JP2012082492A - 転炉精錬方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高い脱炭酸素効率を維持した状態で、炉体への地金付着を効率的に削減する。
【解決手段】 ランス先端の噴射ノズル6は、スロート7、その下流側に末広がり部8を有し、スロート径Dt及び出口径Deが雰囲気圧力Pe及び適正膨張圧力Poに対して(1)式を満足し、且つ末広がり部の壁面に、制御用ガスを供給する制御用ガス噴射孔9を有した上吹きランスを使用した精錬方法であって、スロート径よりもスロートとの接続部位である末広がり部の径が大きく、スロート中心線が末広がり部中心線に対してランスの中心軸側に偏心していると共に、制御用ガス噴射孔は、スロートから制御用ガス噴射孔までの距離Lとスロート径Dtとの比(L/Dt)が2.5以上となる位置に配置され、且つ噴射ノズルへの供給圧力Pが適正膨張圧力Po以下となる場合には、ランス高さHを(2)式の範囲内に制御する。 (De/Dt)2=0.259×(Pe/Po)-5/7×[1-(Pe/Po)2/7]-1/2…(1) H≦H0×(P/Po)…(2)
【選択図】 図5

Description

本発明は、転炉内の溶銑に上吹きランスから酸化性ガスを吹き付けて溶銑を脱炭精錬し、溶銑から溶鋼を溶製する転炉精錬方法に関し、詳しくは、脱炭酸素効率を高く維持しつつ、ダストの発生量及び炉体への地金付着量を少なくすることのできる転炉精錬方法に関する。
転炉での溶銑の脱炭精錬においては、生産性向上の観点から、単位時間あたりの酸素ガス供給流量を高めた操業が採用されるに伴い、ダストなどとして炉外に飛散する鉄分及び炉壁や炉口付近に付着・堆積する鉄分が増加している。これらの鉄分は、最終的には回収され、再度鉄源として利用されるが、この量が多くなると、回収に要するコストの増加、及び、転炉稼働率の低下を招くことから、転炉脱炭精錬における解決すべき重要な課題の1つとなっている。
このために、転炉での脱炭精錬におけるダスト発生量及び地金付着量の抑制に関して、従来から多くの検討・研究がなされており、ダストの発生機構については、(1)バブルバースト(スピッティングまたは気泡の湯面離脱に伴い粒鉄が飛散する現象)による説と、(2)ヒューム(鉄の蒸発)による説との2つの機構が提唱されており、吹錬の進行に伴って各々の発生量及び発生比率が変化することが知られている。炉体への地金付着量はダストの発生に比例して増加することから、地金付着の機構もダスト発生の機構と同一と考えればよい。
ダスト発生及び地金付着を抑制する手段も多数提案されている。例えば、特許文献1には、上吹きランスの先端部に設けた噴射ノズルの少なくとも一つの噴射ノズルの出口径(De;(mm))とスロート径(Dt;(mm))との比De/Dtを、ノズル出口部雰囲気圧力(Pe;(kPa))とノズルの適正膨張圧力(Po;(kPa))との関係式、つまり、「De/Dt=0.509×(Pe/Po)-5/14×[1-(Pe/Po)2/7]-1/4」からなる関係式から決定した溶鉄精錬用ランスを用い、且つ、該ノズルの入り側圧力Pと前記適正膨張圧力Poとの比を、「1.2×Po≦P≦2.0×Po」或いは「P≦0.8×Po」の範囲に限定した溶鉄精錬方法が提案されている。
この技術は、上吹きランスに設置されたラバールノズル型の噴射ノズルから噴射される酸素ガスの噴流を適正膨張範囲から外れた範囲とすることにより、酸素ガス噴流のエネルギーを減少させ、それにより、バブルバーストに起因するダストの発生を抑制する技術である。しかしながら、ダスト発生及び地金付着は抑制されるものの、噴射ノズルからの酸素ガス噴流は減速して浴面での酸素ガス噴流のエネルギーは減少し、超音速の噴流を得るという、ラバールノズル本来の効果が削減され、脱炭酸素効率が低下して、酸素吹錬の時間が長くなるという問題がある。
また、特許文献2には、上底吹き機能を有する転炉を用いた脱炭吹錬において、鉄浴面に上吹き酸素ガスとともにCaCO3含有率が20質量%以下の生石灰粉を吹き付けることによりダスト発生量を低減した転炉精錬方法が提案されている。
この技術は、CaCO3の分解熱を利用して鉄浴表面、特に火点(酸素ガス噴流の浴面への衝突位置)の温度を低下させ、ヒュームに起因するダスト発生及び地金付着を抑制する技術であるが、通常は塊状で添加する生石灰を粉砕する必要があり、また、生石灰粉を吹き付け添加するための設備が必要であり、製造コストを増加させるという問題がある。
また更に、特許文献3及び特許文献4には、ラバールノズルのスロートとノズル出口部との間の末広がり部に、吹錬用酸素ガスとは独立して流量制御の可能な制御用ガスを供給する制御用ガス噴射孔を配置し、精錬中、該制御用ガス噴射孔から噴射するガス流量を変化させることで、ラバールノズルから噴射される酸素ガス噴流の噴射角度を変化させる転炉操業方法が提案されている。
特許文献3は、制御用ガス噴射孔から供給するガス流量を周期的に変化させることによって、炉内溶湯浴での定在波的振動を防止し、これにより、スピッティングの発生を減少して付着地金やダスト発生を防止している。特許文献4は、吹錬中に上吹きランスのランス高さが変化しても、制御用ガス噴射孔から供給するガス流量を変化させることによって、酸素ガス噴流により形成される溶銑浴面上のキャビティの中心位置を結ぶ円の直径の最小値が、精錬中の最大値の80%以上になるように制御し、これにより、スピッティングの発生を減少して付着地金やダスト発生を防止している。特許文献3及び特許文献4に提案される方法は、ラバールノズルから噴射される酸素ガス噴流の流速を低下させることなく、該噴流の噴射方向を変えることができ、付着地金やダスト発生の防止に有効な方法である。
しかしながら、本発明者らは、ラバールノズルから噴射される酸素ガス噴流の噴射方向を効率的に変化させるためには、制御用ガス噴射孔の設置位置が極めて重要であることを確認しているが、特許文献3及び特許文献4は、制御用ガス噴射孔の最適な設置位置について何ら規定していない。
特開平9−209021号公報 特開2006−342370号公報 特開2010−24499号公報 特開2010−47830号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、先端部に配置される噴射ノズルの少なくとも一部は、その入口部にスロートを有するとともに、スロートの下流側に末広がり部を有し、該末広がり部に、吹錬用酸化性ガスとは独立して流量制御の可能な制御用ガスを供給する制御用ガス噴射孔の配置された上吹きランスを用い、制御用ガスの吹き込みにより、噴射ノズルからの酸化性ガスの噴流を偏向させながら酸化性ガスを上吹きして溶銑を脱炭精錬するにあたり、高い脱炭酸素効率を維持した状態で、炉体への地金付着及びダスト発生を効率的に削減することのできる転炉精錬方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る転炉精錬方法は、上吹きランス先端に設けた噴射ノズルのうちの少なくとも1つの噴射ノズルは、その入口部にスロートを有するとともに、該スロートの下流側に末広がり部を有し、スロート径(Dt;(mm))及び末広がり部の出口径(De;(mm))が、ノズル出口部雰囲気圧力(Pe;(kPa))及びノズルの適正膨張圧力(Po;(kPa))に対して下記の(1)式の関係を満足し、且つ、前記末広がり部の壁面に、前記噴射ノズルから供給される酸化性ガスとは独立して流量制御の可能な制御用ガスを精錬中に供給する、少なくとも1個の制御用ガス噴射孔を有した上吹きランスを用い、前記制御用ガス噴射孔から制御用ガスを供給しながら、前記噴射ノズルから鉄浴表面に向けて酸化性ガスを吹き付けて溶鉄中の炭素を酸化除去する転炉精錬方法であって、前記スロート径よりも該スロートとの接続部位である末広がり部の径の方が大きく、前記スロートが末広がり部の上吹きランス中心軸側の面と滑らかに接続するように、スロートの中心線が末広がり部の中心線に対して上吹きランスの中心軸側に偏心しているとともに、前記制御用ガス噴射孔は、前記スロートから制御用ガス噴射孔の設置位置までの距離(L:(mm))とスロート径(Dt;(mm))との比(L/Dt)が2.5以上となる位置にスロート径に応じて配置されており、且つ、前記噴射ノズルへの酸化性ガスの供給圧力(P(kPa))が前記適正膨張圧力(Po)以下となる場合には、上吹きランスのランス高さ(H;(m))を下記の(2)式の関係を満足する範囲内に制御することを特徴とする。
(De/Dt)2=0.259×(Pe/Po)-5/7×[1-(Pe/Po)2/7]-1/2 …(1)
H≦H0×(P/Po) …(2)
但し、(2)式におけるH0は、噴射ノズルへの酸化性ガスの供給圧力が適正膨張圧力(Po)のときのランス高さ(m)である。
第2の発明に係る転炉精錬方法は、第1の発明において、前記制御用ガス噴射孔から、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス、空気またはこれらの混合ガスを、その流量を操業の一部或いは全部で周期的に変化させて吹き込むことを特徴とする。
本発明によれば、上吹きランスの先端部に配置する噴射ノズルのうち、少なくとも1つの噴射ノズルは、噴射ノズルの末広がり部の中心線に対してスロートの中心線を上吹きランスの中心軸側に偏心させるので、当該噴射ノズルから噴射される噴流の噴射角度は噴射ノズルの傾角よりも大きくなり、一方、末広がり部の上吹きランスの中心軸側とは反対側の壁面に、スロートから制御用ガス噴射孔の設置位置までの距離(L)とスロート径(Dt)との比(L/Dt)が2.5以上となるように制御用ガス噴射孔を配置するので、この制御用ガス噴射孔から噴射される制御用ガスにより、噴射ノズルから噴射される噴流を、超音速状態を維持したまま、上吹きランスの中心軸側へ任意の角度で効率的に偏向することが可能となり、且つ、酸化性ガスの供給圧力が変化した際には酸化性ガス供給圧力に応じてランス高さを変更するので、酸化性ガスの供給圧力(P)がノズルの適正膨張圧力(Po)以下の場合であっても、脱炭酸素効率を低下させることなく、転炉炉壁に付着する地金量及びダスト発生量を低減することが実現される。
炉壁への地金付着量指数とノズル傾角との関係の調査結果を示す図である。 脱炭酸素効率とノズル傾角との関係の調査結果を示す図である。 ガス噴流が過膨張状態のときの脱炭酸素効率に及ぼすランス高さの影響の調査結果を示す図である。 本発明で使用した上吹きランスの概略断面図である。 図4に示す噴射ノズルの拡大図である。 制御用ガス供給孔からの制御用ガス流量を変化させたときの酸素ガス噴流の偏向角度の調査結果を示す図である。 制御用ガス供給孔の設置位置と噴射ノズルからの酸素ガス噴流の偏向角度との関係の調査結果を示す図である。 制御用ガス供給孔からのガス流量を周期的に変動させたときの噴射ノズルからの酸素ガス噴流流速の変動幅の調査結果を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明に至った経緯について説明する。
本発明者らは、転炉内の溶銑に酸素ガスを上吹きして溶銑の脱炭精錬を行う際の転炉々壁への地金付着量に及ぼす上吹きランスからの酸素ガス噴流の噴射角度の影響について、上方から酸化性ガスを吹き付けると同時に、炉底部から攪拌用ガスを吹き込むことの可能な、容量150kg規模の高周波誘導溶解炉を用いて試験・検討を進めた。上吹きする酸化性ガスとしては酸素ガスを使用し、底吹きの攪拌用ガスとしてはアルゴンガスを使用した。
実験方法としては、同一円周上に等間隔で3つのラバールノズルが設置された上吹きランスを用いて、上吹きの酸素ガス流量を400NL/分の一定の条件とし、ランス高さを0.069mの一定の条件として、ラバールノズルの傾角(上吹きランスの中心軸に対するノズルの傾斜角度)を9〜19°の範囲で変更し、実験後に炉壁に付着した地金質量を計量するとともに脱炭精錬のために供給した酸素ガス量を計測し、地金付着量に及ぼすノズル傾角の影響、並びに、脱炭酸素効率に及ぼすノズル傾角の影響を調査した。尚、ノズル傾角とは、ノズルの中心線と上吹きランスの中心軸とでなす角度、つまり、上吹きランスの中心軸に対するノズルの傾斜角度であり、また、ランス高さとは、上吹きランスの先端と炉内の静止した状態の溶銑表面との距離である。
ここで、酸素ガスの供給は溶銑中の炭素濃度が4.0質量%の時点から開始し、炭素濃度が0.05質量%となる時点まで継続した。尚、溶銑の脱炭精錬では脱炭反応の進行に伴って溶銑中の炭素が減少して最終的には炭素含有量の少ない溶鋼となるが、脱炭精錬中に溶銑と溶鋼とを区別して表示することは極めて煩雑であり、本発明では溶銑及び溶鋼をまとめて「溶鉄」とも表示する。
使用した上吹きランスは、その先端部の同一円周上に、噴射ノズルとして3個のラバールノズルが等間隔で配置されたものであり、ラバールノズルは、スロート径(Dt)が1.60mmで、ノズルの適正膨張圧力(Po)を540kPa、ノズル出口部雰囲気圧力(Pe)を101.3kPa(1気圧)として設計したもので、出口径(De)は1.97mmである。実験時、酸素ガスの供給圧力(P)は545kPaであり、適正膨張圧力(Po)と同等とした。
尚、ラバールノズル型の噴射ノズルの場合には、スロート径(Dt:(mm))と、出口径(De;(mm))と、ノズル出口部雰囲気圧力(Pe;(kPa))と、ノズルの適正膨張圧力(Po;(kPa))とが、下記の(1)式の関係で設計されており、スロート径(Dt)とノズル出口部雰囲気圧力(Pe)とノズルの適正膨張圧力(Po)とが決まれば、出口径(De)は自ずと決定される。ここで、ノズル出口部雰囲気圧力(Pe)とは、噴射ノズルの外部の雰囲気圧力であり、転炉での脱炭精錬の場合には、転炉内の雰囲気圧力であって、通常は大気圧(101.3kPa)である。
(De/Dt)2=0.259×(Pe/Po)-5/7×[1-(Pe/Po)2/7]-1/2 …(1)
通常、操業時には、酸化性ガスの供給圧力(P)をノズルの適正膨張圧力(Po)と同等または±10kPa程度の範囲内で制御している。これは、酸化性ガスの供給圧力(P)がノズルの適正膨張圧力(Po)と実質的に同一の場合には、ガスが適正に膨張して超音速の噴流が得られるのに対し、酸化性ガスの供給圧力(P)が適正膨張圧力(Po)と異なると(大きすぎてもまた小さすぎても)、噴射ノズルにおいて適正なガス膨張が得られず、噴射される噴流が減速して、脱炭酸素効率が低下するからである。但し、転炉での溶鉄の脱炭精錬では、溶鉄中の炭素濃度が低下した精錬末期(溶鉄中炭素濃度がおよそ0.4質量%以下ないし0.6質量%以下の範囲)には、脱炭反応が、酸素ガスの供給律速から溶鉄中炭素の移動律速に変わり、上吹きする酸素ガスの一部が鉄の酸化にも費やされるので、鉄の酸化を抑制して脱炭酸素効率を高めるために、一般的に、酸素ガス供給量を低減させており、この場合には、酸化性ガスの供給圧力(P)が適正膨張圧力(Po)よりも低くなる。
図1に、試験により求めた、炉壁への地金付着量指数とノズル傾角との関係を示す。ここで、地金付着量指数とは、下記の(3)式で定義されるものであり、ノズル傾角が9°の場合を基準(=1.0)とした相対値である。
地金付着量指数=(地金付着量)/(ノズル傾角が9°の場合の地金付着量) …(3)
図1から明らかなように、上吹きランスのノズル傾角以外の条件が同一の条件下では、地金付着量指数はノズル傾角が大きくなるほど少なくなることが分った。これは、ノズル傾角が大きくなるほど、酸素ガス噴流の溶鉄浴面に対する衝突角が小さくなり、これにより、酸素ガス噴流の溶鉄浴面に衝突する時点での衝突エネルギーが低くなり、スピッティングによる地金飛散量が減少することによると考えられる。
図2は、脱炭酸素効率とノズル傾角との関係を示す図である。尚、脱炭酸素効率とは、下記の(4)式で定義されるものであり、上吹きランスから供給した酸素ガスのうちで、溶鉄中炭素の除去、つまり脱炭反応に費やされた酸素ガス量の比率(百分率)である。脱炭反応に費やされた酸素ガス量は、脱炭量から化学量論的な計算によって求められる値である。
脱炭酸素効率(%)=(溶鉄中炭素の除去に費やされた酸素量)×100/(供給した酸素量)…(4)
図2に示すように、脱炭酸素効率は、ノズル傾角が9〜19°の範囲内ではノズル傾角によらず、ほぼ一定の値を示すことが分った。
ここで、注目すべき事項は、上吹きランスからの酸素ガス噴流を適正膨張に維持した条件下で、ノズル傾角が9〜19°の範囲内では、ノズル傾角を大きくすることによって、脱炭酸素効率を維持したまま、炉壁への地金付着量を少なくすることができるという事象である。
ところで、製鉄所の大型転炉の操業では、上吹きランスのランス高さを一定とした操業は、極めて稀であり、1回の脱炭精錬の間でも、或いは溶製する鋼種の違いなどによっても、ランス高さの変更を伴う複数の吹錬パターンを使い分けているのが実情である。特に、前述したように、精錬末期の低炭素濃度域では溶鉄の過酸化を防止するために上吹き酸素ガス流量を低下させている。この操作により、上吹きランスからの酸化性ガス供給圧力(P)は適正膨張圧力(Po)よりも低くなり、つまり、上吹きランスのノズル出口での酸素ガス噴流は過膨張状態となり、超音速噴流を得るというラバールノズル本来の効果が減少し、脱炭酸素効率の低下、更には吹錬時間延長を招くことになる。
そこで、上吹き酸素ガス流量が低下する際には、ランス高さを調節することによって脱炭酸素効率の低下を抑制することを検討した。前述した実験装置を用い、噴射ノズルとして、スロート径(Dt)が1.60mmで、ノズルの適正膨張圧力(Po)を540kPa、ノズル出口部雰囲気圧力(Pe)を101.3kPa(1気圧)として設計した、3個のラバールノズルが傾角9°で等間隔で配置された上吹きランスを用い、上吹き酸素ガス流量を350NL/分として、ランス高さを0.045〜0.069mの範囲で変更し、そのときの脱炭酸素効率を調査した。この時の酸素ガスの供給圧力(P)は約465kPaであり、適正膨張圧力(Po)の540kPaに対して約14%低い圧力である。
図3に、脱炭酸素効率に及ぼすランス高さの影響を示す。尚、図3には比較として、上吹き酸素ガス流量が350NL/分のときに適正膨張圧力(Po)となる上吹きランスを用いた試験(ランス高さは0.069m)のデータ(図では「適正膨張」として示す)を併記している。図3に示すように、過膨張条件で且つ上吹き酸素ガス流量が同一のときには、脱炭酸素効率はランス高さの減少とともに向上した。更に、適正膨張条件と同等以上の脱炭酸素効率を得るランス高さは、約0.059m以下となった。
これらのデータを解析した結果、噴射ノズルへの酸化性ガスの供給圧力(P)が適正膨張圧力(Po)以下となる場合であっても高い脱炭酸素効率を維持するためには、上吹きランスのランス高さ(H;(m))を下記の(2)式の関係を満足する範囲内に制御する必要のあることが分った。
H≦H0×(P/Po) …(2)
但し、(2)式におけるH0は、噴射ノズルへの酸化性ガスの供給圧力が適正膨張圧力(Po)のときのランス高さ(m)である。
前述したように、脱炭酸素効率は、ノズル傾角が9〜19°の範囲内ではノズル傾角によらず、ほぼ一定であるが、上記のように、ランス高さは一定ではなく変化することから、9〜19°の範囲内であっても、過度のノズル傾角の増大は、ランス高さを大きくしたときに酸素ガス噴流が直接炉壁耐火物に衝突し、これによる炉壁耐火物の損傷を助長させる虞がある。それ故、実機上吹きランスでは、或る角度以下の傾角が採用されている。つまり、ノズル傾角は、転炉形状や操業方法の違いにより差は生じるが、一般的には、10〜15°程度を採用する場合がほとんどであり、本発明においても同様である。
これらを勘案すると、スピッティングの発生を減少して付着地金やダスト発生を防止するためには、上吹きランスの高さ制御範囲内の下限近傍の操業ではノズル傾角を大きくすることができ、逆に、高さ制御範囲内の上限近傍の操業ではノズル傾角を小さくすることのできるノズル傾角可変型の噴射ノズルを有する上吹きランスが望まれる。
これを実現する手段の1つとして、ノズル傾角の異なる数種類の上吹きランスを準備し、転炉操業に応じて使い分ける方法が考えられるが、上吹きランスの運用管理が煩雑となることや、上吹きランスの製作費用が嵩むといった問題が発生する。更に、炉壁耐火物が偏磨耗するような状況に対応するには、噴射ノズル毎にノズル傾角を変更する必要も発生し、このような場合には、前述した問題が更に顕在化する。
そこで、物理的なノズル傾角によらず、酸素ガス噴流の噴射角度を調節する方法について検討した。その結果、図4に示すような上吹きランスを用いることで、操業中、酸素ガス噴流の噴射角度を変更できるとの知見を得た。
図4に示すように、本発明で使用する精錬用の上吹きランス1は、外管2、中管3、内管4及び最内管5の四重管で構成され、上吹きランス1の先端部には、鉛直斜め下向き方向を向いた複数の噴射ノズル6が、同一円周上に且つ等間隔で配置されている。尚、本発明で使用する上吹きランス1においては、噴射ノズル6は必ずしも同一円周上に且つ等間隔で配置される必要はなく、任意とすることができるが、ここでは同一円周上に且つ等間隔で配置された上吹きランス1で説明する。
噴射ノズル6の拡大図を図5に示す。図5は、図4の紙面向かって左側の噴射ノズル6を示す図であり、図5(A)は噴射ノズルの中心線の方向から見た図、図5(B)は噴射ノズルの中心線を通る断面図である。
図5に示すように、噴射ノズル6は、その入口部にスロート7を有するとともに、スロート7の下流側に末広がり部8を有している。スロート径(Dt;(mm))及び末広がり部8の出口径(De;(mm))は、ノズル出口部雰囲気圧力(Pe;(kPa))及びノズルの適正膨張圧力(Po;(kPa))に対して上記の(1)式の関係を満足するノズルである。但し、スロート径(Dt)よりも該スロート7との接続部位である末広がり部8の径の方が大きく、スロート7と末広がり部8との境界の一部に段差が設けられている。この場合に、スロート7が末広がり部8の上吹きランス中心軸側の面と滑らかに接続するように、スロート7の中心線qが末広がり部8の中心線pに対して上吹きランス1の中心軸側に偏心して設置されている。末広がり部8の中心線pは、上吹きランス1の中心軸に対して角度θで傾斜している。角度θがノズル傾角となる。この噴射ノズル6から噴射される噴流は、スロート7が末広がり部8に対して上吹きランス1の中心軸側に偏心していることにより、傾角θよりも上吹きランス1の外周側へ偏向する。尚、末広がり部8の広がり角度は、片側で10°以下とする。
また、末広がり部8の上吹きランス1の中心軸側とは反対側の壁面には、制御用ガスを供給するための、少なくとも1個の制御用ガス噴射孔9が設けられている。制御用ガス供給孔9からは、この制御用ガス供給孔9が設置された噴射ノズル6から噴射される酸素ガス噴流の方向及び/または流速を制御するための制御用ガスが噴射される。この制御用ガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、空気、またはアルゴンガス、更にはこれらの混合ガスなど、どのような種類のガスであっても使用可能である。
最内管5の内部は、上吹きランス1を冷却するための冷却水の供給流路となっており、最内管5の上端部から供給された冷却水は最内管5の内部を通って上吹きランス1の先端部まで至り、先端部で反転して外管2と中管3との間隙を通って上吹きランス1の上部に設けられた排水継手10から排出される。
内管4と最内管5との間隙は、噴射ノズル6への酸素ガスの供給流路となっており、上吹きランス1の上部に設けられた酸素ガス供給継手11から内管4と最内管5との間隙に供給された酸素ガスは、内管4と最内管5との間隙を通り、噴射ノズル6から転炉内に噴出される。噴射されたガスは、その流量により亜音速から超音速のジェットとなる。
中管3と内管4との間隙は、制御用ガス供給孔9への制御用ガス(ここではアルゴンガス)の供給流路となっており、上吹きランス1の上部に設けられた制御ガス供給継手12から中管3と内管4との間隙に供給された制御用ガスは、中管3と内管4との間隙を通り、制御用ガス供給孔9から噴射される。このように、制御用ガスの供給経路を、精錬用の酸素ガスの供給経路から独立させて制御できるようにしてある。
制御用ガス供給孔9は、噴射ノズル6から噴射される噴流の方向及び/または流速を制御するための装置であり、図4に示すように、制御用ガス供給孔9からの噴射方向が、上吹きランス1の外面側から中心軸側に向いているので、精錬用酸素ガスの流量に対する制御用ガスの流量を増加させると、噴射ノズル6から噴射される酸素ガスの噴流は、上吹きランス1の中心軸側へ偏向し、噴射ノズル6の傾角θを減少させた場合(鉛直方向に近くする)と同じ効果を発現する。制御用ガスを止めた場合には、この効果は消滅する。
図6に、精錬用酸素ガス流量を一定とし、制御用ガス供給孔9からの制御用ガス流量を変化させ、そのときの噴射ノズル6からの酸素ガス噴流の偏向角度を調査した結果を示す。図6に示すように、噴射ノズル6からの酸素ガス噴流を1°偏向するのに必要な制御用ガス流量は、噴射ノズル6からの酸素ガス流量に対する比率で約1体積%であり、少量で制御できることが確認された。
即ち、図4に示す上吹きランス1を用いて脱炭精錬すれば、スロート7が末広がり部8に対して上吹きランス1の中心軸側に偏心していることにより、噴射ノズル6からの噴流は、傾角θよりも上吹きランス1の外周側へ偏向し、一方、制御用ガス供給孔9から制御用ガスを供給することにより、噴射ノズル6からの噴流は、傾角θよりも上吹きランス1の中心軸側へ偏向するので、噴射ノズル6からの酸素ガス噴流を幅広い噴射角度で制御でき、これにより、転炉々壁への地金付着が抑制される。
ここで、制御用ガス供給孔9の設置位置を変更し、噴射ノズル6からの噴流の偏向角度に及ぼす設置位置の影響を調査した。制御用ガス供給孔9の設置位置は、単にスロート7からの距離だけでは噴射ノズル6からの噴流への影響を定量化できない虞があることから、スロート7から制御用ガス供給孔9の設置位置(制御用ガス供給孔9の開口部中心位置)までの距離をL(mm)とし、この距離Lのスロート径Dt(mm)に対する比(L/Dt)で制御用ガス供給孔9の設置位置を規定した。
図7に、比(L/Dt)と噴射ノズル6からの酸素ガス噴流の偏向角度との関係を示す。図7は、制御用ガス供給孔9からのガス流量(Q2)を、噴射ノズル6からのガス流量(Q1)に対する比率(Q2/Q1)が0.05の一定とした例であるが、図7に示すように、比(L/Dt)が2.5以上、望ましくは2.8以上となる位置に制御用ガス供給孔9を設置することで、噴射ノズル6からの噴流の偏向角度をより増幅できることが明らかとなった。
更に、制御用ガス供給孔9からのガス流量を周期的に変動させて噴射ノズル6からのガス噴流の挙動を調査した。図8は、周期を1秒として制御用ガス供給孔9からの制御用ガス流量(Q2)を、噴射ノズル6からの酸素ガス流量(Q1)に対する比率(Q2/Q1)が0〜0.05の範囲で変化させたときの噴射ノズル6からの酸素ガス噴流の流速を測定した結果である。流速の測定位置は、ノズル出口から69mm離れた噴流中心位置である。尚、図8には、制御用ガス供給孔9から制御用ガスを吹き込まないとき、及び、比率(Q2/Q1)が0.05の一定の条件で制御用ガス供給孔9から制御用ガスを吹き込んだときの噴射ノズル6からの酸素ガス噴流の流速を併記した。
図8から明らかなように、制御用ガス供給孔9からのガス流量を周期的に変化させた場合には、噴射ノズル6からの酸素ガス噴流の流速の変動幅は、噴射ノズル6からのガス流量を一定とした場合の変動幅と比較して約4〜6倍に増加した。尚、このような噴射ノズル6からのガス噴流流速の変動幅の増加に伴い、噴射ノズル6からのガス噴流と転炉炉内の雰囲気ガス(大部分がCOガス)との乱流混合が促進できるので、炉内二次燃焼率を向上させることができる。
本発明は、上記検討結果に基づきなされたものであり、本発明に係る転炉精錬方法は、上吹きランス先端に設けた噴射ノズルのうちの少なくとも1つの噴射ノズルは、その入口部にスロートを有するとともに、該スロートの下流側に末広がり部を有し、スロート径(Dt;(mm))及び末広がり部の出口径(De;(mm))が、ノズル出口部雰囲気圧力(Pe;(kPa))及びノズルの適正膨張圧力(Po;(kPa))に対して上記の(1)式の関係を満足し、且つ、前記末広がり部の壁面に、前記噴射ノズルから供給される酸化性ガスとは独立して流量制御の可能な制御用ガスを精錬中に供給する、少なくとも1個の制御用ガス噴射孔を有した上吹きランスを用い、前記制御用ガス噴射孔から制御用ガスを供給しながら、前記噴射ノズルから鉄浴表面に向けて酸化性ガスを吹き付けて溶鉄中の炭素を酸化除去する転炉精錬方法であって、前記スロート径よりも該スロートとの接続部位である末広がり部の径の方が大きく、前記スロートが末広がり部の上吹きランス中心軸側の面と滑らかに接続するように、スロートの中心線が末広がり部の中心線に対して上吹きランスの中心軸側に偏心しているとともに、前記制御用ガス噴射孔は、前記スロートから制御用ガス噴射孔の設置位置までの距離(L:(mm))とスロート径(Dt;(mm))との比(L/Dt)が2.5以上となる位置にスロート径に応じて配置されており、且つ、前記噴射ノズルへの酸化性ガスの供給圧力(P(kPa))が前記適正膨張圧力(Po)以下となる場合には、上吹きランスのランス高さ(H;(m))を上記の(2)式の関係を満足する範囲内に制御することを特徴とする。
即ち、本発明においては、図4に示す上吹きランス1を用いて転炉での脱炭精錬を実施するにあたり、精錬の開始時から中期にかけては、制御用ガス噴射孔9から一定量の制御用ガスを供給するか或いは周期的に変化させて供給した上で、噴射ノズル6への酸化性ガスの供給圧力(P)を適正膨張圧力(Po)と同等として、上吹きランス1のランス高さを所定の一定高さ(H0)として、転炉内の溶銑に向けて酸化性ガスを吹き付けて溶銑中の炭素を酸化除去する。脱炭精錬中、噴射ノズル6への酸化性ガスの供給圧力(P)が適正膨張圧力(Po)と同等の範囲内のときにはランス高さを変更せずに、その条件を維持して脱炭精錬を継続する。このランス高さ(H0)は、ノズルの適正膨張圧力(Po)、噴射ノズル6の傾角θ、噴射ノズル6の設置数に応じて、転炉々壁への地金付着量が最も少なくなる条件下で設定する。
転炉での溶銑の脱炭精錬では、脱炭精錬の末期、溶鉄中炭素濃度の低下に伴って脱炭酸素効率が低下し、溶鉄の酸化反応が著しくなる。これを防止するために、脱炭精錬末期には、酸素ガス供給流量を低下する。
噴射ノズル6への酸素ガス供給流量を低下すると、同一の上吹きランス1を使用する限り、噴射ノズル6への酸化性ガスの供給圧力(P)が必然的に低下して、噴射ノズル6からの酸素ガス噴流は最適膨張範囲から乖離し、酸素ガス噴流の溶鉄表面での動圧が低下する。動圧の低下は脱炭反応を遅延させる原因であり、これを防止するために、上吹きランス1のランス高さ(H)を、酸化性ガスの供給圧力(P)が適正膨張圧力(Po)と同等の場合のランス高さ(H0)よりも減少させる。具体的には、供給圧力(P)の低下に応じて上記(2)式の範囲に制御する。ランス高さを小さくすることにより、酸素ガス噴流の溶鉄表面での動圧が高くなり、脱炭酸素効率が向上する。また、ランス高さを小さくすることにより、噴射ノズル6からの噴流の溶鉄上の衝突点は、転炉の中心側に移動し、地金飛散が多くなるので、この地金飛散を防止するために、ランス高さを小さくする場合には、制御用ガス噴射孔9から供給する制御用ガス流量を、酸化性ガスの供給圧力(P)が適正膨張圧力(Po)と同等の場合の流量よりも減少させ、噴射ノズル6からの噴流の偏向を少なくする。つまり、上吹きランス1の外周側へと噴流を向ける。
このようにして転炉脱炭精錬を実施することで、脱炭酸素効率を低下させることなく、転炉々壁への地金付着量及びダスト発生量を減少させることが実現され、地金の除去・回収に要する費用が削減されるのみならず、地金の除去・回収頻度が減少し、その分、転炉の稼働率を高めることができ、効率良く脱炭精錬を行うことが可能となる。
尚、上吹きランス1が複数の噴射ノズル6を有する場合、複数の噴射ノズル6のうちの1つの噴射ノズルだけが上記条件を満足するだけでも、脱炭酸素効率の高位維持及び地金付着・ダスト発生量の低下を或る程度得ることができるが、本発明の効果を享受するためには、全ての噴射ノズル6が上記条件を満たすことが望ましい。また、上吹きランス1から供給する酸化性ガスとしては、一般的には酸素ガスが使用されるが、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスや酸素富化空気なども酸化性ガスとして使用可能である。
容量が250トンの上底吹き転炉を用いて溶銑の脱炭精錬を行った(本発明例1、本発明例2)。使用した上吹きランスは、図4に示す上吹きランスの構成と同一構成であり、先端部に同一形状の5個の噴射ノズルが、ノズル傾角を13°として上吹きランスの軸心に対して同心円上に等間隔で配置されたものであり、噴射ノズルのスロート径(Dt)は46.0mm、出口径(De)は63.2mmである。これらの噴射ノズルは、ノズルの適正膨張圧力(Po)を0.87MPaとして設計されたものである。また、各噴射ノズルでは、末広がり部の中心線に対してスロートの中心線を上吹きランスの中心軸側へ10mm偏心させて配置し、且つ、末広がり部の上吹きランスの中心軸側とは反対側に直径12mmの制御用ガス噴射孔を、距離Lが138mmの位置に配置した。比(L/Dt)は3.0である。
また、比較のために、使用した設備は上記の本発明例1の方法と同一であるが、制御用ガス噴射孔からの制御用ガスを停止した脱炭精錬も実施した(比較例1)。比較例1において、その他の操業方法は本発明例1と同一とした。
転炉に鉄スクラップを装入した後、予め脱燐処理を施した、温度が1265〜1280℃の溶銑を装入し、その後、底吹き羽口からアルゴンガスを攪拌用ガスとして溶銑中に吹き込みながら、上吹きランスから酸素ガスを溶銑浴面に向けて吹き付けた。また、鉄スクラップの装入量は、転炉吹き止め温度(終点温度)が1650℃となるように調節した。使用した溶銑の組成を表1に示す。
Figure 2012082492
酸素吹錬中には、炉上ホッパーから造滓剤として生石灰を投入し、溶鉄の炭素濃度が0.05質量%となるまで脱炭精錬を行った。生石灰は、炉内スラグの塩基度(質量%CaO/質量%SiO2)が2.5となるように添加量を調整した。
また、上吹きランスの噴射ノズルからの酸素ガス供給流量、ランス高さ、制御用ガス噴射孔からの制御用アルゴンガス流量及び底吹きのアルゴンガス流量は、溶鉄中の炭素濃度に応じて、表2に示すように設定した。
Figure 2012082492
つまり、上吹きランスの噴射ノズルからは酸素ガスを、制御用ガス噴射孔からはアルゴンガスを供給し、溶鉄中炭素濃度が0.4質量%を境として各ガス流量並びにランス高さ(H)を変更した。溶鉄中炭素濃度が0.4質量%以降での酸素ガスの供給圧力(P)は0.73MPaであった。本発明例2では、制御用ガス噴射孔から供給するアルゴンガスの流量を周期1秒で変動させた。操業条件および操業結果を表3に示す。
Figure 2012082492
表3から明らかなように、本発明例1及び本発明例2と比較例1とで吹錬時間や冶金特性はほぼ同等の成績であったが、本発明例1及び本発明例2では炉壁や炉口付近に付着する地金は大幅に低減された。つまり、本発明を適用することにより、転炉脱炭精錬における鉄歩留りは大幅に向上することが確認できた。尚、表3に示す地金付着量指数は、比較例1での地金付着量を1.0とした場合の相対値である。
更に、本発明例2においては、鉄スクラップの配合比を高めた操業も可能となり、鉄源(溶鉄、鉄スクラップなど)選択の自由度が向上した。従って、本発明によれば、鉄歩留りの向上並びに鉄スクラップの配合を高めた転炉操業が可能となる。
1 上吹きランス
2 外管
3 中管
4 内管
5 最内管
6 噴射ノズル
7 スロート
8 末広がり部
9 制御用ガス噴射孔
10 排水継手
11 酸素ガス供給継手
12 制御ガス供給継手

Claims (2)

  1. 上吹きランス先端に設けた噴射ノズルのうちの少なくとも1つの噴射ノズルは、その入口部にスロートを有するとともに、該スロートの下流側に末広がり部を有し、スロート径(Dt;(mm))及び末広がり部の出口径(De;(mm))が、ノズル出口部雰囲気圧力(Pe;(kPa))及びノズルの適正膨張圧力(Po;(kPa))に対して下記の(1)式の関係を満足し、且つ、前記末広がり部の壁面に、前記噴射ノズルから供給される酸化性ガスとは独立して流量制御の可能な制御用ガスを精錬中に供給する、少なくとも1個の制御用ガス噴射孔を有した上吹きランスを用い、前記制御用ガス噴射孔から制御用ガスを供給しながら、前記噴射ノズルから鉄浴表面に向けて酸化性ガスを吹き付けて溶鉄中の炭素を酸化除去する転炉精錬方法であって、
    前記スロート径よりも該スロートとの接続部位である末広がり部の径の方が大きく、前記スロートが末広がり部の上吹きランス中心軸側の面と滑らかに接続するように、スロートの中心線が末広がり部の中心線に対して上吹きランスの中心軸側に偏心しているとともに、前記制御用ガス噴射孔は、前記スロートから制御用ガス噴射孔の設置位置までの距離(L:(mm))とスロート径(Dt;(mm))との比(L/Dt)が2.5以上となる位置にスロート径に応じて配置されており、且つ、前記噴射ノズルへの酸化性ガスの供給圧力(P(kPa))が前記適正膨張圧力(Po)以下となる場合には、上吹きランスのランス高さ(H;(m))を下記の(2)式の関係を満足する範囲内に制御することを特徴とする転炉精錬方法。
    (De/Dt)2=0.259×(Pe/Po)-5/7×[1-(Pe/Po)2/7]-1/2 …(1)
    H≦H0×(P/Po) …(2)
    但し、(2)式におけるH0は、噴射ノズルへの酸化性ガスの供給圧力が適正膨張圧力(Po)のときのランス高さ(m)である。
  2. 前記制御用ガス噴射孔から、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス、空気またはこれらの混合ガスを、その流量を操業の一部或いは全部で周期的に変化させて吹き込むことを特徴とする、請求項1に記載の転炉精錬方法。
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