JPH11308961A - パン生地等の延展装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 粘弾性の強い生地も薄いシート状に連続して
延展して、生地の延展効率が良く、厚みが均一で内層も
均一な高品質の生地を容易に成形することができるよう
にしたパン生地等の延展装置を提供する。 【解決手段】 円周軌跡を公転する複数の遊星ローラー
を配列した回転体と、その下方に、生地の入口から出口
に向かって順次周速が速くなる複数のローラーと円弧形
状のプレートからなる運搬装置を設け、運搬装置と上方
の遊星ローラーが対向して構成された湾曲した隙間は、
運搬装置の複数のローラーと上方の遊星ローラーとの隙
間が生地の入口から出口に向かって漸減するように形成
されているパン生地等の延展装置。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、パン生地等の粘弾
性の強い材料の延展装置に関するものであり、さらに詳
しくは、簡単な振動運動効果により、コンベアで連続的
に供給されるパン生地等を薄いシート状に連続して延展
すると共に、生地の延展効率が良く、厚みが均一で内層
も均一な高品質の生地を容易に成形することができるよ
うにした延展装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】弾性を有する材料の成形は、従来、材料
の弾性の降伏点以上の応力を加えて初めて成形すること
ができたのであるが、この場合、失われた弾性の自然な
回復はないので、弾性が重要な品質条件とされる食品、
特にパンの製造においては、熟練した手作業が非常に要
求されてきた。しかし、機械がパンを自動成形する場合
は、その弾性は常に成形時の邪魔者であったし、また、
その弾性をいささかでも喪失させれば、人手の熟練で作
られたものと同じような味のパンを得ることができない
ため、化学添加物としてブロム酸カリ等を混入し、機械
成形する時に喪失する弾性（膜造成機能）を、成形後一
定の静置期間を置くことで回復させていた。

【０００３】このように、パンは生地本来の弾性を疲労
させて圧延成形するか、またはスクリュー機構等によ
り、ヒネリ応力を加えてグルテンのゲル構造を破壊し、
弾性を失わせて成形し、化学添加物によって弾性を回復
させていたが、パンを作る装置としては、手作りに比
べ、味の劣化等の問題ばかりでなく、化学添加物の使用
は不自然な解決方法でしかなった。このような化学添加
物を用いることなく、パン生地を機械によって生地本来
の弾性内で成形する装置として、長円軌跡を自転公転す
る遊星ローラーにより行う延展装置が特公昭６３−５４
３３３号、実開昭４７−１３４９３号に開示されている
が、これらの装置では、弾性の強いパン生地を薄く延展
するためには十分な能力を発揮することはできない。

【０００４】上記のような実情から、本出願人は、粘弾
性の強い生地に対しても薄く延展できる延展方法および
装置を既に特許出願した（特願平７−３１７２１１
号）。これは、上記長円軌跡を自転公転する遊星ローラ
ーにより行う延展装置において、長円軌跡に換えて円周
軌跡とし、その下方に、遊星ローラーに対向して湾曲し
た隙間を設けて運搬装置を設置し、この隙間は生地の入
口から出口に向かって漸減させ、運搬装置は生地の入口
から出口に向かって順次周速が速くなるように入力され
た複数のローラーからなる装置によって行うものであ
る。これによれば、粘弾性の強い生地でも薄く延展でき
るのであるが、均しが弱いため生地が波打ち、厚みの均
一性が十分に得られないという難点のあることが分かっ
た。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、粘弾性の強
い生地でも薄いシート状に連続して延展して、生地の延
展効率が良く、厚みが均一で内層も均一な高品質の生地
を容易に成形するこたができるようにした延展装置を提
供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するため検討を進めた結果、本出願人が先に特許出願
した前記特願平７−３１７２１１号のパン生地等の延展
装置において、複数のローラーからなる運搬装置の生地
出口部分の一部を、ローラーに換えて円弧形状のプレー
トとすることにより、この円弧形状のプレート上で、遊
星ローラーにより生地の均しが行われ、生地の延展効率
が良く、厚みが均一で内層も巨大な気泡を含まない均一
な生地が得られることを知り、本発明を完成するに至っ
た。すなわち、本発明は、円周軌跡を公転する複数の遊
星ローラーを配列した回転体と、その下方に、供給され
る生地が挟圧される隙間を設けて運搬装置を設置し、回
転体の遊星ローラーは各々回転自在に軸着させ、運搬装
置は生地の入口から出口に向かって順次周速が速くなる
ように入力された複数のローラーと、これに続く円弧形
状のプレートからなり、運搬装置と上方の遊星ローラー
が対向して形成された湾曲した隙間は、運搬装置の複数
のローラーと上方の遊星ローラーとの隙間が生地の入口
から出口に向かって漸減するように形成されていること
を特徴とするパン生地等の延展装置である。

【０００７】本発明によれば、円周上を公転する自由回
転ローラーによって、生地に周期的な強い振動を与える
ことにより、チキソトロピー効果と呼ばれる生地の一時
的な流動現象が現れることを利用して、この効果現象が
現れている僅かな時間帯に生地を引き延ばし、「テンス
ルストレス」によって連続した薄いシート状をパン生地
のゲル構造を破壊せずに作り出すことができる。また、
これらを連続した随意の太さの棒状に巻き上げて、これ
を所定の長さにカットし、パンの小口分割成形を終了さ
せることができる。チキソトロピー効果の一つである流
動性については可逆的であり、本発明のこの効果により
薄く延展された生地は、静置すると数分以内に可逆的に
元の弾性を回復するので、従来の強力な分割方法によ
り、弾性組織の破壊によって得た成形と異なり、本発明
に用いたチキソトロピー効果の利用は、パン生地の膜造
成機能をいささかも損なうことなく、パン生地を薄く延
展することができる。

【０００８】さらに、運搬装置が複数のローラーのみで
形成されている前記従来装置では、均しが弱いため、生
地が波打ち均一な生地にすることが困難であったが、本
発明においては、運搬装置として、複数のローラーとこ
れに続いて円弧形状のプレートを設けることにより、円
弧形状のプレート上で遊星ローラーによって生地の均し
が十分に行われるので、生地の延展効率が良く、厚みが
均一になるので、所望の厚みの生地が容易に得られると
共に、巨大な気泡をなくした内相の均一な生地を得るこ
とができる。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示す実施例
に基づいて説明するが、本発明は、この実施例に限定さ
れるものではない。

【００１０】

【実施例】パン生地等の生地１を運行させる供給コンベ
ア２と、その下流に複数のローラー３，４，５、および
これに続く円弧形状のプレート６からなる運搬装置７を
設け、円弧形状のプレート６上をコンベアのベルトが滑
走し、このコンベアが搬出コンベア８を形成している。
円弧形状のプレート６には、例えば、図４に示すよう
に、その前後両側縁に設けた軸９に円筒体１０を回転自
在に軸着して、搬出コンベア８の運行が円滑に行われる
ようにしている。図面に示す実施例においては、運搬装
置７のローラーを３個としているが、このローラーを５
個程度に増やし、これに応じて円弧形状のプレート６を
短くしても、対象とする生地の種類によって同等に実施
することができる。

【００１１】運搬装置７の上方には、円周軌跡を公転す
る複数の遊星ローラー１１を設け、遊星ローラー１１の
少なくとも一個が、常に円弧形状のプレート６上を公転
しているようにしている。遊星ローラー１１はホイール
１２に固着されたシャフト１３に自由回転的に装嵌され
ており、シャフト１３は運搬装置７と平行に対向位置し
て設けられているので、遊星ローラー１１も平行に運動
することになる。ホイール１２はフレーム１４に支持さ
れたドライブシャフト１５に固着し、ドライブシャフト
１５に固着しているギヤ１６を介し、モーター１７の駆
動によって、ホイール１２が回転する。

【００１２】遊星ローラー１１は延展中の生地の上を転
がって移動し、生地１を薄く延ばして行くことになるの
であるが、生地の延展が好適に行われるように、運搬装
置７のローラー３〜５および円弧形状のプレート６の入
口と遊星ローラー１１が描く外周仮想円ａとの距離（隙
間ｃ）は、下流に向けて減少するように位置されてい
る。さらに、運搬装置７の円弧形状のプレート６と遊星
ローラー１１が描く外周仮想円ａとの隙間は、遊星ロー
ラー１１によってパン生地等が均される区間であり、均
しの区間距離（プレート６の長さ）および隙間ｃの変位
量は、生地の弾性の強弱等の性状に応じて任意に選定で
きる。例えば、運搬装置７の円弧形状のプレート６と遊
星ローラー１１が描く外周仮想円ａとの隙間ｃは、上記
ローラー３〜５のように漸減するように位置するか、あ
るいは一定とするか、または漸増するようにできる。ロ
ーラー３，４，５は下流方向に自転するように、駆動軸
を介してモーター１８，１９，２０はインバータ等の設
定装置によって、それぞれ回転数が調節できるので、ロ
ーラー３，４，５の回転速度を生地の性状に合わせて、
生地引き延ばし方向の出口に向けて増速させることがで
きる。

【００１３】本実施例では、ローラー３，４，５は運搬
方向に、その速度が大きくなるように設定しており、ロ
ーラー３，４，５の回転速度の増速度は、「隙間ｃ」の
下流方向への減少度に応じて、反比例するなどの状態に
設定することができる。「隙間ｃ」の減少度すなわち圧
縮率は、処理するパン生地の性状に応じて隙間を変更す
ることにより変えることができ、簡便な仕方としては、
例えば、ハンドル２１を回転して矢印ｆの方向にホイー
ル１２を動かすことによって調節することができる。ま
た、供給コンベア２の速度は、ローラー３と同じか、ま
たは小さく、搬出コンベア８の速度は、ローラー５と同
じか、または大きく設定している。

【００１４】また、例えば、遊星ローラー１１のお互い
の間隔は、運搬装置７のローラー３，４，５の間隔のお
よそ２倍として配置すると、遊星ローラー１１はローラ
ー３，４，５が一つ置きで、お互いの母線がほぼ同時に
対向するようにすることができる。図３に示す第２実施
例は、図２の第１実施例が遊星ローラー１１を片持ち支
持しているのに対し、両持ち支持の状態を示している。
フレーム２２に回転体としてのホイール２３が支持され
ており、ホイール２３の主軸２４には、モータープーリ
ー２５が装着されていて、このモータープーリー２５の
回転駆動により、遊星ローラー２６が公転するようにな
っている。その他、運搬装置の構成は、第１実施例と同
様としているので、説明を省略する。なお、図１中、２
７は散粉器、２８は供給コンベア２を駆動するモータ
ー、２９は搬出コンベア８を駆動するモーターを示す。

【００１５】以上の構成からなる本発明によれば、供給
コンベア２で運行される生地１は、運搬装置７に供給さ
れ、高速で回転する遊星ローラー１１の群と運搬装置７
に挟み込まれ、順次回転速度が速くなるローラー３，
４，５によって引き延ばされ、さらに、円弧形状のプレ
ート６上において、遊星ローラーの転がりにより生地１
が均され、搬出コンベア８によって搬出される。この
際、自由回転している遊星ローラー１１がローラー３，
４，５の上を通過するときに、生地に対して圧縮と開放
の激しい繰り返し振動が作用し、チクソトロピー効果が
発生し、通常では流動性の低い弾性生地は、一時的に流
動性が高くなる。流動性を生じた生地１は、ローラー
３，４，５の速度差によって容易に引き延ばすことがで
きるようになっている。

【００１６】実験によれば、遊星ローラー１１の速度を
毎分３０〜７０ｍとしてローラー３，４，５と１２個の
遊星ローラー１１によって、パン生地が１分間に約１０
００回のタタキ作用を受けると、パン生地はチキソトロ
ピー効果により、一時的に容易な伸展性を表し、従来の
挟圧では達成できない伸長延展効果を得ることができ
る。このとき遊星ローラー１１がローラー３，４，５を
通過する際、遊星ローラー１１とローラー３，４，５が
同時に少なくとも二箇所の位置で、ローラーの母線が合
致するように対向接近して挟圧が行われるようにする
と、二箇所での挟圧部の速度差によって、さらに伸長が
効果的に行われるものである。さらに、挟圧されない部
位の生地は、外部からの抵抗がない開放された状態で伸
長されると共に、挟圧部間で振動を繰り返すものであ
る。また、上記したこのタタキ効果（チクソトロピー効
果）は、ホイール１２の回転速度の変化によって、自由
に加減できる特徴を有しているので、供給される生地１
の延展比率や、希望する生産速度に合わせて調節できる
機能を有している。

【００１７】上記のように引き延ばされた生地１は、円
弧形状のプレート６上において、遊星ローラー１１によ
って均されるので、生地の均一性が高められると共に、
生地の延展効率が良好になる。ローラー３，４，５の速
度差によって引き延ばされた生地１は、上記の円弧形状
のプレート６がない場合には、均しが弱いために生地が
波打ち均一な生地が得難く、また、搬出コンベア８にお
いて、パン生地等の特有の弾性による縮みによって生地
厚が増し、所望の厚みを得難いものであるが、引き延ば
された生地が円弧形状のプレート６上で均されると、生
地の波打ちおよび縮みが生じなくなるので、所望の厚み
の生地が容易に得られる。

【００１８】

【発明の効果】以上説明したように、粘弾性の強い生地
を延展する際に、あらかじめチクソトロピー効果によっ
て、生地に一時的な流動性を付与して行うと同時に、こ
のチクソトロピー効果の付与によって、生地の延展を低
い圧力で行うことができる。この一時的に生地の伸展性
を発生させることにより、運搬装置のローラーの速度差
による引き延ばし作用を十分に生かすことができ、低い
圧力で生地のグルテン組織を破壊することなく、薄い連
続した生地を容易に得ることができる。そして、円弧形
状のプレート上で、遊星ローラーにより生地の均しが行
われるので、生地の延展効率が良く、厚みが均一で、内
層も巨大気泡を含まない均一な生地が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明第１実施例の全体側面図である。

【図２】本発明第１実施例の断面正面図である。

【図３】本発明の第２実施例の断面正面図である。

【図４】ローラーと円弧形状のプレートの配列状態を示
す斜視図である。

【符号の説明】

１ 生地 ２ 供給コンベア ３ ローラー ４ ローラー ５ ローラー ６ 円弧形状のプレート ７ 運搬装置 ８ 搬出コンベア ９ 軸 １０ 回転円筒体 １１ 遊星ローラー １２ ホイール １３ シャフト １４ フレーム １５ ドライブシャフト １６ ギヤ １７ モーター １８ モーター １９ モーター ２０ モーター ２１ ハンドル ２２ フレーム ２３ ホイール ２４ 主軸 ２５ モータープーリー ２６ 遊星ローラー

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円周軌跡を公転する複数の遊星ローラー
   を配列した回転体と、その下方に、供給される生地が挟
   圧される隙間を設けて運搬装置を設置し、回転体の遊星
   ローラーは各々回転自在に軸着させ、運搬装置は生地の
   入口から出口に向かって順次周速が速くなるように入力
   された複数のローラーと、これに続く円弧形状のプレー
   トからなり、運搬装置と上方の遊星ローラーが対向して
   形成された湾曲した隙間は、運搬装置の複数のローラー
   と上方の遊星ローラーとの隙間が生地の入口から出口に
   向かって漸減するように形成されていることを特徴とす
   るパン生地等の延展装置。