JP2941359B2 - 分散性に優れた非晶質シリカ系填料 - Google Patents

分散性に優れた非晶質シリカ系填料

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はインク、塗料、樹脂等に配合される分散性に
優れた非晶質シリカ系填料に関し、より詳細には、特定
された粒度分布を有する非晶質シリカの微粒子からなる
貯蔵安定性に優れた填料で、インク、塗料、樹脂等に配
合されても分散性を損なうことのない非晶質シリカ系填
料に関する。
[従来技術] 従来一般に微粒子の非晶質シリカは、インク、塗料、
樹脂、紙等に配合されて、タレ止め剤、艶消し剤、アン
チブロッキング剤、増量剤等としての効果を発揮する填
料として汎用されてきた。
この填料用非晶質シリカの一般的製造法としては、乾
式法と湿式法が知られている。
乾式法によるシリカは、四塩化ケイ素を酸水素炎中で
分解して得られるもので、粒径は微細であるが表面活性
は比較的小さい。
一方、湿式法によるシリカは、粒径は一般に大きく粒
度分布も広いが、その内部はポーラスで表面活性は比較
的大きい。
このように製造法により生成したシリカの物性には差
異があり、用途的にも一長一短がある。しかし、シリカ
が持つ表面活性を利用するという立場からの応用が多
く、そのため湿式法によるシリカが多く利用され、この
シリカをベースとする応用研究が盛んである。
これらの例としては、印刷インクの改質剤として、カ
チオン交換容量のあるスメクタイト型粘土を配合したり
(特公平1−50267号公報、特公平1−53706号公報)、
親水性微粉末二酸化ケイ素を顔料等の分散安定剤として
配合(特公平1−49433号公報)している。
また、塗料やインクの艶消し剤として、有機変性珪酸
及び珪酸塩を応用したり(特公昭51−31235号公報)、
高温処理され屈折率1.448より大きい微粉末状シリカ
(特公昭55−6669号公報)を用いたり、微粉状珪酸や平
均粒子径が1〜7ミクロンの範囲にある含水珪酸(特開
昭53−80397号公報、特開昭55−50093号公報、特開昭55
−50094号公報)等を用いている。
また、無延伸フイルムのブロッキング防止策として、
脂肪酸アミドを添加する方法(特公昭33−9788号公
報)、フイルムの透明性を損なわないようにアミン誘導
体で分散性を改良した水溶性無機塩を添加する方法(特
公昭43−13848号公報、特公昭43−23764号公報)、微粉
砕した無機物又は有機物、例えば、シリカ、炭酸カルシ
ウム、チタンホワイト、澱粉等の微粉末を添加する方法
(特公昭44−2085号公報)が知られている。
また、二軸延伸ポリプロピレンフイルムの耐ブロッキ
ングを向上させるために、平均粒径20ミクロン以下のゼ
オライト粉末を樹脂に0.01乃至5重量%添加する方法
(特公昭52−16134号公報)が知られているが、この方
法ではフイルムの透明性を維持することはできていな
い。
また、表面シラノール基の全部又は一部を親油性基で
置換した微粉末シリカを樹脂に0.01乃至10重量%添加し
て、透明性を損なうことなくブロッキング性を改良する
方法(特公昭49−41099号公報)も提案されている。
また、透明性を損なわず、しかも滑り性、耐ブロッキ
ング性を向上させるための見掛比重0.1〜0.2で比表面積
150m2/g以下の微粉末シリカを樹脂100重量部に対して0.
01〜1重量部配合されたポリプロピレン延伸フイルム
(特公昭63−58170号公報)が提案されている。
また一方、填料となる微粉末シリカの製法の例として
は、下記のような例が挙げられる。
ケイ酸アルカリと酸との混合物のシリカゾルが1.2秒
という短時間内でゲル化できる条件下(気体媒体中への
放出)で反応させてシリカヒドロゲルを得る方法(特公
昭48−13834号公報)が提案されている。
また、ケイ酸アルカリ水溶液と酸との混合物のシリカ
ゾルを気体媒体中もしくは水性媒体中に噴霧して球状シ
リカヒドロゲルを得る方法(特開昭63−16049)も提案
されている。
また、酸で硬化させたシリカヒドロゲルを水性酸性液
で洗浄し、pH2.5〜5のシリカヒドロゲルを生成させ、
洗浄後シリカヒドロゲルの水分含有量が20〜60重量%に
なるように乾燥、粉砕して平均粒径1〜40ミクロンの含
水シリカゲルを得る製造法(特公平2−1764号公報)が
知られている。
[発明が解決しようとする問題点] これらの非晶質シリカ系填料は、その目的とする機能
性から微細な粉末状製品であることが必須要件である。
しかし、これらインク、塗料、樹脂等に配合される粉末
状製品は製造後そのまま一貫した工程で直ちに使用され
ることはなく、一旦袋詰されて使用時まで貯蔵され、ま
たは輸送機関で運搬ちされてから使用されている。
填料用の粉末非晶質シリカ群は、こうした貯蔵や輸送
機関に付されることによって、その時の条件によっても
異なるが、荷重により圧縮され粉末粒子同志が密に詰め
られた圧密状態となる。
この圧密状態により粉末粒子は二次凝集して粗粒子を
生成してしまい、上記のインク、塗料、樹脂等の用途に
配合使用する時、この粗粒子が分散不良を起こし、例え
ば製品中にブツ等が発生し商品価値を低下させ満足した
製品を得ることができず苦慮している。
このブツの問題を解決するために、インクや塗料の場
合一般にサンドグラインダーや三本ロールを用いること
により、予め粗粉分をほぐす操作を入れるか、配合後の
インクや塗料をフィルターで濾過してから使用してい
る。
また、これらの微粉末は使用に際して粉砕したり、混
合したり、輸送したりする操作が必要であり、この操作
によって微粉末は静電気を発生するため、静電気対策も
講じておく必要がある。
一般にインクや塗料等に配合される微粉末シリカは特
定された基本物性を有していないと、塗料の艶消し効
果、ワニス中での沈降安定性、インクにおけるタレ止め
防止やチクソトロピー性等の機能性を発揮することがで
きない。
また、一般にポリプロピレンフイルム等、特に延伸フ
イルムに微粉末のケイ酸やケイ酸塩を填料として添加配
合すると、フイルム中への分散性がよくなかったり、ヘ
イズ度が高くなり透明性を低下させる。また填料の分散
性が悪い時は、フイルムにフィシュアイ等の問題が発生
している。
また、二次凝集した粗粒子が混在している填料をポリ
プロピレン等の樹脂に配合してシートやフイルムを形成
させると、分散性に劣る粗粒子は成型品中にブツとして
残り、不良製品を製造してしまうという重大な問題を起
こしている。
しかも、微粒子の非晶質シリカをポリプロピレン等の
樹脂フイルムに配合しても透明性を損なうことなく分散
性を低下させずブロッキング性を改善する優れた填料は
未だ見出されていない。
以上に示されたように、製造された直後の非晶質シリ
カ粒径は微細な粒度分布範囲にある微粒子群であって
も、袋詰貯蔵等の圧密状態に置かれた後の粒子群では二
次凝集物の粗粒子が生成し、具体的用途使用に際して、
この粗粒子のほぐれ易さや分散性に注意が払われておら
ず不良製品を出しているのが現状である。
本発明の目的は、非晶質シリカの微細粒子群が袋詰さ
れて貯蔵もしくは輸送で圧密状態に置かれて二次凝集物
(粗粒子)が発生しても、配合使用に際して製品中に容
易に分散する微粒子の非晶質シリカを提供するにある。
[問題点を解決するための手段] 本発明によれば、コールター・カウンター法で測定し
た二次粒子の粒径8μm以下の粒度のものが全体の95重
量%以上であり、電子顕微鏡写真で測定した粒径3μm
以下の粒度のものが全体の10重量%以下である粒度分布
を有し、且つ100乃至500m2/gのBET比表面積、0.80乃至
2.50cc/gの細孔容積及び0.10乃至0.30g/mlのかさ比重を
有する微粒子であることを特徴とする分散性に優れた非
晶質シリカ系填料が提供される。
さらに本発明によれば、必要に応じて該微粒子の非晶
質シリカがアニオン系界面活性剤、好適には前記アニオ
ン系界面活性剤がポリカルボン酸型高分子化合物でコー
ティング処理されていることを特徴とする非晶質シリカ
系填料が提供される。
[作 用] 本発明は、コールター・カウンター法で測定した二次
粒子の平均粒径8μm以下の粒度のものが全体の95重量
%以上と微細でありながら、電子顕微鏡写真で測定した
時の粒径3μm以下の超微粒子が全体の10重量%以下と
少ない粒度分布を有する非晶質シリカの微粒子群を製造
すると、この非晶質シリカの微粒子群は袋詰保管等によ
る荷重で二次凝集して粗粒子が生成しても、この粗粒子
はインク、塗料、樹脂等に配合した時に容易に分散し、
持てる機能性を充分に発揮するという発明に基づいてい
る。
しかも、この非晶質シリカが、100乃至500m2/gのBET
比表面積、0.80乃至2.50cc/gの細孔容積および0.10乃至
0.30g/mlのかさ比重を有している時は、インクにおける
タレ止め効果を発揮し、塗料における艶消し効果を発揮
し、成型されたフイルムの透明性を損なうことなくブロ
ッキング性を防止するという発明に基づいている。
しかもなお、本発明の非晶質シリカの微粒子は必要に
応じてポリカルボン酸型高分子化合物等で代表されるア
ニオン系界面活性剤でコーティング処理されていること
により、袋詰保管等による荷重で起きる二次凝集で生成
した粗粒子の分散不良を有効に改善するという発明に基
づいている。
本発明においては粒子の粒径測定にコールター・カウ
ンター法を採用し粒度分布を表わした。一般には粒子の
粒度分布は、ストークスの法則による沈降法で測定され
ており、これに光走査法を駆使して分析されている。
本発明で採用したコールター・カウンター法はコール
ター原理と呼ばれている電気抵抗法を利用した測定法で
ある。装置・操作は、電解液に懸濁させた粉末試料をア
バチャー・チューブに採り、このアバチャー・チューブ
の細孔の両側に置かれた電極間に電流を流し、懸濁試料
の粒子をマノメータで吸引して細孔を通過させ、この通
過の際に生ずる粒子体積に相当する電解液の置換を両電
極間に生ずる電気抵抗で求められるようにできている。
この電気抵抗の変化から粒子の計数とサイズが分析でき
るようになっている。
粒度の定義に固定した絶対的なものはなく、また一義
的に定義することは難しく、粒度(粒径)は何らかの平
均的な代表長さを持って表わされている。また、平均粒
径とは2種以上の粒径を持つ粒子群の代表径のことをい
い、50%粒径をメジアン径として表わしている。
本発明の非晶質シリカ(A)の粒子群は、コールター
・カウンター法で測定した時の粒径上限が8μm以下で
ある粒子が95重量%以上を占めており、一方、電子顕微
鏡で観察測定した時の粒径上限が3μm以下である粒子
が10重量%以下と少ない。即ち本発明の粒子群は、約8
μm以下の微細な粒子でありながら、3μm以下の超微
細な粒子も大変少なく制御された粒子群である。
これに対して、非晶質シリカ(B)は粒径3乃至8μ
mの微粒子の外に粒径3μm以下の超微細な粒子が混在
する、即ち大小の粒子が混ざった一般的な粒度分布構成
をした粒子群である。
添付図面第1図は、後述する実施例記載の方法で調製
した本発明の非晶質シリカ(A)の電子顕微鏡写真であ
り、第2図は、後述する比較例記載の方法で調製した一
般的な非晶質シリカ(B)の電子顕微鏡写真である。
この電子顕微鏡写真によれば、本発明の非晶質シリカ
(A)は粒径が3乃至8μmの範囲で揃っているが、比
較例の一般的非晶質シリカ(B)では粒径3乃至8μm
の外に粒径3μm以下の小さい粒子が多く混在している
粒子群であり、非晶質シリカ(A)と非晶質シリカ
(B)との粒子群粒度分布に差異があることが容易に理
解される。
以上の微粒子群が袋詰され、この袋詰粒子群に荷重が
加えられて圧密状態になると、粒子同志の接近と共に粒
子と粒子との間の空間は次第に狭くなり窮屈な状態とな
る。
大小粒子が混在している非晶質シリカ(B)群が圧密
状態に置かれると、大きい粒子同志の間にある空間も狭
くなると共に、混在している小さい粒子はこの大きい粒
子間の狭くなった空間に追いやられ、この空間を埋める
ように詰まっていき、粒子群内の空間は急速に減少す
る。その結果、粒子群の構成は空間が極度に少ない細密
充填状態となり、同時に大小の粒子同志による接触点は
面に匹敵する位いに多くなる。
これに比べて非晶質シリカ(A)のように粒径が3乃
至8μmの範囲に揃った粒度分布を有し、超微粒子を伴
わない粒子群が圧密状態に置かれると、粒子同志は接近
するが、粒子と粒子の間に残る空間はその間を埋める粒
子が存在しないため、そのまま空間として多くを残し、
また粒子同志の接触点も少なく点接点の状態で終る。こ
の状態は、丁度野球ボールを箱に積めた時に似ている。
以上のように粒子群を構成している粒度分布によって
圧密状態に置かれた時の粒子群の空間容積量と粒子同志
の接触点に大きな差異が生ずる。
即ち、揃った粒子で構成されている非晶質シリカ
(A)のような場合、粒子間空間は多く、粒子の接触点
は少ない粟おこしのような状態となり、凝集エネルギー
が小さいもろいブロックとなる。
これに対して、大小粒子が混在している非晶質シリカ
(B)のような場合、粒子間の空間は頗る少なく、粒子
の接触点は大変多い緻密な混合砂のような状態となる。
ましてや表面活性の大きいシラノール基同志が圧密接触
し、この時の接点が多い程可及的に凝集エネルギーが大
きくなり、ほぐれにくいブロックとなる。
以上のように粒子群を構成している粒度構成によっ
て、その粒子群に加えられた荷重により生成する凝集エ
ネルギーに大小の差を生じ、この凝集エネルギーの大小
に応じてインク、塗料、樹脂等に配合した時の粒子群の
分散性が決定されてくるものと思われる。
事実、後述する実施例で示すように、一定条件で圧密
状態を与えた粒子群の分散性試験結果も、粒子群が有す
る粒度構成とワニス等に配合した時の分散性との関係を
よく示している。
即ち、圧密状態を与えた非晶質シリカ(A)の粒子群
は分散性試験でのブツ発生が少なく良好な分散性を示す
のに対して、同じ条件で圧密した非晶質シリカ(B)の
粒子群ではブツ発生が多く分散性が頗る劣る結果が示さ
れている。
また、以上の現象は、後述する実施例の圧密状態を与
えた後の粒子群のかさ容積減少率を測定した結果からも
充分理解される。即ち、本発明の特定された粒度構成を
有する非晶質シリカのかさ容積減少率は小さく、密に詰
まりにくいことを示しているが、比較例の非晶質シリカ
の場合、かさ容積減少率は大きく、空隙が密に締まって
いることを示している。
従って、圧密状態が与えられた非晶質シリカを使用せ
ねばならない時に、該微粒子の分散性を良好状態に維持
するためには、微粒子群の粒度構成を微細な粒子を含ま
ない揃った粒度分布の粒子群に調製しておくことが必要
である。
また、非晶質シリカ等の微粒子の付着力と分散性に関
しては、一般にも研究が進められており、例えば、重質
炭酸カルシウムでの研究結果(山本英夫等 粉体工学会
誌 26巻159頁 1990年 参照)においても、適当な分
散助剤で粒子表面を改質してやることが付着・凝集性の
強い粉体でも一次粒子にうまく分散させることが可能で
あることを示唆している。
本発明の非晶質シリカにおいても、表面改質剤として
アニオン系面活性剤、特に特殊なポリカルボン酸型高分
子化合物を選び、非晶質シリカの表面にコーティング処
理することによって、袋詰荷重による二次凝集から生成
する粗粒子の発生を防止し、インク、塗料、樹脂等に配
合した時の分散性をさらに向上改善できることは実施例
からも明確である。
このように微粉末シリカを特殊なポリカルボン酸型高
分子化合物等でコーティング処理することによって、二
次凝集等による粗粒子の発生が防止され、インク、塗
料、樹脂等への分散性を改善するだけでなく、帯電防止
効果も発揮する。したがって、これら微粉末の取り扱い
で発生する静電気による粉塵爆発を有効に防止すること
ができる。
填料用非晶質シリカ微粉末を、インク、塗料、樹脂等
に配合して、インクのタレ止め効果、塗料の艶消し効
果、シートやフイルム状の樹脂成型品のブロッキング防
止効果を有効に発揮するためには、本発明の非晶質シリ
カが次の物性を有していることが大切である。
本発明の非晶質シリカは比表面積がBET法で測定し
て、100乃至500m2/gの範囲にあることが重要である。BE
T比表面積が500m2/gより大きくなるとフイルムの透明性
を維持することができず、一方100m2/gより小さくなる
とシリカ粒子がかさ高いものとなり、インク、塗料、樹
脂等への配合操作が困難となる。
また本発明の非晶質シリカは、細孔容積が0.80乃至2.
50cc/gの範囲にあること、特に、粒子自身の持つ構造性
マクロポアが上記の範囲にあることが、インク、塗料、
樹脂等に添加された他の機能性材料、特に可塑剤等の液
状配合剤を有効に分散させて機能させる上で重要であ
る。
これらの細孔容積は、BET法による測定からも求める
ことが可能であるが、構造性マクロポア(75〜75000
Å)の細孔容積を求めるには水銀圧入法による測定が有
効である。、 特に本発明の非晶質シリカは、このマクロポアの細孔
容積が0.80cc/gより小さい時は、同時に配合される、例
えば液状もしくは溶融状態の配合物を充分に吸着吸収す
ることができず、これら配合剤を有効に分散させること
が難しい。
一方細孔容積が2.50cc/gより大きくなると非晶質シリ
カの見かけ比重が大きくなりインク、塗料、樹脂等への
分散作業が困難になると共にシリカへの気体等の吸着も
大きくなり、樹脂類に配合した時にフイルムの透明性が
低下してくる。
本発明の非晶質シリカは、かさ比重が0.10乃至0.30g/
mlの範囲にあることが重要である。かさ比重が0.10g/ml
より小さい時は、非晶質シリカのかさが大きくなり配合
材料としての取扱が難しくなる。一方、かさ比重が0.30
g/mlより大きい時は、樹脂類に配合した時のフイルム透
明性や他の機能性を低下させてしまう傾向がある。
[発明の好適態様] 本発明の非晶質シリカの製造法は、下記に示す方法で
製造された非晶質シリカを乾式の風力法による特殊分級
装置で分級して超微粒子部分を除去することによって製
造することができる。
非晶質シリカの製造方法は、原料となるケイ酸アルカ
リと鉱酸との接触混合により中和反応させてヒドロゲル
を生成させ、このヒドロゲルを解砕し、さらに熟成して
から反応によって副生した塩類を洗浄除去した後、乾
燥、粉砕、分級することを基本としている。
原料のケイ酸アルカリは、工業製品としてJISに規格
されている水ガラスのケイ酸ソーダやケイ酸カリ、さら
には酸性白土等の粘土質原料より回収した易反応性のシ
リカにアルカリ金属の水酸化物溶液を反応させたケイ酸
アルカリ等を使用することができる。
中和反応に用いる鉱酸は、塩酸や硫酸等が一般に使用
されるが、これらの混酸を使用することもできる。
両原料の接触による中和反応は、両原料のどちらか一
方の原料をもう一方の溶液中に撹拌下に添加する方法
や、両原料溶液を一定条件下に同時に接触させる方法が
ある。いずれにしても混合反応物のpHをどの範囲に調整
するかによって、目的とする非晶質シリカの表面積や細
孔容積をコントロールしている。この反応時のpH範囲の
設定と物性との関係は、予め行う予備実験によって容易
に決定することができる。
本発明で特定された粒度分布を持つ非晶質シリカは、
乾燥された非晶質シリカをジェットミル等の乾式粉砕機
により粉砕し、次いで乾式分級装置に付することによっ
て製造することができる。
乾式分級装置としては、重力分級機、遠心分級機、慣
性分級機等が挙げられる。しかし、超微粒子を効率よく
分級除去するには噴流によるコアンダ効果を利用した気
流分級機を用いることが好適である。
かくして、コールター・カウンター法で測定した二次
粒子の平均粒径8μm以下の粒度のものが全体の95重量
%以上であり、しかも電子顕微鏡写真で測定した粒径3
μm以下の粒度のものが全体の10重量%以下である粒度
分布を有し、且つ100乃至500m2/gのBET比表面積、0.80
乃至2.50cc/gの細孔容積および0.10乃至0.30g/mlのかさ
比重を有する非晶質シリカの微粒子が製造される。
本発明の非晶質シリカの微粒子は、アニオン系界面活
性剤、特にアクリルマレイン酸系の特殊なポリカルボン
酸型高分子化合物でコーティング処理されることが本発
明の目的を達成する上で有効である。
通常コーティング処理は上記非晶質シリカの製造工程
における乾燥された非晶質シリカを粉砕機により粉砕す
る際に所要量の界面活性剤を添加して粉砕することによ
り達成される。また、洗浄後のシリカヒドロゲルを乾燥
する前に予め所要量の界面活性剤を添加する方法も可能
である。
非晶質シリカの微粒子に対するポリカルボン酸型高分
子化合物の使用量は、非晶質シリカの微粒子100重量部
に対して0.01乃至0.2重量部、好ましくは0.02乃至0.18
重量部の範囲が適している。0.2重量部より多くても特
別な添加効果は認められず経済的でない。
本発明の非晶質シリカが添加配合される塗料ビヒクル
としては、有機溶媒に溶解させたアクリル樹脂、塩化ビ
ニール樹脂、アルキッド樹脂、フタル酸樹脂、ウレタン
樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、
尿素樹脂、ニトロあるいはアセチルセルローズ等、合成
樹脂、合成ゴム等のエマルジョンあるいはラテックス、
塗料または水性塗料等を挙げることができる。また、所
望に応じて適宜着色料や他の顔料を加えることができ
る。
本発明の非晶質シリカが添加配合されるインク特に印
刷インクとしては、凸版、平版、凹版、グラビヤ版等そ
れぞれの版に用いるインク配合されたワニスに常法の混
合方法で配合することができる。
本発明の非晶質シリカが添加配合される対象樹脂類と
しては、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン・
オレフィン共重合物、エチレン・酢酸ビニル共重合物、
エチレン・ビニルアルコール共重合物、ポリ塩化ビニー
ル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン(ポリアミド)、ポ
リエチレンテレフタレイト等のフイルムやシート等に使
用されている汎用樹脂を挙げることができる。特に本発
明の填料は、フイルムやシート等の樹脂成型品におい
て、透明性を損なうことなく滑り性、耐ブロッキング性
を改善するために有効に使用される。特にポリプロピレ
ン、ポリエチレン、プロピレン・オレフィン共重合物等
に好適に使用することができる。
樹脂類のフイルムやシートは、未延伸のもの、延伸の
もの(少なくとも一方に延伸された)の何れにも好適で
ある。
本発明の填料のインクに対する配合量は、用いるイン
クの種類や使用する版形式によっても異なるが、インク
ワニス100重量部に対し、0.5乃至8重量部、好ましくは
0.7乃至7重量部である。
本発明の填料の塗料に対する配合量は、塗料の種類や
用途によって異なるが、塗料のワニスやビヒクル100重
量部に対し、0.8乃至10重量部、好ましくは1乃至9重
量部である。
本発明の填料の樹脂に対する配合量は、用いる樹脂や
その用途目的によって異なるが、樹脂100重量部に対し
0.01乃至1重量部、好ましくは0.05乃至0.5重量部であ
る。上記配合において填料が0.01重量部より少ない時
は、滑り性、耐ブロッキング性等の効果が充分に発揮さ
れず、一方1重量部を上回る時は滑り性、耐ブロッキン
グ性が改善されても透明性が損なわれれて好ましくな
い。
本発明の非晶質シリカが配合されたインク、塗料、樹
脂のフイルムやシートには、本発明の填料以外に、種々
の添加剤例えば、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、帯
電防止剤、可塑剤、着色剤などを適宜配合することがで
きる。
本発明の填料をインク、塗料、樹脂等に配合する方法
は、等業界で通常行われている他の添加剤の添加配合方
法と同様にして行うことができる。
[発明の効果] 本発明の填料は上記した通り、特定された粒度分布か
ら成る粒子群であることから、この粒子群が圧密状態に
おかれて二次凝集による粗粒子が生成しても、配合され
たインク、塗料、樹脂等中で分散性が良好で、従って、
分散性低下による製品の不良発生というトラブルを有効
に解消する。
また、本発明の填料は、前記した粒度分布に加えて非
晶質シリカの微粒子が、100乃至500m2/gのBET比表面
積、0.80乃至2.50cc/gの細孔容積および0.10乃至0.30g/
mlのかさ比重を有しているために、インク、塗料、樹脂
類に配合された時に、インクのタレ止め、塗料の艶消
し、シートやフイルム状の樹脂成型品のブロッキング防
止等に優れた効果を発揮する。
また、本発明の非晶質シリカの微粒子は、必要に応じ
て特殊なポリカルボン酸型高分子化合物で代表されるア
ニオン系界面活性剤でコーティング処理されることによ
り、圧密状態で発生する二次凝集による分散不良を有効
に改善し、インク、塗料、樹脂等への分散性が改善され
る。
[実施例] 非晶質シリカ系填料の調製方法 下記の方法で三種類の非晶質シリカを調製し、下記の
方法により基本物性を測定し、その結果を第1表に併せ
表示する。
I.非晶質シリカ(A) シリカ原料に酸性白土を原料として酸処理により塩基
性成分を除去した易反応性シリカにカセイソーダを反応
させて調製した、SiO2 22.5%、Na2O 7.18%、Al2O3 0.
03%、比重1.294組成のケイ酸ソーダ溶液を用い、一方
中和反応剤に市販工業用硫酸を用いて調製したH2SO4 40
%濃度(比重1.35)の硫酸溶液を選んだ。このケイ酸ソ
ーダ溶液4を5乃至6/min.の速度で、硫酸溶液1
を1乃至2/min.の速度で注加して接触反応させ、p
H2.0乃至3.5の範囲になるように調製し、撹拌下に同条
件で熟成を約2時間行ってシリカヒドロゲルを生成せし
める。
生成したシリカヒドロゲルをゴムロールを用いて2〜
5mmの大きさに解砕する。次いで、この解砕ゲルを水洗
し、この水洗によりヒドロゲルの煮沸pHが6.2乃至6.6で
比抵抗が50,000Ωcm以上になるように洗浄する。この時
のヒドロゲルの水分は72.0%であった。
洗浄済みのシリカヒドロゲルを加圧下の130℃で4時
間熟成し、次いで350℃の熱風を用いて乾燥し、乾燥さ
れたシリカゲル(GA)を回収する。この乾燥シリカゲル
をジェットミル方式乾式粉砕機で粉砕し、次いでコアン
ダ効果を利用した噴流式気流分級機(エルボージェット
・クラッシャファイヤー;日鉄鉱業(株)製)で超微粒
子を除去し粒度分布の特定された非晶質シリカ(A)を
調製した。
II.非晶質シリカ(AA) 上記の方法で調製された乾燥が終了したシリカゲル
(GA)を粉砕するに先立って、アニオン系界面活性剤で
あり、特殊ポリカルボン酸型高分子化合物の“デモール
EP"(花王(株)製、商品名、固形分濃度25重量%)を
シリカ(SiO2)に対して0.1乃至0.25重量%を加え、ジ
ェットミル方式で粉砕と同時に非晶質シリカのコーティ
ング処理を行い、非晶質シリカの表面改質を行い、上記
と同様に分級により超微粒子を除去して、界面活性剤に
よるコーティング処理された非晶質シリカ(AA)を調製
した。
III.非晶質シリカ(B)[比較例] 特開昭53−50093号公報記載の実施例における含水珪
酸微粉末の製造法に準拠して調製した。
即ち、モル比3の市販ケイ酸ソーダを希釈して(SiO2
0.66〜0.80mol/を50)、加熱可能な反応槽に入れ
て撹拌する。該反応槽に濃度2.2mol/の硫酸1.5を約
5分間で注加する。硫酸注加後温度を90〜95℃に上昇さ
せ、この温度で上記と同濃度の硫酸3.5をさらに加え
て撹拌し、同じ温度で10分間熟成する。熟成後、フィル
タープレスを用いて濾別し、ここに得られたケーキを再
度水中に分散させ、再度フィルタープレスでの濾別を繰
り返し、水分82%のケーキ50kgを回収する。このケーキ
を気流乾燥機で乾燥し、次いで気流粉砕機で微粉砕して
非晶質シリカ(B)を調製した。
基本物性の測定方法 I.二次粒子の粒径 米国コールタールエレクトロニックス社製のコールタ
ーカウンターTA−II型装置を用いて、次の条件で二次粒
子の粒径を測定した。(原理・装置・操作の基本は前記
の通り) 試料約0.5gを200mlのビーカーに採り、純水約150mlを
加え、超音波装置(ULTRASONIC CLEANER B−220)を用
いて超音波を60〜90秒間加えて分散させる。該分散液を
特殊電解液(ISOTON II)150mlにスポイトで数滴加えて
懸濁させて、コールターカウンター装置のアパッチャー
チューブに採り、電極間に電流を通じ、懸濁試料の粒子
を吸引して細孔を通過せしめ、電極間に生じる電気抵抗
の変化から粒子の計数とサイズを求める。
アパッチャーチューブサイズ50μmでは測定粒子径1
〜20μmであり、アパッチャーチューブサイズ100μm
では測定粒子径2〜40μmである。
II.電子顕微鏡写真による粒径 メタルコーティング装置(日立製E−101形イオンス
パッター)を用いて、備え付けの金属板上に粉末試料を
載せて金属コートして、電子顕微鏡観察用投影試料を調
製する。
走査型電子顕微鏡(日立製S−570)で、視野を変え
て数枚の電子顕微鏡写真を撮る。撮った写真から平均的
視野を選び、視野中粒子像の直径を測定し、電子顕微鏡
による粒径とした。
III.BET比表面積 比表面積は自動BET比表面積測定装置(CARLOERBA社製
Sorptomatic Series 1800)を用いて、下記に示す条件
で調製した試料を窒素吸着法によるBET法で測定した。
測定法は、次の文献を参照にした。
S.Brunauer,P.H.Emmett and E.Teller. J.Am.Chem.Soc.,60,309(1938). IV.細孔容積 水銀圧入式によるポロシメーター(CAROL ERBA社製AG
−65型)を用い、試料0.1〜0.5gを3tで加圧成型後、150
℃で2時間乾燥し、試料容器中で脱気後水銀を圧入し
て、75乃至75000Åのポアサイズを測定し、細孔容積と
した。
V.かさ比重 JIS K 6220の6・8項に記載の方法で測定した。
VI.圧密後の粒子群分散性 微粉末試料100gをビニール製袋に採り、約3×6cm2
広げてガラス板上に載せ、その上に2kgのガラス板を載
せて圧密状態を作り、一定時間毎にサンプリングし、こ
の圧密により生成した粒子群の分散性を測定した。粒子
群の分散性はJIS−K5400(塗料一般試験法)に記載され
ている“つぶゲージ法”[4.4(5)A法]で測定し、
つぶ分布標準図と照合して目盛(ゲージ)30より低い目
盛り内に生成しているiつぶ”の数(個数)を数え、こ
のつぶの数が少ない程、粒子群の分散性が良好と評価し
た。
VII.圧密後のかさ容積変化 上記VI項記載と同等の条件で微粉末試料に69日間圧密
状態を与え、この圧密後の試料のかさ容積(V1)と圧密
前の試料のかさ容積(V0)とを振動法による見掛け比重
測定法で測定した。見掛け比重測定は、試料30gをシリ
ンダーに採り、このシリンダーに30分間振動を加えた時
の容積を読み取る方法で行った。圧密後のかさ容積の変
化は、圧密状態を与えたことによるかさ容積の減少率
(VD)を下記式で求めた。
填料を応用した時の各種試験評価法 非晶質シリカからなる填料をインク、塗料、樹脂に配
合した時に発揮される諸機能性の評価を下記試験によっ
て行った。なお、この試験では、前記基本物性の“圧密
後の粒子群分散性”試験に用いた60日間圧密状態に置か
れた試料を用いた。その結果を第2表に併せて表示す
る。
I.艶消し効果試験法 塗膜形成剤としてアクリルラッカー[アクリック#14
00(黒)関西ペイント製]を用い、このラッカー100重
量部に試料非晶質シリカを1、2および3重量部と変量
して添加配合し、デスパー分散機を用いて2500rpmで5
分間かき混ぜて分散させ、予め溶剤で脱脂したガラス板
(厚さ2mm)の上にフイルムアプリケーターを用いて3
ミルの塗膜厚に塗布し、室温に2時間放置した後、60゜
光沢率(%)をデジタル光沢度計(村上色彩研究所製GM
−3D型)で求め、この光沢率%が小さい程艶消し効果が
あるとした。
II.かすみ度(Haze) 下記の方法で試料が配合されたフイルム4枚を重ねて
かすみ度計(日本電色工業(株)製)を用い、JIS K−6
714記載の方法に準拠してヘイズ値を透明性(%)で測
定し、この時の数値が小さい程透明性良好と評価した。
フイルムの調製方法: メルトインデックス1.9g/10分なるプロピレン単独重
合体100重量部に対して、試料の非晶質シリカ0.1重量部
を添加混合し、造粒機によりペレットとした後、樹脂温
度280℃で溶融押し出しを行い、40℃の冷却ロールにて
急冷することにより厚さ0.6mmのシートとした。得られ
たシートを縦延伸機のロール周速度差により延伸温度14
0℃で縦方向に4倍延伸し、引き続きテンター式延伸機
で延伸温度155℃で横方向に7倍延伸し、140℃で熱処理
を行い、厚さ約20μmの2軸延伸フイルムとした後、片
面をコロナ処理を施した。
III.ブロッキング性 上記方法で調製したフイルムを10×50cmの長方形に二
枚切り取り、この二枚を4cm2が重なり合う用に重ね、40
℃の雰囲気で40時間5kg相当の荷重を加える。この荷重
処理されたフイルムをせん断剥離に付し、その最大荷重
を測定して、この値が小さい程耐ブロッキング性良好と
評価した。
IV.フィッシュアイの発生 上記方法で調製したフイルムは、その表面を観察する
と各種のボイドやクレーズといわれるフィッシュアイの
発生が観察される。このフィッシュアイの観察方法とし
ては、偏光顕微鏡等で観察した図よりコンピューター処
理して立体図形とする方法もあるが、本明細書ではフィ
ッシュアイの大きさが100μm以上のものを「大」と
し、100μm未満のものを「小」として、その個数を光
学顕微鏡(80倍)下で測定して、フイルム1000cm2中の
個数に換算して表わした。
以上の結果、比較例の非晶質シリカの場合、ワニス中
への分散性が悪く、ブツやフィッシュアイの発生がある
が、特定された粒度分布を有し、圧密状態を与えた後の
かさ容積変化の小さい本発明の非晶質シリカは、圧密状
態に置かれた後でもワニス等に容易に分散し、粗粒分等
によるブツやフィッシュアイの発生が少ないことがよく
理解される。
【図面の簡単な説明】
第1図および第2図は、それぞれ本発明の非晶質シリカ
群および比較例の非晶質シリカ群の電子顕微鏡写真(倍
率5000倍)による粒子構造図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小野 金一 新潟県北蒲原郡黒川村大字下館178 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01B 33/18 C09C 1/30

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コールター・カウンター法で測定した二次
    粒子の粒径8μm以下の粒度のものが全体の95重量%以
    上であり、電子顕微鏡写真で測定した粒径3μm以下の
    粒度のものが全体の10重量%以下である粒度分布を有
    し、且つ100乃至500m2/gのBET比表面積、0.80乃至2.50c
    c/gの細孔容積及び0.10乃至0.30g/mlのかさ比重を有す
    る微粒子であることを特徴とする分散性に優れた非晶質
    シリカ系填料。
  2. 【請求項2】前記微粒子がアニオン系界面活性剤でコー
    ティング処理されていることを特徴とする請求項1記載
    の非晶質シリカ系填料。
  3. 【請求項3】前記アニオン系界面活性剤がポリカルボン
    酸型高分子化合物であることを特徴とする請求項2記載
    の非晶質シリカ系填料。
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