JPH11194520A - 電子写真感光体、その製造方法、それを用いた画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、その製造方法、それを用いた画像形成装置

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JPH11194520A
JPH11194520A JP9360657A JP36065797A JPH11194520A JP H11194520 A JPH11194520 A JP H11194520A JP 9360657 A JP9360657 A JP 9360657A JP 36065797 A JP36065797 A JP 36065797A JP H11194520 A JPH11194520 A JP H11194520A
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聡 片山
Takahiro Teramoto
高広 寺本
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在彦 川原
Kazushige Morita
和茂 森田
Tomoko Kanazawa
朋子 金澤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた塗布性で作成でき、高感度でかつ繰返
し使用時の静電的安定性の低下が少ない電子写真感光体
を用いて、欠陥の少ない高い画像特性の画像を形成す
る。 【解決手段】 導電性支持体と光導電層との間の下引き
層に水溶性または水/アルコール可溶のポリビニルアセ
タールと無機顔料とを含有させる。特に、無機顔料とし
て酸化チタンを用いる、ポリビニルアセタール/酸化チ
タン(重量比)=1/9〜9/1とする、0.5〜5μ
mの下引き層厚とする、アルミナ処理で表面処理された
酸化チタンを用いる、酸化チタン成分が95重量%以下
の表面処理された酸化チタンを用いる、ナトリウムイオ
ン濃度が40ppm以下のポリビニルアセタールを用い
る、塩ビ−酢ビ系共重合体を含有する光導電層を用いる
ことが好ましい。下引き層用塗布液分散媒に水/アルコ
ール(重量比)=1/9〜7/3の溶剤を選ぶ。反転現
像プロセスを用いた画像形成装置に上記感光体を適用す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性支持体の上
に下引き層を介して光導電層を備える電子写真感光体、
その製造方法およびそれを用いた画像形成装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】一般的な情報記録手法の1つであり、感
光体の光導電現象を利用した電子写真プロセスでは、ま
ず暗所においてコロナ放電によって感光体表面を一様に
帯電させた後、像露光を施して露光部の電荷を選択的に
放電させることによって非露光部に静電潜像を形成させ
る。次に、着色した荷電微粒子(トナー)を静電力など
で静電潜像に付着させて可視像とし、画像を形成する。
これら一連のプロセスにおいて感光体に要求される基本
的な特性としては、 (1)暗所において適当な電位に一様に帯電可能である
こと (2)暗所において高い電荷保持能を有し、電荷の放電
が少ないこと (3)光感度に優れており、光照射によって速やかに電
荷を放電すること などがある。さらに、感光体表面を容易に除電できる、
残留電位が小さい、機械的強度が高い、可撓性に優れて
いる、繰返し使用時の電気的特性、特に帯電性、光感度
および残留電位などが変動しない、熱、光、温度、湿度
およびオゾンなどに対する耐性を有しているなど、高い
安定性や耐久性が要求される。
【0003】導電性支持体上に光導電層である感光層を
形成して構成される電子写真感光体では、感光層におい
て導電性支持体からのキャリア注入が生じ易いため、表
面電荷が微視的に消失もしくは減少して画像欠陥が発生
する。これを防止し、導電性支持体表面の欠陥の被覆、
帯電性の改善、感光層の接着性の向上、塗布性の改善な
どのために、導電性支持体と感光層との間に下引き層が
設けられる。
【0004】下引き層用の結着樹脂材料としては、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹
脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹
脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、
シリコン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド
樹脂、これらの繰返し単位のうちの2以上を含む共重合
体樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、
エチルセルロースおよび水溶性ポリビニルアセタール樹
脂などがある。
【0005】特開昭63−178249号公報には、導
電性支持体と感光層との間に中間層を有する感光体であ
って、中間層が水溶性ポリビニルアセタール樹脂を主成
分とする感光体、また導電性支持体と中間層との間に酸
化チタンなどの白色顔料を分散させた下引き層を有する
感光体が開示されている。ここでの中間層は、導電性支
持体側から感光層へキャリア注入を防止するために設け
られる。また下引き層は、レーザ光源を用いた画像形成
装置に適用するため、光干渉を防止するために設けられ
る。該公報では、低温低湿下および高温高湿下での繰返
し使用において高い感度を維持することを目的としてお
り、作成した感光体に対して各環境下で1時間の露光を
繰返し、その前後の静電特性を評価している。
【0006】また、特開平6−59489号公報には、
導電性支持体と感光層との間に、水とアルコールとの混
合溶剤に可溶なポリビニルアセタール樹脂を主成分とす
る下引き層を有する感光体が開示されている。ここでの
下引き層は、導電性支持体と感光層との接着性を改善
し、繰返し使用における感度の維持を目的として設けら
れるものである。該公報では、作成した感光体に対して
10000回の露光を繰返し、その前後の静電特性およ
び画像特性を評価している。
【0007】しかし、特開昭63−178249号公報
および特開平6−59489号公報のいずれにおいて
も、樹脂を単独で使用するため繰返し使用時の残留電位
の上昇や画像欠陥の発生などを充分に抑制できない。
【0008】一方、結着樹脂中に無機顔料を分散させた
下引き層がある。特開昭59−93453号公報には、
無機顔料として表面処理した酸化チタンを用いる例が開
示されている。該公報では、導電性支持体表面の凹凸に
よって発生する感光層の塗布むらや膜厚むらを切削加工
や鏡面研磨などを行うことなく抑制し、画像欠陥や濃度
むらを防止するために、酸化チタンをアルミナなどの被
覆によって表面処理し、その分散性を高めている。
【0009】また、特開昭63−298251号公報に
は、酸化チタンと結着樹脂との割合を容量比で1/1〜
3/1の範囲とする例が開示されている。該公報では、
酸化チタンの含有量を最適化して感光体の長寿命化を図
っており、作成した感光体に対して10万回の露光を繰
返し、その前後の静電特性を評価している。
【0010】しかし、特開昭59−93453号公報お
よび特開昭63−298251号公報では、酸化チタン
と組合わせる結着樹脂やその条件によって、繰返し使用
時の残留電位の上昇や画像欠陥の発生などの抑制が不充
分であり、さらに改良することが望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、繰返
し使用時において感光特性の低下が少ない電子写真感光
体を提供することである。また本発明の他の目的は、そ
のような感光体を分散性の高い塗布液を用いて作成でき
る電子写真感光体の製造方法を提供することである。ま
た本発明のさらに他の目的は、そのような感光体を用い
て高い画像特性の画像が形成できる画像形成装置を提供
することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、導電性支持体
上に下引き層を介して光導電層を有する電子写真感光体
において、前記下引き層は、無機顔料と水溶性ポリビニ
ルアセタールとを含有することを特徴とする電子写真感
光体である。
【0013】本発明に従えば、導電性支持体と光導電層
との間に設けられた下引き層において、無機顔料と水溶
性ポリビニルアセタールとを含有させることによって、
繰返し使用時の静電的な安定性が向上する。
【0014】また本発明は、前記無機顔料として酸化チ
タンが選ばれることを特徴とする。
【0015】本発明に従えば、無機顔料として酸化チタ
ンを選ぶことによって、感度が向上しかつ繰返し使用時
の静電的な安定性が向上する。
【0016】また本発明は、前記酸化チタンと水溶性ポ
リビニルアセタールとの重量比が、酸化チタン/水溶性
ポリビニルアセタールで1/9〜9/1の範囲であるこ
とを特徴とする。
【0017】本発明に従えば、酸化チタンと水溶性ポリ
ビニルアセタールとの重量比を1/9〜9/1の範囲に
選ぶことによって、感度が向上しかつ繰返し使用時の静
電的な安定性が向上する。
【0018】なお、下引き層厚を0.5〜5μmの範囲
に選ぶことによって、さらに感度が向上しかつ繰返し使
用時の静電的な安定性が向上する。
【0019】また本発明は、前記酸化チタンにはアルミ
ナ処理が施されていることを特徴とする。
【0020】本発明に従えば、表面処理としてアルミナ
処理が施された酸化チタンを用いることによって、感度
が向上しかつ繰返し使用時の静電的な安定性が向上す
る。またこのような感光体を用いて形成された画像は欠
陥が少なく、画像特性の優れたものである。
【0021】なお、95重量%以下の範囲で酸化チタン
成分が含まれている表面処理が施された酸化チタンを用
いることによって、感度が向上する。またこのような感
光体を用いて形成された画像は欠陥が少なく、画像特性
が優れたものである。
【0022】また本発明は、前記水溶性ポリビニルアセ
タール中のナトリウムイオン濃度が40ppm以下であ
ることを特徴とする。
【0023】本発明に従えば、ナトリウムイオン濃度が
40ppm以下である水溶性ポリビニルアセタールを用
いることによって、このような感光体を用いて形成され
た画像は欠陥が少なく優れた画像特性となる。
【0024】また本発明は、前記光導電層は、塩化ビニ
ル−酢酸ビニル系共重合体を含有することを特徴とす
る。
【0025】本発明に従えば、塩化ビニル−酢酸ビニル
系共重合体を含有する光導電層を用いることによって、
優れた感度が得られる。またこのような感光体を用いて
優れた特性の画像が形成できる。
【0026】また本発明は、導電性支持体上に下引き層
を介して光導電層を有する電子写真感光体の製造方法で
あって、下引き層用の塗工液を塗布して下引き層を形成
する電子写真感光体の製造方法において、前記下引き層
用塗工液は、無機顔料、水溶性ポリビニルアセタール、
および水とアルコールとの混合溶剤を含むことを特徴と
する電子写真感光体の製造方法である。
【0027】本発明に従えば、導電性支持体上には、無
機顔料、水溶性ポリビニルアセタール、および水とアル
コールとの混合溶剤を含む下引き層用塗工液が塗布され
てした引き層が形成され、さらに光導電層が形成され
る。このような下引き層用塗工液は分散性が高く、した
がって均一な下引き層が形成でき、繰返し使用時の静電
的な安定性が優れている。
【0028】また本発明は、水とアルコールとの前記混
合溶剤の重量比が、水/アルコールで1/9〜7/3の
範囲であることを特徴とする。
【0029】本発明に従えば、水とアルコールとの混合
溶剤の重量比を1/9〜7/3の範囲に選ぶことによっ
て、さらに分散性の高い下引き層用塗工液によって均一
な下引き層が形成できる。また、繰返し使用時の優れた
静電的安定性が得られる。
【0030】また本発明は、導電性支持体上に下引き層
を介して光導電層を有する電子写真感光体において、前
記下引き層は、無機顔料および水とアルコールとの混合
溶剤のみに可溶のポリビニルアセタールを含有すること
を特徴とする電子写真感光体である。
【0031】本発明に従えば、導電性支持体と光導電層
との間に設けられた下引き層において、無機顔料および
水とアルコールとの混合溶剤のみに可溶のポリビニルア
セタールを含有させることによって、繰返し使用時にお
いて優れた静電的安定性が得られる。
【0032】また本発明は、前記無機顔料として酸化チ
タンが選ばれることを特徴とする。
【0033】本発明に従えば、無機顔料として酸化チタ
ンを選ぶことによって、高感度でかつ繰返し使用時の優
れた静電的安定性が得られる。
【0034】また本発明は、酸化チタンと水とアルコー
ルとの混合溶剤のみに可溶の前記ポリビニルアセタール
との重量比が、酸化チタン/ポリビニルアセタールで1
/9〜9/1の範囲であることを特徴とする。
【0035】本発明に従えば、酸化チタンと水とアルコ
ールとの混合溶剤のみに可溶のポリビニルアセタールと
の重量比を1/9〜9/1の範囲に選ぶことによって、
高感度でかつ繰返し使用時の優れた静電的安定性が得ら
れる。
【0036】なお、下引き層厚を0.5〜5μmの範囲
に選ぶことによって、高感度でかつ繰返し使用時の優れ
た静電的安定性が得られる。
【0037】また本発明は、前記酸化チタンにはアルミ
ナ処理が施されていることを特徴とする。
【0038】本発明に従えば、表面処理としてアルミナ
処理が施されている酸化チタンを用いることによって、
高感度でかつ繰返し使用時の優れた静電的安定性が得ら
れる。また、このような感光体を用いて形成された画像
は欠陥が少なく、優れた画像特性を有する。
【0039】なお、95重量%以下の範囲で酸化チタン
成分が含まれている表面処理が施された酸化チタンを用
いることによって、感度が向上する。また、このような
感光体を用いることによって、優れた特性の画像が形成
できる。
【0040】また本発明は、水とアルコールとの混合溶
剤のみに可溶の前記ポリビニルアセタール中のナトリウ
ムイオン濃度が40ppm以下であることを特徴とす
る。
【0041】本発明に従えば、ナトリウムイオン濃度が
40ppm以下であるポリビニルアセタールを用いるこ
とによって、このような感光体を用いて形成された画像
の特性は優れたものとなる。
【0042】また本発明は、前記光導電層は、塩化ビニ
ル−酢酸ビニル系共重合体を含有することを特徴とす
る。
【0043】本発明に従えば、塩化ビニル−酢酸ビニル
系共重合体を含有する光導電層を用いることによって、
優れた感度が得られる。また、このような感光体を用い
て形成された画像の特性は優れたものとなる。
【0044】なお、前記電子写真感光体は、導電性支持
体上に無機顔料、水とアルコールとの混合溶剤のみに可
溶のポリビニルアセタール、および水とアルコールとの
混合溶剤を含む下引き層用塗工液を塗布して下引き層を
形成し、さらに光導電層を形成して作成される。このよ
うな下引き層用塗工液は分散性が高く、したがって均一
な下引き層が形成でき、繰返し使用時の感光特性の低下
が抑制できる。
【0045】また、水とアルコールとの混合溶剤の重量
比を1/9〜7/3の範囲に選ぶことによって、さらに
分散性の高い下引き用塗工液によって均一な下引き層が
形成できる。
【0046】また本発明は、電子写真感光体を用い、反
転現像プロセスで画像を形成する画像形成装置におい
て、前記電子写真感光体は、ナトリウムイオン濃度が4
0ppm以下の水溶性または水とアルコールとの混合溶
剤のみに可溶のポリビニルアルコールを含有する下引き
層を有する電子写真感光体であることを特徴とする電子
写真感光体を用いた画像形成装置である。
【0047】本発明に従えば、上述したような感光体を
反転現像プロセスで画像を形成する画像形成装置に適用
することによって、高感度で静電的安定性に優れ、高い
画像特性の画像が形成できる。
【0048】本発明の下引き層に含有され、水、または
水/アルコールに可溶なポリビニルアセタール樹脂は、
一般のポリビニルアセタールとは異なり、アセタール化
度を低くしたものであり、構成単位中にビニルアルコー
ル成分が多く存在し、水や、メタノール、エタノール、
プロパノール、ブタノールおよびエチレングリコールな
どのアルコール類には良く溶けるが、一般の有機溶剤に
は溶けにくい。このような樹脂としては、ポリビニルブ
チラール、ポリビニルホルマールおよびポリビニルアセ
トアセタールなどが挙げられる。具体的に、水溶性ポリ
ビニルアセタールはエスレックKW(積水化学工業社
製)、水/アルコール可溶性ポリビニルアセタールはエ
スレックKX(積水化学工業社製)として市販され、容
易に入手することができる。エスレックKXは、水/ア
ルコール混合溶剤のみに溶解し、水単独やアルコール単
独には溶解しない性質を持つ。
【0049】本発明の下引き層に含有され、水、または
水/アルコールに可溶なポリビニルアセタールと組合わ
される無機顔料としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化
亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウ
ム、酸化アンチモン、酸化インジウムおよび酸化ジルコ
ニウムなどが挙げられるが、特に特性面から酸化チタン
が好ましい。これらの無機顔料は必要に応じて、アルミ
ナやシリカなどの無機材料またはステアリン酸などの有
機材料で表面処理しても構わない。
【0050】水、または水/アルコールに可溶なポリビ
ニルアセタールと無機顔料とを含有した下引き層を有す
る感光体の特性の改良としては、静電特性面では残留電
位の低減が挙げられる。従来、アルコール可溶性ナイロ
ンなどのアルコール可溶性樹脂と無機顔料を組合わせた
下引き層による残留電位の低減を図る試みはこれまで数
多くされてきたが、樹脂自身が低温低湿時に抵抗が高く
なるという欠点を有するので、残留電位の上昇を充分に
改良できなかった。水、または水/アルコールに可溶な
ポリビニルアセタールでは、低温低湿時の抵抗上昇はア
ルコール可溶性樹脂より少なく、樹脂単独として下引き
層に使用したときでもアルコール可溶性ナイロンなどよ
りは残留電位は小さいが、本発明のように無機顔料と組
合わせた構成にすることで、無機顔料の電子伝導の性質
が電荷の移動を助けるので、よりいっそう残留電位を低
減することができる。
【0051】また、水、または水/アルコールに可溶な
ポリビニルアセタールと無機顔料とを含有した下引き層
を有する感光体の特性の改良は、画像欠陥の低減という
面でも現れる。特に、感光体を反転現像プロセスで使用
するときに発生し、導電性支持体から電荷が光導電層内
にリークして、それが白ベタ画像中の黒点となって現れ
る画像欠陥に対して、従来、水、または水/アルコール
に可溶なポリビニルアセタールを樹脂単独で下引き層に
使用したときには、樹脂が吸湿することで樹脂中のイオ
ン成分が電荷発生物質に作用し、黒点等の画像欠陥が発
生し易かった。しかし、本発明では下引き層中に水、ま
たは水/アルコールに可溶なポリビニルアセタールと、
一般的に誘電率が高いという性質を持つ無機顔料とを含
有する構成をとっているので、画像形成時に感光層にか
かる電圧が一定であっても下引き層にかかる分圧を低く
抑えることができ、下引き層樹脂中のイオン成分が電荷
発生材料に作用しにくくなり、黒点等の画像欠陥が抑え
られると考えられる。
【0052】下引き層の膜厚としては、0.1μm以上
20μm以下の範囲、好ましくは0.5μm以上5μm
以下の範囲に選ばれる。下引き層の膜厚が0.1μmよ
り小さければ実質的に下引き層として機能しなくなり、
導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面性が得られ
ず、導電性支持体からのキャリアの注入を防止すること
ができなくなり、帯電性の低下が生じる。また、20μ
mよりも大きくすることは下引き層を浸漬塗布する場
合、感光体を製造する上で難しくなり塗布膜の機械的強
度が低下するために好ましくない。下引き層用塗布液の
分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライ
ター、振動ミルおよび超音波分散機などがあり、塗布手
段としては、前記の浸漬法など一般的な方法が適用でき
る。
【0053】導電性支持体としては、アルミニウム、ア
ルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス、チタンなどの
金属製ドラムおよびシート、ポリエチレンテレフタレー
ト、ナイロン、ポリスチレンなどの高分子材料や硬質紙
上に金属箔ラミネートや金属蒸着処理を施したドラム、
シートおよびシームレスベルトなどが挙げられる。
【0054】下引き層の上に形成される感光層の構造と
しては、電荷発生層と電荷輸送層との2層から成る機能
分離型、およびこれらが分離されずに単一層で形成され
る単層型があるが、いずれを用いても良い。
【0055】機能分離型の場合、下引き層の上に電荷発
生層が形成される。電荷発生層に含有される電荷発生物
質としては、たとえばクロロダイアンブルー等のビスア
ゾ系化合物、ジブロモアンサンスロン等の多環キノン系
化合物、ペリレン系化合物、キナクリドン系化合物、フ
タロシアニン系化合物およびアズレニウム塩系化合物が
知られており、これらを1種もしくは2種以上併用して
も構わない。
【0056】電荷発生層の作成方法としては、電荷発生
物質を真空蒸着することによって形成する方法および結
着性樹脂溶液中に分散し塗布して成膜する方法がある
が、一般に後者の方法が好ましい。塗布による作成の場
合、結着性樹脂溶液中へ電荷発生物質を混合して分散す
る方法並びに塗布する方法としては、下引き層と同様の
方法が用いられる。結着性樹脂としては、メラミン樹
脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、
アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート
樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、これらの二つ
以上の繰返し単位を含み、塩化ビニル−酢酸ビニル共重
合体やアクリロニトリル−スチレン共重合体などの共重
合体樹脂など、絶縁性樹脂を挙げることができるが、こ
れらに限定されるものではなく、一般に用いられるすべ
ての樹脂を単独あるいは2種以上混合して使用すること
ができる。また、これらの樹脂を溶解させる溶媒として
は、塩化メチレンや2塩化エタンなどのハロゲン化炭化
水素、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキ
サノンなどのケトン類、酢酸エチルや酢酸ブチルなどの
エステル類、テトラヒドロフランやジオキサンなどのエ
ーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳
香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミドやN,
N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶媒
を用いることができる。電荷発生層の膜厚は、0.05
μm以上5μm以下の範囲、好ましくは0.1μm以上
1μm以下の範囲に選ばれる。
【0057】電荷発生層の上に設けられる電荷輸送層の
作成方法としては、結着性樹脂溶液中に電荷輸送物質を
溶解させた電荷輸送用塗布液を作製し、これを塗布して
成膜する方法が一般的である。電荷輸送層に含有される
電荷輸送物質としては、ヒドラゾン系化合物、ピラゾリ
ン系化台物、トリフェニルアミン系化合物、トリフェニ
ルメタン系化台物、スチルベン系化合物、オキサジアゾ
ール系化合物およびエナミン系化合物などが知られてお
り、これらを1種もしくは2種以上併用しても構わな
い。結着性樹脂としては、前記の電荷発生層用の樹脂を
1種もしくは2種以上混合して使用することができる。
電荷輸送層の作成方法としては、下引き層と同様の方法
が用いられ、電荷輸送層の膜厚は、5μm以上50μm
以下の範囲、好ましくは10μm以上40μm以下の範
囲に選ばれる。
【0058】感光層が単層構造の場合、感光層の膜厚
は、5μm以上50μm以下の範囲、好ましくは10μ
m以上40μm以下の範囲に選ばれる。
【0059】また、感度の向上、残留電位や繰返し使用
時の疲労低減などを目的として、感光層に少なくとも1
種以上の電子受容性物質を添加しても構わない。たとえ
ばパラベンゾキノン、クロラニル、テトラクロロ1,2
−ベンゾキノン、ハイドロキノン、2,6−ジメチルベ
ンゾキノン、メチル1,4−ベンゾキノン、α−ナフト
キノン、β−ナフトキノン等のキノン系化合物、2,
4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、1,3,6,
8−テトラニトロカルバゾール、p−ニトロベンゾフェ
ノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノ
ンおよび2−ニトロフルオレノンなどのニトロ化合物、
テトラシアノエチレン、7,7,8,8−テトラシアノ
キノジメタン、4−(P−ニトロベンゾイルオキシ)−
2′,2′,−ジシアノビニルベンゼンおよび4−(m
−ニトロベンゾイルオキシ)−2′,2′,−ジシアノ
ビニルベンゼンなどのシアノ化合物などを挙げることが
できる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系化合
物やCl,CN,NO2 等の電子吸引性の置換基のある
ベンゼン誘導体が特に好ましい。
【0060】また、安息香酸、スチルベン化合物やその
誘導体、トリアゾール化合物、イミダゾール化合物、オ
キサジアゾール化合物、チアゾール化合物およびその誘
導体などの含窒素化合物類の紫外線吸収剤や酸化防止剤
を含有させても構わない。
【0061】さらに、必要であれば感光層表面を保護す
るために保護層を設けても構わない。表面保護層には、
熱可塑性樹脂や光または熱硬化性樹脂を用いることがで
きる。保護層中に、前記紫外線防止剤、酸化防止剤、金
属酸化物などの無機材料、有機金属化合物、および電子
受容性物質などを含有させても構わない。また感光層お
よび表面保護層に必要に応じて、二塩基酸エステル、脂
肪酸エステル、リン酸エステル、フタル酸エステルおよ
び塩素化パラフィンなどの可塑剤を混合させて加工性お
よび可撓性を付与し、機械的物性の改良を施しても良
く、シリコン樹脂などのレベリング剤を使用しても構わ
ない。
【0062】
【発明の実施の形態】(実施例1)直径65mm、長さ
332mmのアルミニウム製ドラムを準備した。3重量
部の酸化チタン TTO−55B(アルミナ表面処理、
酸化チタン成分:91%、石原産業社製)と、3重量部
の水溶性ポリビニルアセタール樹脂 KW−1(積水化
学工業社製)と、30重量部の水と、70重量部のメタ
ノールとを混合し、ペイントシェーカで10時間分散
し、下引き層用塗工液を調整した。ドラムを下引き層用
塗工液に浸漬し、引き上げた後、120℃で20分乾燥
し、ドラム上に膜厚2μmの下引き層を形成した。な
お、水溶性ポリビニルアセタール樹脂 KW−1は実際
は水溶液であるが、固形分の重量を記している。また該
樹脂のアセタール化度は9mol%である。
【0063】次に、2重量部のτ型無金属フタロシアニ
ン Liophoton TPA−891(東洋インキ
製造社製)と、2重量部の塩化ビニル−酢酸ビニル−マ
レイン酸共重合体 SOLBIN M(日信化学工業社
製)と、100重量部のMEK(メチルエチルケトン)
とを混合し、ボールミルで12時間分散し、電荷発生層
用塗工液を調整した。下引き層が形成されたドラムを電
荷発生層用塗工液に浸漬し、引き上げた後、120℃で
10分乾燥し、下引き層上に膜厚0.3μmの電荷発生
層を形成した。さらに、8重量部の
【0064】
【化1】
【0065】で表される電荷輸送物質と、10重量部の
ポリカーボネート樹脂 K1300(帝人化成社製)
と、0.002重量部のシリコンオイル KF50(信
越化学社製)と、120重量部のジクロロメタンとを混
合し、撹拌して溶解し、電荷輸送層用塗工液を調整し
た。電荷発生層が形成されたドラムを電荷輸送層用塗工
液に浸漬し、引き上げた後、120℃で20分乾燥し、
電荷発生層上に膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。
このようにして感光体を作成した。
【0066】(実施例2)実施例1の下引き層用塗工液
に代わって、3重量部の酸化チタン TTO−55B
(アルミナ表面処理、酸化チタン成分:91%、石原産
業社製)と、3重量部の水溶性ポリビニルアセタール樹
脂 KW−3(積水化学工業社製)と、30重量部の水
と、70重量部のメタノールとの混合液を使用した以外
は実施例1と同様にして感光体を作成した。なお、水溶
性ポリビニルアセタール樹脂 KW−3のアセタール化
度は30mol%である。
【0067】(実施例3)実施例1の下引き層用塗工液
に代わって、3重量部の酸化亜鉛 FINEX−25
(堺化学社製)と、3重量部の水溶性ポリビニルアセタ
ール樹脂 KW−1(積水化学工業社製)と、30重量
部の水と、70重量部のメタノールとの混合液を使用し
た以外は実施例1と同様にして感光体を作成した。
【0068】(比較例1)実施例1の下引き層用塗工液
に代わって、6重量部の水溶性ポリビニルアセタール樹
脂 KW−1(積水化学工業社製)と、30重量部の水
と、70重量部のメタノールとの混合液を使用した以外
は実施例1と同様にして感光体を作成した。なお、該塗
工液はスターラで撹拌した。
【0069】(比較例2)実施例1の下引き層用塗工液
に代わって、3重量部の酸化チタン TTO−55B
(アルミナ表面処理、酸化チタン成分:91%、石原産
業社製)と、3重量部のアルコール可溶性ナイロン樹脂
CM4000(東レ社製)と、80重量部のメタノー
ルと、20重量部のn−ブタノールとの混合液を使用し
た以外は実施例1と同様にして感光体を作成した。
【0070】(比較例3)実施例1の下引き層用塗工液
に代わって、3重量部の酸化亜鉛 FINEX−25
(堺化学社製)と、3重量部のアルコール可溶性ナイロ
ン樹脂 CM4000(東レ社製)と、80重量部のメ
タノールと、20重量部のn−ブタノールとの混合液を
使用した以外は実施例1と同様にして感光体を作成し
た。
【0071】実施例1〜3および比較例1〜3の感光体
をデジタル複写機AR5130(シャープ社製)改造機
に装着して、耐刷試験を行った結果を表1に示す。耐刷
試験としては、10℃15%RHの低温低湿環境下で、
初期および30000枚画像形成後のそれぞれについ
て、暗部電位VO(−V)および明部電位VL(−V)
を評価した。感度に関して、初期の明部電位VLが低い
ことが好ましく、静電的な安定性に関して、繰返し使用
における暗部電位VOおよび明部電位VLの変化が少な
いことが好ましい。また、実施例1および比較例1の感
光体を前記複写機に装着して反転現像方式で全面白色で
ある白ベタ画像を形成したところ、実施例1では欠陥の
ない画像が得られ、比較例1では黒い斑点状の欠陥を若
干有する画像が得られた。
【0072】
【表1】
【0073】以上の評価結果から、実施例1〜3の水溶
性ポリビニルアセタール樹脂と無機顔料とを含有する下
引き層を有する感光体は、比較例2,3のアルコール可
溶性ナイロン樹脂と無機顔料とを含有する下引き層を有
する感光体に比べて、繰返し使用時に高い電位安定性を
示すことが分かった。また、実施例1〜3の水溶性ポリ
ビニルアセタール樹脂と無機顔料とを含有する下引き層
を有する感光体は、比較例1の無機顔料を含有しない下
引き層を有する感光体に比べて、画像欠陥が少ないこと
が分かった。特に、酸化チタンを用いた実施例1,2は
酸化亜鉛を用いた実施例3よりも感度が高いことが分か
った。
【0074】(実施例4)実施例1の下引き層用塗工液
の酸化チタンを0.3重量部に、水溶性ポリビニルアセ
タール樹脂を5.7重量部にそれぞれ変更した以外は実
施例1と同様にして感光体を作成した。
【0075】(実施例5)実施例1の下引き層用塗工液
の酸化チタンを0.6重量部に、水溶性ポリビニルアセ
タール樹脂を5.4重量部にそれぞれ変更した以外は実
施例1と同様にして感光体を作成した。
【0076】(実施例6)実施例1の下引き層用塗工液
の酸化チタンを5.4重量部に、水溶性ポリビニルアセ
タール樹脂を0.6重量部にそれぞれ変更した以外は実
施例1と同様にして感光体を作成した。
【0077】(実施例7)実施例1の下引き層用塗工液
の酸化チタンを5.7重量部に、水溶性ポリビニルアセ
タール樹脂を0.3重量部にそれぞれ変更した以外は実
施例1と同様にして感光体を作成した。
【0078】実施例1,4〜7の感光体を前記複写機に
装着して、同様の耐刷試験を行った結果を表2に示す。
酸化チタンと水溶性ポリビニルアセタール樹脂との混合
比率を、重量比で、酸化チタン/水溶性ポリビニルアセ
タール樹脂=1/9,1/1,9/1とした実施例1,
5,6の下引き層を有する感光体は、それ以外である実
施例4,7の感光体に比べて、繰返し使用時に高い電位
安定性を示すことが分かった。
【0079】
【表2】
【0080】以上の評価結果から、酸化チタン/水溶性
ポリビニルアセタール樹脂=1/9〜9/1(重量比)
の範囲の下引き層を有する感光体において、高感度でか
つ特に繰返し使用時に高い電位安定性を示すことが分か
った。
【0081】(実施例8)実施例1の下引き層におい
て、膜厚を0.3μmに変更した以外は実施例1と同様
にして感光体を作成した。
【0082】(実施例9)実施例1の下引き層におい
て、膜厚を0.5μmに変更した以外は実施例1と同様
にして感光体を作成した。
【0083】(実施例10)実施例1の下引き層におい
て、膜厚を5μmに変更した以外は実施例1と同様にし
て感光体を作成した。
【0084】(実施例11)実施例1の下引き層におい
て、膜厚を7μmに変更した以外は実施例1と同様にし
て感光体を作成した。
【0085】実施例1,8〜11の感光体を前記複写機
に装着して、同様の耐刷試験を行った結果を表3に示
す。下引き層の膜厚を0.5,2,5μmとした実施例
1,9,10の下引き層を有する感光体は、実施例8,
11に比べて繰返し使用時に高い電位安定性を示すこと
が分かった。
【0086】
【表3】
【0087】以上の評価結果から、膜厚が0.5〜5μ
mの範囲の下引き層を有する感光体において、高感度で
かつ特に繰返し使用時に高い電位安定性を示すことが分
かった。
【0088】(実施例12)実施例1の下引き層用塗工
液の酸化チタンを3重量部の酸化チタン TTO−55
N(表面未処理、酸化チタン成分:98%、石原産業社
製)に変更した以外は実施例1と同様にして感光体を作
成した。
【0089】(実施例13)実施例1の下引き層用塗工
液の酸化チタンを3重量部の酸化チタン TTO−55
C(アルミナ+ステアリン酸表面処理、酸化チタン成
分:89%、石原産業社製)に変更した以外は実施例1
と同様にして感光体を作成した。なお、ステアリン酸表
面処理によって、分散性を向上することができ、画像欠
陥の発生を抑制することができる。
【0090】(実施例14)実施例1の下引き層用塗工
液の酸化チタンを3重量部の酸化チタン TTO−55
A(アルミナ表面処理、酸化チタン成分:96%、石原
産業社製)に変更した以外は実施例1と同様にして感光
体を作成した。
【0091】(実施例15)実施例1の電荷発生層用塗
工液の塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体を
2重量部のエポキシ樹脂 BPO−20E(理研化学社
製)に変更した以外は実施例1と同様にして感光体を作
成した。
【0092】(実施例16)実施例1の下引き層用塗工
液の水溶性ポリビニルアセタール樹脂を3重量部の水溶
性ポリビニルアセタール樹脂 KW−10(積水化学工
業社製)に変更した以外は実施例1と同様にして感光体
を作成した。なお、実施例1の水溶性ポリビニルアセタ
ール樹脂 KW−1のナトリウムイオン含有量が40p
pmであるのに対して、実施例16の水溶性ポリビニル
アセタール樹脂 KW−10のナトリウムイオン含有量
は2000ppmである。
【0093】実施例1,12〜16の感光体を前記複写
機に装着して、同様の耐刷試験を行った結果を表4に示
す。また、実施例1,12〜16の感光体を前記複写機
に装着して反転現像方式で全面白色である白ベタ画像を
形成したところ、実施例1,13では欠陥のない画像が
得られ、実施例12,14では黒い斑点状の欠陥を若干
有する画像が得られ、実施例15,16では黒い斑点状
の欠陥を有する画像が得られた。
【0094】
【表4】
【0095】以上の結果から、アルミナ処理を施した酸
化チタンを含有する下引き層、酸化チタン成分(純度)
が95%以下の酸化チタンを含有する下引き層、塩化ビ
ニル−酢酸ビニル系共重合体を含有する電荷発生層、ナ
トリウムイオン濃度が40ppm以下の水溶性ポリビニ
ルアセタール樹脂を含有する下引き層を有する感光体
は、感度、繰返し使用における電位安定性および画像欠
陥の点で特に優れていることが分かった。
【0096】(実施例17)直径65mm、長さ332
mmのアルミニウム製ドラムを準備した。3重量部の酸
化チタン TTO−55B(アルミナ表面処理、酸化チ
タン成分:91%、石原産業社製)と、3重量部の水溶
性ポリビニルアセタール樹脂 KW−1(積水化学工業
社製)と、5重量部の水と、95重量部のメタノールと
を混合し、ペイントシェーカで10時間分散し、下引き
層用塗工液を調整した。ドラムを下引き層用塗工液に浸
漬し、引き上げた後、120℃で20分乾燥し、ドラム
上に膜厚2μmの下引き層を形成した。なお、水溶性ポ
リビニルアセタール樹脂 KW−1は実際は水溶液であ
るが、固形分の重量を記している。
【0097】(実施例18)実施例17の下引き層用塗
工液の水およびメタノールの量をそれぞれ10および9
0重量部に変更した以外は実施例17と同様にして下引
き層を形成した。
【0098】(実施例19)実施例17の下引き層用塗
工液の水およびメタノールの量をそれぞれ70および3
0重量部に変更した以外は実施例17と同様にして下引
き層を形成した。
【0099】(実施例20)実施例17の下引き層用塗
工液の水およびメタノールの量をそれぞれ80および2
0重量部に変更した以外は実施例17と同様にして下引
き層を形成した。
【0100】(実施例21)実施例17の下引き層用塗
工液の水およびメタノールを、100重量部の水に変更
し、メタノールを用いなかった以外は実施例17と同様
にして下引き層を形成した。
【0101】実施例17〜21で作成した下引き層を目
視にて観察したところ、実施例17では樹脂が完全に溶
解せず、塗工欠陥が生じ、実施例18,19では欠陥の
ない塗膜が得られ、実施例20では顔料の分散が不充分
で塗膜欠陥が生じ、実施例21ではドラムが塗工液をは
じいたような塗膜欠陥が一部に生じた。以上の評価結果
から、下引き層の分散媒としては、水とアルコールとの
混合溶剤が好ましいことが分かった。特に、水とアルコ
ールとの混合比率は、重量比で、水/アルコール=1/
9〜7/3の範囲が好ましいことが分かった。
【0102】(実施例22)直径65mm、長さ332
mmのアルミニウム製ドラムを準備した。3重量部の酸
化チタン TTO−55B(アルミナ表面処理、酸化チ
タン成分:91%、石原産業社製)と、3重量部の水/
アルコール可溶性ポリビニルアセタール樹脂KX−1精
製品(積水化学工業社製)と、60重量部の水と、40
重量部のイソプロピルアルコールとを混合し、ペイント
シェーカで10時間分散し、下引き層用塗工液を調整し
た。ドラムを下引き層用塗工液に浸漬し、引き上げた
後、120℃で20分乾燥し、ドラム上に膜厚2μmの
下引き層を形成した。なお、水/アルコール可溶性ポリ
ビニルアセタール樹脂 KX−1は、水/アルコール混
合溶剤にしか溶けず、実際は水/アルコール溶液である
が、固形分の重量を記している。また、KX−1精製品
とは、KX−1を精製してナトリウムイオン濃度を40
ppm以下にしたものである。
【0103】次に、2重量部のチタニルフタロシアニン
と、2重量部の塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコ
ール共重合体 SOLBIN A(日信化学工業社製)
と、100重量部のMEKとを混合し、ペイントシェー
カで2時間分散し、電荷発生層用塗工液を調整した。下
引き層が形成されたドラムを電荷発生層用塗工液に浸漬
し、引き上げた後、80℃で10分乾燥し、下引き層上
に膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。さらに、8
重量部の
【0104】
【化2】
【0105】で表される電荷輸送物質と、10重量部の
ポリカーボネート樹脂 K1300(帝人化成社製)
と、0.002重量部のシリコンオイル KF50(信
越化学社製)と、120重量部のジクロロメタンとを混
合し、撹拌して溶解し、電荷輸送層用塗工液を調整し
た。電荷発生層が形成されたドラムを電荷輸送層用塗工
液に浸漬し、引き上げた後、120℃で20分乾燥し、
電荷発生層上に膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。
このようにして感光体を作成した。
【0106】(実施例23)実施例22の下引き層用塗
工液に代わって、3重量部の酸化亜鉛 FINEX−2
5(堺化学社製)と、3重量部の水/アルコール可溶性
ポリビニルアセタール樹脂 KX−1精製品(積水化学
工業社製)と、60重量部の水と、40重量部のイソプ
ロピルアルコールとの混合液を使用した以外は実施例2
2と同様にして感光体を作成した。
【0107】(比較例4)実施例22の下引き層用塗工
液に代わって、6重量部の水/アルコール可溶性ポリビ
ニルアセタール樹脂 KX−1精製品(積水化学工業社
製)と、60重量部の水と、40重量部のイソプロピル
アルコールとの混合液を使用した以外は実施例22と同
様にして感光体を作成した。なお、該塗工液はスターラ
で撹拌した。
【0108】(比較例5)実施例22の下引き層用塗工
液に代わって、3重量部の酸化チタン TTO−55B
(アルミナ表面処理、酸化チタン成分:91%、石原産
業社製)と、3重量部のアルコール可溶性ナイロン樹脂
CM4000(東レ社製)と、80重量部のメタノー
ルと、20重量部のn−ブタノールとの混合液を使用し
た以外は実施例22と同様にして感光体を作成した。
【0109】(比較例6)実施例22の下引き層用塗工
液に代わって、3重量部の酸化亜鉛 FINEX−25
(堺化学社製)と、3重量部のアルコール可溶性ナイロ
ン樹脂 CM4000(東レ社製)と、80重量部のメ
タノールと、20重量部のn−ブタノールとの混合液を
使用した以外は実施例22と同様にして感光体を作成し
た。
【0110】実施例22,23および比較例4〜6の感
光体を前記複写機に装着して、同様の耐刷試験を行った
結果を表5に示す。また、実施例22および比較例4の
感光体を前記複写機に装着して反転現像方式で全面白色
である白ベタ画像を形成したところ、実施例22では欠
陥のない画像が得られたが、比較例4では黒い斑点状の
欠陥を若干有する画像が得られた。
【0111】
【表5】
【0112】以上の評価結果から、実施例22,23、
すなわち水/アルコール可溶性ポリビニルアセタールと
無機顔料とを含有する下引き層を有する感光体は、比較
例4の水/アルコール可溶性ポリビニルアセタールを含
有し、無機顔料を含有しない下引き層を有する感光体、
および比較例5,6のアルコール可溶性ナイロン樹脂と
無機顔料とを含有する下引き層を有する感光体に比べ
て、繰返し使用時の電位安定性が優れていることが分か
った。特に、実施例22の酸化チタンを含有するもの
は、実施例23の酸化亜鉛を含有するものよりも優れた
感度を有することが分かった。
【0113】(実施例24)実施例22の下引き層用塗
工液の酸化チタンを0.3重量部に、水/アルコール可
溶性ポリビニルアセタール樹脂を5.7重量部にそれぞ
れ変更した以外は実施例22と同様にして感光体を作成
した。
【0114】(実施例25)実施例22の下引き層用塗
工液の酸化チタンを0.6重量部に、水/アルコール可
溶性ポリビニルアセタール樹脂を5.4重量部にそれぞ
れ変更した以外は実施例22と同様にして感光体を作成
した。
【0115】(実施例26)実施例22の下引き層用塗
工液の酸化チタンを5.4重量部に、水/アルコール可
溶性ポリビニルアセタール樹脂を0.6重量部にそれぞ
れ変更した以外は実施例22と同様にして感光体を作成
した。
【0116】(実施例27)実施例22の下引き層用塗
工液の酸化チタンを5.7重量部に、水/アルコール可
溶性ポリビニルアセタール樹脂を0.3重量部にそれぞ
れ変更した以外は実施例22と同様にして感光体を作成
した。
【0117】実施例22,24〜27の感光体を前記複
写機に装着して、同様の耐刷試験を行った結果を表6に
示す。酸化チタンと水/アルコール可溶性ポリビニルア
セタール樹脂との比率を、重量比で、酸化チタン/(水
/アルコール)可溶性ポリビニルアセタール樹脂=1/
9,1/1,9/1とした下引き層を有する感光体にお
いて、繰返し使用時に高い電位安定性を示すことが分か
った。
【0118】
【表6】
【0119】以上の評価結果から、酸化チタン/(水/
アルコール)可溶性ポリビニルアセタール樹脂=1/9
〜9/1(重量比)の範囲の下引き層を有する感光体に
おいて、高感度でかつ特に繰返し使用時に高い電位安定
性を示すことが分かった。
【0120】(実施例28)実施例22の下引き層にお
いて、膜厚を0.3μmに変更した以外は実施例22と
同様にして感光体を作成した。
【0121】(実施例29)実施例22の下引き層にお
いて、膜厚を0.5μmに変更した以外は実施例22と
同様にして感光体を作成した。
【0122】(実施例30)実施例22の下引き層にお
いて、膜厚を5μmに変更した以外は実施例22と同様
にして感光体を作成した。
【0123】(実施例31)実施例22の下引き層にお
いて、膜厚を7μmに変更した以外は実施例22と同様
にして感光体を作成した。
【0124】実施例22,28〜31の感光体を前記複
写機に装着して、同様の耐刷試験を行った結果を表7に
示す。下引き層の膜厚を0.5,2,5μmとした実施
例22,29,30の下引き層を有する感光体は、実施
例28,31の下引き層を有する感光体に比べて繰返し
使用時に高い電位安定性を示すことが分かった。
【0125】
【表7】
【0126】以上の評価結果から、膜厚が0.5〜5μ
mの範囲の下引き層を有する感光体において、高感度で
かつ特に繰返し使用時に高い電位安定性を示すことが分
かった。
【0127】(実施例32)実施例22の下引き層用塗
工液の酸化チタンを、3重量部の酸化チタン TTO−
55N(表面未処理、酸化チタン成分:98%、石原産
業社製)に変更した以外は実施例22と同様にして感光
体を作成した。
【0128】(実施例33)実施例22の下引き層用塗
工液の酸化チタンを、3重量部の酸化チタン TTO−
55C(アルミナ+ステアリン酸表面処理、酸化チタン
成分:89%、石原産業社製)に変更した以外は実施例
22と同様にして感光体を作成した。
【0129】(実施例34)実施例22の下引き層用塗
工液の酸化チタンを、3重量部の酸化チタン TTO−
55A(アルミナ表面処理、酸化チタン成分:96%、
石原産業社製)に変更した以外は実施例22と同様にし
て感光体を作成した。
【0130】(実施例35)実施例22の電荷発生層用
塗工液の塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共
重合体を2重量部のエポキシ樹脂 BPO−20E(理
研化学社製)に変更した以外は実施例22と同様にして
感光体を作成した。
【0131】(実施例36)実施例1の下引き層用塗工
液の水/アルコール可溶性ポリビニルアセタール樹脂を
3重量部の水/アルコール可溶性ポリビニルアセタール
樹脂 KX−1(積水化学工業社製)に変更した以外は
実施例22と同様にして感光体を作成した。なお、実施
例22の水/アルコール可溶性ポリビニルアセタール樹
脂 KX−1精製品のナトリウムイオン含有量が40p
pmであるのに対して、実施例36の水/アルコール可
溶性ポリビニルアセタール樹脂 KX−1のナトリウム
イオン含有量は2000ppmである。
【0132】実施例22,32〜36の感光体を前記複
写機に装着して、同様の耐刷試験を行った結果を表8に
示す。また、実施例22,32〜36の感光体を前記複
写機に装着して反転現像方式で全面白色である白ベタ画
像を形成したところ、実施例22,33では欠陥のない
画像が得られ、実施例32,34では黒い斑点状の欠陥
を若干有する画像が得られ、実施例35,36では黒い
斑点状の欠陥を有する画像が得られた。
【0133】
【表8】
【0134】以上の評価結果から、アルミナ処理を施し
た酸化チタンを含有する下引き層、酸化チタン成分(純
度)が95%以下の酸化チタンを含有する下引き層、塩
化ビニル−酢酸ビニル系共重合体を含有する電荷発生
層、ナトリウムイオン濃度が40ppm以下の樹脂を含
有する下引き層を有する感光体は、感度、繰返し使用に
おける電位安定性および画像欠陥の点で特に優れている
ことが分かった。
【0135】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、電子写真
感光体において導電性支持体と光導電層との間に水溶性
ポリビニルアセタールと無機顔料とを含有する下引き層
を設けた。また、水とアルコールとの混合溶剤のみに可
溶のポリビニルアセタールと無機顔料とを含有する下引
き層を設けた。したがって、高い感度が得られ、かつ繰
返し使用時の静電的な安定性を向上することができる。
特に、無機顔料として酸化チタンを選ぶこと、水溶性ポ
リビニルアセタールまたは水とアルコールとの混合溶剤
のみに可溶のポリビニルアセタールと酸化チタンとの重
量比を1/9〜9/1の範囲に選ぶこと、下引き層の膜
厚を0.5〜5μmの範囲に選ぶこと、表面処理が施さ
れた酸化チタンを用いること、表面処理としてアルミナ
処理を施すこと、95重量%以下の範囲で酸化チタン成
分が含まれている表面処理が施された酸化チタンを用い
ること、ナトリウムイオン濃度が40ppm以下である
水溶性ポリビニルアセタールまたは水とアルコールとの
混合溶剤のみに可溶のポリビニルアセタールを用いるこ
と、および塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体を含有す
る光導電層を用いることによって、高感度で、かつ繰返
し使用時において優れた静電的安定性が得られる。
【0136】また本発明によれば、導電性支持体上に水
溶性ポリビニルアセタール、無機顔料および水とアルコ
ールとの混合溶剤を含む下引き層用塗工液を塗布して下
引き層を形成し、さらに光導電層を形成する。また、水
とアルコールとの混合溶剤のみに可溶のポリビニルアセ
タール、無機顔料および水とアルコールとの混合溶剤を
含む下引き層用塗工液を塗布して下引き層を形成し、さ
らに光導電層を形成する。このような下引き層用塗工液
は分散性が高く、したがって均一な下引き層が形成で
き、高い感度が得られ、かつ繰返し使用時の静電的安定
性の低下が抑制できる。特に、水とアルコールとの混合
割合を重量比で1/9〜7/3の範囲に選ぶことによっ
て、さらに均一な下引き層が形成でき、繰返し使用時の
静電的安定性の低下がさらに抑制できる。
【0137】また本発明によれば、上述したような感光
体を反転現像プロセスで画像を形成する画像形成装置に
適用することによって欠陥の少ない高い画像特性の画像
が形成できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G03G 5/05 102 G03G 5/05 102 (72)発明者 川原 在彦 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 森田 和茂 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 金澤 朋子 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性支持体上に下引き層を介して光導
    電層を有する電子写真感光体において、 前記下引き層は、無機顔料と水溶性ポリビニルアセター
    ルとを含有することを特徴とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 前記無機顔料として酸化チタンが選ばれ
    ることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 前記酸化チタンと水溶性ポリビニルアセ
    タールとの重量比が、酸化チタン/水溶性ポリビニルア
    セタールで1/9〜9/1の範囲であることを特徴とす
    る請求項2記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】 前記酸化チタンにはアルミナ処理が施さ
    れていることを特徴とする請求項2記載の電子写真感光
    体。
  5. 【請求項5】 前記水溶性ポリビニルアセタール中のナ
    トリウムイオン濃度が40ppm以下であることを特徴
    とする請求項1記載の電子写真感光体。
  6. 【請求項6】 前記光導電層は、塩化ビニル−酢酸ビニ
    ル系共重合体を含有することを特徴とする請求項1記載
    の電子写真感光体。
  7. 【請求項7】 導電性支持体上に下引き層を介して光導
    電層を有する電子写真感光体の製造方法であって、下引
    き層用の塗工液を塗布して下引き層を形成する電子写真
    感光体の製造方法において、 前記下引き層用塗工液は、無機顔料、水溶性ポリビニル
    アセタール、および水とアルコールとの混合溶剤を含む
    ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  8. 【請求項8】 水とアルコールとの前記混合溶剤の重量
    比が、水/アルコールで1/9〜7/3の範囲であるこ
    とを特徴とする請求項7記載の電子写真感光体の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 導電性支持体上に下引き層を介して光導
    電層を有する電子写真感光体において、 前記下引き層は、無機顔料および水とアルコールとの混
    合溶剤のみに可溶のポリビニルアセタールを含有するこ
    とを特徴とする電子写真感光体。
  10. 【請求項10】 前記無機顔料として酸化チタンが選ば
    れることを特徴とする請求項9記載の電子写真感光体。
  11. 【請求項11】 酸化チタンと水とアルコールとの混合
    溶剤のみに可溶の前記ポリビニルアセタールとの重量比
    が、酸化チタン/ポリビニルアセタールで1/9〜9/
    1の範囲であることを特徴とする請求項10記載の電子
    写真感光体。
  12. 【請求項12】 前記酸化チタンにはアルミナ処理が施
    されていることを特徴とする請求項10記載の電子写真
    感光体。
  13. 【請求項13】 水とアルコールとの混合溶剤のみに可
    溶の前記ポリビニルアセタール中のナトリウムイオン濃
    度が40ppm以下であることを特徴とする請求項9記
    載の電子写真感光体。
  14. 【請求項14】 前記光導電層は、塩化ビニル−酢酸ビ
    ニル系共重合体を含有することを特徴とする請求項9記
    載の電子写真感光体。
  15. 【請求項15】 電子写真感光体を用い、反転現像プロ
    セスで画像を形成する画像形成装置において、 前記電子写真感光体は、請求項5または13に記載の電
    子写真感光体であることを特徴とする電子写真感光体を
    用いた画像形成装置。
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