JPH1171612A - 溶鋼の脱炭精錬方法 - Google Patents

溶鋼の脱炭精錬方法

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JPH1171612A
JPH1171612A JP24958697A JP24958697A JPH1171612A JP H1171612 A JPH1171612 A JP H1171612A JP 24958697 A JP24958697 A JP 24958697A JP 24958697 A JP24958697 A JP 24958697A JP H1171612 A JPH1171612 A JP H1171612A
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decarburizing
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molten
oxygen gas
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Kenichiro Miyamoto
健一郎 宮本
Katsuhiko Kato
勝彦 加藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 真空槽の天蓋部及び排気ダクト内に溶鋼のス
プラッシュが付着、堆積するのを抑制し、溶鋼歩留り及
び操業性の向上が可能な溶鋼の脱炭精錬方法を提供す
る。 【解決手段】 取鍋12内に保持された溶鋼11に、真
空槽14に連結された浸漬管13の下部を浸漬し、減圧
された浸漬管13内に吸引される溶鋼11の湯面17に
酸素ガス16を吹付けると共に、取鍋12の底部から溶
鋼11に不活性ガス20を供給し、溶鋼11を攪拌して
脱炭精錬を行う方法において、真空槽14の側壁の下部
に配置された複数の酸素供給ノズル18から、酸素ガス
16を湯面17に対して15〜75゜の吹付け角度θを
持たせて吹付けて、湯面17で発生する溶鋼飛沫の真空
槽14への上昇を抑制する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶鋼の脱炭精錬方
法に係り、更に詳しくは、浸漬管内のスプラッシュ(溶
鋼飛沫)の飛散を抑制し、排気ダクト等内への地金の付
着堆積を防止できる溶鋼の脱炭精錬方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、溶鋼の減圧下での吹酸脱炭方法と
しては、一般的にRH−OB法やステンレス鋼の仕上げ
脱炭精錬方法であるVOD法等が広く知られている。例
えばVOD法では、取鍋全体を真空容器内に入れるか、
もしくは取鍋上部に蓋をして取鍋内を減圧し、真空容器
の上部又は蓋に配置された酸素ランスから酸素ガスを湯
面に吹付けながら、取鍋底部のポーラスプラグから溶鋼
内にアルゴン(Ar)ガスを吹込んで溶鋼を攪拌し、脱
炭精錬が行われる。また、特開平2−133510号公
報においては、取鍋内に浸漬した一本足の浸漬管(直胴
型浸漬管)内の湯面から2〜5mの高さの真空槽内に遮
蔽体を設置し、この遮蔽体で酸素ブローによる湯面から
のスプラッシュの飛散を防止して真空槽や排気ダクト内
への地金付着や堆積成長を防止する方法が提案されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、RH−
OB法やVOD法では、吹酸脱炭時に湯面で発生する溶
鋼飛沫(スプラッシュ)が排気ガスと共に上方に吹上げ
られて、真空槽内や天井部(天蓋部)、排気ダクト等へ
地金となって付着して、脱ガス処理時における所定の真
空度への到達が困難になって操業性の悪化を招くと共
に、数チャージ処理後には天蓋部及び排気ダクト等の地
金除去作業が必要になり、また、溶鋼歩留が低下すると
いう問題があった。また、特開平2−133510号公
報に示される遮蔽体を用いる方法においては、排気ダク
ト等の地金除去作業を行う必要性は軽減されるものの、
遮蔽体の交換作業を行うことが必要である等、スプラッ
シュの発生に係る問題は未解決となっていた。
【0004】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
で、真空槽の天蓋部及び排気ダクト内に溶鋼のスプラッ
シュが付着、堆積するのを抑制し、溶鋼歩留り及び操業
性の向上が可能な溶鋼の脱炭精錬方法を提供することを
目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的に沿う請求項1
記載の溶鋼の脱炭精錬方法は、取鍋内に保持された溶鋼
に、真空槽に連結された浸漬管の下部を浸漬し、減圧さ
れた該浸漬管内に吸引される前記溶鋼の湯面に酸素ガス
を吹付けると共に、前記取鍋の底部から前記溶鋼に不活
性ガスを供給し、前記溶鋼を攪拌して脱炭精錬を行う方
法において、前記真空槽の側壁の下部に配置された複数
の酸素供給ノズルから、前記酸素ガスを前記湯面に対し
て15〜75゜の吹付け角度を持たせて吹付けて、前記
湯面で発生する溶鋼飛沫の前記真空槽への上昇を抑制す
る。請求項2記載の溶鋼の脱炭精錬方法は、取鍋内に保
持された溶鋼に、真空槽に連結された浸漬管の下部を浸
漬し、減圧された該浸漬管内に吸引される前記溶鋼の湯
面に酸素ガスを吹付けると共に、前記取鍋の底部から前
記溶鋼に不活性ガスを供給し、前記溶鋼を攪拌して脱炭
精錬を行う方法において、前記真空槽内の前記湯面上方
に配置された複数の酸素供給パイプから前記湯面に前記
酸素ガスを吹付けて、前記湯面で発生する溶鋼飛沫の前
記真空槽への上昇を抑制する。請求項3記載の溶鋼の脱
炭精錬方法は、請求項1又は2記載の溶鋼の脱炭精錬方
法において、前記真空槽の天蓋部の温度を1300〜1
700℃に制御する。請求項4記載の溶鋼の脱炭精錬方
法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶鋼の脱炭
精錬方法において、前記真空槽の槽内真空度を10〜3
00torrに制御する。請求項5記載の溶鋼の脱炭精
錬方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶鋼の
脱炭精錬方法において、前記溶鋼がクロムを5重量%以
上含むステンレス溶鋼である。
【0006】
【発明の実施の形態】続いて、添付した図面を参照しつ
つ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発
明の理解に供する。図1に示すように、本発明の第1の
実施の形態に係る溶鋼の脱炭精錬方法を適用する溶鋼の
脱炭精錬装置10は、溶鋼の一例であるステンレス溶鋼
11を貯留する取鍋12と、取鍋12内のステンレス溶
鋼11に浸漬された直胴型の浸漬管13と、浸漬管13
に連結される真空槽14と、真空槽14の一側部に接続
される排気ダクト15と、真空槽14の側壁に配置さ
れ、その先端部には酸素ガス16を浸漬管13内のステ
ンレス溶鋼11の湯面17に吹込むための4本の酸素供
給ノズル18とを備えている。以下、これらについて説
明する。取鍋12は、有底円筒形の容器で、外側の鉄皮
の内側に耐火物が内張りされたもので、底部には、ステ
ンレス溶鋼11の攪拌用のポーラスプラグ19が設けら
れており、ポーラスプラグ19からステンレス溶鋼11
内に不活性ガスの一例であるアルゴンガス20を吹込ん
でステンレス溶鋼11を攪拌している。
【0007】真空槽14の下部の、浸漬時に浸漬管13
内のステンレス溶鋼11の湯面17より上方には、減圧
下での脱炭精錬時に浸漬管13内のステンレス溶鋼11
に酸素ガス16を吹込むための耐火性の酸素供給ノズル
18が、円周方向に90°間隔で4本、それぞれの酸素
供給口を下方に向けて傾斜させ配置されている。真空槽
14の上部の天蓋部21近傍には、図示するように、天
蓋加熱用のバーナー22が設けられており、必要に応じ
て(スプラッシュの付着、成長が発生する場合)バーナ
ー22によってLPGガスを燃焼させて操業中に天蓋部
21の近傍に付着するスプラッシュを加熱して溶融し、
再び浸漬管13内のステンレス溶鋼11内に戻すことが
できる。バーナー22の燃焼を制御して天蓋部21の保
持温度を1300〜1700℃に調整している。もし、
保持温度が1300℃未満であれば天蓋部21の温度不
足により地金付着の成長が促進され、一方、保持温度が
1700℃を超える場合には、地金付着の成長は促進さ
れないものの、真空槽14内の温度が高温となって耐火
物の溶損が促進されることになる。
【0008】なお、浸漬管13、真空槽14及び排気ダ
クト15は外側の鉄皮の内側に耐火物が内張りされてお
り、それぞれの接続部はシールされている。さらに、真
空槽14の上部の天蓋部21の近傍には、図示しない圧
力検出端と温度検出端とが設けられ、検出した値に基づ
いて、図示しない制御装置等を介して所定の圧力や温度
に調整可能な構成としている。なお、浸漬管13と取鍋
12との内径比(浸漬管13の内径/取鍋12の内径)
は約0.5程度としている。
【0009】真空槽14の下部側壁に設けられるそれぞ
れの酸素供給ノズル18の吹付け角度θは、浸漬管13
の内径D、ステンレス溶鋼11の湯面17から酸素供給
口までの高さH、酸素供給口の内径d、噴射角度φ及び
酸素供給ノズル18の数等に依存するが、10〜90
°、好ましくは、15〜75°の範囲がよい。酸素供給
ノズル18の吹付け角度θが15°未満の場合には、各
酸素供給ノズル18からの酸素ガス16のジェット流が
干渉することがなく、湯面17の中央部に酸素ガス16
のジェット流が到達しない領域が形成されることに加
え、上吹きガスの衝突に起因して生じるスプラッシュ粒
も湯面17に対して垂直に近い角度で上昇するため、ス
プラッシュの上昇を抑制する効果が減少し、その結果、
真空槽14内に多量のスプラッシュが付着、堆積するこ
とになる。一方、吹付け角度θが75°を超えると、ス
テンレス溶鋼11への酸素ガス16のジェット流の衝突
強度が弱くなるので、脱炭を行なうために適正なキャビ
ティが形成されず、即ちスラグの下の湯面17に酸素ガ
ス16が達することができず、脱炭酸素効率が低下する
ことになる。同時に酸素ガス16のジェット流そのもの
が対向壁に直接吹付けられることになり、これにより耐
火物への酸素アタックによる寿命の低下を招くことにな
る。
【0010】次に、本発明の第1の実施の形態に係る溶
鋼の脱炭精錬方法を説明する。クロム濃度が5重量%の
取鍋12内のステンレス溶鋼11に浸漬管13を浸漬
し、浸漬管13及び真空槽14内を真空下に減圧すると
共に、取鍋12の底部のポーラスプラグ19からアルゴ
ンガス20を供給しつつ、かつ酸素供給ノズル18から
酸素ガス16を噴出させ、酸素ガス16のジェット流が
湯面17の上方で干渉するようにして、浸漬管13内の
ステンレス溶鋼11の湯面17の全体がカバーできるよ
うに吹付けると共に、必要に応じてバーナー22の燃焼
を制御して天蓋部21の保持温度を1300〜1700
℃に調整しながら真空下での脱炭精錬を行なう。なお、
槽内真空度は10〜300torrとするのが好まし
い。
【0011】この脱炭精錬の際に、酸素供給ノズル18
の吹付け角度θを15〜75°の範囲で酸素ガス16を
ステンレス溶鋼11の湯面17に吹付けているので、そ
れぞれの酸素供給ノズル18から吹出される酸素ガス1
6のジェット流が干渉しあって、湯面17ではジェット
流によって下向きの力を受けるため、これにより湯面1
7付近で発生したスプラッシュの上昇を抑制することが
できる。同時に、酸素ガス16のジェット流が直接浸漬
管13の対向する内壁に到達することがないので、酸素
アタックによる耐火物の寿命の低下を避けることができ
る。
【0012】また、必要に応じて脱炭精錬の際に、バー
ナー22の燃焼制御により、天蓋部21の保持温度を1
300〜1700℃に調整することにより、たとえスプ
ラッシュが天蓋部21に上昇して付着したとしても、付
着したスプラッシュを溶融して落下させることができ
る。従って、真空槽14の天蓋部21に多量の地金が付
着することを防止できる。
【0013】この際、真空槽14内の槽内真空度は10
〜300torrとしているので、クロム酸化ロスが増
加することがなく維持できる。また、これによって、脱
炭酸素効率を適正範囲に確保できるので、吹錬時間が長
くなることによる還元材原単位の増加を防止できる。同
時に、スプラッシュの過剰発生による付着地金の増大も
防止できる。
【0014】
【実施例】本発明の第1の実施の形態に係る溶鋼の脱炭
精錬方法における実施例について表1に基づいて、比較
例と比較しながら説明する。なお、実施例及び比較例で
の主たる操業条件は以下の通りである。吹酸用の酸素ガ
ス流量は20Nm3 /H・Tsteel、酸素供給ノズ
ル18の個数は4個、溶鋼処理量は150T/チャー
ジ、また、溶鋼中の炭素濃度を初期値約0.65wt%
から約0.05wt%のレベルまで脱炭処理している。
【0015】
【表1】
【0016】表1から明らかなように、比較例9では、
酸素供給ノズル18の吹付け角度θが10°と小さいの
で、各ノズルからの酸素ガスのジェット流が干渉するこ
とがなく、それにより湯面の中央部に酸素ガスのジェッ
ト流が到達しない領域が形成されるので、スプラッシュ
の上昇を抑制する効果が減少し、その結果真空槽14内
に多量の地金が付着、堆積することになる。一方、比較
例10では、吹付け角度θが85°と傾斜し過ぎるた
め、ステンレス溶鋼に対する酸素ガスのジェット流の衝
突強度が弱くなるので、脱炭を行なうために適正なキャ
ビティが湯面に形成されず、その結果脱炭酸素効率が4
2%と低下することになると共に、酸素ガスのジェット
流そのものが浸漬管13の対向壁に直接吹付けられるこ
とになり、これにより酸素アタックによる耐火物の溶損
が増大することになる。また、比較例11では、天蓋部
21の温度が1280℃と低過ぎるため、天蓋部21の
温度不足により地金付着の成長が促進され、一方、比較
例12では、温度が1730℃と高過ぎるため、地金付
着の成長は促進されないものの、真空槽14内の温度が
高温となって耐火物の溶損が促進されることになる。
【0017】さらに、比較例13では、真空槽14内の
平均真空度が350torrと低真空であるため、脱炭
時のクロム酸化ロスが増加し、それによって脱炭酸素効
率が36%と低下し、脱炭時間が長くなると共に、還元
材の原単位が増加することになる。一方、比較例14で
は、平均真空度が7torrで高真空であるため、スプ
ラッシュが過剰発生し、この結果地金付着が増大するこ
とになる。これに対して、本実施例1〜8では、酸素供
給ノズル18の吹付け角度θ、天蓋部21の温度、及び
真空槽14内の平均真空度が所定の範囲内に制御されて
いるため、脱炭酸素効率は70%以上、地金の付着量も
少なく、かつ耐火物の溶損も少なかった。
【0018】次いで、本発明の第2の実施の形態に係る
溶鋼の脱炭精錬方法について、図2を参照しながら説明
する。なお、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に
ついては、同一の符号を付し、その詳しい説明を省略す
る。図2に示すように、本発明の第2の実施の形態に係
る溶鋼の脱炭精錬方法を適用する溶鋼の脱炭精錬装置3
0は、溶鋼の一例であるステンレス溶鋼11を貯留する
取鍋12と、取鍋12内のステンレス溶鋼11に浸漬さ
れた浸漬管13と、浸漬管13に連結される真空槽31
と、真空槽31の一側部に接続される排気ダクト15
と、真空槽31の天蓋部32を貫通し、浸漬管13内の
ステンレス溶鋼11の湯面17に酸素ガス16を吹込む
ための酸素供給パイプ33、34、35とを備えてい
る。以下、これらについて詳細に説明する。
【0019】酸素供給パイプ33、34、35は、真空
槽31の天蓋部32に略等間隔に天蓋部32を貫通して
垂直方向に、すなわち湯面17上方に配置されている。
図2に示すように、隣接する酸素供給パイプ33、3
4、35の下端の酸素供給口から噴出される酸素ガス1
6のジェット流が湯面17の上方で重なり合うようにし
て、酸素ガス16のジェット流によって浸漬管13内の
ステンレス溶鋼11の湯面17の全体がカバーできるよ
うに配置されている。なお、酸素供給パイプの数を3に
しているがこれに限定されるものではなく、必要に応じ
て、湯面17から発生するスプラッシュの上昇を効果的
に抑制できる個数の酸素供給パイプを配置してもよい。
酸素供給パイプ33、34、35は、真空槽31の天蓋
部32の貫通孔とシール性を維持されながら、図示しな
い昇降装置により上下動可能となっている。
【0020】真空槽31の上部の天蓋部32近傍には、
図示するように、天蓋加熱用のバーナー22が設けられ
ており、必要に応じて(スプラッシュの付着、成長が発
生する場合)バーナー22によってLPGガスを燃焼さ
せて操業中に天蓋部32の近傍に付着するスプラッシュ
を加熱して溶融し、再び浸漬管13内のステンレス溶鋼
11内に戻すことができる。バーナー22の燃焼を制御
して天蓋部32の保持温度を1300〜1700℃に調
整している。もし、保持温度が1300℃未満であれば
天蓋部32の温度不足により地金付着の成長が促進さ
れ、一方、保持温度が1700℃を超える場合には、地
金付着の成長は促進されないものの、真空槽31内の温
度が高温となって耐火物の溶損が促進されることにな
る。
【0021】次に、前記溶鋼の脱炭精錬装置30を用い
る本発明の第2の実施の形態に係る溶鋼の脱炭精錬方法
について説明する。まず、クロム濃度が5重量%である
取鍋12内のステンレス溶鋼11に浸漬管13を浸漬
し、浸漬管13及び真空槽31内を減圧する。次に、取
鍋12の底部のポーラスプラグ19からアルゴンガス2
0を供給しつつ、かつ酸素供給パイプ33、34、35
から酸素ガス16を噴出させ、酸素ガス16のジェット
流が湯面17の上方で重なり合う(干渉する)ようにし
て、浸漬管13内のステンレス溶鋼11の湯面17全体
がカバーできるように吹付ける。そして、必要に応じて
バーナー22の燃焼を制御して天蓋部32の保持温度を
1300〜1700℃に調整しながら真空下での脱炭精
錬を行なう。なお、以下の理由から槽内真空度は10〜
300torrの範囲とするのが好ましい。これは、槽
内真空度が10torrより小さいと、スプラッシュが
急激に発生してスプラッシュの抑制が困難になり、逆に
300torrを超えると真空脱炭精錬の効率が極端に
低下することによる。
【0022】従来の方法では、1本の酸素ランスにより
酸素ガスを浸漬管内のステンレス溶鋼の上方から吹付け
ていたため、酸素ガスのジェット流が湯面上のすべての
空間をカバーできず、又はカバーできたとしてもジェッ
ト流の外周部付近ではジェット流による下向きの力が弱
いので、スプラッシュの上昇を抑制することができず、
真空槽の天蓋部や排気ダクト内にスプラッシュが付着し
ていたが、本実施の形態では、隣接する酸素ガス16の
ジェット流が湯面17の上方で互いに干渉するようにし
て、浸漬管13内のステンレス溶鋼11の湯面17の全
体がカバーできるように酸素ガス16を吹付けているの
で、この酸素ガス16のジェット流によって、湯面17
の近傍で発生するスプラッシュの上昇(詳細には、スプ
ラッシュ発生直後の上昇速度(初速))を抑制すること
ができ、その結果、真空槽31内に多量のスプラッシュ
が付着、堆積するのを防止できる。
【0023】また、従来例のような1本の酸素ランスで
吹錬を行う場合には、多孔ノズルの採用により、湯面に
おける酸素吹付け面を広くカバーすることが行われてい
たが、1本のランスを多孔化して用いるだけでは、酸素
吹付け面の広域化には限界があり、かつ、ノズルの吹付
け中心部以外の領域では吹付け強度が弱く、さらに最も
活発に脱炭反応が行われる湯面のキャビティも1ヶ所し
か形成されないので、脱炭酸素効率の向上効果に限界が
あった。しかし、本実施の形態では、複数の酸素供給パ
イプ33、34、35の酸素供給口から酸素ガス16を
効果的に噴出させているので、浸漬管13内の湯面17
のほぼ全域を酸素吹付け面としてカバーすることが可能
であり、かつ、脱炭反応の起こる際の主要部となるキャ
ビティを複数形成させることができ、脱炭酸素効率を高
く維持できる。同時に、酸素ガス16のジェット流の噴
出方向が浸漬管13及び真空槽31の内壁に対して平行
となっているので、これにより耐火物への酸素アタック
による寿命の低下を招くことも防止できる。
【0024】このように、本実施の形態では、複数の酸
素供給パイプ33、34、35から噴出される酸素ガス
16のジェット流で湯面17上をカバーすることがで
き、かつ湯面17上方に略均一でしかも適正な酸素ガス
16のジェット流による力を形成できるので、従来の問
題点を解消できる。
【0025】本実施の形態においては、天蓋部の温度を
維持するためにバーナーを設置しているが、この近傍の
温度を1300〜1700℃に維持可能であれば、その
他の方法でも構わない。また、溶鋼としてクロムを含む
ステンレス溶鋼について説明したが、これに限定される
ことなく本発明を適用できる。酸素供給ノズルの個数を
4個として説明したが、2又は3個、5個以上とするこ
ともできる。さらに、複数の酸素供給パイプの配置を等
間隔とするよう説明したが、噴出される酸素ガスのジェ
ット流が溶鋼の全ての表面をカバーできれば、この限り
ではない。本実施の形態においては、浸漬管内のステン
レス溶鋼の湯面に酸素ガスを吹付けるために、複数の酸
素供給パイプを用いたが、これに限定されず、例えば従
来の1本の酸素ランスの先端部に、その外周が浸漬管の
内壁と所要の隙間を有する浮袋形状(環状)のヘッダー
を設け、該ヘッダーの下部に、第1の実施の形態で用い
た酸素供給ノズルと同じように、円周方向に所要数で、
所要の吹付け角度を備えた酸素供給口を設けた構造とす
ることもできる。
【0026】
【発明の効果】請求項1及びこれに従属する3〜5記載
の溶鋼の脱炭精錬方法においては、複数の酸素供給ノズ
ルが真空槽の側壁下部に取付けられて、酸素ガスを湯面
に対して特定角度となる斜め下方に吹付けているので、
確実に酸素ガスを所定の位置及び所定の吹付け角度で吹
付けることができ、スプラッシュの上昇を効果的に抑制
して真空槽の天蓋部や排気ダクト内での地金の付着を防
止し、溶鋼の歩留を向上すると共に、安定した操業が可
能となる。請求項2及びこれに従属する3〜5記載の溶
鋼の脱炭精錬方法においては、真空槽内の湯面上方に配
置された複数の酸素供給パイプから前記湯面に酸素ガス
を吹付けて、複数の酸素供給口から噴出される酸素ガス
のジェット流を形成して、湯面上に略均一でしかも適正
な抑制力を形成でき、これによってスプラッシュの上昇
を効果的に抑制することができると共に、耐火物への酸
素アタックを低減でき、耐火物の寿命を延長することが
できる。
【0027】特に、請求項3記載の溶鋼の脱炭精錬方法
においては、真空槽の天蓋部の温度を1300〜170
0℃に制御しているので、真空槽の天蓋部に付着するス
プラッシュを溶融し落下することができ、さらに溶鋼の
歩留りを向上できる。請求項4記載の溶鋼の脱炭精錬方
法においては、真空槽の槽内真空度を10〜300to
rrに制御しているので、スプラッシュの発生量をさら
に効果的に抑制できると共に、脱炭酸素効率を適正範囲
に維持することができる。また、請求項5記載の溶鋼の
脱炭精錬方法においては、溶鋼がクロムを5重量%以上
含むステンレス溶鋼であるので、溶鋼歩留り及び操業性
を向上してステンレス鋼を製造する際の生産性が向上
し、しかもクロム酸化ロスを適正範囲に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る溶鋼の脱炭精
錬方法を適用する溶鋼の脱炭精錬装置である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る溶鋼の脱炭精
錬方法を適用する溶鋼の脱炭精錬装置である。
【符号の説明】
10 溶鋼の脱炭精錬装置 11 ステンレス
溶鋼(溶鋼) 12 取鍋 13 浸漬管 14 真空槽 15 排気ダクト 16 酸素ガス 17 湯面 18 酸素供給ノズル 19 ポーラスプ
ラグ 20 アルゴンガス(不活性ガス) 21 天蓋部 22 バーナー 30 溶鋼の脱炭
精錬装置 31 真空槽 32 天蓋部 33 酸素供給パイプ 34 酸素供給パ
イプ 34 酸素供給パイプ θ 吹付け角度 φ 噴射角度 D 内径 d 内径 H 高さ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 取鍋内に保持された溶鋼に、真空槽に連
    結された浸漬管の下部を浸漬し、減圧された該浸漬管内
    に吸引される前記溶鋼の湯面に酸素ガスを吹付けると共
    に、前記取鍋の底部から前記溶鋼に不活性ガスを供給
    し、前記溶鋼を攪拌して脱炭精錬を行う方法において、 前記真空槽の側壁の下部に配置された複数の酸素供給ノ
    ズルから、前記酸素ガスを前記湯面に対して15〜75
    ゜の吹付け角度を持たせて吹付けて、前記湯面で発生す
    る溶鋼飛沫の前記真空槽への上昇を抑制することを特徴
    とする溶鋼の脱炭精錬方法。
  2. 【請求項2】 取鍋内に保持された溶鋼に、真空槽に連
    結された浸漬管の下部を浸漬し、減圧された該浸漬管内
    に吸引される前記溶鋼の湯面に酸素ガスを吹付けると共
    に、前記取鍋の底部から前記溶鋼に不活性ガスを供給
    し、前記溶鋼を攪拌して脱炭精錬を行う方法において、 前記真空槽内の前記湯面上方に配置された複数の酸素供
    給パイプから前記湯面に前記酸素ガスを吹付けて、前記
    湯面で発生する溶鋼飛沫の前記真空槽への上昇を抑制す
    ることを特徴とする溶鋼の脱炭精錬方法。
  3. 【請求項3】 前記真空槽の天蓋部の温度を1300〜
    1700℃に制御する請求項1又は2記載の溶鋼の脱炭
    精錬方法。
  4. 【請求項4】 前記真空槽の槽内真空度を10〜300
    torrに制御する請求項1〜3のいずれか1項に記載
    の溶鋼の脱炭精錬方法。
  5. 【請求項5】 前記溶鋼がクロムを5重量%以上含むス
    テンレス溶鋼である請求項1〜4のいずれか1項に記載
    の溶鋼の脱炭精錬方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002363634A (ja) * 2001-06-08 2002-12-18 Kawasaki Steel Corp 真空脱ガス処理における真空度異常検知判定方法および厚板の内部品質改善方法
JP2010132980A (ja) * 2008-12-05 2010-06-17 Jfe Steel Corp Rh真空脱ガス槽天蓋への地金付着抑制方法
CN102732684A (zh) * 2012-06-12 2012-10-17 河北钢铁股份有限公司邯郸分公司 一种在线快速更换rh密封气囊的方法

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