、Tm+40℃で5分間保持後、降温速度5℃/分の条件で測定した。
【0083】
(7)ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(CEG):
0.2gのポリエステルを215℃に加熱したベンジルアルコール10mlに溶解し、溶解後にクロロホルム10mlを加え、ベンジルアルコール性カセイソーダを用いて滴定した。
【0084】
(8)異形押出成形性:
(8-1)異形押出成形品の製造:
図1に示す形状および寸法のダイリップを有するプレートダイを取り付けた異形押出機(Leonard社製「M50/28D型」)を用いて、下記の表12に示す押出機設定温度および樹脂温度(ダイから押出される直前の樹脂温度)を採用して、押出速度50kg/時、温度20℃の水中に異形押出しし(成形樹脂温度での剪断速度84/sec)、ダイと同じ形状を有する多板式サイジング装置(但しサイジング装置の寸法は樹脂の収縮分を見込んだ寸法としてある)内を通過させた後、ローラ式引き取り装置(引き取り速度1.7m/分)で引き取り、ギロチンカッター式切断機で50cmの長さに切断して、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造した。
(8-2)異形押出成形品の中央リブの形状保持性:
上記(8-1)で得られた図2に示す異形押出成形品の中央リブ1の変形状態(すなわちドローダウン状態)を調べて、下記の表1に示す評価基準にしたがって評価した。
【0085】
【表1】
【0086】
(8-3)異形押出成形品の中央リブの厚み保持性:
上記(8-1)で得られた図2に示す異形押出成形品の中央リブ1の厚みを、その中間点a、並びに中間点aの両側の中央リブ1を4等分した点bおよび点cの3カ所で測定して、下記の表2に示す評価基準にしたがって評価した。
【0087】
【表2】
【0088】
(9)異形押出時の樹脂温度対応温度での樹脂の剪断応力:
上記(8-1)における異形押出成形時の成形樹脂温度での剪断速度(84/sec)における剪断応力(σ)(dyne/cm2)を、キャピラリー式溶融粘度測定装置(東洋精機社製「キャピログラフ」)により、キャピラリーノズル(直径2mm×長さ10mm)を用いてストランド状に押出して、測定した。
【0089】
(10)異形押出成形品の結晶化度(χc)
上記(8-1)で得られた図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品の中央リブの中央部分(点aを包囲する部分)から一辺が5mmの試験片を採取し、25℃の温度での密度(d)を測定し、完全非晶のポリエチレンテレフタレートおよび完全非晶のポリエチレン−2,6−ナフタレートの密度(da)をそれぞれ1.335および1.325として、また完全結晶のポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレン−2,6−ナフタレートの密度(dc)をそれぞれ1.501および1.462として、下記の数式▲3▼から異形押出成形品の結晶化度(χc)を求めた。
【0090】
【数6】
結晶化度χc(%)={dc×(d−da)}/{d×(dc−da)} ▲3▼
【0091】
(11)異形押出成形品の透明性:
ASTM D1003に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(日本精密光学株式会社製「SEP−HS・30D−R型」)を用いて、上記(8-1)で得られた図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品の中央リブ1の中央部分(点a)におけるヘイズ値(曇価)を測定した。
その結果得られたヘイズ値により、下記の表3に示す評価基準にしたがって、異形押出成形品の透明性の評価を行った。
下記の表3に示すように、ヘイズ値が8を超えると、球晶生成による白化によりおよび/または表面荒れやゲル状ブツによる光散乱により、透明性が不良となる。ヘイズ値が5以下であるのが透明性の点から好ましく、4以下であるのがより好ましい。
【0092】
【表3】
【0093】
(12)異形押出成形品のブツ発生率:
上記の(8-1)で得られた図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品の中央リブ1の中央部分から1cm×50cmの試験片を採取し、その中に含まれるブツの数量(個数)を目視で数えて、その発生状況を下記の表4に示す評価基準にしたがって評価して異形押出成形品のブツ発生率とした。
【0094】
【表4】
【0095】
(13)異形押出成形品の衝撃強度:
上記(8-1)で得られた図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を、その中央リブ1が床面に対して平行になるようにして床面に置き(図2に示すような置き方)、重さが100gの円筒状の重り(直径2.5cm、高さ2.5cm)を、最初は50cmの高さ(異形押出成形品の上端面と重りの下端面との間の距離)から、異形押出成形品上に垂直下方へと自然落下させた。それによって異形押出成形品に亀裂が生じない場合は、重りの落下高さを10cmずつ増して、同様の操作を順次繰り返して、異形押出成形品に亀裂が生じたときの重りの高さを求めた。前記の試験を10個の異形押出成形品に対して行って、その平均値(平均高さ)を採って破壊高さとした。そして、下記の表5に示した評価基準にしたがって異形押出成形品の衝撃強度の評価を行った。
【0096】
【表5】
【0097】
《実施例 1》
(1) テレフタル酸100.00重量部、エチレングリコール44.82重量部、および無水トリメリット酸0.185重量部および1,4−シクロヘキサンジメタノール6.25重量部とからなるスラリーをつくり、これに二酸化ゲルマニウム0.020重量部、亜リン酸0.015重量部、酢酸コバルト0.015重量部およびテトラエチルアンモニウムヒドロキシド0.015重量部を加えた。このスラリーを加圧下(絶対圧2.5Kg/cm2)で250℃の温度に加熱して、エステル化率が95%になるまでエステル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、1mmHgの減圧下に、270℃の温度で前記の低重合体を溶融重縮合させて、極限粘度0.70dl/g、MFR36g/10分のポリエステルプレポリマーを生成させ、これをノズルからストランド状に押出して切断し、円柱状チップ(直径約2.5mm、長さ約3.5mm)にした。
(2) 次いで、上記で得られたポリエステルプレポリマーのチップを窒素雰囲気中で160℃で5時間予備乾燥した後、転動式真空固相重合装置を用い、0.1mmHgの減圧下に、200℃で固相重合を29時間行って、高分子量化されたポリエステルを得た。
【0098】
(3) 上記(2)で得られたポリエステルの各構造単位の含有率を上記した方法で測定したところ、ポリエステルにおけるテレフタル酸単位、エチレングリコール単位、トリメリット酸単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位およびジエチレングリコール単位の含有率は下記の表7に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)で得られたポリエステルの物性を上記した方法で測定したところ、下記の表7に示すように、極限粘度は1.18dl/g、270℃の溶融温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)は4.21×105ポイズ、剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)は1.82×104ポイズであり、したがって(1/3)log10(η2/η1)の値は−0.45であった。
また、上記(2)で得られたポリエステルのガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、冷結晶化温度(Tcc)、冷結晶化熱量(△Hcc)および末端カルボキシル基濃度(CEG)を上記した方法で測定したところ、下記の表7に示すように、それぞれ79℃、232℃、132℃、12J/gおよび15μ当量/gであった。
【0099】
(5) 上記(2)で得られたポリエステルを用いて、上記した異形押出成形性の項に説明した方法により下記の表12に示す成形条件で異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0100】
《実施例2〜4》
テレフタル酸およびエチレングリコールを下記の表7に示す割合で使用し、これに多官能化合物単位(a)用の多官能化合物として無水トリメリット酸、トリメチロールプロパンまたは2−[3−(2−ヒドロキシエチル)−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンを用い、また単官能化合物単位(b)用の単官能化合物として2−ナフトエ酸またはステアリン酸を表7に示した割合で用いるか或いは用いずに、そして2官能化合物単位(c)用の2官能化合物として1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸または2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンを表7に示した割合で用いて、実施例1と同様にしてエステル化反応および溶融重縮合反応を行ってポリエステルプレポリマーチップを製造した後、下記の表7に示す温度および時間で固相重合を行って、ポリエステルをそれぞれ製造した。
得られたポリエステルにおける各構造単位の含有量、およびポリエステルの物性を実施例1と同様にして調べたところ下記の表7に示すとおりであった。
また、この実施例2〜4でそれぞれ得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0101】
《実施例5〜7》
テレフタル酸およびエチレングリコールを下記の表8に示す割合で使用し、これに多官能化合物単位(a)用の多官能化合物としてトリメチロールプロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−2−(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンまたは無水トリメリット酸を表8に示した割合で用い、また単官能化合物単位(b)用の単官能化合物として安息香酸またはステアリルアルコールを表8に示した割合で用いるか或いは用いずに、そして2官能化合物単位(c)用の2官能化合物として2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンまたはビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを表8に示した割合で用いて、実施例1と同様にしてエステル化反応および溶融重縮合反応を行ってポリエステルプレポリマーチップを製造した後、下記の表8に示す温度および時間で固相重合を行って、ポリエステルをそれぞれ製造した。
得られたポリエステルにおける各構造単位の含有量、およびポリエステルの物性を実施例1と同様にして調べたところ下記の表8に示すとおりであった。
また、この実施例5〜7でそれぞれ得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0102】
《実施例 8》
(1) 2,6−ナフタレンジカルボン酸100.00重量部、エチレングリコール34.46重量部およびトリメチロールプロパン0.062重量部からなるスラリーをつくり、これに二酸化ゲルマニウム0.020重量部、亜リン酸0.015重量部、酢酸コバルト0.015重量部およびテトラエチルアンモニウムヒドロキシド0.015重量部を加えた。このスラリーを加圧下(絶対圧3.5Kg/cm2)で270℃の温度に加熱して、エステル化率が95%になるまでエステル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、1mmHgの減圧下に、290℃の温度で前記の低重合体を溶融重縮合させて、極限粘度0.68dl/g、MFR29g/10分のポリエステルプレポリマーを生成させ、これをノズルからストランド状に押出して切断し、円柱状チップ(直径約2.5mm、長さ約3.5mm)にした。
(2) 次いで、上記で得られたポリエステルプレポリマーのチップを窒素雰囲気中で160℃で5時間予備乾燥した後、転動式真空固相重合装置を用い、0.1mmHgの減圧下に、230℃で固相重合を20時間行って、高分子量化されたポリエステルを得た。
【0103】
(3) 上記(2)で得られたポリエステルの各構造単位の含有率を上記した方法で測定したところ、ポリエステルにおける2,6−ナフタレンジカルボン酸単位、エチレングリコール単位、トリメチロールプロパン単位およびジエチレングリコール単位の含有率は下記の表9に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)で得られたポリエステルの物性を上記した方法で測定したところ、下記の表9に示すように、極限粘度は1.18dl/g、290℃の温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)は2.68×105ポイズ、剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)は1.85×104ポイズであり、したがって(1/3)log10(η2/η1)の値は−0.39であった。
また、上記(2)で得られたポリエステルのガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、冷結晶化温度(Tcc)、冷結晶化熱量(△Hcc)および末端カルボキシル基濃度(CEG)を上記した方法で測定したところ、下記の表9に示すように、それぞれ122℃、270℃、136℃、12J/gおよび12μ当量/gであった。
【0104】
(5) 上記(2)で得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0105】
《実施例9〜10》
2,6−ナフタレンジカルボン酸およびエチレングリコールを下記の表9に示す割合で使用し、これに多官能化合物単位(a)用の多官能化合物としてトリメチロールプロパンまたは無水トリメリット酸を用い、また単官能化合物単位(b)用の単官能化合物として安息香酸を表9に示した割合で用いるか或いは用いずに、そして2官能化合物単位(c)用の2官能化合物として1,4−シクロヘキサンジメタノールまたは2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンを表9に示した割合で用いて、実施例8と同様にしてエステル化反応および溶融重縮合反応を行ってポリエステルプレポリマーチップを製造した後、下記の表9に示す温度および時間で固相重合を行って、ポリエステルをそれぞれ製造した。
得られたポリエステルにおける各構造単位の含有量、およびポリエステルの物性を実施例1と同様にして調べたところ下記の表9に示すとおりであった。
また、この実施例9〜10でそれぞれ得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0106】
《比較例1〜4》
テレフタル酸およびエチレングリコールを下記の表10に示す割合で使用し、これに多官能化合物単位(a)用の多官能化合物として無水トリメリット酸を下記の表10に示した割合で用いるか或いは用いずに、そして2官能化合物単位(c)用の2官能化合物として1,4−シクロヘキサンジメタノールまたは2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンを表10に示した割合で用いるか或いは用いずに、実施例1と同様にしてエステル化反応および溶融重縮合反応を行ってポリエステルプレポリマーチップを製造した後、下記の表10に示す温度および時間で固相重合を行って、ポリエステルをそれぞれ製造した。
得られたポリエステルにおける各構造単位の含有量、およびポリエステルの物性を実施例1と同様にして調べたところ下記の表10に示すとおりであった。
また、この比較例1〜4でそれぞれ得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0107】
《比較例5〜6》
2,6−ナフタレンジカルボン酸およびエチレングリコールを下記の表11に示す割合で使用し、これに多官能化合物単位(a)用の多官能化合物として無水トリメリット酸を下記の表11に示した割合で用いるか或いは用いずに、実施例8と同様にしてエステル化反応および溶融重縮合反応を行ってポリエステルプレポリマーチップを製造した後、下記の表11に示す温度および時間で固相重合を行って、ポリエステルをそれぞれ製造した。
得られたポリエステルにおける各構造単位の含有量、およびポリエステルの物性を実施例1と同様にして調べたところ下記の表11に示すとおりであった。
また、この比較例5〜6でそれぞれ得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0108】
下記の表7〜表11において用いている略号の内容は、下記の表6に示すとおりである。
【0109】
【表6】
【0110】
【表7】
【0111】
【表8】
【0112】
【表9】
【0113】
【表10】
【0114】
【表11】
【0115】
【表12】
【0116】
上記の表7〜表9および表12の結果から、テレフタル酸単位および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであるという上記の要件(i)を満たし、さらに250〜320℃の範囲の溶融状態にある任意の温度において、剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜5×106ポイズであり且つ剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が5×103〜5×105ポイズであるという上記の要件(ii)、並びに溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が上記の数式▲1▼を満足するという上記の要件(iii)を満たすポリエステルを用いて異形押出成形品を製造している実施例1〜7および実施例8〜10の場合には、異形押出成形品の中央リブのドローダウンによる変形が極めて小さく、しかも中央リブの厚みがダイリップの厚みに極めて近い寸法であり、その寸法精度が極めて高いことがわかる。さらに、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルを用いて得られた実施例1〜7および実施例8〜10の異形押出成形品は、結晶化度が極めて小さく且つヘイズ値も小さくて透明性に優れており、ブツの発生が少なく外観的にも優れており、しかも耐衝撃性にも優れていることがわかる。
【0117】
それに対して、テレフタル酸単位および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであるという要件(i)は満たしているものの、250〜320℃の範囲の溶融状態にある任意の温度において、剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜5×106ポイズの範囲から外れていて上記の要件(ii)を満たしておらず、しかも溶融粘度(η1)と溶融粘度(η2)との上記の数式▲1▼の値が−0.7〜−0.2の範囲になく上記の要件(iii)を満足しないポリエステルを用いて異形押出成形品を製造している比較例1〜6の場合には、異形押出成形品の中央リブがドローダウンによって大きく変形しており、しかも中央リブの厚みが設計どおりの厚みになっておらず、異形押出成形品の寸法精度が低いこと、その上結晶化度が大きく(比較例1および比較例4〜6)且つヘイズ値も大きく(比較例1〜6)、透明性の点で劣っていること、さらにブツの発生が多く(比較例1〜比較例6)、外観的にも不良であること、しかも耐衝撃性にも劣っている(比較例1〜6)ことがわかる。
【0118】
《参考例 1》
実施例5において、ポリエステルを図1のプレートダイから温度20℃の水中に異形押出す代わりに、ポリエステルを図1のプレートダイから温度200℃のシリコンオイル第1浴中に異形押出し、次いで温度150℃のシリコンオイル第2浴中に通して冷却し、さらに温度50℃の水第3浴中に通して冷却する方法を採用した以外は、実施例5と同様にして、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造した。そして、それにより得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法と同様にして測定または評価したところ、中央リブの形状保持性および厚み保持性の点で難点があり寸法精度があまり良好でなく、また透明性(ヘイズ値)、ブツ発生率外観、耐衝撃性などの点においても、実施例5に比べて劣っており、かかる結果から、上記の要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルを用いて異形押出成形品を製造するに当たっては、異形押出した押出体を前述のように、低い温度(好ましくは80℃以下の温度)の冷却用液体媒体中に浸漬して冷却するのが望ましいことが判明した。
【0119】
【発明の効果】
本発明の異形押出成形品は、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足する、高い溶融粘度を有し、しかも高剪断速度では低粘度で且つ低剪断速度では高粘度である非ニュートン性を有するポリエステルを用いて製造されていることによって、目的とする形状および寸法を有していて寸法精度に優れ、しかも結晶化度が極めて低く、且つヘイズ値も低く、ブツの発生が極めて少なく、透明性、表面状態、外観、耐衝撃性などの特性に優れており、その上機械的特性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、ガスバリヤー性などの特性においても優れている。
そのため、本発明の異形押出成形品は、前記した諸特性を活かして広範な用途の製品、例えば、窓枠用、配線ダクト用、雨樋用、カートリッジ用などとして有効に使用することができる。
さらに、本発明では、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルを用いて溶融異形押出成形によって異形押出成形品を製造するに当たって、異形押出時の樹脂温度対応温度での樹脂の剪断応力を5×106dyne/cm2以下にすることにより、またダイより溶融押出した異形押出体を80℃以下の温度の冷却用液体媒体中に浸漬して冷却することにより、寸法精度、透明性、表面状態、外観、耐衝撃性などの特性に一層優れる異形押出成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例および比較例で用いた異形押出成形装置のダイにおけるダイリップの形状を示す図である。
【図2】本発明の実施例および比較例において、図1のダイを有する異形押出成形装置を用いて得られた異形押出成形品の横断面形状を示す図である。
【符号の説明】
1 異形押出成形品の中央リブ
【表8】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルよりなる異形押出成形品およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、高い溶融粘度を有し、しかも高剪断速度では低粘度で且つ低剪断速度では高粘度である非ニュートン性を有するポリエステルを用いて形成された、寸法精度、透明性、耐衝撃性、外観、表面状態などに優れ、しかも機械的特性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、ガスバリヤー性、安全性などの特性においても優れる異形押出成形品およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステルは、透明性、力学的特性、耐薬品性、熱安定性、ガスバリヤー性などの諸特性に優れ、しかも成形品にした際にも残留モノマーや有害添加剤の心配が少なく、衛生性および安全性に優れていることから、従来汎用されてきた塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂に代わるものとして、中空容器などの包装分野で近年近年広く使用されるようになっている。
【0003】
また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートの上記した諸特性を活かして、これらのポリエステルを、押出ブロー成形などによって製造されることの多い上記した中空容器とは別に、異形押出成形品の製造に用いることが試みられている。しかし、従来汎用されているポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートは一般に溶融粘度が低く、そのため異形押出成形に行いると、押出後のサイジング時に変形が生じ易く、複雑なダイの形状に沿って良好な寸法精度で異形押出成形品を製造することができないという欠点がある。
【0004】
そのため、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる異形押出成形品は従来殆ど製造されておらず、異形押出成形品の製造に当たっては、高い溶融粘度を有していてダイの形状どおりにサイジングが可能な塩化ビニル樹脂やポリオレフィンが主に用いられている。
しかしながら、塩化ビニル樹脂の異形押出成形品は、可塑剤や金属系安定剤などの有害添加物を含有しているため、その溶出による衛生面や安全面での問題があり、しかも使用済みの成形品を焼却すると有害ガスを発生するという欠点がある。また、ポリエチレンなどのポリオレフィン製の異形押出成形品では、結晶に由来する白濁が生じ易く、透明性や外観が不良になり易いという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、溶融粘度が低くて異形押出成形が困難であるという、ポリエステルにおける上記した問題点を解決して、ダイ形状に沿った高い寸法精度を有し、しかも透明性、耐衝撃性、外観、表面状態などの特性に優れ、しかもポリエステル自体が本来備えている良好な機械的特性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、ガスバリヤー性、安全性などの諸特性をも有している、商品価値の高いポリエステル製の異形押出成形品を提供することである。
そして、本発明の目的は、ポリエステルを用いて上記した優れた諸特性を有する異形押出成形品を製造する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らが検討を重ねた結果、テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方からなるジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであって、特定の溶融粘度挙動を示すポリエステルを用いて異形押出成形品を製造すると、ポリエステル自体が本来備えている優れた諸特性と共に、ダイ形状に沿った高い寸法精度を有し、しかも透明性、耐衝撃性、表面状態および外観などの特性にも優れる、高品質の異形押出成形品が得られることを見出して本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリエステルよりなる異形押出成形品であって、下記の要件(i)〜(iii)を満足するポリエステル;
(i) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方からなるジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルである;
(ii) 250〜320℃の範囲の溶融状態にある任意の温度において、剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜5×106ポイズであり、且つ剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が5×103〜5×105ポイズである;および
(iii) 前記の溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が下記の数式▲1▼を満足する;
【0008】
【数3】
−0.7≦(1/3)log10(η2/η1)≦−0.2 ▲1▼
を用いて形成したことを特徴とする異形押出成形品である。
【0009】
そして、本発明は、上記した要件(i)〜(iii)を満足するポリエステルを用いて異形押出成形を行うことを特徴とする異形押出成形品の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
まず、本発明でいう「異形押出成形品」には、溶融押出成形によって製造される成形品であって、その押出方向と直角の方向の断面形状(横断面形状)が、方形、円形、円環形、楕円形および楕円環形以外の異形形状を有している成形品のいずれをも包含する。但し、溶融押出を伴うものであっても、ブロー成形を伴ういわゆる押出ブロー成形品は本発明の異形押出成形品には包含されない。本発明の異形押出成形品は、異形の横断面形状を有する押出成形品である限りは、その形状、構造、成形品全体の大きさ、各部の寸法などは何ら制限されず、例えば、中実の異形押出成形品であっても、中空の異形押出成形品であっても、一部が開放した構造の異形押出成形品であっても、その他の形状および構造の異形押出成形品であってもよい。
また、本発明の異形押出成形品の大きさも何ら制限されず、例えば、大型のもの、中型のもの、小型のもの、微小サイズのもののいずれであってもよい。そのうちでも、本発明は、窓枠用、配線ダクト用、雨樋用、カートリッジ用などに適した形状や大きさの異形押出成形品においてより良好な効果を発揮することができる。
【0011】
本発明では、異形押出成形品に用いるポリエステルが、まず、テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方からなるジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであるという上記の要件(i)を有していることが必要である。すなわち、本発明では、異形押出成形品を構成するポリエステルが、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるか、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるか、またはテレフタル酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位から主としてなることが必要である。
【0012】
本発明の異形押出成形品に用いる上記したポリエステルは、一般に、テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方からなるジカルボン酸単位(両ジカルボン酸単位を有する場合はその合計単位)とエチレングリコール単位との合計割合(モル%)が、ポリエステルを構成する全構造単位の合計モル数に対して、約70モル%以上であるのが好ましく、約90モル%以上であるのがより好ましい。ポリエステルにおけるテレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方とエチレングリコール単位の合計割合が70モル%未満であると、ポリエステルの耐薬品性、ガスバリヤー性、耐熱性などの特性が低下するので好ましくない。
また、本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルでは、そのジカルボン酸単位が、テレフタル酸単位から主としてなり2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を少割合で有していても、または2,6−ナフタレンジカルボン酸単位から主としてなりテレフタル酸単位を少割合で有していてもよい。
【0013】
さらに、本発明では、異形押出成形品に用いるポリエステルが上記の要件(ii)、すなわち、「250〜320℃の範囲の溶融状態にある任意の温度において、剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜5×106ポイズであり、且つ剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が5×103〜5×105ポイズである」という要件を満足するものであることが必要である。ここで、この要件(ii)は、250〜320℃の範囲内の温度で且つポリエステルが溶融している温度のいずれかの温度で測定した場合において、溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)がそれぞれ5×104〜5×106ポイズの範囲、および5×103〜5×105の範囲の値にあることを意味する。
【0014】
ポリエステルにおける前記の溶融粘度(η1)が5×104ポイズ未満であると、ダイから押し出された溶融体の変形が著しくなってダイの形状に沿った異形押出成形品が得られなくなる。一方ポリエステルにおける前記の溶融粘度(η1)が5×106ポイズを超えると、ダイスウェルが大きくなって成形品の厚み斑が著しくなり、異形押出成形品の断面形状の精度が低下する。しかも、ダイ内部における樹脂圧力が高くなるために押出斑を生じ成形品の形状が不良となる。
また、ポリエステルにおける前記の溶融粘度(η2)が5×103ポイズ未満であると効率よく異形押出を行うことが困難となって生産性が低下する。一方、ポリエステルにおける前記の溶融粘度(η2)が5×105ポイズを超えると、ポリエステルの熱分解や押出時の押出斑の発生、ウエルドラインの発生が著しくなり、異形押出成形品の色調、形状、強度などが不良となる。
【0015】
さらに、本発明では、異形押出成形品に用いるポリエステルが上記の要件(iii)を満足するものであること、すなわち上記した溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が、下記の数式▲1▼;
【0016】
【数4】
−0.7≦(1/3)log10(η2/η1)≦−0.2 ▲1▼
を満足するものであることが必要である。上記の数式▲1▼を満足するポリエステルは、適度な非ニュートン性を発揮して、高剪断速度において適度に低い溶融粘度を示すと共に低剪断速度においては適度に高い溶融粘度を示すことから、異形押出成形時に樹脂の押出が良好に行われて、ダイ形状に沿った寸法精度の高い異形押出成形品が得られる。
【0017】
本発明の異形押出成形品の寸法精度および形状をより良好なものになし得るという点から、上記した数式▲1▼における、(1/3)log10(η2/η1)の値が、−0.60〜−0.25の範囲内であるのが一層好ましい。また、上記の数式▲1▼において、(1/3)log10(η2/η1)は、溶融粘度を縦軸とし、剪断速度を横軸とする両自然対数グラフにおける溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)の2点を結ぶ直線の傾きとして求められる。
なお、本願明細書でいう溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)の値は、下記の実施例の項に記載した方法で測定したときの値をいう。
【0018】
本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルは、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルである限りは、いずれのポリエステルであってもよい。そのうちでも、本発明の異形押出成形品は、上記した要件(i)〜要件(iii)を備える下記の(A)〜(D)に例示するポリエステルから好ましく製造される。
【0019】
[本発明の異形押出成形品に用いる得る好ましいポリエステル]
(A) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであって、且つ
○ カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(a)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜0.5モル%の割合で有しているポリエステル[以下これを「共重合ポリエステル(A)」ということがある]。
【0020】
(B) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであって、且つ
○ カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(a)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜1モル%の割合で有し;そして
○ モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体からなる単官能化合物の少なくとも1種から誘導される単官能化合物単位(b)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.0005〜20モル%の割合で有している;
ポリエステル[以下これを「共重合ポリエステル(B)」ということがある]。
【0021】
(C) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであって、且つ
○ カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(a)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜0.5モル%の割合で有し;
○ エチレンテレフタレート単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位以外のジカルボン酸単位、ジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2官能化合物単位(c)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.5〜7モル%の割合で有している;
ポリエステル[以下これを「共重合ポリエステル(C)」ということがある]。
【0022】
(D) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであって、且つ
○ カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(a)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜1モル%の割合で有し;
○ モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体から選ばれる単官能化合物の少なくとも1種から誘導される単官能化合物単位(b)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.0005〜20モル%の割合で有し;そして
○ テレフタル酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位以外のジカルボン酸単位、ジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2官能化合物単位(c)を、ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.5〜7モル%の割合で有している;
ポリエステル[以下これを「共重合ポリエステル(D)」ということがある]。
【0023】
以下に、本発明において好ましく用いられる上記した共重合ポリエステル(A)〜共重合ポリエステル(D)[以下共重合ポリエステル(A)〜共重合ポリエステル(D)を総称して単に「共重合ポリエステル」ということがある]についてさらに詳細に説明する。
上記から明らかなように、共重合ポリエステル(A)〜共重合ポリエステル(D)において、多官能化合物単位(a)の割合は、それらの共重合ポリエステルが単官能化合物単位(b)を有していない場合[共重合ポリエステル(A)および共重合ポリエステル(C)の場合]は、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜0.5モル%であるようにするのがよく、共重合ポリエステルが単官能化合物単位(b)を有している場合[共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)の場合]は、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜1モル%であるようにするのよい。
【0024】
共重合ポリエステルにおいて、多官能化合物単位(a)の割合が、0.005モル%未満であると、溶融粘度が充分に高くならず、適正な溶融粘性、すなわち非ニュートン性が生じず、溶融押出体がダイ形状を維持できず、寸法精度に優れる異形押出成形品が得られにくくなる。特に、中空の異形押出成形品を製造する場合には、溶融押出体の閉塞やつぶれが生じ易くなって、所望の形状および寸法の異形押出成形品が得られにくくなる。
【0025】
一方、単官能化合物単位(b)を有しない共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(A)および共重合ポリエステル(C)]において多官能化合物単位(a)の割合が0.5モル%を超えると、また単官能化合物単位(b)を有する共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)]において多官能化合物単位(a)の割合が1モル%を超えると、共重合ポリエステル中における架橋構造部分が多くなり過ぎて、低剪断速度での溶融粘度が高くなり過ぎて、ダイスウェルが大きくなって成形品の厚み斑が著しくなり、成形品の断面形状の精度が不良なものとなり易い。しかもダイ内部における樹脂圧力が高くなって、押出斑を生じて成形品の形状が不良になり易い。しかも、過架橋構造に由来するゲルが生ずるため、成形品を製造した場合にブツの発生、白化などのトラブルを生じて、透明性、外観、触感などが損なわれる。そして、ゲルを生じないように共重合ポリエステルの重合度を低下させると、分子間の絡み合いが低下して、充分な機械的強度が得られなくなる。さらに、成形品を製造する際に結晶化速度が速くなり過ぎて球晶が生成して成形品に白化を生じて透明性が低下するなどの問題を生じ易い。
【0026】
溶融粘度が充分に高くなって異形押出成形を一層良好に行うことができるという点、異形押出成形品の白化および賦形不良を円滑に防止することができるという点、しかも機械的強度に一層優れる異形押出成形品を得ることができるという点から、共重合ポリエステルにおける多官能化合物単位(a)の割合が、単官能化合物単位(b)を有しない共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(A)および共重合ポリエステル(C)]では0.01〜0.4モル%であるのが好ましく、単官能化合物単位(b)を有する共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)]では0.01〜0.5モル%であるのが好ましい。
【0027】
多官能化合物単位(a)としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基から選ばれる1種または2種以上の基を3個以上有する多官能化合物から誘導される単位であれば特に制限されず、多官能化合物単位(a)を誘導するための多官能化合物は、カルボキシル基のみを3個以上有する多官能化合物であっても、ヒドロキシル基のみを3個以上有する多官能化合物であっても、またはカルボキシル基とヒドロキシル基を合計で3個以上有する多官能化合物であってもよい。
【0028】
多官能化合物単位(a)の好ましい例としては、トリメシン酸、トリメリット酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸などの芳香族ポリカルボン酸;1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸などの脂肪族ポリカルボン酸;1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2−[3−(2−ヒドロキシエチル)−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−2−(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンなどの芳香族ポリアルコール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、1,3,5−シクロヘキサントリオールなどの脂肪族または脂環式のポリアルコール;4−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、プロトカテク酸、没食子酸、2,4−ジヒドロキシフェニル酢酸などの芳香族ポリヒドロキシカルボン酸;酒石酸、リンゴ酸などの脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸;それらのエステル形成性誘導体から誘導される多官能化合物単位を挙げることができる。上記した共重合ポリエステルは、多官能化合物単位(a)として、上記した多官能化合物単位の1種のみを有していてもまたは2種以上を有していてもよい。
【0029】
上記したうちでも、本発明の異形押出成形品に好ましい用いられる共重合ポリエステルは、多官能化合物単位(a)としてトリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールから誘導される多官能化合物単位の1種または2種以上を有しているのが、共重合ポリエステルの製造の容易性および製造コストの点から好ましく、ゲル化を抑制する観点から、トリメリット酸、トリメシン酸、2−[3−(2−ヒドロキシエチル)−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−2−(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンから誘導される多官能化合物単位であるのが特に好ましい。
【0030】
さらに、本発明の異形押出成形品に好ましく用いられる共重合ポリエステルは、上記した多官能化合物単位(a)とともに、モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体の少なくとも1種の単官能化合物から誘導される単官能化合物単位(b)を有していることが好ましい。この単官能化合物単位(b)は、共重合ポリエステルに対する末端封止化合物単位として機能し、共重合ポリエステルにおける分子鎖末端基および/または分枝鎖末端基の封止を行い、共重合ポリエステルにおける過度の架橋およびゲルの発生を防止する。
【0031】
本発明の異形押出成形品に好ましく用いられる共重合ポリエステルのうちで、上記した共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)は、単官能化合物単位(b)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.0005〜20モル%の割合で有していることが好ましい。単官能化合物単位(b)の割合が前記した0.0005モル%未満であると、過架橋状態となってゲルが生じ易くなり、成形品を製造した際に、ブツ、白化などのトラブルが発生して、外観が不良になったり、透明性が失われたりする場合がある。
一方、共重合ポリエステルにおける単官能化合物単位(b)の割合が20モル%を超えると、共重合ポリエステルを製造する際の固相重合速度が遅くなって、十分な重合度を有する共重合ポリエステルが得られにくくなり成形品の機械的強度が低くなる場合があり、しかも共重合ポリエステルの生産性が低下し易くなる。共重合ポリエステルの製造の容易性、製造コスト、共重合ポリエステルから得られる異形押出成形品の外観、透明性、機械的強度などの点から、共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)では、単官能化合物単位(b)を割合が、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.001〜15モル%であることが好ましく、さらに下記の数式▲2▼を満足する割合であるのがより好ましい。
【0032】
【数5】
{20×(p−2)×a}≧b≧{0.1×(p−2)×a} ▲2▼
[式中、aは共重合ポリエステルにおける多官能化合物単位(a)の割合(モル%)、bは共重合ポリエステルにおける単官能化合物単位(b)の割合(モル%)、そしてpは多官能化合物単位(a)を誘導する多官能化合物の平均官能基数を表す]
【0033】
上記の数式▲2▼において、多官能化合物単位(a)を誘導する多官能化合物の平均官能基数pとは、共重合ポリエステルを形成するのに用いた全多官能化合物の官能基の平均値を表し、例えば多官能化合物として3官能化合物のみを用いた場合はp=3であり、多官能化合物として3官能化合物と4官能化合物を50:50のモル比で用いた場合はp=3×0.5+4×0.5=3.5となり、多官能化合物として3官能化合物と4官能化合物を20:80のモル比で用いた場合はp=3×0.2+4×0.8=3.8となる。
したがって、限定されるものではないが、例えば、多官能化合物単位(a)が3官能化合物から誘導される3官能単位であって且つ共重合ポリエステルにおける多官能化合物単位(a)の含有割合が0.1モル%の場合には、上記の数式▲2▼において、p=3およびa=0.1(モル%)であるから、単官能化合物単位(b)の好ましい含有割合は、2(モル%)≧b≧0.01(モル%)、すなわち0.01〜2モル%となる。
【0034】
上記した単官能化合物単位(b)は、モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体の少なくとも1種から誘導される単位であればいずれでもよく特に制限されないが、単官能化合物単位(b)の好ましい例としては、安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸、o−メチル安息香酸、m−メチル安息香酸、p−メチル安息香酸、2,3−ジメチル安息香酸、2,4−ジメチル安息香酸、2,5−ジメチル安息香酸、2,6−ジメチル安息香酸、3,4−ジメチル安息香酸、3,5−ジメチル安息香酸、2,4,6−トリメチル安息香酸、2,4,6−トリメトキシ安息香酸、3,4,5−トリメトキシ安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、2−ビフェニルカルボン酸、1−ナフタレン酢酸、2−ナフタレン酢酸などの芳香族モノカルボン酸;n−オクタン酸、n−ノナン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸;前記のモノカルボン酸のエステル形成性誘導体;ベンジルアルコール、2,5−ジメチルベンジルアルコール、2−フェネチルアルコール、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトールなどの芳香族モノアルコール;ペンタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリテトラメチレングリコールモノアルキルエーテル、オレイルアルコール、シクロドデカノールなどの脂肪族または脂環式のモノアルコールなどの単官能化合物から誘導される単位を挙げることができる。共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)]は、単官能化合物単位(b)として、上記した単官能化合物単位の1種のみを有していても、または2種以上を有していてもよい。
【0035】
そのうちでも、共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)]は、単官能化合物単位(b)として、安息香酸、2,4,6−トリメトキシ安息香酸、2−ナフトエ酸、ステアリン酸およびステアリルアルコールから選ばれる単官能化合物の1種または2種以上から誘導される単位を有しているのが、共重合ポリエステルの製造の容易性および製造コストの点から好ましい。
【0036】
そして、本発明の異形押出成形品に用いる共重合ポリエステルは、テレフタル酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位、エチレングリコール単位、多官能化合物単位(a)および場合により含有する単官能化合物単位(b)と共に、ジカルボン酸単位、ジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2官能化合物単位(c)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、0.5〜7モル%の割合で有しているのが好ましい[すなわち前記した共重合ポリエステル(C)および共重合ポリエステル(D)]。共重合ポリエステル中に、2官能化合物単位(c)を0.5〜7モル%の割合で含有させておくと、冷却効率の低い厚いものの異形押出成形品を製造する場合に、共重合ポリエステルの結晶化速度が適当なものとなって、溶融成形時に球晶の生成が一層良好に抑制されて、透明性に一層優れ且つ耐衝撃性に一層優れる成形品を得ることができる。特に、共重合ポリエステル中に2官能化合物単位(c)を1〜5モル%の割合で含有させておくと、共重合ポリエステルの溶融粘度が一層適当な範囲となって異形押出成形を一層良好に行うことができ、且つ白化がなくて透明性に一層優れ、その上機械的強度にも一層優れる異形押出成形品を得ることができる。
【0037】
一方、共重合ポリエステル中に2官能化合物単位(c)を含有させる場合に、2官能化合物単位(c)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて7モル%を超えると、共重合ポリエステルの結晶性および融点が低くなり過ぎて固相重合が行えなくなったり、または固相重合が行える場合であってもその固相重合速度が極端に遅くなって重合度が充分に高くならず、それに伴って得られる共重合ポリエステルおよびその成形品の機械的強度が劣ったものとなり、しかも共重合ポリエステルの溶融時の熱安定性や得られる成形品のガスバリヤー性および耐熱性が低下するものとなるので、2官能化合物単位(c)の割合を7モル%以下にすることが必要である。
【0038】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステル中に好ましい単位として含有させることのできる2官能化合物単位(c)としては、テレフタル酸単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位以外のジカルボン酸単位、ジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位であれば、脂肪族の2官能化合物単位、脂環式の2官能化合物単位、芳香族の2官能化合物単位のうちのいずれでもよい。
その場合の、脂肪族の2官能化合物単位の例としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;10−ヒドロキシオクタデカン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオールなどの脂肪族ジオールなどから誘導される2価の構造単位を挙げることができる。脂肪族の2官能化合物単位が、ネオペンチルグリコール単位である場合は、共重合ポリエステルの製造が容易になり、しかも該共重合ポリエステルから得られる異形押出成形品の耐熱性を一層良好なものとすることができる。
【0039】
また、脂環式の2官能化合物単位の例としては、シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシメチルノルボルネンカルボン酸、ヒドロキシメチルトリシクロデカンカルボン酸などの脂環式ヒドロキシカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環式ジオールなどから誘導される2価の構造単位を挙げることができる。
脂環式の2官能化合物単位が、シクロヘキサンジメタノール単位および/またはシクロヘキサンジカルボン酸単位である場合は、共重合ポリエステルの製造が容易になり、しかも該共重合ポリエステルおよびそれから得られる異形押出成形品の機械的強度を大きなものとすることができる。
【0040】
ここで、上記におけるシクロヘキサンジメタノール単位とは、1,2−シクロヘキサンジメタノール単位、1,3−シクロヘキサンジメタノール単位および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位から選ばれる少なくとも1種の2価の単位を意味する。また、上記におけるシクロヘキサンジカルボン酸単位とは、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸単位、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸単位および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2価の単位を意味する。
上記した脂環式の2官能化合物単位のうちでも、入手の容易性、共重合ポリエステルおよびそれから得られる異形押出成形品の機械的強度が一層優れたものになるという点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位および/または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位がより好ましい。
【0041】
また、芳香族の2官能化合物単位としては、芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ヒドロキシカルボン酸単位および/または芳香族ジオール単位のいずれであってもよい。芳香族の2官能化合物単位の例としては、イソフタル酸、フタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、2,6−ナフタレンジカルボン酸以外のナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸およびそられらのエステル形成性誘導体;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシトルイル酸、ヒドロキシナフトエ酸、3−(ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体;ビスフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物などの芳香族ジオールなどから誘導される2価の単位を挙げることができる。
【0042】
また、共重合ポリエステルにおける主たるジカルボン酸単位がテレフタル酸単位の場合は、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を2官能化合物単位(c)として少量含有させてもよく、また共重合ポリエステルにおける主たるジカルボン酸単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の場合はテレフタル酸単位を2官能化合物単位(c)として少量含有させてもよい。
2官能化合物単位(c)が芳香族ジカルボン酸単位である場合は、テレフタル酸単位(主たる単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の場合)、イソフタル酸単位、フタル酸単位、4,4’−ビフェニルジカルボン酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位(主たるジカルボン酸単位がテレフタル酸単位の場合)の少なくとも1種であると、共重合ポリエステルの製造が容易であり、好ましい。
【0043】
また、2官能化合物単位(c)として、
(1) 下記の一般式(I);
【0044】
【化1】
[式中、A1およびA2はそれぞれ独立して式:−CH2CH2−または式:−CH(CH3)CH2−で示される基、B1は2価の炭化水素基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子または直接結合(−)、R1およびR2はそれぞれ不活性置換基、jおよびkはそれぞれ独立して0〜8の整数、そしてsおよびtはそれぞれ独立して0〜4の整数を表す]
で表されるジオール単位(I);および
(2) 下記の一般式(II);
【0045】
【化2】
[式中、A3およびA4はそれぞれ独立して式:−CH2CH2−または式:−CH(CH3)CH2−で示される基、R3は不活性置換基、mおよびnはそれぞれ独立して0〜8の整数、そしてuは0〜4の整数を表す]
で表されるジオール単位(II);
から選ばれる少なくとも1種の芳香族の2官能化合物単位を共重合ポリエステル中に導入すると、共重合ポリエステルおよびそれから得られる異形押出成形品の機械的強度を大きなものとすることができるので好ましい。
【0046】
上記のジオール単位(I)は、下記の一般式(III);
【0047】
【化3】
[式中、A1およびA2はそれぞれ独立して式:−CH2CH2−または式:−CH(CH3)CH2−で示される基、B1は2価の炭化水素基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子または直接結合(−)、R1およびR2はそれぞれ不活性置換基、jおよびkはそれぞれ独立して0〜8の整数、そしてsおよびtはそれぞれ独立して0〜4の整数を表す]
で表されるジオール(III)などから誘導される構造単位であり、また上記ジオール単位(II)は、下記の一般式(IV);
【0048】
【化4】
[式中、A3およびA4はそれぞれ独立して式:−CH2CH2−または式:−CH(CH3)CH2−で示される基、R3は不活性置換基、mおよびnはそれぞれ独立して0〜8の整数、そしてuは0〜4の整数を表す]
で表されるジオール(IV)などから誘導される構造単位である。
【0049】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルは、ジオール単位(I)およびジオール単位(II)の両方を有していても、または一方のみを有していてもよい。その場合に、A1、A2、A3およびA4のいずれもが、式:−CH2CH2−で示される基(エチレン基)であっても、または式:−CH(CH3)CH2−で示される基(1,2−プロピレン基)であっても、或いはA1、A2、A3およびA4の一部がエチレン基で、残りが1,2−プロピレン基であってもよい。そのうちでも、ジオール単位(I)のA1およびA2の両方、および/またはジオール単位(II)のA3およびA4の両方がエチレン基であるのが共重合ポリエステルの製造の容易性や製造コスト、異形押出成形品の色調が良好になるなどの点から好ましい。
【0050】
また、ジオール単位(I)におけるB1は、上記したように、2価の炭化水素基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子または直接結合(−)である。B1が2価の炭化水素基である場合は、炭素数1〜8のアルキレン基、アルキリデン基、または2価の芳香族基であるのが好ましく、具体的には、メチレン基、ジクロロメチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基、プロピリデン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、エチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルプロピリデン基、1,2−ジメチルエチレン基、ペンチリデン基、1−メチルブチリデン基、ペンタメチレン基、1−エチル−2−メチルエチレン基、1,3−ジメチルトリメチレン基、1−エチルプロピリデン基、トリメチルエチレン基、イソプロピルメチレン基、1−メチルブチリデン基、2,2−ジメチルプロピリデン基、ヘキサメチレン基、1−エチルブチリデン基、1,2−ジエチルエチレン基、1,3−ジメチルブチリデン基、エチルトリメチルエチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、1,1−シクロペンチリデン基、1,1−シクロヘキシリデン基、1,1−シクロヘプチリデン基、1,1−シクロオクチリデン基、ベンジリデン基、1−フェニルエチリデン基などを挙げることができる。
【0051】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルでは、共重合ポリエステル中に存在するジオール単位(I)における基B1がすべて同じ基であってもまたは異なる基であってもよい。そのうちでも、基B1がイソプロピリデン基、スルホニル基および/または1,1−シクロヘキシリデン基であるのが、共重合ポリエステルの溶融時の熱安定性になり、共重合ポリエステルを用いてなる異形押出成形品の色調が良好になる点から好ましい。
【0052】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルにおいて、ジオール単位(I)およびジオール単位(II)におけるj、k、mおよびnはそれぞれ独立して0〜8の整数である。ジオール単位(I)およびジオール単位(II)におけるj、k、mおよびnは同じ数であってもまたは異なった数であってもよい。そのうちでも、共重合ポリエステルの製造の容易性、溶融時の熱安定性および共重合ポリエステルを用いてなる異形押出成形品の色調が良好になる点から、ジオール単位(I)およびジオール単位(II)におけるj、k、mおよびnがそれぞれ独立して1または2であるの好ましく、j、k、mおよびnが1であるのがより好ましい。
【0053】
上記したように、本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルのジオール単位(I)およびジオール単位(II)において、ベンゼン核は不活性な置換基(R1、R2、R3)で置換されていてもよく、その場合の置換基R1、R2およびR3としては、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基などの低級アルキル基;塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子であるのが好ましい。また、ジオール単位(I)およびジオール単位(II)において不活性置換基の数を表すs、tおよびuはそれぞれ0〜4の整数であり、0〜2の整数であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
【0054】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルを構成するジオール単位(I)としては、上記したジオール単位であればいずれでもよいが、ジオール単位(I)の好ましい例としては、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2−{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}−2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、{4−[2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、ビス{4−[2−(ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1−{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ))エトキシ]フェニル}−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}シクロヘキサン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2,3,5,6−テトラブロモフェニル]プロパンなどから誘導されるジオール単位を挙げることができる。上記したジオール単位のうちでも、ジオール単位(I)が2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン単位またはビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン単位である場合は、共重合ポリエステルの製造が容易であり、共重合ポリエステルの溶融安定性を高くすることができ、また共重合ポリエステルを用いてなる異形押出成形品の色調を良好にすることができる。
【0055】
また、本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルを構成するジオール単位(II)としては、上記したジオール単位であればいずれでもよいが、ジオール単位(II)の好ましい例としては、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン、1,4−ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼンなどから誘導されるジオール単位を挙げることができる。そのうちでも、ジオール単位(II)が1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンである場合は、共重合ポリエステルの製造が容易になり、しかも共重合ポリエステルの溶融安定性を高くすることができ、また共重合ポリエステルを用いて製造される異形押出成形品の色調を良好にすることができる。
【0056】
本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルは、2官能化合物単位(c)として、上記した構造単位のうちの1種のみを有していても、または2種以上を有していてもよい。
【0057】
本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルの極限粘度は、0.6〜1.5dl/gの範囲内であるのが好ましく、特に得られる異形押出成形品の機械的強度、外観、成形品製造時の生産性などの点から、0.8〜1.4dl/gの範囲内であるのがより好ましい。特に、異形押出成形を行う場合に、ポリエステルの極限粘度が0.6dl/g未満のときは、異形押出成形時にダイから押し出した溶融押出体の変形が大きくなって成形品の形状が不良となり易く、さらに得られる成形品の機械的強度が低下し易い。一方、異形押出成形を行う場合に、ポリエステルの極限粘度が1.5dl/gよりも大きいときは、溶融粘度が高くなり過ぎて、成形品にウエルドラインが生じ易くなり、さらにダイスウェルが著しいため得られる成形品の形状が不良となり易く、しかも押出時にトルクが高くなるために押出量が不均一になり易いなどの成形上の問題を生じ易くなる。
【0058】
本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルは、冷結晶化温度が160℃以下であり、且つ冷結晶化における結晶化熱量が25J/g以下であることが好ましい。ポリエステルの冷結晶化温度が160℃よりも高い場合、または冷結晶化における結晶化熱量が25J/gを超える場合は、いずれも球晶の成長速度が速くなって、得られる成形品に白化を生じて透明性が劣ったものになり易い。溶融成形時に球晶の生成速度を充分に遅延させて、透明性に優れる成形品を良好な賦形性で得るためには、ポリエステルの冷結晶化温度が150℃以下であり、且つ冷結晶化における結晶化熱量が20J/g以下であるのが一層好ましい。なお、ここでいう冷結晶化温度および冷結晶化における結晶化熱量は示差熱分析法(DSC)によって測定したときの値をいい、その詳細は下記の実施例の項に記載したとおりである。
【0059】
本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルは、ポリエステルの溶融安定性、着色防止、成形品における壁面荒れの抑制の点から、そのカルボキシル基濃度が30μ当量/g以下であるのが好ましく、20μ当量/g以下であるのがより好ましい。ポリエステルにおけるカルボキシル基濃度が30μ当量/gを超える場合は、異形押出成形品の着色が著しくなる上に、分子量低下が顕著となる。
【0060】
また、本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルの製造方法は何ら制限されないが、好ましくは次のようにして製造することができる。
すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびテレフタル酸の少なくとも一方またはそれらのエステル形成性誘導体よりなるジカルボン酸成分とエチレングリコールよりなるジオール成分から主としてなる反応原料を用いてエステル化反応またはエステル交換反応させた後、それを溶融重縮合させてポリエステルプレポリマーを形成し、そのポリエステルプレポリマーを固相重合して共重合ポリエステルを製造する方法において、
(1) 共重合ポリエステル(A)の場合は、上記の反応原料として更にカルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種を、該多官能化合物から誘導される多官能化合物単位(a)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜0.5モル%になるような量で含んでいるものを用いることにより;
(2) 共重合ポリエステル(B)の場合は、上記の反応原料として、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種を該多官能化合物から誘導される多官能化合物単位(a)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜1モル%になるような量で含み;且つモノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体からなる単官能化合物の少なくとも1種を、該単官能化合物から誘導される単官能化合物単位(b)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.0005〜20モル%になるような量で含んでいるものを用いることにより;
(3) 共重合ポリエステル(C)の場合は、上記の反応原料として、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種を該多官能化合物から誘導される多官能化合物単位(a)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜0.5モル%になるような量で含み;且つ2,6−ナフタレンジカルボン酸および/またはテレフタル酸並びにエチレングリコール以外のジカルボン酸、ジオールおよびヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体からなる2官能化合物の少なくとも1種を、該2官能化合物から誘導される2官能化合物単位(c)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.5〜7モル%になるような量で含んでいるものを用いることにより;そして、
(4) 共重合ポリエステル(D)の場合は、上記の反応原料として、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種を該多官能化合物から誘導される多官能化合物単位(a)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜1モル%になるような量で含み;モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエステル形成性誘導体からなる単官能化合物の少なくとも1種を、該単官能化合物から誘導される単官能化合物単位(b)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.0005〜20モル%になるような量で含み;且つ2,6−ナフタレンジカルボン酸および/またはテレフタル酸並びにエチレングリコール以外のジカルボン酸、ジオールおよびヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体からなる2官能化合物の少なくとも1種を該2官能化合物から誘導される2官能化合物単位(c)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.5〜7モル%になるような量で含んでいるものを用いることにより;
それぞれ目的とする共重合ポリエステルを短時間で生産性よく製造することができる。
【0061】
そして、上記した共重合ポリエステルの製造方法では、多官能化合物、単官能化合物、2官能化合物として、共重合ポリエステル中に多官能化合物単位(a)、単官能化合物単位(b)、2官能化合物単位(c)を導入するための化合物として、本発明の異形押出成形品に用い得る共重合ポリエステルに関して上記で例示したそれぞれの化合物を使用することができる。
【0062】
上記した方法で共重合ポリエステル[共重合ポリエステル(A)〜(D)]を製造するに当たっては、(全ジオール成分):(全ジカルボン酸成分)のモル比が1.1:1〜1.5:1になるようにするのが好ましく、そして単官能化合物単位(b)を有しない共重合ポリエステル(A)および共重合ポリエステル(C)では、さらに(多官能化合物成分):(全ジカルボン酸成分)のモル比が0.0001:1〜0.01:1になるようにして反応原料の調製を行い、また単官能化合物単位(b)を有する共重合ポリエステル(B)および共重合ポリエステル(D)では、さらに(多官能化合物成分):(全ジカルボン酸成分)のモル比が0.0001:1〜0.02:1であり且つ(単官能化合物成分):(全ジカルボン酸成分)のモル比が0.00001:1〜0.4:1になるようにして反応原料の調製を行うのが好ましい。
【0063】
上記のエステル化反応またはエステル交換反応は、通常、常圧下または絶対圧で約5kg/cm2以下の加圧下に、200〜300℃の温度で、生成する水またはアルコールを留去させながら行うとよい。そして、それに続いて、必要に応じて重縮合触媒、着色防止剤などの添加剤を添加した後、通常、5mmHg以下の減圧下に、200〜300℃の温度で、所望の粘度のポリエステルプレポリマーが得られるまで溶融重縮合を行ってポリエステルプレポリマーを形成させる。その場合に、ポリエステルプレポリマーの取り扱い性などの点から、ポリエステルプレポリマーの極限粘度は0.40〜0.75dl/gの範囲内であることが好ましい。
【0064】
上記した溶融重縮合反応において重縮合触媒を使用する場合は、ポリエステルの製造に通常用いられているものを使用することができ、例えば、酸化アンチモンなどのアンチモン化合物;酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのチタン化合物;ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテートなどの錫化合物などを挙げることができ、これらの触媒化合物は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。重縮合触媒を用いる場合は、ジカルボン酸成分の重量に基づいて0.002〜0.8重量%の範囲内の量であるのが好ましい。
【0065】
また、着色防止剤を使用する場合は、例えば、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフェートなどのリン化合物を用いることができ、これらのリン化合物は単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。上記したリン化合物からなる着色防止剤を使用する場合は、ジカルボン酸成分の重量に基づいて0.001〜0.5重量%の範囲内であるのが好ましい。
また、ポリエステルの熱分解による着色を抑制するために、ジカルボン酸成分の重量に基づいて0.001〜0.5重量%、より好ましくは0.05〜0.3重量%のコバルト化合物、例えば酢酸コバルトなどを添加するのがよい。
【0066】
更に、上記したように、ポリエステル中にジエチレングリコール単位が多く含まれるとポリエステルのガラス転移温度が低下し、それに伴って耐熱性の低下や着色などが起こり、それから得られる異形押出成形品の耐熱性、強度、色調などが不良なものとなる場合があるため、上記したエステル化反応、エステル交換反応および/または溶融重縮合反応を、ジカルボン酸成分の合計重量に対して0.001〜0.5重量%のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の有機アミンなどのジエチレングリコールの副生抑制剤の存在下に行うと、ポリエステル中におけるジエチレングリコール単位の割合を低減させることができるので好ましい。
【0067】
次いで、上記した溶融重縮合反応により得られるポリエステルプレポリマーをダイス状、円柱状などの任意の形状のチップやペレットとし、それを通常190℃以下の温度で予備乾燥した後、その極限粘度、MFRなどが所望の値になるまで固相重合を行って、目的とする共重合ポリエステルを形成させる。固相重合は、真空下、減圧下または窒素ガスなどの不活性ガス中で行うのが好ましい。また、ポリエステルプレポリマーのチップやペレット同士が膠着しないように、転動法、気体流動床法などの適当な方法でチップやペレットを動かしながら固相重合を行うのが好ましい。固相重合は通常180〜250℃の範囲内の温度で行うのが好ましく、190〜240℃の範囲内の温度で行うのがより好ましい。更に、固相重合の温度は、チップやペレット間の膠着を防止する観点から、前記した範囲内の温度であって、しかも製造を目的としているポリエステル(最終的に得られるポリエステル)の融点より15℃以上低い温度、好ましくは20℃以上低い温度とするとよい。また、固相重合の重合時間は通常約5〜40時間の範囲とするのが生産性などの観点から好ましい。
そして、上記した一連の工程を行うことによって、本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルを短時間に生産性よく製造することができる。
【0068】
本発明の異形押出成形品に用いるポリエステル、特に好ましく用い得る共重合ポリエステル(A)〜共重合ポリエステル(D)は、溶融成形性、透明性、耐熱性、力学的特性などに優れているので、異形押出成形によって各種形態の異形押出成形品を効率よく成形することができ、得られた成形品は、寸法精度、透明性、耐衝撃性やその他の機械的強度、表面状態、外観、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などの諸特性に優れている。
【0069】
本発明の異形押出成形品の製造に当たっては、熱可塑性樹脂に対して従来から知られている異形押出成形法を採用して行うことができる。例えば、上記の要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルを希望の異形断面形状のダイリップをあけたダイから溶融押出し、引き取りながら、冷却装置、サイジング装置で冷却、サイジングして所定の形状および寸法に整えながら冷却固化した後、巻取ったり、所望の長さに切断して異形押出成形品を製造することができる。
その場合に、異形押出成形装置の構造や種類などは特に制限されず、製造しようとする異形押出成形品の形状、構造、寸法などの応じて選択することができる。例えば、ダイ構造はプレートダイ、流線形ダイなどのいずれでもよく、また別の観点からいうと、製造する異形押出成形品の形状や構造に応じて、例えば厚みが一様な形状ダイ、くさび形ダイ、不等厚みの分岐あるダイ、ソリッドダイなどを使用することができる。
【0070】
また、ダイから押出された溶融押出体のサイジング方式としては、例えば多板式サイジング方式、すべりサイジング方式、加圧サイジング方式、内面サイジング方式、真空サイジング方式などを用いることができる。また、サイジングをしながら、またはサイジングの前または後に押出体の冷却を行うが、冷却は従来の異形押出成形において採用されているのと同様の方法を採用して行うことができる。そのうちでも、ダイから溶融押出しした押出体を冷却用液体媒体中に浸漬して冷却を行う(冷却用液体中に押出す)のが好ましく、特に押出体を80℃以下の温度の冷却用液体媒体中に浸漬して(押出して)ガラス転移点以下の温度に冷却するのが好ましい。その場合の冷却用液体媒体としては一般に水が好ましく用いられるが、勿論、水以外の冷却用液体媒体、例えばグリセリン、ジフェニルエーテル、シリコンオイルなどを用いることもできる。そのような冷却方式を採用することによって、異形押出成形品の結晶化度を10%以下にして、透明性および耐衝撃性に一層優れる異形押出成形品を製造することができる。一般に、冷却用液体媒体の温度が80℃よりも高いとポリエステルの結晶化度が10%を超えて、成形品の透明性や耐衝撃性が低いものとなり易い。
また、引き取り装置としては、例えば、ローラ式、ベルト式、キャタピラー式などの引き取り装置を用いることができ、切断機としては、例えば、ロータリーカッター式、ギロチンカッター式、丸鋸式、丸刃式、砥石カッター式などの切断機を用いることができる。
【0071】
上記した方法や装置を用いて異形押出成形を行うに当たっては、ポリエステルを、(ポリエステルの融点+10℃)〜(ポリエステルの融点+70℃)の範囲内の温度に溶融して異形押出成形を行うのが、成形性などの点から好ましく、(ポリエステルの融点+10℃)〜(ポリエステルの融点+40℃)の範囲内の温度で溶融押出を行うのがより好ましい。
【0072】
さらに、本発明において、“異形押出時の樹脂温度対応温度での樹脂の剪断応力”が5×106dyne/cm2以下、より好ましくは4×106dyne/cm2以下であるようにして異形押出成形を行うと、成形品における表面荒れの現象が顕著に抑制されて、透明性をはじめとして外観や触感などにおいて特に優れる異形押出成形品を得ることができる。その理由は明確ではないが、上記した剪断応力でポリエステルを異形押出成形すると、ポリエステル溶融体と押出機のダイとの間で弾性的な法線応力の著しい解放が抑制されることによるものと推定される。なお、ここでいう、“異形押出時の樹脂温度対応温度での樹脂の剪断応力”とは、キャピラリー式溶融粘度測定装置によってキャピラリーノズルを用いてストランド状に押出したときの剪断応力をいい、その詳細は下記の実施例の項に記載するとおりである。
【0073】
本発明の異形押出成形品には、その押出方向と直角の方向の断面形状(横断面形状)が方形、円形、円環形、楕円形および楕円環形以外である異形の横断面形状を有する押出成形品のいずれも包含され、特に制限されず、その寸法なども何ら制限されないことは上述したとおりであり、限定されるものではないが、本発明の異形押出成形品の例としては、例えば、窓枠用、配線ダクト用、雨樋用、カートリッジ用など異形押出成形品を挙げることができる。
【0074】
更に、本発明の異形押出成形品は、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステル単独で形成されていても、他のプラスチック、金属、繊維、布帛などの他の材料との積層体の形態になっていても、またそれ以外の複合形態を有する異形押出成形品であってもよい。何ら制限されるものではないが、本発明の異形押出成形品が積層体である場合は、例えば、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルと、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの他のプラスチックとの多層異形押出成形品であることができ、より具体的には、例えばPET層/該ポリエステル層/PET層からなる三層異形押出成形品、PET層/該ポリエステル層/PET層/該ポリエステル層/PET層からなる五層異形押出成形品などを挙げることができる。
【0075】
また、必要に応じて、本発明の異形押出成形品に用いるポリエステルは、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂、ポリエステル系樹脂に対して従来から使用されている各種の添加剤、例えば染料や顔料などの着色剤、紫外線吸収剤などの安定剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、潤滑剤、可塑剤、無機充填剤などを含有していてもよい。
【0076】
【実施例】
以下に本発明を実施例などによって具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、ポリエステル(共重合ポリエステルまたは単独重合ポリエステル)の各構造単位の含有率およびポリエステルの物性の測定、並びにポリエステルの異形押出成形性(異形押出成形品の形状保持性および厚み保持性)、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および耐衝撃性の評価は次のようにして行った。
【0077】
(1)ポリエステルにおける各構造単位の含有率:
重水素トリフルオロ酢酸を溶媒としたポリエステルの1H−NMRスペクトル(日本電子社製「JNM−GX−500型」により測定)により確認した。
【0078】
(2)ポリエステルの極限粘度:
ポリエステルにおけるジカルボン酸単位がテレフタル酸単位から主としてなる場合はフェノールとテトラクロルエタンの等重量混合溶媒中、30℃で、ウベローデ型粘度計(林製作所製「HRK−3型」)を用い、またポリエステルにおけるジカルボン酸単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位から主としてなる場合はp−クロロフェノールとテトラクロルエタンの等重量混合溶媒中、30℃で、ウベローデ型粘度計(林製作所製「HRK−3型」)を用いて測定した。
【0079】
(3)プレポリマーのメルトフローレイト(MFR):
メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)を用いて測定した。具体的には、プレポリマーのチップを、内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、プレポリマーの溶融温度(ポリエステルにおけるジカルボン酸単位がテレフタル酸単位から主としてなる場合は270℃の温度、そしてジカルボン酸単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位から主としてなる場合は290℃の温度)で溶融した後、溶融したプレポリマーに対して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーによって均等に荷重をかけ、シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより押出されたプレポリマーの流出速度(g/10分)を測定し、これをメルトフローレイト(MFR)とした。
【0080】
(4)ポリエステルの溶融粘度(η1およびη2):
メカニカルスペクトロメーター(レオメトリックス社製「RMS−800」)により、パラレルプレートを用いて、ポリエステルの溶融温度(ポリエステルにおけるジカルボン酸単位がテレフタル酸単位から主としてなる場合は270℃の温度、そしてジカルボン酸単位が2,6−ナフタレンジカルボン酸単位から主としてなる場合は290℃の温度)における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)(ポイズ)、およびポリエステルの前記溶融温度における剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)(ポイズ)をそれぞれ動的に測定した。
【0081】
(5)ポリエステルのガラス転移温度(Tg)および融点(Tm):
JIS K7121に準じて、示差熱分析法(DSC)により、熱分析システム「メトラーTA3000」(メトラー社製)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0082】
(6)ポリエステルの冷結晶化温度(Tcc)および冷結晶化熱量(△Hcc):
JIS K7121に準じて、示差熱分析法(DSC)により、熱分析システム「メトラーTA3000」(メトラー社製)を用いて、Tm+40℃で5分間保持後、降温速度5℃/分の条件で測定した。
【0083】
(7)ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(CEG):
0.2gのポリエステルを215℃に加熱したベンジルアルコール10mlに溶解し、溶解後にクロロホルム10mlを加え、ベンジルアルコール性カセイソーダを用いて滴定した。
【0084】
(8)異形押出成形性:
(8-1)異形押出成形品の製造:
図1に示す形状および寸法のダイリップを有するプレートダイを取り付けた異形押出機(Leonard社製「M50/28D型」)を用いて、下記の表12に示す押出機設定温度および樹脂温度(ダイから押出される直前の樹脂温度)を採用して、押出速度50kg/時、温度20℃の水中に異形押出しし(成形樹脂温度での剪断速度84/sec)、ダイと同じ形状を有する多板式サイジング装置(但しサイジング装置の寸法は樹脂の収縮分を見込んだ寸法としてある)内を通過させた後、ローラ式引き取り装置(引き取り速度1.7m/分)で引き取り、ギロチンカッター式切断機で50cmの長さに切断して、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造した。
(8-2)異形押出成形品の中央リブの形状保持性:
上記(8-1)で得られた図2に示す異形押出成形品の中央リブ1の変形状態(すなわちドローダウン状態)を調べて、下記の表1に示す評価基準にしたがって評価した。
【0085】
【表1】
【0086】
(8-3)異形押出成形品の中央リブの厚み保持性:
上記(8-1)で得られた図2に示す異形押出成形品の中央リブ1の厚みを、その中間点a、並びに中間点aの両側の中央リブ1を4等分した点bおよび点cの3カ所で測定して、下記の表2に示す評価基準にしたがって評価した。
【0087】
【表2】
【0088】
(9)異形押出時の樹脂温度対応温度での樹脂の剪断応力:
上記(8-1)における異形押出成形時の成形樹脂温度での剪断速度(84/sec)における剪断応力(σ)(dyne/cm2)を、キャピラリー式溶融粘度測定装置(東洋精機社製「キャピログラフ」)により、キャピラリーノズル(直径2mm×長さ10mm)を用いてストランド状に押出して、測定した。
【0089】
(10)異形押出成形品の結晶化度(χc)
上記(8-1)で得られた図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品の中央リブの中央部分(点aを包囲する部分)から一辺が5mmの試験片を採取し、25℃の温度での密度(d)を測定し、完全非晶のポリエチレンテレフタレートおよび完全非晶のポリエチレン−2,6−ナフタレートの密度(da)をそれぞれ1.335および1.325として、また完全結晶のポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレン−2,6−ナフタレートの密度(dc)をそれぞれ1.501および1.462として、下記の数式▲3▼から異形押出成形品の結晶化度(χc)を求めた。
【0090】
【数6】
結晶化度χc(%)={dc×(d−da)}/{d×(dc−da)} ▲3▼
【0091】
(11)異形押出成形品の透明性:
ASTM D1003に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(日本精密光学株式会社製「SEP−HS・30D−R型」)を用いて、上記(8-1)で得られた図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品の中央リブ1の中央部分(点a)におけるヘイズ値(曇価)を測定した。
その結果得られたヘイズ値により、下記の表3に示す評価基準にしたがって、異形押出成形品の透明性の評価を行った。
下記の表3に示すように、ヘイズ値が8を超えると、球晶生成による白化によりおよび/または表面荒れやゲル状ブツによる光散乱により、透明性が不良となる。ヘイズ値が5以下であるのが透明性の点から好ましく、4以下であるのがより好ましい。
【0092】
【表3】
【0093】
(12)異形押出成形品のブツ発生率:
上記の(8-1)で得られた図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品の中央リブ1の中央部分から1cm×50cmの試験片を採取し、その中に含まれるブツの数量(個数)を目視で数えて、その発生状況を下記の表4に示す評価基準にしたがって評価して異形押出成形品のブツ発生率とした。
【0094】
【表4】
【0095】
(13)異形押出成形品の衝撃強度:
上記(8-1)で得られた図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を、その中央リブ1が床面に対して平行になるようにして床面に置き(図2に示すような置き方)、重さが100gの円筒状の重り(直径2.5cm、高さ2.5cm)を、最初は50cmの高さ(異形押出成形品の上端面と重りの下端面との間の距離)から、異形押出成形品上に垂直下方へと自然落下させた。それによって異形押出成形品に亀裂が生じない場合は、重りの落下高さを10cmずつ増して、同様の操作を順次繰り返して、異形押出成形品に亀裂が生じたときの重りの高さを求めた。前記の試験を10個の異形押出成形品に対して行って、その平均値(平均高さ)を採って破壊高さとした。そして、下記の表5に示した評価基準にしたがって異形押出成形品の衝撃強度の評価を行った。
【0096】
【表5】
【0097】
《実施例 1》
(1) テレフタル酸100.00重量部、エチレングリコール44.82重量部、および無水トリメリット酸0.185重量部および1,4−シクロヘキサンジメタノール6.25重量部とからなるスラリーをつくり、これに二酸化ゲルマニウム0.020重量部、亜リン酸0.015重量部、酢酸コバルト0.015重量部およびテトラエチルアンモニウムヒドロキシド0.015重量部を加えた。このスラリーを加圧下(絶対圧2.5Kg/cm2)で250℃の温度に加熱して、エステル化率が95%になるまでエステル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、1mmHgの減圧下に、270℃の温度で前記の低重合体を溶融重縮合させて、極限粘度0.70dl/g、MFR36g/10分のポリエステルプレポリマーを生成させ、これをノズルからストランド状に押出して切断し、円柱状チップ(直径約2.5mm、長さ約3.5mm)にした。
(2) 次いで、上記で得られたポリエステルプレポリマーのチップを窒素雰囲気中で160℃で5時間予備乾燥した後、転動式真空固相重合装置を用い、0.1mmHgの減圧下に、200℃で固相重合を29時間行って、高分子量化されたポリエステルを得た。
【0098】
(3) 上記(2)で得られたポリエステルの各構造単位の含有率を上記した方法で測定したところ、ポリエステルにおけるテレフタル酸単位、エチレングリコール単位、トリメリット酸単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位およびジエチレングリコール単位の含有率は下記の表7に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)で得られたポリエステルの物性を上記した方法で測定したところ、下記の表7に示すように、極限粘度は1.18dl/g、270℃の溶融温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)は4.21×105ポイズ、剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)は1.82×104ポイズであり、したがって(1/3)log10(η2/η1)の値は−0.45であった。
また、上記(2)で得られたポリエステルのガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、冷結晶化温度(Tcc)、冷結晶化熱量(△Hcc)および末端カルボキシル基濃度(CEG)を上記した方法で測定したところ、下記の表7に示すように、それぞれ79℃、232℃、132℃、12J/gおよび15μ当量/gであった。
【0099】
(5) 上記(2)で得られたポリエステルを用いて、上記した異形押出成形性の項に説明した方法により下記の表12に示す成形条件で異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0100】
《実施例2〜4》
テレフタル酸およびエチレングリコールを下記の表7に示す割合で使用し、これに多官能化合物単位(a)用の多官能化合物として無水トリメリット酸、トリメチロールプロパンまたは2−[3−(2−ヒドロキシエチル)−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンを用い、また単官能化合物単位(b)用の単官能化合物として2−ナフトエ酸またはステアリン酸を表7に示した割合で用いるか或いは用いずに、そして2官能化合物単位(c)用の2官能化合物として1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸または2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンを表7に示した割合で用いて、実施例1と同様にしてエステル化反応および溶融重縮合反応を行ってポリエステルプレポリマーチップを製造した後、下記の表7に示す温度および時間で固相重合を行って、ポリエステルをそれぞれ製造した。
得られたポリエステルにおける各構造単位の含有量、およびポリエステルの物性を実施例1と同様にして調べたところ下記の表7に示すとおりであった。
また、この実施例2〜4でそれぞれ得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0101】
《実施例5〜7》
テレフタル酸およびエチレングリコールを下記の表8に示す割合で使用し、これに多官能化合物単位(a)用の多官能化合物としてトリメチロールプロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−2−(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンまたは無水トリメリット酸を表8に示した割合で用い、また単官能化合物単位(b)用の単官能化合物として安息香酸またはステアリルアルコールを表8に示した割合で用いるか或いは用いずに、そして2官能化合物単位(c)用の2官能化合物として2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンまたはビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンを表8に示した割合で用いて、実施例1と同様にしてエステル化反応および溶融重縮合反応を行ってポリエステルプレポリマーチップを製造した後、下記の表8に示す温度および時間で固相重合を行って、ポリエステルをそれぞれ製造した。
得られたポリエステルにおける各構造単位の含有量、およびポリエステルの物性を実施例1と同様にして調べたところ下記の表8に示すとおりであった。
また、この実施例5〜7でそれぞれ得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0102】
《実施例 8》
(1) 2,6−ナフタレンジカルボン酸100.00重量部、エチレングリコール34.46重量部およびトリメチロールプロパン0.062重量部からなるスラリーをつくり、これに二酸化ゲルマニウム0.020重量部、亜リン酸0.015重量部、酢酸コバルト0.015重量部およびテトラエチルアンモニウムヒドロキシド0.015重量部を加えた。このスラリーを加圧下(絶対圧3.5Kg/cm2)で270℃の温度に加熱して、エステル化率が95%になるまでエステル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、1mmHgの減圧下に、290℃の温度で前記の低重合体を溶融重縮合させて、極限粘度0.68dl/g、MFR29g/10分のポリエステルプレポリマーを生成させ、これをノズルからストランド状に押出して切断し、円柱状チップ(直径約2.5mm、長さ約3.5mm)にした。
(2) 次いで、上記で得られたポリエステルプレポリマーのチップを窒素雰囲気中で160℃で5時間予備乾燥した後、転動式真空固相重合装置を用い、0.1mmHgの減圧下に、230℃で固相重合を20時間行って、高分子量化されたポリエステルを得た。
【0103】
(3) 上記(2)で得られたポリエステルの各構造単位の含有率を上記した方法で測定したところ、ポリエステルにおける2,6−ナフタレンジカルボン酸単位、エチレングリコール単位、トリメチロールプロパン単位およびジエチレングリコール単位の含有率は下記の表9に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)で得られたポリエステルの物性を上記した方法で測定したところ、下記の表9に示すように、極限粘度は1.18dl/g、290℃の温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)は2.68×105ポイズ、剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)は1.85×104ポイズであり、したがって(1/3)log10(η2/η1)の値は−0.39であった。
また、上記(2)で得られたポリエステルのガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、冷結晶化温度(Tcc)、冷結晶化熱量(△Hcc)および末端カルボキシル基濃度(CEG)を上記した方法で測定したところ、下記の表9に示すように、それぞれ122℃、270℃、136℃、12J/gおよび12μ当量/gであった。
【0104】
(5) 上記(2)で得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0105】
《実施例9〜10》
2,6−ナフタレンジカルボン酸およびエチレングリコールを下記の表9に示す割合で使用し、これに多官能化合物単位(a)用の多官能化合物としてトリメチロールプロパンまたは無水トリメリット酸を用い、また単官能化合物単位(b)用の単官能化合物として安息香酸を表9に示した割合で用いるか或いは用いずに、そして2官能化合物単位(c)用の2官能化合物として1,4−シクロヘキサンジメタノールまたは2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンを表9に示した割合で用いて、実施例8と同様にしてエステル化反応および溶融重縮合反応を行ってポリエステルプレポリマーチップを製造した後、下記の表9に示す温度および時間で固相重合を行って、ポリエステルをそれぞれ製造した。
得られたポリエステルにおける各構造単位の含有量、およびポリエステルの物性を実施例1と同様にして調べたところ下記の表9に示すとおりであった。
また、この実施例9〜10でそれぞれ得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0106】
《比較例1〜4》
テレフタル酸およびエチレングリコールを下記の表10に示す割合で使用し、これに多官能化合物単位(a)用の多官能化合物として無水トリメリット酸を下記の表10に示した割合で用いるか或いは用いずに、そして2官能化合物単位(c)用の2官能化合物として1,4−シクロヘキサンジメタノールまたは2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンを表10に示した割合で用いるか或いは用いずに、実施例1と同様にしてエステル化反応および溶融重縮合反応を行ってポリエステルプレポリマーチップを製造した後、下記の表10に示す温度および時間で固相重合を行って、ポリエステルをそれぞれ製造した。
得られたポリエステルにおける各構造単位の含有量、およびポリエステルの物性を実施例1と同様にして調べたところ下記の表10に示すとおりであった。
また、この比較例1〜4でそれぞれ得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0107】
《比較例5〜6》
2,6−ナフタレンジカルボン酸およびエチレングリコールを下記の表11に示す割合で使用し、これに多官能化合物単位(a)用の多官能化合物として無水トリメリット酸を下記の表11に示した割合で用いるか或いは用いずに、実施例8と同様にしてエステル化反応および溶融重縮合反応を行ってポリエステルプレポリマーチップを製造した後、下記の表11に示す温度および時間で固相重合を行って、ポリエステルをそれぞれ製造した。
得られたポリエステルにおける各構造単位の含有量、およびポリエステルの物性を実施例1と同様にして調べたところ下記の表11に示すとおりであった。
また、この比較例5〜6でそれぞれ得られたポリエステルを用いて、表12に示す成形条件を採用して実施例1と同様にして異形押出成形を行って、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造し、その結果得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表12に示すとおりであった。
【0108】
下記の表7〜表11において用いている略号の内容は、下記の表6に示すとおりである。
【0109】
【表6】
【0110】
【表7】
【0111】
【表8】
【0112】
【表9】
【0113】
【表10】
【0114】
【表11】
【0115】
【表12】
【0116】
上記の表7〜表9および表12の結果から、テレフタル酸単位および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであるという上記の要件(i)を満たし、さらに250〜320℃の範囲の溶融状態にある任意の温度において、剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜5×106ポイズであり且つ剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が5×103〜5×105ポイズであるという上記の要件(ii)、並びに溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が上記の数式▲1▼を満足するという上記の要件(iii)を満たすポリエステルを用いて異形押出成形品を製造している実施例1〜7および実施例8〜10の場合には、異形押出成形品の中央リブのドローダウンによる変形が極めて小さく、しかも中央リブの厚みがダイリップの厚みに極めて近い寸法であり、その寸法精度が極めて高いことがわかる。さらに、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルを用いて得られた実施例1〜7および実施例8〜10の異形押出成形品は、結晶化度が極めて小さく且つヘイズ値も小さくて透明性に優れており、ブツの発生が少なく外観的にも優れており、しかも耐衝撃性にも優れていることがわかる。
【0117】
それに対して、テレフタル酸単位および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルであるという要件(i)は満たしているものの、250〜320℃の範囲の溶融状態にある任意の温度において、剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜5×106ポイズの範囲から外れていて上記の要件(ii)を満たしておらず、しかも溶融粘度(η1)と溶融粘度(η2)との上記の数式▲1▼の値が−0.7〜−0.2の範囲になく上記の要件(iii)を満足しないポリエステルを用いて異形押出成形品を製造している比較例1〜6の場合には、異形押出成形品の中央リブがドローダウンによって大きく変形しており、しかも中央リブの厚みが設計どおりの厚みになっておらず、異形押出成形品の寸法精度が低いこと、その上結晶化度が大きく(比較例1および比較例4〜6)且つヘイズ値も大きく(比較例1〜6)、透明性の点で劣っていること、さらにブツの発生が多く(比較例1〜比較例6)、外観的にも不良であること、しかも耐衝撃性にも劣っている(比較例1〜6)ことがわかる。
【0118】
《参考例 1》
実施例5において、ポリエステルを図1のプレートダイから温度20℃の水中に異形押出す代わりに、ポリエステルを図1のプレートダイから温度200℃のシリコンオイル第1浴中に異形押出し、次いで温度150℃のシリコンオイル第2浴中に通して冷却し、さらに温度50℃の水第3浴中に通して冷却する方法を採用した以外は、実施例5と同様にして、図2に示す横断面形状を有する異形押出成形品を製造した。そして、それにより得られた異形押出成形品の中央リブの形状保持性、中央リブの厚み保持性、異形押出成形品の結晶化度、透明性、ブツ発生率および衝撃強度を上記した方法と同様にして測定または評価したところ、中央リブの形状保持性および厚み保持性の点で難点があり寸法精度があまり良好でなく、また透明性(ヘイズ値)、ブツ発生率外観、耐衝撃性などの点においても、実施例5に比べて劣っており、かかる結果から、上記の要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルを用いて異形押出成形品を製造するに当たっては、異形押出した押出体を前述のように、低い温度(好ましくは80℃以下の温度)の冷却用液体媒体中に浸漬して冷却するのが望ましいことが判明した。
【0119】
【発明の効果】
本発明の異形押出成形品は、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足する、高い溶融粘度を有し、しかも高剪断速度では低粘度で且つ低剪断速度では高粘度である非ニュートン性を有するポリエステルを用いて製造されていることによって、目的とする形状および寸法を有していて寸法精度に優れ、しかも結晶化度が極めて低く、且つヘイズ値も低く、ブツの発生が極めて少なく、透明性、表面状態、外観、耐衝撃性などの特性に優れており、その上機械的特性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、ガスバリヤー性などの特性においても優れている。
そのため、本発明の異形押出成形品は、前記した諸特性を活かして広範な用途の製品、例えば、窓枠用、配線ダクト用、雨樋用、カートリッジ用などとして有効に使用することができる。
さらに、本発明では、上記した要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステルを用いて溶融異形押出成形によって異形押出成形品を製造するに当たって、異形押出時の樹脂温度対応温度での樹脂の剪断応力を5×106dyne/cm2以下にすることにより、またダイより溶融押出した異形押出体を80℃以下の温度の冷却用液体媒体中に浸漬して冷却することにより、寸法精度、透明性、表面状態、外観、耐衝撃性などの特性に一層優れる異形押出成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例および比較例で用いた異形押出成形装置のダイにおけるダイリップの形状を示す図である。
【図2】本発明の実施例および比較例において、図1のダイを有する異形押出成形装置を用いて得られた異形押出成形品の横断面形状を示す図である。
【符号の説明】
1 異形押出成形品の中央リブ
【表8】
Claims (5)
- ポリエステルよりなる異形押出成形品であって、下記の要件(i)〜(iii)を満足するポリエステル;
(i) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方からなるジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルである;
(ii) 250〜320℃の範囲の溶融状態にある任意の温度において、剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜5×106ポイズであり、且つ剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が5×103〜5×105ポイズである;および
(iii) 前記の溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が下記の数式▲1▼を満足する;
【数1】
−0.7≦(1/3)log10(η2/η1)≦−0.2 ▲1▼
を用いて形成したことを特徴とする異形押出成形品。 - 成形品の結晶化度が10%以下である請求項1の異形押出成形品。
- 下記の要件(i)〜要件(iii)を満足するポリエステル;(i) テレフタル酸単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸単位の少なくとも一方からなるジカルボン酸単位とエチレングリコール単位から主としてなるポリエステルである;
(ii) 250〜320℃の範囲の溶融状態にある任意の温度において、剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜5×106ポイズであり且つ剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が5×103〜5×105ポイズである;および
(iii) 前記の溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が下記の数式▲1▼を満足する;
【数2】
−0.7≦(1/3)log10(η2/η1)≦−0.2 ▲1▼
を用いて異形押出成形を行うことを特徴とする異形押出成形品の製造方法。 - 異形押出時の樹脂温度対応温度での樹脂の剪断応力が5×106dyne/cm2以下である請求項3の製造方法。
- ダイより溶融押出した異形押出体を80℃以下の温度の冷却用液体媒体中に浸漬して冷却する、請求項3または4の製造方法。
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