JPS6347351Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、エンジンの前面にタイミングベルト
とウオータポンプとを、該ウオータポンプを前記
タイミングベルトの内周側に位置せしめた状態で
配置してなるエンジンにおけるタイミングベルト
カバーの構造に関するものである。

（従来技術） 近年、エンジン特に自動車用エンジンにあつて
は、エンジンの前面側に突出配置されるクランク
軸、カム軸等の連動駆動機構を騒音対策という意
味から運転騒音が比較的大きいタイミングチエー
ン駆動方式から運転騒音の少ないタイミングベル
ト駆動方式にその駆動方式を変更する傾向にあ
る。

しかしながら、このタイミングベルトは、タイ
ミングチエーンに比して雨水あるいは汚泥の付着
により、その耐久性が損なわれ易いため、このタ
イミングベルトを使用する場合には、該タイミン
グベルトの外側に該タイミングベルトを覆蓋する
如くタイミングベルトカバーを取付けて該タイミ
ングベルトに雨水あるいは汚泥等が付着するのを
未然に防止する必要があり、このような見地から
エンジン前面部にタイミングベルトカバーを取付
けたものの公知例としては、例えば特開昭53−
70211号公報に示される如きものがある。即ち、
この公知例のものは、ウオータポンプ等のエンジ
ン補機をエンジン本体の側方に突出させて配置す
るエンジンにおいて、タイミングベルトを覆蓋保
護するタイミングベルトカバーを、ウオータポン
プ軸あるいはクランク軸等の軸部材との相互干渉
を避け得るようにその外周部の一部を適宜に切欠
形成し、これをエンジン本体の前面に取付けたも
のである。

ところが、上記従来例の如くウオータポンプ等
のエンジン補機がエンジン本体の側方に突出する
如く配置される構造のエンジンにおいては、上述
の如くタイミングベルトカバーを、その外周部の
一部に切欠部をもつ切欠形状としてもタイミング
ベルトに対する覆蓋保護という目的は十分に達し
得るわけであるが、他の構造をもつエンジン、例
えばＶ型エンジンの如く冷却効果の向上という意
味からウオータポンプをエンジン本体の左右のバ
ンクの中央部に配置する必要のあるもの、換言す
ればレイアウト上、ウオータポンプをタイミング
ベルトの内周側に位置せしめる必要のあるような
エンジンにおいては、上記従来例の如くタイミン
グベルトカバーを切欠形状とすることはタイミン
グベルトの保護性という点から困難であり、この
ため、従来は非切欠形状のタイミングベルトカバ
ーを用い、これでタイミングベルトとウオータポ
ンプの両方を同時に覆うのが通例であつた。

ところが、このようなタイミングベルトカバー
によつてウオータポンプとタイミングベルトと一
体的に覆うようにした場合には、それだけ該タイ
ミングベルトカバーの表面積、即ち騒音発生の誘
因となる放射面積が大きくなり、エンジン騒音が
高くなるという問題があつた。

（考案の目的） 本考案は、上記の如き従来のタイミングベルト
カバー構造の問題に鑑み、騒音発生の誘因となる
放射面積を可及的に少ならしめて騒音の低減化を
図り得るようにしたタイミングベルトカバー構造
を提案することを目的としてなされたものであ
る。

（考案の構成） 本考案のタイミングベルトカバー構造は、タイ
ミングベルトカバーの中央部にウオータポンプの
ケーシングの外周部に形成された内側シール面の
平面形状に対応する切欠穴を形成するとともに、
該タイミングベルトカバーに対するシール面を前
記内側シール面とエンジン本体前面のタイミング
ベルトの外周側に形成される外側シール面で構成
し、これら二重枠状に形成された内、外両シール
面に対してタイミングベルトカバーを取付けるこ
とにより、該タイミングベルトカバーの表面積を
可及的に小ならしめるようにしたことを特徴とす
るものである。

（実施例） 第１図にはＶ字状に傾斜配置された第１バンク
X₁と第２バンクX₂を備えた本考案の実施例に係
るOHC方式のＶ型エンジンＺが示されており、
図中符号１はエンジン本体、２はシリンダブロツ
ク、３はシリンダヘツド、４はヘツドカバー、５
はオイルパン、６は吸気マニホールドである。こ
のシリンダブロツク２と左右一対のシリンダヘツ
ド３，３とヘツドカバー４，４とで構成されるエ
ンジン本体１の前面１ａ上には、シリンダブロツ
ク２の下部に配置されたクランクシヤフト３０と
第１バンクX₁のシリンダヘツド３内に配置され
た第１カムシヤフト４１と第２バンクX₂のシリ
ンダヘツド３内に配置された第２カムシヤフト４
２とがこれら三者で略正三角形を形成する如く相
互に適宜離間し、それぞれの一端を外方に突出せ
しめている。これら各シヤフトの内、クランクシ
ヤフト３０には歯形状のクランクプーリ３１が、
また第１、第２カムシヤフト４１，４２には同じ
く歯形状の第１、第２カムシヤフトプーリ３２，
３３がそれぞれ取付けられている。さらに、これ
ら各プーリ３１，３２，３３間には歯形内面を有
するタイミングベルト２０が張設されてり、第１
カムシヤフト４１と第２カムシヤフト４２は、ク
ランクシヤフト３０によつて同期回転せしめられ
る。又、このタイミングベルト２０の各プーリ間
の外周位置には、それぞれ第１、第２、第３アイ
ドラー３４，３５，３６が配設されており、該タ
イミングベルト２０は、これら各アイドラー３
４，３５，３６により各プーリ３１，３２，３３
に対して所定の巻付角で巻掛けられるとともに、
この３個のアイドラー３４，３５，３６のうち、
特にタイミングベルト２０の内外方向に位置調整
自在に取付けられた第１アイドラー３４によりそ
の張力調整が行なわれる。従つて、このタイミン
グベルト２０は、その装着状態においてはシリン
ダブロツク２の軸方向と左右のバンクX₁，X₂の
軸方向の三方向に沿つて略星形（〓）に張設され
ることになる。

一方、エンジン本体１の前面１ａ上における左
右のバンクX₁，X₂間の中央部でしかも前記タイ
ミングベルト２０の内周側位置には、ウオータポ
ンプ１０が取付けられている。

ウオータポンプ１０は、第１図及び第２図に示
す如くシリンダブロツク２の前面２ａに凹陥形成
されたサクシヨン通路１８の外側を、前記タイミ
ングベルト２０の張設形状に沿うような略星形の
平面形状をもつ浅皿状のウオータポンプケーシン
グ１１で水密的且つ着脱自在に覆蓋するととも
に、該ウオータポンプケーシング１１の覆蓋壁部
１５の中央部に形成したボス部１４に、インペラ
１６付きのウオータポンプ軸１２を取付けて構成
されており、前記クランクシヤフト３０によつて
ウオータポンプ軸１２を回転させることによりサ
クシヨン通路１８側から吸入された冷却水はイン
ペラ１６により加圧され、シリンダブロツク２内
のウオータジヤケツト１７を介してエンジン各部
に送給循環せしめられる。このウオータポンプケ
ーシング１１の覆蓋壁部１５の外周部には、該外
周部からエンジン前方に向けて突出する如く前向
周壁１３が該ウオータポンプケーシング１１の外
周形状に沿つてしかもその全周に亘つて形成され
ている。この前向周壁１３の先端面１３ａは、後
述するタイミングベルトカバー２１に対するシー
ル面となるものであり、以下の説明においては該
先端面１３ａを特に内側シール面５１という。

さらに、エンジン本体１の前面１ａの外周近く
には、第１図及び第２図に示す如く前記タイミン
グベルト２０の外周側を適宜離間して包囲する如
く適宜高さの隆起周壁２６が連続形成されてい
る。この隆起周壁２６の先端面６ａは、後述する
タイミングベルトカバー２１に対するシール面と
なるものであり、以下の説明においては該先端面
２６ａを外側シール面５２という。即ち、エンジ
ン本体１の前面１ａの所定位置にウオータポンプ
１０を取付けた状態においては、該エンジン本体
１の前面１ａ側に、ウオータポンプケーシング１
１の外周部に形成された内側シール面５１とタイ
ミングベルト２０の外周側に形成された外側シー
ル面５２の二つのシール面が略二重枠状に形成さ
れることになる。尚、内側シール面５１と外側シ
ール面５２相互間の高低差は、第２図に示す如く
外側シール面２の方がその全周域においては内側
シール面５１よりも低位に位置する如く設定され
ている。これは、後述するタイミングベルトカバ
ー２１の着脱を容易ならしめるためである。

タイミングベルトカバー２１は、前記タイミン
グベルト２０の外側を覆蓋して該タイミングベル
トを雨水あるいは汚泥の付着から保護するための
ものであり、第１図及び第３図に示す如く前記内
側シール面５１と外側シール面５２の間に形成さ
れる略星形の被覆蓋空間３８の内の前記クランク
シヤフト３０の外周部を除く他の全域を覆蓋する
ものであり、中央部に前記内側シール面の平面形
状に対応する切欠穴３９を有するとともに、前記
クランクシヤフト３０の近傍位置に対応する部分
を適宜に切欠いた略星形皿状体に一体形成されて
いる。このタイミングベルトカバー２１は、第３
図に示す如く被覆蓋空間３８の第１バンクX₁側
を覆蓋する第１カバーピース２１Ａと第２バンク
X₂側を覆蓋する第２カバーピース２１Ｂの２部
分に分割形成されている。この第１カバーピース
２１Ａと第２カバーピース１Ｂは、略線対称形状
を有している。即ち、第１カバーピース２１Ａ
は、略形平面形状を有する第１外壁面２２Ａ
と、該第１外壁面２２Ａの外周部に連続する第１
外側周壁部２３Ａと、第１外壁部２２Ａの内周部
に連続し且つ第１外側周壁部２３Ａより適宜寸法
（即ち、前記内側シール面５１と外側シール面５
２の高低差寸法に相当する寸法）だけ周壁高さの
低い第１内側周壁部２４Ａとで構成されている。
これに対して第２カバーピース２１Ｂは、略形
の平面形状を有する第２外壁面２２Ｂと、該第２
外壁面２２Ｂの外周部に連続する第２外側周壁２
３Ｂと、第２外壁面２２Ｂの内周部に連続し且つ
第２外側周壁部２３Ｂより適宜寸法だけ周壁高さ
の低い第２内側周壁部２４Ｂとで構成されてい
る。この第１カバーピース２１Ａと第２カバーピ
ース２１Ｂは、それぞれその中央寄りに形成され
た第１衝合端面２５ａと第２衝合端面２５ｂを相
互に衝合させることにより一体化され、その内周
面側に前記内側シール面５１に対応する略星形の
内側周壁２４（第１内側周壁部２４Ａと第２内側
周壁部２４Ｂで構成）を、またその外周側に前記
外側シール面５２に対応する略星形の外側周壁２
３（第１外側周壁部２３Ａと第２外側周壁部２３
Ｂで構成）とをそれぞれ有するタイミングベルト
カバー２１とされる。このタイミングベルトカバ
ー２１の内側周壁２４の端面（即ち、内側シール
面５１に対する衝合面）２４ａには帯状で且つ２
分割型の第１シール材５３が、また外側周壁２３
の端面（即ち、外側シール面５２に対する衝合
面）２３ａには帯状で且つ２分割型の第２シール
材５４がそれぞれ取付けられており、これら各シ
ール材５３，５４はタイミングベルトカバー２１
と一体的に着脱される。

上述の如く構成されたタイミングベルトカバー
２１は、その外側周壁２３の端面２３ａを外側シ
ール面５２に、また内側周壁２４の端面２４ａを
内側シール面５１にそれぞれ対向させ且つ外側周
壁端面２３ａと外側シール面５２の間を該外側周
壁端面２３ａ側に取付けた第２シール材５４で、
また内側周壁端面２４ａと内側シール面５１との
間を該内側周壁端面２４ａ側に取付けた第１シー
ル材５３でそれぞれシールした状態でエンジン本
体１の前面１ａ上に取付ボルト５５，５５，……
により締着固定される。

このタイミングベルト２０の装着状態において
は、タイミングベルト２０は前記クランクプーリ
３１部分に対応する部分を除いてその全てがタイ
ミングベルトカバー２１により覆蓋されることに
なる。又、ウオータポンプ１０のポンプケーシン
グ１１は、タイミングベルトカバー２１の中央部
に形成された切欠穴３９を通して外部に露出せし
められている（換言すれば、ウオータポンプ１０
のポンプケーシング１１部分はタイミングベルト
カバー２１により非覆蓋状態に保持されている）。
従つて、タイミングベルトカバー２１全体の表面
積は、該タイミングベルトカバー２１によつてウ
オータポンプ１０をも覆蓋してしまうような場合
に比して該ウオータポンプ１０の正投影面積にほ
ぼ相当する面積だけ小さく、それだけ騒音発生の
誘因となるタイミングベルトカバー２１の放射面
積が小さくなり、騒音レベル低減が可能となる。

又、このタイミングベルトカバー２１は、内側
シール面５１が外側シール面５２より低位置にあ
り、しかも第１カバーピース２１Ａと第２カバー
ピース２１がともにその平面形状が次第に拡開す
る方向（この実施例ではエンジン本体中央部）に
おける端部、即ち、第１衝合端面２５ａ、第２衝
合端面２５ｂ相互を衝合させる構造とされている
ため、例えばタイミングベルトカバー２１をエン
ジン本体１の前面１ａに装着する場合には第１図
及び第３図において矢印L₂あるいはR₂で示す如
く第１カバーピース２１Ａと第２カバーピース２
１Ｂをそれぞれその拡開方向（平面上における）
に沿う方向に差し込むことにより容易に所定の装
着位置に位置決め且つ締着固定することができ、
又、逆にタイミングベルトカバー２１の取外し時
には、第１カバーピース２１Ａと第２カバーピー
ス２１Ｂを矢印L₁あるいは矢印R₁方向に引き抜
くことにより容易にエンジン本体１の前面１ａか
ら取外すことができ、それだけタイミングベルト
カバー２１の脱着時の作業性が向上することにな
る。

（考案の効果） 本考案のタイミングベルトカバー構造によれ
ば、エンジン本体の前面にはタイミングベルトと
ウオータポンプとを該ウオータポンプが前記タイ
ミングベルトの内周側に位置するようにして配置
してなるエンジンにおいて、前記タイミングベル
トを覆蓋するタイミングベルトカバーの中央部に
前記ウオータポンプのケーシングの外周部に形成
された内側シール面の平面形状に対応する切欠穴
を形成するとともに、該タイミングベルトを、前
記内側シール面と前記エンジン本体の前面上のし
かも前記タイミングベルトの外周部に形成された
外側シール面とに対して締着固定するようにして
いるため、前記ウオータポンプとタイミングベル
トを一体的にタイミングベルトカバーで覆蓋する
ような場合に比して前記内側シール面より内側の
面積分だけタイミングベルトカバーの表面積が小
さく、それだけ騒音発生の誘因となる放射面積を
少なくしてエンジン騒音の低減化を図り得るとい
う実用的効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案実施例に係るタイミングベルト
カバーを備えた自動車用Ｖ型エンジンの一部断面
正面図、第２図は第１図の−縦断面図、第３
図は第１図に示すタイミングベルトカバーの分解
平面図である。 １……エンジン本体、２……シリンダブロツ
ク、３……シリンダヘツド、４……ヘツドカバ
ー、５……オイルパン、６……インテークマニホ
ールド、１０……ウオータポンプ、１１……ポン
プケーシング、１２……ウオータポンプ軸、１６
……インペラ、２０……タイミングベルト、２１
……タイミングベルトカバー、２２……外壁面、
２３……外側周壁、２４……内側周壁、３０……
クランクシヤフト、３１……クランクプーリ、３
２，３３……カムシヤフトプーリ、３４，３５，
３６……アイドラー、４１，４２……カムシヤフ
ト、５１……内側シール面、５２……外側シール
面、５３，５４……シール材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. エンジン本体の前面にタイミングベルトとウオ
   ータポンプとを、該ウオータポンプを前記タイミ
   ングベルトの内周側に位置せしめた状態で配置し
   てなるエンジンにおいて、前記タイミングベルト
   の外側を覆蓋するタイミングベルトカバーが、中
   央部に前記ウオータポンプのケーシングの外周部
   に形成された内側シール面の平面形状に対応する
   切欠穴を有し、かつ前記内側シール面と前記エン
   ジン本体の前面上のしかも前記タイミングベルト
   の外周側に形成された外側シール面とに対して締
   着されていることを特徴とするタイミングベルト
   カバー構造。