JP4206736B2 - 上吹きランスとそれを用いた転炉操業方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転炉を用いて溶鋼の脱炭精錬を行なう際に酸化性ガスを転炉内に供給する上吹きランス、およびその上吹きランスを用いた転炉の操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
製鋼工程において、転炉に溶鋼を収容して酸化性ガスを供給することによって脱炭精錬を行なうことが公知の技術として利用されている。 酸化性ガスとして酸素を含有するガスを使用するが、工業的には酸素ガスが広く使用されている。こうして酸化性ガスを転炉内に供給することによって、転炉内に収容された溶鋼中のCと酸化性ガス中のO又はO2 とを反応させて脱炭処理を行なう。
【0003】
脱炭処理では、下記の (1)式で表わされるように溶鋼中のCと酸化性ガス中のO又はO2 とが反応してCOを生成させる反応(以下、 1次燃焼という)、および1次燃焼によって生成したCOと酸化性ガス中のO又はO2 とが反応してCO2 を生成させる下記の (2)式の反応(以下、 2次燃焼という)が進行する。なお、以下の式中では酸化性ガス中のOも便宜上1/2O2 と表記する。
【0004】
C+1/2O2 →CO ・・・ (1)
CO+1/2O2 →CO2 ・・・ (2)
ここで、転炉内に供給された酸化性ガス中のO又はO2 のうち、2次燃焼に寄与する割合を2次燃焼率として下記の (3)式で定義する。(但し、右辺のCO2 ,COはそれぞれ排ガス中のCO2 ,COの体積である。)
2次燃焼率=CO2 /(CO+CO2 ) ・・・ (3)
1次燃焼によって生じる反応熱と2次燃焼によって生じる反応熱とを比べると、2次燃焼の方が1次燃焼の約 2.5倍である。したがって2次燃焼率が低下すると、転炉上部の炉壁の温度が低下するので、炉壁上部に地金が付着しやすくなる。この状態で転炉の操業を継続すると地金が蓄積されて、炉内容積が減少するばかりでなく、出鋼歩留りが低下する。 一方、 2次燃焼率を高めると発熱量が増大して炉内の温度が上昇するので、溶鋼への着熱が可能となり、地金を溶解することが可能となる。
【0005】
2次燃焼率を高める技術は、従来から、いくつか提案されている。たとえば特許文献1には、上吹きランスから上底吹き転炉に酸素ガスを吹き込む際に、上吹き酸素ガス流量を底吹き酸素ガス流量の60%以下とし、上吹き酸素ガスによって生じる溶鋼凹部の深さを20〜200mm とすることによって、2次燃焼率を向上させる技術が開示されている。
【0006】
また特許文献2には、吹錬の80%までの期間で上吹きランスから供給される酸素量を全酸素量の30%以下にすることによって、2次燃焼率を向上させる技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特公昭62-23047号公報
【特許文献2】
特開平3-204912号公報
【特許文献3】
特公平8-11807 号公報
【特許文献4】
特開2001-59111号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示された技術では、 上吹きランスから供給される酸素ガスの噴流の制御を行なっていないので、2次燃焼が転炉内で均一に進行しない。その結果、炉壁に付着した地金を均一に溶解できず、地金に凹凸が生じる可能性が残されている。
【0009】
地金を効率的かつ均一に溶解するためには、上吹きランスから供給される酸素ガスの噴流の制御する必要がある。 そこで、特許文献3には、上吹きランスのノズル先端部に配置したチャンバーの側壁に導管を配置し、その導管からガスを供給することによって酸素ジェットの角度を変化させる技術が開示されている。しかし特許文献3に開示された技術は、超音速の酸素ジェットがメタル浴(すなわち溶融金属浴)の表面に衝突する衝撃点を遂時変化させて、メタル浴の攪拌を進行する技術であり、 2次燃焼率の飛躍的な向上は期待できない。
【0010】
また特許文献4には、上吹きランスに偏心急拡大ノズルを配設し、ノズルの側壁に作動ガス供給ノズルを配して、 作動ガスの流量を調節することによってガス噴射の偏向角を制御する技術が開示されている。しかし特許文献4に開示された技術は、 2次燃焼率の向上は可能であるものの、ガス噴射を制御する方向がノズルの半径方向であるために、転炉内全域に付着した地金の溶解は困難である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
然るに、本発明の目的は、上吹きランスから噴射される酸化性ガスのソフトブロー化によって2次燃焼率を向上するとともに、ランスチップの傾角を変更する等の機械的手段を加えることなく酸化性ガスの噴射方向を走査し、転炉の炉壁全域にわたって地金を溶解し、かつ地金の付着を抑制できる上吹きランス、およびその上吹きランスを用いた転炉の操業方法を提供することにある。
【0012】
すなわち本発明は、2個以上のガス噴射ノズルを有する上吹きランスを用いて酸化性ガスを転炉内に供給する転炉操業方法において、 入口部にオリフィスを有しかつオリフィスの下流側に拡大部を有するガス噴射ノズルを2個以上配設し、ガス噴射ノズルのうちの少なくとも1個の拡大部の壁面でありかつ噴射口中心点とランス横断面の中心点を結ぶ直線に対し 90 ± 10 °の角度で交叉する方向の壁面に作動ガス供給ノズルを配設した上吹きランスを用い、ガス噴射ノズルのうちの少なくとも1個から噴射される酸化性ガスの噴射方向を、ガス噴射ノズルの噴射口中心点とランス横断面の中心点を結ぶ直線に対し 90 ± 10 °の角度で交叉する方向に沿って走査する転炉操業方法である。
【0013】
前記した転炉操業方法の発明においては、第1の好適態様として、ガス噴射ノズルから噴射される酸化性ガスの走査を周期的に行なうことが望ましい。さらに第2の好適態様として、その酸化性ガスを走査する周期τ(sec )を
0.5 ≦τ≦5
とすることが好ましい。
【0014】
また前記した転炉操業方法の発明においては、第3の好適態様として、ガス噴射ノズルを用いて転炉内に酸化性ガスを供給して、溶鋼の脱炭処理を行なうとともに転炉の炉壁に付着した地金を溶解することが好ましい。
また第4の好適態様として、転炉が、酸化性ガスの底吹羽口を備えた転炉であることが好ましい。
【0015】
また本発明は、入口部にオリフィスを有しかつオリフィスの下流側に拡大部を有するガス噴射ノズルを2個以上配設した上吹きランスであって、前記ガス噴射ノズルのうちの少なくとも1個の拡大部の壁面でありかつ噴射口中心点とランス横断面の中心点を結ぶ直線に対し 90 ± 10 °の角度で交叉する方向の壁面に作動ガス供給ノズルを配設する上吹きランスである。
【0016】
前記した上吹きランスの発明においては、第1の好適態様として、オリフィスの中心軸が、ガス噴射ノズルの中心軸に対して偏心して設けられることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の上吹きランスには、入口部にオリフィスを有し、 かつオリフィスの下流側に拡大部を有するガス噴射ノズル(いわゆる急拡大ノズル)が2個以上配設される。そして、 そのガス噴射ノズルのうちの少なくとも1個には、後述する作動ガス供給ノズルが配設される。
【0018】
図1は、作動ガス供給ノズルを有するガス噴射ノズルの例を模式的に示す断面図であり、 (a)は横断面図、 (b)はA−A矢視の縦断面図である。
このガス噴射ノズル1は、酸化性ガス4の流れの下流側の一端を開口した拡大部3を有し、拡大部3の他端(すなわち上流側)にはオリフィス2が配設される。オリフィス2の直径d(mm)は、拡大部3の直径D(mm)より小さくする。さらにオリフィス2の中心軸を拡大部3の中心軸に対して偏心した位置に配設するのが好ましい。
【0019】
このガス噴射ノズル1を用いて酸化性ガス4を噴射する際には、酸化性ガス4はオリフィス2を通って拡大部3に流れ込む。このときオリフィス2出口から拡大部3に流れ込んだ酸化性ガス4は、オリフィス2の反対側の壁面近傍に循環流を形成する。その結果、 オリフィス2の反対側の壁面の圧力は、オリフィス2から離れるにつれて低下する。一方、 オリフィス2側の壁面では、酸化性ガス4の流速の上昇に起因して圧力が低下する。
【0020】
さらに拡大部3の出口(すなわちガス噴射ノズル1の噴射口)では、酸化性ガス4の急激な膨張が起こり、 オリフィス2側の壁面およびオリフィス2の反対側の壁面の双方で酸化性ガス4の流速が低下し、ソフトブロー化が達成される。
ここでオリフィス2の反対側でかつ下流側の壁面からガス6(以下、作動ガスという)を拡大部3に供給すると、オリフィス2の反対側の壁面近傍で形成される循環流が一層強化されるので、酸化性ガス4の圧力低下が促進される。しかも作動ガス6の供給量に応じて、噴射口から噴射される酸化性ガス4の噴射方向を走査することも可能である。そこでオリフィス2の反対側でかつ下流側の壁面に作動ガス供給ノズル5を配設する。
【0021】
発明者らの研究によれば、酸化性ガス4流量に対して作動ガス6流量を1 vol%の割合で供給すると、酸化性ガス4の噴射方向が1°変位するという知見が得られている。
なお、本発明においては、作動ガス6は、酸化性ガス4を変質しない成分のガスを使用する。したがって作動ガス6として、酸化性ガス4と同一成分のガスあるいは不活性ガスを使用するのが好ましい。 特に酸化性ガス4として酸素ガスを使用し、かつ作動ガス6として酸素ガスを用いると、転炉内に供給される酸素量が増大するので一層好ましい。
【0022】
図2は、出願人が先に特許文献4において提案した作動ガス供給ノズル5を有するガス噴射ノズル1を配設した上吹きランス7の先端部の例を模式的に示す半径方向の縦断面図である。
一方、 図3は本発明のガス噴射ノズル1の噴射口8,オリフィス2,作動ガス供給ノズル5の配置の例を示す平面配置図である。なお図3には、ガス噴射ノズル1を4個配設する例を示す。
【0023】
図3に示す例では、4個の噴射口8は、その4ケ所の中心点9がランスの外周円と同心の円形c(以下、ピッチサークルという)を形成するように配設されている。ここで着目すべき点は、ガス噴射ノズル1に配設される作動ガス供給ノズル5の位置である。すなわち少なくとも1個の噴射口8において、その噴射口8の中心点9(以下、噴射口中心点という)とランス横断面の中心点pを結ぶ直線lに交叉する方向tに位置する拡大部3壁面に作動ガス供給ノズル5を配設することである。
【0024】
前記の方向tと直線lの交叉角θは90°(すなわち直交)であるのが最も好ましいが、後述する本発明の効果を損なわない程度の90±10°の範囲とする。
また、上述の例では、各ガス噴射ノズルは、それらの噴射口中心がランスの外周円と同心の一つのピッチサークルを形成するように配置されているが、本発明は特にこのような配置に限定されるものではない。たとえば、ピッチサークルを形成しない配置、ピッチサークルを形成してもランスの外周円から偏芯した配置、複数のグループのノズルが異なるピッチサークルに属するような配置など、どのような配置でもよい。
【0025】
なお図3には4個のガス噴射ノズル1に全て作動ガス供給ノズル5を配設する例を示したが、 本発明では必ずしも全てのガス噴射ノズル1に作動ガス供給ノズル5を配設する必要はない。 ガス噴射ノズル1のうちの少なくとも1個に作動ガス供給ノズル5を配設すればよい。
このように配置することによって、作動ガス供給ノズル5を配設したガス噴射ノズル1(すなわち4個のガス噴射ノズル1のうちの少なくとも1個)から噴射される酸化性ガス4の噴射方向を、その噴射口8の中心点9とランス横断面の中心pを結ぶ直線lと交叉する方向tに沿って走査することが可能となる。その結果、 従来の上吹きランスを用いて酸化性ガス4を噴射する場合には幾何学的に到達し得ない領域まで酸化性ガス4を供給することが可能となる。
【0026】
また、オリフィス2の中心軸(すなわちオリフィス2の開口部中心点10)を、ガス噴射ノズル1の中心軸(すなわちガス噴射ノズル1の噴射口中心点9)に対して偏心した位置に配設し、さらに作動ガス供給ノズル5の開口部中心点,ガス噴射ノズル1の噴射口中心点9およびオリフィス2の開口部中心点10を方向tに沿って配置することが好ましい。 その理由は、酸化性ガス4の噴射方向を方向tに沿って走査する精度が向上するばかりでなく、拡大部3の出口(すなわち噴射口8)における酸化性ガス4の圧力低下を促進して、ソフトブロー化の効果が顕著に発揮されるからである。
【0027】
本発明では、拡大部3の直径D(mm)とオリフィス2の直径d(mm)の比(すなわちD/d値)は、特に限定していないが、拡大部3の出口(すなわちガス噴射ノズル1の噴射口8)における酸化性ガス4の流速を低下させるために、D/d値をできり限り大きくすることが望ましい。 さらに拡大部3の長さL(mm)とオリフィス2の直径d(mm)の比(すなわちL/d値)が大きいほど、酸化性ガス4の流速は小さくなる。なおL/d値は、L/d>4.5 を満足する範囲が望ましい。
【0028】
さらに、一定の周期で作動ガス供給ノズル5の開閉を行ない、 作動ガス6を断続的に拡大部3内に供給することによって非定常噴流を形成すると、噴射口8から噴射される酸化性ガス4の乱流強度が上昇し、 転炉内の雰囲気ガスの巻き込み量が増加する。その結果、酸化性ガス4のソフトブロー化がさらに促進され、2次燃焼率が一層向上する。
【0029】
ここで本発明者らは、作動ガス配管の遮断弁の連続開閉を行ない、2次燃焼率に及ぼす作動ガス供給ノズルの開閉周期の影響を調査した。その結果、図4に表わされるように、開閉周期が 0.5〜5秒の範囲で2次燃焼率が大きく向上することを見出した。
この現象は、周期 0.5秒未満では噴出時間が短すぎて十分なガス供給が行なわれないためであり、周期5秒を超えると噴出時間が長くなり炉内雰囲気の巻込み量が低減するためである。
【0030】
よって酸化性ガス4のソフトブロー化に加えて、作動ガス6を用いて酸化性ガス4の噴射方向を方向tに沿って走査することによって、転炉の炉壁に付着した地金を溶解し、さらに地金の付着を抑制することが可能である。このようにして地金を除去する熱源は (2)式で表わされる2次燃焼の反応熱であるから、転炉に溶鋼を収容して (1)式で表わされる1次燃焼を生じさせる必要がある。
【0031】
ただし転炉の炉壁に付着した地金を溶解し、あるいは地金の付着を抑制する際には、上吹きランス7から転炉内に供給される酸化性ガス4中のO(酸素分)又はO2 をできる限り2次燃焼に活用して、その反応熱を増加させる必要がある。 そこで、上吹きランス7のガス噴射ノズル1から噴射された酸化性ガス4が溶鋼に直接到達しないように、上吹きランス7の位置を調整する。なお上吹きランス7の位置は、転炉の炉口から上吹きランス7の下端までの距離が炉内高さ(炉内溶鋼の静止浴面から炉口までの高さ)の1/3〜1/15程度になるように設定するのが好ましい。
【0032】
本発明では上述のごとく、ランスに設けたノズルのうち酸化性ガスの噴射方向を走査可能なノズルから恒常的ないしは経時的に走査されつつ噴射される酸化性ガスによって炉内のCOガスを二次燃焼させ、それによって発生する熱によって、炉壁に付着した地金を溶解したり、地金の付着そのものを抑制するものである。このCOガスは炉内における溶鋼の脱炭反応によって発生するものを利用する。脱炭反応は上吹きランスまたは、酸化性ガスの底吹き羽口から炉内の溶鋼に供給する酸化性ガスによって行う。上吹きランスによって供給する場合、本発明のランスの一部のノズル(例えばランスの中心に設けたノズルなど)から酸化性ガスを走査することなく溶鋼浴面上に供給する。この場合、他のノズルからは本発明に従って噴射方向を走査しつつ酸化性ガスを噴射する。一方、酸化性ガスの底吹き羽口を備えた転炉にあっては、脱炭用の酸化性ガスの全部または大部分を底吹き羽口から供給することが好ましい。
【0033】
とりわけ、酸化性ガスの底吹き羽口を備えた転炉にあっては、底吹きガスによるスピッティングによって、炉体の絞り部や炉口部の耐火物表面に地金が形成しやすいので、このような形式の転炉に本発明を適用することは、地金付着の防止に大きな効果があり好ましい。
【0034】
【実施例】
図5に示すように、300ton規模の酸素底吹き転炉11を用いて溶鋼12の脱炭処理を行なうときの2次燃焼挙動および出鋼歩留りを調査した。 なお溶鋼12は、溶銑予備処理として脱燐処理を施し、温度が1200〜1260℃のものを使用した。
上吹きランス7は、ガス噴射ノズル1を4個配設したものを使用した。ガス噴射ノズル1の噴射口8,オリフィス2,作動ガス供給ノズル5,ピツチサークルcおよび方向tの配置は、図6に示す4種類とした。また、作動ガス6として酸素ガスを使用し、 その流量は作動ガス供給ノズル5の1個あたり 2.5Nm3 /min として脱炭処理を行なった。
【0035】
使用した上吹きランス7と作動ガス6の流量との組合せは表1に示す通りである。 なお使用した上吹きランス7の記号I〜Vは、図6に示した(I)〜(V)の平面配置図に対応する。
【0036】
【表1】
【0037】
発明例1〜4および比較例1〜3は、いずれも上吹きランス7の下端を転炉11の炉口の下方 0.5mの位置(すなわち炉内高さの1/12.5に相当)に配置し、酸化性ガス4として酸素ガスを使用し、流量 200Nm3 /min (すなわちガス噴射ノズル1の1個あたり50Nm3 /min )で転炉11内に供給した。 酸素ガスの供給時間は 7.5分間とした。
【0038】
発明例1〜4は、ガス噴射ノズルの中心とランス外周円の横断面中心を結ぶ直線と90゜で交叉する方向(図の例ではピッチサークルcの接線と一致)tの方向から作動ガス6を供給する位置に作動ガス供給ノズル5を配設した。したがってガス噴射ノズル1の噴射口8から噴射される酸化性ガス4(すなわち酸素ガス)の噴射方向を上記の方向tに沿って走査することができる。
【0039】
ただし、発明例1は作動ガス6を用いるガス噴射ノズル1を1個のみとした例である。発明例2は、全て(すなわち4個)のガス噴射ノズル1で作動ガス6を用いた例である。また、発明例1および2では作動ガスを常時導入して脱炭処理を行なった水準であるのに対して、発明例3では作動ガスの開閉を2秒周期として、発明例4では作動ガスの開閉を10秒周期として脱炭処理を行なった例である。
【0040】
一方、 比較例1は、作動ガス6を用いない例である。比較例2は1個のガス噴射ノズルのみで、比較例3は、全てのガス噴射ノズル1で作動ガス6を用い、その場合作動ガスの供給をガス噴射ノズルの中心とランス外周円の横断面中心を結ぶ直線に一致する方向(図の例ではピッチサークルcの半径方向(すなわち転炉12の半径方向))からとした例である。
【0041】
発明例1〜4および比較例1〜3について、各々40〜50チャージの脱炭処理を行ない、 炉壁の地金付着状況,2次燃焼率,鉄鉱石原単位(溶鋼1ton あたり),出鋼歩留りを調査した。
転炉11炉壁の地金付着状況は図7および図8に示す通りである。発明例1と比較例1および2を比較すると、発明例1では一個のノズルで作動ガスを用いたにも係わらず、図7(a)に示すように、酸化性ガスの変位によって炉内壁の円周方向の広い範囲にわたって地金が溶解した。一方、作動ガスを使用しない比較例1では図8(e)のようにノズルに対応する位置の炉内壁では地金が溶解しているものの、それ以外の範囲では地金が厚く付着していた。この結果、発明例1では比較例1に対して溶鋼の歩留りが 1.4%増加した。一方、作動ガスをピッチサークルの半径方向を供給した比較例2では、図8(f)に示すように酸化性ガスの変位によっても炉内壁の円周方向に関してはごく狭い範囲でしか地金溶解の促進が生じなかった。そしてそれによる歩留まりの増加も比較例1に対して 0.5%にとどまった。
【0042】
発明例2と比較例3を比較すると、発明例2では、図7(b)に示すように炉内壁のほぼ全周にわたって地金の付着が抑制され、溶鋼の歩留りも 4.5%向上した。一方、比較例3では図8(g)に示すようにノズルに対応する位置の炉内壁のみで地金厚みが薄くなったものの、それ以外の場所では依然として厚い地金が付着していた。そして溶鋼歩留りも 2.4%の増加にとどまった。
【0043】
また、作動ガスを常時導入した発明例2と作動ガスの開閉周期を10秒とした発明例4とを比べると、わずかではあるが発明例4の2次燃焼率,鉄鉱石原単位および歩留りが勝っていた。しかし、作動ガスの開閉周期を本発明のより好ましい範囲とした発明例3とそうではない発明例4とを比べると、発明例3の方が地金溶解効果が大きく、2次燃焼率,鉱石原単位,歩留りとも向上した。
【0044】
2次燃焼率,鉄鉱石原単位(溶鋼1ton あたり)および出鋼歩留りは、表2に示す通りである。
【0045】
【表2】
【0046】
発明例1と比較例1,2を比べると、2次燃焼率,鉄鉱石原単位,出鋼歩留りともに発明例1の方が上回っている。また発明例2および比較例3は、2次燃焼率,鉄鉱石原単位,出鋼歩留りともに比較例1,2に比べて向上が見られたが、発明例2の方が増加量が大きい。 よって2次燃焼率や出鋼歩留りを向上する上で、本発明の優位性が確かめられた。
【0047】
発明例3と発明例4とを比べると、発明例3の方が地金溶解効果が優れている。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、2次燃焼率を向上して転炉の炉壁に付着した地金を溶解し、かつ地金の付着を抑制することによって、炉内容積を確保し、出鋼歩留りを向上できる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の上吹きランスに配設するガス噴射ノズルの例を模式的に示す断面図であり、 (a)は横断面図、 (b)はA−A矢視の縦断面図である。
【図2】従来のガス噴射ノズルを配設した上吹きランスの先端部の例を模式的に示す縦断面図である。
【図3】本発明のガス噴射ノズルの噴射口,オリフィス,作動ガス供給ノズルの配置の例を示す平面配置図である。
【図4】本発明のガス噴射ノズルを用いた場合の2次燃焼率と作動ガス開閉の周期との関係を示すグラフである。
【図5】脱炭処理で用いた設備を模式的に示す断面図である。
【図6】脱炭処理で用いたガス噴射ノズルの噴射口,オリフィス,作動ガス供給ノズルの配置を示す平面配置図である。
【図7】地金の付着状況を示す断面図である。
【図8】地金の付着状況を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ガス噴射ノズル
2 オリフィス
3 拡大部
4 酸化性ガス
5 作動ガス供給ノズル
6 作動ガス
7 上吹きランス
8 噴射口
9 噴射口中心点
10 オリフィスの開口部中心点
11 転炉
12 溶鋼
13 地金
14 排気ダクト
15 出鋼孔
16 トラニオン
c 噴射口中心点が形成する円(ピッチサークル)
t 噴射口中心点とランス外周円の横断面の中心を結ぶ直線と交叉する方向を表わす直線
Claims (7)
- 2個以上のガス噴射ノズルを有する上吹きランスを用いて酸化性ガスを転炉内に供給する転炉操業方法において、 入口部にオリフィスを有しかつ前記オリフィスの下流側に拡大部を有するガス噴射ノズルを2個以上配設し、前記ガス噴射ノズルのうちの少なくとも1個の前記拡大部の壁面でありかつ前記噴射口中心点とランス横断面の中心点を結ぶ直線に対し 90 ± 10 °の角度で交叉する方向の壁面に作動ガス供給ノズルを配設した上吹きランスを用い、前記ガス噴射ノズルのうちの少なくとも1個から噴射される前記酸化性ガスの噴射方向を、前記ガス噴射ノズルの噴射口中心点とランス横断面の中心点を結ぶ直線に対し 90 ± 10 °の角度で交叉する方向に沿って走査することを特徴とする転炉操業方法。
- 前記ガス噴射ノズルから噴射される前記酸化性ガスの走査を周期的に行なうことを特徴とする請求項1に記載の転炉操業方法。
- 前記酸化性ガスを走査する周期τ(sec )を
0.5 ≦τ≦5
とすることを特徴とする請求項1または2に記載の転炉操業方法。 - 前記ガス噴射ノズルを用いて前記転炉内に前記酸化性ガスを供給して、前記溶鋼の脱炭処理を行なうとともに前記転炉の炉壁に付着した地金を溶解することを特徴とする請求項1、2または3に記載の転炉操業方法。
- 前記転炉が、酸化性ガスの底吹き羽口を備えた転炉であることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の転炉操業方法。
- 入口部にオリフィスを有しかつ前記オリフィスの下流側に拡大部を有するガス噴射ノズルを2個以上配設した上吹きランスであって、前記ガス噴射ノズルのうちの少なくとも1個の前記拡大部の壁面でありかつ前記噴射口中心点とランス横断面の中心点を結ぶ直線に対し 90 ± 10 °の角度で交叉する方向の壁面に作動ガス供給ノズルを配設することを特徴とする上吹きランス。
- 前記オリフィスの中心軸が、前記ガス噴射ノズルの中心軸に対して偏心して設けられることを特徴とする請求項6に記載の上吹きランス。
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Applications Claiming Priority (3)
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JP2001-372704 | 2001-12-06 | ||
JP2002347448A JP4206736B2 (ja) | 2001-12-06 | 2002-11-29 | 上吹きランスとそれを用いた転炉操業方法 |
Publications (2)
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