JP3754154B2 - ステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶鋼に酸素ガスを吹き込んで脱炭精錬を行うステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、取鍋溶鋼に浸漬管を浸漬した真空脱炭精錬に際しては、真空下において酸素ガスを溶鋼に吹き込むことにより溶鋼中の炭素を燃焼除去して、炭素濃度等を所定の範囲に調整する処理が行なわれている。
このような真空脱炭精錬においては、酸素ガス吹き込み中の溶鋼の攪拌、あるいは突沸等により溶鋼の飛沫(スプラッシュ)が浸漬管内の溶鋼面から上部に拡散し、浸漬管の天蓋部に付着堆積して、吹酸用酸素ガスを吹き込むためのランスの昇降に支障を生じたり、耐火物部分を損傷したりすると共に、到達真空度を低下させたりする要因となる。
このような真空脱炭精錬におけるスプラッシュやスピッティングによる溶鋼飛沫及び地金や酸化物の粒等からなる付着堆積物の弊害を防止する方法として、例えば、特開平2−133510号公報には、溶融金属を収容する取鍋と、前記溶融金属に浸漬される浸漬管を下端に備えた真空槽と、該真空槽の内部を減圧する真空源に接続された排気管と、前記真空槽の内側に配置された遮蔽体とを備えており、前記浸漬管内にある湯面から2〜5mの高さに前記遮蔽体を維持した真空処理装置が記載されている。
また、特開昭61−37912号公報には、取鍋内の溶鋼を浸漬管を介して真空槽内に吸上げ、浸漬管の投影面下の取鍋内下位から不活性ガスを吹き込み、且つ真空槽内の溶鋼表面に上部ランス(酸素ランス)を介して酸化性ガスを吹き付ける溶鋼の真空精錬方法において、該浸漬管の内径D1 と取鍋の内径D0 との比D1 /D0 が0.4〜0.8の値となるよう浸漬管の内径を定め、取鍋内の溶鋼深さをH0 、不活性ガスの吹込位置を溶鋼表面からの深さH1 としたとき、H1 /H0 が0.5から1.0の値となるよう不活性ガス吹込位置を定める溶鋼の真空精錬方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平2−133510号公報に示されるように、真空槽(浸漬管)内に遮蔽体を設けて酸素の吹き込みにより発生する溶鋼のスプラッシュを阻止して、酸素ランス、真空槽又は排気管へ付着するスプラッシュの凝固による地金の付着、堆積を防止する方法では、以下のような問題があった。
▲1▼真空槽内の排気ガスが遮蔽体間を通過する際に、排気ガス中の溶鋼飛沫あるいはそれらの凝固してなる粉塵が遮蔽体に付着、蓄積して、排気ガスの流動抵抗が大きくなり真空槽内の圧力損失を増大させる。
▲2▼排気ガスの流路となる遮蔽体間の間隔が狭くなるので、高真空度を達成するために高出力の真空排気装置が必要となる。
▲3▼遮蔽体間の排気ガス流路にスプラッシュやスピッティングにより飛散した地金等が付着堆積すると、構造が複雑であるためにこの付着、堆積物の除去作業が困難であり、多大の時間と手間を要する。
【0004】
また、不活性ガス吹き込み管の位置、取鍋内径、及び浸漬管内径等の幾何学的配置を所定範囲に設定して脱炭精錬時におけるスプラッシュやスピッティングを抑止する特開昭61−37912号公報に記載の方法では、以下のような問題があった。
▲1▼脱炭精錬中のスプラッシュやスピッティング自体はある程度抑制できるものの、天蓋部に一旦地金や酸化物が付着すると、これを除去する手段がないために、次第に付着物層が堆積、成長して操業上の障害となる。
▲2▼地金等の堆積量が増大するに伴い処理する溶鋼量が低下して、鋼の生産コストが高くなると共に、メンテナンスにかかる費用が増大する。
また、前記の問題は真空処理前の溶鋼中の炭素濃度が1〜0.3%と高い程、高速高吹酸量となる程より顕著な現象となる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、溶鋼のスプラッシュやスピッティングによる地金や酸化物等からなる粉塵(以下単に粉塵と称する)によって生じる浸漬管天蓋部の粉塵付着層を溶解除去し、高生産性の操業を行うことのできるステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う請求項1記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法は、溶鋼を保持する取鍋に浸漬管を浸漬し、該浸漬管内を減圧しながら吹酸用酸素ガスを該浸漬管内の該溶鋼に吹付けて脱炭する吹酸精錬期間と、前記吹酸用酸素ガスの吹き込み終了後に前記浸漬管内の該溶鋼を脱ガス、還元する非吹酸精錬期間と、次回の吹酸精錬前の待機期間とを有するステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法において、
前記浸漬管の側壁に配置されたバーナを用いて、前記吹酸精錬期間、及び前記非吹酸精錬期間における天蓋部の表面温度を1200〜1700℃に保持すると共に、前記バーナには燃料ガスと酸素ガスを供給し、しかも、前記吹酸精錬期間における前記バーナから供給される前記燃料ガス及び前記酸素ガスの供給量を調整して、前記浸漬管から排出される排気ガス中の一酸化炭素ガス濃度A、及び二酸化炭素ガス濃度Bから算出される二次燃焼率B/(A+B)を0.2〜0.8の範囲に保持する。
溶鋼とは、所定成分、温度に調整される前の炭素濃度の高い溶銑、あるいは炭素濃度の低減処理された溶鋼を含む。
浸漬管はその内部が真空排気装置によって排気される略円筒形の溶鋼処理容器であり、例えば溶鋼に浸漬される下部はアルミナシリカ質の不定形耐火物を用いて流し込み施工され、上部はマグネシアクロミア質等の耐火れんがを積層することにより構成されている。
バーナとは、燃料ガス及び酸素含有ガスを浸漬管内に吐出して燃焼させるための燃焼装置である。
吹酸精錬期間及び非吹酸精錬期間における天蓋部の表面温度が1200℃より低いと、付着した粉塵を充分に溶解流動させることができず、粉塵層の除去効果がない。
また天蓋部の表面温度が1700℃より高いと、天蓋部近傍の耐火物の損耗が大きくなると共に、このための燃料コストが高くなるので好ましくない。
二次燃焼率が0.2より低いと、二次燃焼による発生熱量が不足して、天蓋部の保温効果を充分に発揮させることが困難であると共に、吹酸精錬時における溶鋼の精錬効率を低下させる要因となる。
また二次燃焼率が0.8を越えると吹酸精錬時の排気ガス中の酸化性ガスの比率が増えるために、溶鋼の脱炭精錬処理の障害となる他、過剰な熱発生に起因した耐火物の損耗が無視できなくなる。
【0007】
請求項2記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法は、請求項1記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法において、前記バーナを用いて、前記待機期間における前記天蓋部の表面温度を1200〜1700℃に保持する。
待機期間中における天蓋部の表面温度が1200℃より低くなると、次回の吹酸精錬時における処理温度との差が大きくなり、熱衝撃により天蓋部及びその周辺の耐火物を損傷させるので好ましくない。逆に表面温度が1700℃より高いと耐火物の酸化損耗が増加すると共に燃焼コストが増加する。
【0008】
請求項3記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法は、請求項1又は2記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法において、前記バーナの先端を前記天蓋部より下方0.3〜3mの位置に配置すると共に、該バーナのガス吐出方向と鉛直方向とのなす吐出角度を20°〜90゜の範囲とする。
バーナの先端の位置が天蓋部より下方0.3mより高いと、バーナの火炎が直接天蓋部の耐火物面に当たるために耐火物の損傷が大きくなる。
また、バーナの先端の位置が天蓋部より下方3mより低いと、天蓋部の加熱効率が低下する要因となるので好ましくない。
バーナの吐出角度が20゜より小さいと、溶鋼面から排気される排気ガスとバーナから吐出する燃料ガスとが、溶鋼面の近傍で反応するために天蓋部の加熱効率が低下すると共に、ガスの均一混合が阻害されるために二次燃焼率の制御が困難になる。またバーナの吐出角度が90゜を越えると、バーナの直火が天蓋部に達するため天蓋部耐火物の局部的な損耗が大きくなる。
【0010】
請求項4記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法において、前記溶鋼のクロム濃度が5〜25wt%である。
溶鋼中のクロム濃度が5wt%より低いと、精錬処理により得られる溶鋼を鋳造した際の鋳片にステンレス鋼として必要な特性を付与させることが困難である。
また溶鋼中のクロム濃度が25wt%より高いと、スプラッシュやスピッティングにより生成する粉塵の融点が増加するために、粉塵の天蓋部への付着後における付着層の溶解除去が困難になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに図1は本発明の一実施の形態に係るステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法を適用する真空脱炭精錬設備における吹酸精錬期間の説明図、図2は同真空脱炭精錬設備における非吹酸精錬期間の説明図、図3は同真空脱炭精錬設備における待機期間の説明図、図4は同真空脱炭精錬設備の平断面図、図5(a)、(b)、(c)はそれぞれ天蓋部表面温度、二次燃焼率、及びバーナに供給するガス量の時間変化を示す模式図である。
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係るステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法を適用する真空脱炭精錬設備について説明する。
真空脱炭精錬設備10は、図1、図4に示すようにガス吹き込みノズル11が底部に配置され溶鋼12を保持する取鍋13と、取鍋13中の溶鋼12に浸漬される浸漬管の一例である直胴型浸漬管14(以下単に浸漬管と称する)と、浸漬管14内に燃料ガス等を吹き込むための2本のバーナ16、17と、図示しない真空排気装置に繋がる排気孔15と、吹酸用酸素ガスを溶鋼12に吹き込むための酸素ランス19とを有している。なお、前記図1、及び後述する図2、図3においてはバーナ17を省略してバーナ16のみを図示している。
取鍋13は略円筒状の鉄製容器であり、溶鋼12と接する内面壁はアルミナシリカ質あるいはアルミナジルコン質等の耐火物で内張りされている。
取鍋13のガス吹き込みノズル11を介して溶鋼12中に吹き込まれるアルゴン等の不活性ガスの膨張、運動エネルギーにより、取鍋13内の溶鋼12を機械的に撹拌して、溶鋼12における真空精錬反応の効率が高められる。
【0013】
浸漬管14は内径約1.5〜2.5m、内高さ約7〜10mを有する略円筒形であり、溶鋼12に浸漬される下部はアルミナシリカ質の不定形耐火物を用いて流し込み施工されていて、上部はマグネシアクロミア質等の耐火れんがを積層することにより構成された真空精錬処理の容器である。
浸漬管14及び取鍋13は図示しない移動機構によりそれぞれの相対位置を変更して、浸漬管14下部を取鍋13内の溶鋼12に浸漬させることができる。
そして、水蒸気エジェクター、真空ポンプ等の図示しない真空排気装置に排気孔15が連結されていて、該真空排気装置を作動させることにより浸漬管14内の真空度を必要なレベルに維持することができるようになっている。
また、排気孔15から吸引される排気ガス中の一酸化炭素ガス濃度、及び二酸化炭素ガス濃度を測定するための図示しないガス分析装置が、排気孔15に接続する図示しない排気管に設けられている。
さらに、天蓋部18には例えば複数個の熱電対が埋設されていて、天蓋部18の表面温度(以下天蓋部表面温度という)を検出できるようになっている。
なお、浸漬管14の側面に温度測定用の覗き孔を設けて、これを介して、天蓋部表面温度を光高温計により直接測定してもよい。
【0014】
酸素ランス19は吹酸用酸素ガス、精錬剤等の供給路が内部に形成された芯金と、その芯金の周囲に施工された不定形耐火物の保護層とを有する吹酸用酸素ガス、及び精錬剤等を溶鋼12に吹き付けるためのパイプ状の供給装置である。
バーナ16、17は、図1及び図4に示すように、それぞれの先端が天蓋部18より下方にバーナ先端距離L(m)を有して浸漬管14の側壁に互いに対向して配置され、それぞれのガス吐出方向が鉛直方向に対するバーナ吐出角度θh とし、しかも図4の平面図に示されるように円形の水平断面を有する浸漬管14の径方向に対して、所定のバーナ旋回角度θr 、例えば15°〜30°をなすように設定されている。
このため、浸漬管14にバーナ16、17を介して吹き込まれる酸素ガス、燃料ガス、あるいはそれらの混合ガスは浸漬管14内で旋回流を形成して、吹酸精錬過程で発生する精錬ガスと前記酸素ガス及び燃料ガス等を効率的に混合させることができると共に、天蓋部18の温度保持を適正に行うことができる。
このバーナ16、17を介して、燃料ガスの一例であるLPガス(LPG)と、空気等の酸素含有ガスあるいは酸素ガスを必要に応じて所定の割合及び量で浸漬管14に供給して、これらのガスによる燃焼反応を制御することができる。
【0015】
続いて、前記真空脱炭精錬設備10を用いる、本発明の一実施の形態に係るステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法について説明する。
ここで図5は、脱炭精錬方法の吹酸精錬期間、非吹酸精錬期間、及び待機期間における天蓋部表面温度、二次燃焼率、及びバーナ16、17に供給される酸素ガス、燃料ガスの量の推移状況を示す模式図である。
以下、吹酸精錬期間、非吹酸精錬期間、及び待機期間にそれぞれ対応する図1〜図3、及び図5を参照しながら詳しく説明する。
まず、転炉等の精錬炉においてクロム濃度を8〜13wt%としたステンレス鋼用の溶鋼12を取鍋13に収容する。
次に、取鍋13の底部のガス吹き込みノズル11からアルゴン(Ar)ガスを吹き込んで溶鋼面中央部のスラグを取鍋13の炉壁側に排除した後、浸漬管14の下端部を溶鋼12に浸漬させると共に、排気孔15を介して浸漬管14内を減圧し、浸漬管14内の溶鋼面12aを引き上げる。
浸漬管14内の減圧状態を維持したまま、継続して取鍋13の底部のガス吹き込みノズル11からアルゴン(Ar)ガスを浸漬管14内の溶鋼12に送入して、溶鋼12を攪拌する。
そして、図1に示すような吹酸精錬期間においては、酸素ランス19を介して所定量の吹酸用酸素ガスを浸漬管14内の溶鋼12に吹き付けて、溶鋼12の真空脱炭精錬が行われる。
この時、溶鋼中の炭素分等と吹酸用酸素ガスとの精錬反応に伴って溶鋼のスプラッシュやスピッティングが盛んになると共に、これに伴って、多量の粉塵が発生する。
この粉塵は排気ガスと共に浸漬管14内を上昇して、その側壁部、及び天蓋部18に到達する。
しかし、天蓋部表面温度はバーナ16、17により所定の範囲である1200〜1700℃となるように加熱保持されているので、到達した粉塵が溶融して天蓋部18に付着、蓄積されることがなく、粉塵付着に伴うクロム、又は鉄歩留の低下を抑制できる。
【0016】
また、吹酸精錬期間においては、図5(c)に示すようにバーナ16、17から浸漬管14内に吹き込まれる酸素ガス、及び燃料ガスの量を調整して、排気ガス中の一酸化炭素ガス濃度、及び二酸化炭素ガス濃度を制御して、図5(b)に示すように二次燃焼率を所定の20〜80%の範囲に保持するので、精錬により発生する一酸化炭素ガスを利用して、その燃焼反応により効率的に浸漬管14内の温度を維持することができる。
【0017】
続く、非吹酸精錬期間においては、図2に示すように酸素ランス19による吹酸用酸素ガスの吹き込みを終了して、取鍋13の底部からのアルゴンガスの吹き込みにより浸漬管14内の溶鋼12を攪拌する。
これにより、残余の精錬反応、及び溶鋼温度、各成分の均一化が行われる。
また、この間、図5(c)に示すようにバーナ16、17を用いて酸素ガス、及び燃料ガスを吹き込むことにより、図5(a)に示すように天蓋部表面温度を所定の温度範囲(1200〜1700℃)に保持させる。
従って、非吹酸精錬期間においても、溶鋼攪拌、及び真空排気装置による浸漬管14内の排気により生成する天蓋部18への粉塵の堆積を防止することができる。
【0018】
待機期間においては、真空排気装置を停止し、浸漬管14内を大気圧に戻すと共に、浸漬管14の下端が取鍋13内の溶鋼12から引き上げられ、図3に示すような待機状態に保持される。この間の天蓋部表面温度をバーナ16、17を用いて所定の温度範囲(1200〜1700℃)に制御する。
この待機期間において、燃料ガスを燃焼させる前記酸素ガスの代わりに空気を使用することが、コスト面、及び耐火物の酸化により損傷を回避させる観点からは望ましい。
このようにして、例え粉塵が天蓋部18あるいはその周辺に堆積していても、これを溶解して、下方に流下させ除去することができると共、続く吹酸精錬期間の開始時において過剰な熱衝撃が付与されて、浸漬管14の耐火物の熱応力の発生に伴う損傷を効果的に防止することができる。
【0019】
【実施例】
続いて、前記実施の形態に係るステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法の実施例について説明する。
実施例1〜7は、それぞれ表1、及び表2に示す真空下吹酸脱炭精錬条件に設定して真空精錬を行ったもので、その結果(地金付着、耐火物損傷の状態、及びその評価)を示している。
なお、ここで、天蓋部表面温度、及び二次燃焼率は各期間における平均温度(℃)、平均二次燃焼率(%)を示し、吹酸時バーナ吹き込みガスの欄にはバーナ16、17に供給するガスの種類を表示している。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
例えば、実施例1はバーナ先端距離L、バーナ吐出角度θh をそれぞれ2.3m、50゜に設定すると共に、該バーナ16、17を用いて、吹酸精錬期間、非吹酸精錬期間、及び待機期間における天蓋部表面温度をそれぞれ平均1520℃、1500℃、及び800℃に制御して真空下吹酸脱炭精錬を行った例を示している。
そして、実施例1においては、天蓋部18における地金付着は無く、耐火物損耗は僅少であり、その総合評価は良好(○)であった。
このように実施例1〜7では、吹酸時(吹酸精錬期間)、及び非吹酸時(非吹酸精錬期間)における天蓋部表面温度を、所定の1200〜1700℃の範囲にバーナ16、17を用いて維持することにより地金付着が無く、しかも耐火物損耗の僅少となる結果(○)を得ることができた。
なお、実施例1〜7は吹酸時における二次燃焼率を20〜80%の範囲に維持している。このため、バーナ16、17から浸漬管14に吹き込む燃料ガスの代わりとして、精錬反応に伴って発生する一酸化炭素ガスの燃焼熱を利用することができるので天蓋部18、及び浸漬管14の本体部分の温度を効率的に保持することができる。
【0023】
因みに、表3に示す比較例1〜4は、吹酸時(吹酸精錬期間)、及び非吹酸時(非吹酸精錬期間)のいずれかにおける天蓋部表面温度が所定の1200〜1700℃の範囲から外れる例であって、いずれも地金付着、あるいは耐火物損耗の状態が悪くなって、不良となる結果(×)を示している。
【0024】
【表3】
【0025】
例えば、比較例1はバーナ先端距離L、バーナ吐出角度θh をそれぞれ3.5m、65゜に設定すると共に、吹酸精錬期間、非吹酸精錬期間、及び待機期間における天蓋部表面温度をそれぞれ平均1150℃、1100℃、及び800℃として真空下吹酸脱炭精錬を行った例を示している。
この場合には表3に示すように、バーナ先端距離が大きく、先端位置が低いために天蓋部18の温度が所定の範囲より低くなり、天蓋部18における地金の付着量が大きくなることが分かる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、本実施の形態においては、バーナの本数が2本の場合について説明したが、バーナを単独で用いるか、又は3本以上を配置して効率的に天蓋部、及びその周辺の耐火物を加熱することができる。
さらに、燃料ガスとして、天然ガス、高炉ガス、転炉ガス、コークス炉ガス等を用いる場合も本発明の適用範囲である。
【0027】
【発明の効果】
請求項1〜4記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法においては、浸漬管の側壁に配置されたバーナを用いて、吹酸精錬期間及び非吹酸精錬期間における天蓋部の表面温度を特定の範囲に保持するので、天蓋部に付着する粉塵を溶解、流下させて、耐火物の粉塵との接触による損傷、溶損を回避して、操業性の悪化を招くことなく、高生産性を維持したステンレス鋼の仕上げ脱炭精錬が可能となる。また、粉塵の排出による歩留の低下を防止でき、浸漬管における耐火物コスト、及びメンテナンスコストを適正に維持することができる。
さらに、バーナには燃料ガスと酸素ガスとが供給されるので、それぞれの供給量、比率等を調整して、浸漬管内の燃焼反応を効果的に制御することができる。
また、吹酸精錬期間において、バーナから供給される燃料ガス及び酸素ガスの供給量を調整して、浸漬管から排出される排気ガス中の一酸化炭素ガス濃度A、及び二酸化炭素ガス濃度Bから算出される二次燃焼率B/(A+B)を特定範囲に保持するので、精錬反応に伴って発生する一酸化炭素ガスの燃焼熱を有効に利用することができ、天蓋部、及び浸漬管の本体部分の温度をさらに効率的に保持できる。
【0028】
特に、請求項2記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法においては、バーナを用いて、待機期間における前記天蓋部の表面温度を特定範囲に保持するので、次回の吹酸精錬時における処理温度との差を小さく維持して、熱衝撃による天蓋部及びその周辺の耐火物の損傷をさらに効果的に防止できると共に、待機期間における粉塵の流出除去が可能である。
【0029】
また、請求項3記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法においては、バーナの先端を前記天蓋部より下方の特定位置に配置すると共に、該バーナのガス吐出方向と鉛直方向とのなす吐出角度を特定範囲とするので、バーナの火炎の状態を適正に維持して、耐火物の局部的な損傷、溶損をさらに効果的に抑止して、天蓋部の加熱効率を良好に維持できる。
【0030】
そして、請求項4記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法においては、溶鋼のクロム濃度を特定範囲とするので、ステンレス鋼として必要な特性を保持すると共に、スプラッシュやスピッティングによって発生する粉塵等の融点を適正範囲として、粉塵の付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法を適用する真空脱炭精錬設備における吹酸精錬期間の説明図である。
【図2】同真空脱炭精錬設備における非吹酸精錬期間の説明図である。
【図3】同真空脱炭精錬設備における待機期間の説明図である。
【図4】同真空脱炭精錬設備の平断面図である。
【図5】(a)、(b)、(c)はそれぞれ天蓋部表面温度、二次燃焼率、及びバーナに供給するガス量の時間変化を示す模式図である。
【符号の説明】
10 真空脱炭精錬設備 11 ガス吹き込みノズル
12 溶鋼 12a 溶鋼面
13 取鍋 14 浸漬管
15 排気孔 16 バーナ
17 バーナ 18 天蓋部
19 酸素ランス
Claims (4)
- 溶鋼を保持する取鍋に浸漬管を浸漬し、該浸漬管内を減圧しながら吹酸用酸素ガスを該浸漬管内の該溶鋼に吹付けて脱炭する吹酸精錬期間と、前記吹酸用酸素ガスの吹き込み終了後に前記浸漬管内の該溶鋼を脱ガス、還元する非吹酸精錬期間と、次回の吹酸精錬前の待機期間とを有するステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法において、
前記浸漬管の側壁に配置されたバーナを用いて、前記吹酸精錬期間、及び前記非吹酸精錬期間における天蓋部の表面温度を1200〜1700℃に保持すると共に、前記バーナには燃料ガスと酸素ガスを供給し、しかも、前記吹酸精錬期間における前記バーナから供給される前記燃料ガス及び前記酸素ガスの供給量を調整して、前記浸漬管から排出される排気ガス中の一酸化炭素ガス濃度A、及び二酸化炭素ガス濃度Bから算出される二次燃焼率B/(A+B)を0.2〜0.8の範囲に保持することを特徴とするステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法。 - 前記バーナを用いて、前記待機期間における前記天蓋部の表面温度を1200〜1700℃に保持することを特徴とする請求項1記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法。
- 前記バーナの先端を前記天蓋部より下方0.3〜3mの位置に配置すると共に、該バーナのガス吐出方向と鉛直方向とのなす吐出角度を20〜90゜の範囲とすることを特徴とする請求項1又は2記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法。
- 前記溶鋼のクロム濃度が5〜25wt%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のステンレス鋼の真空下吹酸脱炭精錬方法。
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