JPS6321016Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は上前板と上前板受部材との間の隙間
を実質的になくし、これら両者の製造を容易にす
ると共にピアノ本体の外観品質を向上させるよう
にした竪型ピアノの上前板取付け構造に関する。

一般家庭等で広く使用されているアツプライト
ピアノ、電気ピアノ等の竪型ピアノは、演奏時に
響板体から放射される音がピアノ本体内に打弦音
と共にこもり易く、クリアで明るい演奏音を得に
くいことがあり、しかもピアノ本体は背面を壁面
に近接対向させて設置されることが多いため、響
板体から放射される音が壁面によつて著しく阻害
され、一層良好な音質の演奏音を得にくいことが
ある。そこで、このような問題を解決する手段と
してピアノ本体の前面上半部を被つている上前板
を開閉もしくは取り外し自在に取付け、ピアノ演
奏音をピアノ本体の前方に放射させることによ
り、音質の改善を図るようにしている。第１図は
従来のアツプライトピアノにおける上前板の取付
け構造の一例を示すもので、これを概略説明する
と、１はピアノ本体で、相対向する左右一対の親
板２，２、屋根３、上前板４、裏板（図示せず）
等によつて箱形に形成され、内部には響板、アク
シヨン機構（いずれも図示せず）等が収納配置さ
れている。そして、前記ピアノ本体１の前面中央
部には前方に突出する鍵盤部５が一体的に設けら
れている。この鍵盤部５は、後端が各親板２，２
にそれぞれ連結されてピアノ本体１の前方に延在
する左右一対の腕木７と、これら腕木７間に横架
された棚板８と、棚板８上に並列配置された多数
の鍵９と、同じく腕木７間に横架されて鍵９の後
端部上方に位置する鍵盤蓋奥１０と、鍵盤蓋奥１
０の前端面に蝶番１１を介して開閉自在に配設さ
れた鍵盤蓋１２と、前記鍵盤蓋奥１０の後端部上
面に配設された鍵盤蓋奥付１３等によつて構成さ
れ、この鍵盤蓋奥付１３上に前記上前板４の下端
が複数個のダボ１４によつて左右および前後方向
に移動を規制されて載置されている。一方、上前
板４の上端側はその背面両端部に取付けた略鉤形
の上前板止め１５を各親板２，２の内側面に突設
したピン１６に係合させることにより親板２，２
に対して開閉自在で且つ着脱自在に支持されてい
る。なお、１７は前記鍵盤蓋奥付１３に形成され
ダボ１４に嵌合する凹部である。

ところで、かかる従来の上前板取付け構造にお
いては、上前板４および鍵盤蓋奥付１３はいずれ
も木製であるため、温度、湿度等の環境変化によ
り反りや捩れが生じると、これら両者間に隙間が
でき、外観上見苦しいという不都合を有してい
る。また、隙間が生じた場合には、上前板４の下
面と鍵盤蓋奥付１３の上面を削つて平坦面にする
必要があるが、このような補修作業は面倒である
ばかりか、鍵盤蓋奥付１３の上面を再塗装する必
要があるため、一般家庭等での補修を困難にして
いる。

このような事情から第２図に示すように上前板
４の下面に前端を下方に折曲させてなる上前座１
８を取付け、この上前座１８と鍵盤蓋奥１０との
間の隙間をピアノ本体の前方から見えないように
したり、あるいはまた第３図に示すように鍵盤蓋
奥１０の後端部下面に補強金具１９を取付けて鍵
盤蓋奥１０の反りを矯正し、隙間を少なくして目
立たなくするなど、種々の工夫が施されている。
しかし、このようなものにおいても、上前座１
８、補強金具１９の製作および取付け作業は面倒
で、しかも上前座１８にあつては塗装を必要とす
るため製造コストが増大するという不都合を有し
ている。

この考案は上述したような点に鑑みてなされた
もので、上前板と上前板受部材との間少なくとも
一面に熱可塑性フイルムが固着された繊維質性の
素材からなるに弾性部材を介在させるという極め
て簡単な構成により、上前板および上前板受部材
に対して何ら加工を加えたり、上前座等を取付け
たりすることなく、これら両者間の隙間を実質的
になくし、外観品質を向上させるようにした竪型
ピアノの上前板取付け構造を提供するものであ
る。

以下、この考案を図面に示す実施例に基づいて
詳細に説明する。

第４図はこの考案に係る上前板取付け構造の一
実施例を示す正面図、第５図は第４図Ｖ−Ｖ線断
面図、第６図は要部拡大断面図である。なお図中
第１図と同一の構成部材に対しては同一符号を以
つて示し、その説明を省略する。上前板２０は３
枚の板、すなわち中央に位置する中央板２１Ａ
と、この中央板２１Ａの両側にそれぞれ位置する
端板２１Ｂ，２１Ｃとでほぼ平板状に形成され、
ピアノ本体１の前面上部を被つている。前記中央
板２１Ａと各端板２１Ｂ，２１Ｃとは略〓形の金
具２２によつて一体的に連結され、その連結部に
はピアノ本体１内の音を上前板２０の前方に逃す
隙間２３が設けられている。この隙間２３は上前
板２０の高さ方向全長に亘つて設けられ、これに
対応して前記金具２２と適宜な間隔をおいて複数
個の透孔２４が形成されている。したがつて、上
前板２０を開かなくともある程度の音量をピアノ
本体１の前方に放射させ得、これによつて音質の
改善を図ることができ、さらに音質を一層向上さ
せたい場合には上前板２０を開ければよい。

前記上前板２０の下端は鍵盤蓋奥付１３の上面
に弾性部材２５を介して載置され、かつダボ１４
と凹部１７によつて位置決めされている。前記弾
性部材２５は環境変化による反り、捩れ等によつ
て上前板２０と鍵盤蓋奥付１３との間に生じる隙
間の最大値とほぼ等しいかもしくはそれ以上の厚
さを有するフエルト，ゴム等からなり、その上下
面には熱可塑性フイルム２６Ａ，２６Ｂがそれぞ
れ熱融着されている。これらの熱可塑性フイルム
２６Ａ，２６Ｂは、特に弾性部材２５をフエルト
で構成した場合、上前板２０の重量（９〜12Kg）
を長期間受けるとフエルトの表面繊維が上前板２
０および鍵盤蓋奥付１３に塗布されているラツカ
ー塗膜にこびり付くのを防止するためのもので、
厚さ40μ程度の例えばアイオノマー樹脂フイルム
が使用され、熱融着の条件としては150〜170℃、
圧力４〜５Kg／cm²で５〜10秒圧締される。そし
て、前記弾性部材２５は上側の熱可塑性フイルム
２６Ａの表面に接着された両面接着テープ（図示
せず）によつて前記上前板２０の下面に固着され
る。この場合、上側の熱可塑性フイルム２６Ａに
ついてはかならずしも必要ではなく、弾性部材２
５を上前板２０の下面に直接接着固定してもよ
い。

かくして、このような構成からなる上前板取付
け構造によれば、上前板２０と鍵盤蓋奥付１３と
の間にその全長に亘つて生じる不均一な隙間を弾
性部材２５のクツシヨン性を利用してうずめるよ
うにしているため、外観上の見苦しさをなくすこ
とができる。また、上前板２０が反つたり捩れた
りしても、削り合わせによつて隙間をなくす必要
がないため、上前板２０の下面の高精度な平面度
および平滑度を要求されず、したがつて製作が容
易でコスト低減を図ることができる。しかも、弾
性部材２５は第２図および第３図に示した上前座
１８および補強金具１９に比べて安価で、取付け
も容易である。

なお、上記実施例は上前板受部材として鍵盤蓋
奥付１３を用いた場合について説明したが、この
考案はこれに限らず第２図および第３図と同様鍵
盤蓋奥を使用してもよいことは勿論である。

以上説明したようにこの考案に係る竪型ピアノ
の上前板取付け構造は、上前板と上前板受部材と
の間に少なくとも一面に熱可塑性フイルムが固着
された繊維質性の素材からなる弾性部材を介在さ
せたので、これら両者間の隙間を弾性部材のクツ
シヨン性によつて吸収でき、ピアノ本体の外観品
質を向上させることができる。また、構造が簡単
で、弾性部材の取付けも容易であるうえ、上前板
等が反つたり捩れたりしても削り合わせする必要
がないなど、その実質的効果は非常に大である。
さらに弾性部材に熱可塑性フイルムを固定してお
くと、上前板又は上前板受部材の表面の塗膜に弾
性部材の繊維が強圧されて付着するのを防止する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は上前板取付け構造の従来例を示す一部
破断側面図、第２図および第３図は同じく他の従
来例を示す要部側面図、第４図はこの考案に係る
上前板取付け構造の一実施例を示す正面図、第５
図は第４図Ｖ−Ｖ線断面図、第６図は要部拡大断
面図である。 １……ピアノ本体、１０……鍵盤蓋奥、１３…
…鍵盤蓋奥付、２０……上前板、２５……弾性部
材、２６Ａ，２６Ｂ……熱可塑性フイルム。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 下端が上前板受部材上に載置されピアノ本体の
   前面上半分を被う着脱もしくは開閉可能な上前板
   を有する竪型ピアノにおいて、前記上前板と上前
   板受部材との間に少なくとも一面に熱可塑性フイ
   ルムが固着された繊維質性の素材からなる弾性部
   材を介在させたことを特徴とする竪型ピアノの上
   前板取付け構造。