JPH1120394A - 転写シート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 実物の金属のヘアライン加工面に忠実な外観
を持ち、転写時の熱と応力による転写不良が生じ難い転
写シートを提供する。 【解決手段】 担体シート１上に転写層２として、少な
くとも、粗粒の光輝性箔粉を有するインキからなり間に
間隙部を介して複数列平行乃至略平行に配列した線条パ
ターンから形成されるヘアライン模様印刷層２１と、微
粒の光輝性箔粉を含有するインキからなるベタ印刷層２
２とを、この順に積層してなる。粗粒の光輝性箔粉を有
するインキからなる金属光沢の線条パターンと、微粒の
光輝性箔粉を含有するインキからなる金属光沢の線条パ
ターンとが交互に配列して見えるので、全面金属光沢で
尚且つその光沢がヘアライン状に変調された外観を呈す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、射出成型同時絵付
用などの各種用途に用いるための転写シートに係り、特
にプラスチック成型品の表面にヘアライン模様を付与す
るのに使用される転写シートに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、プラスチック成型品の表面にヘア
ライン模様を付与するための転写シートとしては、担体
シート上に予め機械的にスクラッチを入れるか、或いは
離型性の樹脂バインダー中に光拡散性の微粒子を添加し
てなる離型性艶消インキでヘアライン模様を印刷して形
成した担体シートを用意し、その担体シートのヘアライ
ン模様面に転写層を離型可能に担持せしめたものが知ら
れている（例えば、実公昭５９−４９９１９号公報参
照）。

【０００３】また、転写層の側にヘアライン調の模様を
形成する方式の転写シートとして、担体シート上に転写
層として先ず黒色、灰色等のヘアライン調の遮光模様を
形成し、その上にアルミニウム粉末やパール粉末などを
混入したインキで全面ベタ層等の光輝性層を形成したタ
イプの転写シートも知られている（例えば、実公平７−
１２０３２号公報参照）。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】従来の技術で述べた前
者の転写シートは、製造時の工程数が多い上に、転写時
の熱や応力によって転写層が担体シート上の微細凹凸に
投錨効果で喰い付き、担体シートの離型性が不良になる
という問題を有している。即ち、担体シートの剥離時に
転写層の一部又は全部が担体シートと共に剥離され、被
転写体側に転写されないという現象を生じる。特に、特
公平２−４２０８０号公報等に開示されるような射出成
型同時転写に用いる場合、成型後に延伸部が熱で焼きつ
き、転写不良となりやすい。

【０００５】また、後者の転写シートは、現実の金属の
ヘアライン面とは外観の異なったものとなる。即ち、現
実のヘアライン面は全面金属光沢で、尚且つ部分的に光
沢が異なる構成であるが、実公平７−１２０３２号公報
に開示された転写シートでは、金属光沢が部分的にヘア
ライン模様で遮光され、線状の金属光沢部と線状の非光
沢部とが交互に並ぶ構成となっている。

【０００６】本発明は、上記のような問題点に鑑みてな
されたものであり、その目的とするところは、実物の金
属のヘアライン加工面に忠実な外観を持ち、転写時の熱
と応力による転写不良が生じ難い転写シートを提供する
ことにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明の転写シートは、担体シート上に転写層とし
て、少なくとも、粗粒の光輝性箔粉を含有するインキか
らなり間に間隙部を介して複数列平行乃至略平行に配列
した線条パターンから形成されるヘアライン模様印刷層
と、微粒の光輝性箔粉を含有するインキからなるベタ印
刷層とを、この順に積層したことを特徴としている。

【０００８】この構成からなる転写シートを使用して被
転写体上に転写された転写層は、粗粒の光輝性箔粉を含
有するインキからなる金属光沢の線条パターンと、微粒
の光輝性箔粉を含有するインキからなる金属光沢の線条
パターンとが交互に配列して見えるようになり、全面金
属光沢で尚且つその光沢がヘアライン状に変調された外
観を呈することになる。

【０００９】

【発明の実施の形態】図１は本発明の転写シートの一例
を示す断面図である。同図において１は担体シート、２
は転写層で、転写層２はヘアライン模様印刷層２１とベ
タ印刷層２２を主とし、必要に応じて剥離層３、接着剤
層４を有して構成される。また図２はヘアライン模様印
刷層２１とベタ印刷層２２の拡大斜視図である。

【００１０】担体シート１としては、ポリエチレンテレ
フタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン−
イソフタレート−テレフタレート共重合体等の熱可塑性
ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメ
チルペンテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の
ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、上
質紙等の紙に上記ポリオレフィン、シリコン樹脂等の熱
可塑性樹脂層を積層したもの等、転写シートの担体シー
トとして公知のものを使用し、その厚さは２０〜２００
μｍ程度とする。必要に応じて担体シート１の転写層側
の表面に、メラミン樹脂とアクリル樹脂の混合体、シリ
コン樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン（ポリアミド）等の
公知の離型層を設ける。なお、ここで言う離型層とは転
写後も基材側に残留し、転写層との剥離を容易ならしめ
る層のことである。

【００１１】ヘアライン模様印刷層２１は、複数の線条
パターンを間隙部を介して互いに平行乃至は略平行に配
列したものである。線条パターンを形成するインキに
は、バインダーＢに光輝性箔粉Ｐを添加したものを使用
する。そして、線条の幅は１００〜３００μｍ程度、間
隙部（抜け部）の幅は１００〜３００μｍ程度とし、膜
厚は含有する光輝性箔粉の粒径以上とする。

【００１２】光輝性箔粉としては、アルミニウム、真
鍮、金、銀、銅等の金属の箔粉、貝殻、雲母、二酸化チ
タン被覆雲母、塩基性炭酸鉛、酸塩化ビスマス等の箔粉
からなる所謂パール顔料等の金属光沢或いはそれに類似
する光沢を有するものが用いられる。箔粉の形状として
は、鱗片状箔片、顆粒状粉末等が代表的で、粒径は１０
〜１００μｍ程度、添加量はバインダー１００重量部に
対して１０〜１００重量部程度とする。

【００１３】バインダーとしては、塩化ビニル−酢酸ビ
ニル共重合体、熱可塑性アクリル樹脂、セルロース系樹
脂、塩素化ポリオレフィン、熱可塑性ポリエステル、ブ
チラール樹脂等の熱可塑性樹脂、２液硬化型ウレタン樹
脂、熱硬化型アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、多官能ア
クリレートの単量体又はプレポリマーからなる電離放射
線硬化性樹脂（なお、電離放射線としては通常紫外線或
いは電子線が用いられる）等の中から１種或いは２種以
上の混合物が使用される。

【００１４】このインキには、その他に必要に応じて、
希釈溶剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、チキソ
トロピー付与剤、体質顔料、着色顔料（乃至は着色染
料）等の添加剤を添加する。但し、着色顔料（乃至は着
色染料）は、インキの光輝性を隠蔽しない種類及び量を
選ぶ。

【００１５】ベタ印刷層２２は最低限ヘアライン模様印
刷層の線条パターンの間隙のみ充填形成すれば足りる。
しかし、線条パターンの間隙に見当を合わせて印刷する
ことは難しいため、通常はヘアライン模様印刷層２１を
全面被覆するように形成する。インキはバインダーＢに
光輝性箔粉Ｐを添加したものを使用するが、光輝性箔粉
Ｐの粒径はヘアライン模様印刷層２１に添加するものよ
り小さいものとする。具体的には１〜２０μｍ程度で、
ヘアライン模様印刷層２１に添加する光輝性顔料の１／
５〜１／１０程度とする。その他の条件についてはヘア
ライン模様印刷層２１と同様である。

【００１６】剥離層３は転写後に被転写体側に残り転写
層２の表面保護層となる層である。この剥離層３のバイ
ンダーとしては、ヘアライン模様印刷層２１で列記した
ものと同様のものが使用できるが、直下のヘアライン模
様印刷層２１及びベタ印刷層２２が透視できるように、
無色又は着色透明のものを用いる。膜厚は１〜１０μｍ
程度である。

【００１７】接着剤層４には、酢酸ビニル、塩化ビニル
−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、熱可塑性ポリエ
ステル、ポリアミド、アイオノマー、塩素化ポリオレフ
ィン等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ブロックイン
シアネート硬化型ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、粘着
剤等公知のものが用いられる。膜厚は１〜１００μｍ程
度である。

【００１８】転写層２のヘアライン模様印刷層２１とベ
タ印刷層２２、また必要に応じて設ける剥離層３、接着
剤層４ともにグラビア印刷、オフセット印刷等の公知の
手法を用いて形成すればよい。

【００１９】被転写体としては、ＡＢＳ樹脂、ポリスチ
レン、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニ
ル、フェノール樹脂等の合成樹脂、鉄、アルミニウム等
の金属、硝子、陶磁器等のセラミックス、木材単板、木
材合板、パーティクルボード、木質繊維板等の木材、紙
等が挙げられる。この被転写体の形状はシート（フィル
ム）、平板、曲面板、立体形状等である。

【００２０】転写法としては以下に挙げる４つの方法が
ある。

【００２１】特公平２−４２０８０号公報、特公平４
−１９９２４号公報等に開示されるような射出成型同時
転写法。この方法は先ず雌型、雄型の間に転写シート
を、転写層が射出孔を有する雄型側を向くように挿入す
る。必要に応じ、雌型の表面に転写シートを予備成型し
た後、両型を閉じ、射出孔から両型間のキャビティ（成
型窩洞）内に溶融樹脂を射出し、射出樹脂を冷却固化さ
せた後、両型を開き、成型品とこれに密着した転写シー
トとを型から取り出し、担体シートのみを剥離して転写
層のみ成型側に残すというものである。

【００２２】特開平４−２８８２１４号公報、特開平
５−５７７８６号公報に開示されるような真空成型同時
転写法。この方法では、被転写体の上方に転写シート
を、転写層が被転写体側に向くよう載置する。そして、
被転写体側から真空吸引して転写シートを被転写体表面
に被覆することを助ける。接着剤として感熱型のものを
用いる場合は、被転写体表面に転写シートを被覆する
前、被覆すると同時、又は被覆して後、転写シートをヒ
ーターで加熱し接着剤を発現させる。

【００２３】ラッピング同時転写法。この方法では、
ラッピング加工法、即ち特公昭５９−５１９００号公
報、特公昭６１−５８９５号公報、特公平３−２６６６
号公報等に開示されるように、柱状体にシートを貼り合
わせていく（例えば、四角柱への貼着の場合には、シー
トを順次、上側面、左右両側面、下側と貼着して最終的
に４側面に貼り合わせる）方法を用いる。転写シートの
接着剤層側を被転写体に向けて、ラッピング加工によ
り、順次、各側面に転写シートを貼り合わせ、接着剤層
を加熱等により接着させ、しかる後に担体シートのみを
剥離する。

【００２４】熱ローラ転写法。この方法は、被転写体
上に、転写層が被転写体と向き合うように転写シートを
載置し、担体シート側から加熱した弾性体ローラで加圧
し、しかる後に担体シートのみ剥離するものである。

【００２５】ヘアライン模様は、平行乃至は略平行に走
行する多数の線条パターンが代表的である。その他に、
平行乃至は略平行に走行する多数の平行曲線群からなる
所謂スピン加工による線条パターンでもよい。

【００２６】転写した製品は、家電製品のキャビネット
や外被、家具の表面材、建築物の内装材、自動車内装部
品、容器等に用いられる。

【００２７】

【実施例】厚さ５０μｍの２軸延伸ポリエチレンテレフ
タレートフィルムを担体シートとし、その表面に剥離層
として厚さ１μｍのアクリル樹脂層を通常のグラビア印
刷で全面に形成した。次いで、版深４０〜５０μｍ、線
幅及び間隙部の幅が１００〜１５０μｍの範囲に分布す
るヘアラインの線条パターンで彫刻されたスクラッチ版
を使用して、アクリル系樹脂をバインダーとし、粒径分
布７０〜１００μｍのアルミニウムの鱗片状箔片がバイ
ンダー１００重量部に対して３０重量部入っているイン
キを用いてグラビア印刷を行いヘアライン模様印刷層を
形成した。

【００２８】続いて、アクリル樹脂をバインダーとし、
粒径分布５〜２０μｍのアルミニウムの鱗片状箔片がバ
インダー１００重量部に対して３０重量部入っているイ
ンキを用いて３ｇ／ｍ² の塗布量で全面ベタ印刷層を形
成した。最後に、接着剤層として塩化ビニル−酢酸ビニ
ル共重合体系インキを全面ベタ印刷し転写シートを得
た。

【００２９】この転写シートを雄型と雌型との間に転写
層が雄型を向くように挿入し、通常の射出成型同時転写
法にて既存のＡＢＳ樹脂成型品に転写したところ、アル
ミニウムの鱗片状箔片の粒径の違いにより、金属のヘア
ライン加工面の外観を有する高意匠の成型品を得た。ま
た、担体シートの剥離時に際し、転写層が担体シート側
に付着する転写不良も生じなかった。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したように、転写層を粗粒の光
輝性箔粉を含有する線条パターンを間隙を介して複数略
平行に配列してなるヘアライン模様層と、微粒の光輝性
箔粉を含有する全面ベタ印刷層とをこの順に積層した構
成とすることで、実物の金属のヘアライン加工面に忠実
な外観を持ち、転写不良の生じ難い転写シートが得られ
た。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る転写シートの一例を示す断面図で
ある。

【図２】ヘアライン印刷模様層とベタ印刷層の拡大斜視
図である。

【符号の説明】

１ 担体シート ２ 転写層 ２１ ヘアライン印刷模様層 ２２ ベタ印刷層 ３ 剥離層 ４ 接着剤層

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 担体シート上に転写層として、少なくと
   も、粗粒の光輝性箔粉を含有するインキからなり間に間
   隙部を介して複数列平行乃至略平行に配列した線条パタ
   ーンから形成されるヘアライン模様印刷層と、微粒の光
   輝性箔粉を含有するインキからなるベタ印刷層とを、こ
   の順に積層したことを特徴とする転写シート。