JP3577959B2 - 酸素吹きランス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素吹きランスに係わり、特に、金属精錬装置に保持した溶融金属に酸素ガスを吹きつけ該溶融金属を精錬するに際し、該装置内において、精錬反応で生成したガスの二次燃焼を促進し、その燃焼熱を溶融金属浴に付与するのに有効な酸素吹きランスに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、製鋼分野では、転炉において、スクラップ溶解量を増加させたり、鉱石類の溶融還元が行われるようになった。また、精錬後の溶鋼を真空精錬装置内で2次精錬し、所謂高清浄度鋼が溶製されている。かかる精錬を実施するには、溶鋼に従来より大きい熱を付与する必要があり、二次燃焼法なる技術が開発された。それは、転炉等に特殊なガス上吹き用のランスを設け、それを介して吹き込む酸素ガス・ジェット(以下、単にジェットという)で、転炉等内で発生したCOガスを燃焼させ、その燃焼熱を溶鋼に着熱させる方法であり、コストや溶鋼中[S]の上昇を伴わない等の点から、極めて有効な技術である。そこで、この二次燃焼率(定義:(CO2(vol%)/(CO(vol%)+CO2(vol%)) ×100 )を向上させるため、
従来より、ランスの形状変更が多々行われている。
【0003】
例えば、特公平3−77247号公報は、従来のガス流路がストレート、あるいは所謂ラバール・ノズルを改め、精錬用の主ノズルのほかに二次燃焼用の副ノズルを有してなる転炉吹錬用ランスを提案している。それは、主ノズルを従来通りの形状に維持したままで、副ノズルを噴出流速が亜音速になる如く、ガス通路を先拡がり形状にしたり、あるいは通路の内部に多孔板、流路断面変更板等のガス流抵抗体等を設けたり、これらの両者を組み合わせた形状にしたものである。
【0004】
また、特公平3−77248号公報は、上記改造に加え、主ノズル用酸素流路と副ノズル用酸素流路を分離し、それぞれの流路を流れる酸素の流量を独立して制御可能なランスを提案している。
【0005】
さらに、実公平6−5406号公報は、上記精錬用主ノズルの他に噴出速度が亜音速になる如く先拡がり形状にした副ノズルを有する転炉吹錬用ランスにおいて、上記の主ノズル又は主ノズルと副ノズルを入口部から中央部域間までの流路はランス軸に対して角度を持って外側方向に屈折させて構成したことを特徴とする転炉吹錬用ノズルを提案している。
【0006】
ところで、かかるランスを用いて操業を行ったところ、確かに前記二次燃焼率は従来に比べて若干向上した。しかしながら、主ノズルは、従来通りのストレート又はラバール形状であるため、高速の酸素ガス・ジェットが溶鋼面に衝突し(ハード・ブローという)、溶鋼のスピッティング量は、従来とほぼ同じであった。そのため、操業中のダスト発生は、期待したほど改善されず、依然として激しいままであった。このダスト発生を抑制するには、ランス高さ(静止状態の溶鋼表面からランス先端のノズルまでの距離)を上昇して操業することが考えられる。
【0007】
しかしながら、ランス高さを上昇させると、二次燃焼帯から溶鋼表面までの距離までが大きくなり、溶鋼への着熱効率が低下するという問題が生じる。また、排ガス温度が上昇しているので、転炉上部(特に、炉肩部)に内張りした耐火物の溶損が激しくなり、安定した操業ができなくなるという問題も生じる。さらに、ノズルの形状が主ノズルと副ノズルとで異なると、ランスの構造が複雑になり、製作が容易でなく、また製作コストが高くなるという別の問題もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑み、従来よりも、操業中のダストの発生が抑制できると共に、精錬排ガスの二次燃焼率を従来より高く維持でき、且つ製作容易な酸素吹きランスを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために、酸素吹きランスの形状に関し種々の実験・研究を行った。そして、ランスに設けたノズルのガス通路の形状を、途中で急激に拡大させ、その拡大程度をある関係に従うようにすれば、上記目的が達成できることを知り、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、金属精錬装置で使用され、精錬用酸素ガスを吹き出す単数あるいは複数のノズルを備えた酸素吹きランスにおいて、前記ノズルのガス流路が、いずれもスロート部と断面積拡大部とからなり、且つスロート部の径r,断面積拡大部の径R及び断面積拡大部の長さLの間で、下記2式を同時に満足することを特徴とする酸素吹きランスである。
【0011】
0.5×R ≦ r ≦0.90×R 及び 0.75×R ≦ L
また、本発明は、前記金属精錬装置が溶鋼を溶製する転炉、又は真空脱ガス装置であることを特徴とする酸素吹きランスでもある。
【0012】
本発明によれば、ノズルのガス通路がストレート・タイプの従来のランスと比較して、ランス高さが同じでも、溶融金属浴面に吹き付けられる酸素ジェットの鉛直方向流速が低下するようになる。つまり、酸素ジェットをソフト・ブローで吹き付けることができ、従来よりも、操業中のダストの発生が抑制できると共に、精錬排ガスの二次燃焼率を従来より高く維持できるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、発明をなす経緯も含め、発明の実施の形態を説明する。
【0014】
発明者は、図1に示すような単口のノズル10を有する酸素吹きランスを多種類試作し、溶鉄3の浴面に該ノズル10から酸素ジェット6を吹き付ける実験を行った。なお、図1のノズル10は、ガス通路をスロート部8と断面積拡大部9とで形成し、スロート部8の径をr,断面積拡大部9(以下、単に拡大部という)の径及び長さをそれぞれR及びLとしている。
【0015】
その実験は、拡大部9の径Rを一定の値としたまま、スロート部8の径r及び拡大部9の長さLを種々の値に変化させ、吹き出した酸素ジェット6のノズル中心軸上での流速を溶鉄3の浴面上で測定するものである。
【0016】
まず、その測定結果を図2に示す。図2では、縦軸を前記中心軸上流速としたが、その値は、r=R(つまり、ストレート・タイプ)及びL=Rのノズルで得られた中心軸上流速を基準にして指数化したものである。図2より、スロート部8の径rが0.50R、0.75R及び0.90Rの場合には、拡大部9の長さLをL/R≧0.75となるようにすれば、ストレート・タイプのノズル10よりも遅い流速が得られることが明らかである。これは、スロート部8から出た音速の酸素ジェット6が拡大部9において、膨張しながら前進しようとする際に、衝撃波を発生して圧損が増加するため、ガス通路の出口で該ガスの圧力が低下することに起因している。一方、r=0.25Rの酸素吹きランス5では、スロート部8から出た音速のジェットが拡大部9において、雰囲気のガスを巻き込みつつ膨張するので、圧損は増加せず、ストレート・タイプのノズル10よりも速い流速になっている。これは、従来のラバール・タイプのノズルと同様に、所謂ハード・ブローである。
【0017】
そこで、発明者は、これらの実験結果を整理し、ノズル10の形状を代表させるスロート部8の径r、拡大部9の径R及び長さL間の関係が前記式を満たせば、ノズル10から吹き出す酸素ジェット6の鉛直方向速度成分が低下すると考え,そのようなノズル形状を有する酸素吹きランス5を本発明とした。そして、かかるランス5を使用して、吹き出される酸素ジェット6と鋼浴面上でのCOガスとの所謂二次燃焼が、効率良く実施できることを確認したのである。
【0018】
【実施例】
図3に示す転炉型溶融還元炉1(生産能力150トン規模)に、酸素吹きランス5を設置し、ステンレス鋼の製造用溶鉄を製造する実験を行った。
【0019】
まず、予じめ脱珪及び脱燐処理された130トンの溶銑を、トピード・カー(図示せず)で前記溶融還元炉1まで搬送した。そして、予め30トンのスクラップが投入されている該溶融還元炉1に装入した。
【0020】
酸素吹きランス5の先端位置は、装入した溶銑にスクラップが溶解して形成された溶鉄3の静止状態にある浴面から3.0mの高さとし、また、該溶鉄3にクロム鉱石を投入するための投入ランス7の先端位置は、静止溶鋼面から4.0mの高さ位置とした。そして、上吹き酸素量を550Nm3/min、底吹き窒素量を50Nm3/minの条件で、該溶鉄3の酸素吹錬を行った。その際、溶鉄3の温度が1550℃になるまで、該溶鉄3に炭材も供給した。さらに、溶鉄温度が所定の温度(1550℃)に達した時点で、クロム鉱石の投入を開始した。この酸素吹錬中は、溶鉄温度の測定を所謂サブ・ランス(試料採取用)を用いて行い、この測定値に基づいてクロム鉱石の投入速度を調整すると共に、溶鉄温度が1550±20℃の範囲内に収まるようにした。操業開始後、約70〜80分)が経過してから、前記クロム鉱石の投入ランスを上昇させてクロム鉱石の供給を停止し、引き続き、酸素のみによる吹錬を約5〜7分行った。
【0021】
なお、酸素吹きランス5には、図4に示す6孔ノズル及び図5に示す従来から存在するストレート・ノズルを有するもの、及び図6に示す急拡大ノズルとラバールノズルを交互に配置したものが使用されていた。その形状を表1に一括して示す。そして、該ランス5の種類を変更したクロム鉱石の溶融還元操業が、各ランス5毎に10チャージずつ行なわれた(その操業条件を表2に示す)。そして、各チャージ毎に二次燃焼率、溶鉄やクロム鉱石の歩留、ノズルの溶損状況を調査した。
【0022】
ここで、
溶鉄の歩留=(出鋼溶鉄中金属分/(溶鉄中金属分+スクラプ中金属分+Cr鉱石中金属分))×100
クロム鉱石の歩留=(出鋼溶鉄中Cr分/(スクラップ中Cr分+Cr鉱石中Cr分))×100。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
調査結果を表3に一括して示す。本発明に係る酸素吹きランス5を使用した操業(実施例)では、ノズル10内へ地金等が飛び込むことに起因したトラブルを招くことなく、酸素ジェット6のソフト・ブローが可能であった。その結果、表3より明らかなように、二次燃焼率の向上及びダスト発生の低減が達成できている。一方、ストレート・タイプのノズル10を有したり、図4に示す6孔ノズルであっても前記式を満足しないものによる操業では(比較例)、溶鉄やクロムの歩留が低く、満足できる操業成績が得られなかった。
【0026】
【表3】
【0027】
なお、上記実施例は、転炉型溶融還元炉1での操業に用いられたものであるが、本発明に係る酸素吹きランス5は、そのような炉に限らず、通常の転炉及び真空精錬装置等にも使用できることは、言うまでもない。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、上吹きランスの直径を従来と変更することなく、上吹き酸素ジェットのソフトブローが可能となった。また、操業中のダスト発生量が従来より大幅に低下した。その結果、ランス内への地金飛び込み等の問題を生ぜずに、酸素吹錬における生成ガスの二次燃焼率を向上させることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る酸素吹きランスに設けるノズルの模式図である。
【図2】酸素吹きランスに設けるノズルのガス通路形状と吹き出されるガスの流速との関係を示す図である。
【図3】溶鉄中でクロム鉱石の溶融還元を実施する装置を示す図である。
【図4】ガス通路を急拡大させたノズルを有する酸素吹きランスの一例を示す図であり、(a)はランスの先端にのみ、(b)はランスの側壁にもノズルを配置した場合で、(c)は(a)の平面図である。
【図5】従来のストレート・タイプのノズルを有する酸素吹きランスの一例を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図6】従来のラバル・タイプのノズルを有する酸素吹きランスの一例を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
1 転炉型溶融還元炉(溶融還元炉)
2 ガスの底吹きノズル
3 溶鉄
4 スラグ
5 酸素吹きランス
6 酸素ジェット
7 クロム鉱石の投入ランス
8 スロート部
9 断面積拡大部(拡大部)
10 ノズル
10’ラバールノズル
Claims (2)
- 金属精錬装置で使用され、精錬用酸素ガスを吹き出す単数あるいは複数のノズルを備えた酸素吹きランスにおいて、
前記ノズルのガス流路が、いずれもスロート部と断面積拡大部とからなり、且つスロート部の径r,断面積拡大部の径R及び断面積拡大部の長さLの間で、下記2式を同時に満足することを特徴とする酸素吹きランス。
0.5×R ≦ r ≦0.90×R 及び 0.75×R ≦ L - 前記金属精錬装置が溶鋼を溶製する転炉、又は真空脱ガス装置であることを特徴とする請求項1記載の酸素吹きランス。
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