JP3788097B2 - 精錬容器の耐火物冷却方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、精錬終了後、鉄皮に内張りした耐火物の損傷部を部分的に冷間補修する際の精錬容器の耐火物冷却方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融金属の精錬容器として代表的なものの一つに製鋼用の転炉が挙げられる。例えば、転炉では、図2に示すように、炉体1は鉄皮2の内面に内張りされた耐火物3を有する。炉内を構成する耐火物3は、上から順に主として炉口部耐火物4、直胴部耐火物5、ステーショナリー部耐火物6およびボトム部耐火物7に分けられる。炉体1はトラニオンリング9に設けた図示しないトラニオン軸を中心に傾転自在となっており、この傾転により、炉体1は炉口18が上方に向かって開放された上向き姿勢や、炉口18がほぼ水平方向に向かって開放された横向き姿勢をとることができる。溶銑やスクラップ、副原料は炉口18から装入され、上吹ランス8から噴出される酸素ガスにより炉内の溶鋼が吹錬される。
【0003】
一般に、転炉の寿命は、炉内を構成する耐火物3の損耗で決定されるが、耐火物3の損耗速度は各部位で異なるため、律速部位を補うため耐火物の部分補修が行われる。これにより、各部位の耐火物3が寿命を迎えたときに該当部の耐火物のみを交換して転炉の操業を再開している。このような部分補修に際しては、通常、耐火物積みの施工は主として人力で行われる部分が多いため、炉内の耐火物3を人間の作業可能温度まで冷却する必要性がある。炉内の耐火物3を冷却する方法としては、冷却能の小さい大気放冷(自然冷却)、冷却能の大きい送風冷却、散水冷却等が採用されている。
【0004】
例えば、特開昭63-28817号公報には、出鋼により空炉とした直後の転炉炉体を冷却するに際し、この炉体の原料装入用炉口がほぼ水平方向に向かって開放するようにこの炉体を横向き姿勢とし、上記原料装入用炉口からこの炉体の内壁に向かって水分を吹き付ける転炉炉体の冷却方法が開示されている。この方法で炉体の内壁に向かって水分を吹き付ける具体的手段として、吹付ノズルを炉体内に挿入し、水または水分と耐火材とでなる吹付材を加圧して噴出させる。そして、吹付ノズルを移動させながら冷却する部分やその周辺の表面に水を吹き付けるか、あるいは吹付材を吹きつけて付着させ、吹付材の水分により炉内の耐火物を冷却する。そして、水または吹付材を吹き付けると共に、送風機を設置して炉体内に送風することも可能としている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
転炉等の精錬容器の鉄皮内面に内張りされた耐火物の損耗速度は、各部位で異なっているので耐火物の部分補修を行うべく、精錬容器内に送風して炉内での強制対流により冷却する場合には、冷却能が大気による自然冷却に比べれば大きくでき、その冷却能も耐火物にスポーリングが発生する危険性のない程度に止まっているという点では有利性が大きいが、それだけに依然として冷却時間が多大であるという問題があった。
【0006】
一方、精錬炉による溶融金属の精錬直後に補修部に散水し、水の顕熱・潜熱を利用して冷却する場合には、高温時の耐火物のスポーリング、冷却後に耐火物に水が残留するいわゆる濡れが発生する等、耐火物に悪影響を及ぼす危険性が大きいという問題があった。
また、上記特開昭63-28817号公報に開示された冷却方法において、吹付ノズルから水だけを噴霧状にして送り込む場合には、上述のように高温時の耐火物にスポーリングや濡れを生じる等、炉内の耐火物に悪影響を及ぼす。また、吹付ノズルから水分と耐火材とでなる吹付材を加圧して噴出すれば、水だけで冷却する場合に比べて耐火物表面の急冷が緩和され、スポーリングの発生を防止できるメリットはある。しかし、炉内の耐火物全体を冷却して作業員が炉内に入ることを目的とする炉内冷却では、吹付用の耐火材にコストが掛かり不経済である。なお、送風機からの送風を併用する場合にも、同様の問題が残り根本的な解決にはならない。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑み、精錬炉による溶融金属の精錬直後の耐火物を冷却する際に、耐火物の温度に対して冷却能力を適切にコントロールすることで、上記のような耐火物への悪影響を及ぼすことなしに、冷却時間を大幅に短縮する精錬容器の耐火物冷却方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための請求項1記載の本発明は、溶融金属の精錬容器に内張りした耐火物の損傷部を冷間補修する際の精錬容器の耐火物冷却方法であって、上記精錬容器の耐火物を冷却する冷却手段として、送風機および2流体式スプレーノズルを使用し、上記精錬容器に内張りした耐火物を、上記送風機から供給される送風のみにより冷却する段階と、上記送風機から供給される送風と2流体式スプレーノズルを用いたスプレー冷却とを併用する冷却段階と、上記送風機から供給される送風と上記2流体式スプレーノズルを用いたミスト冷却とを併用する冷却段階と、上記送風機から供給される送風のみにより冷却する段階とを順次経由することを特徴とする精錬容器の耐火物冷却方法である。
【0009】
請求項2記載の本発明は、上記送風機から供給される送風の速度をコントロールすることを特徴とする請求項1記載の精錬容器の耐火物冷却方法である。
請求項3記載の本発明は、上記2流体式スプレーノズルから供給される噴射水の液滴径をコントロールすることを特徴とする請求項1または2記載の精錬容器の耐火物冷却方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様を図面に基づいて説明する。
本発明の転炉の耐火物冷却に使用する冷却装置は、図1に示すように、走行自在な台車10上に送風機11を搭載し、この送風機11には前方に向けた送風ダクト12が接続してある。また台車10の前部に立設されたガイドポスト13には、昇降キャリッジ14が昇降可能にセットされており、昇降キャリッジ14には送風ダクト12内で水平に支持され、図示省略した空気、スプレー水配管を有するアーム15が設けてあり、アーム15の先端部に気体と液体とが噴射される2流体式スプレーノズル16(以下、2流体ノズルという)が前向きに複数個並列に配設されている。台車10の上端部に放射温度計( 図示せず)を配設して、炉内における耐火物3の代表部の温度を連続的に測定可能にする。
【0013】
炉体1内の耐火物補修を行うため炉内の耐火物3を冷却する際には、まず炉内の溶融金属やスラグを排出して空炉とした後、高温状態にある炉体1を横向きにして炉口18をほぼ水平に向かって開放させる。昇降キャリッジ14をガイドポスト13に沿って昇降操作して、アーム15の先端部に配設した複数の2流体ノズル16の高さを調整すると共に、台車10を移動して送風ダクト12および2流体ノズル16を炉体1の炉口18に臨ませる。
【0014】
高温の炉内へ送風機11から送風ダクト12を介して送風を行う場合に炉内に形成されるいわゆる強制対流による伝熱特性は、耐火物3の被冷却面に対する流速により決定される。このため、耐火物3の冷却速度を高めるには、送風ダクト12から吹き出す送風の流速を高めることが必要となる。また、2流体ノズル16から噴出する液滴による伝熱特性は、耐火物3の被冷却面に対する液滴衝突力により決定されると考えられ、冷却速度を高めるには、同様に液滴噴出の流速を大きくする必要がある。
【0015】
本発明で2流体ノズル16を使用するのは、気体と液体(水)の割合から定まる気水比の変更により2流体ノズル16から噴射される液滴径が容易に調整でき、この液滴径調整により耐火物3の被冷却面の冷却速度をコントロールできるからである。本発明の冷却装置は、送風部およびスプレー部で構成され、送風機12からの送風のみを炉内に供給する場合と、2流体ノズル16から噴射された液滴を送風機11の送風と共に炉内に供給する場合とを使い分けし、冷却コントロールは、主として送風冷却域、スプレー冷却域おびミスト冷却域の3つのパターンで行われる。
【0016】
上記3パターンの冷却域は、耐火物3の材質および形状によって、(a) 冷却開始温度、(b) スプレー冷却液滴径、(c) ミスト冷却液滴径、(d) 送風速度の各冷却条件を、スポーリング回避の判断基準として、転炉吹錬直後の空炉での自然冷却速度( ℃/min) 以下に設定する。これは転炉吹錬後の空炉での冷却速度( ℃/min) を超える冷却速度にすると、耐火物3にスポーリングを生じる危険性が高くなるからである。
【0017】
転炉最終吹錬が終了した補修前の時点において、耐火物3の表面温度は約1600℃である。ここで、高温部においての急冷は、耐火物3のスポーリングの危険があるため、耐火物3の冷却は送風機11から送風ダクト12を介する送風のみにより実施する。前述のように、転炉によって冷却条件は異なるが、送風機11からの送風速度としては送風ダクト 12 の出口において5〜30m/sec が適当である。送風速度が5m/sec 未満では、炉内耐火物3の冷却速度が遅く、冷却に時間が掛かり、また30m/sec を超えると冷却速度が飽和して冷却速度上昇の効果が少なくなる。
【0018】
次に、送風機11からの送風を継続したままで、2流体ノズル16からのスプレー冷却に移行するが、炉内はまだ高温のため2流体ノズル16から供給される液滴は瞬時に水蒸気となるので、耐火物3の微量金属への影響は皆無である。ここでも転炉によって冷却条件は異なるが、送風速度としては送風ダクト 12 の出口において5〜30m/sec 、液滴径は100 〜500 μm 、スプレー冷却の終了は耐火物3の表面温度が約200 〜120 ℃とするのが適当である。液滴径が100 μm 未満では冷却速度が遅く冷却に時間が掛かり、500 μm を超えると冷却速度オーバにより耐火物3がスポーリングする危険性がある。スプレー冷却の終了時での耐火物3の表面温度を下げ過ぎると濡れが発生する危険性があるので、約200 〜120 ℃範囲とする。
【0019】
さらに、スプレー冷却からミスト冷却に移行し、送風機11からの送風を継続したままで、2流体ノズル16から噴出するミストにより耐火物3を冷却して表面温度が約100 ℃になるまで冷却する。ここでも、転炉によって冷却条件は異なるが、送風速度としては、送風ダクト 12 の出口において5〜30m/sec 、液滴径は20〜80μm が適当である。液滴径が20μm 未満では冷却速度が遅く冷却に時間が掛かり、80μm を超えると濡れ発生の危険性がある。転炉の炉体1の形状によっては、上記液滴径20〜80μm でも局部的に濡れが発生する危険があるので、状況に応じて送風冷却に切り換えるのが望ましい。最後は、耐火物3の表面温度低下による濡れの発生を確実に防止するため、耐火物3の表面温度が100 ℃未満の領域では再度、送風機12からの送風のみによる耐火物3の冷却を実施し、炉内に作業員が入れる温度まで冷却する。
【0020】
【実施例】
本発明を150 トン転炉設備で実施した。転炉の最終吹錬を終了して4時間経過後より、送風機からの冷却を開始し、8時間経過後に2流体ノズルからのスプレー冷却を開始し、送風とスプレー水との併用冷却により耐火物3の冷却を行った。さらに14時間経過後から2流体ノズルからのミスト冷却に移行し、送風とミスト水との併用冷却により耐火物3の冷却を行った。22時間経過後に再び送風機からの送風のみによる冷却を実施し、最終的に32時間で炉内の冷却を完了した。表1に、本発明の送風冷却→スプレー冷却→ミスト冷却→送風冷却の各過程における冷却条件を示す。送風量350Nm3/min、水量3.0 〜5.0kg/min 、気水比 100〜1200で実施した。
【0021】
【表1】
Figure 0003788097
【0022】
冷却能の上限は、予め耐火物内に熱電対を埋設し、転炉通常操業時の耐火物温度変動を調査することにより決定した。本発明実施時の耐火物表面の温度推移を図3に示す。図3に示すように、本発明の方法によれば、従来の送風冷却と比べ、冷却時間を約50%まで短縮することができ、転炉の稼働率を 0.5%向上できた。このように本発明では、転炉炉内の耐火物の冷却時間を大幅に短縮したにもかかわらず耐火物のスポーリングおよび濡れの発生はみられなかった。
【0023】
なお、上記実施の態様では、転炉の耐火物を冷却する場合について説明したが、これに限定するものではなく、真空脱ガス炉など製鉄、製鋼に使用される各種精錬炉の耐火物冷却に適用可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば精錬容器の耐火物を部分補修するに際し、精錬終了後の耐火物の温度状況に応じて、送風機から供給される送風のみにより耐火物を冷却する段階と、送風機から供給される送風と2流体式スプレーノズルから供給される噴射水の併用により耐火物を冷却する段階とを組み合わせることにより、耐火物の冷却能を適正にコントロールすることが可能になる。その結果、耐火物のスポーリングや濡れを発生させることなしに、炉内の耐火物を冷却する時間を大幅に短縮することができ、精錬容器の稼働率向上が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転炉耐火物の冷却装置を示す側面図である。
【図2】転炉の耐火物構成を示す側面図である。
【図3】転炉耐火物の炉内表面温度と炉修開始後の経過時間との関係を本発明法と従来法を比較して示すグラフである。
【符号の説明】
1 炉体
2 鉄皮
3 耐火物
4 炉口部耐火物
5 直胴部耐火物
6 ステーショナリー部耐火物
7 ボトム部耐火物
8 上吹ランス
9 トラニオンリング
10 台車
11 送風機
12 送風ダクト
13 ガイドポスト
14 昇降キャリッジ
15 アーム
16 2流体式スプレーノズル(2流体ノズル)
17 スプレーノズル
18 炉口

Claims (3)

  1. 溶融金属の精錬容器に内張りした耐火物の損傷部を冷間補修する際の精錬容器の耐火物冷却方法であって、上記精錬容器の耐火物を冷却する冷却手段として、送風機および2流体式スプレーノズルを使用し、上記精錬容器に内張りした耐火物を、上記送風機から供給される送風のみにより冷却する段階と、上記送風機から供給される送風と2流体式スプレーノズルを用いたスプレー冷却とを併用する冷却段階と、上記送風機から供給される送風と上記2流体式スプレーノズルを用いたミスト冷却とを併用する冷却段階と、上記送風機から供給される送風のみにより冷却する段階とを順次経由することを特徴とする精錬容器の耐火物冷却方法。
  2. 上記送風機から供給される送風の速度をコントロールすることを特徴とする請求項1記載の精錬容器の耐火物冷却方法。
  3. 上記2流体式スプレーノズルから供給される噴射水の液滴径をコントロールすることを特徴とする請求項1または2記載の精錬容器の耐火物冷却方法。
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