JPWO2003081765A1 - シンクロナスリラクタンスモータの制御装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はシンクロナスリラクタンスモータの制御装置に関し、特に、位置センサを用いずにロータの角度を推定して駆動する制御装置に関する。
背景技術
従来のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置は、ホール素子、レゾルバあるいは光エンコーダなどの位置センサを用いてロータの角度情報を得ていた。そのため、位置センサの分だけコストが上昇し、シンクロナスリラクタンスモータのサイズも大きくなっていた。
そこで、位置センサを省略することで、低コストと小型化を実現するシンクロナスリラクタンスモータの制御装置として、一般的には図23に示すようなシンクロナスリラクタンスモータの制御装置が知られている。
図23において、主回路は交流電源1と、交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器2と、直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換器3と、DC/AC変換器3により変換された交流電力により駆動するシンクロナスリラクタンスモータ5から構成されている。
一方、制御回路は、モータ電流を検出するための電流検出器11a、11bおよびモータ電流検出部12と、シンクロナスリラクタンスモータの位置および速度推定を行う位置・速度推定演算部13と、外部から与えられる速度指令値と位置・速度推定演算部13から得られる速度推定値との速度誤差をゼロとするべく電流指令値を決定する速度制御演算部14と、速度制御演算部14から得られる電流指令値をトルク電流成分と界磁電流成分に分配する通電位相分配部15と、トルク電流指令値および界磁電流指令値とモータ電流検出値との電流誤差をゼロとするべく電圧指令値を決定する電流制御演算部17と、シンクロナスリラクタンスモータ5における各駆動素子毎に通電信号を分配する通電分配部18とから構成されている。
図24は、一般的なシンクロナスリラクタンスモータ5の構成を示す断面図である。シンクロナスリラクタンスモータ5はロータ8とステータ6から構成される。
図23に示す制御装置において、位置・速度推定演算部13はモータ電流および電圧指令値の情報を用いて磁束を求める。次に、この磁束の静止座標に対する角度を示すαβ軸磁束角度を求める。そして、回転座標に対するこの磁束の位相を示すdq軸座標位相を設定する。さらに、αβ軸座標角度からdq軸座標位相を減算し、推定角度を求める。そして、この推定角度に基づきシンクロナスリラクタンスモータ5を制御する。
また、低速用角度推定と高速用角度推定の二方式の角度推定を行い、低速域と高速域の境界では、両者の方式で推定した角度の割合を除々に変化させ合成して推定角度を生成する。なお、低速域においては、電流パルスを印加してその電圧応答から角度を求める。
例えば、特開2001−197774号公報に記載の位置センサレス駆動方式のシンクロナスリラクタンスモータは、電圧指令値にローパス機能を作用させるローパスフィルタ手段を有し、ロータの速度が大きくなるとローパス機能の作用を小さくさせることで、低速域と高速域の境界域において、電圧パルスの影響を除去して安定に角度推定方式の切り替えを行い、高速域において時間遅れがないシンクロナスリラクタンスモータの制御を実現させている。
しかしながら、上記従来の構成では制御演算が複雑であり、かつインバータの電圧制御率が100%を超える場合、いわゆる電圧飽和となる場合や、急峻な負荷変動がある場合には位置・速度推定が困難となり、モータ駆動制御が不安定になるといった課題を有していた。
発明の開示
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、電圧飽和や急峻な負荷変動に対してロバストな制御系を構築したシンクロナスリラクタンスモータの制御装置を提供することを目的とする。
本発明のモータ制御装置は、少なくともステータ巻線のインダクタンス変化およびモータ電流に伴って発生するリラクタンストルクを利用するシンクロナスリラクタンスモータの制御する装置である。
その制御装置において、電流検出手段はシンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に流れるモータ電流を検出する。
位置・速度推定手段は、電流検出手段による検出値と、シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に印加する電圧の指令値である電圧指令値とから、シンクロナスリラクタンスモータの誘起電圧を推定し、その誘起電圧の推定値に基づきシンクロナスリラクタンスモータのロータ位置および回転速度の推定値を決定する。
速度制御手段は、位置・速度推定手段による回転速度の推定値と、外部から与えられる回転速度の目標値との誤差をゼロとするように、シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に供給する電流指令値を決定する。
分配手段は、予め設定されたシンクロナスリラクタンスモータの電流位相角により、速度制御手段からの電流指令値を、そのトルク電流成分であるトルク電流指令値と界磁電流成分である界磁電流指令値に分配する。
トルク電流補正手段は、シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が発生する負荷トルクをシンクロナスリラクタンスモータの出力トルクと一致させるように、分配手段からのトルク電流指令値と、位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値とに基いてトルク電流指令値を補正する。
電流制御手段は、トルク電流補正手段からのトルク電流指令値の補正値および分配手段からの界磁電流指令値と、電流検出手段から得られるモータ電流の検出値との誤差をゼロとするように電圧指令値を生成する。
通電分配手段は、電圧指令値に基いてシンクロナスリラクタンスモータにおける各駆動素子毎に通電信号を分配する。
本発明の制御装置は、上記の構成を有することにより、シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が発生する負荷トルクと、シンクロナスリラクタンスモータの出力トルクとを常時一致させるようにする。これにより、急峻な負荷変動に対してロバストな制御系が実現でき、また、トルク変動を抑制し低振動化・低騒音化が実現できる。
発明を実施するための最良の形態
以下、添付の図面を参照し、本発明に係るシンクロナスリラクタンスモータの制御装置の好ましい実施形態について説明する。
実施の形態1
図1に本発明に係るシンクロナスリラクタンスモータの制御装置の一実施例のシステム構成図を示す。なお、以下では、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータに対して位置センサを用いずに180度通電である正弦波駆動を行う場合の例を説明する。
主回路は交流電源1と、交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器2と、直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換器3と、DC/AC変換器3により変換された交流電力により駆動する永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータ4とから構成されている。
制御回路は、モータ電流を検出するための電流検出器11a、11bおよびモータ電流検出部12と、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの位置および速度推定を行う位置・速度推定演算部13と、外部から与えられる速度指令値と位置・速度推定演算部13から得られる速度推定値との速度誤差をゼロとするべく電流指令値を決定する速度制御演算部14と、速度制御演算部14から得られる電流指令値をトルク電流成分と界磁電流成分に分配する通電位相分配部15と、トルク電流指令値を補正するトルク電流補正演算部16と、トルク電流指令値の補正値および界磁電流指令値とモータ電流検出値との電流誤差をゼロとするべく電圧指令値を決定する電流制御演算部17と、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータ4における各駆動素子毎に通電信号を分配する通電分配部18とから構成されている。
図2は位置・速度推定における座標軸の定義を示す図である。一般的に、正弦波駆動を行う場合には、制御演算を容易にするため図2のようにモータの諸量をu、v、wの三相からdq軸の二相へと三相−二相変換を行い直流化する。なお、三相から二相への変換方法については公知のため省略する。図2において、θmeは実際のロータ位置(u相基準のq軸との位相差)であり、θ〜は推定位置(u相基準のγ軸との位相差)である。また、位置誤差Δθには次式の関係がある。
図3および図4は、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータ4の構成例を示した図である。図3に示すシンクロナスリラクタンスモータは、分布巻ステータ6と、永久磁石9を有したロータ8から構成される。図4に示すシンクロナスリラクタンスモータは、集中巻ステータ7と永久磁石9を有したロータ8がら構成されている。ロータに永久磁石を内蔵させることによりモータ効率を向上させている。永久磁石9には、シンクロナスリラクタンスモータの定格負荷におけるブレーキトルクを相殺するのに必要最低限の磁気量のみを有するものを使用するのが好ましい。これにより、定格負荷におけるモータ効率の改善を図るだけでなく、永久磁石によるコストアップを最小限に抑制することが可能となる。
永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータ4の磁束ベクトルの一例を図5に示す。図5において、ベクトルAは正トルクを発生する磁束成分であり、補助磁石の磁束成分(ベクトルC)は、ブレーキトルク(負トルク)を発生する磁束成分(ベクトルB)を打ち消すように作用する。なお、この場合の発生トルクは式(1)のように表される。
式(1)において、npは極対数、Ld、Lqはそれぞれd軸およびq軸インダクタンスΛ0は永久磁石による磁束鎖交数、id、iqはそれぞれd軸およびq軸電流である。
以下に、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータ4の位置センサレス駆動を説明する。
まず、速度制御演算部14が、外部から与えられる回転速度指令値ω*と回転速度推定値ω〜を用いて、次式で表される演算により電流指令値I*を求める。
ここで、Kp1、KI1、はPI補償器のゲイン、pは微分演算子である。
次に、通電位相分配部15は、電流指令値I*と予め設定された電流位相角βを用いて、次式で表される演算により電流指令値I*をd軸電流id *およびq軸電流iq0に分配する。
トルク電流補正演算部16は、回転速度推定値ω〜とq軸電流iq0を用いて、次式で表される演算によりq軸電流指令値iq *を導出する。
ここで、式(4)ではマイコンなどで演算を行うため離散時間系をとっており、nTsは現在のサンプリング時刻で、(n−1)Tsはひとつ前のサンプリング時刻である。また、Kp2、KI2はPI補償器のゲインである。トルク電流補正演算部16は上式を用いてq軸電流指令値iq *を導出することにより、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が発生する負荷トルクと、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの出力トルクとを常時一致させるようにしている。
電流制御演算部17は、モータ電流検出値iu、iv、iwとdq軸電流指令値id *、iq *を用いて、以下の演算により三相電圧指令値vu *、vv *、vw *を導出する。
まず、次式で表されるようにモータ電流検出値iu、iv、iwを三相−二相変換によりγδ軸電流検出値iγ、iδに変換する。
次に、dq軸電流指令値id *、iq *とγδ軸電流検出値iγ、iδを用いて、式(6)で表されるようにγδ軸電圧指令値vγ *、vδ *を導出する。
ここで、Kp3、KI3およびKp4、KI4はPI補償器のゲインである。
最後に、次式で表されるようにγδ軸電圧指令値vγ *、vδ *を二相−三相変換により三相電圧指令値vu *、vv *、vw *に変換する。
さらに、位置・速度推定演算部13は、三相電圧指令値vu *、vv *、vw *とモータ電流検出値iu、iv、iwを用いて、以下のような方法で位置・速度推定を行う。
ここで、三相電圧方程式より、誘起電圧は式(8)で表される。
式(8)において、相電圧、相電流および誘起電圧vuvw、iuvw、euvwは3次元ベクトルで、ステータ巻線抵抗およびインダクタンスR、Lは3行3列の行列でそれぞれ表記している。
具体的には、式(9)で表される演算により推定誘起電圧e〜 u、e〜 v、e〜 wを導出する。
ここで、La0=(Ld+Lq)/3、Las=(Lq−Ld)/3である。
また、誘起電圧eu、ev、ewは回転速度推定値ω〜と誘起電圧定数KEを用いると次式(10)で表すことができる。
よって、式(9)および式(10)より、推定位置θ〜は次式のように導出することができる。
ただし、θ〜 u、θ〜 v、θ〜 wは式(12)で表される。
ここで、δ0はゼロ割防止のための微小項である。
本実施形態の制御装置によれば、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が図6で示される一般的なロータリ圧縮機の場合に、トルク電流補正演算部により図7に示すように負荷トルクに追従したトルク電流指令値を生成する。これにより、シンクロナスリラクタンスモータの出力トルクと負荷トルクとを常時一致させることが可能となる。
または、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が図8で示される一般的なスクロール圧縮機の場合、本実施形態の制御装置によれば、ローター回転中における負荷変動が小さいため、定常的には前述のトルク電流指令値を補正する必要が無いので、制御周期の整数倍の周期でトルク電流指令値を補正するなどの方法を用いることで演算量を大幅に低減することが可能となる。
なお、前述の説明では、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータを位置センサを用いずに180度通電である正弦波駆動を行う場合について述べたが、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータはロータに永久磁石を有しているため、一般にルームエアコンなどの家電製品に用いられている位置検知方式の矩形波通電でも適用可能である。
さらに、前述の説明では、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの制御方式について述べたが、一般的なシンクロナスリラクタンスモータにも適用可能である。
以上により、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が発生する負荷トルクと、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの出力トルクとを常時一致させることができるだけでなく、三相電圧方程式より位置・速度推定を行うため、電圧飽和や急峻な負荷変動に対してロバストな制御系が実現できるだけでなく、トルク変動を抑制し低振動化・低騒音化が実現できる。
実施の形態2
本実施形態では、回転角度推定値ω〜が基準値以下の低速領域においてのみトルク電流指令値の補正を行う。本実施形態では、トルク電流補正演算部のみが実施の形態1のものと異なる。図9は本実施形態のトルク電流補正演算部の構成を示した図である。
トルク電流補正演算部16aは、回転角度推定値ω〜と予め設定された推定回転角度基準値ωRとを入力し比較する推定速度比較器42と、推定速度比較器42の出力信号に応じてトルク電流指令値の補正を行うq軸電流補正演算部41とを備える。
推定速度比較器42の出力信号εwは、回転角度推定値ω〜と推定回転角度基準値ωRから式(13)のように表される。
q軸電流補正演算部41の出力値iq *は、推定速度比較器の出力信号εwに応じて式(14)のように表される。
すなわち、トルク電流補正演算部16は、回転角度推定値ω〜が推定回転角度基準値ωR以下の低速領域においてのみトルク電流指令値の補正を実行する(トルク電流補正動作をオンにする)。
なお、推定速度比較器42にはヒステリシスを具備させても良い。すなわち、推定速度比較器42において、回転角度推定値ω〜が増加方向に変化する場合の基準値ωRの値と、回転角度推定値ω〜が減少方向に変化する場合の基準値ωRの値とを異ならせても良い。
さらに、前述の説明では、推定回転角度基準値ωRが一つの場合について述べたが、推定回転角度基準値をいくつか設けて、各基準値で定まる回転速度領域の各々においてトルク電流指令値の補正または非補正の切り替えを行っても良い。
以上により、トルク電流指令値の補正に伴う演算時間を大幅に短縮し、演算装置の負荷容量を軽減させ、かつコストダウンが図れるだけでなく、周辺回路を簡素化することが可能となる。
実施の形態3
本実施形態では、トルクの変動量を検出し、そのトルク変動量が基準値よりも大きい領域においてのみトルク電流補正動作をオンにする。本実施形態では、トルク電流補正演算部のみが実施の形態1のものと異なる。本実施形態のトルク電流補正演算部の構成を図10に示す。
トルク電流補正演算部16bにおいて、トルク変動検出部51は回転角度推定値ω〜によりトルク変動検出値Δτを検出する。トルク変動比較器52は、トルク変動検出部51からのトルク変動検出値Δτとトルク変動基準値ΔτRとを入力し、その比較結果を出力する。q軸電流補正演算部41はトルク変動比較器52の出力信号に応じてトルク電流指令値の補正を行う。
具体的には、トルク変動検出部51の出力信号であるトルク変動検出値Δτは、回転角度推定値ω〜により式(15)で導出される。
ただし、Kτ、Tτは定数である。
トルク変動比較器の出力信号ετは、トルク変動検出値Δτとトルク変動基準値ΔτRから式(16)で表される。
ここで、q軸電流補正演算部41の出力値iq *は、トルク変動比較器の出力信号ετに応じて次式のように表される。
即ち、トルク変動検出値Δτがトルク変動基準値ΔτRよりも大きい領域においてのみトルク電流指令値の補正を行うものである。
なお、トルク変動比較器52はヒステリシスを設けても良い。すなわち、トルク変動比較器52において、トルク変動検出値Δτが増加方向に変化する場合の基準値ΔτRの値と、トルク変動検出値Δτが減少方向に変化する場合の基準値ΔτRの値とを異ならせても良い。
また、前述の説明では、トルク変動基準値ΔτRが一つの場合について述べたが、トルク変動基準値をいくつか設けて、各基準値で定まるそれぞれの領域においてトルク電流指令値の補正または非補正の切り替えを行っても良い。
以上により、トルク電流指令値の補正に伴う演算時間を必要最低限まで短縮し、演算装置の負荷容量を最大限軽減させ、かつ大幅にコストダウンが図れるだけでなく、効率的なトルク変動の抑制が可能となる。
実施の形態4
本実施形態では、トルク電流補正演算部は、トルク電流の非補正時から補正時へ切り替える際に、トルク電流指令値iq *が急激に変化しないようにし、トルク電流指令値iq *が不連続となるのを防止するようにする。図11を用いてその切替え時の制御を説明する。
図11に示すように、トルク電流の非補正時(トルク電流補正オフ時)の電流指令値(X)から、トルク電流の補正時(トルク電流補正オン時)の電流指令値(Y)へと切り替える場合に切替猶予期間を設けており、これにより、トルク電流指令値iq *が急激に変化して不連続となるのを防止する。
具体的には、非補正時のトルク電流指令値をi* q_off、補正時のトルク電流指令値をi* q_on、トルク電流指令値の現在値をi* q_nowとすると、非補正時から補正時へと切り替わる場合、トルク電流指令値の現在値i* q_nowは式(18)で表される。
ここで、Δiqは微小量であり、i* q_now=i* q_onの条件を満たした段階で補正時に切り替わるものである。
逆に、補正時から非補正時へと切り替わる場合、トルク電流指令値の現在値i* q_nowは式(19)で表される。
ここで、i* q_now=i* q_offの条件を満たした段階で非補正時に切り替わるものである。
なお、トルク電流補正切替猶予期間は予め最大期間を定め、最大期間内のみ、トルク電流指令値を段階的に変化させるように切り替えを行っても良い。
以上により、トルク電流補正オン/オフ切り替えに伴う制御安定性および信頼性の向上が図れ、モータの乱調を防止することができる。
実施の形態5
図12に速度制御演算部14の構成例を示す。速度制御演算部14は電流指令演算部71と推定速度平均演算部72を含む。トルク電流補正オン時には、推定速度演算部72は、回転速度推定値ω〜の平均値ωaveを導出し、電流指令演算部71は外部から与えられる回転速度指令値ω*と推定速度平均値ωaveとの速度誤差をゼロとするべく電流指令値I0 *を導出する。また、トルク電流補正オフ時には、推定速度平均演算部72は平均演算を行わず、そのまま回転速度推定値ω〜を出力し、電流指令演算部71では外部から与えられる回転速度指令値ω*と回転速度推定値ω〜との速度誤差をゼロとするべく電流指令値I*を導出する。
具体的には、推定速度平均値ωaveは式(20)で表される。
ここで、nは整数である。
また、トルク電流指令値の補正時には、式(21)で表される電流指令値I0 *を導出する。
ここで、Kp5、KI5はPI補償器のゲインである。
そして、トルク電流指令値の非補正時には、推定速度平均値ωaveを用いずに式(2)を用いて電流指令値I*を導出する。
以上のように、本実施形態では、トルク電流補正オン時において、推定速度平均値ωaveを用いて電流指令値I0 *を導出するため、トルク変動が大きい場合においても電流指令値I0 *の変化量が小さく最適駆動点からの逸脱を最小限に防止することが可能となる。すなわち、トルク電流指令値の補正時に速度制御演算部から出力される電流指令値の変化を最小限に抑制することで、モータ効率最適点からの逸脱を防止し、高効率運転が可能となる。
推定速度平均演算部72は上記のようにトルク電流の補正動作に連動して、その出力を回転速度推定値ω〜の平均値ωave又は回転速度推定値ω〜に切替える。この場合、トルク電流指令値の補正動作のオン/オフの切り替え時において、推定速度ωを徐々に変化させていき、推定速度ωが不連続となるのを防止するのが好ましい。
すなわち、トルク電流指令値の非補正時から補正時へと切替わった場合に、推定速度平均演算部72は、即座に推定速度平均値ωave(ω−)を出力するのではなく、図13に示すように、猶予期間を設け、徐々に推定速度平均値ωave(ω−)に近づけるようにその出力(回転速度推定値ω〜)を所定の変化量Δωsずつ段階的に変化させていってもよい。これにより、非補正/補正動作の切り替わり時において、非補正時の速度推定値ω〜から、推定速度平均値ωave(ω−)の値へ滑らかに接続されるようになる。
具体的には、非補正時の出力速度をωo_off(回転速度推定値ω〜)、補正時の出力速度(推定速度平均値ωave)をωo_on、出力速度の現在値をωo_nowとすると、非補正時から補正時へと切り替わる場合、出力速度の現在値ωo_nowは式(22)で表される。
ここで、Δωsは所定の微小量である。出力速度ωo_nowは、ωo_now=ωo_onの条件を満たした段階で補正時の値に切り替わる。
逆に、補正時から非補正時へと切り替わる場合、出力速度の現在値ωo_nowは式(23)で表される。
出力速度ωo_nowは、ωo_now=ωo_offの条件を満たした段階で非補正時の値に切り替わる。
なお、切替猶予期間として一定期間を定めておき、その一定期間内の間のみ上式(22)、(23)を用いて推定速度を徐々に切り替えていくようにしても良い。
以上のように、補正/非補正時において推定速度を徐々に変化させる猶予期間を設けたことより、推定速度の急峻な変化を防止でき、トルク電流指令値の補正/非補正の切り替え時の制御安定性および信頼性を向上でき、電流指令値の急峻な変化に伴うハンチングを抑制することが可能となる。
実施の形態6
図14に電流制御演算部17の構成例を示す。電流制御演算部17は、二相電流指令値id *、iq *を三相電流指令値iu *、iv *、iw *に変換する2相/3相変換部91と、三相電流指令値iu *、iv *、iw *とモータ電流検出値iu、iv、iwを用いて三相電圧指令値vu *、vv *、vw *を導出する電圧指令演算部92とを含む。
三相電流指令値iu *、iv *、iw *は式(24)で表される。
また、三相電圧指令値vu *、vv *、vw *は式(25)で表される。
ここで、Kp6、KI6およびKp7、KI7はPI補償器のゲインである。
以上の構成により正確な電圧指令値を生成することが可能となり、モータ電流の歪みを最小限に抑制でき、低騒音化・低振動化が実現できる。
実施の形態7
位置・速度推定演算部13の構成例を図15に示す。位置・速度推定演算部13は誘起電圧推定部101と位置誤差修正部103を含む。誘起電圧推定部101は、三相電圧指令値vu *、vv *、vw *とモータ電流検出値iu、iv、iwとを用いて誘起電圧推定値e〜 u、e〜 v、e〜 wを導出し、一方で内部に有したモータモデル102から誘起電圧eu、ev、ewを導出する。位置誤差修正部103は誘起電圧推定値e〜 u、e〜 v、e〜 wと誘起電圧eu、ev、eWとの誘起電圧誤差をゼロとするべく推定位置θ〜を逐次修正する。
具体的には、誘起電圧推定値e〜 u、e〜 v、e〜 wは式(9)で表され、誘起電圧eu、ev、ewは式(26)で表される。
ここで、VG[nTs]は式(27)〜式(29)により逐次演算する。
ここで、Keは定数であり、mは整数である。
また、位置誤差修正部103は、誘起電圧誤差Δeuvw=e〜 uww−e〜 uvwの符号情報に応じて、推定位置θ〜を式(30)のように逐次修正する。
ただし、Δθ〜[nTs]は推定位置補償量Δθpを用いて式(31)で表される。
ここで、Kθ1、Kθ2は定数である。
以上により、電圧飽和時でも位置・速度推定が可能となり、インバータの出力限界を増加できるだけでなく、シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線をさらに巻き込むことが可能となり、駆動システム全体の効率を向上できる。
実施の形態8
本実施形態では、実施の形態7に示した位置・速度推定演算部13において、さらに、補償したモータ定数を用いて誘起電圧推定値を導出しており、これにより位置・速度推定精度の向上を図っている。
図16に位置・速度推定演算部13内の誘起電圧推定部101の構成を示す。誘起電圧推定部101は誘起電圧推定演算部111とモータ定数補償部112を含む。
モータ定数補償部112は三相電圧指令値、モータ電流検出値および推定速度を用いてモータ定数を補償する。誘起電圧推定演算部111は三相電圧指令値、モータ電流検出値およびモータ定数補償値を用いて誘起電圧推定値を導出する。以下では、dq軸上での電圧方程式より、モータ定数の1つであるモータ巻線抵抗値を補償する方法について説明する。
具体的には、dq軸上での電圧方程式は式(32)のように表される。
ωmeはロータ実回転速度である。
ここで、動作点近傍では、dq軸とγδ軸(図2参照)はほぼ一致していると考え、Δθ≒0の近似を行うと式(32)は式(33)のように表される。
モータ巻線抵抗補償値をR〜とすると、式(33)は式(34)のように変形できる。
ここで、式(34)より、iδの符号に関わらず補償値R〜と真値Rの関係が求められ、R〜がRよりも大きい場合には右辺は正となり、逆の場合には負となる。そこで、式(35)を用いてモータ巻線抵抗値の補償を行う。
ここで、KRは積分ゲインである。
なお、式(35)では、式(34)の右辺の積分のみを行っているが、比例項を付け加えてPI補償を行うことで応答性がより向上する。
さらに、iδの符号が変化しない場合は式(35)を辺々iδで除算し演算時間の短縮を図ることが可能である。
なお、モータ巻線抵抗のみでなく、インダクタンスや誘起電圧定数といった他のモータ定数にも本発明を適用することが可能である 以上により,正確なモータ定数を用いることで常時位置・速度推定精度の向上が図れるだけでなく、電力損失を最小限に抑制できる。
実施の形態9
本実施形態では、実施の形態8に示した位置・速度推定演算部13において、速度に応じてモータ定数の補償動作のオン/オフを切替えるモータ定数補償部の構成を説明する。
図17にモータ定数補償部112の構成を示す。モータ定数補償部112は、回転角度推定値ω〜と予め設定された推定回転角度基準値ωRとを入力し、比較する推定速度比較器42と、推定速度比較器42の出力信号に応じてモータ定数の補償を行うモータ定数補償演算部121とを含む。
以下では、モータ定数の1つであるモータ巻線抵抗値Rを補償する場合について説明する。
推定速度比較器42の出力信号εwは、回転角度推定値ω〜と推定回転角度基準値ωRから式(13)のように表される。また、モータ定数補償演算部121の出力値Routは、推定速度比較器42の出力信号εwに応じて式(36)のように表される。
ここで、R〜は式(35)で表されるモータ巻線抵抗補償値、Rnはノミナル値(公称値)である。
上式から分かるように、モータ定数補償部112は、回転角度推定値ω〜が推定回転角度基準値ωRよりも大きくなる高速領域においてのみモータ定数の補償を行う。これにより、モータ定数の補償に伴う演算時間を大幅に短縮し、演算装置の負荷容量を軽減させ、かつコストダウンが図れるだけでなく、周辺回路を簡素化できる。
なお、推定速度比較器42にはヒステリシスを具備させても良い。すなわち、推定速度比較器42において、回転角度推定値ω〜が増加方向に変化する場合の基準値ωRの値と、回転角度推定値ω〜が減少方向に変化する場合の基準値ωRの値とを異ならせても良い。
また、前述の説明では、推定回転角度基準値ωRが一つの場合について述べたが、推定回転角度基準値をいくつか設けて、それぞれの回転速度領域においてモータ定数の補償時または非補償時の切り替えを行っても良い。
さらに、モータ巻線抵抗のみでなく、インダクタンスや誘起電圧定数といった他のモータ定数にも本発明を適用することが可能である。
実施の形態10
モータ定数補償部の別の構成を図18に示す。本実施形態では、トルク変動量を検出し、その変動量が基準値以下の領域においてのみモータ定数の補償を行う。すなわち、トルク変動量に応じてモータ定数補償動作のオン/オフを切替える。
図18に示すように、モータ定数補償部112bはトルク変動検出部51、トルク変動比較器52、及びモータ定数補償演算部121を含む。トルク変動検出部51は回転角度推定値ω〜によりトルク変動検出値Δτを検出する。トルク変動比較器52は、トルク変動検出値Δτとトルク変動基剥直ΔτRとを入力して比較する。モータ定数補償演算部121は、トルク変動比較器52の出力信号に応じてモータ定数の補償を行う。
次に、モータ定数としてモータ巻線抵抗値R〜を補償する場合の動作について説明する。
トルク変動検出部51の出力信号であるトルク変動検出値Δτは、回転角度推定値ω〜により式(15)のように導出される。また、トルク変動比較器の出力信号ετは、トルク変動検出値Δτとトルク変動基準値ΔτRから式(16)のように表される。モータ定数補償演算部121の出力値Routは、トルク変動比較器の出力信号ετに応じて式(37)のように表される。
ここで、R〜は式(35)で表されるモータ巻線抵抗補償値、Rnはノミナル値(公称値)である。
上式より、トルク変動検出値Δτがトルク変動基準値ΔτR以下の領域においてのみモータ定数の補償を行う。
なお、トルク変動比較器52にはヒステリシスを具備させても良い。
また、前述の説明では、トルク変動基準値ΔτRが一つの場合について述べたが、トルク変動基準値をいくつか設けて、それぞれの領域においてモータ定数の補償時または非補償時の切り替えを行っても良い。
さらに、モータ巻線抵抗のみでなく、インダクタンスや誘起電圧定数といった他のモータ定数にも本発明を適用することが可能である。
以上により,モータ定数の補償に伴う演算時間を必要最低限まで短縮し、演算装置の負荷容量を最大限軽減させ、かつ大幅にコストダウンが図れる。
実施の形態11
実施の形態8〜10において、モータ定数補償部112におけるモータ定数の補償動作オン/オフの切替時の制御について図19を用いて説明する。
本実施形態では、実施の形態8〜10のモータ定数の補償動作において、モータ定数(モータ巻線抵抗値)の非補償時(補償動作オフ時)から補償時(補償動作オン時)へと切り替わる場合、図19に示すように、モータ定数補償切替のための猶予期間を設ける。これによって、急激なモータ定数の変化を抑制し、モータ定数が不連続となるのを防止する。
具体的には、非補償時のモータ巻線抵抗値をRoff、補償時のモータ巻線抵抗値をRon、モータ巻線抵抗値の現在値をRnowとすると、非補償時から補償時へと切り替わる場合、モータ定数補償演算部121から出力されるモータ巻線抵抗値の現在値Rnowは式(38)で表される。
ここで、ΔRは所定の微小量である。モータ定数補償演算部121からの出力は、猶予期間においては補償時の値Ronに近づくようにΔRずつ徐々に変化し、Rnow=Ronの条件を満たした段階で補償時の値Ronに切り替わる。
逆に、補償時から非補償時へと切り替わる場合、モータ定数補償演算部121から出力されるモータ巻線抵抗値の現在値Rnowは式(39)で表される。
すなわち、モータ定数補償演算部121からの出力は、猶予期間においては非補償時の値Roffに近づくようにΔRずつ徐々に変化し、Rnow=Roffの条件を満たした段階で非補償時の値Roffに切り替わる。
なお、モータ定数補償切替のための猶予期間として一定の期間を定め、その一定期間内のみモータ巻線抵抗値を段階的に変化させるようにしても良い。
以上の構成により、モータ定数の補償動作のオン/オフ切り替えに伴う制御安定性および信頼性の向上が図れ、モータの乱調および脱調を防止することができる。
実施の形態12
本実施形態では、シンクロナスリラクタンスモータの電圧飽和率を検出し、電圧飽和率が所定値よりも高いときに飽和を回避すべく、目標速度を低下させる制御を行なう。
図20に本実施形態のシンクナスリラクタンスモータの制御装置の構成を示す。本実施形態の制御装置は、実施の形態1の制御装置の構成に加えて、さらに、シンクロナスリラクタンスモータ4の電圧指令値から電圧飽和の度合い(電圧飽和率)を導出する電圧飽和識別部31を備えている。
電圧飽和識別部31は次式を用いて電圧飽和率σvolを求める。
ここで、VRは基準電圧(電圧飽和率が100%となる場合の電圧設定値)、vγ *、vδ *はγδ軸電圧指令値である。なお、vγ *、vδ *については、式(6)により導出する。
電圧飽和識別部31は上式(40)で得た電圧飽和率σvolと、予め設定された電圧飽和率設定値σRとを比較し、その比較結果を速度制御演算部14に出力する。
速度制御演算部14は、電圧飽和識別部31からの比較結果に基いてσvol≧σRの場合に、外部から与えられる回転速度目標値ω*を低減する。例えば、次式(41)で新たな回転速度目標値ω*を低減する。
速度制御演算部14は電圧飽和率が基準値よりも小さくなるまで回転速度目標値ω*を低減し、その低減した値を用いて電流指令値を求めていく。
なお、電圧飽和が発生する運転領域(主として高速域)では、vγ *、vδ *は回転速度(同期モータ、シンクロナスリラクタンスモータでは、回転速度目標値≒モータ実回転速度となる)に概ね比例するため(例えば式(33)を参照)、回転速度目標値を下げることで、上式(40)により導出される電圧飽和率を低下することができる。
以上のように、過剰な電圧飽和を避けることで、位置・速度推定演算部における推定位置θ〜の誤差が大きくなることを回避し、脱調を防止できる。
実施の形態13
図21に本実施形態のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置の構成を示す。本実施形態の制御装置は、実施の形態1の制御装置の構成に加えて、さらに、シンクロナスリラクタンスモータ4の電圧指令値から電圧飽和の度合い(電圧飽和率)を導出する電圧飽和識別部31と、インバータ3へ入力する直流電圧(以下「インバータ直流電圧」という。)を検出するDC電圧検出部33と、インバータ直流電圧のリップルを相殺するようにモータ電圧指令値を補正するモータ電圧補正部35とを備えている。
電圧飽和識別部31はシンクロナスリラクタンスモータ4の電圧指令値から電圧飽和率を導出し、この導出した値と、予め設定された電圧飽和率設定値とを比較し、その比較結果を速度制御演算部14に出力する。このとき、電圧飽和識別部31において電圧飽和率設定値はインバータ直流電圧の脈動に応じて補正される。すなわち、電圧飽和識別部31はDC電圧検出部33からインバータ直流電圧の検出値を入力し、インバータ直流電圧の脈動に応じて電圧飽和率設定値を補正する。これにより、インバータ直流電圧の脈動分を考慮した電圧飽和時の保護制御を実現している。電圧飽和率設定値の補正値σRhは次式で求められる。
ここで、σRは予め設定された電圧飽和率設定値、V0は予め設定されたインバータ直流電圧の基準値である。
モータ電圧補正部35は、電流制御演算部17からのモータ補正電圧指令値をDC電圧検出部33により検出されたインバータ直流電圧Vdcに基いて補正し、これによりモータ電流波形の歪みを低減する。モータ電圧指令の補正値Vjh *は次式で求められる。
ここで、j=u、v、wであり、Vj *は電流制御演算部17より導出されるモータ電圧指令値、vdcはDC電圧検出部33より検出されたインバータ直流電圧の値、V0は予め設定されたインバータ直流電圧の基準値(インバータ直流電圧の最大値に設定)である。
速度制御演算部14は、電圧飽和識別部31からの出力に基き、電圧指令値から導出された電圧飽和率が電圧飽和率設定値以上の場合にのみ、外部から与えられる回転速度目標値を低下させ、この低下した目標値に基いて電流指令値を求める。
以上のようにインバータ直流電圧Vdcに基いてモータ補正電圧指令及び電圧飽和率設定値を補正するのは次の理由による。
一般的にインバータ直流電圧は、図22に示すように交流電源周波数の2倍の周波数で脈動し、その電圧変動幅ΔVdcは負荷要素が発生する負荷トルクに比例して大きくなる。そのため、図22の斜線部の分だけ実際のモータ印加電圧が少なくなり、モータ電流波形に歪みが生じてしまう。
そこで、モータ電圧指令値Vj *に関し、式(43)に示すようにインバータ直流電圧検出値を用いて、インバータ直流電圧の脈動に起因する電圧不足分を補正することで、実際のモータ印加電圧を指令通りの所望の値とすることができる。
ここで、モータ補正電圧指令(モータ印加電圧)が最も大きくなるのは図22において、インバータ直流電圧が最小値(V0−ΔVdc)となる場合である。モータ補正電圧指令(モータ印加電圧)の最大値Vjh_max *は式(44)のように表される。
ここで、j=u、v、wである。
このときの電圧飽和率σvol maxは式(44)のモータ補正電圧指令値の最大値を3相−2相変換することで式(45)のように導出することができる。
上式は、インバータ直流電圧の脈動を補正することで、モータ電圧指令値が大きくなり、その結果、電圧飽和率が大きくなることを示している。すなわち、電圧飽和率設定値σRが一定の場合、インバータ直流電圧の脈動を補正することにより、電圧飽和の保護制御に移行し易くなり、高速域での駆動性能が低下してしまう。
そこで、高速域において駆動性能の低下を防止するためには、前述の式(42)のように電圧飽和率設定値σRもインバータ直流電圧の脈動により補正する必要がある。このように、電圧飽和率設定値σRを補正することで駆動性能を低下させずに高速運転が実現でき、モータ電流波形の歪みが低減することで効率や制御安定性が向上し、更なる高速運転が実現可能となる。
なお、AC/DC変換器2の電圧制御により、DC電圧を240V(50rps時)から280V(100rps時)と設定が変わるような場合等、運転条件(例えば速度域等)によってインバータ直流電圧の値が変化する場合には、上記のインバータ直流電圧基準値V0には予め設定された固定値ではなく、実際のDC電圧検出値の平均値、またはAC/DC変換器2の電圧設定値を用いて、インバータ直流電圧の脈動を補正しても良い。
上記構成により、実際のモータ印加電圧を常時指令通りとしてモータ電流波形の歪みを低減することで、効率向上、騒音振動の低減、制御安定性の向上(推定位置の誤差:小)等のメリットが生じるだけでなく、電圧飽和設定値も同時にインバータ直流電圧の脈動により補正することで、高速域において同等以上の駆動性能を実現することが可能である。
本発明は、特定の実施形態について説明されてきたが、当業者にとっては他の多くの変形例、修正、他の利用が明らかである。それゆえ、本発明は、ここでの特定の開示に限定されず、添付の請求の範囲によってのみ限定され得る。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係るシンクロナスリラクタンスモータ(SRM)の制御装置の全体構成の一例を示した図である。
図2は、位置・速度推定における座標軸の一例を説明した図である。
図3は、本発明に係る永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの一例の断面図である。
図4は、本発明に係る永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの別の例の断面図である。
図5は、本発明に係る永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの磁束ベクトルの一例を示す図である。
図6は、一般的なロータリ圧縮幾の負荷トルク特性を示す図である。
図7は、本発明に係るSRMの制御装置におけるトルク電流補正演算部の出力信号の一例を示す図である。
図8は、一般的なスクロール圧縮機の負荷トルク特性を示す図である。
図9は、本発明に係るSRMの制御装置におけるトルク電流補正演算部の一構成例を示すブロック図である。
図10は、本発明に係るSRMの制御装置におけるトルク電流補正演算部の別の構成例を示すブロック図である。
図11は、トルク電流補正動作オン/オフ切替時におけるトルク電流指令値の切り替わりの様子を示した図である。
図12は、本発明に係るSRMの制御装置における速度制御演算部の一構成例を示すブロック図である。
図13は、本発明に係るSRMの制御装置における推定速度平均演算部の出力の切替えの様子を示す図である。
図14は、本発明に係るSRMの制御装置における電流制御演算部の一構成例を示すブロック図である。
図15は、本発明に係るSRMの制御装置における位置・推定演算部の一構成例を示すブロック図である。
図16は、本発明に係るSRMの制御装置における誘起電圧推定部の一構成例を示すブロック図である。
図17は、本発明に係るSRMの制御装置におけるモータ定数補償部の一構成例を示すブロック図である。
図18は、本発明に係るSRMの制御装置におけるモータ定数補償部の別の構成例を示すブロック図である。
図19は、モータ定数補償動作のオン/オフ切替え時におけるモータ定数補償部の出力の切り替わりの様子を示す図である。
図20は、本発明に係るシンクロナスリラクタンスモータの制御装置の全体構成の別の例を示す図である。
図21は、本発明に係るシンクロナスリラクタンスモータの制御装置の全体構成のさらに別の例を示す図である。
図22は、インバータ直流電圧のリップル成分を説明した図である。
図23は、従来のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置のブロック図である。
図24は、従来のシンクロナスリラクタンスモータの構成例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シンクロナスリラクタンスモータの制御装置であって、
シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に流れるモータ電流を検出する電流検出手段と、
該電流検出手段による検出値と、前記シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に印加する電圧の指令値である電圧指令値とから、前記シンクロナスリラクタンスモータの誘起電圧を推定し、その誘起電圧の推定値に基づき前記シンクロナスリラクタンスモータのロータ位置および回転速度の推定値を決定する位置・速度推定手段と、
該位置・速度推定手段による回転速度の推定値と、外部から与えられる回転速度の目標値との誤差をゼロとするように、前記シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に供給する電流指令値を決定する速度制御手段と、
予め設定されたシンクロナスリラクタンスモータの電流位相角により、前記速度制御手段からの電流指令値を、そのトルク電流成分であるトルク電流指令値と界磁電流成分である界磁電流指令値に分配する分配手段と、
前記シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が発生する負荷トルクを前記シンクロナスリラクタンスモータの出力トルクと一致させるように、前記分配手段からのトルク電流指令値と、前記位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値とに基いて前記トルク電流指令値を補正するトルク電流補正手段と、
該トルク電流補正手段からのトルク電流指令値の補正値および前記分配手段からの界磁電流指令値と、前記電流検出手段から得られる前記モータ電流検出値との誤差をゼロとするように電圧指令値を生成する電流制御手段と、
該電圧指令値に基いて前記シンクロナスリラクタンスモータにおける各駆動素子毎に通電信号を分配する通電分配手段と、
を備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項2】 前記トルク電流補正手段は、前記位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値が所定値以下の場合にトルク電流指令値の補正を実行し、前記位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値が所定値より大きい場合にトルク電流指令値の補正を実行しないように、トルク電流指令値の補正動作を切替えることを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項3】 前記トルク電流補正手段は、前記トルク電流指令値の補正動作の実行/非実行の切替え時において猶予期間を設け、該猶予期間中は前記トルク電流指令値を切替え後の値として求められる値に段階的に近づけていくことを特徴とする請求項2記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項4】 前記トルク電流補正手段は、前記負荷要素が発生する負荷トルクの時間的な変動量を検出するトルク変動検出手段をさらに有し、該トルク変動検出手段により検出されたトルク変動量が所定値よりも大きい場合にトルク電流指令値の補正を実行し、検出されたトルク変動量が所定値以下の場合にトルク電流指令値の補正を実行しないように、トルク電流指令値の補正動作を切替えることを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項5】 前記トルク変動検出手段は、時間的に連続する前後のサイクルにおける回転速度の推定値の誤差によりトルク変動量を検出することを特徴とする請求項4記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項6】 前記トルク電流補正手段は、前記トルク電流指令値の補正動作の実行/非実行の切替え時において猶予期間を設け、該猶予期間中は前記トルク電流指令値を切替え後の値として求められる値に段階的に近づけていくことを特徴とする請求項4記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項7】 前記速度制御手段は、前記トルク電流指令値が補正される際に、前記位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値の時間的な平均値を求める平均演算手段と、その求めた平均値と前記回転速度の目標値との誤差がゼロとなるように前記シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に供給する電流指令値を生成する指令演算手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項8】 前記平均演算手段は、前記トルク電流指令値の補正動作時において前記回転速度の推定値の平均値を出力し、前記トルク電流指令値の非補正時には前記位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値を出力し、
前記平均演算手段は、前記トルク電流指令値の補正動作の切替え時において猶予期間を設け、該猶予期間中は平均演算手段の出力を切替え後の値として求められる値に段階的に近づけていくことを特徴とする請求項7記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項9】 前記電流制御手段は、前記トルク電流指令値または前記トルク電流指令値の補正値、および界磁電流指令値について、二相電流指令値から三相電流指令値に座標変換を行い、前記三相電流指令値と前記モータ電流検出値との電流誤差をゼロとするべく電圧指令値を生成することを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項10】 前記位置・速度推定手段は、前記電流検出手段から得られるモータ電流の検出値と、前記電圧指令値とから、前記シンクロナスリラクタンスモータの誘起電圧を推定する誘起電圧推定手段と、
前記シンクロナスリラクタンスモータのモータモデルを内部に有し、前記モータモデルから誘起電圧を生成する誘起電圧生成手段と、
前記誘起電圧推定手段から得られる誘起電圧推定値と、前記誘起電圧生成手段から得られる誘起電圧値との電圧誤差をゼロとするべく、前記誘起電圧推定値を修正する位置誤差修正手段と
を有することを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項11】 前記誘起電圧推定手段は、前記回転速度の推定値と、前記電圧指令値と、前記モータ電流の検出値とを用いて前記シンクロナスリラクタンスモータのモータ定数を補償するモータ定数補償手段を有することを特徴とする請求項10記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項12】 前記モータ定数補償手段は、前記回転速度の推定値が基準値よりも大きい場合に前記モータ定数の補償動作を行なうことを特徴とする請求項11記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項13】 前記モータ定数補償手段は、モータ定数の補償動作の実行/非実行の切替え時において猶予期間を設け、該猶予期間中はモータ定数を、切替え後の値として求められる値に段階的に近づけていくことを特徴とする請求項12記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項14】 前記負荷要素が発生する負荷トルクの時間的な変動量を検出するトルク変動検出手段をさらに有し、
前記モータ定数補償手段は、前記トルク変動検出手段からのトルク変動量が基準値以下の場合に、前記モータ定数の補償動作を行なうことを特徴とする請求項11記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項15】 前記モータ定数補償手段は、モータ定数の補償動作の実行/非実行の切替え時において猶予期間を設け、該猶予期間中はモータ定数を、切替え後の値として求められる値に段階的に近づけていくことを特徴とする請求項14記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項16】 シンクロナスリラクタンスモータの電圧指令値から電圧飽和の度合いを示す電圧飽和率を導出し、該電圧飽和識別手段からの電圧飽和率を所定値と比較し、その比較結果を出力する電圧飽和識別手段をさらに有し、
前記速度制御手段は、該電圧飽和識別手段からの出力に基いて、電圧飽和率が前記所定値以上の場合に、外部から与えられる回転速度目標値を低下させ、その低下した値に基いて電流指令値を決定する、ことを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項17】 シンクロナスリラクタンスモータを駆動する交流電圧を供給するインバータへの入力電圧である直流電圧を検出するDC電圧検出手段と、
前記直流電圧の脈動を相殺するようにモータ電圧指令値を補正するモータ電圧補正手段と、
モータ補正電圧指令値から電圧飽和の度合いである電圧飽和率を導出し、該導出した電圧飽和率と所定値とを比較し、その比較結果を出力する電圧飽和識別手段とをさらに有し、
該電圧飽和識別手段は前記所定値を前記DC電圧検出手段により検出された直流電圧の脈動に応じて補正し、
前記速度制御手段は、前記電圧飽和識別手段からの出力に基いて、導出した電圧飽和率が前記所定値以上の場合に、外部から与えられる回転速度目標値を低下させ、その低下した値に基いて電流指令値を決定する
ことを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項18】 前記シンクロナスリラクタンスモータのロータが永久磁石を有することを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1つに記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項19】 前記永久磁石は、前記シンクロナスリラクタンスモータの定格負荷におけるブレーキトルクを相殺するのに必要最低限の磁石量のみ具備することを特徴とする請求項18記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項20】 前記シンクロナスリラクタンスモータのステータは集中巻ステータであることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1つに記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【請求項21】 前記シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素は少なくともロータリ圧縮機またはスクロール圧縮機のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1つに記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はシンクロナスリラクタンスモータの制御装置に関し、特に、位置センサを用いずにロータの角度を推定して駆動する制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置は、ホール素子、レゾルバあるいは光エンコーダなどの位置センサを用いてロータの角度情報を得ていた。そのため、位置センサの分だけコストが上昇し、シンクロナスリラクタンスモータのサイズも大きくなっていた。
【0003】
そこで、位置センサを省略することで、低コストと小型化を実現するシンクロナスリラクタンスモータの制御装置として、一般的には図23に示すようなシンクロナスリラクタンスモータの制御装置が知られている。
【0004】
図23において、主回路は交流電源1と、交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器2と、直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換器3と、DC/AC変換器3により変換された交流電力により駆動するシンクロナスリラクタンスモータ5から構成されている。
【0005】
一方、制御回路は、モータ電流を検出するための電流検出器11a、11bおよびモータ電流検出部12と、シンクロナスリラクタンスモータの位置および速度推定を行う位置・速度推定演算部13と、外部から与えられる速度指令値と位置・速度推定演算部13から得られる速度推定値との速度誤差をゼロとするべく電流指令値を決定する速度制御演算部14と、速度制御演算部14から得られる電流指令値をトルク電流成分と界磁電流成分に分配する通電位相分配部15と、トルク電流指令値および界磁電流指令値とモータ電流検出値との電流誤差をゼロとするべく電圧指令値を決定する電流制御演算部17と、シンクロナスリラクタンスモータ5における各駆動素子毎に通電信号を分配する通電分配部18とから構成されている。
【0006】
図24は、一般的なシンクロナスリラクタンスモータ5の構成を示す断面図である。シンクロナスリラクタンスモータ5はロータ8とステータ6から構成される。
【0007】
図23に示す制御装置において、位置・速度推定演算部13はモータ電流および電圧指令値の情報を用いて磁束を求める。次に、この磁束の静止座標に対する角度を示すαβ軸磁束角度を求める。そして、回転座標に対するこの磁束の位相を示すdq軸座標位相を設定する。さらに、αβ軸座標角度からdq軸座標位相を減算し、推定角度を求める。そして、この推定角度に基づきシンクロナスリラクタンスモータ5を制御する。
【0008】
また、低速用角度推定と高速用角度推定の二方式の角度推定を行い、低速域と高速域の境界では、両者の方式で推定した角度の割合を除々に変化させ合成して推定角度を生成する。なお、低速域においては、電流パルスを印加してその電圧応答から角度を求める。
【0009】
例えば、特開2001−197774号公報に記載の位置センサレス駆動方式のシンクロナスリラクタンスモータは、電圧指令値にローパス機能を作用させるローパスフィルタ手段を有し、ロータの速度が大きくなるとローパス機能の作用を小さくさせることで、低速域と高速域の境界域において、電圧パルスの影響を除去して安定に角度推定方式の切り替えを行い、高速域において時間遅れがないシンクロナスリラクタンスモータの制御を実現させている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では制御演算が複雑であり、かつインバータの電圧制御率が100%を超える場合、いわゆる電圧飽和となる場合や、急峻な負荷変動がある場合には位置・速度推定が困難となり、モータ駆動制御が不安定になるといった課題を有していた。
【0011】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、電圧飽和や急峻な負荷変動に対してロバストな制御系を構築したシンクロナスリラクタンスモータの制御装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のモータ制御装置は、少なくともステータ巻線のインダクタンス変化およびモータ電流に伴って発生するリラクタンストルクを利用するシンクロナスリラクタンスモータの制御する装置である。
【0013】
その制御装置において、電流検出手段はシンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に流れるモータ電流を検出する。
【0014】
位置・速度推定手段は、電流検出手段による検出値と、シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に印加する電圧の指令値である電圧指令値とから、シンクロナスリラクタンスモータの誘起電圧を推定し、その誘起電圧の推定値に基づきシンクロナスリラクタンスモータのロータ位置および回転速度の推定値を決定する。
【0015】
速度制御手段は、位置・速度推定手段による回転速度の推定値と、外部から与えられる回転速度の目標値との誤差をゼロとするように、シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に供給する電流指令値を決定する。
【0016】
分配手段は、予め設定されたシンクロナスリラクタンスモータの電流位相角により、速度制御手段からの電流指令値を、そのトルク電流成分であるトルク電流指令値と界磁電流成分である界磁電流指令値に分配する。
【0017】
トルク電流補正手段は、シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が発生する負荷トルクをシンクロナスリラクタンスモータの出力トルクと一致させるように、分配手段からのトルク電流指令値と、位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値とに基いてトルク電流指令値を補正する。
【0018】
電流制御手段は、トルク電流補正手段からのトルク電流指令値の補正値および分配手段からの界磁電流指令値と、電流検出手段から得られるモータ電流の検出値との誤差をゼロとするように電圧指令値を生成する。
【0019】
通電分配手段は、電圧指令値に基いてシンクロナスリラクタンスモータにおける各駆動素子毎に通電信号を分配する。
【0020】
本発明の制御装置は、上記の構成を有することにより、シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が発生する負荷トルクと、シンクロナスリラクタンスモータの出力トルクとを常時一致させるようにする。これにより、急峻な負荷変動に対してロバストな制御系が実現でき、また、トルク変動を抑制し低振動化・低騒音化が実現できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照し、本発明に係るシンクロナスリラクタンスモータの制御装置の好ましい実施形態について説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1に本発明に係るシンクロナスリラクタンスモータの制御装置の一実施例のシステム構成図を示す。なお、以下では、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータに対して位置センサを用いずに180度通電である正弦波駆動を行う場合の例を説明する。
【0023】
主回路は交流電源1と、交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器2と、直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換器3と、DC/AC変換器3により変換された交流電力により駆動する永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータ4とから構成されている。
【0024】
制御回路は、モータ電流を検出するための電流検出器11a、11bおよびモータ電流検出部12と、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの位置および速度推定を行う位置・速度推定演算部13と、外部から与えられる速度指令値と位置・速度推定演算部13から得られる速度推定値との速度誤差をゼロとするべく電流指令値を決定する速度制御演算部14と、速度制御演算部14から得られる電流指令値をトルク電流成分と界磁電流成分に分配する通電位相分配部15と、トルク電流指令値を補正するトルク電流補正演算部16と、トルク電流指令値の補正値および界磁電流指令値とモータ電流検出値との電流誤差をゼロとするべく電圧指令値を決定する電流制御演算部17と、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータ4における各駆動素子毎に通電信号を分配する通電分配部18とから構成されている。
【0025】
図2は位置・速度推定における座標軸の定義を示す図である。一般的に、正弦波駆動を行う場合には、制御演算を容易にするため図2のようにモータの諸量をu、v、wの三相からdq軸の二相へと三相−二相変換を行い直流化する。なお、三相から二相への変換方法については公知のため省略する。図2において、θmeは実際のロータ位置(u相基準のq軸との位相差)であり、θ~は推定位置(u相基準のγ軸との位相差)である。また、位置誤差Δθには次式の関係がある。
Δθ=θ~−θme
【0026】
図3および図4は、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータ4の構成例を示した図である。図3に示すシンクロナスリラクタンスモータは、分布巻ステータ6と、永久磁石9を有したロータ8から構成される。図4に示すシンクロナスリラクタンスモータは、集中巻ステータ7と永久磁石9を有したロータ8から構成されている。ロータに永久磁石を内蔵させることによりモータ効率を向上させている。永久磁石9には、シンクロナスリラクタンスモータの定格負荷におけるブレーキトルクを相殺するのに必要最低限の磁気量のみを有するものを使用するのが好ましい。これにより、定格負荷におけるモータ効率の改善を図るだけでなく、永久磁石によるコストアップを最小限に抑制することが可能となる。
【0027】
永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータ4の磁束ベクトルの一例を図5に示す。図5において、ベクトルAは正トルクを発生する磁束成分であり、補助磁石の磁束成分(ベクトルC)は、ブレーキトルク(負トルク)を発生する磁束成分(ベクトルB)を打ち消すように作用する。なお、この場合の発生トルクは式(1)のように表される。
【0028】
【数1】
式(1)において、npは極対数、Ld、Lqはそれぞれd軸およびq軸インダクタンスΛ0は永久磁石による磁束鎖交数、id、iqはそれぞれd軸およびq軸電流である。
【0029】
以下に、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータ4の位置センサレス駆動を説明する。
【0030】
まず、速度制御演算部14が、外部から与えられる回転速度指令値ω*と回転速度推定値ω~を用いて、次式で表される演算により電流指令値I*を求める。
【0031】
【数2】
ここで、Kp1、KI1はPI補償器のゲイン、pは微分演算子である。
【0032】
次に、通電位相分配部15は、電流指令値I*と予め設定された電流位相角βを用いて、次式で表される演算により電流指令値I*をd軸電流id *およびq軸電流iq0に分配する。
【0033】
【数3】
【0034】
トルク電流補正演算部16は、回転速度推定値ω~とq軸電流iq0を用いて、次式で表される演算によりq軸電流指令値iq *を導出する。
【0035】
【数4】
ここで、式(4)ではマイコンなどで演算を行うため離散時間系をとっており、nTsは現在のサンプリング時刻で、(n−1)Tsはひとつ前のサンプリング時刻である。また、Kp2、KI2はPI補償器のゲインである。トルク電流補正演算部16は上式を用いてq軸電流指令値iq *を導出することにより、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が発生する負荷トルクと、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの出力トルクとを常時一致させるようにしている。
【0036】
電流制御演算部17は、モータ電流検出値iu、iv、iwとdq軸電流指令値id *、iq *を用いて、以下の演算により三相電圧指令値vu *、vv *、vw *を導出する。
【0037】
まず、次式で表されるようにモータ電流検出値iu、iv、iwを三相−二相変換によりγδ軸電流検出値iγ、iδに変換する。
【0038】
【数5】
【0039】
次に、dq軸電流指令値id *、iq *とγδ軸電流検出値iγ、iδを用いて、式(6)で表されるようにγδ軸電圧指令値vγ *、vδ *を導出する。
【0040】
【数6】
ここで、Kp3、KI3およびKp4、KI4はPI補償器のゲインである。
【0041】
最後に、次式で表されるようにγδ軸電圧指令値vγ *、vδ *を二相−三相変換により三相電圧指令値vu *、vv *、vw *に変換する。
【0042】
【数7】
【0043】
さらに、位置・速度推定演算部13は、三相電圧指令値vu *、vv *、vw *とモータ電流検出値iu、iv、iwを用いて、以下のような方法で位置・速度推定を行う。
【0044】
ここで、三相電圧方程式より、誘起電圧は式(8)で表される。
【0045】
【数8】
式(8)において、相電圧、相電流および誘起電圧vuvw、iuvw、euvwは3次元ベクトルで、ステータ巻線抵抗およびインダクタンスR、Lは3行3列の行列でそれぞれ表記している。
【0046】
具体的には、式(9)で表される演算により推定誘起電圧e~u、e~v、e~wを導出する。
【0047】
【数9】
ここで、La0=(Ld+Lq)/3、Las=(Lq−Ld)/3である。
【0048】
また、誘起電圧eu、ev、ewは回転速度推定値ω~と誘起電圧定数KEを用いると次式(10)で表すことができる。
【0049】
【数10】
【0050】
よって、式(9)および式(10)より、推定位置θ~は次式のように導出することができる。
【0051】
【数11】
ただし、θ~u、θ~v、θ~wは式(12)で表される。
【0052】
【数12】
ここで、δ0はゼロ割防止のための微小項である。
【0053】
本実施形態の制御装置によれば、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が図6で示される一般的なロータリ圧縮機の場合に、トルク電流補正演算部により図7に示すように負荷トルクに追従したトルク電流指令値を生成する。これにより、シンクロナスリラクタンスモータの出力トルクと負荷トルクとを常時一致させることが可能となる。
【0054】
または、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が図8で示される一般的なスクロール圧縮機の場合、本実施形態の制御装置によれば、ロータ一回転中における負荷変動が小さいため、定常的には前述のトルク電流指令値を補正する必要が無いので、制御周期の整数倍の周期でトルク電流指令値を補正するなどの方法を用いることで演算量を大幅に低減することが可能となる。
【0055】
なお、前述の説明では、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータを位置センサを用いずに180度通電である正弦波駆動を行う場合について述べたが、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータはロータに永久磁石を有しているため、一般にルームエアコンなどの家電製品に用いられている位置検知方式の矩形波通電でも適用可能である。
【0056】
さらに、前述の説明では、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの制御方式について述べたが、一般的なシンクロナスリラクタンスモータにも適用可能である。
【0057】
以上により、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が発生する負荷トルクと、永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの出力トルクとを常時一致させることができるだけでなく、三相電圧方程式より位置・速度推定を行うため、電圧飽和や急峻な負荷変動に対してロバストな制御系が実現できるだけでなく、トルク変動を抑制し低振動化・低騒音化が実現できる。
【0058】
(実施の形態2)
本実施形態では、回転角度推定値ω~が基準値以下の低速領域においてのみトルク電流指令値の補正を行う。本実施形態では、トルク電流補正演算部のみが実施の形態1のものと異なる。図9は本実施形態のトルク電流補正演算部の構成を示した図である。
【0059】
トルク電流補正演算部16aは、回転角度推定値ω~と予め設定された推定回転角度基準値ωRとを入力し比較する推定速度比較器42と、推定速度比較器42の出力信号に応じてトルク電流指令値の補正を行うq軸電流補正演算部41とを備える。
【0060】
推定速度比較器42の出力信号εwは、回転角度推定値ω~と推定回転角度基準値ωRから式(13)のように表される。
【0061】
【数13】
【0062】
q軸電流補正演算部41の出力値iq *は、推定速度比較器の出力信号εwに応じて式(14)のように表される。
【0063】
【数14】
【0064】
すなわち、トルク電流補正演算部16は、回転角度推定値ω~が推定回転角度基準値ωR以下の低速領域においてのみトルク電流指令値の補正を実行する(トルク電流補正動作をオンにする)。
【0065】
なお、推定速度比較器42にはヒステリシスを具備させても良い。すなわち、推定速度比較器42において、回転角度推定値ω~が増加方向に変化する場合の基準値ωRの値と、回転角度推定値ω~が減少方向に変化する場合の基準値ωRの値とを異ならせても良い。
【0066】
さらに、前述の説明では、推定回転角度基準値ωRが一つの場合について述べたが、推定回転角度基準値をいくつか設けて、各基準値で定まる回転速度領域の各々においてトルク電流指令値の補正または非補正の切り替えを行っても良い。
【0067】
以上により、トルク電流指令値の補正に伴う演算時間を大幅に短縮し、演算装置の負荷容量を軽減させ、かつコストダウンが図れるだけでなく、周辺回路を簡素化することが可能となる。
【0068】
(実施の形態3)
本実施形態では、トルクの変動量を検出し、そのトルク変動量が基準値よりも大きい領域においてのみトルク電流補正動作をオンにする。本実施形態では、トルク電流補正演算部のみが実施の形態1のものと異なる。本実施形態のトルク電流補正演算部の構成を図10に示す。
【0069】
トルク電流補正演算部16bにおいて、トルク変動検出部51は回転角度推定値ω~によりトルク変動検出値Δτを検出する。トルク変動比較器52は、トルク変動検出部51からのトルク変動検出値Δτとトルク変動基準値ΔτRとを入力し、その比較結果を出力する。q軸電流補正演算部41はトルク変動比較器52の出力信号に応じてトルク電流指令値の補正を行う。
【0070】
具体的には、トルク変動検出部51の出力信号であるトルク変動検出値Δτは、回転角度推定値ω~により式(15)で導出される。
【0071】
【数15】
ただし、Kτ、Tτは定数である。
【0072】
トルク変動比較器の出力信号ετは、トルク変動検出値Δτとトルク変動基準値ΔτRから式(16)で表される。
【0073】
【数16】
【0074】
ここで、q軸電流補正演算部41の出力値iq *は、トルク変動比較器の出力信号ετに応じて次式のように表される。
【0075】
【数17】
【0076】
即ち、トルク変動検出値Δτがトルク変動基準値ΔτRよりも大きい領域においてのみトルク電流指令値の補正を行うものである。
【0077】
なお、トルク変動比較器52はヒステリシスを設けても良い。すなわち、トルク変動比較器52において、トルク変動検出値Δτが増加方向に変化する場合の基準値ΔτRの値と、トルク変動検出値Δτが減少方向に変化する場合の基準値ΔτRの値とを異ならせても良い。
【0078】
また、前述の説明では、トルク変動基準値ΔτRが一つの場合について述べたが、トルク変動基準値をいくつか設けて、各基準値で定まるそれぞれの領域においてトルク電流指令値の補正または非補正の切り替えを行っても良い。
【0079】
以上により、トルク電流指令値の補正に伴う演算時間を必要最低限まで短縮し、演算装置の負荷容量を最大限軽減させ、かつ大幅にコストダウンが図れるだけでなく、効率的なトルク変動の抑制が可能となる。
【0080】
(実施の形態4)
本実施形態では、トルク電流補正演算部は、トルク電流の非補正時から補正時へ切り替える際に、トルク電流指令値iq *が急激に変化しないようにし、トルク電流指令値iq *が不連続となるのを防止するようにする。図11を用いてその切替え時の制御を説明する。
【0081】
図11に示すように、トルク電流の非補正時(トルク電流補正オフ時)の電流指令値(X)から、トルク電流の補正時(トルク電流補正オン時)の電流指令値(Y)へと切り替える場合に切替猶予期間を設けており、これにより、トルク電流指令値iq *が急激に変化して不連続となるのを防止する。
【0082】
具体的には、非補正時のトルク電流指令値をi* q_off、補正時のトルク電流指令値をi* q_on、トルク電流指令値の現在値をi* q_nowとすると、非補正時から補正時へと切り替わる場合、トルク電流指令値の現在値i* q_nowは式(18)で表される。
【0083】
【数18】
【0084】
ここで、Δiqは微小量であり、i* q_now=i* q_onの条件を満たした段階で補正時に切り替わるものである。
【0085】
逆に、補正時から非補正時へと切り替わる場合、トルク電流指令値の現在値i* q_nowは式(19)で表される。
【0086】
【数19】
ここで、i* q_now=i* q_offの条件を満たした段階で非補正時に切り替わるものである。
【0087】
なお、トルク電流補正切替猶予期間は予め最大期間を定め、最大期間内のみ、トルク電流指令値を段階的に変化させるように切り替えを行っても良い。
【0088】
以上により、トルク電流補正オン/オフ切り替えに伴う制御安定性および信頼性の向上が図れ、モータの乱調を防止することができる。
【0089】
(実施の形態5)
図12に速度制御演算部14の構成例を示す。速度制御演算部14は電流指令演算部71と推定速度平均演算部72を含む。トルク電流補正オン時には、推定速度演算部72は、回転速度推定値ω~の平均値ωaveを導出し、電流指令演算部71は外部から与えられる回転速度指令値ω*と推定速度平均値ωaveとの速度誤差をゼロとするべく電流指令値I0 *を導出する。また、トルク電流補正オフ時には、推定速度平均演算部72は平均演算を行わず、そのまま回転速度推定値ω~を出力し、電流指令演算部71では外部から与えられる回転速度指令値ω*と回転速度推定値ω~との速度誤差をゼロとするべく電流指令値I*を導出する。
【0090】
具体的には、推定速度平均値ωaveは式(20)で表される。
【0091】
【数20】
ここで、nは整数である。
【0092】
また、トルク電流指令値の補正時には、式(21)で表される電流指令値I0 *を導出する。
【0093】
【数21】
ここで、Kp5、KI5はPI補償器のゲインである。
【0094】
そして、トルク電流指令値の非補正時には、推定速度平均値ωaveを用いずに式(2)を用いて電流指令値I*を導出する。
【0095】
以上のように、本実施形態では、トルク電流補正オン時において、推定速度平均値ωaveを用いて電流指令値I0 *を導出するため、トルク変動が大きい場合においても電流指令値I0*の変化量が小さく最適駆動点からの逸脱を最小限に防止することが可能となる。すなわち、トルク電流指令値の補正時に速度制御演算部から出力される電流指令値の変化を最小限に抑制することで、モータ効率最適点からの逸脱を防止し、高効率運転が可能となる。
【0096】
推定速度平均演算部72は上記のようにトルク電流の補正動作に連動して、その出力を回転速度推定値ω~の平均値ωave又は回転速度推定値ω~に切替える。この場合、トルク電流指令値の補正動作のオン/オフの切り替え時において、推定速度ωを徐々に変化させていき、推定速度ωが不連続となるのを防止するのが好ましい。
【0097】
すなわち、トルク電流指令値の非補正時から補正時へと切替わった場合に、推定速度平均演算部72は、即座に推定速度平均値ωave(ω-)を出力するのではなく、図13に示すように、猶予期間を設け、徐々に推定速度平均値ωave(ω-)に近づけるようにその出力(回転速度推定値ω~)を所定の変化量Δωsずつ段階的に変化させていってもよい。これにより、非補正/補正動作の切り替わり時において、非補正時の速度推定値ω~から、推定速度平均値ωave(ω-)の値へ滑らかに接続されるようになる。
【0098】
具体的には、非補正時の出力速度をωo_off(回転速度推定値ω~)、補正時の出力速度(推定速度平均値ωave)をωo_on、出力速度の現在値をωo_nowとすると、非補正時から補正時へと切り替わる場合、出力速度の現在値ωo_nowは式(22)で表される。
【0099】
【数22】
ここで、Δωsは所定の微小量である。出力速度ωo_nowは、ωo_now=ωo_onの条件を満たした段階で補正時の値に切り替わる。
【0100】
逆に、補正時から非補正時へと切り替わる場合、出力速度の現在値ωo_nowは式(23)で表される。
【0101】
【数23】
出力速度ωo_nowは、ωo_now=ωo_offの条件を満たした段階で非補正時の値に切り替わる。
【0102】
なお、切替猶予期間として一定期間を定めておき、その一定期間内の間のみ上式(22)、(23)を用いて推定速度を徐々に切り替えていくようにしても良い。
【0103】
以上のように、補正/非補正時において推定速度を徐々に変化させる猶予期間を設けたことより、推定速度の急峻な変化を防止でき、トルク電流指令値の補正/非補正の切り替え時の制御安定性および信頼性を向上でき、電流指令値の急峻な変化に伴うハンチングを抑制することが可能となる。
【0104】
(実施の形態6)
図14に電流制御演算部17の構成例を示す。電流制御演算部17は、二相電流指令値id *、iq *を三相電流指令値iu *、iv *、iw *に変換する2相/3相変換部91と、三相電流指令値iu *、iv *、iw *とモータ電流検出値iu、iv、iwを用いて三相電圧指令値vu *、vv *、vw *を導出する電圧指令演算部92とを含む。
【0105】
三相電流指令値iu *、iv *、iw *は式(24)で表される。
【0106】
【数24】
また、三相電圧指令値vu *、vv *、vw *は式(25)で表される。
【0107】
【数25】
ここで、Kp6、KI6およびKp7、KI7はPI補償器のゲインである。
【0108】
以上の構成により正確な電圧指令値を生成することが可能となり、モータ電流の歪みを最小限に抑制でき、低騒音化・低振動化が実現できる。
【0109】
(実施の形態7)
位置・速度推定演算部13の構成例を図15に示す。位置・速度推定演算部13は誘起電圧推定部101と位置誤差修正部103を含む。誘起電圧推定部101は、三相電圧指令値vu *、vv *、vw *とモータ電流検出値iu、iv、iwとを用いて誘起電圧推定値e~u、e~v、e~wを導出し、一方で内部に有したモータモデル102から誘起電圧eu、ev、ewを導出する。位置誤差修正部103は誘起電圧推定値e~u、e~v、e~wと誘起電圧eu、ev、ewとの誘起電圧誤差をゼロとするべく推定位置θ~を逐次修正する。
【0110】
具体的には、誘起電圧推定値e~u、e~v、e~wは式(9)で表され、誘起電圧eu、ev、ewは式(26)で表される。
【0111】
【数26】
ここで、VG[nTs]は式(27)〜式(29)により逐次演算する。
【0112】
【数27】
【0113】
【数28】
【数29】
ここで、Keは定数であり、mは整数である。
【0114】
また、位置誤差修正部103は、誘起電圧誤差Δeuvw=e~uvw−e~uvwの符号情報に応じて、推定位置θ~を式(30)のように逐次修正する。
【0115】
【数30】
ただし、Δθ~[nTs]は推定位置補償量Δθpを用いて式(31)で表される。
【0116】
【数31】
ここで、Kθ1、Kθ2は定数である。
【0117】
以上により、電圧飽和時でも位置・速度推定が可能となり、インバータの出力限界を増加できるだけでなく、シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線をさらに巻き込むことが可能となり、駆動システム全体の効率を向上できる。
【0118】
(実施の形態8)
本実施形態では、実施の形態7に示した位置・速度推定演算部13において、さらに、補償したモータ定数を用いて誘起電圧推定値を導出しており、これにより位置・速度推定精度の向上を図っている。
【0119】
図16に位置・速度推定演算部13内の誘起電圧推定部101の構成を示す。誘起電圧推定部101は誘起電圧推定演算部111とモータ定数補償部112を含む。
【0120】
モータ定数補償部112は三相電圧指令値、モータ電流検出値および推定速度を用いてモータ定数を補償する。誘起電圧推定演算部111は三相電圧指令値、モータ電流検出値およびモータ定数補償値を用いて誘起電圧推定値を導出する。以下では、dq軸上での電圧方程式より、モータ定数の1つであるモータ巻線抵抗値を補償する方法について説明する。
【0121】
具体的には、dq軸上での電圧方程式は式(32)のように表される。
【0122】
【数32】
ωmeはロータ実回転速度である。
【0123】
ここで、動作点近傍では、dq軸とγδ軸(図2参照)はほぼ一致していると考え、Δθ≒0の近似を行うと式(32)は式(33)のように表される。
【0124】
【数33】
【0125】
モータ巻線抵抗補償値をR~とすると、式(33)は式(34)のように変形できる。
【0126】
【数34】
【0127】
ここで、式(34)より、iδの符号に関わらず補償値R~と真値Rの関係が求められ、R~がRよりも大きい場合には右辺は正となり、逆の場合には負となる。そこで、式(35)を用いてモータ巻線抵抗値の補償を行う。
【0128】
【数35】
ここで、KRは積分ゲインである。
【0129】
なお、式(35)では、式(34)の右辺の積分のみを行っているが、比例項を付け加えてPI補償を行うことで応答性がより向上する。
【0130】
さらに、iδの符号が変化しない場合は式(35)を辺々iδで除算し演算時間の短縮を図ることが可能である。
【0131】
なお、モータ巻線抵抗のみでなく、インダクタンスや誘起電圧定数といった他のモータ定数にも本発明を適用することが可能である
【0132】
以上により,正確なモータ定数を用いることで常時位置・速度推定精度の向上が図れるだけでなく、電力損失を最小限に抑制できる。
【0133】
(実施の形態9)
本実施形態では、実施の形態8に示した位置・速度推定演算部13において、速度に応じてモータ定数の補償動作のオン/オフを切替えるモータ定数補償部の構成を説明する。
【0134】
図17にモータ定数補償部112の構成を示す。モータ定数補償部112は、回転角度推定値ω~と予め設定された推定回転角度基準値ωRとを入力し、比較する推定速度比較器42と、推定速度比較器42の出力信号に応じてモータ定数の補償を行うモータ定数補償演算部121とを含む。
【0135】
以下では、モータ定数の1つであるモータ巻線抵抗値Rを補償する場合について説明する。
【0136】
推定速度比較器42の出力信号εwは、回転角度推定値ω~と推定回転角度基準値ωRから式(13)のように表される。また、モータ定数補償演算部121の出力値Routは、推定速度比較器42の出力信号εwに応じて式(36)のように表される。
【0137】
【数36】
ここで、R~は式(35)で表されるモータ巻線抵抗補償値、Rnはノミナル値(公称値)である。
【0138】
上式から分かるように、モータ定数補償部112は、回転角度推定値ω~が推定回転角度基準値ωRよりも大きくなる高速領域においてのみモータ定数の補償を行う。これにより、モータ定数の補償に伴う演算時間を大幅に短縮し、演算装置の負荷容量を軽減させ、かつコストダウンが図れるだけでなく、周辺回路を簡素化できる。
【0139】
なお、推定速度比較器42にはヒステリシスを具備させても良い。すなわち、推定速度比較器42において、回転角度推定値ω~が増加方向に変化する場合の基準値ωRの値と、回転角度推定値ω~が減少方向に変化する場合の基準値ωRの値とを異ならせても良い。
【0140】
また、前述の説明では、推定回転角度基準値ωRが一つの場合について述べたが、推定回転角度基準値をいくつか設けて、それぞれの回転速度領域においてモータ定数の補償時または非補償時の切り替えを行っても良い。
【0141】
さらに、モータ巻線抵抗のみでなく、インダクタンスや誘起電圧定数といった他のモータ定数にも本発明を適用することが可能である。
【0142】
(実施の形態10)
モータ定数補償部の別の構成を図18に示す。本実施形態では、トルク変動量を検出し、その変動量が基準値以下の領域においてのみモータ定数の補償を行う。すなわち、トルク変動量に応じてモータ定数補償動作のオン/オフを切替える。
【0143】
図18に示すように、モータ定数補償部112bはトルク変動検出部51、トルク変動比較器52、及びモータ定数補償演算部121を含む。トルク変動検出部51は回転角度推定値ω~によりトルク変動検出値Δτを検出する。トルク変動比較器52は、トルク変動検出値Δτとトルク変動基準値ΔτRとを入力して比較する。モータ定数補償演算部121は、トルク変動比較器52の出力信号に応じてモータ定数の補償を行う。
【0144】
次に、モ−タ定数としてモータ巻線抵抗値R~を補償する場合の動作について説明する。
【0145】
トルク変動検出部51の出力信号であるトルク変動検出値Δτは、回転角度推定値ω~により式(15)のように導出される。また、トルク変動比較器の出力信号ετは、トルク変動検出値Δτとトルク変動基準値ΔτRから式(16)のように表される。モータ定数補償演算部121の出力値Routは、トルク変動比較器の出力信号ετに応じて式(37)のように表される。
【0146】
【数37】
ここで、R~は式(35)で表されるモータ巻線抵抗補償値、Rnはノミナル値(公称値)である。
【0147】
上式より、トルク変動検出値Δτがトルク変動基準値ΔτR以下の領域においてのみモータ定数の補償を行う。
【0148】
なお、トルク変動比較器52にはヒステリシスを具備させても良い。
【0149】
また、前述の説明では、トルク変動基準値ΔτRが一つの場合について述べたが、トルク変動基準値をいくつか設けて、それぞれの領域においてモータ定数の補償時または非補償時の切り替えを行っても良い。
【0150】
さらに、モータ巻線抵抗のみでなく、インダクタンスや誘起電圧定数といった他のモータ定数にも本発明を適用することが可能である。
【0151】
以上により,モータ定数の補償に伴う演算時間を必要最低限まで短縮し、演算装置の負荷容量を最大限軽減させ、かつ大幅にコストダウンが図れる。
【0152】
(実施の形態11)
実施の形態8〜10において、モータ定数補償部112におけるモータ定数の補償動作オン/オフの切替時の制御について図19を用いて説明する。
【0153】
本実施形態では、実施の形態8〜10のモータ定数の補償動作において、モータ定数(モータ巻線抵抗値)の非補償時(補償動作オフ時)から補償時(補償動作オン時)へと切り替わる場合、図19に示すように、モータ定数補償切替のための猶予期間を設ける。これによって、急激なモータ定数の変化を抑制し、モータ定数が不連続となるのを防止する。
【0154】
具体的には、非補償時のモータ巻線抵抗値をRoff、補償時のモータ巻線抵抗値をRon、モータ巻線抵抗値の現在値をRnowとすると、非補償時から補償時へと切り替わる場合、モータ定数補償演算部121から出力されるモータ巻線抵抗値の現在値Rnowは式(38)で表される。
【0155】
【数38】
ここで、ΔRは所定の微小量である。モータ定数補償演算部121からの出力は、猶予期間においては補償時の値Ronに近づくようにΔRずつ徐々に変化し、Rnow=Ronの条件を満たした段階で補償時の値Ronに切り替わる。
【0156】
逆に、補償時から非補償時へと切り替わる場合、モータ定数補償演算部121から出力されるモータ巻線抵抗値の現在値Rnowは式(39)で表される。
【0157】
【数39】
すなわち、モータ定数補償演算部121からの出力は、猶予期間においては非補償時の値Roffに近づくようにΔRずつ徐々に変化し、Rnow=Roffの条件を満たした段階で非補償時の値Roffに切り替わる。
【0158】
なお、モータ定数補償切替のための猶予期間として一定の期間を定め、その一定期間内のみモータ巻線抵抗値を段階的に変化させるようにしても良い。
【0159】
以上の構成により、モータ定数の補償動作のオン/オフ切り替えに伴う制御安定性および信頼性の向上が図れ、モータの乱調および脱調を防止することができる。
【0160】
(実施の形態12)
本実施形態では、シンクロナスリラクタンスモータの電圧飽和率を検出し、電圧飽和率が所定値よりも高いときに飽和を回避すべく、目標速度を低下させる制御を行なう。
【0161】
図20に本実施形態のシンクナスリラクタンスモータの制御装置の構成を示す。本実施形態の制御装置は、実施の形態1の制御装置の構成に加えて、さらに、シンクロナスリラクタンスモータ4の電圧指令値から電圧飽和の度合い(電圧飽和率)を導出する電圧飽和識別部31を備えている。
【0162】
電圧飽和識別部31は次式を用いて電圧飽和率σvolを求める。
【0163】
【数40】
【0164】
ここで、VRは基準電圧(電圧飽和率が100%となる場合の電圧設定値)、vγ *、vδ *はγδ軸電圧指令値である。なお、vγ *、vδ *については、式(6)により導出する。
【0165】
電圧飽和識別部31は上式(40)で得た電圧飽和率σvolと、予め設定された電圧飽和率設定値σRとを比較し、その比較結果を速度制御演算部14に出力する。
【0166】
速度制御演算部14は、電圧飽和識別部31からの比較結果に基いてσvol≧σRの場合に、外部から与えられる回転速度目標値ω*を低減する。例えば、次式(41)で新たな回転速度目標値ω*を低減する。
【0167】
ω*=ω*×a (a<1) (41)
速度制御演算部14は電圧飽和率が基準値よりも小さくなるまで回転速度目標値ω*を低減し、その低減した値を用いて電流指令値を求めていく。
【0168】
なお、電圧飽和が発生する運転領域(主として高速域)では、vγ *、vδ *は回転速度(同期モータ、シンクロナスリラクタンスモータでは、回転速度目標値≒モータ実回転速度となる)に概ね比例するため(例えば式(33)を参照)、回転速度目標値を下げることで、上式(40)により導出される電圧飽和率を低下することができる。
【0169】
以上のように、過剰な電圧飽和を避けることで、位置・速度推定演算部における推定位置θ~の誤差が大きくなることを回避し、脱調を防止できる。
【0170】
(実施の形態13)
図21に本実施形態のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置の構成を示す。本実施形態の制御装置は、実施の形態1の制御装置の構成に加えて、さらに、シンクロナスリラクタンスモータ4の電圧指令値から電圧飽和の度合い(電圧飽和率)を導出する電圧飽和識別部31と、インバータ3へ入力する直流電圧(以下「インバータ直流電圧」という。)を検出するDC電圧検出部33と、インバータ直流電圧のリップルを相殺するようにモータ電圧指令値を補正するモータ電圧補正部35とを備えている。
【0171】
電圧飽和識別部31はシンクロナスリラクタンスモータ4の電圧指令値から電圧飽和率を導出し、この導出した値と、予め設定された電圧飽和率設定値とを比較し、その比較結果を速度制御演算部14に出力する。このとき、電圧飽和識別部31において電圧飽和率設定値はインバータ直流電圧の脈動に応じて補正される。すなわち、電圧飽和識別部31はDC電圧検出部33からインバータ直流電圧の検出値を入力し、インバータ直流電圧の脈動に応じて電圧飽和率設定値を補正する。これにより、インバータ直流電圧の脈動分を考慮した電圧飽和時の保護制御を実現している。電圧飽和率設定値の補正値σRhは次式で求められる。
【0172】
【数41】
ここで、σRは予め設定された電圧飽和率設定値、V0は予め設定されたインバータ直流電圧の基準値である。
【0173】
モータ電圧補正部35は、電流制御演算部17からのモータ補正電圧指令値をDC電圧検出部33により検出されたインバータ直流電圧Vdcに基いて補正し、これによりモータ電流波形の歪みを低減する。モータ電圧指令の補正値Vjh *は次式で求められる。
【0174】
【数42】
ここで、j=u、v、wであり、Vj *は電流制御演算部17より導出されるモータ電圧指令値、vdcはDC電圧検出部33より検出されたインバータ直流電圧の値、V0は予め設定されたインバータ直流電圧の基準値(インバータ直流電圧の最大値に設定)である。
【0175】
速度制御演算部14は、電圧飽和識別部31からの出力に基き、電圧指令値から導出された電圧飽和率が電圧飽和率設定値以上の場合にのみ、外部から与えられる回転速度目標値を低下させ、この低下した目標値に基いて電流指令値を求める。
【0176】
以上のようにインバータ直流電圧Vdcに基いてモータ補正電圧指令及び電圧飽和率設定値を補正するのは次の理由による。
【0177】
一般的にインバータ直流電圧は、図22に示すように交流電源周波数の2倍の周波数で脈動し、その電圧変動幅ΔVdcは負荷要素が発生する負荷トルクに比例して大きくなる。そのため、図22の斜線部の分だけ実際のモータ印加電圧が少なくなり、モータ電流波形に歪みが生じてしまう。
【0178】
そこで、モータ電圧指令値Vj *に関し、式(43)に示すようにインバータ直流電圧検出値を用いて、インバータ直流電圧の脈動に起因する電圧不足分を補正することで、実際のモータ印加電圧を指令通りの所望の値とすることができる。
【0179】
ここで、モータ補正電圧指令(モータ印加電圧)が最も大きくなるのは図22において、インバータ直流電圧が最小値(V0−ΔVdc)となる場合である。モータ補正電圧指令(モータ印加電圧)の最大値Vjh_max *は式(44)のように表される。
【0180】
【数43】
ここで、j=u、v、wである。
【0181】
このときの電圧飽和率σvol maxは式(44)のモータ補正電圧指令値の最大値を3相−2相変換することで式(45)のように導出することができる。
【0182】
【数44】
【0183】
上式は、インバータ直流電圧の脈動を補正することで、モータ電圧指令値が大きくなり、その結果、電圧飽和率が大きくなることを示している。すなわち、電圧飽和率設定値σRが一定の場合、インバータ直流電圧の脈動を補正することにより、電圧飽和の保護制御に移行し易くなり、高速域での駆動性能が低下してしまう。
【0184】
そこで、高速域において駆動性能の低下を防止するためには、前述の式(42)のように電圧飽和率設定値σRもインバータ直流電圧の脈動により補正する必要がある。このように、電圧飽和率設定値σRを補正することで駆動性能を低下させずに高速運転が実現でき、モータ電流波形の歪みが低減することで効率や制御安定性が向上し、更なる高速運転が実現可能となる。
【0185】
なお、AC/DC変換器2の電圧制御により、DC電圧を240V(50rps時)から280V(100rps時)と設定が変わるような場合等、運転条件(例えば速度域等)によってインバータ直流電圧の値が変化する場合には、上記のインバータ直流電圧基準値V0には予め設定された固定値ではなく、実際のDC電圧検出値の平均値、またはAC/DC変換器2の電圧設定値を用いて、インバータ直流電圧の脈動を補正しても良い。
【0186】
上記構成により、実際のモータ印加電圧を常時指令通りとしてモータ電流波形の歪みを低減することで、効率向上、騒音振動の低減、制御安定性の向上(推定位置の誤差:小)等のメリットが生じるだけでなく、電圧飽和設定値も同時にインバータ直流電圧の脈動により補正することで、高速域において同等以上の駆動性能を実現することが可能である。
【0187】
本発明は、特定の実施形態について説明されてきたが、当業者にとっては他の多くの変形例、修正、他の利用が明らかである。それゆえ、本発明は、ここでの特定の開示に限定されず、添付の請求の範囲によってのみ限定され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシンクロナスリラクタンスモータ(SRM)の制御装置の全体構成の一例を示した図である。
【図2】位置・速度推定における座標軸の一例を説明した図である。
【図3】本発明に係る永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの一例の断面図である。
【図4】本発明に係る永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの別の例の断面図である。
【図5】本発明に係る永久磁石補助型シンクロナスリラクタンスモータの磁束ベクトルの一例を示す図である。
【図6】一般的なロータリ圧縮幾の負荷トルク特性を示す図である。
【図7】本発明に係るSRMの制御装置におけるトルク電流補正演算部の出力信号の一例を示す図である。
【図8】一般的なスクロール圧縮機の負荷トルク特性を示す図である。
【図9】本発明に係るSRMの制御装置におけるトルク電流補正演算部の一構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明に係るSRMの制御装置におけるトルク電流補正演算部の別の構成例を示すブロック図である。
【図11】トルク電流補正動作オン/オフ切替時におけるトルク電流指令値の切り替わりの様子を示した図である。
【図12】本発明に係るSRMの制御装置における速度制御演算部の一構成例を示すブロック図である。
【図13】本発明に係るSRMの制御装置における推定速度平均演算部の出力の切替えの様子を示す図である。
【図14】本発明に係るSRMの制御装置における電流制御演算部の一構成例を示すブロック図である。
【図15】本発明に係るSRMの制御装置における位置・推定演算部の一構成例を示すブロック図である。
【図16】本発明に係るSRMの制御装置における誘起電圧推定部の一構成例を示すブロック図である。
【図17】本発明に係るSRMの制御装置におけるモータ定数補償部の一構成例を示すブロック図である。
【図18】本発明に係るSRMの制御装置におけるモータ定数補償部の別の構成例を示すブロック図である。
【図19】モータ定数補償動作のオン/オフ切替え時におけるモータ定数補償部の出力の切り替わりの様子を示す図である。
【図20】本発明に係るシンクロナスリラクタンスモータの制御装置の全体構成の別の例を示す図である。
【図21】本発明に係るシンクロナスリラクタンスモータの制御装置の全体構成のさらに別の例を示す図である。
【図22】インバータ直流電圧のリップル成分を説明した図である。
【図23】従来のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置のブロック図である。
【図24】従来のシンクロナスリラクタンスモータの構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 交流電源
2 AC/DC変換器
3 DC/AC変換器
4 シンクロナスリラクタンスモータ
11a、11b 電流検出器
12 モータ電流検出部
13 位置・速度推定演算部
14 速度制御演算部
15 通電位相分配部
16 トルク電流補正演算部
17 電流制御演算部
18 通電分配部
Claims (21)
- シンクロナスリラクタンスモータの制御装置であって、
シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に流れるモータ電流を検出する電流検出手段と、
該電流検出手段による検出値と、前記シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に印加する電圧の指令値である電圧指令値とから、前記シンクロナスリラクタンスモータの誘起電圧を推定し、その誘起電圧の推定値に基づき前記シンクロナスリラクタンスモータのロータ位置および回転速度の推定値を決定する位置・速度推定手段と、
該位置・速度推定手段による回転速度の推定値と、外部から与えられる回転速度の目標値との誤差をゼロとするように、前記シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に供給する電流指令値を決定する速度制御手段と、
予め設定されたシンクロナスリラクタンスモータの電流位相角により、前記速度制御手段からの電流指令値を、そのトルク電流成分であるトルク電流指令値と界磁電流成分である界磁電流指令値に分配する分配手段と、
前記シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素が発生する負荷トルクを前記シンクロナスリラクタンスモータの出力トルクと一致させるように、前記分配手段からのトルク電流指令値と、前記位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値とに基いて前記トルク電流指令値を補正するトルク電流補正手段と、
該トルク電流補正手段からのトルク電流指令値の補正値および前記分配手段からの界磁電流指令値と、前記電流検出手段から得られる前記モータ電流検出値との誤差をゼロとするように電圧指令値を生成する電流制御手段と、
該電圧指令値に基いて前記シンクロナスリラクタンスモータにおける各駆動素子毎に通電信号を分配する通電分配手段と、
を備えたことを特徴とする制御装置。 - 前記トルク電流補正手段は、前記位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値が所定値以下の場合にトルク電流指令値の補正を実行し、前記位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値が所定値より大きい場合にトルク電流指令値の補正を実行しないように、トルク電流指令値の補正動作を切替えることを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記トルク電流補正手段は、前記トルク電流指令値の補正動作の実行/非実行の切替え時において猶予期間を設け、該猶予期間中は前記トルク電流指令値を切替え後の値として求められる値に段階的に近づけていくことを特徴とする請求項2記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記トルク電流補正手段は、前記負荷要素が発生する負荷トルクの時間的な変動量を検出するトルク変動検出手段をさらに有し、該トルク変動検出手段により検出されたトルク変動量が所定値よりも大きい場合にトルク電流指令値の補正を実行し、検出されたトルク変動量が所定値以下の場合にトルク電流指令値の補正を実行しないように、トルク電流指令値の補正動作を切替えることを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記トルク変動検出手段は、時間的に連続する前後のサイクルにおける回転速度の推定値の誤差によりトルク変動量を検出することを特徴とする請求項4記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記トルク電流補正手段は、前記トルク電流指令値の補正動作の実行/非実行の切替え時において猶予期間を設け、該猶予期間中は前記トルク電流指令値を切替え後の値として求められる値に段階的に近づけていくことを特徴とする請求項4記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記速度制御手段は、前記トルク電流指令値が補正される際に、前記位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値の時間的な平均値を求める平均演算手段と、その求めた平均値と前記回転速度の目標値との誤差がゼロとなるように前記シンクロナスリラクタンスモータのステータ巻線に供給する電流指令値を生成する指令演算手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記平均演算手段は、前記トルク電流指令値の補正動作時において前記回転速度の推定値の平均値を出力し、前記トルク電流指令値の非補正時には前記位置・速度推定手段から得られる回転速度の推定値を出力し、
前記平均演算手段は、前記トルク電流指令値の補正動作の切替え時において猶予期間を設け、該猶予期間中は平均演算手段の出力を切替え後の値として求められる値に段階的に近づけていくことを特徴とする請求項7記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。 - 前記電流制御手段は、前記トルク電流指令値または前記トルク電流指令値の補正値、および界磁電流指令値について、二相電流指令値から三相電流指令値に座標変換を行い、前記三相電流指令値と前記モータ電流検出値との電流誤差をゼロとするべく電圧指令値を生成することを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記位置・速度推定手段は、前記電流検出手段から得られるモータ電流の検出値と、前記電圧指令値とから、前記シンクロナスリラクタンスモータの誘起電圧を推定する誘起電圧推定手段と、
前記シンクロナスリラクタンスモータのモータモデルを内部に有し、前記モータモデルから誘起電圧を生成する誘起電圧生成手段と、
前記誘起電圧推定手段から得られる誘起電圧推定値と、前記誘起電圧生成手段から得られる誘起電圧値との電圧誤差をゼロとするべく、前記誘起電圧推定値を修正する位置誤差修正手段と
を有することを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。 - 前記誘起電圧推定手段は、前記回転速度の推定値と、前記電圧指令値と、前記モータ電流の検出値とを用いて前記シンクロナスリラクタンスモータのモータ定数を補償するモータ定数補償手段を有することを特徴とする請求項10記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記モータ定数補償手段は、前記回転速度の推定値が基準値よりも大きい場合に前記モータ定数の補償動作を行なうことを特徴とする請求項11記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記モータ定数補償手段は、モータ定数の補償動作の実行/非実行の切替え時において猶予期間を設け、該猶予期間中はモータ定数を、切替え後の値として求められる値に段階的に近づけていくことを特徴とする請求項12記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記負荷要素が発生する負荷トルクの時間的な変動量を検出するトルク変動検出手段をさらに有し、
前記モータ定数補償手段は、前記トルク変動検出手段からのトルク変動量が基準値以下の場合に、前記モータ定数の補償動作を行なうことを特徴とする請求項11記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。 - 前記モータ定数補償手段は、モータ定数の補償動作の実行/非実行の切替え時において猶予期間を設け、該猶予期間中はモータ定数を、切替え後の値として求められる値に段階的に近づけていくことを特徴とする請求項14記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- シンクロナスリラクタンスモータの電圧指令値から電圧飽和の度合いを示す電圧飽和率を導出し、該電圧飽和識別手段からの電圧飽和率を所定値と比較し、その比較結果を出力する電圧飽和識別手段をさらに有し、
前記速度制御手段は、該電圧飽和識別手段からの出力に基いて、電圧飽和率が前記所定値以上の場合に、外部から与えられる回転速度目標値を低下させ、その低下した値に基いて電流指令値を決定する、ことを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。 - シンクロナスリラクタンスモータを駆動する交流電圧を供給するインバータへの入力電圧である直流電圧を検出するDC電圧検出手段と、
前記直流電圧の脈動を相殺するようにモータ電圧指令値を補正するモータ電圧補正手段と、
モータ補正電圧指令値から電圧飽和の度合いである電圧飽和率を導出し、該導出した電圧飽和率と所定値とを比較し、その比較結果を出力する電圧飽和識別手段とをさらに有し、
該電圧飽和識別手段は前記所定値を前記DC電圧検出手段により検出された直流電圧の脈動に応じて補正し、
前記速度制御手段は、前記電圧飽和識別手段からの出力に基いて、導出した電圧飽和率が前記所定値以上の場合に、外部から与えられる回転速度目標値を低下させ、その低下した値に基いて電流指令値を決定する
ことを特徴とする請求項1記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。 - 前記シンクロナスリラクタンスモータのロータが永久磁石を有することを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1つに記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記永久磁石は、前記シンクロナスリラクタンスモータの定格負荷におけるブレーキトルクを相殺するのに必要最低限の磁石量のみ具備することを特徴とする請求項18記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記シンクロナスリラクタンスモータのステータは集中巻ステータであることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1つに記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
- 前記シンクロナスリラクタンスモータの負荷要素は少なくともロータリ圧縮機またはスクロール圧縮機のいずれかであることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1つに記載のシンクロナスリラクタンスモータの制御装置。
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