JPWO2002026626A1 - 非孔性球状シリカ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は非孔性球状シリカ及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、IC封止用樹脂組成物の充填材、基板、電子材料や半導体製造装置、高純度シリカガラス及び石英ガラス、光学ガラスの原料用途等に適するトリウム含有量が極めて低位にある非孔性球状シリカを製造する方法に関する。特に、フリップチップのアンダーフィル用フィラーとして、樹脂混合時の流動性、狭い隙間への浸透性に極めて優れた非孔性球状シリカ及びその製造方法に関する。
背景技術
近年、電子産業の急速な発展につれて電子材料用や半導体製造用などに高純度のシリカが使用されるようになったが、製品の高度化につれてシリカに対する要望として高純度化はもちろんのこと、その他の性能として粒子トップサイズの制限、樹脂混合時の流動性等が強く求められるようになった。特にフリップチップタイプの半導体デバイスではアンダーフィル用フィラーとして粗粒含量が少なく、樹脂混合時の流動性に優れた非孔性球状シリカが要求されるようになった。特にアンダーフィル用フィラーでは樹脂混合時の粘度が重要視され、低粘度かつ低いチキソトロピー比を示すものが必要とされるようになった。ここで、一般的にチキソトロピー比とはB型粘度計などの回転粘度計を用いて、回転数を変えて粘度を測定し、高速回転のときの数値で低速回転のときの数値を割った値をいう。樹脂では特にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂が有用であるが、その中でも特にビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と混合した際に低いチキソトロピー比を示す非孔性球状シリカが望まれていた。
従来、粗粒含量が少なく、樹脂混合時の流動性に優れ、低いチキソトロピー比を示す非孔性球状シリカとして、
1)最大粒子径が45μm、平均粒子径が2〜10μm、当該粒子の比表面積Sw1と当該粒子の理論比表面積Sw2との比、Sw1/Sw2が1.0〜2.5であり、且つ当該粒子表面は平滑であることを特徴とする溶融球状シリカ(特開2000−7319公報)、及び
2)最大粒径が24μm、平均粒子径が1.7〜7μm、3μm以下の粒子が全体粒子に占める割合X1が100/D50重量%以上、(18+100/D50)以下の粒度分布を有する微細球状シリカであって、かつ、常温で液状のエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂に、前記微細球状シリカを最大80重量%配合した混合物の50℃における粘度が20Pa・s以下であることを特徴とする微細球状シリカ(特開2000−63630公報)
などが提案されている。
しかし、1)の非孔性球状シリカは原料が溶融球状シリカであり、表面微粉を溶解させても、粒子表面も溶解させるため、結果として粒子表面の凹凸、表面のシラノール基が残ってしまう。そのため、樹脂混合時に期待する流動性は得られない。2)の非孔性球状シリカも実質的には溶融球状シリカを用いており、表面に微粉が付着している。また、1)の手法同様に微粉を溶解させたとしても前記と同様の理由により、期待する流動性は得られない。1)、2)の非孔性球状シリカは粘度計測定5〜10rpmでは低いチキソトロピー比を示すが、低回転数では粘度が上昇する傾向がある(チキソトロピー比が大きくなる)。
これはアンダーフィル材のような静置状態で毛細管現象のみで浸透させる用途には好ましくなく、さらに低いチキソトロピー比を示すフィラーがアンダーフィル用フィラーとして望まれていた。
一方、非孔性球状シリカの製法としては、
1)高純度シリカの破砕体を火炎中で溶融し、アルカリまたは弗酸で表面の微粉を溶解させる方法(たとえば、特開2000−7319公報)、
2)シリコンアルコキシドを加水分解して得られたゾル状溶液を粒子成長させる方法(たとえば、特公平2−288号公報)、
3)シリコンアルコキシドを加水分解して得られたゾル状溶液を粒子成長させ、得られた球状シリカゲルを火炎で焼成する方法(たとえば、特開平2−296711号公報)、
4)アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として細粒状に分散させた油中水滴型(W/O型)エマルションと、鉱酸水溶液を分散相として細粒状に分散させた油中水滴型(W/O型)エマルションとを混合して球状シリカゲルを生成させ、得られた球状シリカゲルを鉱酸で処理して得た球状含水シリカを乾燥後、焼成することを特徴とする高純度球状シリカの製造方法(特開平07−069617号公報)、及び
5)分級により粗粒を除去した平均粒径2〜7μmの溶融球状シリカと金属シリコンから製造された平均粒子径が0.3〜1.0μmの球状シリカを混合する方法(特開2000−63630公報)
などが提案されている。
球状シリカの製造方法としての前記、従来の方法はそれぞれ次の問題点を有している。
1)の方法で得られる粒子は、表面の微粉をアルカリまたは弗酸で溶解させる際、目的粒子の表面も溶解させてしまうため、表面が荒れた状態となり、結果として比表面積が理論値に近いにもかかわらず、樹脂混合時の流動性が上がらない。また、表面の微粉を溶解させると同時に目的の粒子も溶解するため、歩留まりが悪く生産性にも問題がある。
2)の方法では、シリコンアルコキシドの加水分解縮重合反応によりゾル状粒子を生成させ、さらに粒子成長させるが、比較的大きな1次粒子から形成された球状シリカゲルであり、熱処理で焼結させ、非孔化した後もその痕跡が残り、比表面積が理論値に近いにもかかわらず、流動性が上がらない。
3)の方法ではシリコンアルコキシドを加水分解して得られたゾル状溶液を粒子成長させ、得られた球状シリカゲルを火炎で非孔化させるが、処理温度が1500℃と融点以下であるため、結果として2)の方法で得られた球状シリカと同等のものしか得られない。
さらに2)及び3)の方法で得られた球状シリカ粒子は、焼成すると大幅に収縮して表面の凹凸を生じ、表面平滑性に劣る粒子となる。表面平滑性の低下は流動性の低下を招くので、好ましくない。また、2)および3)の方法は、使用される原料が高価であるとともに、原料由来の有機物を含む排水が発生し、その処理を必要とする。
4)の方法では真球性、流動性ともに優れた球状シリカ粒子が得られるが、焼成時に一部の粒子間で固結するため、1)、2)、3)の方法と同様に平均粒径に対し、4倍を越える粒子が含まれていた。
5)の方法では溶融球状シリカをブレンドしているため、粒子表面の微粉が樹脂混合時に流動性を阻害し、所望の流動特性が得られない。さらに、これら従来の方法ではいずれの手法も粗粒含量の少ない粒径分布とするためには、機械的な分級操作を行う必要があった。
また、機械的な分級方法はスクリーンを用いる方法、気流分級法などがあるが、平均粒径が0.1〜20μm付近の粒子を最大粒径が平均粒径の4倍以下となるまで完全に分級することは極めて困難であった。
すなわち、最大粒径が平均粒径の4倍以下で、かつ、低いチキソトロピー比を示す非孔性球状シリカは得られていなかった。
本発明の目的は液状封止材に占めるフィラーの充填率が40〜90質量%の範囲で配合しても封止材の流動性を低下させることが少なく、かつ、狭い隙間に流し込む様な液状封止材用充填材として、隙間に支えることのない、最大粒子径が平均粒径の4倍以下となる粒度分布を有し、樹脂混合時に低いチキソトロピー比を示す非孔性球状シリカおよびその製造に関して工業的に有利な方法を提供することにある。
発明の開示
本発明者らは、従来法における問題点を改善するために検討を行った結果、アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として含むエマルションと鉱酸水溶液とを混合して球状シリカゲルを生成させ、中和反応が終了した後、生成した球状シリカゲルを分離することなく、球状シリカゲルを含む反応液を50℃以上に加熱し、冷却した後、固液分離を行い、これを鉱酸及び純水で洗浄して球状含水シリカを得、これを乾燥した後もしくは乾燥時に解砕し、焼成することによって粗粒含量の少ない、樹脂配合時のチキソトロピー比が極めて低く、ダイラタンシーを示す高純度な非孔性球状シリカが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明は「以下の項目を満足する平均粒径が0.1〜20μmの非孔性球状シリカ:
(a)最大粒径が平均粒径の4倍以下
(b)非孔性球状シリカとビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を質量比70:30で混合した際の粘度測定において、粘度計の回転数0.5rpmの粘度値をη1、2.5rpmの粘度値をη2とした場合、η1/η2<1.0。」を要旨とする。
本発明の第2の発明は「以下の(1)〜(7)の工程を含む非孔性球状シリカの製造方法:
(1)アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として細粒状に分散させた油中水滴型(W/O型)エマルションを調製する乳化工程、
(2)(1)で調製した油中水滴型(W/O型)エマルションを15〜50質量%の鉱酸水溶液と混合し、反応後の鉱酸濃度が10質量%以上となるように球状シリカゲルを生成させる凝固工程、
(3)(2)で生成した球状シリカゲルを含む反応液を50℃以上に加熱し、不純物を抽出する抽出工程、
(4)(3)で不純物を抽出した球状シリカゲルを洗浄する洗浄工程、
(5)(4)で洗浄した球状シリカゲルを乾燥させる乾燥工程、
(6)(5)の乾燥時もしくは乾燥後に解砕する解砕工程、及び
(7)(6)で解砕した球状シリカゲルを焼成する焼成工程。
」を要旨とする。
本発明の第3の発明は「鉱酸として硫酸を使用し、凝固工程から洗浄工程前に硝酸及び/又は塩酸を添加することをさらに含む前記第2の発明の非孔性球状シリカの製造方法。」を要旨とする。
本発明の第4の発明は「以下の(1)〜(6)の工程を含む非孔性球状シリカの製造方法:
(1)アルカリ金属及びSiを除く他の金属含有量の合計が0.1質量%以下のアルカリ珪酸塩水溶液を分散相として細粒状に分散させた、油中水滴型(W/O型)エマルションを調製する乳化工程、
(2)(1)で調製した油中水滴型(W/O型)エマルションを鉱酸水溶液と混合し、球状シリカゲルを生成させる凝固工程、
(3)(2)で生成した球状シリカゲルを洗浄する洗浄工程、
(4)(3)で洗浄した球状シリカゲルを乾燥させる乾燥工程、
(5)(4)の乾燥時もしくは乾燥後に解砕する解砕工程、及び
(6)(5)で解砕した球状シリカゲルを焼成する焼成工程。
」を要旨とする。
本発明の第5の発明は「平均粒径が0.1〜100μmのシリカゲル粒子を最大粒径の10倍以下の目開きを有するスクリーンを用いて解砕した後、焼成することを含む焼成シリカ粒子の製造方法。」を要旨とする。
本発明の第6の発明は「平均粒径が0.1〜100μmのシリカゲル粒子を最大粒径以下の目開きを有するスクリーンを用いて解砕・分級した後、焼成することを含む焼成シリカ粒子の製造方法。」を要旨とする。
本発明の第7の発明は「スクリーンが樹脂製である前記第5または第6の発明の焼成シリカ粒子の製造方法。」を要旨とする。
本発明の第8の発明は「前記第1の発明の非孔性球状シリカを含有する封止用樹脂組成物。」を要旨とする。
発明を実施するための最良の形態
本発明に係わる非孔性球状シリカでは平均粒径が0.1〜20μm、最大粒径が平均粒径の4倍以下であり、樹脂配合時に極めて低いチキソトロピー比を示すことから、半導体デバイスの1つであるフリップチップのアンダーフィル用フィラーとして、樹脂混合時の流動性、狭い隙間への浸透性に極めて優れた非孔性球状シリカである。
狭い隙間に流し込むため最大粒径は出来るだけ小さくする必要がある。しかし、平均粒径が小さいほど樹脂に混ぜた際の粘度は大きくなり、浸透性が悪くなるため、平均粒径を出来るだけ大きくし、最大粒径を小さくする必要がある。隙間の大きさに合わせ、最大粒径をもとにフィラーを選定するが、低粘度化の観点から平均粒径は最大粒径の4分の1以上であることが好ましい。即ち、最大粒径が平均粒径の4倍以下であることが好ましい。さらには最大粒径が平均粒径の3倍以下であることが好ましい。また、毛細管現象で浸透させるアンダーフィルでは、チキソトロピー比が低いほど浸透性が良いと考えられる。本発明でいうチキソトロピー比とは、非孔性球状シリカとビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を質量比70:30で混合した際の粘度測定において、粘度計の回転数0.5rpmの時の粘度値をη1、回転数2.5rpmの時の粘度値をη2とした場合、η1/η2を意味する。粘度測定に使用されるビスフェノールA型液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂とブチルグリシジルエーテルの混合物(質量比89:11の混合物)であり、エポキシ当量が181〜191、25℃の粘度が9〜12ポイズのものが使用される。工業的には油化シェルエポキシ株式会社製のエピコート815が該当する。粘度測定は50℃での測定が好ましい。粘度計はE型粘度計(東機産業製RE80R型)が使用される。アンダーフィル用として使用する際、低いチキソトロピー比を示す方が好ましく、η1/η2は1.0未満を示すことが好ましい。
本発明の非孔性球状シリカは、平均粒径5〜20μmではη1/η2は1.0未満を示す。平均粒径0.1〜5μmではη1/η2は0.8以下を示す。さらに、平均粒径が0.1〜3μmではη1/η2は0.5以下を示し、極めて低いチキソトロピー比を示す。チキソトロピー比の下限としては0.2程度である。このように極めてチキソトロピー比が低く、狭い隙間のアンダーフィル用には特に有用な非孔性球状シリカが提供される。なお、粘度の測定温度は20〜80℃であり得る。使用する機器によって異なるが、50℃付近が測定しやすい。フィラー配合量は、フィラー配合量が比較的高いほどフィラー物性が粘度へ及ぼす影響も大きくなるため、特に70%付近が好ましい。
本発明の非孔性球状シリカがこのように極めて低いチキソトロピー比を示す理由は明らかではないが、粒子表面に0.5μm以下の微粉を殆ど含まないため、比表面積が小さく、樹脂との総接触面積が小さいことが考えられる。本発明の非孔性球状シリカは比表面積がBET法による測定値で理論値の1.0〜1.5倍にあり、真球度が高く、極めて表面平滑性が良好な粒子であると考えられる。また、粒度分布が比較的狭いことも低いチキソトロピー比を示す理由と思われる。
本発明の非孔性球状シリカは最大粒径が平均粒径の4倍以下という、粗粒含量の少ない分布を有する。樹脂配合時の粘度を下げるためには、粒度分布の広さを示す粒子の変動係数は15%以上が好ましい。単に分布が狭いということではなく、平均粒径より小さな粒子群をある程度含みながらも、平均粒径より大きな粗粒側の含有量が少ない分布であることが樹脂配合時の低粘度化、狭い隙間への浸透性の点で好ましい。すなわち、低いチキソトロピー比を示し、最密充填構造も得られる分布であるといえる。本発明の非孔性球状シリカに関し、変動係数は大きすぎると微粉を多く含むことを意味するため、15〜100%の範囲が好ましい。さらには25〜60%の範囲が好ましい。粒子の変動係数(Cv)とは粒径のバラツキを表す指標であり、標準偏差σと平均粒径d〔μm〕との比で式(I)で表される。
式(I):Cv=100×σ/d
半導体に使用される材料は一般に高純度が要求される。特にNa、K、Liなどのアルカリ金属、Ca、Mgなどのアルカリ土類金属およびClなどのイオン性不純物は、アルミニウム配線を腐食する原因となるので、本発明の非孔性球状シリカでは、これらの不純物を実質的に含有しないことが好ましい。また、ソフトエラー発生を抑制するため、放射性元素が厳しく制限されている。封止材用シリカでは放射性元素が2ppbを越えると、ソフトエラー発生の原因となり好ましくなく、本製法では実質的にアルカリ金属、アルカリ土類金属を1ppm以下、放射性不純物の含有量を2ppb以下に抑制することができる。ここでの放射性元素とはUおよびThを示す。即ち、UおよびThの含有量の合計が2ppb以下であることが好ましい。さらにはUおよびThの含有量の合計が1ppb以下であることが好ましい。これらの不純物の含有率は、適宜の分析手段により直接測定することができるが、本発明ではシリカを弗化水素水溶液で加熱溶解し、シリカ分をSiF4として気化させ、残分をICP−MSで分析することにより不純物濃度の特定を行った。ICP−MSは横河電機製Model PMS−2000を用いた。
本発明において規定する粒径分布は最大粒径が平均粒径の4倍以下であるが、これはレーザー回折散乱方式(Coulter社製LS−130)により測定された粒径分布である。また、平均粒径はメディアン径を意味する。
非孔性球状シリカの粒子表面の平滑度の尺度として、比表面積SAを用いる。一般に、直径がd(μm)であり、細孔を有しない真球体の比表面積SAは、その真比重がDであるとき、式(II)によって表すことができる。
式(II):SA(m2/g)=6/(d×D)
式(II)から、直径がd(μm)であり、真比重が2.2であるシリカの真球体の比表面積SA(m2/g)は、次式(III)で表されることから、例えば、直径10μmであるシリカ球体の比表面積の理論値は、およそ0.27m2/gとなる。
式(III):SA=2.73/d
封止用充填材として用いられる球状シリカは、通常、焼成により非孔化処理が施されているので、その比表面積の測定値の理論値からのズレの大きさで平滑性を評価することができる。例えば、火炎溶融法によって調製された球状シリカの表面には、高温の火炎により蒸発したSi蒸気の再凝結によって形成された微小球または凹凸面が多く存在し、直径10μmの溶融粒子の比表面積は1m2/gを越え、通常は約2m2/gである。このような粒子を充填剤として使用した封止材は、成形時の流動性がなお不十分である。
本発明の非孔性球状シリカの比表面積は、理論値の1.5倍以下であり、電子顕微鏡写真からも表面平滑性に優れることが判る。比表面積は日機装製ベータソーブ4200で測定した。
本発明における非孔性球状シリカは真球度が0.9以上である粒子の含有率が90%以上である。真球度は一つのシリカ粒子における最大直径(d1)に対する最小直径(d2)の比であり、式(IV)により表される。
式(IV) 真球度=d2/d1
真球度の値は、シリカ粒子の電子顕微鏡写真において、ランダムに20個の粒子を選んで、それぞれの最大直径と最小直径を測定し、平均値を算出する。
本発明の非孔性球状シリカの製造方法は、次の2つの工程を含んでいる。
工程−1:<球状シリカゲルの調製及び不純物抽出除去工程>
アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として含むエマルションと鉱酸水溶液とを接触させて反応させ、多孔質の球状シリカゲルを生成させ、中和反応が終了した後、固液分離することなく、50℃以上に加熱することにより、不純物を抽出除去して、高純度で多孔質の球状シリカゲルを得る工程。
工程−2:<球状シリカゲルの焼成工程>
工程−1で得られた球状シリカゲルを乾燥した後もしくは乾燥時に、解砕し、焼成することにより、本発明で規定した物性を賦与する工程。以下、前記各工程について順次説明する。
1>球状シリカゲルの調製(工程−1)
1−1)エマルションの調製
アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として含むエマルションを調製する。すなわち、アルカリ珪酸塩水溶液と混和しない液体を連続相とし、この中にアルカリ珪酸塩水溶液を分散相として細粒状に分散させた、油中水滴型(W/O型)エマルションを生成させる。
アルカリ珪酸塩水溶液と連続相形成用液体及び乳化剤を混合し、乳化機などを用いて乳化させ、アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として含むW/O型のエマルションを調製する。乳化時の乳化機回転数を変化させることにより、粒径を制御することができる。乳化機の回転数を大きくすると粒径は小さくなり、回転数を小さくすると粒径は大きくなる。また、アルカリ珪酸塩水溶液を水で希釈することにより、粒径をより微細にすることができる。逆に濃縮により、粘度を増加させることにより、粒径を大きくすることができる。
使用されるアルカリ珪酸塩は、珪酸ナトリウム・珪酸カリウム・珪酸リチウムなどを包含するが、珪酸ナトリウムが一般的に用いられる。アルカリ珪酸塩水溶液のシリカ濃度(SiO2として)は1〜40質量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは5〜35%の範囲である。市販されているJIS3号の珪酸アルカリが扱いやすい。
原料に使用する珪酸アルカリ水溶液はアルカリ金属、Siを除く他の金属含有量の合計が0.1質量%以下のアルカリ珪酸塩水溶液(以下、高純度水ガラスとも言う)を用いることで極めて高純度な非孔性球状シリカを製造することができる。アルカリ金属、Siを除く他の金属含有量の合計が0.1質量%以下のアルカリ珪酸塩水溶液は高純度の天然珪石または合成シリカをアルカリ水溶液で溶解させることにより、調製することができる。合成シリカは特に限定しないが、珪酸アルカリを原料とした高純度シリカが製造コストの面で好ましい。アルカリ水溶液は水酸化ナトリウム水溶液が後の不純物抽出の際に有利である。高純度の珪石または合成シリカをアルカリ水溶液に溶解させる際は加熱により溶解時間が短縮できる。また、オートクレーブ等で加圧することも有効である。なお、電子材料等の原料として使用する場合はアルカリ金属、Siを除く他の金属含有量の合計が0.01%以下であることが好ましい。また、放射性元素の含有量も少ないほど好ましく、U及びThの合計が10ppb以下であることが好ましい。
連続相形成用液体としては、アルカリ珪酸塩水溶液および鉱酸水溶液と反応せず、かつ、混和しない液体を用いる。その種類は、特に限定しないが、解乳化処理の面からは、沸点が100℃以上であり、比重が1.0以下であるオイルを使用することが好ましい。アルカリ珪酸塩水溶液とオイルの質量比は8:2〜2:8である。好ましくは8:2〜6:4である。
上記の連続相形成用液体としてのオイルは、たとえば、n−オクタン、ガソリン、灯油、イソパラフィン系炭化水素油などの脂肪族炭化水素類、シクロノナン、シクロデカンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリンなどの芳香族炭化水素類などを用いることができる。乳化安定性の観点からイソパラフィン系飽和炭化水素類が好ましい。
乳化剤としては、W/O型エマルションの安定化機能を有するものであれば特に限定はなく、脂肪酸の多価金属塩・水難溶性のセルローズエーテルなどの親油性の強い界面活性剤を用いることができる。後処理の点からは、非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。具体例として、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノパルミテート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリドなどのグリセリン脂肪酸エステル類などを挙げることができる。
乳化剤の添加量は、乳化対象であるアルカリ珪酸塩水溶液に対して、0.05〜5質量%の範囲が適量である。また、各工程での処理を考慮すると0.5〜1質量%が好ましい。
1−2)球状シリカゲルの凝固・不純物抽出・洗浄処理
上記で調製されたアルカリ珪酸塩水溶液を分散相として含むエマルションと鉱酸水溶液とを攪拌下で混合する。鉱酸とアルカリ珪酸塩との中和反応によって球状の多孔質シリカゲルが生成する。混合方法の順序についての限定はしないが、鉱酸水溶液をアルカリ珪酸塩水溶液を含むエマルションへ加える場合は、反応時の極端な鉱酸濃度の低下を招く恐れがあり、アルカリ珪酸塩水溶液を含むエマルションを鉱酸水溶液へ加えることが好ましい。反応時の鉱酸/アルカリ分(水ガラス中のNa2O分)のモル比は2以上で所望の球状粒子が得られるが、生産性を考慮すると該モル比は5以下が好ましい。
鉱酸は硫酸、硝酸、塩酸等を用いることができるが、脱水作用が強く、コストの面でも安価な硫酸が最も好ましい。アルカリ珪酸塩水溶液は15質量%以上の鉱酸と接触することが好ましい。より好ましくは20質量%以上の硫酸と接触することがよい。アルカリ珪酸塩水溶液を含むエマルションを15質量%未満の鉱酸水溶液と接触させた場合、本発明が目的とする粗粒含量の少ない粒径分布を有する球状粒子は得られない。鉱酸水溶液の濃度の上限としては50質量%が好ましい。真球度、単分散度を考慮すると、鉱酸濃度は15〜35質量%が好ましい。また、アルカリ珪酸塩水溶液との反応が完全に終了した後、水相の反応液のフリー鉱酸濃度は10質量%以上であることが好ましい。フリー鉱酸濃度とは実質的に金属イオン等と塩を形成していない鉱酸の濃度である。
攪拌方法によって異なるが、アルカリ珪酸塩水溶液を含むエマルションと鉱酸水溶液との中和反応は5〜120分間でほぼ終了する。中和反応の終了は反応液の温度が下降傾向を示した時点で終了したものとする。
中和反応終了後、反応液を分離することなくそのまま昇温する。この昇温により、エマルション状の反応液はオイル相とシリカゲル粒子分散系硫酸水溶液相に層別に分離する解乳化処理とともに不純物の抽出除去も併せて行うことができる。温度は50℃以上が必要である。好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは80〜100℃の範囲で行い、処理時間は1分〜5時間で適宜選定すればよい。通常30分〜1時間程度で処理することができる。前記高純度水ガラスを原料として使用した場合は加熱による抽出を行わなくとも、高純度な球状シリカゲルを得ることができる。
特開平7−69617号記載の方法では、中和反応の後に反応液へ鉱酸水溶液を加えて昇温するという解乳化処理をし、オイル相とシリカゲル粒子分散系鉱酸水溶液相の層別に分離している。さらに、このシリカゲル粒子分散系鉱酸水溶液相からシリカゲル粒子を固液分離し、不純物元素の含有率を目的とする値まで下げるために鉱酸による酸処理をするという多くの操作を必要とした。
しかし、本発明では凝固・抽出処理の途中で固液分離の操作をすることなく、シリカ粒子中の放射性元素を含む不純物の含有率は極めて低くなり、シリカ粒子を0.01質量%以上の鉱酸及び純水で洗浄することにより、SiO2分99.99%以上にすることができる。
不純物の抽出においては反応前または反応後にキレートを添加することも有効である。キレート剤は特に限定しないが、酸性下で効力を発揮するキレート剤が好ましい。また、反応前後において硝酸及び/又は塩酸を添加することにより冷却後におけるTh等の不純物の析出を防止することができる。硝酸の添加量は全添加酸量に対して0.1〜5%で再析出抑制効果が得られる。好ましくは0.5〜3%の範囲が良い。前記高純度水ガラスを原料として使用した場合、キレート剤の添加は不要である。
2>球状含水シリカ粒子の乾燥・焼成処理工程(工程−2)
工程−1において不純物を抽出除去した球状含水シリカ粒子中には、なお水分が保持されている。この水分は、付着水と結合水とに分けられる。通常、付着水は100℃前後の温度で加熱すれば容易に除けるが、結合水は400℃以上の温度でも完全に除去することは困難である。付着水を除去するために乾燥処理を行い、そして、結合水を除去し、かつ、シリカ粒子を緻密化させるために焼成処理を行う。
乾燥及び焼成の工程において、乾燥時に静置状態で乾燥し、その状態で焼成した場合、一部の粒子間で焼結が生じ、粒径を増大させる原因となっていた。乾燥時もしくは乾燥後に解砕し、焼成することで粒子間の焼結を抑制することができ、焼成後においても粒径分布は最大粒子径が平均粒径の4倍以下である粗粒含量の少ない粒径分布が維持できる。
流動乾燥機は乾燥しながら、解砕されるため、さらに有効である。付着水を除去するための乾燥処理条件は、温度50〜500℃、実用的には100〜300℃の範囲とするのがよい。処理時間は、乾燥温度に応じて、1分間〜40時間の範囲で適宜選定すればよい。通常、10〜30時間で乾燥できる。また、乾燥後に解砕を行うことにより、乾燥及び焼成処理の際にシリカを流動状態に保たなくても、粒子同士が焼結することなく焼成できる。平均粒径0.1〜100μmのシリカゲル粒子を焼成するにあたり、乾燥後の解砕が粒子間焼結を防止するために有効である。
焼成前の解砕には最大粒径の10倍以下の目開きを有するスクリーンが用いられる。好ましくは1〜5倍の目開きを有するスクリーンを使用することがよい。さらに好ましくは1〜3倍の目開きを有するスクリーンを使用することがよい。スクリーンを使用した解砕の仕方は特に限定しないが、振動スクリーンや超音波スクリーンを用いる方法や水平円筒状のスクリーンの内部に原料をフィードし、スクリーン内部に取り付けられたブレードを高速回転させることにより、連続的に解砕させる方法(例えば、ターボ工業製ターボスクリーナー)などが挙げられる。スクリーンの材質は金属による汚染が無いものが好ましい。これを満足するために樹脂製のスクリーンが好ましい。樹脂の種類は特に限定しないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、カーボン、アクリル、ポリエステル、ポリイミド、フッ素系樹脂等が使用できる。解砕時の静電気を抑制するために、帯電性を抑制した樹脂が有効である。また、高湿下で作業することも可能である。また、若干の水分を添加することも可能である。
また、解砕前原料シリカの最大粒径以下の目開きを有するスクリーンを用いることにより、解砕と分級を同時に行うことも出来る。原料シリカの粒径分布からスクリーン上が10%に相当する粒径と同じ目開き、もしくはそれ以上の目開きを有するスクリーンが工業的に有用である。
本発明の解砕法の原料となるシリカゲル粒子は前記の珪酸アルカリをエマルション化させ凝固させる方法以外で製造されるシリカゲル粒子でも使用できる。シリカゲル粒子の製造方法は特に限定しないが、ゾルゲル法等が用いられる。ゾルゲル法による焼成シリカ粒子の製造方法は、原料としてシリコンアルコキシド、珪酸アルカリ、シリカゾル等の原料段階では、溶液状またはゾル状であればいずれの原料でも使用できる。ゾルゲル法ではこれらの原料を用い、種粒子を成長させる粒子成長法、原料を懸濁またはエマルション化させ凝固させる方法等が挙げられる。原料段階で溶液状またはゾル状であれば問題なく、製造過程で凝固させゲルの状態を経る手法であればいかなる手法でも適用できる。シリカゲル粒子とは比表面積200m2/g以上を有するシリカ粒子であり、本発明は特に200m2/g以上の比表面積を有するシリカゲルの焼成に有効である。工業的には珪酸アルカリをエマルション化させ、凝固させる方法がコスト的に有利であり、最も好ましい。
解砕後の焼成方法は特に限定しないが、石英等の容器中において、600〜1500℃の任意の温度で焼成できる。また、その他の方法として、流動焼成炉、ロータリーキルン、火炎焼成炉などを用いることもできる。場合によって、焼成後に極弱い凝集が見られることもあるが、再度スクリーンを用いて解砕することにより、粒子間焼結および凝集のない単分散状の焼成シリカ粒子が得られる。
工程−1のような湿式法で得られたシリカ粒子の表面には多数のシラノール基(Si−OH)が存在し、これが大気中の水分と結合して前記結合水となる。このシラノール基は、工程−1で得られたシリカを1000℃以上の温度で焼成処理することにより、除去することができる。この処理によって、粒子間で焼結の無い、比表面積の小さな緻密な球状シリカを得ることができる。焼成温度は高いほうがより緻密な粒子が得られ、樹脂配合時の流動性が良くなるため、好ましくは1100℃以上がよい。さらに表面のシラノールを極限まで低減させるためには1150℃以上の焼成が好ましい。
焼成時間は焼成温度に応じて、1分間〜20時間の範囲で適宜選定すればよい。通常、2〜10時間で所定の比表面積まで下げることができる。焼成処理を行う際の雰囲気としては、酸素や炭酸ガスなどでも良いし、必要によっては窒素やアルゴンなどの不活性ガスを用いることもできる。実用的には空気とするのがよい。焼成処理を行う際に用いる装置としては、シリカ粒子を静置した状態で処理する焼成炉を用いることができる。なお、シリカ粒子を流動状態に保ちながら焼成処理する装置、たとえば、流動焼成炉・ロータリーキルン・火炎焼成炉などを用いることもできる。加熱源としては、電熱または燃焼ガスなどを用いることができる。焼成前のシリカゲルの水分含有量は特に規定しないが、焼成時の粒子間固結が生じないようにするために、出来る限り含水率を低減したシリカゲルを焼成することが好ましい。
本発明の焼成シリカ粒子は、平均粒径0.1〜100μm、比表面積が200m2/g未満のシリカ粒子である。特に粒径が平均0.1〜20μmのシリカ粒子の製造に有効であり、また、比表面積が理論値付近のシリカ粒子を製造する際に有効である。焼成前におけるシリカゲル粒子の比表面積は特に規定しないが、通常ゾルゲル法では比表面積400m2/g以上を有し、それを焼結して200m2/g以下、好ましくは粒径に対する理論値の10倍以下、さらに好ましくは3倍以下とするものである。
本発明では焼成前に解砕することにより、焼成時に粒子間焼結が生じないことを見出した。即ち、平均粒径に対する最大粒径が4倍以下である球状シリカゲルを生成させた後、焼成前に解砕することで、平均粒径に対する最大粒径が4倍以下である非孔性球状シリカの製造を可能とした。ゾルゲル法では焼成前の粒子径を制御することが比較的容易であるが、比表面積を200m2/g以下まで焼成する際に一部で粒子間焼結が発生し、粗粒含量の少ない粒子の製造が出来なかった。特に理論値の3倍以下まで比表面積を低減させた場合、粒子間の焼結が顕著であった。しかし、前述の手法により、ゾルゲル反応で平均粒径に対し、最大粒径が4倍以下のシリカゲル粒子を製造すれば、焼成時の粒子間固結を生じさせることなく、そのまま平均粒径に対し、最大粒径が4倍以下の焼成シリカ粒子が製造できる。
本発明で調製した非孔性球状シリカは粗粒含量が少なく、かつ、樹脂に混合した際、極めて粘度が低いため、特に狭い隙間に流し込む液状封止材用充填材として好適に用いることができる。
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明する。
<実施例1>
1>球状シリカゲル粒子の調製
1−1)エマルションの調製
水ガラスとしてJIS3号水ガラスを水で希釈し、SiO2分を15%に調整したもの、連続相形成用液体としてイソパラフィン系炭化水素油(「アイソゾール400」、日本石油化学工業製)、乳化剤としてソルビタンモノオレート(「レオドールSP−O10」、花王製)を使用した。水ガラス、アイソゾール400、レオドールSP−O10をそれぞれ20kg、7.5kg、0.18kg秤量した。各原料を混合し、攪拌機で粗攪拌した後、乳化機を用いて2980rmpの回転数で乳化させ、乳化液415gを採取した。
1−2)球状シリカゲルの凝固・不純物抽出・洗浄処理
28%硫酸水溶液を575g調製し、室温で攪拌しながら、これに前述の乳化液を添加した。添加終了後、室温下でさらに40分間攪拌を続けた。次いで攪拌下で62%工業用硝酸40gを添加し、さらに20分間攪拌した後、攪拌下で100℃に加熱し、30分間保持した。この処理によって、乳濁状の反応液はオイル相(上層)とシリカゲル粒子が分散した水相(下層)とに分離した。
オイル相を除き、水相中のシリカゲル粒子を常法により濾過・洗浄した。洗浄は0.01%硫酸水溶液で反応液を置換洗浄した後、純水を用い、洗液のpHが4以上になるまで繰り返した。ヌッチェを用いて、脱水し、球状シリカゲルを得た。
2>球状シリカゲルの乾燥・解砕・焼成工程
得られた球状シリカゲルを温度120℃で20時間乾燥し、100gのシリカ粒子を得た。この乾燥シリカ粒子をポリエステル製目開き33μmスクリーンで解砕し、石英製ビーカー(1リットル)に充填し、1150℃で6時間焼成した。
焼成して得られたシリカ粒子について分析したところ、Na、K、Liなどのアルカリ金属、Ca、Mgなどのアルカリ土類金属及びCr、Fe、Cuなどの遷移金属の各元素の濃度は1ppm以下であり、また、UおよびThの放射性元素の合計は0.1ppb以下であった。得られたシリカ粒子についての各種の測定並びに観察結果を表1及び2に示す。得られたシリカ粒子の平均粒径は1.3μm、最大粒径は3μmであり、真比重は2.19であった。BET法で測定した比表面積は2.7m2/gで理論値の1.3倍であった。また、電子顕微鏡写真より真球度が0.9以上である粒子の含有率が90%以上である球状シリカ粒子で、表面の平滑性も良好であった。
<実施例2>
JIS3号水ガラスを純水で希釈し、SiO2分を27%に調整した他は、実施例1と同様にして、球状シリカを得た。得られたシリカ粒子についての各種の測定並びに観察結果を表1及び2に示す。
<実施例3>
JIS3号水ガラスを濃縮し、25℃での粘度を350cpに調整した。その他の条件は実施例1と同様にして、球状シリカを得た。得られたシリカ粒子についての各種の測定並びに観察結果を表1及び2に示す。
<実施例4>
乳化機の回転数を1800rpmとした他は、実施例3と同様にして、球状シリカを得た。得られたシリカ粒子についての各種の測定並びに観察結果を表1及び2に示す。
<実施例5>
JIS3号水ガラスの代わりにアルカリ金属、Siを除く他の金属含有量の合計が0.1質量%以下のアルカリ珪酸塩水溶液を用いた。その他は実施例4と同様にして、球状シリカを得た。得られたシリカ粒子についての各種の測定並びに観察結果を表1及び2に示す。
<実施例6>
実施例3で乾燥後得られたシリカ粒子をターボ工業製ターボスクリーナーTS250×200により、ポリエチレン製目開き33μmのスクリーンを通過させ、解砕した。スクリーンを通過した粒子は石英製ビーカーにて1150℃で6時間焼成し、焼成シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子についての各種の測定並びに観察結果を表3及び4に示す。
<実施例7>
実施例3で乾燥後得られたシリカ粒子をターボ工業製ターボスクリーナーTS250×200により、ポリエチレン製目開き24μmのスクリーンを通過させ、解砕した。スクリーンを通過した粒子は石英製ビーカーにて1150℃で6時間焼成し、焼成シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子についての各種の測定並びに観察結果を表3及び4に示す。
<実施例8>
実施例4で乾燥後得られたシリカ粒子をターボ工業製ターボスクリーナーTS250×200により、ポリエチレン製の24μm又は33μmのスクリーンを通過させ、解砕・分級した。なお、解砕・分級前におけるサンプルの粒径分布でスクリーン上が10%に相当する粒径は19μmであった。それぞれのスクリーンを通過した粒子は石英製ビーカーにて1150℃で6時間焼成し、焼成シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子についての各種の測定並びに観察結果を表5に示す。
<比較例1>
シリカエースAFG−S(三菱レイヨン製)をボールミルで粉砕し、平均粒径6μm程度に粒度調整した。二重管バーナーを用い、溶融球状シリカを調製した。溶融化条件はLPG:3.3Nm3/h、酸素:17.6Nm3/hr、シリカ供給量10kg/hrで行った。得られた溶融球状シリカを分級し、微粒及び粗粒を除去した。分級後のシリカ粒子についての各種の測定並びに観察結果を表1、2に示す。平均粒径、粒径分布は実施例3と同等であったが比表面積が2.3m2/gと、実施例3に比較し大きい。平均粒径、最大粒径が実施例3と同等であるにもかかわらず、粘度が実施例3よりも大きく、粒子の比表面積が大きいことが粘度を増大させている。
<比較例2>
実施例6で乾燥後に得られたシリカ粒子を解砕せずに石英製ビーカーにて1150℃で焼成し、焼成シリカ粒子を得た。
<比較例3>
シリカゲル粒子の解砕にステンレス製の目開き32μmのスクリーンを用いた以外は実施例6と同様にして焼成シリカ粒子を得た。
実施例1〜7で得られたシリカ粒子についての不純物含有率に関してはNa、K、Al、Ti、FeおよびZrの各元素の濃度はそれぞれ0.1ppm以下であり、UおよびThはいずれも0.1ppb以下であった。また、比較例1のシリカ粒子の不純物含有率はNa:0.4ppm、K:0.1ppm以下、Al:1.0ppm、Ti:0.1ppm、Fe:24ppm、Zr:0.1ppm以下であった。また、比較例3はFeが5ppmを示し、ステンレスによるコンタミネーションが認められた。
実施例1〜5、比較例1及び2で得られたシリカ粒子の物性を表1及び2に示す。実施例6、7及び比較例2で得られたシリカ粒子の物性を表3及び4に示す。粒径はCoulter社製LS−130を用いて測定した。平均粒径はメディアン値、最大粒径はスクリーン下が100.00%を示した粒径を表す。32μmスクリーン上は50gのサンプルを150gの純水でスラリー化し、ステンレス製スクリーンを通過させた後、スクリーン上残分を乾燥させ、測定した。20μm及び50μm隙間浸透性は幅5mm、隙間寸法20μm、長さ18mmの隙間を有する金型を75℃の温度に加熱した後、一方に測定試料を垂らし、毛細管現象により片端にまで浸透した時間を測定して、時間(分)で表示する。測定試料は油化シェルエポキシ株式会社製エピコート815とシリカ粒子をシリカ配合率65質量%(26gのシリカ粒子と14gのエピコート815を混合)で均一混合したものを用いた。樹脂配合粘度は油化シェルエポキシ株式会社製エピコート815とシリカをシリカ配合率70質量%(28gのシリカと12gのエピコート815を混合)で混合した際の粘度であり、50℃で測定した。粘度計は東機産業製RE80R型(E型粘度計)を使用した。
実施例1〜7は全て最大粒径が平均粒径の3倍以下を示した。実施例6及び7は32μmスクリーン上も0.001wt%以下であり、粒子間固結は認められなかった。また、チキソトロピー性を示すη1/η2は全て1.1以下を示した。特に平均粒径が5μm以下の実施例1〜3ではη1/η2が0.8以下を示した。さらに、平均粒径が3μm以下の実施例1、2では0.5以下を示した。
一方、火炎溶融法により調製した比較例1はη1/η2が1.3であった。スクリーンによる解砕を行わず、焼成した比較例2は最大粒径が74μm、32μmスクリーン上が3.2%と粒子間固結による粗粒が認められた。粗粒は極めて強く粒子間焼結しており、解砕不可能な状態であった。また、20μm及び50μm隙間浸透性は最大粒径が20μm以上であるため、30分間以内では浸透しなかった。
産業上の利用可能性
本発明の方法によれば、アルカリ珪酸塩水溶液を原料として、アルカリ金属及びウランなどの放射性元素等の不純物含有率が極めて低い高純度で、かつ、粗粒含量の少ない高純度球状シリカ粒子を得ることができる。
本発明の方法で得られた非孔性球状シリカは、樹脂配合時に低いチキソトロピー比を示すため、従来技術による場合に比較して、電子部品の中で特に狭い隙間に流し込むような液状封止材用充填材として好適に用いることができる。
Claims (8)
- 以下の項目を満足する平均粒径が0.1〜20μmの非孔性球状シリカ:
(a)最大粒径が平均粒径の4倍以下
(b)非孔性球状シリカとビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を質量比で70:30混合した際の粘度測定において、粘度計の回転数0.5rpmの粘度値をη1、2.5rpmの粘度値をη2とした場合、η1/η2<1.0。 - 以下の(1)〜(7)の工程を含む非孔性球状シリカの製造方法:
(1)アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として細粒状に分散させた油中水滴型(W/O型)エマルションを調製する乳化工程、
(2)(1)で調製した油中水滴型(W/O型)エマルションを15〜50質量%の鉱酸水溶液と混合し、反応後の鉱酸濃度が10質量%以上となるように球状シリカゲルを生成させる凝固工程、
(3)(2)で生成した球状シリカゲルを含む反応液を50℃以上に加熱し、不純物を抽出する抽出工程、
(4)(3)で不純物を抽出した球状シリカゲルを洗浄する洗浄工程、
(5)(4)で洗浄した球状シリカゲルを乾燥させる乾燥工程、
(6)(5)の乾燥時もしくは乾燥後に解砕する解砕工程、及び
(7)(6)で解砕した球状シリカゲルを焼成する焼成工程。 - 鉱酸として硫酸を使用し、凝固工程から洗浄工程前に硝酸及び/又は塩酸を添加することをさらに含む、請求項2記載の非孔性球状シリカの製造方法。
- 以下の(1)〜(6)の工程を含む非孔性球状シリカの製造方法:
(1)アルカリ金属及びSiを除く他の金属含有量の合計が0.1質量%以下のアルカリ珪酸塩水溶液を分散相として細粒状に分散させた油中水滴型(W/O型)エマルションを調製する乳化工程、
(2)(1)で調製した油中水滴型(W/O型)エマルションを鉱酸水溶液と混合し、球状シリカゲルを生成させる凝固工程、
(3)(2)で生成した球状シリカゲルを洗浄する洗浄工程、
(4)(3)で洗浄した球状シリカゲルを乾燥させる乾燥工程、
(5)(4)の乾燥時もしくは乾燥後に解砕する解砕工程、及び
(6)(5)で解砕した球状シリカゲルを焼成する焼成工程。 - 平均粒径が0.1〜100μmのシリカゲル粒子を最大粒径の10倍以下の目開きを有するスクリーンを用いて解砕した後、焼成することを含む焼成シリカ粒子の製造方法。
- 平均粒径が0.1〜100μmのシリカゲル粒子を最大粒径以下の目開きを有するスクリーンを用いて解砕・分級した後、焼成することを含む、焼成シリカ粒子の製造方法。
- スクリーンが樹脂製である請求項5または6記載の焼成シリカ粒子の製造方法。
- 請求項1に記載の非孔性球状シリカを含有する封止用樹脂組成物。
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