JPH0630837Y2 - 吹込みランスを設けた溶鋼の真空脱ガス装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本考案は吹込みランスを設けた溶鋼の真空脱ガス装置に
関するもので、特にRH式脱ガス処理中の溶鋼に対し、微
粉状脱硫剤の吹込みを行う吹込みランスの寿命延長を図
ることを目的としたものである。

〈従来の技術〉 溶鋼の脱硫技術としては取鍋に受けた溶鋼中に脱硫剤を
キャリアガスと共に吹込む取鍋インジェクション方式
と、脱硫剤を予め添加した溶鋼にガスを吹込んで攪拌す
る取鍋ガス吹き強攪拌方式が一般的である。

これらの方式はいずれもスラグ−メタル間反応を主体に
しているため、復リンや合金成分のロス、および温度降
下が大きいなどの問題があり、さらに水素や窒素の厳し
い鋼種あるいは極低硫鋼についてはRH式脱ガス装置等を
用いた脱ガス処理を必要とするので処理工程が複雑にな
る不利が加わる。

これらの諸問題を解決するものとして第４図に示すよう
にRH脱ガス装置において溶鋼鍋６から真空槽１内を環流
する溶鋼８に槽上部より脱硫剤を添加する技術、第５図
に示すように真空槽１内へ溶鋼８を導く上昇側浸漬管５
ａに設けた環流用不活性ガスの吹込み口12からタンク９
内の微粉状脱硫剤を不活性ガスと共に吹込む技術（特公
昭45-22204号公報参照）が提案されている。第４図およ
び第５図において５ｂは下降側浸漬管を示している。し
かるに前者は脱硫剤の反応効率が低すぎ、また後者は環
流用不活性ガスの吹込み口径が小さいため、脱硫剤の吹
込み量が少なすぎることによりいずれも脱硫効果が充分
に得られない。

そこでこれらの問題点を解決する技術として第６図に示
すように真空槽１と溶鋼鍋６とのすきまにキャスタブル
で被覆した吹込ランス３を昇降装置13によって斜め方向
に昇降させて微粉状脱硫剤を不活性ガスと共に溶鋼鍋６
の溶鋼８中に吹込む技術、あるいは第７図に示すように
上昇側浸漬管５ａの下方中央より吹込ランス３の先端部
ノズル７から微粉状脱硫剤を不活性ガスと共に溶鋼８の
上昇流中に吹込む技術（特公昭61-59375号公報参照）が
提案されている。

前記第６図および第７図に示す手段においては、吹込み
ランスの取付けや脱着手段が規定されていないばかりで
なく、溶鋼による吹込みランスの熱変形が考慮されてお
らず鍋の昇降、あるいは真空槽の昇降に対して吹込みラ
ンスの熱変形による曲がりの程度によっては吹込みラン
スが浸漬管の下方に入らなかったり、取出せなくなった
りするという問題点がある。

ところで、この種の吹込みランス構造に関しては種々の
提案がなされている。

例えば特公昭56-19368号公報には吹込みランスを上下２
個の分割構造にしてランスの着脱を容易とするものが、
また特開昭51-135803号公報にはランス用鋼管の外側に
耐火物層を被覆し、更にその外側に多数の紙管を以て被
覆することによって損耗を低減するもの、特公昭55-341
6号公報には吹込みランスに複数個の上向きノズルを設
けることによりスラグによるノズルの閉塞や容器底部の
損傷を防止するもの、特開昭57-32314号公報には吹込み
ランスを内外２重構造にし外管に冷媒を流すことにより
ランス先端部や側壁部の溶損を防止するものが、更には
実開昭62-55547号公報にはランスのコーティング材の間
に多数のラスを巻くことにより寿命延長を図るものが提
案されている。

しかるに前記公報に提案されているものはいずれも吹込
みランスの内部構造や先端部構造に関するものであり、
ランス耐火物の寿命延長などにそれなりの効果はあるけ
れども真空脱ガス槽と溶鋼鍋との隙間を通してキャスタ
ブル耐火物で被覆した吹込みランスを溶鋼中に浸漬し微
粉状脱硫剤を吹込むには以下に説明するような解決すべ
き問題点を残している。

〈考案が解決しようとする課題〉 吹込みランスから溶鋼中に不活性ガスと共に微粉状脱硫
剤を吹込むと吹込みランスが振動するばかりでなく脱ガ
ス槽の上昇側浸漬管に吸引される溶鋼の上昇流あるいは
溶鋼により浮力を受ける。このため前述のように吹込み
ランスに曲げ力が加わり熱変形を生じたりキャスタブル
耐火物に亀裂が生じる。またこのような吹込みランスの
熱変形による曲りの程度によっては溶鋼鍋の昇降あるい
は真空脱ガス槽の昇降に対して吹込みランスが浸漬管の
下方に入らなかったり取り出せなくなったりするという
問題点がある。

本考案の目的は上記従来技術で未解決であった吹込みラ
ンス形状や取付手段を改善することにより上記従来技術
の問題点を解決し脱硫処理を安定して行える溶鋼の真空
脱ガス装置を提供することを目的とするものである。

〈課題を解決するための手段〉 上記目的を達成するための本考案になる溶鋼の真空脱ガ
ス装置は、真空脱ガス槽の下部に設けられた上昇側浸漬
管および下降側浸漬管のうち上昇側浸漬管の下方より吹
込みランスを介して微粉状脱硫剤を不活性ガスと共に溶
鋼の上昇流中に吹込む真空脱ガス装置において、上記の
吹込みランスを真空脱ガス槽の下部側壁にブラケットを
介して支持させると共に上記の真空脱ガス槽および上昇
側浸漬管の近傍に沿わせた折れ点のない大きな曲率を有
する形状として上昇側浸漬管の下方中央に臨ませ、かつ
上記吹込みランスの先端部ノズルを上向きに設けてなる
ことを特徴とするものである。

〈作用〉 本考案は前述のように吹込みランスを真空槽の下部側壁
に直接支持させると共に真空槽の下部や上昇側浸漬管の
近傍に沿わせた折れ点のない大きな曲率を有する形状と
してあるので吹込みランスの熱変形に対処することが可
能となる。

すなわち吹込みランスを昇降するときなどに周辺設備と
の干渉が防止できるばかりでなく吹込ランスの先端部ノ
ズルの位置を上昇側浸漬管の下方に確実に維持すること
ができ微粉状脱硫剤を安定して吹込むことができる。

〈実施例〉 以下本考案の装置を図面に基いて説明する。第１図は本
考案の一実施例を示す縦断面図であり、第２図は第１図
のＡ−Ａ矢視断面図、第３図は第１図のＢ部拡大図であ
る。

第１図〜第３図に示すように真空槽１の下部側壁に取付
けたブラケット２に吹込みランス３をボルト４に取付け
て吹込みランス３をブラケット２を介して真空槽１の下
部側壁に直接支持させる。なお吹込みランス３の上部に
頭を出している接続配管10にフレキシブルホース11が接
続してあり、ここから不活性ガスと共に微粉状脱硫剤が
供給される。

吹込みランス３の形状は真空槽１の下部や上昇側浸漬管
５ａの近傍に沿わせた途中に折れ点のない大きな曲率を
有する形状とする。吹込みランス３の途中に折れ点のな
い大きな曲率を有する形状とする理由は第１図に示すよ
うに溶鋼鍋６と吹込みランス３とのなす隙間を確保し両
者の干渉を避けると共に溶鋼流や浮力による変形や亀裂
の発生を防止するためである。

また吹込みランス３の先端部ノズル７は第２図および第
３図に示すように上昇側浸漬管５ａの下方中央になるよ
うに設けてあり、溶鋼８の上昇流中に微粉状脱硫剤９ａ
を確実に吹込むことにより真空槽１内での脱硫処理を効
率よく行う。第２図において５ｂは下降側浸漬管を示し
ている。

以下に本考案の実施手順を説明すると、脱ガス槽１の下
方に溶鋼鍋６を搬送したのち溶鋼鍋６を真空槽１の浸漬
管５ａ，５ｂが溶鋼８に浸漬するまで上昇させる。この
とき吹込みランス３には先端部ノズル７が詰まらない程
度の不活性ガスを流しておく。

次に真空排気装置（図示せず）が作動し、溶鋼鍋６内の
溶鋼８が浸漬管５ａ，５ｂの内部を上昇し上昇側浸漬管
５ａ内に環流ガスを吹込んで脱ガス処理が行なわれるよ
うになってから吹込みランス３より微粉状脱硫剤を不活
性ガスと共に吹込むことにより真空槽１内で脱硫処理も
同時に行う。

〈考案の効果〉 以上説明したように本考案によれば下記の効果が達成さ
れる。

(1)微粉状脱硫剤を浸漬管内に確実に多量に吹込めるの
で脱硫効率が高い。

(2)吹込みランスを真空槽下部に直接取付けており、真
空槽下部形状や浸漬管形状に沿わせた折れ点のない大き
な曲率を有するランス形状としているのでランスが曲り
による熱変形や亀裂の発生が低減され、また多少曲がっ
たとしても、溶鋼鍋の昇降と干渉することもなく、ラン
ス昇降による既存設備との干渉といった問題点もなく、
安定して脱硫処理が可能となり、従来の吹込みランスに
比較して寿命を倍増することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示す縦断面図、第２図は第
１図のＡ−Ａ矢視を示す横断面図、第３図は第１図のＢ
部拡大図、第４図〜第７図はそれぞれ異なった従来例を
示す縦断面図である。 １……真空槽、２……ブラケット、 ３……吹込みランス、４……ボルト、 ５……浸漬管、６……溶鋼鍋、 ７……先端部ノズル、８……溶鋼。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】真空脱ガス槽の下部に設けられた上昇側浸
   漬管および下降側浸漬管のうち上昇側浸漬管の下方より
   吹込みランスを介して微粉状脱硫剤を不活性ガスと共に
   溶鋼の上昇流中に吹込む溶鋼の真空脱ガス装置におい
   て、上記の吹込みランスを真空脱ガス槽の下部側壁にブ
   ラケットを介して支持させると共に上記の真空脱ガス槽
   および上昇側浸漬管の近傍に沿わせた折れ点のない大き
   な曲率を有する形状として上昇側浸漬管の下方中央に臨
   ませ、かつ上記吹込みランスの先端部ノズルを上向きに
   設けてなることを特徴とする吹込みランスを設けた溶鋼
   の真空脱ガス装置。