JPWO2003041197A1 - 非水電解液一次電池及び該電池の非水電解液用添加剤 - Google Patents

非水電解液一次電池及び該電池の非水電解液用添加剤 Download PDF

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Abstract

正極と、負極と、支持塩を含有する非水電解液とを備える非水電解液一次電池において、該非水電解液にホスファゼン誘導体及び/又はホスファゼン誘導体の異性体を含有させ、これにより非水電解液一次電池の電池特性を維持しつつ安全性を向上させる。

Description

技術分野
本発明は、非水電解液一次電池及び該電池の非水電解液用添加剤に関し、特に従来の非水電解液一次電池と同等の電池特性を維持しつつ、安全性に優れた非水電解液一次電池に関する。
背景技術
近年、エレクトロニクスの急速な進歩に伴い、特に小型電子機器の電源として、小型、軽量で、かつ長寿命、高エネルギー密度の電池が求められている。リチウムを負極とする非水電解液一次電池(リチウム一次電池等)は、リチウムの電極電位が金属中で最も低く、単位体積当りの電気容量が大きいために、高エネルギー密度を有する電池の一つとして知られており、多くの種類のものが活発に研究され、一部が実用化し市場に供給され、例えば、カメラ、電子ウォッチや各種メモリーバックアップ用電源として用いられている。
リチウム一次電池においては、負極を形成する材料として、リチウムが多用されているが、該リチウムは水あるいはアルコールなど活性プロトンを有する化合物と激しく反応するため、使用される電解質は非水溶液又は固体電解質に限られる。固体電解質はイオン伝導性が低いため、低放電電流における使用にのみ限られる。従って、現在、一般に用いられる電解液は、エステル系有機溶媒等の非プロトン性有機溶媒である。
しかし、これらの非水電解液一次電池は、高性能ではあるものの、安全性において、以下のような問題があった。
先ず、非水電解液一次電池の負極材料としてアルカリ金属(特にリチウム金属やリチウム合金等)を用いた場合には、該アルカリ金属が水分に対して非常に高活性であるため、例えば電池の封口が不完全で水分が侵入した際等には、負極材料と水とが反応して水素を発生したり、発火したりする等して危険性が高いという問題があった。
また、リチウム金属は低融点(約170℃)であるため、短絡時等に大電流が急激に流れると、電池が異常に発熱し、電池が溶融する等の非常に危険な状況を引き起こすという問題があった。
更に、上述した電池の発熱に伴い有機溶媒をベースとする電解液が気化・分解してガスを発生したり、発生したガスによって電池の破裂・発火が起こったりする等という問題があった。
また更に、本来充電を想定していない一次電池においても、誤操作による充電があり得、こうした場合に発火を引き起こすという問題もあった。
前記問題を解決するため、例えば、筒形電池において、電池の短絡時等に温度が上がって電池内部の圧力が上昇した際に、安全弁が作動すると同時に電極端子を破断させることにより、該筒型電池に、所定量以上の過大電流が流れることを抑止する機構を電池に設けた技術が提案されている(日刊工業新聞社、「電子技術」1997年39巻9号)。
しかし、前記機構が常に正常に作動すると信頼できるわけではなく、正常に作動しない場合には、過大電流による発熱が大きくなり、発火等の危険な状態となることが懸念されるため問題が残る。さらに一次電池の場合には充電を用途としないため上述の安全回路は通常付属されない。従って、その危険性は常に指摘されている。
従って、前記問題を解決するためには、前述のように安全弁等の付帯的部品を設けることによる安全対策ではなく、根本的に高い安全性を有する非水電解液一次電池の開発が要求されている。
一方、安全性以外にも、一次電池用非水電解液に要求される特性がある。非水電解液を用いた電池としては、リチウム一次電池、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池等が挙げられるが、一次電池と二次電池では以下のように使用される条件・材料等多くの点で違いがある。
即ち、リチウムイオン二次電池では、負極には炭素材料等が、正極にはリチウム・コバルト複合酸化物等が夫々用いられ、これらの材料に対し安定であると共に高いサイクル特性を実現し得る電解液が要求される。また、リチウム二次電池では、負極にはリチウムまたはリチウム合金が、正極にはジカルコゲナイドやV、Mn等の酸化物が用いられ、リチウムイオン二次電池と同様に各材料に対し安定であると共に高いサイクル特性を実現し得る電解液が要求される。
一方、リチウム一次電池では、電極材料に対し安定である必要はあるが、一次電池であるが故、サイクル特性は無視してよく(充電時の電解液の酸化還元反応は無視してよい)、放電容量・エネルギー密度・低温及び高温特性・さらには低温及び高温保存性に優れた電解液が求められる。
従って、二次電池と一次電池とでは、使用される材料が異なるため電解液に要求される対材料安定性が異なると共に、電解液に要求される電池としての特性も異なっており、二次電池用として有効な電解液が一次電池用電解液としても有効であるかは不明であり、一次電池として最適な電解液が求められている。
また更に、従来の非水電解液一次電池は、高性能ではあるものの、劣化し易いため、長期に渡って高性能を維持することができず問題となってもいた。このため、劣化が起こらず長期に渡って高い放電容量、高い導電性、低い内部抵抗等の電池特性を維持し得る非水電解液一次電池の開発が強く要請されている。
また、特に気温の低い地方や時期においては、低温条件下でも長時間に渡って優れた電池特性を有する必要があり、低温特性にも優れた非水電解液一次電池が要求されている。
更に、技術の高度化に伴い、低内部抵抗、高導電率、長期安定性等の諸特性をも同時に達成した非水電解液一次電池の開発が強く要求されている。
発明の開示
本発明は、前記従来技術における諸問題を解決し、諸要求に応え、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、従来の非水電解液一次電池と同等の電池特性を維持しつつ、安全性に優れた非水電解液一次電池を提供することを目的とする。
更に、本発明は、非水電解液一次電池に添加することにより、耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、内部抵抗が低いため導電性が高く、低温特性に優れ、且つ長期安定性に優れた非水電解液一次電池を作製可能な一次電池の非水電解液用添加剤、並びに該添加剤を含有する非水電解液を用いることにより、耐劣化性、低温特性及び長期安定性を向上させた非水電解液一次電池を提供することを目的とする。
前記目的を達成するための手段は、以下の通りである。即ち、
1. 正極と、負極と、支持塩及び25℃における粘度が100mPa・s(100cP)以下のホスファゼン誘導体を含有する非水電解液とを備えることを特徴とする非水電解液一次電池である。
2. 正極と、負極と、支持塩、25℃における粘度が20mPa・s(20cP)以下のホスファゼン誘導体及び非プロトン性有機溶媒を含有する非水電解液とを備えることを特徴とする非水電解液一次電池である。
3. 前記非プロトン性有機溶媒が、環状若しくは鎖状のエステル化合物、又は鎖状のエーテル化合物を含有することを特徴とする前記2項に記載の非水電解液一次電池である。
4. 前記ホスファゼン誘導体が、次式(I)及び次式(II)の何れかで表されることを特徴とする前記1又は2項に記載の非水電解液一次電池である。
Figure 2003041197
(式中、R、R及びRは、夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む有機基を表し;Y、Y及びYは、夫々独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表す。)
Figure 2003041197
(式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜15を表す。)
5. 前記非水電解液の限界酸素指数が21体積%以上であることを特徴とする前記1から4項の何れかに記載の非水電解液一次電池である。
6. 前記式(II)で表されるホスファゼン誘導体が次式(III)で表されるホスファゼン誘導体であることを特徴とする前記4項に記載の非水電解液一次電池である。
Figure 2003041197
(式中、nは3〜13を表す。)
7. 非水電解液における前記式(III)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、1体積%以上であることを特徴とする前記6項に記載の非水電解液一次電池である。
8. 非水電解液における前記式(III)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、2体積%以上であることを特徴とする前記7項に記載の非水電解液一次電池である。
9. 非水電解液の25℃における粘度が、4.0mPa・s(4.0cP)以下である前記6から8項の何れかに記載の非水電解液一次電池である。
10. 前記非水電解液の限界酸素指数が21体積%以上であることを特徴とする前記6から9項の何れかに記載の非水電解液一次電池である。
11. 前記式(II)で表されるホスファゼン誘導体が次式(IV)で表されるホスファゼン誘導体であることを特徴とする前記4項に記載の非水電解液一次電池である。
Figure 2003041197
(式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はフッ素を表し、全Rのうち少なくとも1つはフッ素を含む一価の置換基又はフッ素であり、nは3〜8を表す。但し、全てのRがフッ素であることはない。)
12. 全Rのうちの少なくとも1つがフッ素であって、一価の置換基がアルコキシ基である前記11項に記載の非水電解液一次電池である。
13. 前記アルコキシ基が、メトキシ基、エトキシ基及びフェノキシ基からなる群から選択されることを特徴とする前記12項に記載の非水電解液一次電池である。
14. 前記フッ素を含む一価の置換基がトリフルオロエトキシ基であることを特徴とする前記11項に記載の非水電解液一次電池である。
15. 非水電解液における前記式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、2体積%以上であることを特徴とする前記11項に記載の非水電解液一次電池である。
16. 非水電解液における前記式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、10体積%以上であることを特徴とする前記15項に記載の非水電解液一次電池である。
17. 非水電解液が、支持塩としてLiBFを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(IV)で表されるホスファゼン誘導体を5体積%以上含むことを特徴とする前記11項に記載の非水電解液一次電池である。
18. 非水電解液が、支持塩としてLiCFSOを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(IV)で表されるホスファゼン誘導体を5体積%以上含むことを特徴とする前記11項に記載の非水電解液一次電池である。
19. 前記非水電解液の限界酸素指数が22体積%以上であることを特徴とする前記11から18項の何れかに記載の非水電解液一次電池である。
20. 正極と、負極と、支持塩及び25℃において固体であって且つ次式(V)で表されるホスファゼン誘導体を含有する非水電解液とを備えることを特徴とする非水電解液一次電池である。
Figure 2003041197
(式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜6を表す。)
21. 前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体が、式(V)においてRがメトキシ基であってnが3である構造、式(V)においてRがメトキシ基及びフェノキシ基の少なくとも何れかであってnが4である構造、式(V)においてRがエトキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがイソプロポキシ基であってnが3又は4である構造、式(V)においてRがn−プロポキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがトリフルオロエトキシ基であってnが3又は4である構造、及び式(V)においてRがフェノキシ基であってnが3又は4である構造の少なくとも何れかであることを特徴とする前記20項に記載の非水電解液一次電池である。
22. 前記非水電解液の25℃における粘度が10mPa・s(10cP)以下であることを特徴とする前記20項に記載の非水電解液一次電池である。
23. 非水電解液における前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、40重量%以下であることを特徴とする前記20項に記載の非水電解液一次電池である。
24. 非水電解液における前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、2重量%以上であることを特徴とする前記20項に記載の非水電解液一次電池である。
25. 非水電解液における前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、20重量%以上であることを特徴とする前記20項に記載の非水電解液一次電池である。
26. 非水電解液における前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、30重量%以上であることを特徴とする前記20項に記載の非水電解液一次電池である。
27. 前記非水電解液が非プロトン性有機溶媒を含むことを特徴とする前記20項に記載の非水電解液一次電池である。
28. 前記非プロトン性有機溶媒が、環状若しくは鎖状のエステル化合物、又は鎖状のエーテル化合物を含有することを特徴とする前記27項に記載の非水電解液一次電池である。
29. 非水電解液が、支持塩としてLiBFを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体を5〜10重量%含むことを特徴とする前記20項に記載の非水電解液一次電池である。
30. 非水電解液が、支持塩としてLiBFを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体を10重量%を超える量含むことを特徴とする前記20項に記載の非水電解液一次電池である。
31. 非水電解液が、支持塩としてLiCFSOを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体を5〜25重量%含むことを特徴とする前記20項に記載の非水電解液一次電池である。
32. 非水電解液が、支持塩としてLiCFSOを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体を25重量%を超える量含むことを特徴とする前記20項に記載の非水電解液一次電池である。
33. 前記非水電解液の限界酸素指数が21体積%以上であることを特徴とする前記20から25、27から29、及び31項の何れかに記載の非水電解液一次電池である。
34. 前記非水電解液の限界酸素指数が23体積%以上であることを特徴とする前記20から24、26から28、30及び32項の何れかに記載の非水電解液一次電池である。
35. 正極と、負極と、支持塩及び次式(VI)で表され且つ次式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体を含有する非水電解液とを備えることを特徴とする非水電解液一次電池である。
Figure 2003041197
Figure 2003041197
(式(VI)及び(VII)において、R、R及びRは、夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル及びポロニウムからなる群より選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を表し;Y及びYは、夫々独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表す。)
36. 前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体を含有することを特徴とする前記35項に記載の非水電解液一次電池である。
37. 前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と、前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との非水電解液における総含有量が、1体積%以上であることを特徴とする前記36項に記載の非水電解液一次電池である。
38. 前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と、前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との非水電解液における総含有量が、2体積%以上である前記37項に記載の非水電解液一次電池である。
39. 前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と、前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との非水電解液における総含有量が、20体積%以上である前記38項に記載の非水電解液一次電池である。
40. 前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と、前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との非水電解液における総含有量が、30体積%以上である前記38項に記載の非水電解液一次電池である。
41. 前記非水電解液が非プロトン性有機溶媒を含むことを特徴とする前記35項に記載の非水電解液一次電池である。
42. 前記非プロトン性有機溶媒が、環状若しくは鎖状のエステル化合物、又は鎖状のエーテル化合物を含有することを特徴とする前記41項に記載の非水電解液一次電池である。
43. 非水電解液が、支持塩としてLiBFを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを45体積%以上含み、前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体とを総含有量で1.5〜10体積%含むことを特徴とする前記35又は36項に記載の非水電解液一次電池である。
44. 非水電解液が、支持塩としてLiBFを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを45体積%以上含み、前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体とを総含有量で10体積%を超える量含むことを特徴とする前記35又は36項に記載の非水電解液一次電池である。
45. 非水電解液が、支持塩としてLiCFSOを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを45体積%以上含み、前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体とを総含有量で2.5〜15体積%含むことを特徴とする前記35又は36項に記載の非水電解液一次電池である。
46. 非水電解液が、支持塩としてLiCFSOを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを45体積%以上含み、前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体とを総含有量で15体積%を超える量含むことを特徴とする前記35又は36項に記載の非水電解液一次電池である。
47. 前記非水電解液の限界酸素指数が21体積%以上であることを特徴とする前記35から39、41から43、及び45項の何れかに記載の非水電解液一次電池である。
48. 前記非水電解液の限界酸素指数が23体積%以上であることを特徴とする前記35から38、40から42、44、及び46項の何れかに記載の非水電解液一次電池である。
49. 次式(I)及び次式(II)の何れかで表されるホスファゼン誘導体からなる一次電池の非水電解液用添加剤である。
Figure 2003041197
(式中、R、R及びRは、夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む有機基を表し;Y、Y及びYは、夫々独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表す。)
Figure 2003041197
(式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜15を表す。)
50. 限界酸素指数が21体積%以上であることを特徴とする前記49項に記載の一次電池の非水電解液用添加剤である。
51. 前記式(II)で表されるホスファゼン誘導体が次式(III)で表されるホスファゼン誘導体であることを特徴とする前記49項に記載の一次電池の非水電解液用添加剤である。
Figure 2003041197
(式中、nは3〜13を表す。)
52. 前記式(II)で表されるホスファゼン誘導体が次式(IV)で表されるホスファゼン誘導体であることを特徴とする前記49項に記載の一次電池の非水電解液用添加剤である。
Figure 2003041197
(式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はフッ素を表し、全Rのうち少なくとも1つはフッ素を含む一価の置換基又はフッ素であり、nは3〜8を表す。但し、全てのRがフッ素であることはない。)
53. 全Rのうちの少なくとも1つがフッ素であって、一価の置換基がアルコキシ基である前記52項に記載の一次電池の非水電解液用添加剤である。
54. 前記アルコキシ基が、メトキシ基、エトキシ基及びフェノキシ基からなる群から選択されることを特徴とする前記53項に記載の一次電池の非水電解液用添加剤である。
55. 前記フッ素を含む一価の置換基がトリフルオロエトキシ基であることを特徴とする前記52項に記載の一次電池の非水電解液用添加剤である。
56. 25℃において固体であって且つ次式(V)で表されるホスファゼン誘導体からなる一次電池の非水電解液用添加剤である。
Figure 2003041197
(式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜6を表す。)
57. 前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体が、式(V)においてRがメトキシ基であってnが3である構造、式(V)においてRがメトキシ基及びフェノキシ基の少なくとも何れかであってnが4である構造、式(V)においてRがエトキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがイソプロポキシ基であってnが3又は4である構造、式(V)においてRがn−プロポキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがトリフルオロエトキシ基であってnが3又は4である構造、及び式(V)においてRがフェノキシ基であってnが3又は4である構造の少なくとも何れかであることを特徴とする前記56項に記載の一次電池の非水電解液用添加剤である。
58. 次式(VI)で表され且つ次式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体を少なくとも含有することを特徴とする一次電池の非水電解液用添加剤である。
Figure 2003041197
(式(VI)及び(VII)において、R、R及びRは、夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル及びポロニウムからなる群より選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を表し;Y及びYは、夫々独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表す。)
59. 前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体を含有することを特徴とする前記58項に記載の一次電池の非水電解液用添加剤である。
発明を実施するための最良の態様
以下、本発明を詳細に説明する。
[非水電解液一次電池]
本発明の非水電解液一次電池は、正極と、負極と、非水電解液とを備え、必要に応じてその他の部材を有する。
−−正極−−
正極の材料としては、特に制限はなく、公知の正極材料から適宜選択して使用できる。例えば、フッ化黒鉛((CF)、MnO(電気化学合成であっても化学合成であってもよい)、V、MoO、AgCrO、CuO、CuS、FeS、SO、SOCl、TiS等が好適に挙げられ、これらの中でも、高容量で安全性、さらには放電電位が高く電解液の濡れ性に優れる点で、MnO、V、フッ化黒鉛が好ましく、コストの点ではMnO、Vがより好ましい。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記正極には、必要に応じて導電材、結着材を混合することができる。導電材としてはアセチレンブラック等が挙げられ、結着材としてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
前記正極の形状としては、特に制限はなく、電極として公知の形状の中から適宜選択することができる。例えば、シート状、円柱形状、板状形状、スパイラル形状等が挙げられる。
−−負極−−
負極の材料としては、例えば、リチウム金属自体又はリチウム合金等が挙げられる。リチウムと合金をつくる金属としては、Sn、Pb、Al、Au、Pt、In、Zn、Cd、Ag、Mg等が挙げられる。これらの中でも、埋蔵量の多さ、毒性の観点からAl、Zn、Mgが好ましい。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記負極の形状としては、特に制限はなく、前記正極の形状と同様の公知の形状から適宜選択することができる。
−−非水電解液−−
非水電解液は、第1の発明においては、支持塩及び25℃における粘度が100mPa・s(100cP)以下のホスファゼン誘導体を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
また、第2の発明においては、支持塩、25℃における粘度が20mPa・s(20cP)以下のホスファゼン誘導体及び非プロトン性有機溶媒を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
更に、第3の発明においては、支持塩及び25℃において固体であって且つ次式(V)で表されるホスファゼン誘導体を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
Figure 2003041197
(式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜6を表す。)
また更に、第4の発明においては、支持塩及び次式(VI)で表され且つ次式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
Figure 2003041197
(式(VI)及び(VII)において、R、R及びRは、夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル及びポロニウムからなる群より選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を表し;Y及びYは、夫々独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表す。)
−−支持塩−−
支持塩は、一次電池の非水電解液に通常用いるものであればよく、リチウムイオンのイオン源等が好ましい。該リチウムイオンのイオン源としては、特に制限はないが、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO及びLiAsF、LiCSO、Li(CFSON、Li(CSON等のリチウム塩が好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
非水電解液中の支持塩の含有量としては、非水電解液の溶媒成分1Lに対し、0.2〜1モルが好ましく、0.5〜1モルがより好ましい。含有量が、0.2モル未満の場合には、非水電解液の十分な導電性を確保することができず、電池の放電特性に支障をきたすことがある一方、1モルを超える場合には、非水電解液の粘度が上昇し、前記リチウムイオン等の十分な移動度が確保できないため、前述と同様に非水電解液の十分な導電性が確保できず、結果として溶液抵抗が上昇するため、パルス放電、低温特性に支障をきたすことがある。
−−ホスファゼン誘導体とホスファゼン誘導体の異性体−−
前記非水電解液が、ホスファゼン誘導体及び/又はホスファゼン誘導体の異性体を含有する理由としては、以下の通りである。
従来、非水電解液一次電池における非水電解液に用いられている非プロトン性有機溶媒をベースとした非水電解液においては、短絡時等に大電流が急激に流れ、電池が異常に発熱した際に、気化・分解してガスが発生したり、発生したガス及び熱により電池の破裂・発火が起こったりするため危険性が高い。また、短絡時に生じる火花が電解液に引火し、発火・破裂の原因となる危険性も高い。
一方、これら従来の非水電解液に、ホスファゼン誘導体又はホスファゼン誘導体の異性体が含有されていれば、200℃以下程度の比較的低温における非水電解液の気化・分解等が抑制され、発火・引火の危険性が低減される。また、仮に負極材料の溶融等により電池内部での発火があっても、類焼の危険性が低い。さらに、リンには、電池を構成する高分子材料の連鎖分解を抑制する作用があるため、前記発火・引火の危険性は効果的に低減される。また更に、従来の非水電解液に、ホスファゼン誘導体又はホスファゼン誘導体の異性体が含有されていれば、放電容量、エネルギー密度等の電池性能に優れ、更に低温及び高温特性にも優れた非水電解液一次電池を提供することが可能となる。
また、ホスファゼン誘導体及びホスファゼン誘導体の異性体は、一次電池として十分に機能するだけの電位窓を有しており、放電によって分解することはない。更に、ホスファゼン誘導体及びホスファゼン誘導体の異性体から誘導される窒素ガス及びハロゲンガス等の作用によって非水電解液に優れた自己消火性又は難燃性が付与されるため、該非水電解液を含んだ非水電解液一次電池は非常に安全性が高くなる。また更に、ハロゲン(例えばフッ素)を含むホスファゼン誘導体及びホスファゼン誘導体の異性体は、万一の燃焼時には活性ラジカルの捕捉剤として機能するし、有機置換基は燃焼時に極材及びセパレーター上に炭化物(チャー)を生成するため酸素の遮断効果もある。加えて使用者が誤って充電した際にも、ホスファゼン誘導体及びホスファゼン誘導体の異性体は、デンドライト生成の抑制効果を有するために無添加系に比してより安全性は高くなる。
なお、本発明において、発火・引火の危険性は、JIS K 7201に従った酸素指数測定により評価した。なお、酸素指数とは、JIS K 7201に規定の所定の試験条件下において、材料が燃焼を持続するのに必要な体積パーセントで表される最低酸素濃度の値をいい、酸素指数が低いことは発火・引火の危険性が高いことを意味し、反対に酸素指数が高いことは発火・引火の危険性が低いことを意味する。本願では、上記酸素指数に準じた限界酸素指数で発火・引火の危険性を評価した。
本発明の一次電池の非水電解液及び一次電池の非水電解液用添加剤は、限界酸素指数が21体積%以上であることが好ましい。限界酸素指数が21体積%未満であると、発火・引火の抑制効果が十分でないことがある。大気条件下は酸素指数は20.2体積%に相当するため、限界酸素指数20.2体積%では大気中で燃焼することを意味する。発明者らは、鋭意検討により、限界酸素指数21体積%以上であれば自己消火性を、23体積%以上であれば難燃性を、25体積%以上であれば不燃性を有することを見出した。なお、ここで表記している自己消火性・難燃性・不燃性は、UL94HB法に準拠する方法で定義されるものであり、不燃性石英ファイバーに1.0mLの電解液を染み込ませ127mm×12.7mmの試験片を作製し、該試験片を大気環境下で着火した際、着火した炎が25〜100mmラインの間で消火し、かつ網からの落下物にも着火が認められなかった場合を自己消火性有りとし、着火した炎が装置の25mmラインまで到達せず、かつ網からの落下物にも着火が認められなかった場合を難燃性ありとし、着火が認められなかった場合(燃焼長0mm)を不燃性ありとしたものである。
また更に、従来の非水電解液一次電池に用いられるエステル系有機溶媒とリチウムイオン源となる支持塩とを含む非水電解液においては、支持塩が経時と共に分解し、分解物が有機溶媒中に存在する微量の水等と反応することにより、非水電解液の導電性が低下したり、極材の劣化を生じたりする場合がある。一方、従来の非水電解液にホスファゼン誘導体又はホスファゼン誘導体の異性体を添加すると、支持塩の分解が抑制され、非水電解液の安定性が著しく向上する。一般的に支持塩としてはLiBF、LiPF、LiCFSO、Li(CSON、Li(CFSON等が用いられ、支持塩自体の加水分解能が低いLiCFSO、Li(CSON、Li(CFSONが特に好ましいが、ホスファゼン誘導体及びホスファゼン誘導体の異性体の上記作用によりLiBF、LiPFも好適に使用することができる。
本発明に用いるホスファゼン誘導体及びホスファゼン誘導体の異性体としては、分子構造中にハロゲン元素を含む置換基を有するのが好ましい。分子構造中に、ハロゲン元素を含む置換基を有すれば、ホスファゼン誘導体及びホスファゼン誘導体の異性体から誘導されるハロゲンガスによって、ホスファゼン誘導体及びホスファゼン誘導体の異性体の含有量が少なくても、より効果的に非水電解液の発火・引火の危険性を低減させることが可能となる。なお、ハロゲン元素を含む置換基を有する化合物においては、ハロゲンラジカルの発生が問題となることがあるが、本発明で用いるホスファゼン誘導体及びホスファゼン誘導体の異性体は、分子構造中のリン元素がハロゲンラジカルを捕捉し、安定なハロゲン化リンを形成するため、このような問題は発生しない。
ホスファゼン誘導体又はホスファゼン誘導体の異性体におけるハロゲン元素の含有量としては、2〜80重量%が好ましく、2〜60重量%がより好ましく、2〜50重量%が更に好ましい。含有量が2重量%未満では、ハロゲン元素を含ませる効果が十分に現れないことがある一方、80重量%を超えると粘度が高くなるため、電解液に添加した際にその導電率が低下することがある。該ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好ましく、良好な電池特性を得る観点からはフッ素が特に好ましい。
本発明に用いるホスファゼン誘導体の引火点は、特に制限はないが、発火・引火の抑制等の点から、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。ここで、引火点とは、具体的には、物質表面に炎が広がり、少なくとも該物質表面の75%を覆う温度をいい、該引火点は、空気と燃焼性混合物を形成する傾向度を見る尺度となるものである。従来、非水電解液に用いられている非プロトン性有機溶媒をベースとした電解液は、負極の材料(リチウムを含む材料)が低融点(リチウム金属の融点:約170℃)であることから、短絡時等に大電流が急激に流れ、電池が異常に発熱した際に、気化・分解して、ガスが発生したり、引火したりして電解液表面に燃え広がる危険性が高かった。しかし、100℃以上に引火点を有していれば、発火等が抑制され、また、仮に電池内部で発火等が生じても、引火して電解液表面に燃え広がる危険性を低下させることが可能となる。
前記第1の発明において、ホスファゼン誘導体の25℃における粘度としては、100mPa・s(100cP)以下であることが必要であり、20mPa・s(20cP)以下が好ましい。粘度が、100mPa・s(100cP)を超えると、支持塩が溶解し難くなり、正極材料、セパレーター等への濡れ性が低下し、非水電解液の粘性抵抗の増大によりイオン導電性が著しく低下し、特に、氷点以下等の低温条件下での使用において性能不足となる。
前記第2の発明は、ホスファゼン誘導体と非プロトン性有機溶媒とを併用するものであり、該ホスファゼン誘導体の25℃における粘度としては、20mPa・s(20cP)以下であることが必要であり、10mPa・s(10cP)以下が好ましい。第2の本発明においては、非プロトン性有機溶媒を併用するため、非水電解液の低粘度化が図られるが、粘度が20mPa・s(20cP)を超えると、非プロトン性有機溶媒を混合させた後も粘度が高く、非水電解液一次電池として最適なイオン導電性を達成することが困難となる。
なお、本発明において粘度は、粘度測定計(R型粘度計Model RE500−SL、東機産業(株)製)を用い、1rpm、2rpm、3rpm、5rpm、7rpm、10rpm、20rpm及び50rpmの各回転速度で120秒間づつ測定し、指示値が50〜60%となった時の回転速度を分析条件とし、その際の粘度を測定することによって求めた。
前記第1及び第2の発明に用いるホスファゼン誘導体としては、イオン導電性の点から、常温(25℃)において液体であることが必要である。従来、ホスファゼン化合物を電池材料へ応用した技術としては、ポリホスファゼン(メトキシエトキシエトキシポリホスファゼンやオリゴエチレンオキシポリホスファゼン等)を固体電解質として用いる全固体型二次電池の例がある。この電池では、難燃効果は非常に期待できるものの、通常の液状電解質に比較して、イオン導電性が1/1000〜1/10000とかなり低く、限られた低放電電流における使用にのみ限定されていた。一方、第1及び第2の発明では、ホスファゼン誘導体が液状であるため、通常の液状電解質と同等の導電性を有している。
第1及び第2の発明に用いるホスファゼン誘導体としては、特に制限はないが、粘度が比較的低く、支持塩を良好に溶解し得るものが好ましく、例えば、次式(I)で表される鎖状ホスファゼン誘導体又は次式(II)で表される環状ホスファゼン誘導体が好適に挙げられる。
Figure 2003041197
(式中、R、R及びRは、夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む有機基を表し;Y、Y及びYは、夫々独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表す。)
Figure 2003041197
(式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜15を表す。)
式(I)において、R、R及びRは、一価の置換基又はハロゲン元素であれば特に制限はなく、該一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、カルボキシル基、アシル基、アリール基等が挙げられる。また、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられる。これらの中でも、特に非水電解液を低粘度化し得る点で、アルコキシ基が好ましい。R〜Rは、総て同一の種類の置換基でもよく、それらの内の幾つかが異なる種類の置換基でもよい。
ここで、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等や、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基等が挙げられる。これらの中でも、R〜Rとしては、総てがメトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、又は、メトキシエトキシエトキシ基が好適であり、低粘度・高誘電率の観点から、総てがメトキシ基又はエトキシ基であるのが特に好適である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。これらの一価の置換基中の水素元素は、前述のようにハロゲン元素で置換されているのが好ましい。
式(I)において、Y、Y及びYで表される2価の連結基としては、例えば、CH基の他、酸素、硫黄、セレン、窒素、ホウ素、アルミニウム、スカンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウム、ランタン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウム、ヒ素、ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、クロム、モリブデン、テルル、ポロニウム、タングステン、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の連結基が挙げられ、これらの中でも、CH基及び、酸素、硫黄、セレン、窒素からなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の連結基が好ましく、硫黄及び/又はセレンの元素を含む2価の連結基が特に好ましい。また、Y、Y及びYは、酸素、硫黄、セレン等の2価の元素、又は単結合であってもよい。Y〜Yは総て同一種類でもよく、いくつかが互いに異なる種類でもよい。
式(I)において、Xとしては、有害性、環境等への配慮の観点からは、炭素、ケイ素、窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む有機基が好ましい。これらの有機基の内、次式(XIII)、(IX)又は(X)で表される構造を有する有機基がより好ましい。
Figure 2003041197
但し、式(VIII)、(IX)、(X)において、R10〜R14は、一価の置換基又はハロゲン元素を表し、Y10〜Y14は、2価の連結基、2価の元素又は単結合を表し、Zは2価の基又は2価の元素を表す。
式(VIII)、(IX)、(X)において、R10〜R14としては、式(I)におけるR〜Rで述べたのと同様の一価の置換基又はハロゲン元素がいずれも好適に挙げられる。また、これらは、同一有機基内において、それぞれ同一の種類でもよく、幾つかが互いに異なる種類でもよい。式(VIII)のR10とR11とは、及び式(X)のR13とR14とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(VIII)、(IX)、(X)において、Y10〜Y14で表される基としては、式(I)におけるY〜Yで述べたのと同様の2価の連結基又は2価の元素等が挙げられ、同様に、硫黄及び/又はセレンの元素を含む基である場合には、非水電解液の発火・引火の危険性が低減するため特に好ましい。これらは、同一有機基内において、それぞれ同一の種類でもよく、幾つかが互いに異なる種類でもよい。
式(VIII)において、Zとしては、例えば、CH基、CHR(Rは、アルキル基、アルコキシル基、フェニル基等を表す。以下同様。)基、NR基の他、酸素、硫黄、セレン、ホウ素、アルミニウム、スカンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウム、ランタン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウム、ヒ素、ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、クロム、モリブデン、テルル、ポロニウム、タングステン、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の基等が挙げられ、これらの中でも、CH基、CHR基、NR基のほか、酸素、硫黄、セレンからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の基が好ましい。特に、硫黄及び/又はセレンの元素を含む2価の基の場合には、非水電解液の発火・引火の危険性が低減するため好ましい。また、Zは、酸素、硫黄、セレン等の2価の元素であってもよい。
これら有機基としては、特に効果的に発火・引火の危険性を低減し得る点で、式(VIII)で表されるようなリンを含む有機基が特に好ましい。また、有機基が式(IX)で表されるような硫黄を含む有機基である場合には、非水電解液の小界面抵抗化の点で特に好ましい。
式(II)において、Rは一価の置換基又はハロゲン元素であれば特に制限はなく、該一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、カルボキシル基、アシル基、アリール基等が挙げられる。また、ハロゲン元素としては、例えば、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられる。これらの中でも、特に非水電解液を低粘度化し得る点で、アルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、プロポキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシ基が特に好ましい。これらの一価の置換基中の水素元素は、前述のようにハロゲン元素、特にフッ素元素で置換されているのが好ましく、フッ素原子で置換された置換基としては、例えば、トリフルオロエトキシ基が挙げられる。
式(I)、(II)、(VIII)〜(X)におけるR〜R、R10〜R14、Y〜Y、Y〜Y14、Zを適宜選択することにより、より好適な粘度、添加・混合に適する溶解性等を有するホスファゼン誘導体の合成が可能となる。これらホスファゼン誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
第1及び第2の発明において、非水電解液における前記ホスファゼン誘導体の含有量は、限界酸素指数の観点から、5〜100体積%が好ましく、10〜50体積%がより好ましい。含有量を前記数値範囲内に調整することにより、非水電解液の発火・引火の危険性を効果的に低減されることができる。但し、引火点の危険性は効果的に低減されるものの、その範囲は用いる支持塩の種類や電解液の種類によって異なるため、具体的には用いる系が最も低粘度に抑えられ、かつ限界酸素指数が21体積%以上になるホスファゼン含有量を適時きめることで最適化される。
第1及び第2の発明の非水電解液一次電池は、発火・引火の危険性が低く、優れた電池性能を有する。
前記式(II)のホスファゼン誘導体の中でも、電解液を低粘度化して電池の低温特性を向上させ、更に電解液の安全性を向上させる観点からは、次式(III)で表されるホスファゼン誘導体が特に好ましい。
Figure 2003041197
(式中、nは3〜13を表す。)
式(III)で表されるホスファゼン誘導体は常温(25℃)で低粘度の液体であり、且つ凝固点降下作用を有する。このため、該ホスファゼン誘導体を電解液に添加することにより、電解液に優れた低温特性を付与することが可能となり、また、電解液の低粘度化が達成され、低内部抵抗及び高い導電率を有する非水電解液一次電池を提供することが可能となる。このため、特に気温の低い地方や時期において、低温条件下で使用しても、長時間に渡って優れた放電特性を示す非水電解液一次電池を提供することが可能となる。また、式(III)のホスファゼン誘導体はフッ素を含むため、万一の燃焼時には活性ラジカルの捕捉剤としても機能する。
式(III)において、nとしては、非水電解液に優れた低温特性を付与し得、非水電解液の低粘度化が可能な点で、3〜4が好ましく、3がより好ましい。nの値が小さい場合には沸点が低く、接炎時の着火防止特性を向上させることができる。一方、nの値が大きくなるにつれて、沸点が高くなるため、高温でも安定に使用することができる。上記性質を利用して目的とする性能を得るために、複数のホスファゼンを適時選択し、使用することも可能である。式(III)におけるn値を適宜選択することにより、より好適な粘度、混合に適する溶解性、低温特性等を有する電解液の調製が可能となる。これらのホスファゼン誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
式(III)で表されるホスファゼン誘導体の粘度としては、20mPa・s(20cP)以下であれば特に制限はないが、導電性の向上及び低温特性の向上の観点からは、10mPa・s(10cP)以下が好ましく、5mPa・s(5cP)以下がより好ましい。
式(III)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液の25℃における粘度は、10mPa・s(10cP)以下が好ましく、5mPa・s(5cP)以下がより好ましく、4.0mPa・s(4.0cP)以下が更に好ましい。非水電解液の粘度が、10mPa・s(10cP)以下であれば、低内部抵抗、高導電率等の優れた電池特性を有する非水電解液一次電池となる。
式(III)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液の導電率は、該非水電解液の粘度を前記好ましい数値範囲内に調整することにより容易に好適な値とすることができ、該導電率としては、0.75mol/L濃度のリチウム塩溶解液での導電率で、3.0mS/cm以上が好ましく、5.0mS/cm以上がより好ましい。導電率が3.0mS/cm以上であれば、非水電解液の十分な導電性を確保できるため、非水電解液一次電池の内部抵抗を抑制し、放電時の電位降下を抑えることが可能となる。
なお、本発明において導電率は、下記の測定方法により測定して得られた値である。即ち、非水電解液一次電池に、5mAの定電流を印加しながら、導電率計(商品名:CDM210型、ラジオメータートレーディング(株)製)を用いて、所定条件下(温度:25℃、圧力:常圧、水分率:10ppm以下)で測定した。なお、該導電率は、理論的には、先ず非水電解液のコンダクタンス(Gm)を求め、これからケーブル抵抗(R)の影響を除いて、電解液そのもののコンダクタンス(G)を求め、得られた(G)と、既知のセル定数(K)から、導電率=G・K(S/cm)として求めることができる。
式(III)で表されるホスファゼン誘導体は、引火点を有さない。該ホスファゼン誘導体は引火点を有さないため、該ホスファゼン誘導体を含む非水電解液は発火等が抑制され、また、仮に電池内部で発火等が生じても、引火して電解液表面に燃え広がる危険性を低下させることが可能となる。
非水電解液における式(III)で表されるホスファゼン誘導体の総含有量としては、該ホスファゼン誘導体を含有することにより得られる効果によって、非水電解液により好適に「低温特性」を付与し得る第1の含有量、非水電解液に好適に「耐劣化性」を付与し得る第2の含有量、非水電解液をより好適に「低粘度化」し得る第3の含有量、及び非水電解液に好適に「安全性」を付与し得る第4の含有量の4通りの含有量が挙げられる。
「低温特性」の観点から、非水電解液における式(III)で表されるホスファゼン誘導体の第1の含有量は、1体積%以上が好ましく、3体積%以上がより好ましく、5体積%以上が更に好ましい。含有量が1体積%に満たないと、非水電解液の凝固点を十分に低くできず、低温特性が十分でない。なお、本発明において「低温特性」は、下記の方法により測定・評価した。即ち、−40℃の環境下で、下限電圧1.5Vで、0.2C放電を行い、低温放電容量を測定した。この時の低温における放電容量を、25℃において測定した放電容量と比較し、下記式より放電容量残存率を算出した。合計3本の電池について、同様に測定・算出し、これらの平均値で、低温特性を評価した。
Figure 2003041197
「耐劣化性」の観点から、非水電解液における式(III)で表されるホスファゼン誘導体の第2の含有量は、2体積%以上が好ましく、3〜75体積%がより好ましい。また、低温特性と耐劣化性とを高度に両立する観点からは、5〜75体積%がより好ましい。含有量が前記数値範囲内であれば、好適に劣化を抑制することができる。なお、本発明において「劣化」とは、前記支持塩(例えば、リチウム塩)の分解をいい、該劣化防止の効果を下記安定性評価方法により評価した。
(1)先ず、支持塩を含む非水電解液を調製後、水分率を測定する。次に、高速液体クロマトグラフィー(イオンクロマトグラフィー)により、非水電解液中のフッ化水素の濃度を測定する。更に、目視により非水電解液の色調を観察した後、放電試験により放電容量を算出する。
(2)上記非水電解液を2ヶ月間グローブボックス内で放置した後、再び、水分率、フッ化水素の濃度を測定し、色調を観察し、放電容量を算出する。これらの測定結果の変化により安定性を評価する。
「低粘度化」の観点から、非水電解液における式(III)で表されるホスファゼン誘導体の第3の含有量は、3体積%以上が好ましく、3〜80体積%がより好ましく、3〜50体積%未満が更に好ましい。また、低温特性、耐劣化性及び低粘度化を高度に両立する観点からは、5〜80体積%が好ましく、3〜50体積%未満がより好ましい。含有量が3体積%未満では、非水電解液を十分に「低粘度化」できない。一般的に電解液として広く用いられているプロピレンカーボネートの粘度は2.5mPa・s(2.5cP)であり、式(III)においてn=3のホスファゼンは0.8mPa・s(0.8cP)であるため、ホスファゼンの添加量が多くなるほど粘度が低くなるため導電性の向上、低温特性の向上の観点からは好ましいが、ホスファゼン添加量が50体積%以上になると支持塩溶解度が飽和してくることから電解液の粘度上昇を招くため好ましくない。
「安全性」の観点から、非水電解液における式(III)で表されるホスファゼン誘導体の第4の含有量は、5体積%以上が好ましい。ホスファゼンの含有量は多いほど安全性が高くなり、該含有量を5体積%以上に調整することにより、非水電解液の限界酸素指数が21体積%以上になるので、発火・引火の危険性は効果的に低減される。なお、本発明において「安全性」は、上記発火・引火の危険性の評価方法で用いた限界酸素指数測定により評価することができる。
式(III)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液を含む一次電池の内部抵抗(Ω)は、非水電解液の粘度を前記した好ましい数値範囲内に調整することにより容易に好適な値とすることができ、該内部抵抗(Ω)としては、0.05〜1(Ω)が好ましく、0.05〜0.3(Ω)がより好ましい。なお、内部抵抗は、公知の測定方法、例えば、低電流をパルス印加し、その時の電圧降下(IRドロップ)量から内部抵抗Rを算出する方法から得ることができる。
式(III)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液を含む一次電池の放電容量は、東ソー製電解合成二酸化マンガンを正極として用いた場合において、260〜285(mAh/g)であるのが好ましく、275〜280(mAh/g)がより好ましい。なお、放電容量は、20℃の環境下、下限電圧1.5Vで、0.2C放電を行うことにより測定した。
式(III)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液を含む一次電池は、安全性及び耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、且つ内部抵抗が低いため導電率が高く、低温特性に優れる。
前記式(II)のホスファゼン誘導体の中でも、電解液の耐劣化性及び安全性を向上させる観点からは、次式(IV)で表されるホスファゼン誘導体が好ましい。
Figure 2003041197
(式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はフッ素を表し、全Rのうち少なくとも1つはフッ素を含む一価の置換基又はフッ素であり、nは3〜8を表す。但し、全てのRがフッ素であることはない。)
式(II)のホスファゼン誘導体を含有すれば、非水電解液に優れた自己消火性又は難燃性を付与して非水電解液の安全性を向上させることができるが、式(IV)で表され、全Rのうち少なくとも1つがフッ素を含む一価の置換基であるホスファゼン誘導体を含有すれば、非水電解液により優れた安全性を付与することが可能となる。更に、式(IV)で表され、全Rのうち少なくとも1つがフッ素であるホスファゼン誘導体を含有すれば、更に優れた安全性を付与することが可能となる。即ち、フッ素を含まないホスファゼン誘導体に比べ、式(IV)で表され、全Rのうち少なくとも1つがフッ素を含む一価の置換基又はフッ素であるホスファゼン誘導体は、非水電解液をより燃え難くする効果があり、非水電解液に対し更に優れた安全性を付与することができる。なお、式(II)において、全Rがフッ素であり、且つnが3である環状のホスファゼン誘導体自体は不燃性であり、炎が近づいた際の着火を防止する効果は大きいが、沸点が非常に低いことから、それらが全て揮発してしまうと残された非プロトン性有機溶媒等が燃焼してしまう。
式(IV)における一価の置換基としては、アルコキシ基の他、アルキル基、アシル基、アリール基、カルボキシル基等が挙げられ、非水電解液の安全性の向上に特に優れる点で、アルコキシ基が好適である。該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基等の他、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基置換アルコキシ基等が挙げられ、非水電解液の安全性の向上に優れる点で、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、フェノキシ基が特に好ましい。また、非水電解液の低粘度化の点ではメトキシ基が好ましい。式(IV)において、nとしては、非水電解液に優れた安全性を付与し得る点で、3〜4が好ましい。前記一価の置換基は、フッ素で置換されているのが好ましく、式(IV)のRが一つもフッ素でない場合は、少なくとも一つの一価の置換基はフッ素含む。フッ素原子で置換された一価の置換基としては、トリフルオロエトキシ基が挙げられる。
フッ素の式(IV)のホスファゼン誘導体における含有量としては、3〜70重量%が好ましく、7〜45重量%がより好ましい。含有量が前記数値範囲内であれば、「優れた安全性」を特に好適に奏することができる。
式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の分子構造としては、前述のフッ素以外にも塩素、臭素等のハロゲン元素を含んでいてもよい。
式(IV)におけるR及びn値を適宜選択することにより、より好適な安全性、粘度、混合に適する溶解性等を有する電解液の調製が可能となる。これらのホスファゼン誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
式(IV)で表されるホスファゼン誘導体が添加された非水電解液は、ホスファゼン誘導体の中でも特に優れた安全性を付与し得る式(IV)のホスファゼン誘導体を含有するため限界酸素指数が特に高く、該非水電解液の限界酸素指数は好ましくは22体積%以上である。
式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の粘度としては、20mPa・s(20cP)以下であれば特に制限はないが、導電性の向上及び低温特性の向上の観点からは、10mPa・s(10cP)以下が好ましく、5mPa・s(5cP)以下がより好ましい。
式(IV)で表されるホスファゼン誘導体が添加された非水電解液の25℃における粘度は、10mPa・s(10cP)以下が好ましく、5mPa・s(5cP)以下がより好ましい。粘度が10mPa・s(10cP)以下であれば、低内部抵抗、高導電率等の優れた電池特性を有する非水電解液一次電池となる。
非水電解液における式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の総含有量としては、該ホスファゼン誘導体を含有することにより得られる効果によって、非水電解液に好適に「耐劣化性」を付与し得る第1の含有量、非水電解液に特に優れた「安全性」を付与し得る第2の含有量の2通りの含有量が挙げられる。
「耐劣化性」の観点から、非水電解液における式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の第1の含有量は、2体積%以上が好ましく、2〜75体積%がより好ましい。含有量が前記数値範囲内であれば、好適に劣化を抑制することができる。
「安全性」をより好適に付与し、安全性の非常に高い非水電解液一次電池を得る観点からの観点から、非水電解液における式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の第2の含有量は、10体積%以上が好ましく、15体積%以上がより好ましい。含有量が10体積%未満では、非水電解液に特に優れた「安全性」を付与できないことがある。また、安全性と前記耐劣化性とを高度に両立する観点からは、10〜75体積%がより好ましく、15〜75体積%が更に好ましい。なお、ホスファゼン添加量が50体積%以上になると支持塩の溶解度が飽和に近づき電解液の粘度が上昇してくるため、電解液の粘度上昇を避けるためには50体積%未満が好ましい。
「安全性」の観点から、非水電解液としては、式(IV)で表される環状ホスファゼン誘導体、LiBF、γ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含む場合、並びに式(IV)で表される環状ホスファゼン誘導体、LiCFSO、γ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含む場合が特に好ましい。これらの場合には、前述の記載に関わらず、含有量が少量であっても、安全性が非常に高い。即ち、式(IV)で表される環状ホスファゼン誘導体の非水電解液における含有量としては、特に優れた安全性を発現させるためには、5体積%以上が好ましい。
式(IV)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液を含む一次電池の放電容量は、東ソー製電解合成二酸化マンガンを正極として用いた場合において、260〜285(mAh/g)であるのが好ましく、275〜280(mAh/g)がより好ましい。なお、放電容量は、20℃の環境下、下限電圧1.5Vで、0.2C放電を行うことにより測定した。
式(IV)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液を含む一次電池は、耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、低温特性に優れ、且つ安全性が非常に高い。
第3の発明に用いるホスファゼン誘導体は、25℃において固体であって且つ前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体である。
式(V)で表されるホスファゼン誘導体は常温(25℃)で固体であるため、非水電解液に添加すると非水電解液中で溶解して電解液の粘度が上昇する。しかし、後述するように所定の添加量であれば電解液の粘度上昇率が低く、低内部抵抗及び高い導電率を有する非水電解液一次電池となる。加えて、式(V)で表されるホスファゼン誘導体は非水電解液中で溶解するため、電解液の長期安定性に優れる。一方、所定添加量を超えて添加すると非水電解液の粘度が著しく大きくなり、内部抵抗が高く、導電率が低くなり、非水電解液一次電池として使用できなくなる。
式(V)において、Rは一価の置換基又はハロゲン元素であれば特に制限はなく、該一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、カルボキシル基、アシル基、アリール基等が挙げられる。また、ハロゲン元素としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素が好適に挙げられる。これらの中でも、特に非水電解液の粘度上昇を抑制し得る点で、アルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、プロポキシ基(イソプロポキシ基、n−プロポキシ基)、フェノキシ基、トリフルオロエトキシ基等が好ましく、非水電解液の粘度上昇を抑制し得る点で、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(イソプロポキシ基、n−プロポキシ基)、フェノキシ基、トリフルオロエトキシ基等がより好ましい。また、前記一価の置換基は、前述のハロゲン元素を含むのが好ましい。
式(V)において、nとしては、非水電解液の粘度上昇を抑制し得る点で、3又は4が特に好ましい。
式(V)で表されるホスファゼン誘導体の中でも、式(V)においてRがメトキシ基であってnが3である構造、式(V)においてRがメトキシ基及びフェノキシ基の少なくとも何れかであってnが4である構造、式(V)においてRがエトキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがイソプロポキシ基であってnが3又は4である構造、式(V)においてRがn−プロポキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがトリフルオロエトキシ基であってnが3又は4である構造、及び式(V)においてRがフェノキシ基であってnが3又は4である構造が、非水電解液の粘度上昇を抑制し得る点で、特に好ましい。
式(V)における各置換基及びn値を適宜選択することにより、より好適な粘度、混合に適する溶解性等を有する非水電解液の調製が可能となる。これらのホスファゼン誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
式(V)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液は、自己消火性の観点がらは限界酸素指数が21体積%以上であることが好ましく、難燃性の観点からは限界酸素指数が23体積%以上であることが好ましい。
式(V)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液の25℃における粘度は、10mPa・s(10cP)以下が好ましく、5mPa・s(5cP)以下がより好ましい。粘度が、10mPa・s(10cP)以下であれば、低内部抵抗、高導電率等の優れた電池特性を有する非水電解液一次電池となる。
式(V)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液の導電率は、非水電解液の粘度を前記好ましい数値範囲内に調整することにより容易に好適な値とすることができ、該導電率としては、0.75mol/L濃度のリチウム塩溶解液での導電率で、3.0mS/cm以上が好ましく、5.0mS/cm以上がより好ましい。導電率が3.0mS/cm以上であれば、非水電解液の十分な導電性を確保できるため、非水電解液一次電池の内部抵抗を抑制し、放電時の電位降下を抑えることが可能となる。
非水電解液における式(V)で表されるホスファゼン誘導体の含有量としては、該ホスファゼン誘導体を含有することにより得られる効果によって、非水電解液の「粘度上昇抑制」が可能な第1の含有量、非水電解液に好適に「耐劣化性」を付与し得る第2の含有量、非水電解液に好適に「自己消火性」を付与し得る第3の含有量、及び非水電解液に好適に「難燃性」を付与し得る第4の含有量の4通りの含有量が挙げられる。
「粘度上昇抑制」の観点から、非水電解液における式(V)で表されるホスファゼン誘導体の第1の含有量は、40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好ましく、30重量%以下が更に好ましい。含有量が40重量%を超えると、非水電解液の粘度上昇が著しく大きくなり、内部抵抗が高く、導電率が低くなり好ましくない。
「耐劣化性」の観点から、非水電解液における式(V)で表されるホスファゼン誘導体の第2の含有量は、2重量%以上が好ましい。含有量が、前記数値範囲内であれば、好適に劣化を抑制することができる。
「自己消火性」の観点から、非水電解液における式(V)で表されるホスファゼン誘導体の第3の含有量は、20重量%以上が好ましく、自己消火性と粘度上昇の抑制とを高度に両立する観点からは、20〜40重量%がより好ましく、20〜35重量%が更に好ましく、20〜30重量%が特に好ましい。含有量が20重量%未満では、非水電解液に十分な「自己消火性」を発現させ得ないことがある。
「難燃性」の観点から、非水電解液における式(V)で表されるホスファゼン誘導体の第4の含有量は、30重量%以上が好ましく、難燃性と粘度上昇の抑制とを高度に両立する観点からは、30〜40重量%がより好ましく、30〜35重量%が更に好ましい。含有量が30重量%以上であれば、非水電解液に十分な「難燃性」を発現させることが可能となる。なお、本発明において「自己消火性」及び「難燃性」は、上記発火・引火の危険性の評価方法で用いた限界酸素指数測定により評価することができる。
「自己消火性又は難燃性」の観点から、非水電解液としては、式(V)で表されるホスファゼン誘導体、LiBF、γ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含む場合、並びに式(V)で表されるホスファゼン誘導体、LiCFSO、γ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含む場合が特に好ましい。これらの場合には、前述の記載に関わらず、含有量が少量であっても、優れた自己消火性又は難燃性の効果を有する。即ち、式(V)で表されるホスファゼン誘導体、LiBF、γ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含む場合、ホスファゼン誘導体の非水電解液における含有量としては、自己消火性を発現させるためには、5〜10重量%が好ましく、難燃性を発現させるためには、10重量%を超える量が好ましく、難燃性と粘度上昇の抑制とを高度に両立する観点からは、10重量%を超え40重量%以下がより好ましく、10重量%を超え35重量%以下が更に好ましく、10重量%を超え30重量%以下が特に好ましい。また、式(V)で表されるホスファゼン誘導体、LiCFSO、γ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含む場合、ホスファゼン誘導体の非水電解液における含有量としては、自己消火性を発現させるためには、5〜25重量%が好ましく、難燃性を発現させるためには、25重量%を超える量が好ましく、難燃性と粘度上昇の抑制とを高度に両立する観点からは、25重量%を超え40重量%以下がより好ましく、25重量%を超え35重量%以下が更に好ましく、25重量%を超え30重量%以下が特に好ましい。
式(V)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液を含む一次電池の内部抵抗(Ω)は、非水電解液の粘度を前記した好ましい数値範囲内に調整することにより容易に好適な値とすることができ、該内部抵抗(Ω)としては、0.05〜1(Ω)が好ましく、0.05〜0.3(Ω)がより好ましい。なお、内部抵抗は、公知の測定方法、例えば、低電流をパルス印加し、その時の電圧降下(IRドロップ)量から内部抵抗Rを算出する方法から得ることができる。
式(V)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液を含む一次電池の放電容量は、東ソー製電解合成二酸化マンガンを正極として用いた場合において、260〜285(mAh/g)であるのが好ましく、275〜280(mAh/g)がより好ましい。なお、放電容量は、20℃の環境下、下限電圧1.5Vで、0.2C放電を行うことにより測定した。
式(V)のホスファゼン誘導体が添加された非水電解液を含む一次電池は、自己消火性又は難燃性に優れ、耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、低温特性に優れ、且つ内部抵抗が低いため導電率が高く、長期安定性に優れる。
第4の発明に用いるホスファゼン誘導体の異性体は、前記式(VI)で表され且つ前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体である。
式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体は、非水電解液に添加されると、非水電解液に極めて優れた低温特性を発現させ得る。
式(VI)におけるR、R及びRは、一価の置換基又はハロゲン元素であれば特に制限はなく、該一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、カルボキシル基、アシル基、アリール基等が挙げられる。また、ハロゲン元素としては、例えば、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン元素が好適に挙げられる。これらの中でも、特に非水電解液の低温特性及び電気化学的安定性の点で、フッ素及びアルコキシ基等が好ましい。また、非水電解液の低粘度化の点で、フッ素、アルコキシ基、及びフッ素等を含むアルコキシ基等が好ましい。R〜Rは、総て同一の種類の置換基でもよく、それらのうちのいくつかが異なる種類の置換基でもよい。
ここで、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等や、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基等が挙げられる。これらの中でも、R〜Rとしては、総てがメトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、又はメトキシエトキシエトキシ基が好適であり、低粘度・高誘電率の観点から、総てがメトキシ基又はエトキシ基であるのが特に好適である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。これら一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換されているのが好ましく、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられる。
式(VI)において、Y及びYで表される2価の連結基としては、例えば、CH基の他、酸素、硫黄、セレン、窒素、ホウ素、アルミニウム、スカンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウム、ランタン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウム、ヒ素、ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、クロム、モリブデン、テルル、ポロニウム、タングステン、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の連結基が挙げられ、これらの中でも、CH基及び、酸素、硫黄、セレン、窒素からなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の連結基が好ましい。また、Y及びYは、酸素、硫黄、セレン等の2価の元素、又は単結合であってもよい。非水電解液の難燃性が向上する点では、硫黄及び/又は酸素の元素を含む2価の連結基、酸素元素、並びに硫黄元素が特に好ましく、非水電解液の低温特性に優れる点では、酸素元素を含む2価の連結基、及び酸素元素が特に好ましい。Y及びYは、同一種類でもよく、互いに異なる種類でもよい。
式(VI)において、Xとしては、有害性、環境等への配慮の観点からは、炭素、ケイ素、窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基が好ましく、次式(XI)、(XII)又は(XIII)で表される構造を有する置換基がより好ましい。
Figure 2003041197
但し、式(XI)、(XII)、(XIII)において、R15〜R19は、夫々独立に一価の置換基又はハロゲン元素を表し、Y15〜Y19は、夫々独立に2価の連結基、2価の元素、又は単結合を表し、Zは2価の基又は2価の元素を表す。
式(XI)、(XII)、(XIII)において、R15〜R19としては、式(VI)におけるR〜Rで述べたのと同様の一価の置換基又はハロゲン元素がいずれも好適に挙げられる。また、これらは、同一置換基内において、それぞれ同一の種類でもよく、幾つかが互いに異なる種類でもよい。式(XI)のR15とR16とは、及び式(XIII)のR18とR19とは、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(XI)、(XII)、(XIII)において、Y15〜Y19で表される基としては、式(VI)におけるY〜Yで述べたのと同様の2価の連結基又は2価の元素等が挙げられ、同様に、硫黄及び/又は酸素の元素を含む2価の連結基、酸素元素、或いは硫黄元素である場合には、非水電解液の難燃性が向上するため特に好ましい。また、非水電解液の低温特性に優れる点では、酸素元素を含む2価の連結基、及び酸素元素が特に好ましい。これらは、同一置換基内において、それぞれ同一の種類でもよく、いくつかが互いに異なる種類でもよい。
式(XI)において、Zとしては、例えば、CH基、CHR’(R’は、アルキル基、アルコキシル基、フェニル基等を表す。以下同様。)基、NR’基の他、酸素、硫黄、セレン、ホウ素、アルミニウム、スカンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウム、ランタン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、スズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウム、ヒ素、ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、クロム、モリブデン、テルル、ポロニウム、タングステン、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の基等が挙げられ、これらの中でも、CH基、CHR’基、NR’基の他、酸素、硫黄、セレンからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の基が好ましい。また、Zは、酸素、硫黄、セレン等の2価の元素であってもよい。特に、硫黄及び/又はセレン元素を含む2価の基、硫黄元素、或いはセレン元素である場合には、非水電解液の難燃性が向上するため好ましい。また、非水電解液の低温特性に優れる点では、酸素元素を含む2価の基、及び酸素元素が特に好ましい。
これら置換基としては、特に効果的に自己消火性又は難燃性を発現し得る点で、式(XI)で表されるようなリンを含む置換基が特に好ましい。更に、式(XI)において、Z、Y15及びY16が酸素元素である場合には、特に、非水電解液に極めて優れた低温特性を発現させることが可能となる。また、置換基が、式(XII)で表されるような硫黄を含む置換基である場合には、非水電解液の小界面抵抗化の点で特に好ましい。
式(VI)、及び(XI)〜(XIII)におけるR〜R、R15〜R19、Y〜Y、Y15〜Y19、Zを適宜選択することにより、より好適な粘度、添加・混合に適する溶解性、低温特性等を有する非水電解液の調製が可能となる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
式(VI)で表される異性体は、式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体であり、例えば、式(VII)で表されるホスファゼン誘導体を生成する際の真空度及び/又は温度を調節することで製造でき、該異性体の非水電解液における含有量(体積%)は、次の測定方法により測定することができる。即ち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって試料のピーク面積を求め、該ピーク面積を、予め求めておいた前記異性体のモル当りの面積と比較することでモル比を得、更に比重を考慮して体積換算することで測定できる。
式(VII)で表されるホスファゼン誘導体としては、粘度が比較的低く、支持塩を良好に溶解し得るものが好ましい。式(VII)のR〜R、Y〜Y及びXとしては、式(VI)のR〜R、Y〜Y及びXの説明で述べたのと同様のものが総て好適に挙げられる。
式(VI)で表される化合物が添加された非水電解液は、自己消火性の観点からは限界酸素指数が21体積%以上であることが好ましく、難燃性の観点からは限界酸素指数が23体積%以上であることが好ましい。
式(VI)で表される異性体が添加された非水電解液の25℃における粘度としては、10mPa・s(10cP)以下が好ましく、5mPa・s(5cP)以下がより好ましい。粘度が10mPa・s(10cP)以下であれば、低内部抵抗、高導電率等の優れた電池特性を有する非水電解液一次電池となる。
非水電解液における式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との総含有量としては、式(VI)で表される異性体と式(VII)で表されるホスファゼン誘導体とを含有することにより得られる効果によって、非水電解液により好適に「低温特性」を付与し得る第1の含有量、非水電解液に好適に「耐劣化性」を付与し得る第2の含有量、非水電解液に好適に「自己消火性」を付与し得る第3の含有量、及び非水電解液に好適に「難燃性」を付与し得る第4の含有量の4通りの含有量が挙げられる。
「低温特性」の観点から、非水電解液における式(VI)で表される異性体と式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との第1の含有量は、1体積%以上が好ましく、2体積%以上がより好ましく、5体積%以上が更に好ましい。含有量が1体積%に満たないと、非水電解液の低温特性が十分でない。
「耐劣化性」の観点から、非水電解液における式(VI)で表される異性体と式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との第2の含有量は、2体積%以上が好ましく、3〜75体積%がより好ましい。また、耐劣化性と低温特性とを高度に両立する観点からは、5〜75体積%がより好ましい。含有量が前記数値範囲内であれば、好適に劣化を抑制することができる。
「自己消火性」の観点から、非水電解液における式(VI)で表される異性体と式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との第3の含有量は、20体積%以上が好ましい。含有量が20体積%未満では、非水電解液に十分な「自己消火性」を発現させ得ない。
「難燃性」の観点から、非水電解液における式(VI)で表される異性体と式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との第4の含有量は、30体積%以上が好ましい。含有量が30体積%以上であれば、非水電解液に十分な「難燃性」を発現させることが可能となる。
「自己消火性又は難燃性」の観点から、非水電解液としては、式(VI)で表される異性体及び式(VII)で表されるホスファゼン誘導体と、LiBFと、45体積%以上のγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートとを含む場合、並びに式(VI)で表される異性体及び式(VII)で表されるホスファゼン誘導体と、LiCFSOと、45体積%以上のγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートとを含む場合が特に好ましい。これらの場合には、前述の記載に関わらず、式(VI)で表される異性体と式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との非水電解液における含有量が少量であっても、優れた自己消火性又は難燃性の効果を有する。即ち、式(VI)で表される異性体及び式(VII)で表されるホスファゼン誘導体と、LiBFと、45体積%以上のγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートとを含む場合、式(VI)の異性体と式(VII)のホスファゼン誘導体との非水電解液における総含有量としては、自己消火性を発現させるためには、1.5〜10体積%が好ましく、難燃性を発現させるためには、10体積%を超える量が好ましい。また、式(VI)で表される異性体及び式(VII)で表されるホスファゼン誘導体と、LiCFSOと、45体積%以上のγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートとを含む場合、式(VI)の異性体と式(VII)のホスファゼン誘導体との非水電解液における総含有量としては、自己消火性を発現させるためには、2.5〜15体積%が好ましく、難燃性を発現させるためには、15体積%を超える量が好ましい。
前記式(VI)で表される異性体を少なくとも含有する非水電解液を備えた一次電池の内部抵抗(Ω)は、非水電解液の粘度を前記した好ましい数値範囲内に調整することにより容易に好適な値とすることができ、該内部抵抗(Ω)としては、0.05〜1(Ω)が好ましく、0.05〜0.3(Ω)がより好ましい。なお、内部抵抗は、公知の測定方法、例えば、低電流をパルス印加し、その時の電圧降下(IRドロップ)量から内部抵抗Rを算出する方法から得ることができる。
前記式(VI)で表される異性体を少なくとも含有する非水電解液を備えた一次電池の放電容量は、東ソー製電解合成二酸化マンガンを正極として用いた場合において、260〜285(mAh/g)であるのが好ましく、275〜280(mAh/g)がより好ましい。なお、放電容量は、20℃の環境下、下限電圧1.5Vで、0.2C放電を行うことにより測定した。
式(VI)で表される異性体を少なくとも含有する非水電解液を備えた一次電池は、自己消火性又は難燃性に優れ、耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、且つ低温特性に優れる。
−−非プロトン性有機溶媒(その他の成分)−−
溶媒としては、活性プロトンを有する溶媒も考えられるが、記述のように負極材料と激しく反応するので使用できず、非プロトン性有機溶媒を用いる。非水電解液に非プロトン性有機溶媒が含有される場合、該非プロトン性有機溶媒は、負極の材料と反応しないので安全性が高く、また、非水電解液の低粘度化が可能であり、非水電解液一次電池としての最適なイオン導電性が容易に達成される。しかしながら、例えば、従来の二酸化マンガンリチウム電池では65℃付近から二酸化マンガンとカーボネート系電解液との反応が起こり、反応に伴い発生するガスにより電池内圧が上昇するため安全性に課題がある。これに対し、ホスファゼン誘導体及び/又はホスファゼン誘導体の異性体を含む非水電解液では、上記電解液の反応は抑制され、120℃の高温でも保存性がよく、高温下の放電も良好である。
前記非プロトン性有機溶媒の25℃における粘度としては、非水電解液の粘度を容易に低下させることができる点で、10mPa・s(10cP)以下が好ましく、5mPa・s(5cP)以下がより好ましい。但し、第2の発明においては、非プロトン性有機溶媒の25℃における粘度は、3.0mPa・s(3.0cP)以下が好ましく、2.0mPa・s(2.0cP)以下がより好ましい。粘度が、3.0mPa・s(3.0cP)を超えると、第2の発明において非プロトン性有機溶媒をホスファゼン誘導体と併用する効果が発現しないことがある。
非プロトン性有機溶媒としては、特に制限はないが、前記非水電解液の低粘度化の点で、エーテル化合物やエステル化合物等が挙げられる。具体的には、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン、メチルエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が好適に挙げられる。これらの中でもプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル化合物、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の鎖状エステル化合物、1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル化合物等が好適である。特に、環状のエステル化合物は、比誘電率が高くリチウム塩等の溶解性に優れる点で、鎖状のエステル化合物及びエーテル化合物は、低粘度であるため、非水電解液の低粘度化の点で好適である。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上述した非プロトン性有機溶媒は、第1、第3、第4の発明におけるその他の成分として好ましい。
−−その他の部材−−
その他の部材としては、非水電解液一次電池において、正負極間に、両極の接触による電流の短絡を防止する役割で介在させるセパレーター、通常電池に使用されている公知の各部材等が好適に挙げられる。
セパレーターの材質としては、両極の接触を確実に防止し得、かつ、電解液を通したり含んだりできる材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース系、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製の不織布、薄層フィルム等が好適に挙げられる。これらの中でも、厚さ20〜50μm程度のポリプロピレン又はポリエチレン製の微孔性フィルムが特に好適である。なお、高温使用の場合には、セルロース系やポリブチレンテレフタレート系セパレーターが好ましい。
−−非水電解液一次電池の形態−−
本発明の非水電解液一次電池の形態としては、特に制限はなく、コインタイプ、ボタンタイプ、ペーパータイプ、角型又はスパイラル構造の円筒型電池等、種々の公知の形態が好適に挙げられる。スパイラル構造の場合、例えば、シート状の正極を作製して集電体を挟み、これに、負極(シート状)を重ね合わせて巻き上げる等により非水電解液一次電池を作製することができる。また、ボタンタイプの場合、シート状の正極及び負極を作製し、該正極及び負極によりセパレーターを挟む等により、非水電解液一次電池を作製することができる。
[一次電池の非水電解液用添加剤]
本発明の一次電池の非水電解液用添加剤は、前記式(I)、前記式(II)、前記式(V)の何れかで表されるホスファゼン誘導体からなるか、前記式(VI)で表され且つ前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体を少なくとも含有することを特徴とする。
式(I)、式(II)の何れかで表されるホスファゼン誘導体からなる一次電池の非水電解液用添加剤は、粘度が比較的低く、支持塩を良好に溶解することができ、且つ発火・引火の危険性を低下させることができる。ここで、式(I)又は式(II)で表されるホスファゼン誘導体からなる一次電池の非水電解液用添加剤は、限界酸素指数が21体積%以上であるのが好ましい。限界酸素指数が21体積%未満では、発火・引火の抑制効果が充分でないことがある。
式(II)で表されるホスファゼン誘導体としては、電解液を低粘度化して電池の低温特性を向上させ、更に電解液の安全性を向上させる観点からは、前記式(III)で表されるホスファゼン誘導体が好ましい。式(III)で表されるホスファゼン誘導体からなる一次電池の非水電解液用添加剤は、非水電解液一次電池に添加することにより、電池として必要な電池特性等を維持しつつ、安全性及び耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、且つ内部抵抗が低いため導電率が高く、優れた低温特性を有する非水電解液一次電池を作製することができる。
式(II)で表されるホスファゼン誘導体としては、電解液の耐劣化性及び安全性を向上させる観点からは、前記式(IV)で表されるホスファゼン誘導体も好ましい。式(IV)で表されるホスファゼン誘導体からなる一次電池の非水電解液用添加剤は、非水電解液一次電池に添加することにより、電池として必要な電池特性等を維持しつつ、耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、低温特性に優れ、且つ安全性が非常に高い非水電解液一次電池を作製することができる。ここで、式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の中でも、全Rのうちの少なくとも1つがフッ素であって、一価の置換基がアルコキシ基であるものがより好ましく、該アルコキシ基が、メトキシ基、エトキシ基及びフェノキシ基の何れかであるのが特に好ましい。また、フッ素を含む一価の置換基がトリフルオロエトキシ基であるものも好ましい。
式(V)で表されるホスファゼン誘導体からなる一次電池の非水電解液用添加剤は、非水電解液一次電池に添加することにより、電池として必要な電池特性等を維持しつつ、自己消火性又は難燃性に優れ、耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、低温特性に優れ、且つ内部抵抗が低いため導電率が高く、長期安定性に優れた非水電解液一次電池を作製することができる。ここで、式(V)で表されるホスファゼン誘導体としては、式(V)においてRがメトキシ基であってnが3である構造、式(V)においてRがメトキシ基及びフェノキシ基の少なくとも何れかであってnが4である構造、式(V)においてRがエトキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがイソプロポキシ基であってnが3又は4である構造、式(V)においてRがn−プロポキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがトリフルオロエトキシ基であってnが3又は4である構造、及び式(V)においてRがフェノキシ基であってnが3又は4である構造のホスファゼン誘導体が、非水電解液の粘度上昇を抑制し得る点で好ましい。
式(VI)で表され且つ前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体を少なくとも含有する一次電池の非水電解液用添加剤は、非水電解液一次電池に添加することにより、電池として必要な電池特性等を維持しつつ、自己消火性又は難燃性に優れ、耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、且つ低温特性に優れた非水電解液一次電池を作製することができる。なお、式(VI)で表され且つ前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体を少なくとも含有する一次電池の非水電解液用添加剤は、式(VII)で表されるホスファゼン誘導体を含有してもよい。
本発明の一次電池の非水電解液用添加剤の添加量としては、前述の非水電解液一次電池の非水電解液におけるホスファゼン誘導体の含有量の好ましい数値範囲に相当する量が好適である。添加量を前記数値範囲内の値に調整することにより、非水電解液の安全性、自己消火性、難燃性、耐劣化性、低粘度化、低温特性等の本発明の効果を好適に付与できる。
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。尚、本実施例において、「粘度」は25℃における粘度を指し、公知の測定方法により測定した値である。
(実施例1)
[非水電解液の調製]
ホスファゼン誘導体A(前記式(I)において、Y〜YがO(酸素)であり、R〜RがCHCFであり、XがP(O)(OCHCFである鎖状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:18.9mPa・s(18.9cP))10体積%と、プロピレンカーボネート(PC)45体積%と、ジメトキシエタン(DME)45体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した。
[非水電解液一次電池の作製]
正極には東ソー製電気化学合成二酸化マンガン20mgと、導電材としてのアセチレンブラック12.5mgと、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)1.2mgとを含む円盤状電極(φ16mm)を用いた。なお、正極は、上記配合になるように混合した正極材混練物をドクターブレードで塗工した後、熱風乾燥(100〜120℃)して得たものを、φ16mm打ち抜き機で切り出すことにより作製した。集電体にはニッケル箔を使用した。一方、負極はリチウム箔(厚み0.5mm)をφ16mmに打ち抜いたものを使用した。
評価に用いた電池のサイズは2016型である。セパレーターとして東燃社製ポリエチレンセパレーターを使用し、これを介して正負極を対座させ、前記非水電解液を注入して封口し、リチウム一次電池を構成した。なお、東燃社製ポリエチレンセパレーターに対して濡れ性の悪い電解液については、日本高度紙工業社製セルロースセパレーターを使用した。
<電池特性等の測定・評価>
上記のようにして得られた電池について、20℃において、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)を測定・評価した後、下記の評価方法により、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性を測定・評価した。これらの結果を表1に示す。
−平均放電電位の評価−
正極材に対して0.2Cの条件で放電した時に得られる放電曲線において、曲線が平坦を持続している時の電位を平均放電電位とした。
−常温放電容量の評価−
20℃の環境下で、下限電圧1.5Vで、0.2C放電を行い、放電容量を測定した。
−エネルギー密度の評価−
上記常温放電容量から、単位重量当りの放電容量を計算し、エネルギー密度を求めた。
−低温放電特性の評価(低温放電容量の測定)−
得られた電池について、放電時の温度を、低温(−40℃)とした外は、前記「常温放電容量の評価」と同様の条件で放電を行った。この時の低温における放電容量を、25℃において測定した放電容量と比較し、下記式より放電容量残存率を算出した。合計3本の電池について、同様に測定・算出し、これらの平均値で、低温放電特性を評価した。
式:放電容量残存率=(低温放電容量/常温放電容量(25℃))×100(%)
−高温特性の評価(高温放電容量の測定)−
得られた電池について、放電時の温度を、高温(120℃)とした外は、前記「常温放電容量の評価」と同様の条件で放電を行った。この時の高温における放電容量を、25℃において測定した放電容量と比較し、下記式より放電容量残存率を算出した。合計3本の電池について、同様に測定・算出し、これらの平均値で、高温放電特性を評価した。
式:放電容量残存率=(高温放電容量/常温放電容量(25℃))×100(%)
<限界酸素指数の測定>
上記のようにして得られた非水電解液について、JIS K 7201に準じて、限界酸素指数を測定した。試験片は、SiOシート(石英濾紙、不燃性)127mm×12.7mmをU字型のアルミ箔で補強して自立可能とし、該SiOシートに前記の非水電解液1.0mLを含浸して作製した。この試験片を試験片支持具に垂直に、燃焼円筒(内径75mm、高さ450mm、直径4mmのガラス粒を底部から100±5mmの厚さに均等に満たし金属製の網をその上に置いたもの)の上端部から100mm以上の距離に位置するように取り付けた。次に、燃焼円筒に酸素(JIS K 1101又はこれと同等以上のもの)及び窒素(JIS K 1107の2級又はこれと同等以上のもの)を流し、試験片を空気中で点火し(熱源はJIS K 2240の1種1号)、燃焼状態を調べた。但し、燃焼円筒内の総流量は11.4L/minである。この試験を3回行い、その平均値を表1に示す。
なお、酸素指数とは、JIS K 7201規定の所定の試験条件下において、材料が燃焼を持続するのに必要な容量パーセントで表される最低酸素濃度の値をいい、本願の限界酸素指数は、試験片の燃焼時間が3分以上継続して燃焼するか又は着炎後の燃焼長さが50mm以上燃え続けるのに必要な最低の酸素流量とそのときの窒素流量から算出した。
Figure 2003041197
(実施例2)
実施例1の「非水電解液の調製」において、ホスファゼン誘導体Aを、ホスファゼン誘導体B(前記式(I)において、Y〜YがO(酸素)であり、R〜RがCFCFであり、XがP(O)(OCFCFである鎖状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:16.8mPa・s(16.8cP))に代えた外は、実施例1と同様に非水電解液を調製し、非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1の「非水電解液の調製」において、ホスファゼン誘導体Aを、ホスファゼン誘導体C(前記式(I)において、Y〜YがO(酸素)であり、R〜RがCFCFであり、XがP(O)(OCHCHである鎖状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:11.4mPa・s(11.4cP))に代えた外は、実施例1と同様に非水電解液を調製し、非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(実施例4)
ホスファゼン誘導体C10体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)90体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1の「非水電解液の調製」において、ホスファゼン誘導体Aを、ホスファゼン誘導体D(前記式(II)において、nが3であって、Rがエトキシ基である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:17.5mPa・s(17.5cP))に代えた外は、実施例1と同様に非水電解液を調製し、非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1の「非水電解液の調製」において、ホスファゼン誘導体Aを、ホスファゼン誘導体E(鎖状EO型ホスファゼン誘導体(前記式(I)において、Xが前記式(VIII)で表される有機基であり、Y〜Y、及びY10〜Y11が総て単結合であり、R〜R、及びR10〜R11が、総てエトキシ基であり、Zが酸素である化合物)、25℃における粘度:5.8mPa・s(5.8cP))に代えた外は、実施例1と同様に非水電解液を調製し、非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(実施例7)
ホスファゼン誘導体Eに、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非プロトン性有機溶媒を用いずに非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(実施例8)
ホスファゼン誘導体F(前記式(II)において、nが3であって、6つのRのうち1つがトリフルオロエトキシ基(CFCHO−)、5つがフッ素である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:1.8mPa・s(1.8cP))10体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)90体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(実施例9)
ホスファゼン誘導体G(前記式(II)において、nが3であって、6つのRのうち2つがトリフルオロエトキシ基(CFCHO−)、4つがフッ素である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:3.3mPa・s(3.3cP))10体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)90体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(実施例10)
ホスファゼン誘導体H(前記式(II)において、nが3であって、6つのRのうち1つがフェノキシ基(PhO−)、5つがフッ素である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:1.7mPa・s(1.7cP))10体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)90体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
ホスファゼン誘導体I(前記一般式(II)において、Rが−OCHCFCFCFCF基であって、nが3〜5である化合物、25℃における粘度:400mPa・s(400cP))に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非プロトン性有機溶媒を用いずに非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
プロピレンカーボネート(PC)100体積%に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
ジメトキシエタン(DME)100体積%に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(比較例4)
プロピレンカーボネート(PC)50体積%とジメトキシエタン(DME)50体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
(比較例5)
γ−ブチロラクトン(GBL)100体積%に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定し、更にこの非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2003041197
表1より、酸素指数の低い非プロトン性有機溶媒にホスファゼン化合物を添加することにより、酸素指数が上昇し、即ち、非水電解液が燃え難くなることがわかる。また、比較例1の場合、酸素指数は高いものの粘度が高いため、電池特性に劣ることがわかる。更に、実施例1〜実施例10より、本発明の非水電解液を用いた非水電解液一次電池は酸素指数が高く(即ち、燃え難く安全性が高い)、一次電池としての特性にも優れることがわかる。
(実施例11)
ホスファゼン誘導体J(前記式(III)において、nが3である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:0.8mPa・s(0.8cP))10体積%と、プロピレンカーボネート(PC)45体積%と、ジメトキシエタン(DME)45体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例1と同様にして酸素指数を測定し、更に前述の方法で導電率及び粘度を測定し、また更に下記の方法で電解液の劣化を評価した。結果を表2及び表3に示す。
<劣化の評価>
前記非水電解液について、前述の安定性の評価方法と同様に、非水電解液調製直後及び2ヶ月間グローブボックス内で放置後の水分率(ppm)、フッ化水素濃度(ppm)、放電容量(mAh/g)を測定・算出し、劣化の評価を行った。この時、放電容量(mAh/g)は、重量既知の正極又は負極を用いて、下限電圧1.5Vで、0.2C放電を行うことにより放電曲線を測定し、得られた放電量を、用いた正極又は負極の重量で除することにより求めた。また、非水電解液調製直後及び2ヶ月間グローブボックス内で放置後の非水電解液の色調変化を目視により観察した。結果を表3に示す。
(実施例12)
ホスファゼン誘導体J 10体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)90体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数、導電率及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表2及び表3に示す。
(実施例13)
ホスファゼン誘導体J 10体積%と、プロピレンカーボネート(PC)90体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数、導電率及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表2及び表3に示す。
(実施例14)
ホスファゼン誘導体J 10体積%と、ジメトキシエタン(DME)90体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数、導電率及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表2及び表3に示す。
(比較例6)
ホスファゼン誘導体K(前記式(III)において、nが3であり、かつ式(III)中の全てのF(フッ素)がメトキシエトキシエトキシエトキシエトキシ基で置換された環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:69mPa・s(69cP))10体積%と、プロピレンカーボネート(PC)45体積%と、ジメトキシエタン(DME)45体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数、導電率及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表2及び表3に示す。
(比較例2〜5)
実施例11と同様にして、前記比較例2〜5で調製した非水電解液の導電率及び粘度を測定し、更に該非水電解液の劣化を評価した。結果を表3に示す。また、比較のため、表1中の比較例2〜5の非水電解液一次電池の電池特性を表2に転記する。
Figure 2003041197
Figure 2003041197
表2より、比較例2〜5の酸素指数の低い非プロトン性有機溶媒に、ホスファゼン誘導体を添加することにより(実施例11〜14に相当)、酸素指数が上昇し、即ち、非水電解液の安全性が向上することがわかる。
また、表2より、本発明の非水電解液一次電池は、放電容量・エネルギー密度に優れ、低粘度であるため低温時の放電容量残存率にも優れ、一次電池としての特性が非常に優れることが分かる。特に実施例11〜14の非水電解液は、比較例6の非水電解液よりも低粘度であるため、低温特性が非常に優れている。このことから、本発明で用いるホスファゼンは、ホスファゼンの中でも特に、低粘度化に優れ、優れた低温特性を付与し得ることが分かる。
更に、表3より、比較例2、4、5では、2ヶ月放置後の電解液の色調が淡黄色に変化しており、リチウム塩の分解が進行していることが分かる。一方、実施例11〜13では、電解液の色調に変化はなく、リチウム塩の分解が抑制され耐劣化性が向上していることが分かる。
(実施例15)
ホスファゼン誘導体L(前記式(IV)において、nが3であり、6つのRのうち2つがエトキシ基、4つがフッ素である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:1.2mPa・s(1.2cP))10体積%と、プロピレンカーボネート(PC)45体積%と、ジメトキシエタン(DME)45体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表4及び表5に示す。
(実施例16)
ホスファゼン誘導体L 10体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)90体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表4及び表5に示す。
(実施例17)
ホスファゼン誘導体L 10体積%と、プロピレンカーボネート(PC)90体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表4及び表5に示す。
(実施例18)
ホスファゼン誘導体M(前記式(IV)において、nが3であり、6つのRのうち1つがn−プロポキシ基、5つがフッ素である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:1.1mPa・s(1.1cP))10体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)90体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表4及び表5に示す。
(実施例19)
ホスファゼン誘導体N(前記式(IV)において、nが3であり、6つのRのうち3つがメトキシ基、3つがフッ素である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:3.9mPa・s(3.9cP))15体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)85体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表4及び表5に示す。
(実施例20)
ホスファゼン誘導体F(前記式(IV)において、nが3であり、6つのRのうち1つがトリフルオロエトキシ基(CFCHO−)、5つがフッ素である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:1.8mPa・s(1.8cP))15体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)85体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表4及び表5に示す。
(実施例21)
ホスファゼン誘導体G(前記式(IV)において、nが3であり、6つのRのうち2つがトリフルオロエトキシ基(CFCHO−)、4つがフッ素である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:3.3mPa・s(3.3cP))15体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)85体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表4及び表5に示す。
(実施例22)
ホスファゼン誘導体H(前記式(IV)において、nが3であり、6つのRのうち1つがフェノキシ基(PhO−)、5つがフッ素である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:1.7mPa・s(1.7cP))15体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)85体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表4及び表5に示す。
(比較例7)
ホスファゼン誘導体K(前記式(IV)において、nが3であり、6つのR全てがメトキシエトキシエトキシエトキシエトキシ基であるホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘度:69mPa・s(69cP))10体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL)90体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表4及び表5に示す。
(比較例2〜5)
比較のため、表2に記載の比較例2〜5の非水電解液一次電池の電池特性を表4に、並びに表3に記載の比較例2〜5の非水電解液の粘度及び劣化特性を表5に転記する。
Figure 2003041197
Figure 2003041197
表4より、比較例2〜5の酸素指数が低く燃焼性の非プロトン性有機溶媒に、式(IV)のホスファゼン誘導体を添加することにより(実施例15〜22に相当)、限界酸素指数が上昇し、非水電解液の安全性が著しく向上することがわかる。また、実施例16、18〜22の非水電解液は、非プロトン性有機溶媒が比較例7と同じであるにも関わらず、比較例7の非水電解液よりも限界酸素指数が高いことから、式(IV)のホスファゼン誘導体は、ホスファゼン誘導体の中でも特に非水電解液への安全性の付与能が高いことが分かる。更に、実施例15〜22の一次電池は、放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性に優れ、一次電池としての性能も非常に高いことがわかる。
また、表5より、比較例2、4、5では、2ヶ月放置後の電解液の色調が淡黄色に変化しており、リチウム塩の分解が進行していることが分かる。一方、実施例15〜19では、電解液の色調に変化はなく、リチウム塩の分解が抑制され耐劣化性が向上していることが分かる。
(実施例23)
ホスファゼン誘導体O(前記式(V)において、nが3であり、全てのRがメトキシ基である環状ホスファゼン誘導体化合物)10gを、プロピレンカーボネート(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒(混合比は、体積比でPC/DME=1/1)90gに溶解させ、LiCFSO(支持塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ、非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数、導電率及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表6及び表7に示す。
(実施例24)
ホスファゼン誘導体O 15gを、プロピレンカーボネート(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒(混合比は、体積比でPC/DME=1/1)85gに溶解させ、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数、導電率及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表6及び表7に示す。
(実施例25)
ホスファゼン誘導体O 20gを、プロピレンカーボネート(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒(混合比は、体積比でPC/DME=1/1)80gに溶解させ、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数、導電率及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表6及び表7に示す。
(実施例26)
ホスファゼン誘導体O 30gを、プロピレンカーボネート(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒(混合比は、体積比でPC/DME=1/1)70gに溶解させ、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数、導電率及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表6及び表7に示す。
(比較例8)
下記化学式(XIV)で表されるホスファゼン誘導体P 30gを、プロピレンカーボネート(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒(混合比は、体積比でPC/DME=1/1)70gに溶解させ、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数、導電率及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表6及び表7に示す。
Figure 2003041197
(比較例4)
比較のため、表2に記載の比較例4の非水電解液一次電池の電池特性を表6に、並びに表3に記載の比較例4の非水電解液の導電率、粘度及び劣化特性を表7に転記する。
Figure 2003041197
Figure 2003041197
表6より、比較例4の酸素指数の低い非プロトン性有機溶媒に、ホスファゼン誘導体を添加することにより(実施例23〜26に相当)、酸素指数が上昇し、即ち、非水電解液の安全性が向上することがわかる。
また、表6及び7より、比較例8と比べて、本発明の非水電解液一次電池(実施例23〜26)は、低粘度で導電率が高く、低温特性にも優れることが分かる。このことから、式(V)のホスファゼン誘導体は、ホスファゼン誘導体の中でも特に優れた低温特性を付与し得ることが分かる。
更に、表7より、比較例2では、2ヶ月放置後の電解液の色調が淡黄色に変化し、リチウム塩の分解が進行する一方、実施例23〜26では、電解液の色調に変化はなく、リチウム塩の分解が抑制され耐劣化性が向上していることが分かる。
(実施例27)
[非水電解液の調製]
異性体Q’(前記式(VI)において、Xが式(XI)で表される置換基あって、R〜R及びR15〜R16がエチル基であって、Y〜Y、Y15〜Y16及びZが酸素元素である化合物)を10体積%及びホスファゼン誘導体Q(前記式(VII)において、Xが式(XI)で表される置換基あって、R〜R及びR15〜R16がエチル基であって、Y〜Y、Y15〜Y16及びZが酸素元素である化合物)を90体積%含有する一次電池の非水電解液用添加剤10mLを、プロピレンカーボネート(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒(混合比は、体積比でPC/DME=7/3)90mLに溶解させ、LiCFSO(支持塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。
なお、前記一次電池の非水電解液用添加剤は、ホスファゼン誘導体Qを188℃において精密蒸留することにより得、異性体Q’の含有量は、GPC分析機(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、型:HLC−8020(RI検出器付き)、東ソー社製)を用いピーク比から求めた。この時、カラムとしては、TSKgelG1000HXL及びTSKgelG2000HXL(共に東ソー社製)を採用し、溶出溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を1mL/minで展開して用いた。
[非水電解液一次電池の作製]
上記のようにして調製した非水電解液を用い、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表8及び表9に示す。
(実施例28)
異性体Q’を20体積%及びホスファゼン誘導体Qを80体積%含有する一次電池の非水電解液用添加剤10mLを、プロピレンカーボネート(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒(混合比は、体積比でPC/DME=7/3)90mLに溶解させ、LiCFSO(支持塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ、非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表8及び表9に示す。
(実施例29)
異性体Q’を30体積%及びホスファゼン誘導体Qを70体積%含有する一次電池の非水電解液用添加剤10mLを、プロピレンカーボネート(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒(混合比は、体積比でPC/DME=7/3)90mLに溶解させ、LiCFSO(支持塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ、非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表8及び表9に示す。
(実施例30)
異性体Q’を30体積%及びホスファゼン誘導体Qを70体積%含有する一次電池の非水電解液用添加剤20mLを、プロピレンカーボネート(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒(混合比は、体積比でPC/DME=7/3)80mLに溶解させ、LiCFSO(支持塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ、非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表8及び表9に示す。
(比較例9)
ホスファゼン誘導体Q 10mLを、プロピレンカーボネート(PC)とジメトキシエタン(DME)との混合溶媒(混合比は、体積比でPC/DME=7/3)90mLに溶解させ、LiCFSO(支持塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ、非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表8及び表9に示す。
(比較例10)
プロピレンカーボネート(PC)70体積%とジメトキシエタン(DME)30体積%との混合溶液に、LiCFSO(リチウム塩)を0.75mol/L(M)の濃度で溶解させ非水電解液を調製した外は、実施例1と同様に非水電解液一次電池を作製して、初期の電池特性(電圧、内部抵抗)、平均放電電位、常温放電容量、エネルギー密度、低温特性、高温特性をそれぞれ測定した。また、この非水電解液を用い実施例11と同様にして酸素指数及び粘度を測定し、更に電解液の劣化を評価した。結果を表8及び表9に示す。
Figure 2003041197
Figure 2003041197
表8より、比較例10の酸素指数の低い非プロトン性有機溶媒に、異性体及びホスファゼン誘導体の混合物を添加することにより(実施例27〜30に相当)、酸素指数が上昇し、即ち、非水電解液の安全性が向上することがわかる。
また、比較例9と比べて、実施例27〜29の非水電解液一次電池は、低温特性が優れていることから、異性体を含む添加剤の方が、異性体を含まない添加剤よりも低温特性に優れることが分かる。
更に、表9より、比較例10では、2ヶ月放置後の電解液の色調が淡黄色に変化し、リチウム塩の分解が進行する一方、実施例27〜30では、電解液の色調に変化はなく、リチウム塩の分解が抑制され耐劣化性が向上していることが分かる。
産業上の利用可能性
第1及び第2の発明によれば、発火・引火の危険性が低く、優れた電池性能をも有する非水電解液一次電池を提供することができる。ここで、式(III)で表されるホスファゼンを用いる場合、安全性及び耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、且つ内部抵抗が低いため導電率が高く、低粘度であるため低温特性に優れた非水電解液一次電池を提供することができる。また、式(IV)で表されるホスファゼンを用いる場合、耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、低温特性に優れ、且つ安全性が非常に高い非水電解液一次電池を提供することができる。
第3の発明によれば、自己消火性又は難燃性に優れ、耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、低温特性に優れ、且つ内部抵抗が低いため導電率が高く、長期安定性に優れた非水電解液一次電池を提供することができる。
第4の発明によれば、自己消火性又は難燃性に優れ、耐劣化性に優れ、非水電解液の界面抵抗が低く、且つ低温特性に優れた非水電解液一次電池を提供することができる。

Claims (59)

  1. 正極と、負極と、支持塩及び25℃における粘度が100mPa・s(100cP)以下のホスファゼン誘導体を含有する非水電解液とを備えることを特徴とする非水電解液一次電池。
  2. 正極と、負極と、支持塩、25℃における粘度が20mPa・s(20cP)以下のホスファゼン誘導体及び非プロトン性有機溶媒を含有する非水電解液とを備えることを特徴とする非水電解液一次電池。
  3. 前記非プロトン性有機溶媒が、環状若しくは鎖状のエステル化合物、又は鎖状のエーテル化合物を含有することを特徴とする請求項2に記載の非水電解液一次電池。
  4. 前記ホスファゼン誘導体が、次式(I)及び次式(II)の何れかで表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解液一次電池。
    Figure 2003041197
    (式中、R、R及びRは、夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む有機基を表し;Y、Y及びYは、夫々独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表す。)
    Figure 2003041197
    (式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜15を表す。)
  5. 前記非水電解液の限界酸素指数が21体積%以上であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の非水電解液一次電池。
  6. 前記式(II)で表されるホスファゼン誘導体が次式(III)で表されるホスファゼン誘導体であることを特徴とする請求項4に記載の非水電解液一次電池。
    Figure 2003041197
    (式中、nは3〜13を表す。)
  7. 非水電解液における前記式(III)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、1体積%以上であることを特徴とする請求項6に記載の非水電解液一次電池。
  8. 非水電解液における前記式(III)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、2体積%以上であることを特徴とする請求項7に記載の非水電解液一次電池。
  9. 非水電解液の25℃における粘度が、4.0mPa・s(4.0cP)以下である請求項6から8の何れかに記載の非水電解液一次電池。
  10. 前記非水電解液の限界酸素指数が21体積%以上であることを特徴とする請求項6から9の何れかに記載の非水電解液一次電池。
  11. 前記式(II)で表されるホスファゼン誘導体が次式(IV)で表されるホスファゼン誘導体であることを特徴とする請求項4に記載の非水電解液一次電池。
    Figure 2003041197
    (式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はフッ素を表し、全Rのうち少なくとも1つはフッ素を含む一価の置換基又はフッ素であり、nは3〜8を表す。但し、全てのRがフッ素であることはない。)
  12. 全Rのうちの少なくとも1つがフッ素であって、一価の置換基がアルコキシ基である請求項11に記載の非水電解液一次電池。
  13. 前記アルコキシ基が、メトキシ基、エトキシ基及びフェノキシ基からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の非水電解液一次電池。
  14. 前記フッ素を含む一価の置換基がトリフルオロエトキシ基であることを特徴とする請求項11に記載の非水電解液一次電池。
  15. 非水電解液における前記式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、2体積%以上であることを特徴とする請求項11に記載の非水電解液一次電池。
  16. 非水電解液における前記式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、10体積%以上であることを特徴とする請求項15に記載の非水電解液一次電池。
  17. 非水電解液が、支持塩としてLiBFを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(IV)で表されるホスファゼン誘導体を5体積%以上含むことを特徴とする請求項11に記載の非水電解液一次電池。
  18. 非水電解液が、支持塩としてLiCFSOを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(IV)で表されるホスファゼン誘導体を5体積%以上含むことを特徴とする請求項11に記載の非水電解液一次電池。
  19. 前記非水電解液の限界酸素指数が22体積%以上であることを特徴とする請求項11から18の何れかに記載の非水電解液一次電池。
  20. 正極と、負極と、支持塩及び25℃において固体であって且つ次式(V)で表されるホスファゼン誘導体を含有する非水電解液とを備えることを特徴とする非水電解液一次電池。
    Figure 2003041197
    (式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜6を表す。)
  21. 前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体が、式(V)においてRがメトキシ基であってnが3である構造、式(V)においてRがメトキシ基及びフェノキシ基の少なくとも何れかであってnが4である構造、式(V)においてRがエトキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがイソプロポキシ基であってnが3又は4である構造、式(V)においてRがn−プロポキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがトリフルオロエトキシ基であってnが3又は4である構造、及び式(V)においてRがフェノキシ基であってnが3又は4である構造の少なくとも何れかであることを特徴とする請求項20に記載の非水電解液一次電池。
  22. 前記非水電解液の25℃における粘度が10mPa・s(10cP)以下であることを特徴とする請求項20に記載の非水電解液一次電池。
  23. 非水電解液における前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、40重量%以下であることを特徴とする請求項20に記載の非水電解液一次電池。
  24. 非水電解液における前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、2重量%以上であることを特徴とする請求項20に記載の非水電解液一次電池。
  25. 非水電解液における前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、20重量%以上であることを特徴とする請求項20に記載の非水電解液一次電池。
  26. 非水電解液における前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体の含有量が、30重量%以上であることを特徴とする請求項20に記載の非水電解液一次電池。
  27. 前記非水電解液が非プロトン性有機溶媒を含むことを特徴とする請求項20に記載の非水電解液一次電池。
  28. 前記非プロトン性有機溶媒が、環状若しくは鎖状のエステル化合物、又は鎖状のエーテル化合物を含有することを特徴とする請求項27に記載の非水電解液一次電池。
  29. 非水電解液が、支持塩としてLiBFを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体を5〜10重量%含むことを特徴とする請求項20に記載の非水電解液一次電池。
  30. 非水電解液が、支持塩としてLiBFを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体を10重量%を超える量含むことを特徴とする請求項20に記載の非水電解液一次電池。
  31. 非水電解液が、支持塩としてLiCFSOを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体を5〜25重量%含むことを特徴とする請求項20に記載の非水電解液一次電池。
  32. 非水電解液が、支持塩としてLiCFSOを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを含み、前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体を25重量%を超える量含むことを特徴とする請求項20に記載の非水電解液一次電池。
  33. 前記非水電解液の限界酸素指数が21体積%以上であることを特徴とする請求項20から25、27から29、及び31の何れかに記載の非水電解液一次電池。
  34. 前記非水電解液の限界酸素指数が23体積%以上であることを特徴とする請求項20から24、26から28、30及び32の何れかに記載の非水電解液一次電池。
  35. 正極と、負極と、支持塩及び次式(VI)で表され且つ次式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体を含有する非水電解液とを備えることを特徴とする非水電解液一次電池。
    Figure 2003041197
    (式(VI)及び(VII)において、R、R及びRは、夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル及びポロニウムからなる群より選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を表し;Y及びYは、夫々独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表す。)
  36. 前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体を含有することを特徴とする請求項35に記載の非水電解液一次電池。
  37. 前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と、前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との非水電解液における総含有量が、1体積%以上であることを特徴とする請求項36に記載の非水電解液一次電池。
  38. 前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と、前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との非水電解液における総含有量が、2体積%以上である請求項37に記載の非水電解液一次電池。
  39. 前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と、前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との非水電解液における総含有量が、20体積%以上である請求項38に記載の非水電解液一次電池。
  40. 前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と、前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との非水電解液における総含有量が、30体積%以上である請求項38に記載の非水電解液一次電池。
  41. 前記非水電解液が非プロトン性有機溶媒を含むことを特徴とする請求項35に記載の非水電解液一次電池。
  42. 前記非プロトン性有機溶媒が、環状若しくは鎖状のエステル化合物、又は鎖状のエーテル化合物を含有することを特徴とする請求項41に記載の非水電解液一次電池。
  43. 非水電解液が、支持塩としてLiBFを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを45体積%以上含み、前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体とを総含有量で1.5〜10体積%含むことを特徴とする請求項35又は36に記載の非水電解液一次電池。
  44. 非水電解液が、支持塩としてLiBFを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを45体積%以上含み、前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体とを総含有量で10体積%を超える量含むことを特徴とする請求項35又は36に記載の非水電解液一次電池。
  45. 非水電解液が、支持塩としてLiCFSOを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを45体積%以上含み、前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体とを総含有量で2.5〜15体積%含むことを特徴とする請求項35又は36に記載の非水電解液一次電池。
  46. 非水電解液が、支持塩としてLiCFSOを含み、非プロトン性有機溶媒としてγ−ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネートを45体積%以上含み、前記式(VI)で表され且つ式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体と前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体とを総含有量で15体積%を超える量含むことを特徴とする請求項35又は36に記載の非水電解液一次電池。
  47. 前記非水電解液の限界酸素指数が21体積%以上であることを特徴とする請求項35から39、41から43、及び45の何れかに記載の非水電解液一次電池。
  48. 前記非水電解液の限界酸素指数が23体積%以上であることを特徴とする請求項35から38、40から42、44、及び46の何れかに記載の非水電解液一次電池。
  49. 次式(I)及び次式(II)の何れかで表されるホスファゼン誘導体からなる一次電池の非水電解液用添加剤。
    Figure 2003041197
    (式中、R、R及びRは、夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル及びポロニウムからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む有機基を表し;Y、Y及びYは、夫々独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表す。)
    Figure 2003041197
    (式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜15を表す。)
  50. 限界酸素指数が21体積%以上であることを特徴とする請求項49に記載の一次電池の非水電解液用添加剤。
  51. 前記式(II)で表されるホスファゼン誘導体が次式(III)で表されるホスファゼン誘導体であることを特徴とする請求項49に記載の一次電池の非水電解液用添加剤。
    Figure 2003041197
    (式中、nは3〜13を表す。)
  52. 前記式(II)で表されるホスファゼン誘導体が次式(IV)で表されるホスファゼン誘導体であることを特徴とする請求項49に記載の一次電池の非水電解液用添加剤。
    Figure 2003041197
    (式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はフッ素を表し、全Rのうち少なくとも1つはフッ素を含む一価の置換基又はフッ素であり、nは3〜8を表す。但し、全てのRがフッ素であることはない。)
  53. 全Rのうちの少なくとも1つがフッ素であって、一価の置換基がアルコキシ基である請求項52に記載の一次電池の非水電解液用添加剤。
  54. 前記アルコキシ基が、メトキシ基、エトキシ基及びフェノキシ基からなる群から選択されることを特徴とする請求項53に記載の一次電池の非水電解液用添加剤。
  55. 前記フッ素を含む一価の置換基がトリフルオロエトキシ基であることを特徴とする請求項52に記載の一次電池の非水電解液用添加剤。
  56. 25℃において固体であって且つ次式(V)で表されるホスファゼン誘導体からなる一次電池の非水電解液用添加剤。
    Figure 2003041197
    (式中、Rは夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;nは3〜6を表す。)
  57. 前記式(V)で表されるホスファゼン誘導体が、式(V)においてRがメトキシ基であってnが3である構造、式(V)においてRがメトキシ基及びフェノキシ基の少なくとも何れかであってnが4である構造、式(V)においてRがエトキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがイソプロポキシ基であってnが3又は4である構造、式(V)においてRがn−プロポキシ基であってnが4である構造、式(V)においてRがトリフルオロエトキシ基であってnが3又は4である構造、及び式(V)においてRがフェノキシ基であってnが3又は4である構造の少なくとも何れかであることを特徴とする請求項56に記載の一次電池の非水電解液用添加剤。
  58. 次式(VI)で表され且つ次式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の異性体を少なくとも含有することを特徴とする一次電池の非水電解液用添加剤。
    Figure 2003041197
    (式(VI)及び(VII)において、R、R及びRは、夫々独立して一価の置換基又はハロゲン元素を表し;Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル及びポロニウムからなる群より選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を表し;Y及びYは、夫々独立して2価の連結基、2価の元素又は単結合を表す。)
  59. 前記式(VII)で表されるホスファゼン誘導体を含有することを特徴とする請求項58に記載の一次電池の非水電解液用添加剤。
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