JPS6121791B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は２サイクルエンジン用のシリンダに設
けられる掃気ポート、排気ポートの如きポートの
シリンダ内壁に開口する開口部周縁を面取り加工
する方法に関するものである。

更に詳細には、シリンダ内壁に開口するポート
の開口部の少くとも上下端部を、シリンダの軸方
向に膨出する円弧状に、且つポートの軸方向に凹
状にシリンダと併せ鋳造により成形するととも
に、該ポート開口部の上記凹状部とシリンダ内壁
との境界部を押圧成形してポート開口周縁を面取
り加工し、作業の簡単、容易化、量産性を向上さ
せた面取り加工法に関する。

２サイクルエンジンはシリンダのピストン摺動
面である内壁に排気ポート及び掃気ポートが開口
している。この結果、ピストンのシリンダ内壁内
における摺動において、ピストンリングが上記開
口部で若干飛び出し、開口縁において引つ掛かり
この引つ掛けによつてリング音が雑音として外部
に放出される。そして上記ポートを方形に形成し
た場合、ピストンリングは開口部の上下端部の一
方で急激に解放されて飛び出し、他方とその全部
に亘つて摺接、干渉するため比較的大きな衝撃音
となり、ピストンの上下往復動でこれが反復し、
回転数が増えれば増える程上記音は連続し、騒音
として顕在化する。特に高性能を目的とする場合
はポート上縁は直線とし、急激な燃焼ガスの放出
及び混合ガスの吸入を必要とする為上記現象は著
しくなる。

以上の騒音対策としてシリンダ開口部のストロ
ーク側、即ち上下の部分の端縁部を円弧状に加工
しこれによりピストンリングとの当接面を徐々に
拡大し、そして徐々に縮小して相互の干渉を緩慢
にすれば摺接音は減じることができる。又ポート
開口部の上記した分とシリンダ内壁との境界部を
エツジとすることなく、この部分を湾曲させれば
摺接時の衝撃は可及的に減じることができ、摺接
音を小さくすることができる。

従来の上記したポート開口縁部の円弧状の面取
り加工は、一般的に切削加工や研削加工で行われ
ているが、これの加工が仲々困難で、特に２サイ
クルエンジンは小容積のシリンダが多く、小径の
シリンダ内でポートの開口形状に沿つて正確に加
工を行うことは面倒、煩雑であり、困難を伴う。
そしてこの加工は一部では手作業で行われるが、
この作業は熟練を要し、また得られた開口縁部の
面取り部はバラつきが発生し、精度、量産性の点
で難点がある。又精度、量産の点を考慮して機械
切削を行つた場合、上記手作業の場合も同様であ
るが切削代や研削代が多く必要で、このためポー
ト開口形状が変化し、最も大事なポートタイミン
グが狂つてしまう虞れもある。

更に以上の円弧状の成形が切削加工等によるた
め円弧状凹部とシリンダ内壁面との境界部にバリ
が発生し、このバリ取り加工を上記切削加工等と
は別に必要とする。

以上のように従来の切削加工等による方法は手
作業、機械作業を問わず切削量等が多くなつてポ
ート開口が変形する虞れがあること等は勿論、面
取り加工作業が面倒であり、且つバリ取りを必要
とすることから工数もその分多くなり、量産性の
点及び精度の点で問題があつた。

又上記に代えて方形のポート開口部をローラ等
で押圧し、この部分を円弧状に面取り加工するこ
とも提案されるが、これによると鋳鉄スリーブを
内装したシリンダ等ではポート開口部に充分の弧
状部を成形することが難かしく、精度良好に、必
要且つ充分の面取り加工は行い難く、押圧加工の
みでこれを充分に得ようとすると多数回の押圧加
工を反復する必要があり、作業性、量産性の点で
難点があり、又上記を最少で行うべき加工圧力を
極端に高めるとポート開口部が変形する虞れもあ
る。

更に、従来の押圧成形では押圧により面取りを
行うと、開口部内に返りが発生し、ポート有効開
口面積が変化するため、その返りを除去する切削
工程が必要となる。

本発明者等は２サイクルエンジン用シリンダの
ポート面取り加工における上記した問題点に鑑み
これを有効に解決すべく本発明を成したものであ
る。

本発明の目的とする処は、シリンダ内壁に開口
するポートの開口部の少くとも上下端部を、シリ
ンダ軸方向に膨出する円弧状に、且つポートの軸
方向に凹状にシリンダと併せ鋳造により成形する
とともに、該ポート開口部の上記凹状部とシリン
ダ内壁との境界部をポート内方へ押圧成形するよ
うにした２サイクルエンジン用シリンダのポート
開口部の面取り加工法を提供する。

従つて本発明の目的とする処は、シリンダ内壁
に開口するポート開口部に予じめ円弧状の凹部を
シリンダと併せ鋳造し、これに、バニシング加工
の如き押圧成形を付帯せしめるため、簡単、且つ
容易な作業で所定の面取り加工を施したシリンダ
が得られ、作業性、量産性に優れ、且つ精度良好
なポート開口部の面取り加工法を提供する。

又本発明の目的とする処は、上記と併せ、面取
部が可及的に少なく、ポート開口部を変形させた
りしてポートタイミングを変化させることが少な
く、エンジン本来の性能を阻害したり、性能低下
を来すことのない面取り加工法を提供し、更に又
上記の如く切削や研削箇所がないため、ポート開
口部、延いてはシリンダの強度も安定し、以上を
達成しつつピストンリングとポート開口部の干渉
に起因する騒音を可及的に減少させた面取り加工
法を提供する。

以下に本発明の好適実施例を添付図面に従つて
詳述する。

第１図乃至第３図は２サイクル用エンジンのシ
リンダで、第１図は縦断正面図を、第２図は第１
図２−２線断面図を、第３図は第１図３−３線断
面図を示している。

１は２サイクル用エンジンのシリンダで、図示
例は、鉄スリーブ２を鋳造一体化したタイプを示
し、スリーブ２外周の中間部乃至上部にはアルミ
ニウム合金等で成形したブロツク３が被嵌装着さ
れて一体化され、ブロツク３は外周に突設した多
数の冷却フイン４……を一体に備える。スリーブ
２の内壁５の適所には掃気ポート６……、排気ポ
ート７の如きポートが該スリーブ２の鋳造工程で
成形され、各ポート６，７はブロツク３に設けた
通路８，９で一方がクランク室等に、他方が排気
管を介して外気に連通する如く構成されている。

上記したポートの中の全部、或は適宜のもの、
例えば排気ポート７のスリーブ内壁５に開口１０
する部分は該スリーブ２の鋳造時に次の如く成形
する。

即ち、第４図及び第５図はポート７の内壁５へ
の開口部分を拡大した図で、第４図に対し第５図
は説明の便宜上拡大率を大きくしている。

開口部１０はポート７の断面を図示では台形と
したため台形とし、上辺部１０ａは短く、下辺部
１０ｂは長く、各辺の両端部を夫々対称的に傾斜
した側辺部１０ｃ，１０ｃで繋げられ、開口部１
０を構成している。

この開口部１０のストローク方（スリーブの軸
方向）の両端部である上記上辺部１０ａ及び下辺
部１０ｂの端縁部には、開口部１０の内側に凹み
且つ開口部１０のストローク方向に円弧状に凹み
凹状部１１，１２を形成する。この凹状部１１，
１２は開口部１０が開口したスリーブ内壁５に対
して図示では略直角に凹設され、凹状部１１，１
２の内側にある開口部１０の上・下辺部１０ａ，
１０ｂの外側に段を付して凹状部１１，１２が形
成されることとなる。そしてこの凹状部１１，１
２は上記の如く開口部１０の上・下辺部１０ａ，
１０ｂの各軸方向に円弧状に湾曲膨出する如く形
成され開口部１０の中心部において最も膨出する
如く形成されている。以上の凹状部１１，１２の
深さ、即ち、シリンダスリーブ内壁５から外側方
向への深さＷは、0.1mm〜0.4mm程度とし、図示で
はスリーブ内壁５の面に対して直角としたが、ス
リーブの鋳造時のこの部分の抜き勾配を考慮して
傾斜が付され、要すれば内側へ開口部１０が凹入
し、開口部との間に段部が形成されれば良い。

以上の開口部１０の上下に形成される凹状部１
１，１２はスリーブ２の鋳造時一体的に鋳造され
る。

このように予じめ鋳造で成形されたスリーブの
上記した凹状部１１，１２と、スリーブの内壁５
との境界部１１ａ，１２ａを押圧ローラの転動等
によつて押圧加工、即ちバニシング加工を施し、
この部分のエツジを面取りし、この面取りは黒皮
のまま行う。

この面取り加工装置としては、例えば第８図に
示す如き装置が用いられる。即ち、旋盤等の工作
機械のスピンドル２０に固定具２１で二股状の支
持部材２２を固着し、支持部材２２の二股の片２
２ａ，２２ｂの夫々外側に拡開する如く拡開弾性
を備え、この片２２ａ，２２ｂの先端には転動ロ
ーラ２３を夫々回転自在に支持する。

一方ベツド２４上に設けた移動台２５にはシリ
ンダ１を横向きに治具で取り付け、シリンダ１の
上記スリーブ２の内壁５内に上記転動ローラ２３
を含む片２２ａ，２２ｂを挿入し、スピンドル２
０の回動でローラ２３を開口部１０の凹状部１
１，１２の境界部１１ａ，１２ａに押しつけ、こ
の部分を押圧して塑性変形せしめ、エツジを潰し
て面取り加工する。この場合、転動ローラ２３に
よる加工は、開口部１０の上下縁部に円弧状に凹
状部が予じめ成形されているためこの部分の成形
は必要がなく、純粋にエツジ部である境界部１１
ａ，１２ａの面取り加工のみとなり、加工は容易
であつて、短時間に行うことができる。

この面取り加工後の状態を第６図で示した。

以上の如く押圧による面取り加工のみでピスト
ンリングとの干渉を極めて少なく、且つ干渉も円
弧状の部分で徐々に行えて騒音発生の少ないポー
トが得られるが、図示実施例の如く凹状部１１，
１２で開口部１０の上・下辺部１０ａ，１０ｂを
凹ませた結果、面取り加工は開口部１０と干渉し
ないで行うことができ、開口部の変形やポートタ
イミングの狂い等は発生しない。又予じめ凹状部
を鋳造時に成形するため、精度の点でも極めて良
好なものが得られ押圧加工も上記の如く面取り加
工であるため精度を維持することができる。

以上の図示実施例では開口部１０の上・下辺部
１０ａ，１０ｂにのみ軸方向に膨出し、内側へ凹
む円弧状の凹状部１１，１２を形成したが、第７
図に示す如く開口部１０の左右の側辺１０ｃ，１
０ｃにスリーブ２の内壁５の円周方向に膨出する
円弧状の凹状部１３，１３を設けても良く、この
凹状部１３，１３も上記と同様に設けられ、これ
の内壁５との境界部１３ａ，１３ａを上記と同様
に押圧加工して面取りする。この実施例に従えば
ピストンリングとの摺接において、開口部１０の
左右も徐々に摺接を増減し、上記騒音防止効果を
一層向上させることとなる。

第９図及び第１０図は本発明の第２実施例を示
し、この実施例は上記凹状部１１，１２を凹段部
とせず、開口部１０の上・下辺部１０ａ，１０ｂ
をシリンダスリーブ内壁５に対し雌テーパー状に
予じめカツトする如く鋳造時に成形し、このテー
パー状凹状部１１，１２を第４図に示す如く円弧
状に設定する。この凹状部１１，１２は開口部１
０の円周方向の中央部で最も量が多く、端部では
開口部１０の上・下辺部１０ａ，１０ｂと合流す
ることとなる。

以上の如くテーパー凹状部１１，１２を鋳造時
に成形し、成形後黒皮状態のまま境界部１１ａ，
１２ａを上記と同様の手法で面取り加工し、第１
０図の如き製品を得る。

この場合においてもテーパー状であつて円弧状
の凹状部を予じめ成形するため、精度の優れた開
口部成形が行え、押圧による面取り加工のみであ
るため精度維持が良好である。又以上では上・下
辺部に凹状部を設けるとしたが、左右の側辺に凹
状部を設けても良いことは上記実施例と同様であ
る。

以上図示実施例について説明したが、図示では
鋳造スリーブをアルミニウム合金製シリンダに圧
入又は鋳造等して固定するタイプを示し、これに
ついて説明したが、本発明はかかる鋳造スリーブ
入シリンダに実施する場合に限定されるものでは
ない。即ち、アルミニウム合金製シリンダの内面
に線爆溶射やプラズマ溶射等を施して硬化被膜を
形成したタイプのシリンダにも適用することがで
き、この場合、シリンダの鋳造時にポート開口部
と併せこの部分に上記凹状部を形成し、爾後押圧
面取り加工することにより上記と同様の効果を得
ることができる。

又以上の説明では排気ポート７の開口部に上記
加工を施すと説明したが、掃気ポートも同様に形
成し、掃気ポートの数が多い場合には、その内の
メインのそれに上記加工を施すものとし、掃気ポ
ートの全部に上記加工を施せば騒音抑制効果は極
めて良好なものとなる。

以上で明らかな如く本発明によれば、ポートの
シリンダ内壁に開口する開口部周縁を予じめ円弧
状に凹状部としてシリンダ鋳造と併せて成形し、
爾後凹状部とシリンダ内壁との境界部を押圧加工
によつて面取りするようにしたため、ピストンリ
ングと開口部の摺接を徐々に増減する円弧状凹部
を精度良好に、容易に成形することができる。

特に本発明は切削加工や研削加工を行わないた
め凹状部の成形が容易であり、特殊な工作手段や
小径シリンダの困難、面倒な開口部成形を必要と
せず、容易に精度良好な面取り加工を行うことが
できるとともに、切削、研削によらないためバリ
等の発生は一切無く、これの除去作業も必要とせ
ず、困難、且つ面倒で熟練を要した切削、研削、
バリ取り、面取り作業を廃止し、押圧面取り加工
のみで精度良好なシリンダのポートが得られる。

又本発明によれば、上記の如く円弧状凹部を予
じめ成形し、これの精度を高め、エツジ部を押圧
面取り加工するのみであるため、ポート形状も変
形したりすることがなく、従来面取り加工で往々
に発生したポートタイミングの狂い、エンジン性
能の低下等を防止し、エンジンの性能を充分に発
揮せしめ、且つ騒音防止効果に優れた２サイクル
エンジン用のシリンダを得ることができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例を示すもので、第１図
は２サイクルエンジン用のシリンダの縦断側面
図、第２図は第１図２−２線断面図、第３図は第
１図３−３線断面図、第４図はポート開口部の拡
大正面図、第５図は同拡大側面図、第６図は面取
り加工後の第５図と同様の図、第７図は開口部の
変更実施例の第４図と同様の図、第８図は面取り
加工装置の一例を示す図、第９図は本発明の第２
実施例を示す開口部の第５図と同様の図、第１０
図は面取り加工後の同様の図である。 尚、図面中１はシリンダ、２はシリンダスリー
ブ、３はシリンダブロツク、６，７はポート、１
０は開口部、１１，１２，１３は凹状部である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ シリンダ内壁に開口するポートの開口部のシ
   リンダ内壁側外周縁とこれよりポート内方へ凹ん
   だ内周縁を有する凹部を設けたシリンダを鋳造に
   て成形し、前記シリンダ内壁と凹部との境界をな
   す前記外周縁部を押圧成形により面取り仕上げし
   た２サイクルエンジン用シリンダのポート開口面
   取加工方法。