JP2003249233A - リチウム1次電池 - Google Patents

リチウム1次電池

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JP2003249233A JP2002047991A JP2002047991A JP2003249233A JP 2003249233 A JP2003249233 A JP 2003249233A JP 2002047991 A JP2002047991 A JP 2002047991A JP 2002047991 A JP2002047991 A JP 2002047991A JP 2003249233 A JP2003249233 A JP 2003249233A
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正珠 大月
Shinichi Eguchi
眞一 江口
Yuji Sugano
裕士 菅野
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 放電容量及びエネルギー密度の高いため高出
力で長寿命であり、かつ安全性が高いリチウム1次電池
を提供する。 【解決手段】 二酸化マンガンの粒子間に、酸化チタ
ン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化リチウム、
酸化ニッケル、酸化銅及び酸化鉄からなる群から選択さ
れる少なくとも1種の金属酸化物が分散されていること
を特徴とする正極と、負極と、ホスファゼン誘導体式
(1)及び/又はホスファゼン誘導体の異性体が添加さ
れた非プロトン性有機溶媒と支持塩とからなる電解液と
を備えるリチウム1次電池である。 (式中、R、R、及びRは、一価の置換基又はハ
ロゲン元素を表す。Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウ
ム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、
酸素、イオウ、セレン、テルル、及びボロニウムからな
る群より選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を
表す。Y、Y及びYは、2価の連結基、2価の元
素、又は単結合を表す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム1次電池
に関し、特に放電容量、エネルギー密度に優れるリチウ
ム1次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、エレクトロニクスの急速な進歩に
伴い、特に小型電子機器の電源として、小型、軽量で、
かつ長寿命、高エネルギー密度の電池が求められてい
る。これに対し、二酸化マンガンを正極とし、リチウム
を負極とするリチウム1次電池は、リチウムの電極電位
が金属中で最も低く、単位体積当りの電気容量が大きい
ために、高エネルギー密度を有する電池の一つとして知
られており、多くの種類のものが活発に研究されてい
る。
【0003】一方、空気入りタイヤにパンク等が生じて
も、修理・補修ができる場所までの相当距離を継続走行
できるランフラットタイヤが開発されている。これに伴
い、タイヤの内圧を測定し、一定以下の内圧になった場
合に、異常を伝える信号を送信する内圧警報装置を、前
記ランフラットタイヤに設けることが提案されている。
【0004】ここで、内圧警報装置の電源としては、前
述の小型、軽量で、かつ長寿命、高エネルギー密度の二
酸化マンガンを正極とし、リチウムを負極とするリチウ
ム1次電池が用いられている。
【0005】また、リチウム1次電池においては、負極
を形成する材料として、リチウムが多用されているが、
該リチウムは水あるいはアルコールなど活性プロトンを
有する化合物と激しく反応するため、使用される電解質
は非水溶液又は固体電解質に限られる。固体電解質はイ
オン伝導性が低いため、低放電電流における使用にのみ
限られる。従って、現在、一般に用いられる電解液は、
エステル系有機溶媒等の非プロトン性有機溶媒である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、タイヤ
内圧の他にタイヤの諸情報を伝達するように内圧警報装
置の高機能化が要請され、それに伴い電力消費量が増大
するので、現存するリチウム1次電池を内圧警報装置の
電源に用いたのでは、寿命が短く、短期間で交換が必要
になるという問題が生じる。
【0007】また、負極材料がリチウム金属やリチウム
合金であり、水分に対して非常に高活性であるため、例
えば電池の封口が不完全で水分が侵入した際等には、負
極材料と水とが反応して水素を発生したり、発火したり
する等して危険性が高いという問題があった。更に、リ
チウム金属は低融点(約170℃)であるため、短絡時等に
大電流が急激に流れると、電池が異常に発熱し、電池が
溶融する等の非常に危険な状況を引き起こすという問題
もあった。また更に、上述した電池の発熱に伴い有機溶
媒をベースとする電解液が気化・分解してガスを発生し
たり、発生したガスによって電池の破裂・発火が起こっ
たりする等という問題もあった。また更に、本来充電を
想定していないリチウム1次電池においても、誤操作に
よる充電があり得、こうした場合に発火を引き起こすと
いう問題もあった。
【0008】そこで、本発明は、放電容量及びエネルギ
ー密度が高いため高出力で長寿命であり、かつ安全性の
高いリチウム1次電池を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するために鋭意検討した結果、二酸化マンガンを
正極とするリチウム1次電池において、正極の二酸化マ
ンガンを改良すると共に、電解液にホスファゼン誘導体
及び/又はホスファゼン誘導体の異性体を添加すること
によって、放電容量及びエネルギー密度の高い、高出力
で長寿命なリチウム1次電池が得られることを見出し、
本発明を完成するに至った。
【0010】即ち、本発明は、 <1> 二酸化マンガンの粒子間に、酸化チタン、アルミ
ナ、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化リチウム、酸化ニッケ
ル、酸化銅及び酸化鉄からなる群から選択される少なく
とも1種の金属酸化物が分散されてなる正極と、負極
と、ホスファゼン誘導体及び/又はホスファゼン誘導体
の異性体が添加された非プロトン性有機溶媒と支持塩と
からなる電解液とを備えることを特徴とするリチウム1
次電池である。
【0011】<2> 前記ホスファゼン誘導体が、25℃に
おいて100mPa・s(100cP)以下の粘度を有し、下記式(I)又
は下記式(II)で表わされることを特徴とする前記<1>に
記載のリチウム1次電池である。
【化4】 (式中、R、R、及びRは、一価の置換基又はハ
ロゲン元素を表す。Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウ
ム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、
酸素、イオウ、セレン、テルル、及びポロニウムからな
る群より選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を
表す。Y、Y及びYは、2価の連結基、2価の元
素、又は単結合を表す。) (NPR ・・・ (II) (式中、Rは一価の置換基又はハロゲン元素を表す。
nは、3〜15を表す。)
【0012】<3> 上記式(II)で表わされるホスファゼ
ン誘導体が、下記式(III)で表されることを特徴とする
前記<2>に記載のリチウム1次電池である。 (NPF ・・・ (III) (式中、nは3〜13を表す。)
【0013】<4> 上記式(II)で表わされるホスファゼ
ン誘導体が、下記式(IV)で表されることを特徴とする前
記<2>に記載のリチウム1次電池である。 (NPR ・・・ (IV) (式中、Rは一価の置換基又はフッ素を表し、全R
のうち少なくとも1つはフッ素を含む一価の置換基又は
フッ素であり、nは3〜8を表す。但し、全てのR がフ
ッ素であることはない。)
【0014】<5> 前記ホスファゼン誘導体が、25℃に
おいて固体であって、下記式(V)で表されることを特徴
とする前記<1>に記載のリチウム1次電池である。 (NPR ・・・ (V) (式中、Rは一価の置換基又はハロゲン元素を表す。
nは3〜6を表す。)
【0015】<6> 前記異性体が、下記式(VI)で表さ
れ、下記式(VII)で表わされるホスファゼン誘導体の異
性体であることを特徴とする前記<1>に記載のリチウム
1次電池である。
【化5】
【化6】 (式(VI)及び(VII)において、R、R及びRは、
一価の置換基又はハロゲン元素を表す。Xは、炭素、
ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アン
チモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル、及
びポロニウムからなる群より選ばれる元素の少なくとも
1種を含む置換基を表す。Y及びYは、2価の連結
基、2価の元素、又は単結合を表す。)
【0016】<7> 前記金属酸化物が、二酸化チタンで
あることを特徴とする前記<1>から<6>の何れかに記載の
リチウム1次電池である。 <8> 前記金属酸化物の質量が、前記二酸化マンガンの
質量に対し、0.5%から4%であることを特徴とする前記
<1>から<7>の何れかに記載のリチウム1次電池である。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。本発明のリチウム1次電池は、正極と、負極と、電
解液とを備え、必要に応じて、セパレーター等のリチウ
ム1次電池の技術分野で通常使用されている部材を備え
る。
【0018】本発明のリチウム1次電池を構成する正極
は、二酸化マンガンと、該二酸化マンガンの粒子間に分
散させた金属酸化物とからなり、必要に応じて、導電材
及び結着剤等のリチウム1次電池の技術分野で通常使用
されている添加剤を含む。
【0019】本発明で使用する二酸化マンガンは、電気
化学合成であっても、化学合成であってもよい。該二酸
化マンガンは、リチウム1次電池の正極として通常使用
される材料の中でも、放電電位が高く高容量であり、安
全性及び電解液の濡れ性に優れ、更にコストの点でも優
れる。該二酸化マンガンの粒径は1〜60μmであり、好ま
しくは20〜40μmである。粒径が1μm未満又は60μmを超
えると、正極合材(二酸化マンガン、導電材及び結着剤
からなる)成形時にパッキングが悪くなるか、又は単位
体積中に含まれる正極活物質量が少なくなるため、放電
容量が減少することがあるので好ましくない。
【0020】本発明に用いる金属酸化物としては、酸化
チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化リチウ
ム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化鉄が挙げられ、これら
は1種単独でも、2種以上の併用であってもよい。
【0021】該金属酸化物は非常に微細な粒子であるの
が好ましく、その粒径は10nm〜1μmであり、好ましくは
20nm〜60nmである。粒径が10nm未満の粒子は工業的には
合成が困難であり、1μmを超えると単位体積当りに含ま
れる正極活物質としての二酸化マンガンの量が減少し
て、単位体積当りのエネルギー量が減少するため好まし
くない。
【0022】本発明では、二酸化マンガンの粒子間に、
金属酸化物を分散させているので、二酸化マンガン粒子
間に隙間が生じる。該隙間には電解液が効率よく浸入で
きるため、電解液と二酸化マンガンの接触面積が増大
し、その結果として二酸化マンガンの利用率が上がり、
放電容量及びエネルギー密度が向上する。二酸化マンガ
ン粒子間に隙間を形成する金属酸化物の中でも酸化チタ
ンが特に好ましく、その理由として、酸化チタンは、リ
チウム1次電池の電池電極反応を阻害しないこと、効果
的に水分を吸収して電池の安定性に寄与するだけでな
く、添加により著しく導電性を低下させることが無い
(内部抵抗が上昇しない)こと等が挙げられる。
【0023】前記正極における金属酸化物の質量は、二
酸化マンガンの質量に対し、0.5%から4%が好ましい。
金属酸化物の質量が、二酸化マンガンの質量に対し、0.
5%未満であると、金属酸化物を二酸化マンガンの粒子
間に分散させて隙間を形成する効果が十分でなく、4%
を超えると、単位体積当りの二酸化マンガン量が減少す
ると同時に、二酸化マンガンの粒子表面が金属酸化物で
覆われ、電解液と二酸化マンガンとの接触面積が減少し
てしまうため好ましくない。
【0024】本発明のリチウム1次電池を構成する正極
に、必要に応じて添加する添加剤のうち、導電材として
はアセチレンブラック等が挙げられ、結着剤としてはポ
リフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレ
ン(PTFE)等が挙げられる。これらの添加剤を使用すると
きは、従来と同様の配合割合、例えば、正極用粉末:導
電材:結着剤=8:1:1〜8:1:0.2(質量比)で配合で
きる。
【0025】正極の形状としては、特に制限はなく、電
極として公知の形状の中から適宜選択することができ
る。例えば、シート状、円柱形状、板状形状、スパイラ
ル形状等が挙げられる。
【0026】本発明のリチウム1次電池を構成する負極
の材料としては、リチウム金属自体の他、リチウム合金
等が挙げられる。リチウムと合金をつくる金属として
は、Sn、Pb、Al、Au、Pt、In、Zn、Cd、Ag、Mg等が挙げ
られる。これらの中でも、埋蔵量の多さ、毒性の観点か
らAl、Zn、Mgが好ましい。これらの材料は、1種単独で
使用してもよく、2種以上を併用してもよい。負極の形
状としては、特に制限はなく、前述した正極の形状と同
様の公知の形状から適宜選択することができる。
【0027】本発明のリチウム1次電池の電解液は、ホ
スファゼン誘導体及び/又はホスファゼン誘導体の異性
体が添加された非プロトン性有機溶媒と、支持塩とから
なる。リチウム1次電池の負極は、前述のようにリチウ
ム又はリチウム合金からなるため、水との反応性が非常
に高く、従って、溶媒には水と反応しない非プロトン性
有機溶媒を用いる。
【0028】非プロトン性有機溶媒としては、特に制限
はないが、電解液の粘度を低く抑える観点から、エーテ
ル化合物やエステル化合物等が挙げられる。具体的に
は、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラ
ン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ
フェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピ
レンカーボネート(PC)、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-
バレロラクトン、メチルエチルカーボネート、エチルメ
チルカーボネート等が好適に挙げられる。これらの中で
もプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等の環
状エステル化合物、ジメチルカーボネート、メチルエチ
ルカーボネート等の鎖状エステル化合物、1, 2-ジメト
キシエタン等の鎖状エーテル化合物等が好適である。特
に、環状のエステル化合物は、比誘電率が高く後述する
支持塩(リチウム塩)の溶解性に優れる点で好適であ
り、一方、鎖状のエステル化合物及びエーテル化合物
は、低粘度であるため、電解液の低粘度化の点で好適で
ある。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を
併用してもよい。
【0029】支持塩としては、リチウムイオンのイオン
源として通常用いるものであればよく、該リチウムイオ
ンのイオン源としては、特に制限はないが、例えば、Li
ClO 、LiBF、LiPF、LiCFSO及びLiAsF、LiC
FSO、Li(CFSO N、Li(CFSON
等のリチウム塩が好適に挙げられる。これらは、1種単
独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】電解液中の支持塩の含有量としては、電解
液の溶媒成分1Lに対し、0.2〜1モルが好ましく、0.5〜1
モルがより好ましい。含有量が、0.2モル未満の場合に
は、電解液の十分な導電性を確保することができず、電
池の放電特性に支障をきたすことがある一方、1モルを
超える場合には、電解液の粘度が上昇し、リチウムイオ
ンの十分な移動度が確保できないため、前述と同様に電
解液の十分な導電性が確保できず、結果として溶液抵抗
が上昇するため、パルス放電、低温特性に支障をきたす
ことがある。
【0031】本発明において、電解液にホスファゼン誘
導体を添加する理由としては、以下の通りである。即
ち、前述のように、二酸化マンガンの粒子間に、特定の
金属酸化物を分散させると共に、非プロトン性有機溶媒
にホスファゼン誘導体及び/又はホスファゼン誘導体の
異性体を添加することによって、リチウム1次電池の放
電容量及びエネルギー密度を向上させることができ、高
出力で長寿命なリチウム1次電池が得られる。
【0032】また、従来、リチウム1次電池における非
プロトン性有機溶媒をベースとした電解液においては、
短絡時等に大電流が急激に流れ、電池が異常に発熱した
際に、気化・分解してガスが発生したり、発生したガス
及び熱により電池の破裂・発火が起こったりするため危
険性が高く、短絡時に生じる火花が電解液に引火し、発
火・破裂の原因となる危険性も高いが、これら従来の電
解液に、ホスファゼン誘導体が含有されていれば、200
℃以下程度の比較的低温における電解液の気化・分解等
が抑制され、発火・引火の危険性が低減され、仮に負極
材料の溶融等により電池内部での発火があっても、類焼
の危険性が低い。更に、リンには、電池を構成する高分
子材料の連鎖分解を抑制する作用があるため、前記発火
・引火の危険性は効果的に低減される。また更に、従来
の電解液に、ホスファゼン誘導体が含有されていれば、
低温及び高温特性にも優れたリチウム1次電池を提供す
ることが可能となる。
【0033】更に、ホスファゼンは、1次電池として十
分に機能するだけの電位窓を有しており、放電によって
分解することはない。また、ハロゲン(例えばフッ素)
を含むホスファゼンは、万が一の燃焼時には活性ラジカ
ルの捕捉剤として機能するし、有機置換基を有するホス
ファゼンは、燃焼時に極材及びセパレーター上に炭化物
(チャー)を生成するため酸素の遮断効果もある。加え
て使用者が誤って充電した際にも、ホスファゼンはデン
ドライト生成の抑制効果を有するために無添加系に比し
てより安全性は高くなる。
【0034】尚、本発明において、発火・引火の危険性
は、JIS K 7201に従った酸素指数測定により評価した。
なお、酸素指数とは、JIS K 7201に規定の所定の試験条
件下において、材料が燃焼を持続するのに必要な体積パ
ーセントで表される最低酸素濃度の値をいい、酸素指数
が低いことは発火・引火の危険性が高いことを意味し、
反対に酸素指数が高いことは発火・引火の危険性が低い
ことを意味する。本願では、上記酸素指数に準じた限界
酸素指数で発火・引火の危険性を評価した。
【0035】ホスファゼン誘導体及び/又はホスファゼ
ン誘導体の異性体が添加された電解液は、限界酸素指数
が21体積%以上であることが好ましい。限界酸素指数が
21体積%未満であると、発火・引火の抑制効果が十分で
ないことがある。大気条件下では酸素指数は20.2体積%
に相当するため、限界酸素指数20.2体積%では大気中で
燃焼することを意味する。発明者らの鋭意検討により、
限界酸素指数21体積%以上であれば自己消火性を、23体
積%以上であれば難燃性を、25体積%以上であれば不燃
性を有することを見出した。
【0036】なお、ここで表記している自己消火性・難
燃性・不燃性は、UL94HB法に準拠する方法で定義される
ものであり、不燃性石英ファイバーに1.0 mlの電解液を
染み込ませ127mm×12.7mmの試験片を作製し、該試験片
を大気環境下で着火した際、着火した炎が25〜100mmラ
インの間で消化し、かつ網からの落下物にも着火が認め
られなかった場合を自己消火性有りとし、着火した炎が
装置の25mmラインまで到達せず、かつ網からの落下物に
も着火が認められなかった場合を難燃性ありとし、着火
が認められなかった場合(燃焼長0mm)を不燃性ありと
したものである。
【0037】非プロトン性有機溶媒に添加するホスファ
ゼン誘導体としては、特に制限はないが、粘度が比較的
低く、支持塩を良好に溶解する観点からは、25℃におけ
る粘度が100mPa・s(100cP)以下であって、次式(I)又は次
式(II)で表されるホスファゼン誘導体が好ましい。
【0038】
【化7】 (式中、R、R、及びRは、一価の置換基又はハ
ロゲン元素を表す。Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウ
ム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、
酸素、イオウ、セレン、テルル、及び、ポロニウムから
なる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む有機基
を表す。Y、Y及びYは、2価の連結基、2価の
元素、又は単結合を表す。) (NPR ・・・ (II) (式中、Rは、一価の置換基又はハロゲン元素を表
す。nは、3〜15を表す。)
【0039】式(I)又は式(II)で表されるホスファゼン
誘導体の25℃における粘度としては、 100mPa・s(100cP)
以下であることが必要であり、20mPa・s(20cP)以下が好
ましい。粘度が、100mPa・s(100cP)を超えると、支持塩
が溶解し難くなり、正極材料、セパレーター等への濡れ
性が低下し、電解液の粘性抵抗の増大によりイオン導電
性が著しく低下し、特に、氷点以下等の低温条件下での
使用において性能不足となる。
【0040】式(I)において、R、R及びRとし
ては、一価の置換基又はハロゲン元素であれば特に制限
はない。一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキ
ル基、カルボキシル基、アシル基、アリール基等が挙げ
られ、これらの中でも、電解液を低粘度化し得る点で、
アルコキシ基が好ましい。一方、ハロゲン元素として
は、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられる。R
は、総て同一の種類の置換基でもよく、それらのう
ちのいくつかが異なる種類の置換基でもよい。
【0041】前記アルコキシ基としては、例えばメトキ
シ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等や、メ
トキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等のア
ルコキシ置換アルコキシ基等が挙げられる。これらの中
でも、R〜Rとしては、総てがメトキシ基、エトキ
シ基、メトキシエトキシ基、又は、メトキシエトキシエ
トキシ基が好適であり、低粘度・高誘電率の観点から、
総てがメトキシ基又はエトキシ基であるのが特に好適で
ある。
【0042】前記アルキル基としては、メチル基、エチ
ル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ
る。前記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、
プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリ
ル基等が挙げられる。前記アリール基としては、フェニ
ル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。これらの
一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換され
ているのが好ましく、ハロゲン元素としては、フッ素、
塩素、臭素等が好適に挙げられる。
【0043】式(I)において、Y、Y及びYで表
される2価の連結基としては、例えば、CH基のほ
か、酸素、硫黄、セレン、窒素、ホウ素、アルミニウ
ム、スカンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウ
ム、ランタン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、ス
ズ、ゲルマニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウ
ム、ヒ素、ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、
クロム、モリブデン、テルル、ポロニウム、タングステ
ン、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選ばれる元
素の少なくとも1種を含む2価の連結基が挙げられ、こ
れらの中でも、CH基、及び、酸素、硫黄、セレン、
窒素からなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を含
む2価の連結基が好ましく、硫黄及び/又はセレンの元
素を含む2価の連結基が特に好ましい。また、Y、Y
及びYは、酸素、硫黄、セレン等の2価の元素、又
は単結合であってもよい。Y〜Yは総て同一種類で
もよく、いくつかが互いに異なる種類でもよい。
【0044】式(I)において、Xとしては、有害性、
環境等への配慮の観点からは、炭素、ケイ素、窒素、リ
ン、酸素、及び、イオウからなる群から選ばれる元素の
少なくとも1種を含む有機基が好ましい。これらの有機
基の内、次式(VIII)、(IX)又は(X)で表される構造を有
する有機基がより好ましい。
【0045】
【化8】
【化9】
【化10】 但し、式(VIII)、(IX)、(X)において、R10〜R14
は、一価の置換基又はハロゲン元素を表す。Y10〜Y
14は、2価の連結基、2価の元素、又は単結合を表
し、Zは2価の基又は2価の元素を表す。
【0046】式(VIII)、(IX)、(X)において、R10
14としては、式(I)におけるR〜Rで述べたの
と同様の一価の置換基又はハロゲン元素がいずれも好適
に挙げられる。又、これらは、同一有機基内において、
それぞれ同一の種類でもよく、いくつかが互いに異なる
種類でもよい。式(VIII)のR10とR11とは、及び式
(X)のR13とR14とは、互いに結合して環を形成し
ていてもよい。
【0047】式(VIII)、(IX)、(X)において、Y10
14で表される基としては、式(I)におけるY〜Y
で述べたのと同様の2価の連結基又は2価の元素等が
挙げられ、同様に、硫黄及び/又はセレンの元素を含む
基である場合には、電解液の発火・引火の危険性が低減
するため特に好ましい。これらは、同一有機基内におい
て、それぞれ同一の種類でもよく、いくつかが互いに異
なる種類でもよい。
【0048】式(VIII)において、Zとしては、例え
ば、CH基、CHR(Rは、アルキル基、アルコキシ
ル基、フェニル基等を表す。以下同様。)基、NR基の
ほか、酸素、硫黄、セレン、ホウ素、アルミニウム、ス
カンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウム、ラ
ンタン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、スズ、ゲル
マニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウム、ヒ
素、ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、クロ
ム、モリブデン、テルル、ポロニウム、タングステン、
鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選ばれる元素の
少なくとも1種を含む2価の基等が挙げられ、これらの
中でも、CH基、CHR基、NR基のほか、酸素、硫
黄、セレンからなる群から選ばれる元素の少なくとも1
種を含む2価の基が好ましい。特に、硫黄及び/又はセ
レンの元素を含む2価の基の場合には、電解液の発火・
引火の危険性が低減するため好ましい。また、Zは、
酸素、硫黄、セレン等の2価の元素であってもよい。
【0049】これら有機基としては、特に効果的に発火
・引火の危険性を低減し得る点で、式(VIII)で表される
ようなリンを含む有機基が特に好ましい。また、有機基
が、式(IX)で表されるようなイオウを含む有機基である
場合には、電解液の小界面抵抗化の点で特に好ましい。
【0050】式(II)において、Rとしては、一価の置
換基又はハロゲン元素であれば特に制限はない。一価の
置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、カルボキ
シル基、アシル基、アリール基等が挙げられ、これらの
中でも、電解液を低粘度化し得る点で、アルコキシ基が
好ましい。一方、ハロゲン元素としては、例えば、フッ
素、塩素、臭素等が好適に挙げられる。該アルコキシ基
としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシ
エトキシ基、プロポキシ基、フェノキシ基等が挙げら
れ、これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、n-プ
ロポキシ基が特に好ましい。これらの置換基中の水素元
素は、ハロゲン元素で置換されているのが好ましく、ハ
ロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙
げられる。
【0051】式(I)、(II)、(VIII)〜(X)におけるR
、R10〜R14、Y〜Y、Y10〜Y14
を適宜選択することにより、より好適な粘度、添加
・混合に適する溶解性等を有するホスファゼン誘導体の
合成が可能となる。これらホスファゼン誘導体は、1種
単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】式(I)又は式(II)で表されるホスファゼン
誘導体としては、分子構造中にハロゲン元素を含む置換
基を有するのが好ましい。分子構造中に、ハロゲン元素
を含む置換基を有すれば、ホスファゼン誘導体から誘導
されるハロゲンガスによって、ホスファゼン誘導体の含
有量の数値範囲内のうちより少ない含有量でも、より効
果的に、電解液の発火・引火の危険性を低減させること
が可能となる。なお、置換基にハロゲン元素を含む化合
物においてはハロゲンラジカルの発生が問題となること
があるが、式(I)又は式(II)で表されるホスファゼン誘
導体は、分子構造中のリン元素がハロゲンラジカルを捕
捉し、安定なハロゲン化リンを形成するため、このよう
な問題は発生しない。
【0053】ハロゲン元素のホスファゼン誘導体におけ
る含有量としては、2〜80重量%が好ましく、2〜60重量
%がより好ましく、2〜50重量%が更に好ましい。含有
量が2重量%未満では、ハロゲン元素を含ませる効果が
十分に現れないことがある一方、80重量%を超えると粘
度が高くなるため、電解液に添加した際にその導電率が
低下することがある。ハロゲン元素としては、特に、フ
ッ素、塩素、臭素等が好適であり、この中でも、良好な
電池特性を得る観点からフッ素が特に好ましい。
【0054】電解液に対する、式(I)又は式(II)で表さ
れるホスファゼン誘導体の含有量としては、限界酸素指
数の観点からは、5体積%以上が好ましく、10から50体
積%がより好ましい。含有量を前記数値範囲内の値に調
整することにより、電解液の発火・引火の危険性は効果
的に低減される。なお、引火の危険性は効果的に低減さ
れるが、その範囲は用いる支持塩の種類や電解液の種類
によって異なり、具体的には用いる系が最も低粘度に抑
えられ、かつ限界酸素指数が21体積%以上になる含有量
を適時きめることで最適化される。
【0055】前記式(II)のホスファゼン誘導体の中で
も、電解液を低粘度化して電池の低温特性を向上させ、
更に電解液の耐劣化性及び安全性を向上させる観点から
は、次式(III)で表されるホスファゼン誘導体が特に好
ましい。 (NPF ・・・ (III) (式中、nは3〜13を表す。)
【0056】上記式(III)で表されるホスファゼン誘導
体が好ましい理由としては、以下の通りである。即ち、
従来のリチウム1次電池に用いられるエステル系有機溶
媒とリチウムイオン源となる支持塩とを含む電解液にお
いては、支持塩が、経時と共に分解し、分解物が有機溶
媒中に存在する微量の水等と反応することにより、電解
液の導電性が低下したり、極材の劣化を生じたりする場
合がある。これに対し、従来の電解液に式(III)で表さ
れるホスファゼン誘導体を添加すると、支持塩の分解が
抑制され、電解液の安定性が著しく向上する。一般的に
支持塩としてはLiBF、LiPF、LiCF
、Li(CSO N、Li(CFSO
N等が用いられ、支持塩そのものの加水分解が低
いLiCFSO、Li(CSON、L
i(CFSO Nが特に好ましいが、ホスファゼ
ンの上記作用によりLiBF、LiPFも好適に使
用することができる。
【0057】また、式(III)で表されるホスファゼン誘
導体は常温(25℃)で低粘度の液体であり、かつ、凝固点
降下作用を有する。このため、該ホスファゼン誘導体を
電解液に添加することにより、電解液に優れた低温特性
を付与することが可能となり、また、電解液の低粘度化
が達成され、低内部抵抗及び高い導電率を有するリチウ
ム1次電池を提供することが可能となる。このため、特
に気温の低い地方や時期において、低温条件下で使用し
ても、長時間に渡って優れた放電特性を示すリチウム1
次電池を提供することが可能となる。
【0058】式(III)において、nとしては、電解液に
優れた低温特性を付与し得、電解液の低粘度化が可能な
点で、3〜4が好ましく、3がより好ましい。nの値が小
さい場合には沸点が低く、接炎時の着火防止特性を向上
させることができる。一方、nの値が大きくなるにつれ
て、沸点が高くなるため、高温でも安定に使用すること
ができる。上記性質を利用して目的とする性能を得るた
めに、複数のホスファゼンを適時選択し、使用すること
も可能である。
【0059】式(III)におけるn値を適宜選択すること
により、より好適な粘度、混合に適する溶解性、低温特
性等を有する電解液の調製が可能となる。これらのホス
ファゼン誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以
上を併用してもよい。
【0060】式(III)で表されるホスファゼン誘導体の
粘度としては、20 mPa・s(20 cP)以下であれば特に制限
はないが、導電性の向上及び低温特性の向上の観点から
は、10mPa・s(10 cP)以下が好ましく、5 mPa・s(5 cP)以
下がより好ましい。なお、本発明において粘度は、粘度
測定計(R型粘度計Model RE500-SL、東機産業(株)製)
を用い、1 rpm、2 rpm、3 rpm、5 rpm、7 rpm、10 rp
m、20 rpm、及び50 rpmの各回転速度で120秒間づつ測定
し、指示値が50〜60%となった時の回転速度を分析条件
とし、その際の粘度を測定することによって求めた。
【0061】式(III)で表されるホスファゼン誘導体は
引火点を有さないため、該ホスファゼン誘導体を含む電
解液は発火等が抑制され、また、仮に電池内部で発火等
が生じても、引火して電解液表面に燃え広がる危険性を
低下させることが可能となる。
【0062】電解液における式(III)で表されるホスフ
ァゼン誘導体の総含有量としては、該ホスファゼン誘導
体を含有することにより得られる効果によって、電解液
に好適に「低温特性」を付与し得る第1の含有量、電解
液に好適に「耐劣化性」を付与し得る第2の含有量、電
解液を好適に「低粘度化」し得る第3の含有量、及び電
解液により好適に「安全性」を付与し得る第4の含有量
の4通りの含有量が挙げられる。
【0063】「低温特性」の観点から、電解液における
式(III)で表されるホスファゼン誘導体の第1の含有量
は、1体積%以上が好ましく、3体積%以上がより好まし
く、5体積%以上が更に好ましい。含有量が、1体積%に
満たないと、電解液の凝固点を十分に低くできず、低温
特性が十分でない。
【0064】「耐劣化性」の観点から、電解液における
式(III)で表されるホスファゼン誘導体の第2の含有量
は、2体積%以上が好ましく、3〜75体積%がより好まし
い。また、低温特性と耐劣化性とを高度に両立する観点
からは、5〜75体積%がより好ましい。含有量が、前記
数値範囲内であれば、好適に劣化を抑制することができ
る。
【0065】「低粘度化」の観点から、電解液における
式(III)で表されるホスファゼン誘導体の第3の含有量
は、3体積%以上が好ましく、3〜80体積%がより好まし
く、3〜50体積%未満が更に好ましい。また、低温特
性、耐劣化性及び低粘度化を高度に両立する観点から
は、5〜80体積%が好ましく、3〜50体積%未満がより好
ましい。含有量が、3体積%未満では、電解液を十分に
低粘度化できない。一般的に電解液に広く用いられてい
るプロピレンカーボネートの粘度は2.5 mPa・s(2.5 cP)
であり、本願のn=3のホスファゼンは0.8 mPa・s(0.8 c
P)であるため、ホスファゼンの添加量が多くなるほど粘
度が低くなるため導電性の向上、低温特性の向上の観点
からは好ましいが、ホスファゼン添加量が50体積%以上
になると支持塩溶解度が飽和してくることから電解液の
粘度上昇を招くため好ましくない。
【0066】「安全性」の観点から、電解液における式
(III)で表されるホスファゼン誘導体の第4の含有量
は、5体積%以上が好ましい。ホスファゼンの含有量は
多いほど安全性が高くなり、該含有量を5体積%以上に
調整することにより、電解液の限界酸素指数が21体積%
以上になるので、発火・引火の危険性は効果的に低減さ
れる。なお、安全性については、前述の酸素指数測定に
より評価することができる。
【0067】前記式(II)のホスファゼン誘導体の中で
も、電解液の耐劣化性及び安全性を向上させる観点から
は、次式(IV)で表されるホスファゼン誘導体が特に好ま
しい。 (NPR ・・・ (IV) (式中、Rは一価の置換基又はフッ素を表し、全R
のうち少なくとも1つはフッ素を含む一価の置換基又は
フッ素であり、nは3〜8を表す。但し、全てのR がフ
ッ素であることはない。)
【0068】上記式(IV)で表されるホスファゼン誘導体
が好ましい理由としては、以下の通りである。即ち、ホ
スファゼン誘導体を含有すれば、電解液に優れた自己消
火性ないし難燃性を付与して電解液の安全性を向上させ
ることができるが、式(IV)で表され、全Rのうち少な
くとも1つがフッ素を含む一価の置換基であるホスファ
ゼン誘導体を含有すれば、電解液により優れた安全性を
付与することが可能となる。更に、式(IV)で表され、全
のうち少なくとも1つがフッ素であるホスファゼン
誘導体を含有すれば、更に優れた安全性を付与すること
が可能となる。即ち、フッ素を含まないホスファゼン誘
導体に比べ、式(IV)で表され、全Rのうち少なくとも
1つがフッ素を含む一価の置換基又はフッ素であるホス
ファゼン誘導体は、電解液をより燃え難くする効果があ
り、電解液に対し更に優れた安全性を付与することがで
きる。
【0069】なお、式(IV)において、全Rがフッ素で
あり、かつnが3である環状のホスファゼン誘導体自体
は不燃性であり、炎が近づいた際の着火を防止する効果
は大きいが、沸点が非常に低いことから、それらが全て
揮発してしまうと残された非プロトン性有機溶媒等が燃
焼してしまう。
【0070】式(IV)における一価の置換基としては、ア
ルコキシ基のほか、アルキル基、アシル基、アリール
基、カルボキシル基等が挙げられ、電解液の安全性の向
上に特に優れる点で、アルコキシ基が好適である。アル
コキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポ
キシ基、i-プロポキシ基、ブトキシ基等のほか、メトキ
シエトキシ基等のアルコキシ基置換アルコキシ基等が挙
げられ、電解液の安全性の向上に優れる点で、メトキシ
基、エトキシ基、n-プロポキシ基が特に好ましい。ま
た、電解液の低粘度化の点ではメトキシ基が好ましい。
式(IV)において、nとしては、電解液に優れた安全性を
付与し得る点で、3〜4が好ましい。前記一価の置換基
は、フッ素で置換されているのが好ましく、式(IV)のR
が一つもフッ素でない場合は、少なくとも一つの一価
の置換基はフッ素含む。
【0071】前記フッ素のホスファゼン誘導体における
含有量としては、3〜70重量%が好ましく、7〜45重量%
がより好ましい。含有量が、前記数値範囲内であれば、
本発明の特有の効果である「優れた安全性」を特に好適
に奏することができる。
【0072】式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の分
子構造としては、前述のフッ素以外にも塩素、臭素等の
ハロゲン元素を含んでいてもよい。
【0073】式(IV)におけるR及びn値を適宜選択す
ることにより、より好適な安全性、粘度、混合に適する
溶解性等を有する電解液の調製が可能となる。これらの
ホスファゼン誘導体は、1種単独で使用してもよく、2
種以上を併用してもよい。
【0074】式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の粘
度としては、20 mPa・s(20 cP)以下であれば特に制限は
ないが、導電性の向上及び低温特性の向上の観点から
は、10mPa・s(10 cP)以下が好ましく、5 mPa・s(5 cP)以
下がより好ましい。
【0075】式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の引
火点としては、特に制限は無いが、発火の抑制等の点か
ら、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、
300℃以上が更に好ましい。ここで、引火点とは、具体
的には、物質表面に炎が広がり、少なくとも該物質表面
の75 %を覆う温度をいい、該引火点は、空気と燃焼性
混合物を形成する傾向度を見る尺度となるものである。
ホスファゼン誘導体が、100℃以上に引火点を有してい
ると、発火等が抑制され、また、仮に電池内部で発火等
が生じても、引火して電解液表面に燃え広がる危険性を
低下させることが可能となる。
【0076】電解液における式(IV)で表されるホスファ
ゼン誘導体の総含有量としては、該ホスファゼン誘導体
を含有することにより得られる効果によって、電解液に
好適に「耐劣化性」を付与し得る第1の含有量、電解液
に特に優れた「安全性」を付与し得る第2の含有量の2
通りの含有量が挙げられる。
【0077】「耐劣化性」を好適に付与し得る観点か
ら、電解液における式(IV)で表されるホスファゼン誘導
体の第1の含有量は、2体積%以上が好ましく、2〜75体
積%がより好ましい。含有量が、前記数値範囲内であれ
ば、好適に劣化を抑制することができる。
【0078】「安全性」をより好適に付与し、安全性の
非常に高いリチウム1次電池を得る観点から、電解液に
おける式(IV)で表されるホスファゼン誘導体の第2の含
有量は、10体積%以上が好ましく、15体積%以上がより
好ましい。含有量が、10体積%未満では電解液に特に優
れた「安全性」を付与できないことがある。
【0079】また、安全性と耐劣化性とを高度に両立す
る観点からは、10〜75体積%がより好ましく、15〜75体
積%が更に好ましい。なお、ホスファゼン添加量が50体
積%以上になると支持塩の溶解度が飽和に近づき電解液
の粘度が上昇してくるため、電解液の粘度上昇を避ける
ためには50体積%未満が好ましい。
【0080】「安全性」の観点から、電解液としては、
式(IV)で表される環状ホスファゼン誘導体、LiB
、γ-ブチロラクトン及び/又はプロピレンカーボネ
ートを含む場合、及び式(IV)で表される環状ホスファゼ
ン誘導体、LiCFSO、γ-ブチロラクトン及び/
又はプロピレンカーボネートを含む場合が特に好まし
い。これらの場合には、前述の記載に関わらず、含有量
が少量であっても、安全性が非常に高い。即ち、式(IV)
で表される環状ホスファゼン誘導体の電解液における含
有量としては、特に優れた安全性を発現させるために
は、5体積%以上が好ましい。また、高温で使用するこ
とを目的とする場合には、Li(CSO
N、Li(CFSONを支持塩として含む場
合も好適である。
【0081】非プロトン性有機溶媒に添加するホスファ
ゼン誘導体としては、電解液の粘度上昇を抑制しつつ、
電解液の耐劣化性を向上させ、電解液に自己消化性乃至
難燃性を付与する観点からは、25℃(常温)において固
体であって、次式(V)で表されるホスファゼン誘導体も
好ましい。 (NPR ・・・ (V) (式中、Rは一価の置換基又はハロゲン元素を表す。
nは3〜6を表す。)
【0082】上記式(V)で表されるホスファゼン誘導体
が特に好ましい理由としては、以下の通りである。即
ち、従来のリチウム1次電池に用いられるエステル系有
機溶媒とリチウムイオン源となる支持塩とを含む電解液
においては、支持塩が、経時と共に分解し、分解物が有
機溶媒中に存在する微量の水等と反応することにより、
電解液の導電性が低下したり、極材の劣化を生じたりす
る場合があるが、従来の電解液に式(V)で表されるホス
ファゼン誘導体を添加すると、支持塩の分解が抑制さ
れ、電解液の安定化が著しく向上する。一般的に支持塩
としてはLiBF、LiPF、LiCFSO
Li(CSON、Li(CFSO
N等が用いられ、支持塩そのものの加水分解が低いLi
CFSO、Li(CSON、Li(C
SONが特に好ましいが、式(V)で表される
ホスファゼンの上記作用によりLiBF、LiPF
も好適に使用することができる。
【0083】式(V)で表されるホスファゼン誘導体は常
温(25℃)で固体であるため、電解液に添加すると電解液
中で溶解して電解液の粘度が上昇する。しかし、後述す
るように所定の添加量であれば電解液の粘度上昇率が低
く、低内部抵抗及び高い導電率を有するリチウム1次電
池となる。加えて、式(V)で表されるホスファゼン誘導
体は電解液中で溶解するため、電解液の長期安定性に優
れる。一方、所定添加量を超えて添加すると電解液の粘
度が著しく大きくなり、内部抵抗が高く、導電率が低く
なり、リチウム1次電池として使用できなくなる。
【0084】式(V)において、Rとしては、一価の置
換基又はハロゲン元素であれば特に制限はなく、一価の
置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、カルボキ
シル基、アシル基、アリール基等が挙げられる。また、
ハロゲン元素としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、
ヨウ素等のハロゲン元素が好適に挙げられる。これらの
中でも、特に電解液の粘度上昇を抑制し得る点で、アル
コキシ基が好ましい。該アルコキシ基としては、メトキ
シ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、プロポキシ基
(イソプロポキシ基、n-プロポキシ基)、フェノキシ
基、トリフルオロエトキシ基等が好ましく、電解液の粘
度上昇を抑制し得る点で、メトキシ基、エトキシ基、プ
ロポキシ基(イソプロポキシ基、n-プロポキシ基)、フ
ェノキシ基、トリフルオロエトキシ基等がより好まし
い。前記一価の置換基は、前述のハロゲン元素を含むの
が好ましい。式(V)において、nとしては、電解液の粘
度上昇を抑制し得る点で、3又は4が特に好ましい。
【0085】式(V)で表されるホスファゼン誘導体とし
ては、例えば、前記式(V)においてR がメトキシ基で
あってnが3である構造、式(V)においてRがメトキシ
基及びフェノキシ基の少なくとも何れかであってnが4
である構造、式(V)においてRがエトキシ基であって
nが4である構造、式(V)においてRがイソプロポキシ
基であってnが3又は4である構造、式(V)においてR
がn-プロポキシ基であってnが4である構造、式(V)にお
いてRがトリフルオロエトキシ基であってnが3又は4
である構造、式(V)においてRがフェノキシ基であっ
てnが3又は4である構造が、電解液の粘度上昇を抑制し
得る点で、特に好ましい。
【0086】式(V)における各置換基及びn値を適宜選
択することにより、より好適な粘度、混合に適する溶解
性等を有する電解液の調製が可能となる。これらのホス
ファゼン誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以上
を併用してもよい。
【0087】式(V)で表されるホスファゼン誘導体の分
子構造としては、前述のようにハロゲン元素を含む置換
基を有するのが好ましい。該ハロゲン元素としては、フ
ッ素、塩素、臭素等が好ましく、フッ素が特に好まし
い。分子構造中に、ハロゲン元素又はハロゲン元素を含
む置換基を有すると、ホスファゼン誘導体から誘導され
るハロゲンガスによって、ホスファゼン誘導体の含有量
が少なくても、より効果的に自己消火性ないし難燃性を
発現させることが可能となる。なお、ハロゲン元素を含
む置換基を有する化合物においては、ハロゲンラジカル
の発生が問題となることがあるが、本発明で用いるホス
ファゼン誘導体は、分子構造中のリン元素がハロゲンラ
ジカルを捕捉し、安定なハロゲン化リンを形成するた
め、このような問題は発生しない。
【0088】ハロゲン元素含有置換基を含む式(V)のホ
スファゼン誘導体中のハロゲン元素含有量としては、2
〜80重量%が好ましく、2〜60重量%がより好ましく、2
〜50重量%が更に好ましい。含有量が2重量%未満で
は、ハロゲン元素を含有させる効果が十分に現れないこ
とがある一方、80重量%を超えると、電解液に添加した
際に粘度が上昇し、導電率が低下する。
【0089】式(V)で表されるホスファゼン誘導体の引
火点としては、特に制限は無いが、発火の抑制等の点か
ら、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。
ホスファゼン誘導体が、100℃以上に引火点を有してい
ると、発火等が抑制され、また、仮に電池内部で発火等
が生じても、引火して電解液表面に燃え広がる危険性を
低下させることが可能となる。
【0090】電解液における式(V)で表されるホスファ
ゼン誘導体の含有量としては、該ホスファゼン誘導体を
含有することにより得られる効果によって、電解液の
「粘度上昇抑制」が可能な第1の含有量、電解液に好適
に「耐劣化性」を付与し得る第2の含有量、電解液に好
適に「自己消火性」を付与し得る第3の含有量、及び電
解液に好適に「難燃性」を付与し得る第4の含有量の4
通りの含有量が挙げられる。
【0091】「粘度上昇抑制」の観点から、電解液にお
ける式(V)で表されるホスファゼン誘導体の第1の含有
量は、40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好
ましく、30重量%以下が更に好ましい。含有量が、40重
量%を超えると、電解液の粘度上昇が著しく大きくな
り、内部抵抗が高く、導電率が低くなり好ましくない。
【0092】「耐劣化性」の観点から、電解液における
式(V)で表されるホスファゼン誘導体の第2の含有量
は、2重量%以上が好ましい。含有量が、前記数値範囲
内であれば、好適に劣化を抑制することができる。
【0093】「自己消火性」の観点から、電解液におけ
る式(V)で表されるホスファゼン誘導体の第3の含有量
は、20重量%以上が好ましく、自己消火性と粘度上昇の
抑制とを高度に両立する観点からは、20〜40重量%がよ
り好ましく、20〜35重量%が更に好ましく、20〜30重量
%が特に好ましい。含有量が、20重量%未満では、電解
液に十分な自己消火性を発現させ得ないことがある。
【0094】「難燃性」の観点から、電解液における式
(V)で表されるホスファゼン誘導体の第4の含有量は、3
0重量%以上が好ましく、難燃性と粘度上昇の抑制とを
高度に両立する観点からは、30〜40重量%がより好まし
く、30〜35重量%が更に好ましい。含有量が、30重量%
以上であれば、電解液に十分な難燃性を発現させること
が可能となる。なお、電解液の自己消火性ないし難燃性
は、前述の酸素指数測定により評価できる。
【0095】「自己消火性ないし難燃性」の観点から、
電解液としては、式(V)で表されるホスファゼン誘導
体、LiBF、γ-ブチロラクトン及び/又はプロピレ
ンカーボネートを含む場合、及び式(V)で表されるホス
ファゼン誘導体、LiCFSO、γ-ブチロラクト
ン及び/又はプロピレンカーボネートを含む場合が特に
好ましい。これらの場合には、前述の記載に関わらず、
前記含有量が少量であっても、優れた自己消火性ないし
難燃性の効果を有する。
【0096】即ち、式(V)で表されるホスファゼン誘導
体、LiBF、γ-ブチロラクトン及び/又はプロピレ
ンカーボネートを含む場合、該ホスファゼン誘導体の電
解液における含有量としては、自己消火性を発現させる
ためには、5〜10重量%が好ましく、難燃性を発現させ
るためには、10重量%を超える量が好ましく、難燃性と
粘度上昇の抑制とを高度に両立する観点からは、10重量
%を超え40重量%以下がより好ましく、10重量%を超え
35重量%以下が更に好ましく、10重量%を超え30重量%
以下が特に好ましい。
【0097】また、式(V)で表されるホスファゼン誘導
体、LiCFSO、γ-ブチロラクトン及び/又はプ
ロピレンカーボネートを含む場合、該ホスファゼン誘導
体の電解液における含有量としては、自己消火性を発現
させるためには、5〜25重量%が好ましく、難燃性を発
現させるためには、25重量%を超える量が好ましく、難
燃性と粘度上昇の抑制とを高度に両立する観点からは、
25重量%を超え40重量%以下がより好ましく、25重量%
を超え35重量%以下が更に好ましく、25重量%を超え30
重量%以下が特に好ましい。
【0098】非プロトン性有機溶媒に添加するホスファ
ゼン誘導体の異性体としては、特に制限されないが、リ
チウム1次電池の低温特性を向上させ、電解液に自己消
化性乃至難燃性を付与し、更に、電解液の耐劣化性を向
上させる観点から、次式(VI)で表され、次式(VII)で表
されるホスファゼン誘導体の異性体が好ましい。
【化11】
【化12】 (式(VI)及び(VII)において、R、R、及びR
は、一価の置換基又はハロゲン元素を表す。Xは、
炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ
素、アンチモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テ
ルル、及びポロニウムからなる群より選ばれる元素の少
なくとも1種を含む置換基を表す。Y及びYは、2
価の連結基、2価の元素、又は単結合を表す。)
【0099】式(VI)で表され、式(VII)で表されるホス
ファゼン誘導体の異性体が好ましい理由としては、以下
の通りである。即ち、式(VI)で表され、式(VII)で表さ
れるホスファゼン誘導体の異性体は、1次電池として十
分に機能するだけの電位窓を有しており、放電によって
分解することもない。また、該異性体から誘導される窒
素ガス及びハロゲンガス等の作用によって電解液に優れ
た自己消火性ないし難燃性が付与されるため、該電解液
を含んだリチウム1次電池は安全性が高くなる。更に、
式(VI)で表され、式(VII)で表されるホスファゼン誘導
体の異性体は、ハロゲン(例えばフッ素)を含むため、
万が一の燃焼時には活性ラジカルの捕捉剤としても機能
するし、有機置換基は燃焼時に極材及びセパレーター上
に炭化物(チャー)を生成するため酸素の遮断効果もあ
る。加えて使用者が誤って充電した際にも、該異性体は
デンドライト生成の抑制効果を有するために無添加系に
比して安全性はより高くなる。また更に、リンには、電
池を構成する高分子材料の連鎖分解を抑制する作用があ
るため、効果的に自己消火性ないし難燃性が発現され
る。
【0100】また、従来のリチウム1次電池に用いられ
るエステル系有機溶媒とリチウムイオン源となる支持塩
とを含む電解液においては、支持塩が、経時と共に分解
し、分解物が有機溶媒中に存在する微量の水等と反応す
ることにより、電解液の導電性が低下したり、極材の劣
化を生じたりする場合があるが、従来の電解液に式(VI)
で表される異性体と式(VII)で表されるホスファゼン誘
導体とを添加すると、支持塩の分解を抑制し電解液の安
定化に著しく寄与する。一般的に支持塩としてはLiB
、LiPF、LiCFSO、Li(C
SON、Li(CFSON等が用いら
れ、支持塩そのものの加水分解が低いLiCF
、Li(CSON、Li(CFSO
Nが特に好ましいが、該異性体及びホスファゼン
の上記作用によりLiBF、LiPFも好適に使用
することができる。
【0101】更に、式(VI)で表され、式(VII)で表され
るホスファゼン誘導体の異性体は、電解液に添加される
と、電解液に極めて優れた低温特性を発現させ得る。
【0102】式(VI)におけるR、R及びRとして
は、一価の置換基又はハロゲン元素であれば特に制限は
なく、一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキル
基、カルボキシル基、アシル基、アリール基等が挙げら
れる。又、ハロゲン元素としては、例えば、フッ素、塩
素、臭素等のハロゲン元素が好適に挙げられる。これら
の中でも、特に電解液の低温特性及び電気化学的安定性
の点で、フッ素及びアルコキシ基等が好ましい。また、
電解液の低粘度化の点で、フッ素、アルコキシ基、及び
フッ素等を含むアルコキシ基等が好ましい。R〜R
は、総て同一の種類の置換基でもよく、それらのうちの
いくつかが異なる種類の置換基でもよい。
【0103】アルコキシ基としては、例えばメトキシ
基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等や、メト
キシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等のアル
コキシ置換アルコキシ基等が挙げられる。これらの中で
も、R〜Rとしては、総てがメトキシ基、エトキシ
基、メトキシエトキシ基、又はメトキシエトキシエトキ
シ基が好適であり、低粘度・高誘電率の観点から、総て
がメトキシ基又はエトキシ基であるのが特に好適であ
る。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピ
ル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アシル基
としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、
ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられ
る。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフ
チル基等が挙げられる。これらの置換基中の水素元素
は、ハロゲン元素で置換されているのが好ましく、ハロ
ゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げ
られる。
【0104】式(VI)において、Y及びYで表される
2価の連結基としては、例えば、CH基のほか、酸
素、硫黄、セレン、窒素、ホウ素、アルミニウム、スカ
ンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウム、ラン
タン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、スズ、ゲルマ
ニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウム、ヒ素、
ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、クロム、モ
リブデン、テルル、ポロニウム、タングステン、鉄、コ
バルト、ニッケルからなる群から選ばれる元素の少なく
とも1種を含む2価の連結基が挙げられ、これらの中で
も、CH基、及び、酸素、硫黄、セレン、窒素からな
る群から選ばれる元素の少なくとも1種を含む2価の連
結基が好ましい。また、Y及びYは、酸素、硫黄、
セレン等の2価の元素、又は単結合であってもよい。電
解液の難燃性が向上する点では、硫黄及び/又は酸素の
元素を含む2価の連結基、酸素元素、並びに硫黄元素が
特に好ましく、電解液の低温特性に優れる点では、酸素
元素を含む2価の連結基、及び酸素元素が特に好まし
い。Y及びYは、同一種類でもよく、互いに異なる
種類でもよい。
【0105】式(VI)において、Xとしては、有害性、
環境等への配慮の観点からは、炭素、ケイ素、窒素、リ
ン、酸素、及び、硫黄からなる群から選ばれる元素の少
なくとも1種を含む置換基が好ましく、次式(XI)、(XI
I)又は(XIII)で表される構造を有する置換基がより好ま
しい。
【0106】
【化13】
【化14】
【化15】
【0107】但し、式(XI)、(XII)、(XIII)において、
15〜R19は、一価の置換基又はハロゲン元素を表
す。Y15〜Y19は、2価の連結基、2価の元素、又
は単結合を表し、Zは2価の基又は2価の元素を表
す。
【0108】式(XI)、(XII)、(XIII)において、R15
〜R19としては、式(VI)におけるR〜Rで述べた
のと同様の一価の置換基又はハロゲン元素がいずれも好
適に挙げられる。又、これらは、同一置換基内におい
て、それぞれ同一の種類でもよく、いくつかが互いに異
なる種類でもよい。式(XI)のR15とR16とは、及び
式(XIII)のR18とR19とは、互いに結合して環を形
成していてもよい。
【0109】式(XI)、(XII)、(XIII)において、Y15
〜Y19で表される基としては、式(I)におけるY
で述べたのと同様の2価の連結基又は2価の元素等
が挙げられ、同様に、硫黄及び/又は酸素の元素を含む
2価の連結基、酸素元素、或いは硫黄元素である場合に
は、電解液の難燃性が向上するため特に好ましい。ま
た、電解液の低温特性に優れる点では、酸素元素を含む
2価の連結基、及び酸素元素が特に好ましい。これら
は、同一置換基内において、それぞれ同一の種類でもよ
く、いくつかが互いに異なる種類でもよい。
【0110】式(XI)において、Zとしては、例えば、
CH基、CHR(Rは、アルキル基、アルコキシル
基、フェニル基等を表す。以下同様。)基、NR基のほ
か、酸素、硫黄、セレン、ホウ素、アルミニウム、スカ
ンジウム、ガリウム、イットリウム、インジウム、ラン
タン、タリウム、炭素、ケイ素、チタン、スズ、ゲルマ
ニウム、ジルコニウム、鉛、リン、バナジウム、ヒ素、
ニオブ、アンチモン、タンタル、ビスマス、クロム、モ
リブデン、テルル、ポロニウム、タングステン、鉄、コ
バルト、ニッケルからなる群から選ばれる元素の少なく
とも1種を含む2価の基等が挙げられ、これらの中で
も、CH基、CHR基、NR基のほか、酸素、硫黄、
セレンからなる群から選ばれる元素の少なくとも1種を
含む2価の基が好ましい。また、Zは、酸素、硫黄、
セレン等の2価の元素であってもよい。特に、硫黄及び
/又はセレン元素を含む2価の基、硫黄元素、或いはセ
レン元素である場合には、電解液の難燃性が向上するた
め好ましい。また、電解液の低温特性に優れる点では、
酸素元素を含む2価の基、及び酸素元素が特に好まし
い。
【0111】これら置換基としては、特に効果的に自己
消火性ないし難燃性を発現し得る点で、式(XI)で表され
るようなリンを含む置換基が特に好ましい。更に、式(X
I)において、Z、Y15及びY16が酸素元素である
場合には、特に、電解液に極めて優れた低温特性を発現
させることが可能となる。また、置換基が、式(XII)で
表されるような硫黄を含む置換基である場合には、電解
液の小界面抵抗化の点で特に好ましい。
【0112】式(VI)、及び(XI)〜(XIII)におけるR
、R15〜R19、Y〜Y、Y15〜Y19
を適宜選択することにより、より好適な粘度、添加
・混合に適する溶解性、低温特性等を有する電解液の調
製が可能となる。これらの化合物は、1種単独で使用し
てもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】式(VI)で表される異性体は、式(VII)で表
されるホスファゼン誘導体の異性体であり、例えば、式
(VII)で表されるホスファゼン誘導体を生成する際の真
空度及び/又は温度を調節することで製造でき、該異性
体の電解液における含有量(体積%)は、下記測定方法
により測定することができる。<<測定方法>>ゲルパーミ
エーションクロマトグラフィー(GPC)又は高速液体ク
ロマトグラフィーによって試料のピーク面積を求め、該
ピーク面積を、予め求めておいた前記異性体のモルあた
りの面積と比較することでモル比を得、更に比重を考慮
して体積換算することで測定できる。
【0114】式(VII)で表されるホスファゼン誘導体と
しては、粘度が比較的低く、支持塩を良好に溶解し得る
ものが好ましい。式(VII)のR〜R、Y〜Y
びX としては、式(VI)のR〜R、Y〜Y及び
の説明で述べたのと同様のものが総て好適に挙げら
れる。
【0115】式(VII)で表されるホスファゼン誘導体の
引火点としては、特に制限は無いが、発火の抑制等の点
から、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好まし
い。ホスファゼン誘導体が、100℃以上に引火点を有し
ていると、発火等が抑制され、また、仮に電池内部で発
火等が生じても、引火して電解液表面に燃え広がる危険
性を低下させることが可能となる。
【0116】式(VI)で表される異性体及び式(VII)で表
されるホスファゼン誘導体の分子構造としては、ハロゲ
ン元素を含む置換基を有するのが好ましい。該ハロゲン
元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好ましく、フッ
素が特に好ましい。分子構造中に、ハロゲン元素を含む
置換基を有すると、誘導されるハロゲンガスによって、
これらの物質の含有量が少なくても、より効果的に自己
消火性ないし難燃性を発現させることが可能となる。な
お、ハロゲン元素を含む置換基を有する化合物において
は、ハロゲンラジカルの発生が問題となることがある
が、前記異性体及びホスファゼン誘導体においては、分
子構造中のリン元素がハロゲンラジカルを捕捉し、安定
なハロゲン化リンを形成するため、このような問題は発
生しない。
【0117】ハロゲン元素の異性体及びホスファゼン誘
導体における含有量としては、2〜80重量%が好まし
く、2〜60重量%がより好ましく、2〜50重量%が更に好
ましい。含有量が、2重量%未満では、ハロゲン元素を
含有させる効果が十分に現れないことがある一方、80重
量%を超えると、粘度が高くなるため、電解液に添加し
た際にその導電率が低下することがある。
【0118】電解液における式(VI)で表される異性体と
式(VII)で表されるホスファゼン誘導体との総含有量と
しては、該異性体と該ホスファゼン誘導体とを含有する
ことにより得られる効果によって、電解液により好適に
「低温特性」を付与し得る第1の含有量、電解液に好適
に「耐劣化性」を付与し得る第2の含有量、電解液に好
適に「自己消火性」を付与し得る第3の含有量、及び電
解液に好適に「難燃性」を付与し得る第4の含有量の4
通りの含有量が挙げられる。
【0119】「低温特性」の観点から、電解液における
式(VI)で表される異性体と式(VII)で表されるホスファ
ゼン誘導体との第1の含有量は、1体積%以上が好まし
く、2体積%以上がより好ましく、5体積%以上が更に好
ましい。含有量が、1体積%に満たないと、電解液の低
温特性が十分でない。
【0120】「耐劣化性」の観点から、電解液における
式(VI)で表される異性体と式(VII)で表されるホスファ
ゼン誘導体との第2の含有量は、2体積%以上が好まし
く、3〜75体積%がより好ましい。また、耐劣化性と低
温特性とを高度に両立する観点からは、5〜75体積%が
より好ましい。含有量が、前記数値範囲内であれば、好
適に劣化を抑制することができる。
【0121】「自己消火性」の観点から、電解液におけ
る式(VI)で表される異性体と式(VII)で表されるホスフ
ァゼン誘導体との第3の含有量は、20体積%以上が好ま
しい。含有量が、20体積%未満では、電解液に十分な自
己消火性を発現させ得ない。
【0122】「難燃性」の観点から、電解液における式
(VI)で表される異性体と式(VII)で表されるホスファゼ
ン誘導体との第4の含有量は、30体積%以上が好まし
い。含有量が、30体積%以上であれば、電解液に十分な
難燃性を発現させることが可能となる。
【0123】「自己消火性ないし難燃性」の観点から、
電解液としては、式(VI)で表される異性体及び式(VII)
で表されるホスファゼン誘導体と、LiBFと、45体
積%以上のγ-ブチロラクトン及び/又はプロピレンカー
ボネートとを含む場合、及び式(VI)で表される異性体及
び式(VII)で表されるホスファゼン誘導体と、LiCF
SOと、45体積%以上のγ-ブチロラクトン及び/又
はプロピレンカーボネートとを含む場合が特に好まし
い。これらの場合には、前述の記載に関わらず、異性体
とホスファゼン誘導体との電解液における含有量が少量
であっても、優れた自己消火性ないし難燃性の効果を有
する。
【0124】即ち、式(VI)で表される異性体及び式(VI
I)で表されるホスファゼン誘導体と、LiBFと、45
体積%以上のγ-ブチロラクトン及び/又はプロピレンカ
ーボネートとを含む場合、該異性体と該ホスファゼン誘
導体との電解液における総含有量としては、自己消火性
を発現させるためには、1.5〜10体積%が好ましく、難
燃性を発現させるためには、10体積%を超える量が好ま
しい。また、式(VI)で表される異性体及び式(VII)で表
されるホスファゼン誘導体と、LiCFSOと、45
体積%以上のγ-ブチロラクトン及び/又はプロピレンカ
ーボネートとを含む場合、該異性体と該ホスファゼン誘
導体との電解液における総含有量としては、自己消火性
を発現させるためには、2.5〜15体積%が好ましく、難
燃性を発現させるためには、15体積%を超える量が好ま
しい。
【0125】本発明のリチウム1次電池に使用する他の
部材としては、リチウム1次電池において、正負極間
に、両極の接触による電流の短絡を防止する役割で介在
させるセパレーターが挙げられる。セパレーターの材質
としては、両極の接触を確実に防止し得、かつ、電解液
を通したり含んだりできる材料、例えば、ポリテトラフ
ルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、セル
ロース系、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン
テレフタレート等の合成樹脂製の不織布、薄層フィルム
等が好適に挙げられる。これらの中でも、厚さ20〜50μ
m程度のポリプロピレン又はポリエチレン製の微孔性フ
ィルム、セルロース系、ポリブチレンテレフタレート、
ポリエチレンテレフタレート等のフィルムが特に好適で
ある。本発明では、上述のセパレーターの他にも、通常
電池に使用されている公知の各部材が好適に使用でき
る。
【0126】以上に説明した本発明のリチウム1次電池
の形態としては、特に制限はなく、コインタイプ、ボタ
ンタイプ、ペーパータイプ、角型又はスパイラル構造の
円筒型電池等、種々の公知の形態が好適に挙げられる。
ボタンタイプの場合は、シート状の正極及び負極を作製
し、該正極及び負極によりセパレーターを挟む等によ
り、リチウム1次電池を作製することができる。また、
スパイラル構造の場合は、例えば、シート状の正極を作
製して集電体を挟み、これに、負極(シート状)を重ね合
わせて巻き上げる等により、リチウム1次電池を作製す
ることができる。
【0127】本発明のリチウム1次電池用の正極は、二
酸化マンガンの粒子間に、非常に微細な金属酸化物の粒
子が分散されているのが好ましいため、金属酸化物は、
好ましくはゾルゲル法により調製する。なお、非常に微
細な粒子が調製できさえすれば、調製法は特に制限され
ない。
【0128】本発明のリチウム1次電池に用いる正極
は、下記の第1乃至第4の工程に従って製造することが
できる。第1の工程では、有機溶媒中に、二酸化マンガ
ンと、チタン、アルミニウム、亜鉛、クロム、リチウ
ム、ニッケル、銅及び鉄からなる群から選択される少な
くとも1種の金属のアルコキシドとを加え混合して、混
合液を調製する。有機溶媒としては、メタノール、エタ
ノール等の低沸点アルコール或いはアセトン等の低沸点
ケトン類等が好ましく、特にエタノールが好ましい。一
方、金属アルコキシドにおけるアルコキシ基としては、
有機溶媒に対する金属アルコキシドの溶解性の観点か
ら、イソプロポキシ基、n-プロポキシ基等が好まし
い。
【0129】第2の工程では、第1工程で調製した混合
液に水を加え、前記金属アルコキシドの加水分解反応に
より、該金属アルコキシドに対応する金属水酸化物を生
成する。なお、第2の工程は、氷冷しながら行うのが好
ましい。
【0130】次に、第3の工程で、金属水酸化物を含有
した液を加熱・乾燥することにより、溶媒を除去しなが
ら金属水酸化物を金属酸化物にし、該金属酸化物を二酸
化マンガン粒子間に分散させた正極用粉末を製造する。
なお、溶媒の除去と脱水を完全に行うため、加熱・乾燥
は120〜300℃の温度で充分な時間行うのが好ましい。
【0131】次に、第4の工程で、第3の工程で得た正
極用粉末を所定の形状に成形してリチウム1次電池用の
正極を得る。成形方法は、リチウム1次電池の製造過程
で破損しない程度の強度の正極が成形できれば特に限定
されず、従来公知の方法が使用できる。例えば、目的と
するリチウム1次電池の正極の形状に対応した型によ
り、前記正極用粉末を打ち抜き機で打ち抜くことによっ
ても実施できる。なお、成形の前に、前述の導電材、結
着剤等の添加剤を、正極用粉末に混合・混錬してペース
ト状とし、熱風乾燥(100〜120℃)した後に、打ち抜き機
で打ち抜いてもよい。
【0132】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく
説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を
限定されるものではない。
【0133】(実施例1)リチウム1次電池用正極を、
下記の方法で作製した。エタノール 10mL中に、チタン
イソプロポキシド(Ti[OCH(CH3)2]4) 0.07g(0.25mmol)を
加え、大気下、30分間撹拌して溶解させた。次に、生成
したエタノール溶液に、撹拌しながら、二酸化マンガン
(三井鉱山製EMD)1gを添加し分散させた。次に、該分
散液を氷冷しながら、これに水 0.5mL(27mmol)を添加
し、これによりチタンイソプロポキシドを水酸化チタン
(Ti(OH)4)にした。次に、生成した水酸化チタンを含有
する混合液を、80℃で加熱乾燥し、更に、300℃で1時間
乾燥することにより水酸化チタンを酸化チタンにし、該
酸化チタンが二酸化マンガン粒子間に分散された粉末を
得た。このようにして得られた粉末をガラスチューブの
オーブンに仕込み、100℃で1時間脱水して、正極用粉末
にした。正極用粉末中の酸化チタンの質量は、二酸化マ
ンガンの質量に対し、2%であった。
【0134】この正極用粉末と、アセチレンブラック
と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを8:1:1の
割合(質量比)で混合・混錬し、該混練物をドクターブ
レードで塗工した後、熱風乾燥(100〜120℃)して得たも
のを、φ16mm打ち抜き機で切り出すことによりリチウム
1次電池用の正極を作製した。なお、正極の質量は19mg
である。この正極を用いて、下記のようにしてリチウム
1次電池を作製した。
【0135】なお、負極には、リチウム箔(厚み0.5mm)
をφ16mmに打ち抜いたものを使用し、集電体にはニッケ
ル箔を使用した。また、電解液は、ホスファゼン誘導体
A(前記式(IV)において、nが3であり、6つのRのうち
2つがエトキシ基、4つがフッ素である環状ホスファゼン
誘導体化合物、25℃における粘度:1.2 mPa・s(1.2 cP))
10体積%と、γ−ブチロラクトン(GBL) 90体積%との
混合溶液に、LiBF4(リチウム塩)を0.75 mol/L(M)の濃度
で溶解させることにより調製した。
【0136】セパレーターとしてセルロースセパレータ
ー(日本高度紙工業社製TF4030)を使用し、これを介し
て上記正負極を対座させ、上記電解液を注入して封口
し、CR2016型のリチウム1次電池を作製した。
【0137】本実施例のリチウム1次電池の電池特性
を、下記の試験方法により求め、従来例としての汎用リ
チウム1次電池と比較した。汎用リチウム1次電池は、
二酸化マンガン粒子間に酸化チタンを分散させず、かつ
正極の質量が19mgであり、γ−ブチロラクトン(GBL)にL
iBF4(リチウム塩)を0.75 mol/L(M)の濃度で溶解させて
調製した電解液を用いた以外は、実施例1のリチウム1
次電池と同じ構造を有する。
【0138】これら電池を、25℃の大気下、1mA(0.2C)
の定電流で1.5V(下限電圧)まで放電して、図1に示す
常温放電曲線を得た。図中、実線は実施例1の放電曲線
を示し、点線は従来例の放電曲線を示す。
【0139】図1の放電曲線から放電容量を計算する
と、実施例1の放電容量は298mAh/gで、従来例では235m
Ah/gであった。
【0140】更に、図1の放電曲線を基に、放電時間−
電圧曲線を積分して、エネルギー密度を求めると、実施
例1のエネルギー密度は726Wh/kgで、従来例では583Wh/
kgであった。
【0141】また、実施例1及び従来例の電解液の限界
酸素指数をJIS K 7201に従って測定した。その結果、実
施例1の電解液では限界酸素指数は25.1体積%であり、
従来例の電解液では17.1体積%であった。
【0142】(実施例2〜3及び比較例1〜2)二酸化
マンガン粒子間に分散させる酸化チタンの量を表1記載
のように変更する以外は実施例1と同様にして正極用粉
末を調製し、リチウム1次電池を作製した。得られたリ
チウム1次電池に対して、実施例1と同様に放電容量及
びエネルギー密度の測定を行い、その結果を表1に示
す。
【0143】
【表1】
【0144】(実施例4)酸化チタンの代わりに酸化亜
鉛を二酸化マンガンの粒子間に分散(二酸化マンガンの
質量に対する酸化亜鉛の質量は2%)させた以外は、実
施例1と同様にしてリチウム1次電池を作製し、同様に
放電容量及びエネルギー密度を測定した。その結果、放
電容量は295mAh/gであり、エネルギー密度は720Wh/kgで
あった。
【0145】(実施例5)ホスファゼン誘導体Aの代わ
りにホスファゼン誘導体B(前記式(IV)において、nが
3であり、6つのRのうち1つがメトキシ基、5つがフッ素
である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘
度:1.8 mPa・s(1.8 cP))を用いた以外は、実施例1と同
様に電解液を調製してリチウム1次電池を作製し、同様
に放電容量及びエネルギー密度を測定した。その結果、
放電容量は297mAh/gであり、エネルギー密度は725Wh/kg
であった。また、実施例1と同様に電解液の限界酸素指
数を測定したところ、限界酸素指数は25.0体積%であっ
た。
【0146】(実施例6)ホスファゼン誘導体Aの代わ
りにホスファゼン誘導体C(前記式(IV)において、nが
4であり、8つのRのうち1つがエトキシ基、7つがフッ素
である環状ホスファゼン誘導体化合物、25℃における粘
度:1.3 mPa・s(1.3 cP))を用いた以外は、実施例1と同
様に電解液を調製してリチウム1次電池を作製し、同様
に放電容量及びエネルギー密度を測定した。その結果、
放電容量は295mAh/gであり、エネルギー密度は720Wh/kg
であった。また、実施例1と同様に電解液の限界酸素指
数を測定したところ、限界酸素指数は25.8体積%であっ
た。
【0147】これらの結果から、酸化チタンを二酸化マ
ンガン粒子間に分散させ、ホスファゼン誘導体を添加し
て電解液を調製することにより、放電容量及びエネルギ
ー密度が著しく向上し、また、電解液の限界酸素指数が
上昇し安全性が大きく向上することが分かる。
【0148】
【発明の効果】本発明によれば、二酸化マンガンの粒子
間に特定の金属酸化物を分散させた粉末からなる正極
と、ホスファゼン誘導体及び/又はホスファゼン誘導体
の異性体を添加した電解液とを用いてリチウム1次電池
を構成することにより、放電容量及びエネルギー密度が
高いため高出力で長寿命であり、かつ安全性が高いリチ
ウム1次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 汎用のリチウム1次電池と、本発明に係る二
酸化マンガン粒子間に酸化チタン粒子を分散させた粉末
を用いた正極と、ホスファゼン誘導体を添加した電解液
とを備えるリチウム1次電池のそれぞれの常温放電曲線
を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5H024 AA03 AA12 BB07 FF14 FF19 FF31 FF38 HH01 HH08 HH11 5H050 AA07 AA08 AA15 BA06 CA05 CB12 EA01 EA12 GA10 HA01 HA10 HA14

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二酸化マンガンの粒子間に、酸化チタ
    ン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化リチウム、
    酸化ニッケル、酸化銅及び酸化鉄からなる群から選択さ
    れる少なくとも1種の金属酸化物が分散されてなる正極
    と、負極と、ホスファゼン誘導体及び/又はホスファゼ
    ン誘導体の異性体が添加された非プロトン性有機溶媒と
    支持塩とからなる電解液とを備えることを特徴とするリ
    チウム1次電池。
  2. 【請求項2】 前記ホスファゼン誘導体が、25℃におい
    て100mPa・s(100cP)以下の粘度を有し、下記式(I)又は下
    記式(II)で表わされることを特徴とする請求項1に記載
    のリチウム1次電池。 【化1】 (式中、R、R、及びRは、一価の置換基又はハ
    ロゲン元素を表す。Xは、炭素、ケイ素、ゲルマニウ
    ム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、
    酸素、イオウ、セレン、テルル、及びポロニウムからな
    る群より選ばれる元素の少なくとも1種を含む置換基を
    表す。Y、Y及びYは、2価の連結基、2価の元
    素、又は単結合を表す。) (NPR ・・・ (II) (式中、Rは一価の置換基又はハロゲン元素を表す。
    nは、3〜15を表す。)
  3. 【請求項3】 上記式(II)で表わされるホスファゼン誘
    導体が、下記式(III)で表されることを特徴とする請求
    項2に記載のリチウム1次電池。 (NPF ・・・ (III) (式中、nは3〜13を表す。)
  4. 【請求項4】 上記式(II)で表わされるホスファゼン誘
    導体が、下記式(IV)で表されることを特徴とする請求項
    2に記載のリチウム1次電池。 (NPR ・・・ (IV) (式中、Rは一価の置換基又はフッ素を表し、全R
    のうち少なくとも1つはフッ素を含む一価の置換基又は
    フッ素であり、nは3〜8を表す。但し、全てのR がフ
    ッ素であることはない。)
  5. 【請求項5】 前記ホスファゼン誘導体が、25℃におい
    て固体であって、下記式(V)で表されることを特徴とす
    る請求項1に記載のリチウム1次電池。 (NPR ・・・ (V) (式中、Rは一価の置換基又はハロゲン元素を表す。
    nは3〜6を表す。)
  6. 【請求項6】 前記異性体が、下記式(VI)で表され、下
    記式(VII)で表わされるホスファゼン誘導体の異性体で
    あることを特徴とする請求項1に記載のリチウム1次電
    池。 【化2】 【化3】 (式(VI)及び(VII)において、R、R及びRは、
    一価の置換基又はハロゲン元素を表す。Xは、炭素、
    ケイ素、ゲルマニウム、スズ、窒素、リン、ヒ素、アン
    チモン、ビスマス、酸素、イオウ、セレン、テルル、及
    びポロニウムからなる群より選ばれる元素の少なくとも
    1種を含む置換基を表す。Y及びYは、2価の連結
    基、2価の元素、又は単結合を表す。)
  7. 【請求項7】 前記金属酸化物が、二酸化チタンである
    ことを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のリチ
    ウム1次電池。
  8. 【請求項8】 前記金属酸化物の質量が、前記二酸化マ
    ンガンの質量に対し、0.5%から4%であることを特徴と
    する請求項1から7の何れかに記載のリチウム1次電
    池。
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