JP3846974B2 - 多層構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の共重合ポリエステルよりなる層と金属層を有する多層構造体、該多層構造体の製造方法、該多層構造体を用いて二次加工または二次成形を行う方法、およびそれにより得られる二次加工品または二次成形品に関する。より詳細には、本発明は、耐衝撃性、深絞り成形性、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れる共重合ポリエステル層および金属層を有する多層構造体であって、しかも多層構造体を構成している共重合ポリエステル層の透明性に優れ、該共重合ポリエステル層の厚さが均一で且つ幅の減少のない共重合ポリエステル層および金属層を有する多層構造体、並びにその製造方法に関する。本発明の多層構造体は、薄物および厚物のいずれであってもよく、いずれの場合も多層構造体を構成する共重合ポリエステル層および金属層の特性を活かして、さらには上記した優れた特性を活かして、二次加工や二次成形を施さずに、または二次加工や二次成形を行って、各種の成形品、加工品、製品の製造に有効に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
金属製の缶やカップなどでは、腐食防止、内容物への金属臭の付着防止などの目的で、塗料を用いてその内面および/または外面を塗装することが従来から広く行われている。しかし、塗料の使用は、塗料中に含まれる有機溶媒による作業環境の悪化や環境汚染などの問題があり、そのため有機溶剤の使用に伴う前記した問題を回避する目的で、塗料を用いる代わりに、熱可塑性のプラスチックフイルムやシートを金属の表面や裏面に積層する方法が採用されている。
また、金属は、耐熱性、ガスバリヤー性などに優れ、金属特有の美麗な光沢を有し、各種の曲げ加工や絞り加工などを容易に行うことができ、一方熱可塑性プラスチックは、ヒートシール性、防食性、耐湿性、透明性、着色性などに優れ、また加熱下に成形加工が容易に行えることから、金属と熱可塑性プラスチックの両方の特性を有効に活用する目的で、金属箔、金属シート、金属板などの金属基材に熱可塑性プラスチックフイルムやシートを積層した各種の多層構造体(積層体)が製造され、包装材料やその他の分野で広く用いられるようになっている。金属基材に熱可塑性プラスチックを積層してなる前記多層構造体は、ヒートシール加工を行って袋状にして各種のパウチ類を製造したり、絞り加工や曲げ加工などを行って各種のカップ類や缶類を製造するなどの用途に用いられている。
【0003】
金属層と熱可塑性プラスチック層を有する多層構造体では、その用途などに応じて、種々の熱可塑性プラスチックの使用が既に実用化されたり、提案されている。そのうちでも、ポリエチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル樹脂は、透明性、力学的特性、ガスバリヤー性、フレーバーバリヤー性、耐熱性などに優れ、しかも残留モノマーや有害添加剤の心配が少なくて衛生性、安全性にも優れていることから、金属との多層構造体の製造に有効な熱可塑性プラスチック材料の一つとして重視されている。
【0004】
金属層とポリエステル樹脂層を有する多層構造体の製造法としては、金属箔、金属シート、金属板などの金属基材にポリエステル樹脂を溶融押出ししてラミネートする方法、溶融押出しやその他の方法によって予め製造したおいたポリエステル樹脂フイルムまたはシートを前記した金属基材にヒートシールまたは接着剤を用いて積層する方法などが挙げられる。それにより得られる金属層とポリエステル樹脂層を有する多層構造体は、絞り加工(特に深絞り加工)、ヒートシール、他の材料との積層などの二次成形や二次加工を経て、各種缶類、各種パック類、各種カップ類、各種キャップ類、チューブ、カバー、その他の積層体などに有効に使用される。
そして、前記した多層構造体の製造法のうちでも、前者の溶融押出しラミネート法は、ポリエステル樹脂の溶融押出しと同時に多層構造体を製造することができて、製造工程が簡便であり、生産性が高く、製造コストが安くすむなどの点から極めて有効な方法である。
【0005】
しかしながら、ポリエチレンテレフタレートなどの従来汎用のポリエステル樹脂は、溶融粘度が小さく、且つ結晶化速度が大きいために、金属基材に溶融押出しラミネートして多層構造体を製造する際や、ポリエステル樹脂フイルムやシートを溶融押出しによって予め製造しておく際に、種々の問題を生じ易い。
すなわち、ポリエステル樹脂の溶融粘度が小さいことにより、金属基材にポリエステル樹脂を溶融押出しラミネートして多層構造体を製造する場合に、または金属基材に積層するためのポリエステル樹脂フイルムを予め溶融押出して製造する場合に、ダイより押出された溶融状態にある膜状物の垂れ下りを生じたり、ロールなどによって引き取る際にネックインや引き取り時の膜揺れ現象などを生ずる。ネックインや膜揺れ現象は、溶融押出しラミネートにより得られる多層構造体におけるポリエステル樹脂層や、金属基材と積層するために製造したポリエステル樹脂フイルムに、厚み斑、幅の減少、穴あき、切断などのトラブルを生ずる主たる要因となる。また、膜揺れ現象を防止するためには引き取り速度を低減させる必要があり、それによって多層構造体の生産性の低下、金属基材に積層するためのポリエステル樹脂フイルムの生産性の低下をもたらし、しかも厚膜化の原因ともなる。
【0006】
また、ポリエステル樹脂の結晶化速度が大きいと、金属基材にポリエステル樹脂を溶融押出しラミネートして多層構造体を製造する場合に、または金属基材に積層するためのポリエステル樹脂フイルムを予め溶融押出して製造する場合に、ダイより押し出された溶融状態の膜状物に球晶が短時に生じ、ポリエステル樹脂押出物の白化を引き起こし、透明性が失われる。そして、溶融押出しラミネートにより得られた多層構造体におけるポリエステル樹脂層または単層品として押出されたポリエステルフイルムに見かけ上白化が生じていない場合であっても、そのようなポリエステル樹脂の層を有する金属積層体を、加熱下に深絞り成形、曲げ加工、延伸加工などして二次成形や二次加工を行うと、多層構造体のポリエステル樹脂層中に生成している球晶に起因する白化を起こし易いという問題がある。また、結晶化速度の大きいポリエチレンテレフタレートなどのような汎用のポリエステル樹脂を用いた従来の多層構造体は、脆弱で耐衝撃性に劣っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリエステル樹脂と金属層を有する多層構造体であって、そのポリエステル樹脂層の厚さが均一で厚み斑がなく、該ポリエステル樹脂層が所定の幅を有していて幅の減少がなく、穴あき、球晶の生成がなくて、透明性、耐衝撃性に優れ、しかも触感などの特性にも優れる、ポリエステル樹脂層と金属層を有する多層構造体を提供することである。
そして、本発明の目的は、二次成形性や二次加工性、耐熱性、耐薬品性などに優れていて、加熱下に絞り加工、曲げ加工、延伸加工、積層などのような二次加工や二次成形を行っても、白化が生じず、透明性、耐衝撃性、耐熱性、触感などの特性に優れる二次加工品を、良好な寸法精度で円滑に製造することのできる、ポリエステル樹脂層と金属層を有する多層構造体を提供することである。
【0008】
さらに、本発明の目的は、溶融押出しラミネート法によってポリエステル樹脂層と金属層を有する多層構造体を製造する際に、ネックイン、膜揺れ現象、膜切れなどのトラブルの発生を防止しながら、目的とする、均一な厚さや所定の幅寸法を有し、しかも上記した諸特性に優れる高品質の多層構造体を、大きな引き取り速度で、生産性よく製造できる方法を提供することである。
そして、本発明の目的は、上記した良好な諸特性を備えるポリエステル樹脂層と金属層を有する多層構造体を用いて二次加工または二次成形を行って、二次加工品や二次成形品を製造する方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らが検討を重ねた結果、テレフタル酸単位およびエチレングリコール単位から主としてなり且つ他の共重合単位を有する共重合ポリエステルであって、該共重合ポリエステル中に、テレフタル酸単位およびエチレングリコール単位以外の2官能化合物単位を特定の割合で有し、3官能以上の多官能化合物からなる多官能化合物単位を特定の割合で有し、しかも特定の結晶化速度と特定の溶融粘度を有する共重合ポリエステルと、金属基材を用いて多層構造体を製造すると、厚さが均一で、所定の幅を有し、球晶の生成がなくて透明性や耐衝撃性に優れ、耐熱性が良好な高品質の多層構造体が得られることを見出した。さらに、本発明者らは、前記した多層構造体の製造に当たって特に溶融押出しラミネート法を採用すると、溶融押出しラミネート時に押出された共重合ポリエステルにネックインや膜揺れ現象などを生ずることなく、大きな引き取り速度で、極めて高い生産性で、均一な厚さおよび所定の幅を有する目的とする多層構造体が得られることを見出した。そして、本発明者らは、そのような多層構造体を用いて、加熱下に深絞り成形、曲げ加工、延伸加工、積層などのような二次加工や二次成形を行うと、白化が生じず、共重合ポリエステル層の透明性に優れ、寸法精度、耐衝撃性、耐熱性に優れる二次加工品や二次成形品を極めて円滑に製造できることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、共重合ポリエステル層(A)を少なくとも1層および金属層(B)を少なくとも1層有する多層構造体であって、共重合ポリエステル層(A)が、下記の要件(i)〜(v);
(i) テレフタル酸単位およびエチレングリコール単位から主としてなり且つ他の共重合単位を有する共重合ポリエステルである;
(ii) アジピン酸単位を持たず、テレフタル酸単位およびアジピン酸単位以外のジカルボン酸単位、エチレングリコール単位以外のジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2官能化合物単位(a)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、2〜30モル%の割合で有する;
(iii) カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(b)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、0.005〜1モル%の割合で有する;
(iv) 160℃における半結晶化時間が1500〜3500秒の範囲である;並びに、
(v) 270℃の温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜2×105ポイズであり、270℃の温度における剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が8×103〜2×104ポイズであり、且つ溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が下記の数式(I)を満足する;
【0011】
【数3】
−0.7≦(1/3)log10(η2/η1)≦−0.2 (I)
を満たす共重合ポリエステルであって且つ他の極性基含有ポリマーを含有しない共重合ポリエステルからなる層であることを特徴とする多層構造体である。
【0012】
そして、本発明は、下記の要件(i)〜(v);
(i) テレフタル酸単位およびエチレングリコール単位から主としてなり且つ他の共重合単位を有する共重合ポリエステルである;
(ii) アジピン酸単位を持たず、テレフタル酸単位およびアジピン酸単位以外のジカルボン酸単位、エチレングリコール単位以外のジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2官能化合物単位(a)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、2〜30モル%の割合で有する;
(iii) カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(b)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、0.005〜1モル%の割合で有する;
(iv) 160℃における半結晶化時間が1500〜3500秒の範囲である;並びに、
(v) 270℃の温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜2×105ポイズであり、270℃の温度における剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が8×103〜2×104ポイズであり、且つ溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が下記の数式(I)を満足する;
【0013】
【数4】
−0.7≦(1/3)log10(η2/η1)≦−0.2 (I)
を満たす共重合ポリエステルであって且つ他の極性基含有ポリマーを含有しない共重合ポリエステルを、金属基材に、接着剤を用いずに又は用いて、溶融押出しラミネートして、上記の共重合ポリエステルよりなる共重合ポリエステル層(A)を少なくとも1層および金属層(B)を少なくとも1層有し、接着剤層(C)を有しないか又は少なくとも1層有する多層構造体を製造する方法である。
【0014】
さらに、本発明は、上記した多層構造体を用いて二次加工または二次成形を行う方法、該二次加工または二次成形により得られる二次加工品または二次成形品を包含する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の多層構造体に用いる共重合ポリエステルは、上記したように、テレフタル酸単位およびエチレングリコール単位から主としてなる共重合ポリエステルから形成されていることが必要である[上記の要件(i)]。
【0016】
本発明に用いる共重合ポリエステルでは、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位との合計割合(モル%)が、共重合ポリエステルを構成する全構造単位の合計モル数に対して、約70〜98モル%であるのが好ましく、約90〜98モル%であるのがより好ましい。共重合ポリエステルにおけるテレフタル酸単位とエチレングリコール単位の合計割合が70モル%未満であると共重合ポリエステルが非晶性になるため固相重合による高重合度化が困難になり、一方98モル%を超えると共重合ポリエステルの結晶が融解し難くなって溶融成形物中に未溶融のブツが多発し易くなる。
【0017】
そして、本発明で用いる共重合ポリエステルは、アジピン酸単位を持たず、テレフタル酸単位およびアジピン酸単位以外のジカルボン酸単位、エチレングリコール単位以外のジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2官能化合物単位(a)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、2〜30モル%の割合[2種以上の2官能化合物単位(a)を有する場合はその合計割合]で有することが必要である[上記の要件(ii)]。
2官能化合物単位(a)の割合が2モル%未満であると、共重合ポリエステルの結晶化速度が速くなり過ぎて、溶融押出しラミネート時や溶融押出成形時に球晶の生成に伴う白化が生じて透明性が失われ、外観が不良となる。一方、2官能化合物単位(a)の割合が30モル%を超えると、共重合ポリエステルの結晶性および融点が低くなり過ぎて、固相重合が行えなくなったり、または固相重合が行える場合であってもその固相重合速度が極端に遅くなって重合度が充分に増加しなくなる。その結果、そのような共重合ポリエステルを用いて得られる多層構造体ではその機械的強度が劣ったものとなる。
【0018】
共重合ポリエステル自体の重合時の生産性を高くすることができ、しかも共重合ポリエステルの溶融粘度が溶融押出しラミネートや溶融押出成形に適したものになって多層構造体や積層する前の押出成形物をより円滑に製造することができ、その上白化がなくて透明性に一層優れ、さらに耐衝撃性などの機械的強度にも一層優れる多層構造体を得ることができるなどの点から、共重合ポリエステルにおける2官能化合物単位(a)の割合が、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、2〜10モル%の範囲であるのが特に好ましい。
【0019】
共重合ポリエステルにおける2官能化合物単位(a)としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;デカリンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、ビスフェノールSエチレンオキシド付加物などの芳香族ジオール;トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環式ジオール;グリコール酸、ヒドロキシアクリル酸、ヒドロキシプロピオン酸、アシアチン酸、キノバ酸、ヒドロキシ安息香酸、マンデル酸、アトロラクチン酸などのヒドロキシカルボン酸;ε−カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン;それらのエステル形成性誘導体などの2官能化合物から誘導される構造単位などを挙げることができる。
【0020】
そして、共重合ポリエステルを構成する2官能化合物単位(a)としては、得られる多層構造体の力学的特性、衛生性、耐熱性、製造コストなどの点から、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物から誘導される構造単位および/または1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導される構造単位であるのが特に好ましい。
【0021】
ところで、本発明に用いる共重合ポリエステルの製造中にエチレングリコール成分の2量化物であるジエチレングリコールが少量副生して生成する共重合ポリエステル中にジエチレングリコール単位が少量含まれてくるが、共重合ポリエステル中におけるジエチレングリコール単位の割合が増加すると、共重合ポリエステルのガラス転移温度が低下して、耐熱性の低下や着色などの問題を生じ、該共重合ポリエステルから得られるポリエステルフイルムの耐熱性、強度、色調が不良になるので、共重合ポリエステル中におけるジエチレングリコール単位の割合を極力低減させておくのがよい。前記した理由から、共重合ポリエステル中におけるジエチレングリコール単位の割合を共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて1.5モル%未満にしておくのが好ましく、1.4モル%以下にしておくのがより好ましく、1.3モル%以下にしておくのが更に好ましい。
【0022】
さらに、本発明に用いる共重合ポリエステルでは、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(b)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、0.005〜1モル%の割合[2種以上の多官能化合物単位(b)を有する場合はその合計割合]で有していることが必要である[上記の要件(iii)]。
【0023】
共重合ポリエステルにおける多官能化合物単位(b)の割合が、上記した0.005〜1モル%の範囲から外れて、0.005モル%未満であると、溶融粘度が充分に高くならず、適正な溶融粘性、すなわち非ニュートン性が生じず、溶融押出しラミネートによって多層構造体をそのまま直接製造する場合、または溶融押出成形によって積層用のポリエステルフイルムを予め製造する場合に、成形性が不良となる。特に、溶融押出しラミネート時や溶融押出成形時に、押出された溶融状態にある膜状物のネックインや膜揺れが激しくなって、押出成形物の厚み斑、幅の縮小などを生じ、厚さや幅などの点で寸法精度に優れる多層構造体や、ポリエステルフイルムなどを製造できなくなる。この傾向は、押出物の引き取り速度が100m/分を上回るような高速製膜条件下において特に顕著となる。しかも、多官能化合物単位(b)の割合が0.005モル%未満であると、共重合ポリエステルを製造する際の固相重合速度が遅くなって共重合ポリエステルの生産性が低下する。
【0024】
一方、共重合ポリエステルにおいて、多官能化合物単位(b)の割合が1モル%を超えると、共重合ポリエステル中における架橋構造が多くなり過ぎて、過架橋構造に由来するゲルが生ずるため、多層構造体やポリエステルフイルム、二次加工品などを製造した場合にブツの発生、白化などのトラブルを生じて、透明性、外観、触感などが損なわれる。そして、ゲルを生じないように共重合ポリエステルの重合度を低下させると分子間の絡み合いが低下して、充分な機械的強度が得られなくなる。
【0025】
溶融粘度が充分に高くなって溶融押出しラミネートや溶融押出成形を一層良好に行うことができ、押出物の白化の防止や寸法安定性の向上、機械的強度の向上、共重合ポリエステル自体の生産性の向上などを一層円滑に行える点から、多官能化合物単位(b)の割合が、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、0.01〜0.5モル%の範囲であるのが特に好ましい。
【0026】
多官能化合物単位(b)としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基およびそれらのエステル形成性基から選ばれる1種または2種以上の基を3個以上有する多官能化合物から誘導される構造単位であれば特に制限されず、多官能化合物単位(b)を誘導するための多官能化合物は、カルボキシル基のみを3個以上有する多官能化合物であっても、ヒドロキシル基のみを3個以上有する多官能化合物であっても、またはカルボキシル基とヒドロキシル基を合計で3個以上有する多官能化合物であってもよい。
【0027】
多官能化合物単位(b)の好ましい例としては、トリメシン酸、トリメリット酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸などの芳香族ポリカルボン酸;1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸などの脂肪族ポリカルボン酸;1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−[3−(2−ヒドロキシエチル)−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンなどの芳香族ポリアルコール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどの脂肪族ポリアルコール;1,3,5−シクロヘキサントリオールなどの脂環式ポリアルコール;4−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、プロトカテク酸、2,4−ジヒドロキシフェニル酢酸などの芳香族ポリヒドロキシカルボン酸;酒石酸、リンゴ酸などの脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸;それらのエステル形成性誘導体から誘導される多官能化合物単位を挙げることができる。
本発明に用いる共重合ポリエステルは、多官能化合物単位(b)として、上記した多官能化合物単位の1種のみを有していてもまたは2種以上を有していてもよい。
【0028】
上記したうちでも、本発明に用いる共重合ポリエステルは、多官能化合物単位(b)としてトリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸などから誘導される構造単位の1種または2種以上を有しているのが、共重合ポリエステルの製造の容易性および製造コストの点から好ましい。さらに、ゲル化が抑制される点からトリメリット酸および/またはトリメシン酸から誘導される構造単位が特に好ましい。
【0029】
そして、本発明に用いる共重合ポリエステルは、160℃における半結晶化時間が1500〜3500秒の範囲であることが必要である[上記の要件(iv)]。半結晶化時間が1500秒未満であると、溶融押出しラミネート時や溶融押出成形時に、押出されたポリエステル溶融物の固化速度が大きくなり過ぎて、球晶の発生に伴う不透明化を起こし、得られる多層構造体やポリエステルフイルムの透明性が損なわれる。しかも多層構造体を用いて深絞り、曲げ加工、その他の二次加工や二次成形を加熱下に行う際に、やはり球晶が発生して、得られる二次加工品や二次成形品におけるポリエステル層の不透明化を生ずる。
一方、半結晶化時間が3500秒を超えると、共重合ポリエステルの結晶性および融点が低くなり過ぎて、固相重合が行えなくなったり、または固相重合が行える場合であってもその固相重合速度が極端に遅くなって重合度が充分に増加せず、その結果得られる多層構造体の機械的強度が劣ったものとなる。なお、ここでいう「160℃における半結晶化時間」とは、溶融状態から160℃の温度まで急冷して160℃に保持したポリエステル試料の等温結晶化発熱量が、総発熱量の半分になるのに要する時間をいい、等温結晶化発熱量は示差熱量分析計(DSC)によって測定した値をいう。その詳細は下記の実施例の項に記載するとおりである。
【0030】
さらに、本発明に用いる共重合ポリエステルは、270℃の温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜2×105ポイズであり、270℃の温度における剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が8×103〜2×104ポイズであり、且つ溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が下記の数式(I);;
【0031】
【数5】
−0.7≦(1/3)log10(η2/η1)≦−0.2 (I)
を満足することが必要である[上記の要件(v)]。
【0032】
共重合ポリエステルの270℃の温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104ポイズよりも低いと、溶融押出しラミネートや溶融押出しなどによる押出し製膜時にネックインや膜揺れが著しくなり、得られる多層構造体や積層前のポリエステルフイルムの厚み斑や幅の縮小が大きくなって、均質で目的寸法どおりの多層構造体を得ることができなくなる。また、該溶融粘度(η1)が2×105ポイズよりも高いと、特に100m/分を超えるような高速引き取り条件下で溶融押出しラミネートや溶融押出成形を行う場合に、膜切れが起こり易くなり、高速製膜性が顕著に損なわれ、しかもダイスウエルが起こり易くなって薄肉の多層構造体や積層前のポリエステルフイルムを得るのが困難になる。
【0033】
また、共重合ポリエステルの270℃の温度における剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が8×103ポイズよりも低いと、溶融押出しラミネートや溶融押出などによる押出し製膜時にネックインや膜揺れが著しくなって、得られる多層構造体や積層する前のポリエステルフイルムの厚み斑や幅の縮小が大きくなる。一方、該溶融粘度(η2)が2×104ポイズよりも高いと、押出機に加わるトルクが高くなり過ぎたり、押出し斑やウエルトラインが発生し易くなる。
【0034】
さらに、共重合ポリエステルの(1/3)log10(η2/η1)の値が、上記の数式(I)の範囲から外れて、−0.7未満であると、溶融押出しラミネートや溶融押出などによる押出し製膜時に膜切れを生じ易くなって高速製膜性が損なわれる。一方、共重合ポリエステルの(1/3)log10(η2/η1)の値が−0.2を超えると、溶融押出しラミネートや溶融押出による押出し製膜時にネックインや膜揺れが起こって、得られる多層構造体や積層前のポリエステルフイルムに厚み斑や幅の縮小などを生ずる。(1/3)log10(η2/η1)の値が−0.5〜−0.25の範囲であるのがより好ましい。
なお、上記の数式(I)における(1/3)log10(η2/η1)の値は、溶融粘度を縦軸とし、剪断速度を横軸とする両自然対数グラフにおける溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)の2点を結ぶ直線の傾きとして求められる。
また、本明細書でいう溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)の値は、下記の実施例の項に記載した方法で測定したときの値を言う。
そして、本発明の多層構造体における共重合ポリエステル層(A)を構成する上記の要件(i)〜(v)を満たす共重合ポリエステルは、他の極性基含有ポリマー、すなわち該共重合ポリエステル以外の極性基含有ポリマーを含有しないことが必要である。
【0035】
上記の説明から充分に明らかなように、要するに、本発明の多層構造体に用いる共重合ポリエステルは、上記した要件(i)〜(v)のすべてを同時に満足する共重合ポリエステルであることが必要であり、共重合ポリエステルにおいて要件(i)〜(v)のいずれが欠けても目的とする多層構造体を円滑に得ることができない。
【0036】
本発明に用いる共重合ポリエステルの極限粘度は、溶融成形法の種類などに応じて変わり得るが、溶融押出を伴う溶融成形、特に溶融押出しラミネートに用いる場合は、0.75〜1.3dl/gの範囲内であるのが好ましく、0.8〜1.1dl/gの範囲内であるのがより好ましい。
特に、溶融押出しラミネートを行う場合に、共重合ポリエステルの極限粘度が0.75dl/g未満であると、溶融押出しラミネート時にネックインや膜揺れが大きくなって成形不良となり易く、しかも得られる多層構造体の機械的強度が低くなり易い。
一方、溶融押出を伴う溶融成形、特に溶融押出しラミネートに用いる場合に、共重合ポリエステルの極限粘度が1.3dl/gを超えると、溶融粘度が高くなり過ぎて、100m/分を超えるような高速製膜速度条件では、押出された共重合ポリエステルの溶融状物が高速引取りに耐えられず、切断してしまうという問題を生じ易い。しかも、溶融押出時に溶融押出物に厚み斑が生じ易くなり、得られる多層構造体の外観が不良となり易く、その上溶融押出成形時にトルクが高くなり過ぎるため押出量が不均一になり易いなどの成形上の問題を生じ易い。更に、共重合ポリエステルの極限粘度が1.3dl/gを超えると溶融粘度が高くなり過ぎて、所定量の共重合ポリエステルを押出すのに要する時間が長くなって生産性が低下し易い。
【0037】
また、本発明に用いる共重合ポリエステルは、溶融押出しやその他の溶融成形物の収縮の防止などの点から、そのガラス転移温度が60℃以上であるのが好ましく、70℃以上であるのがより好ましい。共重合ポリエステルのガラス転移点が60℃未満であると、多層構造体やそれから得られる二次成形品や二次加工品に、残存応力の緩和に伴う収縮を生じて外観を損なうことがある。
【0038】
また、本発明に用いる共重合ポリエステルは、ポリエステルの溶融安定性、着色防止の点から、そのカルボキシル基濃度が30μ当量/g以下であるのが好ましく、20μ当量/g以下であるのがより好ましい。共重合ポリエステルのカルボキシル基濃度が30μ当量/gを超えると、多層構造体、それから得られる二次加工品や二次成形品における着色、分子量低下に伴う強度の低下が生じ易い。
【0039】
更に、本発明に用いる共重合ポリエステルは、溶融押出しラミネート時や溶融押出成形時などにおける製膜性、得られる押出物の均一性、生産性などの点から、270℃の温度におけるメルトフローレイト(以下「MFR」と略記することがある)が、2.0〜7.5g/10分の範囲内であるのが好ましく、3.0〜6.0g/10分の範囲内であるのがより好ましい。
【0040】
また、本発明に用いる共重合ポリエステルは、冷結晶化温度が150℃以下であり、且つ冷結晶化における結晶化熱量が20J/g以下であることが好ましい。共重合ポリエステルの冷結晶化温度が150℃よりも高い場合、または冷結晶化における結晶化熱量が20J/gを超える場合は、いずれも球晶の成長速度が速くなって、得られる多層構造体における共重合ポリエステル層、積層前のポリエステルフイルムなどに白化を生じて透明性が劣ったものになり易い。また、溶融押出しを行う場合は、押出されたフイルムの固化が早期に生じて成形性が不良になり易い。溶融成形時に球晶の生成速度を充分に遅延させて、共重合ポリエステル層の透明性に優れる多層構造体、透明性に優れる積層前のポリエステルフイルムなどを良好な成形性で得るためには、共重合ポリエステルの冷結晶化温度が140℃以下であり、且つ冷結晶化における結晶化熱量が15J/g以下であるのが一層好ましい。
なお、ここでいう冷結晶化温度および冷結晶化における結晶化熱量は示差熱分析法(DSC)によって測定したときの値をいい、その詳細は下記の実施例の項に記載するとおりである。
【0041】
本発明に用いる共重合ポリエステルは、
1)(1)テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体;および
(2)エチレングリコールから主としてなり;
(3)2官能化合物単位(a)を共重合ポリエステル中に導入するためのテレフタル酸およびエチレングリコール以外の2官能化合物の少なくとも1種;及び
(4)多官能化合物単位(b)を共重合ポリエステル中に導入するための上記したカルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種;
からなる反応原料であって、且つ
▲1▼ 該反応原料におけるテレフタル酸およびエチレングリコール以外の2官能化合物の含有量が、それから誘導される2官能化合物単位(a)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて2〜30モル%の範囲になるような量であり;そして、
▲2▼ 該反応原料における前記の多官能化合物の含有量が、該多官能化合物から誘導される多官能化合物単位(b)の割合が共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて0.005〜1モル%になるような量である;
反応原料を、エステル化反応またはエステル交換反応させた後、それを溶融重縮合させてポリエステルプレポリマーを形成し;次いで
2)前記の工程1)で得られるポリエステルプレポリマーを固相重合させる;
ことにより、短時間で生産性よく製造することができる。
【0042】
そして、上記の共重合ポリエステルの製造方法では、テレフタル酸およびエチレングリコール以外の2官能化合物として、共重合ポリエステル中に2官能化合物単位(a)を導入するための2官能化合物として上記で例示した化合物を使用すればよく、また多官能化合物として、多官能化合物単位(b)を導入するための多官能化合物化合物として上記で例示した化合物を使用すればよい。
【0043】
共重合ポリエステルの製造に当たっては、(全ジオール成分):(全ジカルボン酸成分)のモル比が1.1:1〜1.5:1になるようにし、且つ(多官能化合物成分):(全ジカルボン酸成分)のモル比が0.0001:1〜0.01:1になるようにして反応成分を混合し、エステル化反応またはエステル交換反応を行うのが好ましい。
【0044】
上記のエステル化反応またはエステル交換反応は、通常、常圧下または絶対圧で約3kg/cm2以下の加圧下に、230〜300℃の温度で、生成する水またはアルコールを留去させながら行うとよい。そして、それに続いて、必要に応じて重縮合触媒、着色防止剤などの添加剤を添加した後、通常、5mmHg以下の減圧下に、200〜300℃の温度で、所望の粘度のポリエステルプレポリマーが得られるまで溶融重縮合を行ってポリエステルプレポリマーを形成させる。その場合に、ポリエステルプレポリマーの取り扱い性などの点から、ポリエステルプレポリマーの極限粘度は0.40〜0.75dl/gの範囲内であることが好ましく、またそのMFRは15.0g/10分以上であるのが好ましい。
【0045】
上記した溶融重縮合反応において重縮合触媒を使用する場合は、ポリエステルの製造に通常用いられているものを使用することができ、例えば、酸化アンチモンなどのアンチモン化合物;酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのチタン化合物;ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテートなどの錫化合物などを挙げることができ、これらの触媒化合物は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。重縮合触媒を用いる場合は、ジカルボン酸成分の重量に基づいて0.002〜0.8重量%の範囲内の量であるのが好ましい。
【0046】
また、着色防止剤を使用する場合は、例えば、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフェートなどのリン化合物を用いることができ、これらのリン化合物は単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。これらのリン化合物からなる着色防止剤を使用する場合は、ジカルボン酸成分の重量に基づいて0.001〜0.5重量%の範囲内であるのが好ましい。
【0047】
また、共重合ポリエステルの熱分解による着色を抑制するために、ジカルボン酸成分の重量に基づいて0.001〜0.5重量%、より好ましくは0.05〜0.3重量%のコバルト化合物、例えば酢酸コバルトなどを添加するのがよい。
【0048】
更に、上記したように、共重合ポリエステル中にジエチレングリコール単位が多く含まれると共重合ポリエステルのガラス転移温度が低下し、それに伴って耐熱性の低下や着色などが起こり、得られる多層構造体の耐熱性、強度、色調などが不良なものとなるが、上記したエステル化反応、エステル交換反応および/または溶融重縮合反応を、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどの有機アミンなどからなるジエチレングリコールの副生抑制剤の存在下に行うと、共重合ポリエステル中におけるジエチレングリコール単位の割合を低減させることができるので好ましい。
【0049】
次いで、上記した溶融重縮合反応により得られたポリエステルプレポリマーをダイス状、円柱状などの任意の形状のチップやペレットとし、それを通常190℃以下の温度で予備乾燥した後、その極限粘度、MFRなどが所望の値になるまで固相重合を行って、目的とする共重合ポリエステルを形成させる。固相重合は真空下、減圧下または窒素ガスなどの不活性ガス中で行うのが好ましい。また、ポリエステルプレポリマーのチップやペレット同士が膠着しないように、転動法、気体流動床法などの適当な方法でチップやペレットを流動させながら固相重合を行うのが好ましい。固相重合は通常180〜240℃の範囲内の温度で行うのが好ましく、190〜230℃の範囲内の温度で行うのがより好ましい。更に、固相重合の温度は、チップやペレット間の膠着を防止する観点から、前記した範囲内の温度であって、しかも製造を目的としている共重合ポリエステル(最終的に得られる共重合ポリエステル)の融点より15℃以上低い温度、好ましくは20℃以上低い温度とするとよい。また、固相重合の重合時間は通常約5〜40時間の範囲とするのが生産性などの点から好ましい。
そして、上記した一連の工程を行うことによって、本発明に用いる共重合ポリエステルを短時間に生産性よく製造することができる。
【0050】
また、必要に応じて、本発明に用いる共重合ポリエステルには、他の熱可塑性樹脂(但し極性基を含有する他の熱可塑性樹脂を除く)、ポリエステル系樹脂に対して従来から使用されている各種の添加剤、例えば染料や顔料などの着色剤、紫外線吸収剤などの安定剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、潤滑剤、可塑剤、無機充填剤などを含有していてもよい。
【0051】
さらに、本発明の多層構造体は、上記した共重合ポリエステルよりなる共重合ポリエステル層(A)とともに、金属層(B)を有している。
金属層(B)を構成する金属の種類は特に制限されず、多層構造体の用途などに応じて選択することができ、例えば、アルミニウム、鉄、錫、銅、亜鉛、銀、金、白金、各種金属の合金、前記した金属のメッキ物等を挙げることができる。
金属層(B)を構成する金属基材の形態も制限されず、例えば、箔、シート、板、線、管、棒、ブロックなどのいずれの形態であってもよく、多層構造体の用途などに応じて選択することができる。
そのうちでも、本発明の多層構造体においては、金属層(B)を構成する金属基材は、金属箔、金属シートまたは金属板であることが好ましく、その場合の厚さは0.007〜3.5mm程度であることが好ましい。
【0052】
限定されるものではないが、本発明の多層構造体に好ましく用いられる金属基材の具体例としては、硬質アルミニウム箔、軟質アルミニウム箔、錫箔、銅箔、ブリキ箔、鋼箔などの金属箔、スチール板、ブリキ板、TFS(ティンフリースチール)板、アルミ板、銅板などの金属板を挙げることができる。そして、前記したような金属箔の場合は厚さが0.007〜0.1mm程度の金属箔が好ましく用いられ、また金属板の場合は厚さが0.5〜3.5mm程度の金属板が好ましく用いられる。
【0053】
本発明の多層構造体は、上記した共重合ポリエステルよりなる共重合ポリエステル層(A)を少なくとも1層および金属層(B)の少なくとも1層有する多層構造体であればいずれでもよい。何ら限定されるものではないが、本発明の多層構造体の例としては、共重合ポリエステル層(A)1層と金属層(B)1層からなる多層構造体;共重合ポリエステル層(A)2層と金属層(B)1層からなる多層構造体;共重合ポリエステル層(A)2層と金属層(B)2層からなる多層構造体;共重合ポリエステル層(A)3層と金属層(B)2層からなる多層構造体;共重合ポリエステル層(A)3層と金属層(B)3層からなる多層構造体;共重合ポリエステル層(A)4層と金属層(B)3層からなる多層構造体などを挙げることができる。
【0054】
そのうちでも、本発明の多層構造体においては、金属層(B)の片側または両側に共重合ポリエステル層(A)が存在する層構造を有することが好ましく、金属層(B)の両側に共重合ポリエステルが存在していることがより好ましく、要するに、金属層(B)の少なくとも一方の面が多層構造体の表面に露出しない構造となっていることが好ましい。
そのような多層構造体の例としては、共重合ポリエステル層(A)/金属層(B)からなる2層構造体、共重合ポリエステル層(A)/金属層(B)/共重合ポリエステル層(A)からなる3層構造体;共重合ポリエステル層(A)/金属層(B)/共重合ポリエステル層(A)/金属層(B)/共重合ポリエステル層(A)からなる5層構造体などを挙げることができる。そして、そのような層構成にすることによって、本発明の多層構造体を、例えば、各種容器(パウチ類、カップ類、缶類など)に用いたときに、容器の少なくとも内面側に共重合ポリエステル層(A)を存在させて金属層(B)が直接露出しないようにすることができ、それによって、金属層(B)からの金属臭の内容物への移行、内容物による金属層(B)の腐食などが円滑に防止される。しかも、ヒートシールによる容器製造が可能になって容器製造作業を簡便化することができ、例えば、ヒートシールによるパウチ類の製造、缶類やカップ類の製造時のヒートシールによる胴体部の組み立て作業、ヒートシールによる底付けや蓋付け作業などが可能になる。
【0055】
本発明の多層構造体では、共重合ポリエステル層(A)と金属層(B)は、接着剤などを用いずにそのまま直接溶融接着させることができ、その場合にも共重合ポリエステル層(A)と金属層(B)は大きな接着強度を示し、層間剥離を生じない。
【0056】
また、本発明の多層構造体では、場合によって(必要に応じて)、共重合ポリエステル層(A)と金属層(B)との間に接着剤層(C)を介在させてもよい。
接着剤層(C)を介して共重合ポリエステル層(A)と金属層(B)を積層させる場合は、共重合ポリエステル層(A)および金属層(B)の特性を損なわずに両者を良好に接着できる接着剤層であればいずれでもよく特に制限されない。そのうちでも、本発明では、接着剤層(C)として、例えば、エポキシ系接着剤、イソシアネート系接着剤、イソシアネート−エポキシ系接着剤、グリシジル基等のエポキシ基を有する基で変性されたオレフィン系重合体などが好ましく用いられる。
【0057】
また、本発明では、共重合ポリエステル層(A)と金属層(B)とをより強固に接着させるために、例えば、(1)共重合ポリエステルとの積層に先立って、金属基材を赤外線、熱ロール、ガス焔による予備加熱しておく方法;(2)共重合ポリエステル層(A)と金属層(B)を有する多層構造体を製造した後に赤外線、熱ロール、ガス焔などで加熱処理する方法;(3)溶融押出した共重合ポリエステルを溶融状態にあるときに酸化促進処理(例えば補助ヒーターによる加熱処理など)によって活性化した後に金属基材と積層する方法;(4)金属基材の表面および/または裏面にアルキルチタネートやその他のプライマーを塗布した後に、溶融状態にあるかまたはフイルム状の共重合ポリエステルと積層する化学接着法;などを採用してもよい。
【0058】
本発明の多層構造体の形状は用途などに応じて適宜選択でき特に制限されず、例えば、フイルム、シート、板、管、ブロック、棒、線などの形状であることができる。
そのうちでも、本発明の多層構造体は、フイルム、シート、板の形状であることが、二次加工や二次成形に有効に使用することができる点から好ましい。本発明の多層構造体が、フイルム、シートまたは板である場合には、製造の容易性、得られる多層構造体の物性、二次加工性、二次成形性などの点から、その厚さを4mm以下にしておくのが好ましく、0.1〜3mm程度にしておくのがより好ましい。その際に、共重合ポリエステル層(A)の厚さは5.0μm〜1.0mm程度であり、また金属層(B)の厚さは0.007〜3.5mm程度であることが、両層の特性を十分に発揮させ得る点から好ましい。
また、本発明の多層構造体(特にフイルム、シートまたは板の場合)の幅は特に制限されず、適宜変えることができるが、約30〜200cm程度にしておくことが、多層構造体製造時の成形性、取り扱い性、得られる多層構造体の物性などの点から好ましい。
【0059】
また、本発明の多層構造体がフイルム、シートまたは板である場合は、共重合ポリエステル層(A)は延伸したものであっても未延伸のものであってもよい。延伸したものである場合は、例えば溶融押出しラミネート時に押出された共重合ポリエステルを同時に延伸しても、共重合ポリエステルの延伸フイルムを予め形成しておいてそれを金属基材に積層してもよい。共重合ポリエステルの延伸は、縦横両方向に延伸しても(二軸延伸)、または縦方向または横方向の一方のみに延伸(一軸延伸)してもよい。その際の延伸倍率は、多層構造体の用途、それに求められる物性などに応じて決めることができる。
【0060】
さらに、本発明の多層構造体は、上記した共重合ポリエステル層(A)および金属層(B)、並びに必要に応じて用いられる接着剤層(C)以外に、他の層を有していてもよい。その場合の他の層としては、例えば、上記の要件(i)〜(v)を備える共重合ポリエステル以外のポリエステル樹脂の層、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物などのポリオレフィン層、ポリアミド層、塩化ビニル系重合体層、布帛層、紙層などを挙げることができる。
【0061】
本発明の多層構造体の製法は特に制限されず、共重合ポリエステル層(A)と金属層(B)とが良好に接着し積層されている多層構造体を製造し得る方法であればいずれも採用可能であり、例えば、(1)金属基材に共重合ポリエステルを溶融押出してラミネートする方法;(2)共重合ポリエステルの成形物(フイルムやシート等)を予め製造しておいてそれを金属基材と接着剤、ヒートシールなどによって積層する方法;(3)金属基材上に共重合ポリエステルの溶融物をカレンダー加工にてラミネートする方法;(4)金属基材を型内に配置(インサート)しておいてそこに共重合ポリエステルを射出して成形する方法;(5)金属基材を型内に配置しておきそこに共重合ポリエステルの溶融物を注入して成形する方法;(5)金属基材上に共重合ポリエステルの溶液を塗布した後に乾燥させる方法などを挙げることができる。
【0062】
特に、本発明の多層構造体が積層フイルム、積層シートまたは積層板である場合には、上記した方法のうちでも、上記(1)の溶融押出しラミネート法が好ましく採用され、それによって、目的とする積層フイルム、積層シートまたは積層板を生産性よく製造できる。
溶融押出しラミネート法は、Tダイを用いて行うことが好ましい。Tダイを用いる溶融押出しラミネート法によって多層構造体(積層フイルム、積層シートまたは積層板)を製造するに当たっては、一般に、共重合ポリエステルを押出機中で樹脂の融点より約10〜70℃程度高い温度(通常約260〜290℃)に加熱して溶融混練し、それを共重合ポリエステルの融点より約10〜70℃程度高い温度(通常約260〜290℃)でダイスより押出し、共重合ポリエステルの溶融状物を金属基材に流延、積層した後、冷却ロール、引き取り機、巻取り機などを経て積層フイルム、積層シートまたは積層板を製造する。
その際に用いるTダイとしては、従来から既知のTダイのいずれも使用でき、例えばマニホールド型、フィッシュテール型、コートハンガー型などを挙げることができる。
押出成形機のTダイからの共重合ポリエステルの押出量を通常5〜100kg/時間程度にし、金属基材の移送速度を1〜150m/分にし、冷却ロールの表面温度を20〜60℃程度にし、また多層構造体の引き取り速度を1〜150m/分にしておくと、ネックイン、膜揺れ、膜切れなどを生ずることなく、透明性に優れ、厚さ斑や幅の縮小のない共重合ポリエステル層(A)を有し、しかも耐衝撃性などの機械的強度、耐熱性、耐薬品性、二次加工性などに優れる積層フイルム、積層シートまたは積層板を円滑に製造することができるので好ましい。
【0063】
また、上記において、共重合ポリエステル層(A)と金属層(B)との間に接着剤層(C)が介在する多層構造体を製造する場合は、(1)接着用樹脂を別途溶融して、それを共重合ポリエステル層の溶融押出に用いるTダイに供給して共重合ポリエステルと接着剤とを層状で共押出するか、或いは(2)押出機から押し出された共重合ポリエステルが溶融状態、半固化状態、または固化状態のときに、液状または溶融状の接着剤を、押出された共重合ポリエステル膜の金属基材との接着面に積層または塗布する。そして、前記の(1)または(2)によって接着剤層を施された共重合ポリエステルを金属基材と積層して多層構造体を製造する方法が好ましく採用される。
【0064】
本発明の多層構造体は、加熱下に二次加工または二次成形を行って、各種缶類、各種パック類、各種カップ類、パウチ類、カバー類、キャップ類、チューブ類、積層体などの二次加工品や二次成形品にすることができる。その際の二次加工法または二次成形法としては、例えば、真空成形法、吹込成形法、ドレイプ成形法、真空スナップバック成形法、加圧スナップバック成形法、プラグアシスト成形、プラグアシスト吹込成形法、プラグ成形法、加圧成形法などの型を用いる方法;フリーブロー成形法などの型を用いない方法;曲げ加工法などを挙げることができる。また、本発明の多層構造体は、ヒートシールを伴う各種加工法においても有効に用いることができ、例えば、ヒートシールによる袋物の製造、ヒートシールを伴う缶類やカップ類における胴部の形成、底付けや蓋付けなどを行うことができる。
そして、本発明の多層構造体が、共重合ポリエステル層(A)と、金属箔などのような薄い金属層(B)を有する多層構造体である場合は、真空成形法によって各種の成形品や製品を円滑に製造することができ、例えば深さが30cm以上もある深絞りの製品でも、多層構造体の破損などを生ずることなく円滑に製造することができる。
【0065】
本発明の多層構造体を用いて上記した二次加工法や二次成形法を使用して二次加工品または二次成形品を製造するに当たっては、一般に、多層構造体を100〜200℃の温度に加熱して加工または成形を行うのが望ましい。
そして、上記した二次加工法または二次成形法のいずれによる場合でも、本発明の多層構造体を用いることによって、共重合ポリエステル層(A)の透明性、形態安定性、寸法精度、耐衝撃性などの機械的特性に優れる、二次加工品または二次成形品を円滑に得ることができる。
【0066】
【実施例】
以下に本発明を実施例などによって具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、ポリエステル(共重合ポリエステルまたは単独重合ポリエステル)の各構造単位の含有率およびポリエステルの物性の測定、並びに多層構造体(多層フイルム)の製造時のフイルムの耐ネックイン性および耐膜揺れ性の評価、得られた多層構造体(多層フイルム)における共重合ポリエステル層の透明性の評価、多層構造体の厚み斑の評価、多層構造体(多層フイルム)の面衝撃強度およびガスバリヤー性の測定、並びに多層構造体(多層フイルム)の深絞り成形性の評価は、次のようにして行った。
【0067】
(1)ポリエステルにおける各構造単位の含有率:
ポリエステルをメタノリシスし、高速液体クロマトグラフィーを用いて構成成分を分離し、得られた各成分について赤外線吸収スペクトル(IR)による定量分析を行って各構造単位の含有率を求めた。また、重水素化トリフルオロ酢酸を溶媒としたポリエステルの1H−NMRスペクトルにより確認した。
【0068】
(2)ポリエステルの極限粘度:
フェノールとテトラクロルエタンの等重量混合溶媒中、30℃で、ウベローデ型粘度計(林製作所製「HRK−3型」)を用いて測定した。
【0069】
(3)ポリエステルの半結晶化時間(HT):
示差熱分析法(DSC)により、熱分析システム(メトラー社製「メトラーTA3000」)を用いて、280℃で溶融したポリエステルを160℃の温度まで100℃/分の降温速度で急冷し、160℃の温度にそのまま保持して等温結晶化を進行させ、その間の測定により得られた熱量対時間の曲線グラフから、等温結晶化発熱ピークの面積が半分値に到達した時間を測定し、160℃での半結晶化時間(秒)を求めた。
【0070】
(4)ポリエステルの溶融粘度(η1およびη2):
メカニカルスペクトロメーター(レオメトリックス社製「RMS−800」)により、パラレルプレートを用いて、ポリエステルの270℃における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)(ポイズ)、およびポリエステルの270℃における剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)(ポイズ)をそれぞれ動的に測定した(但し参考例7は共重合ポリエステルが非晶性であったため210℃で測定した)。
【0071】
(5)ポリエステルプレポリマーおよびポリエステルのメルトフローレイト(MFR):
メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)を用いて測定した。具体的には、ポリエステルプレポリマーまたはポリエステル(最終生成物)のチップを、内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填して溶融した後、溶融したポリエステルプレポリマーまたはポリエステルに対して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーによって均等に荷重をかけ、シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより押出されたポリエステルプレポリマーまたはポリエステルの流出速度(g/10分)を測定し、これをメルトフローレイト(MFR)とした。
但し、シリンダーに充填した各ポリマーの溶融温度は、参考例1〜6および参考例8のポリエステルプレポリマーおよびポリエステルでは270℃、参考例7のポリエステルプレポリマーおよびポリエステルでは210℃(非晶性であったため)とした。
【0072】
(6)ポリエステルのガラス転移温度(Tg)および融点(Tm):
JIS K7121に準じて、示差熱分析法(DSC)により、熱分析システム「メトラーTA3000」(メトラー社製)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0073】
(7)ポリエステルの冷結晶化温度(Tcc)および冷結晶化熱量(△Hcc):
JIS K7121に準じて、示差熱分析法(DSC)により、熱分析システム「メトラーTA3000」(メトラー社製)を用いて、Tm+40℃の温度に試料を5分間保持した後、降温速度5℃/分の条件で測定した。
【0074】
(8)ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(CEG):
0.2gのポリエステルを215℃に加熱したベンジルアルコール10mlに溶解し、溶解液にクロロホルム10mlを加え、ベンジルアルコール性苛性ソーダを用いて滴定して末端カルボキシル基濃度(CEG)を求めた。
【0075】
(9)多層フイルム製造時のフイルムの耐ネックイン性:
押出しラミネート装置を用いて、共重合ポリエステル(ポリエステル)を270℃で押し出し、それを100m/分の供給速度で走向している軟質アルミニウム箔(厚さ30μm)上に流延、積層し、表面温度50℃の冷却ロールで冷却して共重合ポリエステル層/金属層からなる2層フイルム(多層フイルム)をつくり、これを100m/分の速度でロール引き取って多層フイルムを製造し、この際に、ダイの直下での共重合ポリエステル溶融膜の幅(Wd)、ロールに巻き取られた多層フイルムにおける共重合ポリエステル層の幅(Wf)をそれぞれ測定し、その比率{(Wf/Wd)×100(%)}によって耐ネックイン性を評価した。前記の比率が100%に近いほどネックイン(幅の減少)が生じておらず、耐ネックイン性が良好であることを示す。
【0076】
(10)多層フイルム製造時の耐膜揺れ性:
上記(9)と同条件で、共重合ポリエステル層/金属層からなる2層フイルム(多層フイルム)を製造し、製膜開始より10分経って製膜性が安定した段階で、100m/分の引き取り速度における、金属基材と積層する前の押出された共重合ポリエステル膜の膜揺れの回数を目視にて10分間測定し、1分間当たりの膜揺れ回数(M)を求めた。Mが小さいほど膜揺れが抑制されており、耐膜揺れ性が良好であることを示す。
【0077】
(11)多層フイルム製造時の耐ネックイン性および耐膜揺れ性の総合評価:
上記(9)で得られた耐ネックイン性および上記(10)で得られた耐膜揺れ性の結果から、下記の表1に示す評価基準にしたがって、多層フイルム製造時の耐ネックイン性および耐膜揺れ性の総合評価を行った。
【0078】
【表1】
【0079】
(12)多層フイルムにおける共重合ポリエステル層層の透明性(ヘイズ値):上記(9)と同条件で得られた多層フイルムにおいて、共重合ポリエステル層を金属層から剥離させ、その共重合ポリエステル層に対して、ASTM D1003に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(日本精密光学株式会社製「SEP−HS・30D−R型」)を用いて任意の10箇所におけるヘイズ値を測定し、その平均値を採って多層フイルムにおける共重合ポリエステル層のヘイズ値とした。ヘイズ値が8を超えると、球晶生成による白化のため透明性が不良となる。ヘイズ値が5未満であることが透明性の点から好ましい。
【0080】
(13)多層フイルムの厚み斑:
上記(9)と同条件で得られた多層フイルムについて、押し出し方向と垂直の方向に5cm刻みで一直線上に10点を採り、これらの厚さ測定した。
全点測定結果のうち、最大厚と最小厚の差(μm)を求めて、これを厚み斑とした。
【0081】
(14)多層フイルムの外観総合評価:
上記(12)で得られた多層フイルムのヘイズ値および上記(13)で得られた多層フイルムの厚み斑の値から、下記の表2に示す評価基準にしたがって多層フイルムの外観総合評価を行った。
【0082】
【表2】
【0083】
(15)多層フイルムの面衝撃強度:
上記(9)と同条件で得られた多層フイルムについて、フイルムインパクトテスター(1インチ衝撃錘)(東洋精機株式会社製)を用いてその面衝撃強度を測定した。
【0084】
(16)深絞り成形品の透明性(ヘイズ値):
上記(9)と同条件で得られた多層フイルムを150℃に加熱して、汎用の真空成形方式の深絞り成形機(型キャビティ=開口部直径50mm、底部直径50mm、深さ70mmの有底円筒形)を使用して、厚み約20μmのカップを製造し、得られたカップの底部を切り取り、該底部から共重合ポリエステル層を剥離し、剥離した共重合ポリエステル層に対して、ASTM D1003に準じて、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(日本精密光学株式会社製「SEP−HS・30D−R型」)を用いてヘイズ値(曇価)を測定した。
【0085】
(17)深絞り成形性の総合評価:
上記(17)で得られたカップ底部のヘイズ値およびカップの品質から、下記の表3に示す評価基準にしたがって深絞り成形性の総合評価を行った。
【0086】
【表3】
【0087】
《参考例 1》[共重合ポリエステルの製造]
(1) テレフタル酸100.00重量部、エチレングリコール48.73重量部、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン6.25重量部および無水トリメリット酸0.116重量部からなるスラリーをつくり、これに二酸化ゲルマニウム0.020重量部、亜リン酸0.015重量部、酢酸コバルト0.015重量部およびテトラエチルアンモニウムヒドロキシド0.015重量部を加えた。このスラリーを加圧下(絶対圧2.5Kg/cm2)で250℃の温度に加熱して、エステル化率が95%になるまでエステル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、1mmHgの減圧下に、270℃の温度で前記の低重合体を溶融重縮合させて、極限粘度0.69dl/gの共重合ポリエステルのプレポリマーを生成させ、これをノズルからストランド状に押出して切断し、円柱状チップ(直径約2.5mm、長さ約3.5mm)にした。このプレポリマーの270℃におけるメルトフローレイト(MFR)は20g/10分であった。
(2) 次いで、上記(1)で得られた共重合ポリエステルのプレポリマーのチップを150℃で5時間予備乾燥した後、転動式真空固相重合装置を用いて、0.1mmHgの減圧下に200℃で固相重合を25時間行って、高分子量化された共重合ポリエステルを得た。
【0088】
(3) 上記(2)で得られた共重合ポリエステルの各構造単位の含有率を上記した方法で測定したところ、共重合ポリエステルにおけるテレフタル酸単位、エチレングリコール単位、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン単位、トリメリット酸単位、およびジエチレングリコール単位の含有率は下記の表5に示すとおりであった。
(4) また、上記(2)で得られた共重合ポリエステルの物性を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すように、極限粘度は0.91dl/g、270℃の温度におけるMFRは4.1g/10分、HTは1600秒、270℃の温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)は8.51×104ポイズ、剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)は9.82×103ポイズであり、したがって(1/3)log10(η2/η1)の値は−0.31であった。
更に、上記(2)で得られた共重合ポリエステルのガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、冷結晶化度(Tcc)および冷結晶化熱量(△Hcc)を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すように、それぞれ79℃、225℃、135℃および9J/gであった。
また、上記(2)で得られた共重合ポリエステルの末端カルボキシル基濃度(CEG)は15μ当量/gであった。
【0089】
《参考例2〜4》[共重合ポリエステルの製造]
テレフタル酸、エチレングリコール、2官能化合物および多官能化合物を下記の表5に示す割合で用いて、参考例1と同様にしてエステル化反応および溶融重縮合反応を行って共重合ポリエステルのプレポリマーチップを製造した後、下記の表5に示す温度および時間で固相重合を行って、共重合ポリエステルをそれぞれ製造した。
得られた共重合ポリエステルにおける各構造単位の含有量、および共重合ポリエステルの物性を実施例1と同様にして調べたところ下記の表5に示すとおりであった。
【0090】
《参考例5〜8》[ポリエステルまたは共重合ポリエステルの製造]
テレフタル酸、エチレングリコール、2官能化合物および多官能化合物を下記の表6に示す割合で使用した以外は参考例1と同様にして、エステル化反応および溶融重縮合反応を行って共重合ポリエステルのプレポリマーチップを製造した後、下記の表6に示す温度および時間で固相重合を行って、ポリエステルまたは共重合ポリエステルをそれぞれ製造した。
但し、参考例7では共重合ポリエステルが非晶性となったので、得られたプレポリマーチップを固相重合することなく、そのまま多層フイルムの製造試験に供した。
得られたポリエステルまたは共重合ポリエステルにおける各構造単位の含有量、および共重合ポリエステルの物性を参考例1と同様にして調べたところ下記の表6に示すとおりであった。
【0091】
《実施例 1》[多層フイルムおよびカップの製造]
汎用の押出しラミネート装置を使用して、100m/分の供給速度で走向している軟質アルミニウム箔(厚さ30μm)上に、参考例1で得られた共重合ポリエステルを270℃で溶融押し出し、流延、積層し、表面温度50℃の冷却ロールで冷却して共重合ポリエステル層/金属層からなる2層フイルムとし、これを100m/分の速度でロール引き取って2層フイルム(多層フイルム)を製造した。得られた多層フイルムは全体の厚さが約50μm、共重合ポリエステル層の厚さが約20μm、軟質アルミニウム層の厚さが約30μmであった。
この溶融押出しラミネート時の耐ネックイン性、耐膜揺れ性、およびそれらの総合評価を上記した方法で行った。
また、上記で得られた多層フイルムについて、共重合ポリエステル層の透明性(ヘイズ値)、並びに多層フイルムの厚み斑、外観総合評価および面衝撃強度を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表7に示すとおりであった。
さらに、上記で得られた多層フイルム用いて、上記した方法で深絞り成形を行ってカップを製造してその深絞り成形性を上記した方法で評価したところ、下記の表7に示すとおりであった。
【0092】
《実施例2〜4》[多層フイルムおよびカップの製造]
共重合ポリエステルとして、参考例2〜4で得られたものを用いた以外は実施例1と同様にして多層フイルムを製造し、各実施例における溶融押出しラミネート時の耐ネックイン性、耐膜揺れ性およびそれらの総合評価、それぞれの実施例で得られた多層フイルムにおける共重合ポリエステル層の透明性(ヘイズ値)、並びに多層フイルムの厚み斑、外観総合評価、面衝撃強度および深絞り成形性の測定または評価を実施例1と同様にして行ったところ、下記の表7に示すとおりであった。
【0093】
《比較例1〜4》
参考例5〜8で製造したポリエステルまたは共重合ポリエステルを用いた以外は実施例1と同様にして多層フイルムを製造した。ただし、参考例7で得られた共重合ポリエステルは非晶性であったので、この共重合ポリエステルを用いた比較例3では210℃で溶融押出成形を行った。そして、各比較例における押出製膜時の耐ネックイン性、耐膜揺れ性およびそれらの総合評価、それぞれの比較例で得られた多層フイルムにおける共重合ポリエステル層の透明性(ヘイズ値)、並びに多層フイルムの厚み斑、外観総合評価、面衝撃強度および深絞り成形性の測定または評価を実施例1と同様にして行ったところ、下記の表7に示すとおりであった。
【0094】
なお、下記の表5および表6では化合物を略号で示しているが、略号の内容は下記の表4に示すとおりである。
【0095】
【表4】
【0096】
【表5】
【0097】
【表6】
【0098】
【表7】
【0099】
上記の表7における実施例1〜4の結果から、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位から主としてなる共重合ポリエステルであって、しかも共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、テレフタル酸単位およびエチレングリコール単位以外の2官能化合物単位(a)を2〜30モル%の範囲で有し、多官能化合物単位(b)を0.005〜1モル%の範囲で有し、示差分析計で測定した160℃における半結晶化時間が1500〜3500秒の範囲にあり、しかも270℃の温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜2×105ポイズの範囲で且つ270℃の温度における剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が8×103〜2×104ポイズの範囲であり、(1/3)log10(η2/η1)の値が上記の数式(I)を満足していて、上記の要件(i)〜(v)のすべてを満たし且つ他の極性基含有ポリマーを含有しない参考例1〜4の共重合ポリエステルよりなる層と、軟質アルミニウム箔層からなる多層フイルムは、該多層フイルムを製造するための溶融押出しラミネート時のネックインおよび膜揺れが抑制されて、共重合ポリエステル層の透明性に優れ、厚み斑が小さく、高品質であることがわかる。
しかも、実施例1〜4により得られた多層フイルムは面衝撃性および深絞り成形性にも優れていることがわかる。
【0100】
それに対して、表7の比較例1の結果から、上記の要件(i)、(ii)および(iv)を備えているが、多官能化合物単位(b)を有していないため要件(iii)を満たしておらず、しかも溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)の値並びに(1/3)log10(η2/η1)が上記の数式(I)の範囲から外れていて要件(v)を満たしていない参考例5の共重合ポリエステルを用いて、軟質アルミニウム箔との多層フイルムを製造した場合は、溶融押出しラミネート時のネックインおよび膜揺れが大きくて、厚み斑の大きい低品質の多層フイルムとなり、またヘイズ値が大きくて共重合ポリエステル層の透明性に劣っており、しかもそれにより得られた多層フイルムは深絞り成形性の点においても劣っていることがわかる。
【0101】
また、表7の比較例2の結果から、上記の要件(i)、(iii)および(v)を満たしているが、テレフタル酸単位、アジピン酸単位およびエチレングリコール単位以外の2官能化合物単位(a)を有しておらず上記の要件(ii)を満たしておらず、しかも半結晶化時間が200秒であって上記の要件(iv)をも満たしていない参考例6の共重合ポリエステルを用いて多層フイルムを製造している比較例2の場合は、溶融押出しラミネート時の結晶化が抑制されていないために、得られる多層フイルムではその共重合ポリエステル層のヘイズ値が20であって透明性に劣ること、多層フイルムの面衝撃強度が小さくて耐衝撃性に劣っていることがわかる。そして、そのような低品質の比較例2の多層フイルムは深絞り成形性においても劣っていることがわかる。
【0102】
そして、表7の比較例3の結果から、上記の要件(i)および(ii)を満たしているが、多官能化合物単位(b)を有していないため上記の要件(iii)を満たしておらず、半結晶化時間が実質的に測定不能で上記の要件(iv)を満たしておらず、しかも溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が本発明で規定する上記の範囲から外れていて上記の要件(v)をも満たしていない参考例7の共重合ポリエステルを用いて多層フイルムを製造している比較例3による場合は、溶融押出しラミネート時の膜揺れが大きくて、得られる多層フイルムの厚み斑が大きいこと、しかもその多層フイルムは面衝撃強度が小さくて耐衝撃性に劣っていることがわかる。そして、そのような低品質の比較例3の多層フイルムを用いて深絞り成形のような二次加工を行っても、良好な二次加工品が得られないことがわかる。
【0103】
さらに、表7の比較例4の結果から、テレフタル酸単位、アジピン酸単位およびエチレングリコール単位以外の2官能化合物単位(a)と多官能化合物単位(b)を有していないため上記の要件(ii)および(iii)を満たしておらず、しかも半結晶化時間が210秒であって上記の要件(iv)を満たしておらず、さらに溶融粘度(η2)が本発明で規定する範囲から外れ且つ(1/3)log10(η2/η1)の値が上記の数式(I)から外れていて要件(v)を満たしていない参考例4のポリエステルを用いて多層フイルムを製造している比較例4による場合は、溶融押出しラミネート時のネックインと膜揺れが著しくて、多層フイルムの厚み斑が大きいこと、しかもその多層フイルムの共重合ポリエステル層はヘイズ値が大きくて透明性に劣っていること、また多層フイルムの面衝撃強度が小さくて耐衝撃性にも劣っていることがわかる。そして、そのような低品質の比較例4の多層フイルムを用いて深絞り成形のような二次加工を行っても、良好な二次加工が得られないことがわかる。
【0104】
【発明の効果】
上記の要件(i)〜(v)を満たす共重合ポリエステルであって且つ他の極性基含有ポリマーを含有しない共重合ポリエステルからなる共重合ポリエステル層(A)と金属層(B)を有する本発明の多層構造体は、共重合ポリエステル層(A)の厚み斑、幅の縮小がなく、均一な厚みと所定の幅を有し、かつ共重合ポリエステル層(A)は透明性に優れており、しかも耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性、触感などの特性にも優れていて、極めて高い品質を有している。
そして、上記した優れた諸特性を有する本発明の多層構造体は、その特性を活かして絞り成形(特に深絞り成形)、曲げ加工、延伸加工、積層、ヒートシール加工、その他の二次加工や二次成形を円滑に行うことができ、それによって、各種缶類、各種パック類、各種カップ類、パウチ類、カバー類、キャップ類、チューブ類、積層体などの二次加工品や二次成形品にすることができ、それにより得られる二次加工品や二次成形品は、透明性、製品外観、寸法精度、耐衝撃性、ガスバリヤー性、フレーバーバリヤー性、耐熱性、耐薬品性等の諸特性において優れている。
特に、各種容器(パウチ類、カップ類、缶類など)に用いたときに、容器の少なくとも内面側に共重合ポリエステル層(A)を存在させて金属層(B)が直接露出しないようにすることによって、金属層(B)からの金属臭の内容物への移行、内容物による金属層(B)の腐食などが円滑に防止される。
そして、本発明の多層構造体を得るに当たって、上記の要件(i)〜(v)を満たす共重合ポリエステルであって且つ他の極性基含有ポリマーを含有しない共重合ポリエステルと金属基材を、必要に応じて接着剤と共に用いて、溶融押出しラミネートを行って多層構造体を製造する方法を採用すると、溶融押出しラミネート時のネックインや膜揺れを防止しながら、高い引き取り速度で、上記した優れた諸特性を備える多層構造体を、簡単に、生産性よく、低コストで得ることができ、それにより得られる多層構造体は厚み斑がなく、共重合ポリエステル層(A)における幅寸法の縮小が極めて小さい。
Claims (12)
- 共重合ポリエステル層(A)を少なくとも1層および金属層(B)を少なくとも1層有する多層構造体であって、共重合ポリエステル層(A)が、下記の要件(i)〜(v);
(i) テレフタル酸単位およびエチレングリコール単位から主としてなり且つ他の共重合単位を有する共重合ポリエステルである;
(ii) アジピン酸単位を持たず、テレフタル酸単位およびアジピン酸単位以外のジカルボン酸単位、エチレングリコール単位以外のジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2官能化合物単位(a)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、2〜30モル%の割合で有する;
(iii) カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(b)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、0.005〜1モル%の割合で有する;
(iv) 160℃における半結晶化時間が1500〜3500秒の範囲である;並びに、
(v) 270℃の温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜2×105ポイズであり、270℃の温度における剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が8×103〜2×104ポイズであり、且つ溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が下記の数式(I)を満足する;
- 共重合ポリエステル中の2官能化合物単位(a)が、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物から誘導される構造単位である請求項1の多層構造体。
- 共重合ポリエステル中の2官能化合物単位(a)が、1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導される構造単位である請求項1の多層構造体。
- 共重合ポリエステル中の多官能化合物単位(b)が、トリメリット酸、トリメシン酸およびピロメリット酸から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物から誘導される構造単位である請求項1〜3のいずれか1項の多層構造体。
- 金属層(B)の片側または両側に共重合ポリエステル層(A)が存在する請求項1〜4のいずれか1項の多層構造体。
- 共重合ポリエステル層(A)および金属層(B)の間に接着剤層(C)を有する請求項1〜5のいずれか1項の多層構造体。
- 多層構造体が、フイルム、シートまたは板の形態である請求項1〜6のいずれか1項の多層構造体。
- 溶融押出しラミネートにより得られる積層フイルム、積層シートまたは積層板である請求項1〜7のいずれか1項の多層構造体。
- 下記の要件(i)〜(v);
(i) テレフタル酸単位およびエチレングリコール単位から主としてなり且つ他の共重合単位を有する共重合ポリエステルである;
(ii) アジピン酸単位を持たず、テレフタル酸単位およびアジピン酸単位以外のジカルボン酸単位、エチレングリコール単位以外のジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2官能化合物単位(a)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、2〜30モル%の割合で有する;
(iii) カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導される多官能化合物単位(b)を、共重合ポリエステルの全構造単位の合計モル数に基づいて、0.005〜1モル%の割合で有する;
(iv) 160℃における半結晶化時間が1500〜3500秒の範囲である;並びに、
(v) 270℃の温度における剪断速度0.1rad/秒での溶融粘度(η1)が5×104〜2×105ポイズであり、270℃の温度における剪断速度100rad/秒での溶融粘度(η2)が8×103〜2×104ポイズであり、且つ溶融粘度(η1)および溶融粘度(η2)が下記の数式(I)を満足する;
- 金属基材が、金属箔、金属シートまたは金属板である請求項9の方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項の多層構造体を用いて二次加工または二次成形を行う方法。
- 請求項11の方法により得られる二次加工品または二次成形品。
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