JP4036722B2 - 高純度球状シリカ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度球状シリカおよびその製造方法に関する。本発明に係る高純度球状シリカは、表面平滑性に優れて真球度が高く、特に高密度集積回路電子部品の封止用樹脂組成物(以下、封止材という)の充填材として好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
近時、集積回路の高密度化に伴い、封止材中に占めるチップ面積の割合が増大すると共に、パッケージの薄型化が進んでいる。薄い封止材でチップを保護できるよう、封止材の品質に対する要求はますます厳しくなっている。シリコンチップと封止材のそれぞれの熱膨張率の差によって熱応力が生ずるため、封止材の耐熱応力性が要求される。そこで、封止材の熱膨張率をシリコンチップのそれにできるだけ近づけるために、熱膨張率の小さいシリカを充填材としてできるだけ充填率を高めて樹脂に加える方法が採られている。
【0003】
従来、充填材用シリカとしては、粉砕して製造された、形状が不規則で鋭い角を有する破砕体シリカが用いられていた。しかし、破砕体シリカの充填率を高めた封止材は、その粘度が高まるために成形時の流動性が悪化し、所要の特性を有する均質なパッケージが得られない。また、鋭い角を有する破砕体シリカは、成形用金型を摩耗させると共に、チップ表面の保護皮膜を突き抜けてチップ上のアルミ配線を傷つける恐れがある。このようなことから、封止材の流動性を低下させることが少ない、鋭い角の無い高純度球状シリカが求められた。
【0004】
従来、高純度球状シリカの製造方法としては;
1) 高純度シリカの破砕体を火炎中で溶融する方法。(たとえば、特開昭58- 145613号公報).2) アルキルシリケートを加水分解して得られたゾル状溶液を加熱媒体中に噴霧して造粒乾燥し、次いで火炎中で溶融する方法。(たとえば、特開昭58- 2233号公報).3) シリコンアルコキシドを加水分解して得られた部分縮合体ゾルからアルコールを除去した後、これを分散させて沈澱したシリカゲルを焼成する方法。(たとえば、特開昭63- 225538号公報).などが提案されている。これらの従来技術におけるシリカの焼成においては、シリカの疎水化や焼成体の強度等を考慮して、細孔容積が 0.01 ml/g以下になるまで完全に焼成が進む条件が採用されていた。
【0005】
更に、高密度集積回路電子部品のソフトエラーの発生を防止するため、使用する封止材用充填材の高純度化が求められている。これらの要求に応えるものが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、放射性物質などの不純物の含有率が低い、高純度球状シリカである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
球状シリカの製造法としての前記、従来の方法はそれぞれ次の問題点を有している。1)の方法で得られる粒子は、真球性に劣り、流動性向上には有効でない。2)の方法では、ゾル液の状態によって噴霧時に生成するシリカ粒子の大きさが異なり、所望の粒径の球状シリカ粒子を得ることがむずかしい。
さらに2)または3)の方法で得られた球状シリカ粒子は、焼成すると大巾に収縮して表面に凹凸を生じ、表面平滑性に劣る粒子となる。表面平滑性の低下は流動性の低下を招くので、好ましくない。また、2)および3)の方法は、使用される原料が高価であると共に、原料由来の有機物を含む排水が発生しその処理を必要とする。
【0007】
従来方法による球状シリカは、封止材中の充填率を高めた際にもたらされる封止材の流動性の悪化を、破砕体シリカに比して、ある程度防ぐことはできるが、その効果は充分でない。このようなことから、封止材用充填材として望ましい、真球状でかつ表面平滑性に優れた球状シリカが強く求められている。
【0008】
本発明の目的は、封止用樹脂に対する充填率が60〜90重量%の範囲で配合しても封止材の流動性を低下させることが少なく、かつ、放射性およびイオン性の不純物の含有率が低い、電子部品の封止材用充填材に適した高純度球状シリカおよびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来法における問題点を改善するために研究を行なった結果、アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として含むエマルジョンと鉱酸水溶液を分散相として含むエマルジョンとを混合して球状シリカゲルを生成させ、得られた球状シリカゲルを鉱酸で処理して球状含水シリカを得、これを加熱処理することによって球状シリカの真球度および表面平滑性を制御することができ、封止材用充填材に適した高純度球状シリカが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、「アルカリ珪酸塩水溶液と鉱酸水溶液をともにエマルション状態で混合することにより球状シリカゲルを調製した後、1050〜1200℃の範囲で焼成することにより製造された高純度球状シリカであって、放射性物質の含有率が1ppb以下、シリカを煮沸浸出した抽出水の電気伝導度が10μS/cm以下、真球度が 0.9〜1.0 である粒子の含有率が90%以上であり、粒子の粒径d[μm]に対応する比表面積の理論値2.73/d[m2/g]に対してBET法による比表面積の測定値の倍率が3以下である高純度球状シリカ」を要旨とする。
【0011】
本発明の高純度球状シリカは、アルカリ珪酸塩水溶液を原料として用いて球状シリカゲルを調製した後、更に、特定温度1050〜1200℃の範囲で焼成することにより製造された高純度球状シリカであることを前提とする。
【0012】
そして本発明の高純度シリカは、放射性物質の含有率が1ppb以下、シリカを煮沸浸出した抽出水の電気伝導度が10μS/cm以下、真球度が 0.9〜1.0 である粒子の含有率が90%以上であり、粒子の粒径d[μm]に対応する比表面積の理論値2.73/d[m2/g]に対してBET法による比表面積の測定値の倍率が3以下の値であることを特徴とするものである。
【0013】
シリカに通常含まれる放射性物質はU,Th などであるが、本発明の高純度球状シリカでは、これらの含有率は、少ないことが好ましく、1ppbを超えてはならない。1ppbを超えると、ソフトエラー発生の原因となり好ましくない。
【0014】
一方、Na,K,Liなどのアルカリ金属、Ca,Mg などのアルカリ土類金属およびClなどのイオン性の不純物は、アルミニウム配線を腐食する原因となるので、本発明の高純度球状シリカでは、これらの不純物を実質的に含有していないことが望ましい。
【0015】
これらの不純物の含有率は、適宜の分析手段により直接測定することができるが、本発明では、シリカを煮沸浸出した抽出水について測定した電気伝導度を、イオン性不純物含有率の指標とした。これは、製品の品質特性として直接利用できると共に、直接分析するよりも簡便かつ明瞭であり、更に、品質評価法としては極めて厳しい方法である。
【0016】
シリカを煮沸浸出した抽出水の電気伝導度は、試料シリカ10.0gを純水 100mlに添加し、これを 160℃で20時間煮沸して得られた抽出水を検体として、25℃において測定する。本発明の高純度球状シリカにおいて、この値は10μS/cm以下であることが必要である。
【0017】
本発明において規定する真球度は、一つのシリカ粒子における最大直径に対する最小直径の比によって表わされる。真球度の値は、シリカ粒子の電子顕微鏡写真において、ランダムに20個の粒子を選んで、それぞれの最大直径と最小直径を測定して算定する。
【0018】
本発明の高純度球状シリカは、その真球度の値が 0.9〜1.0 の範囲にある粒子の含有率が90%以上である。真球度が 0.9未満である粒子は、電子顕微鏡写真を見ても真球からのずれが大きい。このようなシリカ粒子を充填材として用いた封止材は、成形時の流動性がよくない。
【0019】
本発明において本発明の高純度球状シリカの粒子表面の平滑度の尺度として、比表面積を用いる。一般に、直径がd(μm)であり、細孔を有しない真球体の比表面積SAは、その真比重がDであるとき、次の式(I) によって表わすことができる。
式(I): SA,(m2 /g)=6/(d×D)
【0020】
式(I) から、直径がd(μm)であり、真比重が 2.2であるシリカの真球体の比表面積SA (m2 /g)は、次式(II)で表わされるから、たとえば、直径が10μmであるシリカ球体の比表面積の理論値は、およそ 0.27 m2 /gとなる。
式(II): SA= 2.73 /d
【0021】
封止材用充填剤として用いられる球状シリカは、通常、焼成により細孔の閉孔化処理が施されているので、その比表面積の測定値の理論値からのズレの大きさで平滑性を評価することができる。たとえば、火炎溶融法によって調製された球状シリカ粒子の表面には、高温の火炎により蒸発したSi蒸気の再凝結によって形成された微小球または凹凸面が多く存在し、直径10μmの溶融粒子の比表面積は1m2 /gを超えて、通常、約2m2 /gである。このような粒子を充填剤として使用した封止材は、成形時の流動性はなお不充分である。
【0022】
本発明の球状シリカの比表面積は、理論値の3倍以下の値であり、電子顕微鏡写真からも表面平滑性に優れることが判る。本発明の球状シリカを充填剤として使用した封止材は、成形時の流動性が極めて良好である。本発明において、球状シリカの比表面積はBET法により測定される。BET法は、多分子層吸着に基づいて導かれる吸着等温式(BET式)を用いて、単分子層吸着量と吸着質の分子断面積とから固体の表面積を算出する方法であって、周知のものである。
【0023】
本発明の高純度球状シリカの製造方法は、次の3つの工程を含んでいる。
・工程-1: <球状シリカゲル粒子の調製工程>アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として含むエマルジョンと鉱酸水溶液を分散相として含むエマルジョンとを接触させて両者を反応させ、多孔質の球状シリカゲル粒子を調製する工程。
・工程-2: <球状シリカゲルの不純物抽出除去工程>工程-1で得られた球状シリカゲル粒子を鉱酸で処理し、含有されている不純物を抽出除去して、高純度で多孔質の球状含水シリカ粒子を得る工程。
・工程-3: <球状含水シリカ粒子の焼成工程>工程-2で得られた球状含水シリカ粒子を焼成し、本発明で規定した物性を賦与する工程。
【0024】
以下、前記各工程について順次説明する。
1> 球状シリカゲル粒子の調製工程(工程-1).1-1) エマルジョンの調製本発明の方法においては、アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として含むエマルジョンと鉱酸水溶液を分散相として含むエマルジョンとを、それぞれ調製する。好ましくは、アルカリ珪酸塩水溶液および鉱酸水溶液と混和しない液体を連続相とし、この中にアルカリ珪酸塩水溶液と鉱酸水溶液とを、別々に、それぞれを分散相として細粒状に分散させた、それぞれの油中水滴型(W/O型)エマルジョンを生成させる。アルカリ珪酸塩水溶液と連続相形成用液体および乳化剤を混合し、乳化機などを用いて乳化させ、アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として含む W/O型のエマルジョンを調製する。一方、鉱酸水溶液と連続相形成用液体および乳化剤を混合し、同様にして乳化させ、鉱酸水溶液を分散相として含む W/O型のエマルジョンを調製する。
【0025】
使用されるアルカリ珪酸塩は、珪酸ナトリウム・珪酸カリウム・珪酸リチウムなどを包含するが、珪酸ナトリウムが一般的に用いられる。アルカリ珪酸塩水溶液中のシリカ濃度(SiO2 として) は、1〜40重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは15〜30重量%の範囲である。
【0026】
使用される鉱酸は、硫酸・硝酸・塩酸などを包含するが、硫酸または硝酸を用いるのが好ましい。酸濃度は、1〜30重量%、好ましくは3〜15重量%の範囲である。鉱酸の所要量は、一方のエマルジョンであるアルカリ珪酸塩水溶液中のアルカリ量に応じて調整する。鉱酸/アルカリの量比が、モル比で表わしたとき、 0.1〜2の範囲に入るように鉱酸の量を調整する。
【0027】
連続相形成用液体としては、アルカリ珪酸塩水溶液および鉱酸水溶液と反応せず、かつ、混和しない液体を用いる。その種類は、特に限定はないが、解乳化処理の面からは、沸点が 100℃以上であり、比重が 0.9以下であるオイルを使用することが好ましい。アルカリ珪酸塩水溶液とオイルとの量比、また、鉱酸水溶液とオイルとの量比は、それぞれ重量比で、8:2〜2:8の範囲である。
【0028】
上記の連続相形成用液体としてのオイルとしては、たとえば、n-オクタン, ガソリン, 灯油、イソパラフィン系炭化水素油などの脂肪族炭化水素類、シクロノナン, シクロデカンなどの脂環族炭化水素類、トルエン, キシレン, エチルベンゼン, テトラリンなどの芳香族炭化水素類などを用いることができる。
【0029】
乳化剤としては、 W/O型エマルジョンの安定化機能を有するものであれば特に限定はなく、脂肪酸の多価金属塩・水難溶性のセルローズエーテルなどの親油性の強い界面活性剤を用いることができる。後処理の点からは、非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。具体例として、ソルビタンモノラウレート, ソルビタンモノパルミテート, ソルビタンモノステアレート, ソルビタンモノオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート, ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート, ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート, ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート, ポリオキシエチレンモノパルミテート, ポリオキシエチレンモノステアレート, ポリオキシエチレンモノオレートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ステアリン酸モノグリセリド, オレイン酸モノグリセリドなどのグリセリン脂肪酸エステル類などを挙げることができる。乳化剤の添加量は、乳化対象であるアルカリ珪酸塩水溶液または鉱酸水溶液に対して、それぞれ 0.1〜5重量%の範囲である。
【0030】
1-2) 球状シリカゲル粒子の調製調製されたアルカリ珪酸塩水溶液を分散相として含むエマルジョンと鉱酸水溶液を分散相として含むエマルジョンとを攪拌下で混合する。鉱酸とアルカリ珪酸塩との反応によって球状の多孔質シリカゲルが生成する。本発明の方法においては、この段階で生成させる多孔質シリカゲルは、少なくとも粒子の表面が固化していればよく、内部はアルカリ成分が残留して充分に固化していない状態のものでもよい。
【0031】
混合の順序についての限定はなく、アルカリ珪酸塩水溶液を含むエマルジョンを鉱酸水溶液を含むエマルジョンに加えてもよいし、鉱酸水溶液を含むエマルジョンをアルカリ珪酸塩水溶液を含むエマルジョンに加えてもよい。また、両者を同時に加えてもよい。この際に、鉱酸水溶液を含むエマルジョンとアルカリ珪酸塩水溶液を含むエマルジョンとを接触させることが本発明の必須要件である。アルカリ珪酸塩水溶液を含むエマルジョンを、エマルジョン化させていない鉱酸水溶液に加えたときには、本発明が目的とする、真球度と平滑性に優れ、かつ、中実な球状粒子は得られない。
【0032】
1-3) 解乳化処理反応後のエマルジョンを解乳化するには、たとえば、反応液に鉱酸水溶液を加えて昇温すればよい。この方法によれば、解乳化と共に不純物の抽出除去も併せて行える。解乳化処理は、通常、温度60〜120 ℃、好ましくは80〜100 ℃の範囲で行い、処理時間は1分〜5時間程度であるが、後記の工程-2との関係で時間と温度条件とを決定することが望ましい。この処理により、エマルジョン状の反応液は、オイル相とシリカゲル粒子分散系鉱酸水溶液相に層別に分離する。上層部を構成するオイル相は、常法によって分離回収し、繰り返し使用することができる。
【0033】
2> 球状シリカゲル粒子の不純物抽出除去工程(工程-2).前記工程-1で得られた球状の多孔質シリカゲルを、酸を含む液で処理する。使用される酸としては、硫酸・塩酸・硝酸などの鉱酸が挙げられるが、硫酸または硝酸を用いるのが好ましい。処理液としては、上記の酸の少なくとも一種を含む水溶液が、実用上、好ましい。処理液の酸濃度は、30重量%以下、好ましくは5〜20重量%の範囲である。
【0034】
本工程における酸処理操作は、1段階で処理する方法を採ることもできるが、特に微量の不純物を抽出除去するには処理操作を少なくとも2段階に分け、各段階ごとに、使用する処理液を更新する多段階処理を行うこともできる。本工程の処理は、撹拌しながら行うことが望ましい。
【0035】
処理温度は特に限定しないが、50℃以上の温度で抽出操作を行うのがよい。処理液の常圧における沸点よりも高い温度で加圧下で処理すると、不純物抽出の所要時間を短縮することができる。加圧抽出の際の温度は、高い程好ましいが酸による装置の腐食やエネルギーコストを考慮すると、 100〜150 ℃、好ましくは 110〜140 ℃の範囲が実用的である。
【0036】
酸処理の時間は、回分式の場合には30分から20時間程度、また、連続式の場合には30秒から20時間程度である。酸処理を施して得られた球状含水シリカ粒子は、次に任意の温度の水を用いて洗滌し、必要により、ろ過操作を組み合せて脱酸・脱水処理する。なお、本発明の方法で使用する酸は、精製または電子グレードと称される高純度品を、また、原料や使用する酸の希釈またはシリカの洗滌などに用いる水は、不純物の少ない純水を用いることが好ましい。
【0037】
本工程の処理によって、シリカ粒子中の放射性元素を含む不純物の含有率は極めて低くなる。酸処理後のシリカ中の不純物含有率は、Na, Kなどのアルカリ金属および Mg, Ca などのアルカリ土類金属の各々の元素がそれぞれ1ppm 以下であり、UおよびThの放射性元素については、1ppb 以下にすることができる。また、シリカを煮沸浸出した抽出水の電気伝導度を、10μS/cm以下にすることができる。
【0038】
3> 球状含水シリカ粒子の乾燥・焼成処理工程(工程-3).工程-2において不純物を抽出除去した球状含水シリカ粒子中には、なお水分が保持されている。この水分は、付着水と結合水とに分けられる。通常、付着水は100℃前後の温度で加熱すれば容易に除けるが、結合水は 400℃以上の温度でも完全に除去することは困難である。付着水を除去するために乾燥処理を行い、そして、結合水を除去し、かつ、シリカ粒子を緻密化させるために焼成処理を行なう。
【0039】
付着水を除去するための乾燥処理条件は、温度50〜500 ℃、実用的には 100〜300 ℃の範囲とするのがよい。処理時間は、乾燥温度に応じて、1分間〜40時間の範囲で適宜選定すればよい。本発明の方法で得られるシリカ粒子は、粒径分布が1〜100 μmの範囲で、平均粒径が10〜15μm程度の微小球状シリカであるが、真球度が高く表面平滑性に優れているので、静置状態でも凝集することなく乾燥処理することができる。なお、乾燥処理に際しては、減圧方式や流動方式を採用することもできる。
【0040】
湿式法で得られたシリカ粒子の表面には多数のシラノール基 (≡Si-OH)が存在し、これが大気中の水分と結合して前記結合水となる。このシラノール基は、工程-2で得られたシリカを1000℃以上の温度で焼成処理することにより、除去することができる。この処理によって、比表面積の小さな緻密な球状シリカを得ることができる。
【0041】
低吸湿性でカサ密度の大きな、比表面積の小さいシリカ粒子を得るための焼成処理条件は、焼成温度としては1000℃以上、特に、1050〜1200℃の範囲とするのがよい。焼成時間は、焼成温度に応じて、1分間〜20時間の範囲で適宜選定すればよい。
【0042】
焼成処理を行う際の雰囲気としては、酸素や炭酸ガスなどでもよいし、必要によっては窒素やアルゴンなどの不活性ガスを用いることもできる。実用的には空気とするのがよい。
【0043】
本発明の方法で得られるシリカ粒子は、真球度が高く表面平滑性に優れているので、焼成処理の際にシリカ粒子を流動状態に保たなくても、粒子同士が焼結することなく焼成することができ、焼成処理を行う際に用いる装置としては、シリカ粒子を静置した状態で処理する焼成炉を用いることができる。なお、シリカ粒子を流動状態に保ちながら焼成処理する装置、たとえば、流動焼成炉・ロータリーキルン・火炎焼成炉などを用いることもできる。加熱源としては、電熱または燃焼ガスなどを用いることができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、アルカリ珪酸塩水溶液を原料として、ウランなどの放射性元素を含む不純物含有率が極めて低い高純度で、且つ、表面平滑性に優れて真球度が高い、高純度球状シリカ粒子を得ることができる。本発明の方法で得られた高純度球状シリカ粒子は、従来技術による場合に比較して、純度が高く、表面平滑性に優れて真球度が高いので、特に高密度集積回路電子部品の封止用樹脂組成物の充填材として好適に用いることができる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1.
1> 球状シリカゲル粒子の調製1-1) エマルジョンの調製乳化剤としてソルビタンモノオレート(「レオドールSP-O10」, 花王製)、連続相形成用液体としてイソパラフィン系炭化水素油(「アイソゾール 400」, 日本石油製)および水ガラス(JIS K-1408, 3号相当品)を、重量比で1:44:55の割合で混合し、乳化機を用いて 18,000 rpm で1分間攪拌し、アルカリ珪酸塩水溶液を分散相として含む油中水滴型(W/0型)エマルジョン 268gを調製した。一方、前記の界面活性剤とオイルおよび5重量%硫酸水溶液を、重量比で1:44:55の割合で混合し、乳化機を用いて前記と同様の条件で処理して、硫酸水溶液を分散相として含む W/0型エマルジョン 842gを調製した。
【0046】
1-2) 球状シリカゲル粒子の調製と解乳化処理前記の硫酸水溶液エマルジョンを攪拌しながら、これに水ガラスエマルジョンを添加した。添加終了後、室温下で更に1時間攪拌を続けた。次いで、反応液に16重量%硫酸水溶液 1,000gを加えて、100 ℃に加熱して1時間攪拌した。この処理によって、乳濁状の反応液はオイル相(上層)とシリカゲル粒子が分散した水相(下層)とに分離した。オイル相を除き、水相中のシリカゲル粒子を常法により濾過・洗滌した。
【0047】
2> 球状シリカゲル粒子の不純物抽出処理得られたシリカゲル粒子を、新たに調製した16重量%硫酸水溶液中に浸漬し、温度 100℃で1時間攪拌して不純物を抽出し、ついでシリカゲル重量の10倍量の純水を用いて2回洗滌した。上記の抽出・洗滌操作を2回繰り返して得られたシリカゲル粒子を、純水を用いて洗液の pH が4になるまで洗滌した後、ヌッチェを用いて脱水し、球状含水シリカ粒子を得た。
【0048】
3> 球状含水シリカ粒子の焼成処理得られた含水シリカ粒子を温度 120℃で1夜乾燥し、70gの乾燥シリカ粒子を得た。この乾燥シリカ粒子を石英製ビーカー (1リットル) に充填し、 1,100℃で30分間焼成した。
【0049】
焼成して得られたシリカ粒子について分析したところ、Na, K,Li などのアルカリ金属、Ca,Mg などのアルカリ土類金属および Cr,Fe,Cu などの遷移金属の各元素の濃度はそれぞれ1ppm 以下であり、また、UおよびThの放射性元素の合計は1ppb 以下であった。また、前記の方法で測定した、シリカ粒子の煮沸浸出抽出水の電気伝導度は、1.8 μS/cmであった。
【0050】
得られたシリカ粒子の平均粒径は 11.5 μmで、真比重は 2.20 であった。BET法で測定した比表面積は、0.5 m2 /gで理論値の 2.1倍であった。そして、真球度が 0.9以上である粒子の含有率が90%以上である球状シリカ粒子で、電子顕微鏡写真から判断しても真球度・平滑度とも良好であった。また、粒子断面についての電子顕微鏡写真の観察によれば、球状粒子はいずれも中実であり、中空球の存在は認められなかった。
【0051】
実施例2.
3号水ガラスを純水で希釈し、シリカ濃度(SiO2 として) をそれぞれ 20, 15,10重量%に調製した水ガラス水溶液を用いてアルカリ珪酸塩水溶液を含むエマルジョンを調製したほかは、実施例1と同様にして、球状シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子についての各種の測定ならびに観察の結果は、後記のとおりであった。
【0052】
実施例3.
硫酸濃度をそれぞれ 15, 10,3重量%に調製した硫酸水溶液を用いて硫酸水溶液を含むエマルジョンを調製したほかは、実施例1と同様にして、球状シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子についての各種の測定ならびに観察の結果は、後記のとおりであった。
【0053】
実施例4.
実施例1におけるエマルジョンの添加方法を変えて、水ガラス水溶液エマルジョンに硫酸水溶液エマルジョンを添加したほかは、実施例1と同様にして、球状シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子についての各種の測定ならびに観察の結果は、後記のとおりであった。
【0054】
比較例1.
エマルジョン化していない、硫酸濃度がそれぞれ3,5,10重量%である硫酸水溶液中へ水ガラス水溶液エマルジョンを添加したほかは、実施例1と同様にして、シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子についての各種の測定ならびに観察の結果は、後記のとおりであった。
【0055】
実施例2〜4および比較例1で得られたシリカ粒子についての不純物含有率、煮沸浸出抽出水の電気伝導度、平均粒径、比表面積の各測定結果、ならびに電子顕微鏡写真の観察による真球度・中実度などの状態は、次のとおりであった。得られた球状シリカ粒子について分析したところ、いずれも Na,K, Li, Ca,Mg, Crおよび Cu の各元素の濃度はそれぞれ 0.1ppm 以下であり、Feは 0.8ppmであった。また、Uはいずれも 0.1ppb 以下であり、Thは 0.4〜0.6 ppb の範囲で有意差は認められなかった。また、前記の方法で測定した、シリカ粒子の煮沸浸出抽出水の電気伝導度の測定結果は、 1.7〜2.2 μS/cmの範囲で、有意差は認められなかった。
【0056】
得られたシリカ粒子についての電子顕微鏡写真の観察による真球度・中実度などの状態は、実施例2〜4では、いずれも真球度が 0.9以上である粒子の含有率が90%以上である球状シリカ粒子で、真球度・平滑度とも良好であった。また、球状粒子はいずれも中実であり、中空球の存在は認められなかった。これに対して、比較例1で得られたシリカ粒子は、いずれも真球度が 0.9以上である粒子の含有率が90%未満であり、また、多数の中空球が認められた。
【0057】
次に、得られた各シリカ粒子の平均粒径、 BET法による比表面積測定値、ならびに前記の式によって算定した各粒径に対応する比表面積の理論値に対する測定値の倍率は、表1および表2に示すとおりであった。なお、各シリカ粒子の真比重は、いずれも2.20であった。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
Claims (1)
- アルカリ珪酸塩水溶液と鉱酸水溶液をともにエマルション状態で混合することにより球状シリカゲルを調製した後、1050〜1200℃の範囲で焼成することにより製造された高純度球状シリカであって、放射性物質の含有率が1ppb以下、シリカを煮沸浸出した抽出水の電気伝導度が10μS/cm以下、真球度が 0.9〜1.0 である粒子の含有率が90%以上であり、粒子の粒径d[μm]に対応する比表面積の理論値2.73/d[m2/g]に対してBET法による比表面積の測定値の倍率が3以下である高純度球状シリカ。
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