JPH11256687A - 軸組構造及び軸組工法 - Google Patents

軸組構造及び軸組工法

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JPH11256687A
JPH11256687A JP8265398A JP8265398A JPH11256687A JP H11256687 A JPH11256687 A JP H11256687A JP 8265398 A JP8265398 A JP 8265398A JP 8265398 A JP8265398 A JP 8265398A JP H11256687 A JPH11256687 A JP H11256687A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 複雑な仕口や継手構造を極めて簡単な構造と
し、施工時に仮固定ができ施工性を著しく向上させると
ともに構造強度を向上させ仕口や継手あるいは接合の作
業性を著しく高め施工期間を著しく短縮化することがで
きる軸組構造の提供を目的とする。 【解決手段】 各端部の当接面で当接された梁,桁,母
屋等を形成する2本の横架構造部材と、各前記横架構造
部材の外周壁部から前記当接面に対し傾斜角度αが20
°<α<90°好ましくは20°≦α≦70°より好ま
しくは30°≦α≦60°で連通して穿孔された1以上
のボルト挿通孔部と、前記外周壁部のボルト挿通孔部の
端部に切削形成され前記ボルト挿通孔部と直交する1以
上のナット座と、前記ボルト挿通孔部に挿通された少な
くとも一端部に螺着部を有するボルトと、前記ナット座
に配設され前記ボルトの螺着部に螺着されるナットと、
を備えた構成を有している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は木材や集成材,石
材,コンクリート材等からなる構造部材同士をボルトと
ナットで緊結接合する軸組構造及びそれらの構造材を簡
単かつ確実強固に接合し工期を著しく短縮できる軸組工
法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、住宅等の建築の省力化、合理化又
は接合部の強度向上等を目的として梁と軒桁、軒桁と
柱、胴差しと通し柱等の接合を接合用治具や金具、箱金
物を用いた仕口や継手等の軸組構造や軸組工法が開発さ
れている。また、阪神大震災により多くの木造住宅が倒
壊したことから木造軸組構造について、再検討がなされ
仕口等の接合部の強度向上を含めて建物全体の構造強度
の強化を図った軸組構造や軸組工法が種々開発されてい
る。例えば、実開昭63−162008号公報には木
造軸組工法に使用する軸組金具、実開平2−9340
1号公報には、軸組式木造建築物の柱下端と土台との仕
口部の補強金物、特開平3−295946号公報には
迫出しダボ金具、及びそれを使用した軸組木造建築の壁
下地構造、特開平2−300442号公報には接合し
た後、木造軸組が解体することのない軸組構造が開示さ
れている。これらはいずれも構造部材間の接合に箱金物
とこれらを堅結する金具やボルト,ナットが使用されて
いる。また、仕口構造としては、特開昭51−1076
26号公報,特開昭63−14939号公報,同63−
14940号公報,同63−14941号公報,特開平
3−86265号公報,同3−176259号公報,同
5−148912号公報,同5−295799号公報,
同8−21011号公報,同8−68120号公報,同
8−105156号公報,同8−165715号公報,
同8−177131号公報,同9−21188号公報,
同9−41391号公報に箱金物等を用い仕口構造の構
造強度の向上を目的とした軸組構造や軸組工法が開示さ
れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来
の軸組構造や軸組工法は、木材の接合面を種々の形状に
切削加工を施し、施工時にその加工部に座金や治具、金
具や金物を装着しこれにボルトやナットを介して固定せ
ねばならず、各種加工が煩雑で加工性に欠け、更に座金
や治具、金具の構造が複雑で生産性に欠け、しかも部品
点数が多いので施工時の作業が煩雑で作業性に欠けると
いう問題点があった。また曲げや引張、圧縮、せん断等
の物理的強度が要求されることから金具が大型で重量が
あり運搬性に欠け、更に高所作業では安全性にも欠ける
という問題点を有していた。また、従来の軸組構造は、
ピン接合と呼ばれ接合強度が十分でないため水平力によ
る壁面の変形の対抗措置として筋交い、接合用合板、鋼
製ブレースなどを必要としている。しかし、地震の時に
は、筋交いが折れたり、はずれたりして本来の役目を果
たさなかった事例も多数報告されている。また、構造用
合板による耐力壁では、確実で大きな剛性が得られる
が、反面、大きな壁倍率の端部に位置する柱には過大な
引き抜き力が働き、これに抗しきれ難いという問題点を
有している。更に、従来、組み立て上棟時に梁の大入れ
の際、多少柱を傾けたり、梁を斜め上から押し込んだり
しているが、この際、接合部が固く固定されていると作
業性を著しく低下させ、また接合部の固定が緩いと解体
される恐れがあった。また、接合部の固定が均一でない
ため種々の作業を要し作業性に欠けていた。そこで、解
体されない程度に接合部にガタ付きをもたせることが強
く要求されていた。
【0004】クレテック型等と呼ばれる箱金物やプレー
トを継手や仕口に使用する金物による場合は、金物形状
が特殊であるため汎用性に欠けるとともに、現場で1箇
所でも金物が不足すると後工程に支障を来たし工期を遅
延させるという問題点を有していた。金物が突起部を有
しているため作業上安全性に欠けるとともに金物の種類
や使用数量が多いため取付けに多大の手間を要すばかり
でなく、現場が混乱し易いという問題点を有していた。
施工時には金具の取付け間違を生じ取り外してつけ直す
等の手間が生じ易く,また、金物の個数が多いため工事
単価の上昇を招くとともに作業が煩雑という問題点があ
った。また、所定位置に穿孔されたシリンダーや込栓部
材の所定位置への埋設と、埋設された前記シリンダーや
込栓の穿孔部にボルトを螺着するのが困難で作業性が悪
く多大の作業工数を要し工期が長引くという問題点があ
った。また、火災時は外部の接合用のボルトや金具等が
先に熔けて強度が期待できず家屋が倒壊するという防災
上の問題点を有していた。更に木材を用いた軸組構造の
最大の欠点は接合部の脆弱さであり、古来大工等によっ
て物理的強度を保つため種々の仕口や継手が考案されて
きたが、それらの構造はいずれも複雑でその加工に作業
工数を要し生産性が悪いという問題点を有していた。そ
こで、この問題点を解決するため一部の加工にプレカッ
ト工法が採用されているが複雑な仕口構造は加工できな
いという問題点を有している。
【0005】本発明は上記従来の問題点を解決するもの
で、従来の複雑な仕口や継手構造を極めて簡単な構造と
し、施工時に仮固定ができ施工性を著しく向上させると
ともに構造強度を向上させ仕口や継手あるいは接合の作
業性を著しく高め施工期間を著しく短縮化することがで
きる軸組構造の提供、及び施工時に仮固定ができ、作業
中は接合箇所に少しのガタつきを許容できるので作業を
スムーズに進めることができ施工性を著しく向上させる
とともに構造強度を向上させ仕口、継手あるいは接合の
加工技術を単純化し作業工数を著しく削減した生産性に
優れるとともに作業性を著しく高め施工期間を著しく短
縮化することができる軸組工法を提供することを目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に本発明は以下の手段を有する。本発明の軸組構造は、
仕口や継手で接合する構造材間に傾斜して形成されたボ
ルト挿通孔部と、前記ボルト挿通孔部の少なくとも一端
部に形成されたナット座と、を備えた構成を有してい
る。これにより、構造部材の接合部に金属製等の機械的
強度に優れたボルトが埋設固定されているので曲げ、引
張り、圧縮、せん断等に対する応力を著しく向上させる
ことができる。ボルト挿通孔部を構造部材間に働く応力
に対し斜交状等に形成し、そのボルト挿通孔部にボルト
を挿通し構造部材同士を固定することにより接合力を大
幅に向上させることができる。接合部に斜交状にボルト
挿通孔部を形成しているので、ボルト挿通孔部にボルト
を固定させるだけで、曲げ応力等に対する機械的強度を
向上させることができる。躯体組立の過程で、該構造材
にクロス状に交差して斜交状に形成された各々のボルト
挿通孔部に一端部にナットが螺着又は固定されたボルト
を上部から落とし込むだけでボルトが該構造部材間でク
ロス状に交差して該構造部材を係止するので簡単に仮固
定を行うことができる。仕口や継手がボルト挿通孔部だ
けの簡単な構造なので、プレカット等で簡単に形成する
ことができる。接合方法は各構造部材の当接面に形成し
又は形成されたボルト挿通孔部にボルトを挿着埋設しナ
ットで締結するだけなので作業工程を極めて簡略化でき
作業工数を削減することができる。部品点数の多い複雑
な金具を使用しないのでつけ間違い等による資材の破損
損失が防止できる。更に、ボルトが木材中に埋設されて
いるので、火災時に木材表面の炭化皮膜により内部が守
られボルトが熔けるのを防止し構造強度を維持し安全性
を高めることができる。
【0007】本発明の軸組工法は、2本の横架構造部材
間又は2本以上の横架構造部材や縦構造部材の各当接面
に斜交状でかつ孔部同士が衝合しないように貫設された
ボルト挿通孔部に、一端部にナットが螺着又は固定され
たボルトを挿着し各々の該構造部材を仮固定する仮固定
工程と、仮固定後に前記ボルトの他端部をナットでボル
ト締めする構造部材締結工程と、を備えた構成を有して
いる。これにより、各構造部材の当接面に形成し又は形
成されたボルト挿通孔部にボルトを挿着埋設しナットで
締結するだけなので作業工程を極めて簡略化でき作業工
数を著しく削減することができる。交差状に斜めに交互
に挿入固定されたボルトは、地震、風により生じる水平
力により生ずる接合箇所の引っ張り、せん断、圧縮、曲
げによって発生する左右や上下からかかる荷重を各々の
ボルトの偶力で打ち消すように有効に働き、剛性を高め
る。接合部に設置されるボルトはRC構造の接合部に使
用される斜筋に該当する働きをし、接合部の接合強度を
高めることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の軸組構
造は、各端部の当接面で当接された梁,桁,母屋等を形
成する2本の横架構造部材と、各前記横架構造部材の外
周壁部から前記当接面に対し傾斜角度αが20°<α<
90°好ましくは20°≦α≦70°より好ましくは3
0°≦α≦60°で連通して穿孔された1以上のボルト
挿通孔部と、前記外周壁部のボルト挿通孔部の端部に切
削形成され前記ボルト挿通孔部と直交する1以上のナッ
ト座と、前記ボルト挿通孔部に挿通された少なくとも一
端部に螺着部を有するボルトと、前記ナット座に配設さ
れ前記ボルトの螺着部に螺着されるナットと、を備えた
構成を有している。ここで、傾斜角度αが60°よりも
大きくなるにつれ、横架構造部材のボルト挿通孔部の位
置が該構造部材の端部に近づきすぎ、該構造部材に外部
から大きな応力が加わった際に該構造部材の端部等が破
損するという傾向が現れだし、また、傾斜角度αが30
°よりも小さくなるにつれボルトの長さが長くなりすぎ
て作業性を低下させるという傾向が現れだすのでいずれ
も好ましくない。これにより、ボルト挿通孔部にボルト
を挿通するだけで軸組みの仮固定を行うことができると
いう作用を有する。また、せん断力に対しては、構造部
材の負担するせん断力に加えてボルトの保有するせん断
力だけ接合強度を向上できるという作用を有する。床の
積載荷重や屋根荷重等の鉛直方向からの鉛直荷重に対し
て正負両方向の力に対抗でき、ボルトの引っ張りと構造
部材の圧縮の力として相乗的な効果を得ることができる
という作用を有する。ボルト挿通孔部に斜めに挿通され
たボルトの働きによって、鉛直荷重による変形に耐え、
従来得られなかった木造軸組工法の接合部での剛性を向
上させるという作用を有する。
【0009】本発明の請求項2に記載の軸組構造は、前
記横架構造部材と、前記横架構造部材の所定部の当接面
で当接された縦構造部材と、前記横架構造部材と前記縦
構造部材の各外周壁部から前記当接面に対し傾斜角度β
が20°<β<90°好ましくは30°≦β≦50°で
連通して穿孔された1以上のボルト挿通孔部と、前記外
周壁部の前記ボルト挿通孔部の端部に切削形成され前記
ボルト挿通孔部と直交する1以上のナット座と、前記ボ
ルト挿通孔部に挿通された少なくとも一端部に螺着部を
有するボルトと、前記ナット座に配設され前記ボルトの
螺着部に螺着されるナットと、を備えた構成を有してい
る。ここで、傾斜角度βが50°よりも大きくなるにつ
れ、横架構造部材のボルト挿通孔部の位置が該構造部材
の端部に近づきすぎ、該構造部材に外部から大きな応力
が加わった際に該構造部材の端部等が破損するという傾
向が現れだし、また、傾斜角度βが30°よりも小さく
なるにつれボルトの長さが長くなりすぎて作業性を低下
させるという傾向が現れだすのでいずれも好ましくな
い。これにより、水平力に対して正負両方向の力に対抗
でき、ボルトの引っ張りと構造部材の圧縮の力として相
乗的な効果を得ることができるという作用を有する。ボ
ルト挿通孔部に斜めに挿通されたボルトの働きによっ
て、水平力による壁等の変形に耐え、従来得られなかっ
た木造軸組工法の接合部での剛性を向上できるという作
用を有する。
【0010】本発明の請求項3に記載の軸組構造は、前
記縦構造部材と、前記縦構造部材の対向する1以上の側
壁に当接面が当接して配設された前記横架構造部材と、
前記横架構造部材の外周壁部から前記当接面に対し傾斜
角度γが20°<γ<90°好ましくは30°≦γ≦5
0°で前記縦構造部材及び他の前記横架構造部材に貫通
して穿孔された1以上のボルト挿通孔部と、前記外周壁
部の前記ボルト挿通孔部の端部に切削形成され前記ボル
ト挿通孔部と直交する1以上のナット座と、前記ボルト
挿通孔部に挿通された少なくとも一端部に螺着部を有す
るボルトと、前記ナット座に配設され前記ボルトの螺着
部に螺着されるナットと、を備えた構成を有している。
ここで、傾斜角度γが50°よりも大きくなるにつれ、
横架構造部材のボルト挿通孔部の位置が該構造部材の端
部に近づきすぎ、該構造部材に外部から大きな応力が加
わった際に該構造部材の端部等が破損するという傾向が
現れだし、また、傾斜角度γが30°よりも小さくなる
につれボルトの長さが長くなりすぎて作業性を低下させ
るという傾向が現れだすのでいずれも好ましくない。こ
れにより、予めボルト挿通孔部にボルトを落とし込んで
おくだけで、挿通されたボルトにより建屋が解体しない
程度のガタ付きを得ることができるという作用を有す
る。
【0011】本発明の請求項4に記載の軸組構造は、請
求項2又は3において、前記ボルト挿通孔部が、中間部
で該構造部材外に露出して形成された構成を有してい
る。これにより、曲げモーメントが大きく取れ耐荷重性
を著しく向上させることができるという作用を有する。
また、特に片持ち梁等、先端部に荷重がかかる場合に
も、ボルト挿通孔部に挿通されたボルトが有効に働き、
支持柱の持ち出し長さが大きい際にも耐えることができ
るという作用を有する。
【0012】本発明の請求項5に記載の軸組構造は、請
求項1乃至4の内いずれか1項において、前記当接面で
所定間隔をあけて前記ボルト挿通孔部とクロス状になる
ように他のボルト挿通孔部が穿設されている構成を有し
ている。これにより、従来の仕口にクロス状にボルトを
設置するだけで引っ張り、曲げに対して各々正負の方向
に有効に働き、継ぎ手部の強度を向上できるという作用
を有する。また、それ故に支持柱の持ち出し長さが大き
く取れ、該構造部材の大小に関係なく接合部の強度が一
定するという作用を有する。せん断力に対しては、構造
部材の凹凸部分の負担するせん断力に加えてボルトの保
有するせん断力だけ接合強度を向上できるという作用を
有する。
【0013】本発明の請求項6に記載の軸組構造は、請
求項1乃至5の内いずれか1項において、前記ナット座
に前記ボルトの端部と前記ナットを埋設する埋設材が固
定され、前記埋設材の表面が前記外周壁部の表面と略面
一に形成されている構成を有している。これにより、ナ
ット座を埋木で埋設することにより、火災時に木材表面
の炭化皮膜によりボルトやナットをも火災による高温か
ら守ことができ、構造強度を維持し安全性を高めること
ができる。
【0014】本発明の請求項7に記載の軸組構造は、請
求項1乃至6の内いずれか1項において、当接する横架
構造部材や縦構造部材の前記当接面のいずれか一方に前
記横架構造部材や前記縦構造部材の端部を嵌合する嵌合
凹部が形成されている構成を有している。ここで、嵌合
凹部の大きさは梁材等の横架構造部材を遊嵌できる大き
さであればよく、その深さは5〜30mm好ましくは1
0〜20mmに形成される。20mmよりも深くなると
大黒柱等の構造部材の機械的強度が弱体化するので好ま
しくない。これにより、大黒柱等の側壁に穿設された嵌
合凹部に梁材等の横架構造部材の一端部を嵌合するだけ
で横架構造部材が片持ち支持されるのでボルトのボルト
挿通孔部への挿通の作業性を向上させることができると
いう作用を有する。ボルト挿通孔部に挿通されたボルト
と相まってせん断応力に対する抵抗力を向上させること
ができるという作用を有する。
【0015】本発明の請求項8に記載の軸組構造は、請
求項1乃至6の内いずれか1項において、前記当接面の
いずれか一方に嵌合凹部が形成され、他方に前記嵌合凹
部に嵌着される嵌合凸部が形成されている構成を有して
いる。これにより、継手や仕口に嵌合手段を備えている
ので、ボルト挿通孔部に挿通されたボルトと相まってせ
ん断応力に対する抵抗力を向上させることができるとい
う作用を有する。
【0016】本発明の請求項9に記載の軸組工法は、当
接面で当接された横架構造部材や縦構造部材の各前記当
接面に一構造部材の外周壁部から他の構造部材の外周壁
部に斜交状に貫設されたボルト挿通孔部に、一端部にナ
ットが螺着又は固定されたボルトを挿着し各々の該構造
部材を仮固定する仮固定工程と、仮固定後に前記ボルト
の他端部にナットでボルト締めする構造部材締結工程
と、を備えた構成を有している。これにより、各構造部
材の当接面に形成し又は形成されたボルト挿通孔部にボ
ルトを挿着埋設しナットで締結するだけなので作業工程
を極めて簡略化でき作業工数を著しく削減することがで
きるという作用を有する。
【0017】本発明の請求項10に記載の軸組工法は、
請求項9において、前記仮固定工程で、前記当接面でク
ロス状で、かつ孔部同士が衝合しないように貫設された
前記ボルト挿通孔部にボルトを挿着することを備えた構
成を有している。これにより、交差状に斜めに交互に挿
入固定されたボルトは、地震、風により生じる水平力に
より生ずる接合部の引っ張り、せん断、圧縮、曲げによ
って発生する左右や上下からかかる荷重を各々のボルト
の偶力で打ち消すように有効に働き、剛性を高めること
ができるという作用を有する。接合部に設置されるボル
トはRC構造の接合部に使用される斜筋に該当する働き
をし、接合部の接合強度を高めることができるという作
用を有する。
【0018】ここで、ボルトは全長に亘って螺条を形成
した断面が円形のものでもよいが、螺条が形成された両
端部を除く中央部分を断面が略円形,略楕円形,三角形
や四角形,六角形等の略多角形状に形成してもよい。こ
の際、ボルト挿通孔部もボルトの断面形状に合わせてボ
ルトの外周面とのクリアランスを1〜7mmで形成する
のが好ましい。これにより、ボルト挿通孔部に挿着され
たボルトをナットで固定する際にボルトが回転するのを
防止し、ボルト締めの作業性を大幅に向上させることが
できる。ボルトの材質としては、ステンレス等の金属性
の他、カーボン繊維やボロン繊維、ガラス繊維、金属繊
維等の有機や無機の繊維と合成樹脂で成形加工をしたも
のが用いられる。尚、ボルトが機械的強度に優れた材料
で形成されている場合は、中央部分を中空状に形成して
もよい。これにより、軽量化を図ることができ高所作業
での安全性や作業性を向上させることができる。。ボル
トは全長にわたって複数に分割し、仕口や継手のボルト
挿通孔部の長さに応じて長さを調整できるように形成し
てもよい。この際、各単位ボルトの径は変えてもよい。
径の異なるボルト挿通孔部を有する2本の構造部材を接
合するときに便利なためである。また、単位ボルトの接
合部は逆螺子に連結するように形成するのが好ましい。
これにより、ナット締結時に単位ボルトが共回りするの
を防ぐことができる。ボルトの一端部は螺条を形成する
代わりに、ナットを溶接固定をするか板材や棒線材を一
体で形成するか溶接等で固定してボルトエンド部を設け
てもよい。これにより、ナットの締めつけ作業が半減し
作業性を大幅に向上できる。また、仮固定の際、ボルト
エンド部を上にしてボルト挿通孔部に挿着するだけで簡
単に仮固定を行うことができる。
【0019】構造部材としては、角柱等の材木や集成材
又は積層板等の木材,石柱等の石材やコンクリート製の
柱,梁,壁等が用いられる。ボルト挿通孔部はボルトの
形状に合わせて複数の構造部材間の当接面に1乃至複数
穿孔され、その径はボルトの中央部の最大径と略同一か
少し大きめに形成される。ボルト挿通孔部やナット座の
形成は現場でドリル等で穿孔や切削等するか、又は工場
でプレカット方式等で予め形成してもよい。ボルト挿通
孔部は軸組に応じて当接面に対し略斜交状に形成され
る。ボルトをナットで締結後は、ナット座に埋木等で覆
設し該構造部材の外周壁部と面一にするかパテ等で補修
して仕上げ面を美麗にすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態につ
いて、図面を参照しながら説明する。 (実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1における
継手接合を示す軸組構造の要部模式図であり、図2はそ
の軸組構造の要部斜視図であり、図3(a)は構造部材
の要部端面図であり、図3(b)は実施の形態1の変形
例の要部模式図であり、図4はボルト挿通孔部のクロス
状になる位置を当接面から一方にずらした実施の形態1
の変形例の要部模式図である。1aは実施の形態1にお
ける継手接合からなる軸組構造、2a,2bは横架構造
部材や縦構造部等の構造部材、3は構造部材2a,2b
の当接面、4a,4bは当接面3近傍の1側面から切削
形成されたナット座である。ナット座4a,4bのナッ
トとの当接面はナットの当接面と密着できるようにナッ
トの当接面と平行に形成されている。5a,5bは構造
部材2a,2bの長さ方向に対し平行で構造部材2aの
1側面のナット座4aから他の構造部材2bのナット座
4bにかけて傾斜角度αが30°〜50°で平行して穿
孔された1以上のボルト挿通孔部、6a,6bはボルト
挿通孔部5a,5bと対称的でかつ当接面3でボルト挿
通孔部5a,5bと交差せずにクロス状に構造部材2
a,2bに形成されたボルト挿通孔部、7a,7b,8
a,8bはボルト挿通孔部5a,5b,6a,6bにク
ロス状に挿通されたボルト、9aはボルト7a,7b,
8a,8bの一端部の頂部に一体に形成又は固着された
一体型ナット、9bはボルト7a,7b等の他端部の螺
溝に螺着されるナット、9cはワッシャー、10はナッ
ト座4a,4bを埋設し構造部材2a,2bの表面を面
一にする埋木である。尚、ナット座としては、図3
(b)示すように構造部材の外周面に略直角三角柱状の
板材で形成されたナット座用材4′a,4′bを用いて
もよい。これにより、構造部材の切削を省くとともに、
構造部材2a,2bに欠損部がないので構造部材の強度
を維持することができる。また、図4のボルト挿通孔部
5′a,5′b,6′a,6′bのように当接面3から
の距離を各々異ならせて形成してもよい。外力に対する
モーメントが大きく取れ対剪断性を向上できる。
【0021】以上のように構成された実施の形態1の軸
組構造について、以下その軸組工法を説明する。まず、
ナット座4a,4b及びボルト挿通孔部5a,5b,6
a,6bが形成された構造部材2a,2bを各々起重機
等で持ち上げ接合端面をつき合わせる。次いで、ボルト
7a,7b,8a,8bを上側のナット座4a,4bか
ら一体型ナット9aを上方にしてボルト挿通孔部5a,
5b,6a,6bに挿入する。これだけで各ボルト7
a,7b,8a,8b のモーメントの相殺により構造
部材2a,2bを仮固定できる。次いで、ボルト7a,
7b,8a,8bに下端部にナット9bをゆるく螺着
し、多少ガタつくようにしておく。他の工程での構造部
材の配置や接合の手順に合わせ、もしくは接合が終わっ
た後、ナット9bを強く締める。次いで、埋木10をナ
ット座4a,4bに接着剤で埋設し構造部材2a,2b
と表面を面一にする。 これにより、継手の軸組を終え
ることができる。
【0022】尚、本実施の形態ではボルトとして一端が
一体型ナットを有したものを用いたが、両端にナットを
螺着するものでもよい。この際、一方のナットだけ先に
螺着しておくのが作業上好ましい。また、ボルト挿通孔
部は合計4箇所形成したが、クロス状に2箇所だけ形成
してもよい。埋木は接合部が人目のふれない箇所では設
けなくてもよい。更に、ボルトは螺溝形成部を除く中央
部分の断面が丸型のものを用いたが、螺着部分を除く中
央部分を三角形や四角形等の多角形、楕円形等に形成さ
れたものを用いてもよい。これにより、ナットの螺着時
にボルトが回転するのを防ぎ作業性を高めることができ
る。また、該構造部材の径が大きいときは、当接面に対
して斜交状に一本の大径のボルト挿通孔部を貫設し、こ
れに大径のボルトを挿通してもよい。これにより、斜め
に挿通されたボルトと、該構造部材の当接面の上下左右
の端部の当接箇所の衝合で、上下左右からの外力を吸収
することができる。
【0023】以上のように本実施の形態1の軸組構造及
び軸組工法によれば、以下の作用を得ることができる。 (1)構造部材の当接面を付き合わせ、ボルト挿通孔部
の上側から最低2箇所のボルトを挿通するだけでボルト
の偶力で構造部材を支持できる。 (2)ナットを下側からゆるく締めることにより多少の
ガタをもたせて仮固定できるので、組み立て途中に台風
や地震等の外力で躯体が解体されるような作用が働いて
も、挿通されたボルトにより躯体が解体されるのを防止
できるので、作業進行上の安全性を著しく高めることが
できる。 (3)ボルト挿通孔部の設置場所や個数及びボルトの径
を自由に設計できるので、建屋の上下左右の全ての方向
からの外力に対して最適で最少のボルト挿通孔部とボル
トを設置できる。 (4)従来の横架構造部材の継手は鎌継手が一般的で加
工に相当の手間を要していたが、極めて簡単な構造で接
合強度の強い継手を得ることができる。 (5)ボルト固定後の作業完了の確認が容易かつ確実で
施工性を高めることができる。 (6)ボルトを用いているので、強度のバラツキの生じ
るのを防ぎ安全性を高めることができる。
【0024】(実施の形態2)図5は本発明の実施の形
態2におけ仕口接合を示す軸組構造の要部斜視図であ
る。3aはナット座、7aはボルト、9aは一体型ナッ
ト、9bはナットであり、これらは実施の形態1と同様
のものなので同一の符号を付し説明を省略する。1bは
実施の形態2における仕口接合からなる軸組構造、12
aは横架構造部材の一種である胴差し、12bは胴差し
12aに仕口接合された横架構造部材の一種である2階
梁、13は仕口当接面、14aはナットとの当接面が平
行になるように座グリで形成されたナット座、15a,
15bはナット座3aとナット座14aとの間に形成さ
れたボルト挿通孔部である。
【0025】以上のように構成された実施の形態2の軸
組構造について、以下その軸組工法を説明する。胴差し
12aと二階梁12bに、各々ナット座3a,14aと
ナット座3a,14aの間に連通するボルト挿通孔部1
5a,15bを形成する。組立てられた胴差し12aの
仕口当接面13に起重機等で2階梁12bの当接面を合
わせる。次いで、ボルト挿通孔部15a,15bにボル
ト7a,7aを挿通する。次いで、ナット9bをゆるく
螺着する。軸組工程の終了時にナット9bを緊結する。
【0026】以上のように本実施の形態2の軸組構造及
び軸組工法によれば、実施の形態1の作用に加えて、以
下の作用を得ることができる。胴差しと二階梁の仮固定
を、2本のボルトをボルト挿通孔部に挿着するだけで遊
びを持たせて行うことができる。
【0027】(実施の形態3)図6は本発明の実施の形
態3の仕口接合を示す軸組構造の要部側面図である。実
施の形態3の軸組構造1cが、図5の実施の形態2と異
なる点はボルト挿通孔部15a,15bが二階梁12b
と平行に斜交して形成されている点である。これによ
り、実施の形態1及び2の作用に加えて、以下の作用を
有する。 (1)従来の軸組構造では、水平面を構成する梁桁材の
変形に対抗する手段として、火打梁が主に用いられてい
たが、該軸組構造では、特に強固な水平面を形成でき
る。 (2)簡単な構造で施工が容易なので、工期を著しく短
縮できる。 (3)ボルトが挿通されているので、高い強度を有する
水平剛性を得ることができる。
【0028】(実施の形態4)図7は本発明の実施の形
態4の仕口接合における軸組構造の要部模式図であり、
図8はその構造部材の分解斜視図である。4′a,4′
bは直角三角柱状の板材のナット座用材、7a,7b,
8a,8bはボルト、9aは一体型ナット、9bはナッ
ト、9cはワッシャ、12bは二階梁であり、これらは
実施の形態1乃至3と同様のものなので同一の符号を付
し説明を省略する。1dは実施の形態4の仕口接合から
なる軸組構造、22は縦構造部材の1種である通し柱、
23は二階梁12bと通し柱22の当接面、25a,2
5bは傾斜角度βが30°≦β≦50°で二階梁12b
を通し柱22に連通されたボルト挿通孔部、26は二階
梁12bの一端部の当接面23に突設された大入れ凸
部、27は通し柱22の当接面23に穿設され大入れ凸
部26を嵌合する大入れ凹部である。尚、本実施の形態
4では、二階梁と通し柱について説明したが、梁と間柱
との間においても同様に施工することができる。
【0029】以上のように構成された実施の形態4の軸
組構造について、以下その軸組工法を説明する。二階梁
12bと通し柱22に互いに平行でかつクロス状に間隔
をおいて交差するボルト挿通孔部25a,25bを穿孔
する。また、二階梁12bの当接面23には厚みが10
mm〜20mmの大入れ凸部26を形成するとともに、
通し柱22の二階梁12bとの当接面23には大入れ凸
部26を嵌合する大入れ凹部27を形成する。接合にあ
たっては、まず通し柱22の大入れ凹部27に二階梁1
2bの大入れ凸部26の下端部を掛けて支持する。二階
梁12bの他端部の接合が終了した後、ボルト7a,7
b,8a,8bを、ボルト挿通孔部25a,25bの二
階梁12bと通し柱22の上側から挿通する。次いで、
ナット9bを螺着して仮固定し、各部のガタがなくなっ
たのを確認した後、ナット9bを緊結する。
【0030】以上のように実施の形態4の軸組構造及び
軸組工法は構成されているので、実施の形態1乃至3で
得られる作用の他、以下の作用を有する。 (1)大入れ部の凹凸の高さや深さを小さくできるの
で、大入れ凹部側の構造部材の欠損を少なくすることが
でき、特に通し柱の当接部に生じる欠損を少なくするこ
とができ、強度の低下を防止できる。 (2)また、強度の低下を見越して予め構造部材の径を
大きくする必要があるときでも、構造が簡単なので、強
度計算が容易にでき更に構造部材の径の割増を小さくで
きる。 (3)仕口の構造が簡単なので容易に加工することがで
き、生産性を高くすることが出来る。また、組み立ても
容易で施工性に優れ工期を短縮できる。
【0031】(実施の形態5)図9は本発明の実施の形
態5の仕口接合における軸組構造の要部側面図である。
実施の形態5の軸組構造1eが、実施の形態4と異なる
点は、ボルト挿通孔部15c,15dが通し柱12a
と、二階梁12bとの間にボルト挿通孔部15cと15
dが不連続で形成されている点と、ボルト7′aが一部
該構造部材の外部に露出して挿通されている点である。
これにより、実施の形態4の作用に加えて、以下の作用
を有する。 (1)簡単な構造で強度に優れた片持ち梁を形成でき
る。 (2)簡単な構造で施工が容易なので、工期を著しく短
縮できる。 (3)ボルトが挿通されているので、高い強度を有する
水平剛性を得ることができる。 (4)ボルト挿入孔部にボルトを挿入後、ナットを締め
付け終わると同時に所期の支持力を得ることができる。 (5)ボルトが有効に働くため、片持ち梁の先端に大き
な力が加わっても片持ち梁を確実に確保できる。
【0032】(実施の形態6)図10は本発明の実施の
形態6の仕口接合における軸組構造の要部模式図であ
る。4a,4bはナット座、9aはボルトと一体型に形
成された一体型ナット、12aは胴差し,12bは二階
梁、22は通し柱、23aは胴差し12aと通し柱22
との当接面、23bは二階梁12bと通し柱22との当
接面であり、これらは実施の形態1乃至4と同様なもの
なので同一の符号を付し説明を省略する。1fは胴差し
12a,12aを左右に仕口接合し、正面に二階梁12
bを仕口接合で接合した軸組構造である。
【0033】以上のように構成された実施の形態5の軸
組構造について、以下その軸組工法について図面を説明
する。図11は実施の形態6の軸組工法を示す仕口接合
部の分解斜視図である。5a,5b,6aはボルト挿通
孔部、26は大入れ凸部、27は大入れ凹部である。ま
ず、土台(図示せず)に立設された通し柱22の大入れ
凹部27に各々胴差し12a,12a及び二階梁12b
の大入れ凸部26の下端部を引っかけて係止した後、周
囲の接合部のガタを調整しながら、各大入れ凸部26を
通し柱22の大入れ凹部27に嵌合させる。大入れ凸部
26と大入れ凹部27を嵌合させると、傾斜角度がγで
形成されたボルト挿通孔部5a,5b,6aが各々連通
する。次いで、ナット一体型のボルトの一体型ナット9
aが上にくるようにナット座4a,4a,4bからボル
ト挿通孔部5a,5b,6a,に挿通する。これによ
り、ボルトがお互いに所定間隔をあけてクロス状に挿通
されているので通し柱22と胴差し12a,12a,二
階梁12bとが仮固定される。各接合部のガタつき等を
調整した上で、各構造部材の下側のナット座4a,4b
からボルトにナットを螺合し軸組構造を完成する。以上
のように実施の形態5の軸組構造及び軸組工法は構成さ
れているので、実施の形態1乃至4で得られる作用の
他、以下の作用を有する。複雑な仕口接合構造であって
も、簡単で確実に接合することができる。
【0034】
【発明の効果】本発明の請求項1に記載の軸組構造によ
れば、 (1)ボルト挿通孔部にボルトを挿通するだけで軸組み
の仮固定を行うことができ作業性を著しく高めることが
できる。 (2)せん断力に対しては、構造部材の負担するせん断
力に加えてボルトの保有するせん断力だけ接合強度を向
上させることができる。 (3)鉛直荷重に対して正負両方向の力に対抗でき、ボ
ルトの引っ張りと構造部材の圧縮の力として相乗的な効
果を得ることが出来る。 (4)ボルト挿通孔部に斜めに挿通されたボルトの働き
によって、鉛直荷重による変形に耐え、従来得られなか
った木造軸組工法の接合面での剛性を向上させるとこと
ができる。本発明の請求項2に記載の軸組構造によれ
ば、 (5)水平力に対して正負両方向の力に対抗でき、ボル
トの引っ張りと構造部材の圧縮の力として働き抗剪断性
を向上させることができる。 (6) 斜めに設置されたボルトの働きによって、水平
力による変形に耐え、従来得られなかった木造軸組工法
の当接面での剛性を向上させることができる。本発明の
請求項3に記載の軸組構造によれば、 (7)予めボルト挿通孔部にボルトを落とし込んでおく
だけで、挿通されたボルトにより建屋が解体しない程度
のガタ付きを得ることができるので、組み立て上棟時に
梁の大入れの際の作業性を著しく向上させることができ
る。
【0035】本発明の請求項4に記載の軸組構造によれ
ば、請求項2又は3の効果に加え、 (8)曲げモーメントが大きく取れ耐荷重性を著しく向
上させることができる。本発明の請求項5に記載の軸組
構造によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果
に加え、 (9)従来の仕口にクロス状にボルトを設置するだけで
引っ張り、曲げに対して各々正負の方向に有効に働き、
継ぎ手部の強度を著しく向上させることができる。 (10)支持柱からの持ち出し距離が大きく取れ、構造
部材の大小に関係なく接合部強度が一定する。また、せ
ん断力に対しては、構造部材の凹凸部分の負担するせん
断力に加えてボルトの保有するせん断力を加え抗剪断性
を向上させることができる。本発明の請求項6に記載の
軸組構造によれば、請求項1乃至5の内いずれか1項の
効果に加え、 (11)ナット座を埋木で埋設することにより、火災時
に木材表面の炭化皮膜によりボルトやナットをも火災に
よる高温から守ことができ、構造強度を維持し安全性を
高めることができる。本発明の請求項7に記載の軸組構
造によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項の効果に
加え、 (12)大黒柱等の側壁に穿設された嵌合凹部に梁材等
の横架構造部材の一端部を嵌合するだけで横架構造部材
が片持ち支持されるのでボルトのボルト挿通孔部への挿
通の作業性を向上させることができる。
【0036】本発明の請求項8に記載の軸組構造によれ
ば、請求項1乃至6の内いずれか1項の効果に加え、 (13)継手や仕口に嵌合手段を備えているので、ボル
ト挿通孔部に挿通されたボルトと相まってせん断応力に
対する抵抗力を向上させることができる。本発明の請求
項9に記載の軸組工法によれば、 (14)各構造部材の当接面に形成し又は形成されたボ
ルト挿通孔部にボルトを挿着埋設しナットで締結するだ
けなので作業工程を極めて簡略化でき作業工数を著しく
削減し工期を短縮できる。本発明の請求項10に記載の
軸組工法によれば、請求項9の効果に加え、 (15)交差状に斜めに交互に挿入固定されたボルト
は、地震、風により生じる水平力により生ずる接合部の
引っ張り、せん断、圧縮、曲げによって発生する左右や
上下からかかる荷重を各々のボルトの偶力で打ち消すよ
うに有効に働き、剛性を高めることができる。 (16)当接面に設置されるボルトはRC構造の接合部
に使用される斜筋に該当する働きをし、接合部の接合強
度を高めることができ安全性に優れる。
【0037】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における継手接合を示す
軸組構造の要部模式図
【図2】その軸組構造の要部斜視図
【図3】(a)構造部材の要部端面図 (b)変形例の要部模式図
【図4】ボルト挿通孔部のクロス状になる位置を当接面
から一方にずらした変形例の要部模式図
【図5】本発明の実施の形態2におけ仕口接合を示す軸
組構造の要部斜視図
【図6】本発明の実施の形態3の仕口接合を示す軸組構
造の要部平面図
【図7】本発明の実施の形態4の仕口接合における軸組
構造の要部模式図
【図8】本発明の実施の形態4の構造部材の分解斜視図
【図9】本発明の実施の形態5の仕口接合における軸組
構造の要部側面図
【図10】本発明の実施の形態6の仕口接合における軸
組構造の要部模式図
【図11】実施の形態6の軸組工法を示す仕口接合部の
分解斜視図
【符号の説明】
1a,1b,1c,1d 軸組構造 2a,2b 構造部材 3 当接面 4a,4b ナット座 4′a,4′b ナット座用材 5a,5b,6a,6b ボルト挿通孔部 7a,7′a,7b,8a,8b ボルト 9a 一体型ナット 9b ナット 9c ワッシャ 10 埋木 12a 胴差し 12b 二階梁 13 仕口当接面 14a ナット座 15a,15b,15c,15d ボルト挿通孔部 22 通し柱 23 当接面 25a,25b ボルト挿通孔部 26 大入れ凸部 27 大入れ凹部
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年3月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】軸組構造及び軸組工法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は木材や集成材等から
なる構造部材同士をボルトとナットで緊結接合する軸組
構造及びそれらの構造材を簡単かつ確実強固に接合し
工期を著しく短縮できる軸組工法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、住宅等の建築の省力化、合理化又
は接合部の強度向上等を目的として梁と軒桁、軒桁と
柱、胴差しと通し柱等の接合を接合用治具や金具、箱金
物を用いた仕口や継手等の軸組構造や軸組工法が開発さ
れている。また、阪神大震災により多くの木造住宅が倒
壊したことから木造軸組構造について、再検討がなされ
仕口等の接合部の強度向上を含めて建物全体の構造強度
の強化を図った軸組構造や軸組工法が種々開発されてい
る。例えば、実開昭63−162008号公報には木
造軸組工法に使用する軸組金具、実開平2−9340
1号公報には、軸組式木造建築物の柱下端と土台との仕
口部の補強金物、特開平3−295946号公報には
迫出しダボ金具、及びそれを使用した軸組木造建築の壁
下地構造、特開平2−300442号公報には接合し
た後、木造軸組が解体することのない軸組構造が開示さ
れている。これらはいずれも構造部材間の接合に箱金物
とこれらを堅結する金具やボルト,ナットが使用されて
いる。また、仕口構造としては、特開昭51−1076
26号公報,特開昭63−14939号公報,同63−
14940号公報,同63−14941号公報,特開平
3−86265号公報,同3−176259号公報,同
5−148912号公報,同5−295799号公報,
同8−21011号公報,同8−68120号公報,同
8−105156号公報,同8−165715号公報,
同8−177131号公報,同9−21188号公報,
同9−41391号公報に箱金物等を用い仕口構造の構
造強度の向上を目的とした軸組構造や軸組工法が開示さ
れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来
の軸組構造や軸組工法は、木材の接合面を種々の形状に
切削加工を施し、施工時にその加工部に座金や治具、金
具や金物を装着しこれにボルトやナットを介して固定せ
ねばならず、各種加工が煩雑で加工性に欠け、更に座金
や治具、金具の構造が複雑で生産性に欠け、しかも部品
点数が多いので施工時の作業が煩雑で作業性に欠けると
いう問題点があった。また曲げや引張、圧縮、せん断等
の物理的強度が要求されることから金具が大型で重量が
あり運搬性に欠け、更に高所作業では安全性にも欠ける
という問題点を有していた。また、従来の軸組構造は、
ピン接合と呼ばれ接合強度が十分でないため水平力によ
る壁面の変形の対抗措置として筋交い、接合用合板、鋼
製ブレースなどを必要としている。しかし、地震の時に
は、筋交いが折れたり、はずれたりして本来の役目を果
たさなかった事例も多数報告されている。また、構造用
合板による耐力壁では、確実で大きな剛性が得られる
が、反面、大きな壁倍率の端部に位置する柱には過大な
引き抜き力が働き、これに抗しきれ難いという問題点を
有している。更に、従来、組み立て上棟時に梁の大入れ
の際、多少柱を傾けたり、梁を斜め上から押し込んだり
しているが、この際、接合部が固く固定されていると作
業性を著しく低下させ、また接合部の固定が緩いと解体
される恐れがあった。また、接合部の固定が均一でない
ため種々の作業を要し作業性に欠けていた。そこで、解
体されない程度に接合部にガタ付きをもたせることが強
く要求されていた。
【0004】クレテック型等と呼ばれる箱金物やプレー
トを継手や仕口に使用する金物による場合は、金物形状
が特殊であるため汎用性に欠けるとともに、現場で1箇
所でも金物が不足すると後工程に支障を来たし工期を遅
延させるという問題点を有していた。金物が突起部を有
しているため作業上安全性に欠けるとともに金物の種類
や使用数量が多いため取付けに多大の手間を要すばかり
でなく、現場が混乱し易いという問題点を有していた。
施工時には金具の取付け間違を生じ取り外してつけ直す
等の手間が生じ易く,また、金物の個数が多いため工事
単価の上昇を招くとともに作業が煩雑という問題点があ
った。また、所定位置に穿孔されたシリンダーや込栓部
材の所定位置への埋設と、埋設された前記シリンダーや
込栓の穿孔部にボルトを螺着するのが困難で作業性が悪
く多大の作業工数を要し工期が長引くという問題点があ
った。また、火災時は外部の接合用のボルトや金具等が
先に熔けて強度が期待できず家屋が倒壊するという防災
上の問題点を有していた。更に木材を用いた軸組構造の
最大の欠点は接合部の脆弱さであり、古来大工等によっ
て物理的強度を保つため種々の仕口や継手が考案されて
きたが、それらの構造はいずれも複雑でその加工に作業
工数を要し生産性が悪いという問題点を有していた。そ
こで、この問題点を解決するため一部の加工にプレカッ
ト工法が採用されているが複雑な仕口構造は加工できな
いという問題点を有している。
【0005】本発明は上記従来の問題点を解決するもの
で、従来の複雑な仕口や継手構造を極めて簡単な構造と
し、施工時に仮固定ができ施工性を著しく向上させると
ともに構造強度を向上させ仕口や継手あるいは接合の作
業性を著しく高め施工期間を著しく短縮化することがで
きる軸組構造の提供、及び施工時に仮固定ができ、作業
中は接合箇所に少しのガタつきを許容できるので作業を
スムーズに進めることができ施工性を著しく向上させる
とともに構造強度を向上させ仕口、継手あるいは接合の
加工技術を単純化し作業工数を著しく削減した生産性に
優れるとともに作業性を著しく高め施工期間を著しく短
縮化することができる軸組工法を提供することを目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に本発明は以下の手段を有する。本発明の軸組構造は、
仕口や継手で接合する構造材間に傾斜して形成された
ボルト挿通孔部と、前記ボルト挿通孔部の少なくとも一
端部に形成されたナット座と、を備えた構成を有してい
る。これにより、構造部材の接合部に金属製等の機械的
強度に優れたボルトが埋設固定されているので曲げ、引
張り、圧縮、せん断等に対する応力を著しく向上させる
ことができる。ボルト挿通孔部を構造部材間に働く応力
に対し斜交状等に形成し、そのボルト挿通孔部にボルト
を挿通し構造部材同士を固定することにより接合力を大
幅に向上させることができる。接合部に斜交状にボルト
挿通孔部を形成しているので、ボルト挿通孔部にボルト
を固定させるだけで、曲げ応力等に対する機械的強度を
向上させることができる。躯体組立の過程で、該構造
材にクロス状に交差して斜交状に形成された各々のボル
ト挿通孔部に一端部にナットが螺着又は固定されたボル
トエンド部を有したボルトを上部から落とし込むだけで
ボルトが該構造部材間でクロス状に交差して該構造部材
を係止するので簡単に仮固定を行うことができる。仕口
や継手がボルト挿通孔部だけの簡単な構造なので、プレ
カット等で簡単に形成することができる。接合方法は各
構造部材の当接面に形成し又は形成されたボルト挿通孔
部にボルトを挿着埋設しナットで締結するだけなので作
業工程を極めて簡略化でき作業工数を削減することがで
きる。部品点数の多い複雑な金具を使用しないのでつけ
間違い等による資材の破損損失が防止できる。更に、ボ
ルトが木材中に埋設されているので、火災時に木材表面
の炭化皮膜により内部が守られボルトが熔けるのを防止
し構造強度を維持し安全性を高めることができる。
【0007】本発明の軸組工法は、2本の横架構造部材
間又は2本以上の横架構造部材や縦構造部材の各当接面
に斜交状でかつ孔部同士が衝合しないように貫設された
ボルト挿通孔部に、一端部にナットが螺着又は固定され
ボルトエンド部を有したボルトを上部から挿着し各々
の該構造部材を仮固定する仮固定工程と、仮固定後に前
記ボルトの他端部をナットでボルト締めする構造部材締
結工程と、を備えた構成を有している。これにより、各
構造部材の当接面に形成し又は形成されたボルト挿通孔
部にボルトを挿着埋設しナットで締結するだけなので作
業工程を極めて簡略化でき作業工数を著しく削減するこ
とができる。交差状に斜めに交互に挿入固定されたボル
トは、地震、風により生じる水平力により生ずる接合箇
所の引っ張り、せん断、圧縮、曲げによって発生する左
右や上下からかかる荷重を各々のボルトの偶力で打ち消
すように有効に働き、剛性を高める。接合部に設置され
るボルトはRC構造の接合部に使用される斜筋に該当す
る働きをし、接合部の接合強度を高めることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の軸組構
造は、各端部の当接面で当接された梁,桁,母屋等を形
成する2本の横架構造部材と、各前記横架構造部材の外
周壁部から前記当接面に対し傾斜角度αが20°<α<
90°で連通して穿孔された1以上のボルト挿通孔部
と、前記外周壁部のボルト挿通孔部の端部に切削形成さ
れ前記ボルト挿通孔部と直交する1以上のナット座と、
前記ボルト挿通孔部に挿通された少なくとも一端部に螺
着部を有するボルトと、前記ボルト挿通孔部の上側の端
部に位置した前記ボルトの他端部のボルトエンド部と、
前記ナット座に配設され前記ボルトの螺着部に螺着され
るナットと、を備えた構成を有している。ここで、傾斜
角度αとしては、好ましくは20°≦α≦70°より好
ましくは30°≦α≦60°で穿孔される。尚、傾斜角
度αが60°よりも大きくなるにつれ、横架構造部材の
ボルト挿通孔部の位置が該構造部材の端部に近づきす
ぎ、該構造部材に外部から大きな応力が加わった際に該
構造部材の端部等が破損するという傾向が現れだし、ま
た、傾斜角度αが30°よりも小さくなるにつれボルト
の長さが長くなりすぎて作業性を低下させるという傾向
が現れだすのでいずれも好ましくない。これにより、ボ
ルト挿通孔部にボルトを挿通するだけで軸組みの仮固定
を行うことができるという作用を有する。また、せん断
力に対しては、構造部材の負担するせん断力に加えてボ
ルトの保有するせん断力だけ接合強度を向上できるとい
う作用を有する。床の積載荷重や屋根荷重等の鉛直方向
からの鉛直荷重に対して正負両方向の力に対抗でき、ボ
ルトの引っ張りと構造部材の圧縮の力として相乗的な効
果を得ることができるという作用を有する。ボルト挿通
孔部に斜めに挿通されたボルトの働きによって、鉛直荷
重による変形に耐え、従来得られなかった木造軸組工法
の接合部での剛性を向上させるという作用を有する。
【0009】本発明の請求項2に記載の軸組構造は、
架構造部材と、前記横架構造部材の所定部の当接面で当
接された縦構造部材と、前記横架構造部材と前記縦構造
部材の各外周壁部から前記当接面に対し傾斜角度βが
0°<β<90°で連通して穿孔された1以上のボルト
挿通孔部と、前記外周壁部の前記ボルト挿通孔部の端部
に切削形成され前記ボルト挿通孔部と直交する1以上の
ナット座と、前記ボルト挿通孔部に挿通された少なくと
も一端部に螺着部を有するボルトと、前記ボルト挿通孔
部の上側の端部に位置した前記ボルトの他端部のボルト
エンド部と、前記ナット座に配設され前記ボルトの螺着
部に螺着されるナットと、を備えた構成を有している。
ここで、傾斜角度βとしては、好ましくは30°≦β≦
50°で穿孔される。尚、傾斜角度βが50°よりも大
きくなるにつれ、横架構造部材のボルト挿通孔部の位置
が該構造部材の端部に近づきすぎ、該構造部材に外部か
ら大きな応力が加わった際に該構造部材の端部等が破損
するという傾向が現れだし、また、傾斜角度βが30°
よりも小さくなるにつれボルトの長さが長くなりすぎて
作業性を低下させるという傾向が現れだすのでいずれも
好ましくない。これにより、水平力に対して正負両方向
の力に対抗でき、ボルトの引っ張りと構造部材の圧縮の
力として相乗的な効果を得ることができるという作用を
有する。ボルト挿通孔部に斜めに挿通されたボルトの働
きによって、水平力による壁等の変形に耐え、従来得ら
れなかった木造軸組工法の接合部での剛性を向上できる
という作用を有する。
【0010】本発明の請求項3に記載の軸組構造は、
構造部材と、前記縦構造部材の対向する1以上の側壁に
当接面が当接して配設された横架構造部材と、前記横架
構造部材の外周壁部から前記当接面に対し傾斜角度γが
20°<γ<90°で前記縦構造部材及び他の前記横架
構造部材に貫通して穿孔された1以上のボルト挿通孔部
と、前記外周壁部の前記ボルト挿通孔部の端部に切削形
成され前記ボルト挿通孔部と直交する1以上のナット座
と、前記ボルト挿通孔部に挿通された少なくとも一端部
に螺着部を有するボルトと、前記ボルト挿通孔部の上側
の端部に位置した前記ボルトの他端部のボルトエンド部
と、前記ナット座に配設され前記ボルトの螺着部に螺着
されるナットと、を備えた構成を有している。ここで、
傾斜角度γとしては、好ましくは30°≦γ≦50°で
穿孔される。尚、傾斜角度γが50°よりも大きくなる
につれ、横架構造部材のボルト挿通孔部の位置が該構造
部材の端部に近づきすぎ、該構造部材に外部から大きな
応力が加わった際に該構造部材の端部等が破損するとい
う傾向が現れだし、また、傾斜角度γが30°よりも小
さくなるにつれボルトの長さが長くなりすぎて作業性を
低下させるという傾向が現れだすのでいずれも好ましく
ない。これにより、予めボルト挿通孔部にボルトを上部
から落とし込んでおくだけで、挿通されたボルトにより
建屋が解体しない程度のガタ付きを得ることができると
いう作用を有する。
【0011】本発明の請求項4に記載の軸組構造は、請
求項2又は3において、前記ボルト挿通孔部が、中間部
で該構造部材外に露出して形成された構成を有してい
る。これにより、曲げモーメントが大きく取れ耐荷重性
を著しく向上させることができるという作用を有する。
また、特に片持ち梁等、先端部に荷重がかかる場合に
も、ボルト挿通孔部に挿通されたボルトが有効に働き、
支持柱の持ち出し長さが大きい際にも耐えることができ
るという作用を有する。
【0012】本発明の請求項5に記載の軸組構造は、請
求項1乃至4の内いずれか1項において、前記当接面で
所定間隔をあけて前記ボルト挿通孔部とクロス状になる
ように他のボルト挿通孔部が穿設されている構成を有し
ている。これにより、従来の仕口にクロス状にボルトを
設置するだけで引っ張り、曲げに対して各々正負の方向
に有効に働き、継ぎ手部の強度を向上できるという作用
を有する。また、それ故に支持柱の持ち出し長さが大き
く取れ、該構造部材の大小に関係なく接合部の強度が一
定するという作用を有する
【0013】本発明の請求項6に記載の軸組構造は、請
求項1乃至5の内いずれか1項において、前記ナット座
に前記ボルトの端部と前記ナットを埋設する埋設材が固
定され、前記埋設材の表面が前記外周壁部の表面と略面
一に形成されている構成を有している。これにより、ナ
ット座を埋設材で埋設することにより、火災時に木材表
面の炭化皮膜によりボルトやナット火災による高温か
ら守ことができ、構造強度を維持し安全性を高めるこ
とができる。
【0014】本発明の請求項7に記載の軸組構造は、請
求項1乃至6の内いずれか1項において、当接する横架
構造部材や縦構造部材の前記当接面のいずれか一方に前
記横架構造部材や前記縦構造部材の端部を嵌合する嵌合
凹部が形成されている構成を有している。ここで、嵌合
凹部の大きさは梁材等の横架構造部材を遊嵌できる大き
さであればよく、その深さは5〜30mm好ましくは1
0〜20mmに形成される。20mmよりも深くなると
大黒柱等の構造部材の機械的強度が弱体化するので好ま
しくない。これにより、大黒柱等の側壁に穿設された嵌
合凹部に梁材等の横架構造部材の一端部を嵌合するだけ
で横架構造部材が片持ち支持されるのでボルトのボルト
挿通孔部への挿通の作業性を向上させることができると
いう作用を有する。ボルト挿通孔部に挿通されたボルト
と相まってせん断応力に対する抵抗力を向上させること
ができるという作用を有する。
【0015】本発明の請求項8に記載の軸組構造は、請
求項1乃至6の内いずれか1項において、前記当接面の
いずれか一方に嵌合凹部が形成され、他方に前記嵌合凹
部に嵌着される嵌合凸部が形成されている構成を有して
いる。これにより、継手や仕口に嵌合手段を備えている
ので、構造部材の凹凸部分の負担するせん断力に加え
て、ボルト挿通孔部に挿通されたボルトの保有するせん
断力と相まってせん断応力に対する抵抗力を向上させ
接合強度を向上できるという作用を有する。
【0016】本発明の請求項9に記載の軸組工法は、当
接面で当接された横架構造部材や縦構造部材の各前記当
接面に一構造部材の外周壁部から他の構造部材の外周壁
部に斜交状に貫設されたボルト挿通孔部に、一端部にナ
ットが螺着又は固定されたボルトエンド部を有したボル
トを前記ボルト挿通孔部の上部から挿着し各々の該構造
部材を仮固定する仮固定工程と、仮固定後に前記ボルト
の他端部にナットでボルト締めする構造部材締結工程
と、を備えた構成を有している。これにより、各構造部
材の当接面に形成し又は形成されたボルト挿通孔部にボ
ルトをボルト挿通孔部の上部から挿着埋設しナットで締
結するだけなので作業工程を極めて簡略化でき作業工数
を著しく削減することができるという作用を有する。
【0017】本発明の請求項10に記載の軸組工法は、
請求項9において、前記仮固定工程で、前記当接面でク
ロス状で、かつ孔部同士が衝合しないように貫設された
前記ボルト挿通孔部にボルトを挿着することを備えた構
成を有している。これにより、交差状に斜めに交互に挿
入固定されたボルトは、地震、風により生じる水平力に
より生ずる接合部の引っ張り、せん断、圧縮、曲げによ
って発生する左右や上下からかかる荷重を各々のボルト
の偶力で打ち消すように有効に働き、剛性を高めること
ができるという作用を有する。接合部に設置されるボル
トはRC構造の接合部に使用される斜筋に該当する働き
をし、接合部の接合強度を高めることができるという作
用を有する。
【0018】ここで、ボルトは全長に亘って螺条を形成
した断面が円形のものでもよいが、螺条が形成された両
端部を除く中央部分を断面が略円形,略楕円形,三角形
や四角形,六角形等の略多角形状に形成してもよい。こ
の際、ボルト挿通孔部もボルトの断面形状に合わせてボ
ルトの外周面とのクリアランスを1〜7mmで形成する
のが好ましい。これにより、ボルト挿通孔部に挿着され
たボルトをナットで固定する際にボルトが回転するのを
防止し、ボルト締めの作業性を大幅に向上させることが
できる。ボルトの材質としては、ステンレス等の金属製
の他、カーボン繊維やボロン繊維、ガラス繊維、金属繊
維等の有機や無機の繊維と合成樹脂で成形加工をしたも
のが用いられる。尚、ボルトが機械的強度に優れた材料
で形成されている場合は、中央部分を中空状に形成して
もよい。これにより、軽量化を図ることができ高所作業
での安全性や作業性を向上させることができる。ボルト
は全長にわたって複数に分割し、仕口や継手のボルト挿
通孔部の長さに応じて長さを調整できるように形成して
もよい。この際、各単位ボルトの径は変えてもよい。径
の異なるボルト挿通孔部を有する2本の構造部材を接合
するときに便利なためである。また、単位ボルトの接合
部は逆螺子に連結するように形成するのが好ましい。こ
れにより、ナット締結時に単位ボルトが共回りするのを
防ぐことができる。ボルトエンド部としては、ボルトの
一端部螺条を形成する代わりに、ナットを溶接固定を
するか板材や棒線材を一体で形成するか溶接等で固定し
設けてもよい。これにより、ナットの締めつけ作業が
半減し作業性を大幅に向上できる。また、仮固定の際、
ボルトエンド部を上にしてボルト挿通孔部に上部から
着するだけで簡単に仮固定を行うことができる。
【0019】構造部材としては、角柱等の材木や集成材
又は積層板等の木材の柱,梁,壁等が用いられる。ボル
ト挿通孔部はボルトの形状に合わせて複数の構造部材間
の当接面に1乃至複数穿孔され、その径はボルトの中央
部の最大径と略同一か少し大きめに形成される。ボルト
挿通孔部やナット座の形成は現場でドリル等で穿孔や切
削等するか、又は工場でプレカット方式等で予め形成し
てもよい。ボルト挿通孔部は軸組に応じて当接面に対し
略斜交状に形成される。ボルトをナットで締結後は、ナ
ット座に埋設材等で覆設し該構造部材の外周壁部と面一
にするかパテ等で補修して仕上げ面を美麗にすることが
できる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態につ
いて、図面を参照しながら説明する。 (実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1における
継手接合を示す軸組構造の要部模式図であり、図2は
1の軸組構造の要部斜視図であり、図3(a)は構造部
材の要部端面図であり、図3(b)は実施の形態1の変
形例の要部模式図であり、図4はボルト挿通孔部のクロ
ス状になる位置を当接面から一方にずらした実施の形態
1の変形例の要部模式図である。1aは実施の形態1に
おける継手接合からなる軸組構造、2a,2bは横架構
造部材や縦構造部等の構造部材、3は構造部材2a,
2bの当接面、4a,4bは当接面3近傍の1側面から
切削形成されたナット座である。ナット座4a,4bの
ナットとの当接面はナットの当接面と密着できるように
ナットの当接面と平行に形成されている。5a,5bは
構造部材2a,2bの長さ方向に対し平行で構造部材2
aの1側面のナット座4aから他の構造部材2bのナッ
ト座4bにかけて傾斜角度αが30°〜50°で平行し
て穿孔された1以上のボルト挿通孔部、6a,6bはボ
ルト挿通孔部5a,5bと対称的でかつ当接面3でボル
ト挿通孔部5a,5bと交差せずにクロス状に構造部材
2a,2bに形成されたボルト挿通孔部、7a,7b,
8a,8bはボルト挿通孔部5a,5b,6a,6bに
クロス状に挿通されたボルト、9aはボルト7a,7
b,8a,8bの一端部の頂部に一体に形成又は固着さ
れたボルトエンド部の一体型ナット、9bはボルト7
a,7b等の他端部の螺溝に螺着されるナット、9cは
ワッシャー、10はナット座4a,4bを埋設し構造部
材2a,2bの表面を面一にする埋設材の埋木である。
尚、ナット座としては、図3(b)示すように構造部材
の外周面に略直角三角柱状の板材で形成されたナット座
用材4′a,4′bを用いてもよい。これにより、構造
部材の切削を省くとともに、構造部材2a,2bに欠損
部がないので構造部材の強度を維持することができる。
また、図4のボルト挿通孔部5′a,5′b,6′a,
6′bのように当接面3からの距離を各々異ならせて形
成してもよい。外力に対するモーメントが大きく取れ対
剪断性を向上できる。
【0021】以上のように構成された実施の形態1の軸
組構造について、以下その軸組工法を説明する。まず、
ナット座4a,4b及びボルト挿通孔部5a,5b,6
a,6bが形成された構造部材2a,2bを各々起重機
等で持ち上げ接合端面をつき合わせる。次いで、ボルト
7a,7b,8a,8bを上側のナット座4a,4bか
ら一体型ナット9aを上方にしてボルト挿通孔部5a,
5b,6a,6bに挿入する。これだけで各ボルト7
a,7b,8a,8b のモーメントの相殺により構造
部材2a,2bを仮固定できる。次いで、ボルト7a,
7b,8a,8bに下端部にナット9bをゆるく螺着
し、多少ガタつくようにしておく。他の工程での構造部
材の配置や接合の手順に合わせ、もしくは接合が終わっ
た後、ナット9bを強く締める。次いで、埋木10をナ
ット座4a,4bに接着剤で埋設し構造部材2a,2b
と表面を面一にする。これにより、継手の軸組を終える
ことができる。
【0022】尚、本実施の形態ではボルトとして一端が
一体型ナットを有したものを用いたが、両端にナットを
螺着するものでもよい。この際、一方のナットだけ先に
螺着しておくのが作業上好ましい。また、ボルト挿通孔
部は合計4箇所形成したが、クロス状に2箇所だけ形成
してもよい。埋木は接合部が人目のふれない箇所では設
けなくてもよい。更に、ボルトは螺溝形成部を除く中央
部分の断面が丸型のものを用いたが、螺着部分を除く中
央部分を三角形や四角形等の多角形、楕円形等に形成さ
れたものを用いてもよい。これにより、ナットの螺着時
にボルトが回転するのを防ぎ作業性を高めることができ
る。また、該構造部材の径が大きいときは、当接面に対
して斜交状に一本の大径のボルト挿通孔部を貫設し、こ
れに大径のボルトを挿通してもよい。これにより、斜め
に挿通されたボルトと、該構造部材の当接面の上下左右
の端部の当接箇所の衝合で、上下左右からの外力を吸収
することができる。
【0023】以上のように本実施の形態1の軸組構造及
び軸組工法によれば、以下の作用を得ることができる。 (1)構造部材の当接面を付き合わせ、ボルト挿通孔部
の上側から最低2箇所のボルトを挿通するだけでボルト
の偶力で構造部材を支持できる。 (2)ナットを下側からゆるく締めることにより多少の
ガタをもたせて仮固定できるので、組み立て途中に台風
や地震等の外力で躯体が解体されるような作用が働いて
も、挿通されたボルトにより躯体が解体されるのを防止
できるので、作業進行上の安全性を著しく高めることが
できる。 (3)ボルト挿通孔部の設置場所や個数及びボルトの径
を自由に設計できるので、建屋の上下左右の全ての方向
からの外力に対して最適で最少のボルト挿通孔部とボル
トを設置できる。 (4)従来の横架構造部材の継手は鎌継手が一般的で加
工に相当の手間を要していたが、極めて簡単な構造で接
合強度の強い継手を得ることができる。 (5)ボルト固定後の作業完了の確認が容易かつ確実で
施工性を高めることができる。 (6)ボルトを用いているので、強度のバラツキの生じ
るのを防ぎ安全性を高めることができる。
【0024】(実施の形態2)図5は本発明の実施の形
態2におけ仕口接合を示す軸組構造の要部斜視図であ
る。3aはナット座、7aはボルト、9aは一体型ナッ
ト、9bはナットであり、これらは実施の形態1と同様
のものなので同一の符号を付し説明を省略する。1bは
実施の形態2における仕口接合からなる軸組構造、12
aは横架構造部材の一種である胴差し、12bは胴差し
12aに仕口接合された横架構造部材の一種である2階
梁、13は仕口当接面、14aはナットとの当接面が平
行になるように座グリで形成されたナット座、15a,
15bはナット座3aとナット座14aとの間に形成さ
れたボルト挿通孔部である。
【0025】以上のように構成された実施の形態2の軸
組構造について、以下その軸組工法を説明する。胴差し
12aと二階梁12bに、各々ナット座3a,14aと
ナット座3a,14aの間に連通するボルト挿通孔部1
5a,15bを形成する。組立てられた胴差し12aの
仕口当接面13に起重機等で2階梁12bの当接面を合
わせる。次いで、ボルト挿通孔部15a,15bにボル
ト7a,7aを挿通する。次いで、ナット9bをゆるく
螺着する。軸組工程の終了時にナット9bを緊結する。
【0026】以上のように本実施の形態2の軸組構造及
び軸組工法によれば、実施の形態1の作用に加えて、以
下の作用を得ることができる。胴差しと二階梁の仮固定
を、2本のボルトをボルト挿通孔部に挿着するだけで遊
びを持たせて行うことができる。
【0027】(実施の形態3)図6は本発明の実施の形
態3の仕口接合を示す軸組構造の要部側面図である。実
施の形態3の軸組構造1cが、図5の実施の形態2と異
なる点はボルト挿通孔部15a,15bが二階梁12b
と平行に斜交して形成されている点である。これによ
り、実施の形態1及び2の作用に加えて、以下の作用を
有する。 (1)従来の軸組構造では、水平面を構成する梁桁材の
変形に対抗する手段として、火打梁が主に用いられてい
たが、該軸組構造では、特に強固な水平面を形成でき
る。 (2)簡単な構造で施工が容易なので、工期を著しく短
縮できる。 (3)ボルトが挿通されているので、高い強度を有する
水平剛性を得ることができる。
【0028】(実施の形態4)図7は本発明の実施の形
態4の仕口接合における軸組構造の要部模式図であり、
図8は図7の構造部材の分解斜視図である。4′a,
4′bは直角三角柱状の板材のナット座用材、7a,7
b,8a,8bはボルト、9aは一体型ナット、9bは
ナット、9cはワッシャ、12bは二階梁であり、これ
らは実施の形態1乃至3と同様のものなので同一の符号
を付し説明を省略する。1dは実施の形態4の仕口接合
からなる軸組構造、22は縦構造部材の1種である通し
柱、23は二階梁12bと通し柱22の当接面、25
a,25bは傾斜角度βが30°≦β≦50°で二階梁
12bを通し柱22に連通されたボルト挿通孔部、26
は二階梁12bの一端部の当接面23に突設された大入
れ凸部、27は通し柱22の当接面23に穿設され大入
れ凸部26を嵌合する大入れ凹部である。尚、本実施の
形態4では、二階梁と通し柱について説明したが、梁と
間柱との間においても同様に施工することができる。
【0029】以上のように構成された実施の形態4の軸
組構造について、以下その軸組工法を説明する。二階梁
12bと通し柱22に互いに平行でかつクロス状に間隔
をおいて交差するボルト挿通孔部25a,25bを穿孔
する。また、二階梁12bの当接面23には厚みが10
mm〜20mmの大入れ凸部26を形成するとともに、
通し柱22の二階梁12bとの当接面23には大入れ凸
部26を嵌合する大入れ凹部27を形成する。接合にあ
たっては、まず通し柱22の大入れ凹部27に二階梁1
2bの大入れ凸部26の下端部を掛けて支持する。二階
梁12bの他端部の接合が終了した後、ボルト7a,7
b,8a,8bを、ボルト挿通孔部25a,25bの二
階梁12bと通し柱22の上側から挿通する。次いで、
ナット9bを螺着して仮固定し、各部のガタがなくなっ
たのを確認した後、ナット9bを緊結する。
【0030】以上のように実施の形態4の軸組構造及び
軸組工法は構成されているので、実施の形態1乃至3で
得られる作用の他、以下の作用を有する。 (1)大入れ部の凹凸の高さや深さを小さくできるの
で、大入れ凹部側の構造部材の欠損を少なくすることが
でき、特に通し柱の当接部に生じる欠損を少なくするこ
とができ、強度の低下を防止できる。 (2)また、強度の低下を見越して予め構造部材の径を
大きくする必要があるときでも、構造が簡単なので、強
度計算が容易にでき更に構造部材の径の割増を小さくで
きる。 (3)仕口の構造が簡単なので容易に加工することがで
き、生産性を高くすることが出来る。また、組み立ても
容易で施工性に優れ工期を短縮できる。
【0031】(実施の形態5)図9は本発明の実施の形
態5の仕口接合における軸組構造の要部側面図である。
実施の形態5の軸組構造1eが、実施の形態4と異なる
点は、ボルト挿通孔部15c,15dが通し柱12a
と、二階梁12bとの間に不連続で形成されている点
と、ボルト7′aが一部該構造部材の外部に露出して挿
通されている点である。これにより、実施の形態4の作
用に加えて、以下の作用を有する。 (1)簡単な構造で強度に優れた片持ち梁を形成でき
る。 (2)簡単な構造で施工が容易なので、工期を著しく短
縮できる。 (3)ボルトが挿通されているので、高い強度を有する
水平剛性を得ることができる。 (4)ボルト挿入孔部にボルトを挿入後、ナットを締め
付け終わると同時に所期の支持力を得ることができる。 (5)ボルトが有効に働くため、片持ち梁の先端に大き
な力が加わっても片持ち梁を確実に確保できる。
【0032】(実施の形態6)図10は本発明の実施の
形態6の仕口接合における軸組構造の要部模式図であ
る。4a,4bはナット座、9aはボルトと一体型に形
成された一体型ナット、12aは胴差し,12bは二階
梁、22は通し柱、23aは胴差し12aと通し柱22
との当接面、23bは二階梁12bと通し柱22との当
接面であり、これらは実施の形態1乃至4と同様なもの
なので同一の符号を付し説明を省略する。1fは胴差し
12a,12aを左右に仕口接合し、正面に二階梁12
bを仕口接合で接合した軸組構造である。
【0033】以上のように構成された実施の形態の軸
組構造について、以下その軸組工法について図面を説明
する。図11は実施の形態6の軸組工法を示す仕口接合
部の分解斜視図である。5a,5b,6aはボルト挿通
孔部、26は大入れ凸部、27は大入れ凹部である。ま
ず、土台(図示せず)に立設された通し柱22の大入れ
凹部27に各々胴差し12a,12a及び二階梁12b
の大入れ凸部26の下端部を引っかけて係止した後、周
囲の接合部のガタを調整しながら、各大入れ凸部26を
通し柱22の大入れ凹部27に嵌合させる。大入れ凸部
26と大入れ凹部27を嵌合させると、傾斜角度がγで
形成されたボルト挿通孔部5a,5b,6aが各々連通
する。次いで、ナット一体型のボルトの一体型ナット9
aが上にくるようにナット座4a,4a,4bからボル
ト挿通孔部5a,5b,6a,に挿通する。これによ
り、ボルトがお互いに所定間隔をあけてクロス状に挿通
されているので通し柱22と胴差し12a,12a,二
階梁12bとが仮固定される。各接合部のガタつき等を
調整した上で、各構造部材の下側のナット座4a,4b
からボルトにナットを螺合し軸組構造を完成する。以上
のように実施の形態5の軸組構造及び軸組工法は構成さ
れているので、実施の形態1乃至4で得られる作用の
他、以下の作用を有する。複雑な仕口接合構造であって
も、簡単で確実に接合することができる。
【0034】
【発明の効果】本発明の請求項1に記載の軸組構造によ
れば、 (1)ボルト挿通孔部にボルトを挿通するだけで軸組み
の仮固定を行うことができ作業性を著しく高めることが
できる。 (2)せん断力に対しては、構造部材の負担するせん断
力に加えてボルトの保有するせん断力だけ接合強度を向
上させることができる。 (3)鉛直荷重に対して正負両方向の力に対抗でき、ボ
ルトの引っ張りと構造部材の圧縮の力として相乗的な効
果を得ることが出来る。 (4)ボルト挿通孔部に斜めに挿通されたボルトの働き
によって、鉛直荷重による変形に耐え、従来得られなか
った木造軸組工法の接合面での剛性を向上させることが
できる。本発明の請求項2に記載の軸組構造によれば、 (5)水平力に対して正負両方向の力に対抗でき、ボル
トの引っ張りと構造部材の圧縮の力として働き抗剪断性
を向上させることができる。 (6)斜めに設置されたボルトの働きによって、水平力
による変形に耐え、従来得られなかった木造軸組工法の
当接面での剛性を向上させることができる。本発明の請
求項3に記載の軸組構造によれば、 (7)予めボルト挿通孔部にボルトを落とし込んでおく
だけで、挿通されたボルトにより建屋が解体しない程度
のガタ付きを得ることができるので、組み立て上棟時に
梁の大入れの際の作業性を著しく向上させることができ
る。
【0035】本発明の請求項4に記載の軸組構造によれ
ば、請求項2又は3の効果に加え、 (8)曲げモーメントが大きく取れ耐荷重性を著しく向
上させることができる。本発明の請求項5に記載の軸組
構造によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果
に加え、 (9)従来の仕口にクロス状にボルトを設置するだけで
引っ張り、曲げに対して各々正負の方向に有効に働き、
継ぎ手部の強度を著しく向上させることができる。 (10)支持柱からの持ち出し距離が大きく取れ、構造
部材の大小に関係なく接合部強度が一定する 本発明の請求項6に記載の軸組構造によれば、請求項1
乃至5の内いずれか1項の効果に加え、 (11)ナット座を埋設材で埋設することにより、火災
時に木材表面の炭化皮膜によりボルトやナットを火災に
よる高温から守ことができ、構造強度を維持し安全性
を高めることができる。本発明の請求項7に記載の軸組
構造によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項の効果
に加え、 (12)大黒柱等の側壁に穿設された嵌合凹部に梁材等
の横架構造部材の一端部を嵌合するだけで横架構造部材
が片持ち支持されるのでボルトのボルト挿通孔部への挿
通の作業性を向上させることができる。
【0036】本発明の請求項8に記載の軸組構造によれ
ば、請求項1乃至6の内いずれか1項の効果に加え、 (13)継手や仕口に嵌合手段を備えているので、構造
部材の凹凸部分の負担するせん断力に加えて、ボルト挿
通孔部に挿通されたボルトの保有するせん断力と相まっ
てせん断応力に対する抵抗力を向上させ、接合強度を向
上できる。本発明の請求項9に記載の軸組工法によれ
ば、 (14)各構造部材の当接面に形成し又は形成されたボ
ルト挿通孔部にボルトをボルト挿通孔部の上部から挿着
埋設しナットで締結するだけなので作業工程を極めて簡
略化でき作業工数を著しく削減し工期を短縮できる。本
発明の請求項10に記載の軸組工法によれば、請求項9
の効果に加え、 (15)交差状に斜めに交互に挿入固定されたボルト
は、地震、風により生じる水平力により生ずる接合部の
引っ張り、せん断、圧縮、曲げによって発生する左右や
上下からかかる荷重を各々のボルトの偶力で打ち消すよ
うに有効に働き、剛性を高めることができる。 (16)当接面に設置されるボルトはRC構造の接合部
に使用される斜筋に該当する働きをし、接合部の接合強
度を高めることができ安全性に優れる。
【0037】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における継手接合を示す
軸組構造の要部模式図
【図2】図1の軸組構造の要部斜視図
【図3】(a)構造部材の要部端面図 (b)変形例の要部模式図
【図4】ボルト挿通孔部のクロス状になる位置を当接面
から一方にずらした変形例の要部模式図
【図5】本発明の実施の形態2におけ仕口接合を示す
軸組構造の要部斜視図
【図6】本発明の実施の形態3の仕口接合を示す軸組構
造の要部平面図
【図7】本発明の実施の形態4の仕口接合における軸組
構造の要部模式図
【図8】図7の構造部材の分解斜視図
【図9】本発明の実施の形態5の仕口接合における軸組
構造の要部側面図
【図10】本発明の実施の形態6の仕口接合における軸
組構造の要部模式図
【図11】実施の形態6の軸組工法を示す仕口接合部の
分解斜視図
【符号の説明】 1a,1b,1c,1d 軸組構造 2a,2b 構造部材 3 当接面 4a,4b ナット座 4′a,4′b ナット座用材 5a,5b,6a,6b ボルト挿通孔部 7a,7′a,7b,8a,8b ボルト 9a 一体型ナット 9b ナット 9c ワッシャ 10 埋木 12a 胴差し 12b 二階梁 13 仕口当接面 14a ナット座 15a,15b,15c,15d ボルト挿通孔部 22 通し柱 23 当接面 25a,25b ボルト挿通孔部 26 大入れ凸部 27 大入れ凹部

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】各端部の当接面で当接された梁,桁,母屋
    等を形成する2本の横架構造部材と、各前記横架構造部
    材の外周壁部から前記当接面に対し傾斜角度αが20°
    <α<90°好ましくは20°≦α≦70°より好まし
    くは30°≦α≦60°で連通して穿孔された1以上の
    ボルト挿通孔部と、前記外周壁部のボルト挿通孔部の端
    部に切削形成され前記ボルト挿通孔部と直交する1以上
    のナット座と、前記ボルト挿通孔部に挿通された少なく
    とも一端部に螺着部を有するボルトと、前記ナット座に
    配設され前記ボルトの螺着部に螺着されるナットと、を
    備えたことを特徴とする軸組構造。
  2. 【請求項2】前記横架構造部材と、前記横架構造部材の
    所定部の当接面で当接された縦構造部材と、前記横架構
    造部材と前記縦構造部材の各外周壁部から前記当接面に
    対し傾斜角度βが20°<β<90°好ましくは30°
    ≦β≦50°で連通して穿孔された1以上のボルト挿通
    孔部と、前記外周壁部の前記ボルト挿通孔部の端部に切
    削形成され前記ボルト挿通孔部と直交する1以上のナッ
    ト座と、前記ボルト挿通孔部に挿通された少なくとも一
    端部に螺着部を有するボルトと、前記ナット座に配設さ
    れ前記ボルトの螺着部に螺着されるナットと、を備えた
    ことを特徴とする軸組構造。
  3. 【請求項3】前記縦構造部材と、前記縦構造部材の対向
    する1以上の側壁に当接面が当接して配設された前記横
    架構造部材と、前記横架構造部材の外周壁部から前記当
    接面に対し傾斜角度γが20°<γ<90°好ましくは
    30°≦γ≦50°で前記縦構造部材及び他の前記横架
    構造部材に貫通して穿孔された1以上のボルト挿通孔部
    と、前記外周壁部の前記ボルト挿通孔部の端部に切削形
    成され前記ボルト挿通孔部と直交する1以上のナット座
    と、前記ボルト挿通孔部に挿通された少なくとも一端部
    に螺着部を有するボルトと、前記ナット座に配設され前
    記ボルトの螺着部に螺着されるナットと、を備えたこと
    を特徴とする軸組構造。
  4. 【請求項4】前記ボルト挿通孔部が、中間部で該構造部
    材外に露出して形成されていることを特徴とする請求項
    2又は3に記載の軸組構造。
  5. 【請求項5】前記当接面で所定間隔をあけて前記ボルト
    挿通孔部とクロス状になるように他のボルト挿通孔部が
    穿設されていることを特徴とする請求項1乃至4の内い
    ずれか1項に記載の軸組構造。
  6. 【請求項6】前記ナット座に前記ボルトの端部と前記ナ
    ットを埋設する埋設材が固定され、前記埋設材の表面が
    前記外周壁部の表面と略面一に形成されていることを特
    徴とする請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の軸組
    構造。
  7. 【請求項7】当接する前記横架構造部材や前記縦構造部
    材の前記当接面のいずれか一方に前記横架構造部材や前
    記縦構造部材の端部を嵌合する嵌合凹部が形成されてい
    ることを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか1項に
    記載の軸組構造。
  8. 【請求項8】前記当接面のいずれか一方に前記嵌合凹部
    が形成され、他方に前記嵌合凹部に嵌着される嵌合凸部
    が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の内
    いずれか1項に記載の軸組構造。
  9. 【請求項9】当接面で当接された横架構造部材や縦構造
    部材の各前記当接面に一構造部材の外周壁部から他の構
    造部材の外周壁部に斜交状に貫設されたボルト挿通孔部
    に、一端部にナットが螺着又は固定されたボルトを挿着
    し各々の該構造部材を仮固定する仮固定工程と、仮固定
    後に前記ボルトの他端部にナットでボルト締めする構造
    部材締結工程と、を備えたことを特徴とする軸組工法。
  10. 【請求項10】前記仮固定工程で、前記当接面でクロス
    状で、かつ孔部同士が衝合しないように貫設された前記
    ボルト挿通孔部にボルトを挿着することを特徴とする請
    求項9に記載の軸組工法。
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