JPS624270B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、自動車のスペアタイヤ支持構造に関
するものである。

（従来の技術） 一般に、自動車のスペアタイヤ支持構造とし
て、例えば実開昭54−13161号公報等に開示され
ているように、フロアパネルにスペアタイヤを横
置にし、該スペアタイヤを、フロアパネルに固着
したブラケツトを介して固定して支持する構造が
採られている。

（発明が解決しようとする問題点） ところで、自動車の走行中には、第１図に示す
ように、車体前後方向に第１図Ａ線で示すような
振動モードでもつて一次振動が発生しており、そ
のため、フロアパネル等車体が加振されて、こも
り音のような振動騒音が発生したり、またハンド
ルが上下振動を起して、操縦性が害されたりする
という問題があつた。

そこで、本発明はかかる点に鑑み、上記従来の
スペアタイヤ支持構造を、スペアタイヤがダイナ
ミツクダンパとして機能するように改善すること
により、上記一次振動モーメントによる車体振動
や騒音を大幅に低減することを目的とする。

なお、スペアタイヤにダンパ機能を持たせたも
のとしては実開昭55−144182号公報に記載のもの
があるが、この構造はトラツク等のフレームの下
側にスペアタイヤを吊下げてフレームの振動を抑
えるようにしたものである。本発明は、車体パネ
ルの振動を抑えて車室内のこもり音を減少させる
ようにしたものである。

（問題点を解決するための手段） このため、本発明の講じた解決手段は、下方へ
突出形成されたフロアパネルの格納部にスペアタ
イヤを横置に支持する構造として、上記格納部に
上方に突出する取付台部を形成し、該取付台部に
弾性部材の下端部を取付け、該弾性部材の上端部
に支持部材を固着し、該支持部材上に上記スペア
タイヤのホイール部を固定部材によつて取付け、
上記スペアタイヤを上下振動可能となるようにス
ペアタイヤの下側全面および外周部が上記格納部
から離間して配設する構成としたものである。

（作用） これにより、本発明では、スペアタイヤが弾性
部材のみでフロアパネルの格納部に支持されて、
スペアタイヤをフロアパネルすなわち車体に対し
てダイナミツクダンパとして作用するよう支持し
たものである。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に
説明する。

第２図は自動車の車体後部を示し、１は車体の
フロア部を構成するフロアパネルであつて、該フ
ロアパネル１の後部にはフロアパネル１を凹陥し
てなる円形状の格納部２が形成され、該格納部２
の中央部には上方に突出した円錐台形状の取付台
部３が形成されている。

そして、上記格納部２内にはスペアタイヤ４が
格納されている。すなわち、該スペアタイヤ４は
格納部２内に横置に配置されて、そのホイール部
４ａが上記取付台部３上に取付けた弾性部材５上
に取付けられていることによりフロアパネル１に
弾性支持されているとともに、上記スペアタイヤ
４の外周部４ｂ上面がフロアパネル１面とほぼ同
一面になるように、かつ該スペアタイヤ４の下側
全面および外周部４ｂが格納部２から離間するよ
うに格納されている。上記スペアタイヤ４の外周
部４ｂ下面と格納部２の底面との間隙Ｓは、スペ
アタイヤ４が車体振動により弾性部材５の弾力に
抗して沈下した場合（図では一点鎖線で示す状
態）でも、該スペアタイヤ４の外周部４ｂ下面が
格納部２底面と接触しない寸法に設定されてい
る。

上記弾性部材５はラバーや軟質性合成樹脂等か
らなる円筒形状のものであり、該弾性部材５のバ
ネ定数は、第１図に示す振動モードＡで振動する
車体振動を減衰させるように車体の固有振動数と
異なる振動数でスペアタイヤ４を振動せしめる値
に設定されている。また、上記弾性部材５の下端
面には下部プレート６が固着され、該下部プレー
ト６は上記取付台部３にボルト７，７により固定
されている。一方、上記弾性部材５の上端面には
支持部材としての上部プレート８が固着され、該
上部プレート８上には固定部材としての締付プレ
ート９が、スペアタイヤ４のホイール部４ａを挾
持せしめた状態でボルト１０により締付固定され
ており、よつて上記スペアタイヤ４は上方への移
動量が制限された状態でフロアパネル１（車体）
に対して上下振動可能となるように構成されてい
る。尚、１１は車体後面を構成するエンドパネ
ル、１２はバンパである。

したがつて、上記実施例においては、走行中、
車体前後方向に、第１図に示すような振動モード
Ａで振動が発生した場合、フロアパネル１を含む
車体はその固有振動数で振動する。これに対し、
フロアパネル１の格納部２内に格納されたスペア
タイヤ４は、格納部２から離間した状態でもつて
弾性部材５のみを介して弾性的に支持されている
ため、上記車体固有振動数と異なる固有の振動数
で、すなわちスペアタイヤ４の質量ｍと上記弾性
部材５のバネ定数ｋとの間の関係式、ｆ＝（1/2
π）√から求められる振動数で振動する。
そのため、上記スペアタイヤ４は、車体振動を減
衰せしめるように振動して、所謂ダイナミツクダ
ンパとして作用するので、車体振動が抑制される
ことになり、こもり音等のような振動騒音を低減
することができるとともに、ハンドルの上下振動
を低減して、操縦性の向上を図ることができる。

しかも、上記スペアタイヤ４は、上方への移動
量が制限されているので、該スペアタイヤ４上に
カーペツト等を介して物を置いた場合、該物がス
ペアタイヤ４により上方に押し上げられることは
さほどなく、スペアタイヤ４上をトランクスペー
スとして有効に利用することができる。

その上、上記スペアタイヤ４の支持構造は、ス
ペアタイヤ４を取付台部３に弾性部材５を介して
取付けるという簡単な構造であるため、コスト的
にも安く実施することができる。

今、具体的に、本発明による車体振動低減効果
について実証するに、従来のスペアタイヤ支持構
造を採用した自動車（従来例）および本発明のス
ペアタイヤ支持構造を採用した自動車（本発明
例）について、車室内の騒音およびハンドルの上
下振動を測定し、その結果をそれぞれ第３図およ
び第４図に示す。第３図より、本発明例の場合に
は、従来例の場合に比べて車室内騒音が全周波数
領域に亘つて減少し、特に40〜50Hz領域では、そ
の減少量が5dB上となることが判る。また、第４
図より、本発明例の場合には、ハンドルの上下振
動が最大となつて操作上問題となる23Hz付近の領
域において、その上下振動が従来例の場合に比べ
て3dBも減少することが判る。

尚、上記実施例では、スペアタイヤ４を、円筒
形状の１個の弾性部材５を介して取付台部３に取
付けたが、円柱形状等その他各種形状の複数個の
弾性部材を介して取付台部３に取付けるようにし
てもよいのは勿論である。

（発明の効果） 以上説明したように、本発明のスペアタイヤ支
持構造によれば、スペアタイヤを車体に対してダ
イナミツクダンパとして機能するよう支持したの
で、簡単な構造でもつて車体振動を低減して、振
動騒音の低減化およびハンドルの上下振動の低減
による操縦性の向上を図ることができ、しかも、
スペアタイヤ上をトランクスペースとして有効利
用できる利点を併せ有するのである。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を例示するもので、第１
図は自動車の側面図、第２図は自動車の車体後部
の縦断側面図、第３図は車室内の騒音を測定した
測定結果図、第４図はハンドルの上下振動を測定
した測定結果図である。 １……フロアパネル、２……格納部、３……取
付台部、４……スペアタイヤ、４ａ……ホイール
部、４ｂ……外周部、５……弾性部材、８……上
部プレート、９……締付プレート、Ｓ……間隙。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 下方へ突出形成されたフロアパネルの格納部
   にスペアタイヤを横置に支持する構造であつて、
   上記格納部には上方に突出する取付台部が形成さ
   れ、該取付台部に弾性部材の下端部が取付けら
   れ、該弾性部材の上端部には支持部材が固着さ
   れ、該支持部材上に上記スペアタイヤのホイール
   部が固定部材によつて取付けられており、上記ス
   ペアタイヤは上下振動可能となるようにスペアタ
   イヤの下側全面および外周部が上記格納部から離
   間して配設されていることを特徴とする自動車の
   スペアタイヤ支持構造。