JP3980414B2 - 発酵生地のガス抜き延展方法および装置 - Google Patents
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Description
本発明は、パン生地等の発酵生地の圧延手段に関し、詳しくは製パン工程中に生ずるパン生地内のガスを抜いて生地組織を均一にして後工程に繋げることの可能な手段を提供することに関する。
【0002】
【従来の技術】
パン生地のガス抜きの目的は、パン生地の内の炭酸ガスを抜き、生地の温度、湿度を平均化し、密度の分布を均一化し、生地に新たな活動を期待して、グルテンの伸びの助長、吸水の続行を計るために行うものである(製パン法、雁瀬大二郎著53頁参照)。これらの目的のための手段は、所謂モルダーに取り付けられた対向する挟圧ローラーによって挟圧ローラーの隙間に生地を通過させて行っている(特公昭44─6607号参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来例においては、固定位置に軸着された対向する挟圧ローラーによって、生地を圧延するために、パン生地内のガスを抜くと同時に生地内のグルテン組織を壊してしまうなどの問題が生じている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、パン生地内のガスを抜く際に、グルテン組織を傷めることなく、パン生地等発酵生地のガス抜きを達成する圧延手段を提供するものである。すなわち、本発明は、挟圧部材としての一方のローラーと対向する他方の挟圧部材との隙間に厚みのある帯状の発酵生地を搬送供給して延展する延展方法において、前記発酵生地を、その搬送下流から上流の方向に移動して転がり接触する前記挟圧ローラーと前記他方の挟圧部材によって挟圧し、これを繰り返し行うことをによって、前記発酵生地中の気泡塊を前記挟圧ローラーの下流側に移動しないように止めて分散消滅させ、挟圧された前記発酵生地内のガスを挟圧ローラー上流側から外部に抜くとともに、前記厚みより薄く延展することを特徴とする発酵生地のガス抜き延展方法である。
【0005】
また、本発明は、発酵生地内の気泡塊を分散消滅させ、前記発酵生地内のガスを外部に抜くための発酵生地の延展装置であって、対向する挟圧部材を設け、その挟圧部材の対向する隙間に帯状の発酵生地を搬送供給して延展する延展装置において、前記対向する一方の挟圧部材に、当該挟圧部材に対する発酵生地の搬送方向の上流側において、前記発酵生地中の気泡塊を分散消滅させ、前記発酵生地内のガスを外部に抜くために、前記発酵生地をより薄く延展するよう発酵生地の搬送下流側から上流の方向に繰り返し移動する挟圧ローラーを設けたことを特徴とする発酵生地の延展装置である。
【0006】
また、前記発酵生地の延展装置において、対向する挟圧部材の一方の挟圧部材は、複数の挟圧ローラーが無端軌道を自転公転する遊星ローラー機構であり、対向する挟圧部材の他方の挟圧部材は、ローラーあるいはコンベアベルトであることを特徴とするものである。
【0007】
さらに、本発明は、複数の遊星ローラーを備えたローラー機構と、その下方に前記遊星ローラーより大径のローラーを対向するよう設け、前記遊星ローラー機構と前記大径のローラーの対向する隙間に帯状の発酵生地を搬送供給して延展する延展装置において、前記遊星ローラーが前記遊星ローラー機構の下部位置で前記大径のローラーの上面の周面に沿って円弧移動するとともに、前記大径のローラーの搬送下流から上流に向け転がり移動するようにしたことを特徴とする発酵生地の延展装置である。
【0008】
こうすることによって、下流側から上流側に移動する挟圧ローラーが、発酵生地を挟圧して発酵生地中の気泡塊を延展手段の下流に移動しないように止めることができ、挟圧ローラーの位置で気泡塊を分散消滅することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下図面に用いて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明第1の実施例の延展装置1の概略側面図である。延展装置1は、対向する挟圧部材の一方の挟圧部材としての遊星ローラー機構10を設け、また他方の挟圧部材としてローラー20を設けている。遊星ローラー機構10の下部とローラー20とは所定の間隙を設けており、発酵生地としてのパン生地50が、厚みのある帯状生地として供給コンベア30から前記間隙に供給されて所定の厚みに延展される。ローラー20の下流に連接して排出コンベア40を設けている。
【0010】
遊星ローラー機構10には無端軌跡(図1では円軌跡)を公転する複数の遊星ローラー11を設けている。遊星ローラー11はホィール12に固着したシャフト13に自由回転的に装嵌されており、シャフト13はホイール12中心から同じ半径の円周上に等間隔に設けられる。
【0011】
また、遊星ローラー11は対向する供給コンベア30、ローラー20の搬送面と平行に設けられている。
遊星ローラー11はホィール12がモーターによりホィール12の中心軸を駆動させ右回転(図1にて矢印A時計方向)することにより、遊星ローラー11が右回転に公転する。遊星ローラー11には、摩擦ベルト14が遊星ローラー機構10の下部で接触するように設けられているので、遊星ローラー11の公転に伴って左回転(図1にて矢印B反時計方向)に自転するものである。
【0012】
遊星ローラー11の公転速度はホィール12の回転数によって決定され、その速度は任意に選択することができる。
また、遊星ローラー11は摩擦ベルト14との摩擦によって強制的に自転するが、その自転速度は摩擦ベルト14により接触回転する固定的なもので限定去れるものではない。例えば、摩擦ベルトを本実施例のように両端が固定されたものではなく、回転速度が変更可能な無端軌道のベルトを遊星ローラーに接触することができる(特願2000−377554号参照)。このようにすると、無端起動ベルトを速度を変更して、遊星ローラーの自転速度を変更し、遊星ローラー11の公転速度と自転速度との関係を調節し生地に対して、適度な計算された転がり接触を行うことができる。
【0013】
遊星ローラーの自転速度を変更するその他の例としては、例えば、遊星ローラーにそれぞれ同径のギヤを軸着させ、遊星ローラーの公転中心位置に、前記遊星ローラーのギヤと噛み合う回転数変更自在のギヤを設け、これを、遊星ローラーの公転速度に応じて任意に設定変更するようにして行うことができる。
【0014】
他方の挟圧部材としてのローラー20は前記した遊星ローラー11に比べて、大きい直径のローラーである。ローラー20は駆動モーターによってパン生地50の搬送方向(図1紙面時計方向)に回転する。
【0015】
上記から理解されるように、供給コンベア30から搬送供給されるパン生地50は公転する遊星ローラー11とローラー20の間隙Cの部分で挟圧される。このとき遊星ローラー11は、パン生地50の搬送下流から上流方向に向けて移動し、挟圧位置を上流側に移動していく。これらの複数の挟圧ローラーとしての遊星ローラー11が下流から上流方向への移動が繰り返し行われることにより、パン生地50を薄く延展するとともに、挟圧されたパン生地内のガスを遊星ローラー11の上流側から外部に放出させるようにしたもので、パン生地内の発酵ガスを下流側に送りだされることなく、確実に外部に放出させることができる。
【0016】
従来の延展装置として遊星ローラー機構によるものがあり、この従来例では遊星ローラーは生地の搬送方向に移動するものである。図4aに示すように従来例との比較を示す。遊星ローラーが従来例のように上流から下流方向に移動して転がり接触する場合には、生地は薄く延展されるものの、発酵ガスは遊星ローラーで挟圧されても下流方向に送られ移動してしまい、パン生地内に発酵ガスが残留してパン生地表面に気泡が散在することがある。しかし、本発明においては、繰り返し下流から上流方向に向かってくる遊星ローラー11がパン生地内の発酵残留ガスを挟圧する上流側位置に留め、その位置から発酵ガスを外部に放出するような現象が見込めるものである(図4b)。延展されて搬出コンベア40に排出されたパン生地は表面が滑らかであり、このパン生地から作ったパンの外観はボリュームがあり、内相はスダチが均一で従来にみられる大きな気泡は無かった。
【0017】
次に第二実施例を図2、図3を参照して説明する。第二例の構成は遊星ローラー機構60の遊星ローラー61が真円の公転軌跡ではなく、ローラー70の外周に沿って円弧移動する軌跡を示したものである。また、第1実施例と同様の構成は図示説明を省略する。
【0018】
以下説明すると、遊星ローラー61に軸着しているシャフト62ははホィール64に等間隔に設けられた溝65に嵌まり、半径方向に移動可能にガイドされる。ホィール64の外側に溝カム66をフレームに固定して設けている。溝カム66の溝66Aにシャフト62の軸受部材63Aが嵌まっているので、遊星ローラー61は半径方向の動きが規制される。
従って、ホィール64が回転すると遊星ローラー61は溝カム66の溝66Aに沿って回転する。
【0019】
遊星ローラー61は、遊星ローラー機構60の下部位置で搬送下流から上流方向に移動する際、摩擦ベルト14との接触により、ローラーの移動方向に転がり回転する。溝カム66の規制によりローラー70の上面の円弧と同じ軌跡で移動する区間を設けることができ、一本の遊星ローラー61でパン生地50を挟圧する区間を長くすることができる。
【0020】
以上から理解されるように、ローラー70の上面をその円弧形状に沿って移動する遊星ローラー機構60であるので、遊星ローラー61がパン生地50を挟圧する回数が増え、生地を均しながらガス抜き効果を確実に高めることができるものである。
【0021】
なお、溝カム66Aの溝の形状は任意に設定することができるので、ローラー70の表面の円弧形状に対応して、遊星ローラー61の移動軌跡を任意に設定することができるから、遊星ローラー61がパン生地50に対して、挟圧する距離を自由に設定することができる。また隙間Cは遊星ローラー機構60または、ローラー70を上下に移動可能とすれば、延展されるパン生地50の厚みを自由に変更することができる。
【0022】
また、遊星ローラー11、61によるパン生地の挟圧に際して、ローラー20、70との関係でだけで挟圧を行うものではなく、さらに供給コンベア30との関係においても挟圧を行うとガス抜き効果が向上する。
【0023】
さらに、ローラー20、70と供給コンベア30との間に設けられた挟圧作用を弱める逃げ空間Eを設けていると、このEの位置では遊星ローラー11、61が通過するたびにパン生地50が上下に振動して、特に下部側のパン生地50内の残留ガスを外部に発散させる効果が生ずるものである。
【0024】
また、ローラー20、70と供給コンベア30の間にさらに搬送機能と挟圧機能を持たせるローラーを設けると、上記空間Eを増やし上記したパン生地内残留ガスを逃げ易くすることができる。
【0025】
また、本発明実施例では、ローラー20、70で説明したが、ローラー以外にはローラーの代わりに複数のコンベアベルトを設け、コンベアベルトと間隔をおいて上方に下流から上流に転がり移動するローラーを設けるようにしても良いものである。
【0026】
本発明で説明する挟圧ローラーは、遊星ローラーで説明しているが、必ずしも遊星ローラーのような無限軌道のものに限られるものではない。挟圧ローラーが、下流から上流方向に移動することによりパン生地のガスを抜くのであるから、挟圧ローラーが往復移動するようなものであっても、一方方向のみ挟圧がなされればよい。
【0027】
また、挟圧ローラーの下流方向から上流方向への移動方向は、搬送方向に正確に一致(挟圧ローラーのローラー軸がパン生地の搬送方向に直交すること)することに限らるものではない。例えば、遊星ローラー機構を搬送されるパン生地の幅方向に2セット用意し、それぞれ、生地幅の中心から側方に傾いだ状態に設けるとパン生地を薄く延展するとともに、幅方向に生地を拡開しながらガス抜きが行えるものである(図5参照)。
【0028】
その他の実施例としては、ローラー20、70は固定軸で回転するように説明しているが、ローラー20、70に細かい振動を加える与振装置によって上記延展を行う構成にする(特許出願2001─254687号)ことによって、パン生地50を延展すると、なお一層の延展効果が見られる。
【0029】
【発明の効果】
以上のごとき説明より理解されるように、本発明は、従来のように生地を圧延するために、パン生地内のガスを抜くとと同時に生地内のグルテン組織を壊してしまうなどの問題が生じている問題を解決することができ、製パン工程中の生ずるパン生地内のガスを抜いて生地組織は傷めずに内相を均一にして後工程の成形に繋げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第一実施例の概略側面図である。
【図2】本発明第2実施例の概略側面図である。
【図3】本発明第2実施例の一部断面正面図である。
【図4】挟圧ローラーによる挟圧作用の説明図である。
【図5】挟圧ローラーのその他の説明の上面図である。
【符号の説明】
1 延展装置
10 遊星ローラー機構(一方の挟圧部材)
11 遊星ローラー
12 ホィール
13 シャフト
14 摩擦ベルト
20 ローラー(他方の挟圧部材)
30 供給コンベア
40 排出コンベア
50 パン生地
60 遊星ローラー機構
61 遊星ローラー
62 シャフト
63A 軸受部材
64 ホィール
65 溝
66 溝カム
66A 溝
70 ローラー
Claims (6)
- 挟圧部材としての一方の挟圧ローラーと対向する他方の挟圧部材との隙間に厚みのある帯状の発酵生地を搬送供給して延展する延展方法において、前記発酵生地を、その搬送下流から上流の方向に移動して転がり接触する前記挟圧ローラーと前記他方の挟圧部材によって挟圧し、これを繰り返し行うことによって、前記発酵生地中の気泡塊を前記挟圧ローラーの下流側に移動しないように止めて分散消滅させ、挟圧された前記発酵生地内のガスを挟圧ローラー上流側から外部に抜くとともに、前記厚みより薄く延展することを特徴とする発酵生地のガス抜き延展方法。
- 発酵生地内の気泡塊を分散消滅させ、前記発酵生地内のガスを外部に抜くための発酵生地の延展装置であって、対向する挟圧部材を設け、その挟圧部材の対向する隙間に帯状の発酵生地を搬送供給して延展する延展装置において、前記対向する一方の挟圧部材に、当該挟圧部材に対する発酵生地の搬送方向の上流側において、前記発酵生地中の気泡塊を分散消滅させ、前記発酵生地内のガスを外部に抜くために、前記発酵生地をより薄く延展するよう発酵生地の搬送下流側から上流の方向に繰り返し移動する挟圧ローラーを設けたことを特徴とする発酵生地の延展装置。
- 前記対向する挟圧部材の一方の挟圧部材は、複数の挟圧ローラーが無端軌道を自転公転する遊星ローラー機構であることを特徴とする請求項2に記載の発酵生地の延展装置。
- 前記対向する挟圧部材の他方の挟圧部材は、ローラーであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の発酵生地の延展装置。
- 前記対向する挟圧部材の他方の挟圧部材は、コンベアベルトであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の発酵生地の延展装置。
- 複数の遊星ローラーを備えたローラー機構と、その下方に前記遊星ローラーより大径のローラーを対向するよう設け、前記遊星ローラー機構と前記大径のローラーの対向する隙間に帯状の発酵生地を搬送供給して延展する延展装置において、前記遊星ローラーが前記遊星ローラー機構の下部位置で前記大径のローラーの上面の周面に沿って円弧移動するとともに、前記大径のローラーの搬送下流から上流に向け転がり移動するようにしたことを特徴とする発酵生地の延展装置。
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