【発明の詳細な説明】
高耐熱性ニッケル基合金及びその用途
本発明は高耐熱性ニッケル基合金に関する。750℃から1200℃までの温
度範囲に、特に繰り返し暴露され耐炭化性及び耐酸化性を要求される物品には2
.4658の材質番号のニッケル合金が使用されている。この合金は,NiCr
7030との記号を有し、1992年鋼規格によると(質量%によるデータ):
炭素−最大0.10,けい素−0.50から2.00,マンガン−最大1.0,
りん−最大0.020,硫黄−最大0.015,クロム−29.0から32.0
,ニッケル−最小60.0.アルミニウム−最大0.3,鉄−最大5.0,及び
銅−最大0.50からなる。C−0.05から0.15%,Si−2.5から3
%,Mn−0.2から0.5%,Cr−25から30%、Al−0.05から0
.15%及び低含有量のP及びSからなる比較的安価な耐熱性ニッケル基合金が
DE−PS 41 30 139より公知である。この合金はFe−20から2
7%及びN−0.05から0.2%も含み、さらに希土類−0.05から0.1
5%及びCa0.001から0.005%を含む。この合金は多くの用途におけ
る要求を満足する。この公知の合金は500℃から1000℃までの使用温度に
おける耐炭化性、耐硫化性及び耐酸化性をもち、また熱間成形性をもつことを特
徴とする。しかし、750℃から1200℃の温度範囲において耐熱性及び対時
間クリープ強度が比較的低い。これが、例えば炉及び設備の構造に実用した際寿
命に不都合な影響を及ぼすことがある。
上述のニッケル基合金は鉄含有量が高いためにニッケル含有量を高めた鉄基合
金が検討されている。なおUS−PS 5 077 066号の鉄基モリブデン
添加材料はCr−2から32%、Ni8から62%を含有し、さらにW、Cb,
Ti,Zr及び希土類の添加元素を含有し、さらに任意添加元素としてB0.0
5%も含有しており、この材料もニッケルを多くしている。
さらに、EP−OS 0 391 381から、Cr23から30%、Ni(
部分的にCoにより置換可能)40から55%を含有する炭素リッチ耐熱性鉄基
合金は公知である。この合金は0.2%以下のN及び1%未満のNb,Ti,Z
rを含有し、さらに少量のAl,Ca,B及びYを含有することができる。チタ
ンと窒素の協同作用の結果到達したクリープ強度は高いが、熱間及び冷間成形性
は犠牲にされている。
高い使用温度における耐久性に対する一般的要求はニッケル基合金によってよ
り良く達成されるのが通常であるので、本発明はニッケル基合金に基づいている
。
本発明は、酸化条件及び炭化条件において何ら制限なく使用することができる
ニッケル基合金を提供すること目的であり、特に、750℃から1200℃の温
度範囲に繰返し暴露された際に、十分な耐熱性を有しまた対時間クリープ強度が
十分であり、また、装置や器具などの加工製品の製造の際に要求される熱間成形
性及び冷間成形性も考慮したニッケル基合金を提供することを目的とする。別の
目的は合金の用途を提供することである。
この目的は、耐酸化性及び耐熱性が高く、熱間成形性及び冷間成形性が可能な
高窒素化ニッケル基合金であって(質量%)で
炭素 :0.001から0.15%
けい素 :0.10 から3.0%
マンガン :最大0.5%
りん :最大0.015%
硫黄 :最大0.005%
クロム :25から35%,
鉄 :最大5.0%
アルミニウム:最大0.3%
窒素 :0.25から1.2%,
ほう素 :0.001から0.01%,
イットリウム、セリウム、ランタン、ジルコニウム、ハフニウム及びタンタル
を単独もしくは組合わせて:0.1から0.5%を含有し,残部は少なくとも6
4.0%のニッケル及び溶解法に起因する通常の不純物からなる合金により達成
される。
窒素含有量は0.35から0.8%が好ましく、かつ/または合金のクロム含
有量は28から33%,及び2%未満の比較的低い鉄含有量が好ましい。
本発明に係るニッケル基合金は、750℃から1200℃の温度範囲に繰返し
暴露されても耐酸化性及び耐炭化性をもつことが必要な物品の素材に非常に適し
ている。したがって、本発明の合金は、ガスタービン材料を提供し、また航空機
工業用も目標としている。また、本発明の合金は、燃焼キルンの支持フレーム、
コンベヤレール、コンベヤベルト及び熱処理装置などの加熱炉要素を製造する素
材であり、また熱導体として適している。
高温になる鋳造部品に用いるニッケル基合金は当然加圧鋳造で製造することを
考慮している。
窒素含有量が0.25から1.20重量%のニッケル基合金は、液体状態で窒
化クロム及び/又は窒化けい素などの窒素坦体を添加するか、あるいは加圧冶金
を利用して窒素ガス加圧することにより、製造可能である。高窒素化鋼、すなわ
ち1600℃及び1バールの窒素圧力における臨界しきい値を超える窒素含有量
をもつ鋼を製造するためには公知の加圧エレクトロスラグ製造法が特に適してい
る(特許明細書DE 29 24 415 C2を参照)。この方法では窒化さ
れるべき鋼は、液体条件から完全凝固までの全再溶解プロセスで高圧処理される
。
この方法を本発明に係る高窒素化ニッケル基合金を製造するためにも使用する
ことが有利であることが分かった。
加圧下で溶解及び鋳造を行うすべての冶金的方法が本発明に係る合金を製造す
るのに適している。
適切な鋳造方法を使用すると、本発明に係るニッケル基合金から鋳造部品もし
くは素子を製造することができる。
以下、実施例によりさらに詳細に本発明に係るニッケル基合金を説明する。又
請求されている合金範囲を以下説明する。
炭素(C):
固溶体強化及び析出強化により炭素は材料の耐熱性及び対時間クリープ強度の
増大をもたらす。分析範囲の下限は、耐熱性及び対時間クリープ強度を改善する
炭素の作用が減少することで規定され、一方0.15重量%の上限は炭素量が増
大すると冷間成形性の制約が大きなることで規定される。
けい素(Si):
けい素は本材料においては脱酸剤として使用されているのみならず、窒化硬化
が大きい合金において窒素坦体として、また耐酸化性改善のためにも使用される
。特に耐繰返し酸化性は3重量%以下のけい素により著しく改善することができ
る。含有量がより多いと熱間成形挙動に関し有害な作用があり、一方0.10重
量%より少ない含有量では効果がないことが分かった。
クロム(Cr):
クロムを添加すると合金の耐酸化性が著しく改善される。同時にクロムは、ニ
ッケル中の窒素溶解度を増大させる。窒素含有量がかなり高いことと相まって窒
化クロムの析出が起こり、合金の対時間クリープ強度を持続的に改善する。
クロム含有量が35重量%を超えると熱間成形性が損なわれ、一方25重量%
で未満であると窒化クロムの析出量が十分ではないために、25重量%と35重
量%の間の含有量が最適であることが分かった。
窒素(N):
合金に窒素を添加すると、固溶体強化により耐熱性が向上しまた窒化クロムの
析出により対時間クリープ強度も向上する。
しかし、窒素含有量が0.25雷量%未満であると、合金の強度増大は期待さ
れない。1.20重量%を超える窒素含有量は冶金的に可能であるが、含有量を
正確に調整するために多大の努力が必要であるので、本発明においては0.25
重量%と1.20重量%の間の窒素含有量が望ましいことが分かった。
ホウ素(B):
合金にホウ素を0.010重量%まで添加すると対時間クリープ強度は増大す
る。ホウ素含有量がより高くなると、低融点相が結晶粒界が形成されるために熱
間成形性が低下する。含有量が0.001重量%未満であると効果がないことが
分かった。
ニッケル(Ni):
ニッケルの添加は、合金の耐酸化性のみならず耐炭化性に好ましい影響を与え
る。これは、特にニッケルとクロムが同時に存在するとニッケル−クロムスピネ
ル形成による。少なくとも64%のニッケル含有量が必須であるのはこの理由か
らではなく、この含有量を超えて十分な量のクロム窒化物が析出することが対時
間クリープ強度のために必須であるとの理由にのみである。
イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、ジルコニウム( Zr)、ハフニウム(Hf)及びタンタル(Ta)
:
これらの元素はすべて合金の熱間成形性を改良するのに有効である。
この理由により上記合金元素の少なくとも1種が、上記合金に過酷な熱間成形
操作を施す場合は、存在しなければならない。一方1種もしは数種の合金元素の
含有量が0.
50重量%を超えると熱間加工性に有害である。
イットリウム、セリウム、ランタン、ジルコニウム、ハフニウム及びタンタル
は単独及び組合わせると、合金の繰返し耐酸化性が著しく改善される。
以下、ニッケル基合金1から7を公知の標準合金8から11に比較してより詳
しく説明する。
合金1から11の実際の分析値は表1に示す。
図1は、本発明に係る合金1から7の一定温度1000℃における対時間クリ
ープ強度を標準的合金8から11に対比して示す。なお1000℃は後者の合金
の用途において典型的な温度である。この図では縦軸に引張り応力N/mm2を
示し、試料がこの応力を受けた時間は対数で横軸に示す。
合金1から7と合金8から11について二つの拡張帯状領域があるが、この領
域内に個々の合金の破断点が含まれている。本発明に係る合金1から7の対時間
クリープ強度が標準的合金8から11に比べて優れているのは、合金1から7の
拡張帯が高応力側に変位していることより明らかである。本発明に係る合金1か
ら7は標準的合金8から11に比べて約2.5倍高い対時間クリープ強度を達成
している。
図2は、本発明に係る合金1から7の耐熱性を標準的合金8から11に対比し
て示す。
この図では横軸の試験温度℃に対して引張強度N/mm2を縦軸に示す。
本発明に係る合金1から7の耐熱性を標準的合金8から11に対比すると、室
温から1200℃までの温度範囲全体で耐熱性が高い拡張帯領域内にある。
酸化試験の結果、窒素を合金元素として添加しても窒素を添加しない標準的合
金に比べて耐酸化性は劣化しないことが分かった。他方、標準的合金及び本発明
の合金は、750℃、1000℃及び1200℃での測定値は拡張帯状領域内で
変動していた。
図3は、本発明に係る合金1から7の繰返し耐酸化性を、750℃、1000
℃及び1200℃での測定温度について耐熱性を標準的合金8から11に対比し
て示す。図は質量変化g/m2hを試験時間及び試料表面積で標準化して示す。
試験は大気中で、試験時間での保持16時間、加熱2時間及び冷却6時間の24
時間の周期を繰返して行った。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年8月31日
【補正内容】
請求の範囲
1.質量%で、
炭素 :0.001から0.15%
けい素 :0.10 から3.0%
マンガン :最大0.5%
りん :最大0.015%
硫黄 :最大0.005%
クロム :28から33%,
鉄 :最大2.0%
アルミニウム:最大0.3%
窒素 :0.25から1.2%,
ほう素 :0.001から0.01%,
イットリウム、セリウム、ランタン、ジルコニウム、ハフニウム及びタンタ
ルを単独もしくは組合わせて:0.01から0.5%を含有し,残部ニッケル及
び溶解法に起因する通常の不純物からなり、ニッケル含有量は少なくとも64.
0%であり、750℃から1200℃までの温度範囲に、特に繰り返し暴露され
ても耐炭化性及び耐熱性が高く、熱間成形性及び冷間成形性が可能な高窒素化ニ
ッケル基合金。
2.窒素含有量が0.35から0.8%である請求項1記載のニッケル基合金。
3.請求項1又は2に記載されたニッケル基合金を、固定もしくは回転ガスター
ビンの材材料、燃焼キルンの支持フレーム、コンベヤレール、コンベヤベルト、
熱処理装置、熱導体及びダイカスト部品に使用する用途。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1996年2月8日
【補正内容】
明細書
高耐熱性ニッケル基合金及びその用途
本発明は高耐熱性ニッケル基合金に関する。750℃から1200℃までの温
度範囲に、特に繰り返し暴露され耐炭化性及び耐酸化性を要求される物品には2
.4658の材質番号のニッケル合金が使用されている。この合金は,NiCr
7030との記号を有し、1992年鋼規格によると(質量%によるデータ):
炭素−最大0.10,けい素−0.50から2.00,マンガン−最大1.0,
りん−最大0.020,硫黄−最大0.015,クロム−29.0から32.0
,ニッケル−最小60.0.アルミニウム−最大0.3,鉄−最大5.0,及び
銅−最大0.50からなる。C−0.05から0.15%,Si−2.5から3
%,Mn−0.2から0.5%,Cr−25から30%、Al−0.05から0
.15%及び低含有量のP及びSからなる比較的安価な耐熱性ニッケル基合金が
DE−PS 41 30 139より公知である。この合金はFe−20から2
7%及びN−0.05から0.2%も含み、さらに希土類−0.05から0.1
5%及びCa0.001から0.005%を含む。この合金は多くの用途におけ
る要求を満足する。この公知の合金は500℃から1000℃までの使用温度に
おける耐炭化性、耐硫化性及び耐酸化性をもち、また熱間成形性をもつことを特
徴とする。しかし、750℃から1200℃の温度範囲において耐熱性及び対時
間クリープ強度が比較的低い。これが、例えば炉及び設備の構造に実用した際寿
命に不都合な影響を及ぼすことがある。
上述のニッケル基合金は鉄含有量が高いためにニッケル含有量を高めた鉄基合
金が検討されている。なおUS−PS 5 077 066号の鉄基モリブデン
添加材料はCr−2から32%、Ni8から62%を含有し、さらにW、Cb,
Ti,Zr及び希土類の添加元素を含有し、さらに任意添加元素としてB0.0
5%も含有しており、この材料もニッケルを多くしている。
さらに、EP−OS 0 391 381から、Cr23から30%、Ni(
部分的にCoにより置換可能)40から55%を含有する炭素リッチ耐熱性鉄基
合金は公知である。この合金は0.2%以下のN及び1%未満のNb,Ti,Z
rを含有し、さらに少量のAl,Ca,B及びYを含有することができる。チタ
ンと窒素の協同作用の結果到達したクリープ強度は高いが、熱間及び冷間成形性
は犠牲にされている。
高い使用温度における耐久性に対する一般的要求はニッケル基合金によってよ
り良く達成されるのが通常であるので、本発明はニッケル基合金に基づいている
。
本発明は、酸化条件及び炭化条件において何ら制限なく使用することができる
ニッケル基合金を提供することが目的であり、特に、750℃から1200℃の
温度範囲に繰返し暴露された際に、十分な耐熱性を有しまた対時間クリープ強度
が十分であり、また、装置や器具などの加工製品の製造の際に要求される熱間成
形性及び冷間成形性も考慮したニッケル基合金を提供することを目的とする。別
の目的は合金の用途を提供することである。
この目的は、耐酸化性及び耐熱性が高く、熱間成形性及び冷間成形性が可能な
高窒素化ニッケル基合金であって(質量%)で、
炭素 :0.001から0.15%
けい素 :0.10 から3.0%
マンガン :最大0.5%
りん :最大0.015%
硫黄 :最大0.005%
クロム :28から33%,
鉄 :最大2.0%
アルミニウム:最大0.3%
窒素 :0.25から1.2%,
ほう素 :0.001から0.01%,
イットリウム、セリウム、ランタン、ジルコニウム、ハフニウム及びタンタル
を単独もしくは組合わせて:0.01から0.5%を含有し,残部は少なくとも
64.0%のニッケル及び溶解法に起因する通常の不純物からなる合金により達
成される。
窒素含有量は0.35から0.8%が好ましい。
本発明に係るニッケル基合金は、750℃から1200℃の温度範囲に繰返し
暴露されても耐酸化注及び耐炭化性をもつことが必要な物品の素材に非常に適し
ている。したがって、本発明の合金は、ガスタービン材料を提供し、また航空機
工業用も目標としている。また、本発明の合金は、燃焼キルンの支持フレーム、
コンベヤレール、コンベヤベルト及び熱処理装置などの加熱炉要素を製造する素
材でありまた熱導体に適している。
高温になる鋳造部品に用いるニッケル基合金は当然加圧鋳造で製造することを
考慮して
いる。
窒素含有量が0.25から1.20重量%のニッケル基合金は、液休状態で窒
化クロム及び/又は窒化けい素などの窒素坦体を添加するか、あるいは加圧冶金
を利用して窒素ガス加圧することにより、製造可能である。高窒素化鋼、すなわ
ち1600℃及び1バールの窒素圧力における臨界しきい値を超える窒素含有量
をもつ鋼を製造するためには公知の加圧エレクトロスラグ製造法が特に適してい
る(特許明細書DE 29 24 415 C2を参照)。この方法では窒化さ
れるべき鋼は、液体条件から完全凝固までの全再溶解プロセスで高圧処理される
。
この方法を本発明に係る高窒素化ニッケル基合金を製造するためにも使用する
ことが有利であることが分かった。
加圧下で溶解及び鋳造を行うすべての冶金的方法が本発明に係る合金を製造す
るのに適している。
適切な鋳造方法を使用すると、本発明に係るニッケル基合金から鋳造部品もし
くは素子を製造することができる。
以下、実施例によりさらに詳細に本発明に係るニッケル基合金を説明する。又
請求されている合金範囲を以下説明する。
炭素(C):
固溶体強化及び析出強化により炭素は材料の耐熱性及び対時間クリープ強度の
増大をもたらす。分析範囲の下限は、耐熱性及び対時間クリープ強度を改善する
炭素の作用が減少することで規定され、一方0.15重量%の上限は炭素量が増
大すると冷間成形性の制約が大きなることで規定される。
けい素(Si):
けい素は本材料においては脱酸剤として使用されているのみならず、窒化硬化
が大きい合金において窒素坦体として、また耐酸化性改善のためにも使用される
。特に耐繰返し酸化性は3重量%以下のけい素により著しく改善することができ
る。含有量がより多いと熱間成形挙動に関し有害な作用があり、一方0.10重
量%より少ない含有量では効果がないことが分かった。
クロム(Cr):
クロムを添加すると合金の耐酸化性が著しく改善される。同時にクロムは、ニ
ッケル中
の窒素溶解度を増大させる。窒素含有量がかなり高いことと相まって窒化クロム
の析出が起こり、合金の対時間クリープ強度を持続的に改善する。
クロム含有量が33重量%を超えると熱間成形性が損なわれ、一方28重量%
で未満であると窒化クロムの析出量が十分ではないために、28重量%と33重
量%の間の含有量が最適であることが分かった。
窒素(N):
合金に窒素を添加すると、固溶体強化により耐熱性が向上しまた窒化クロムの
析出により対時問クリープ強度も向上する。
しかし、窒素含有量が0.25重量%未満であると、合金の強度増大は期待さ
れない。1.20重量%を超える窒素含有量は冶金的に可能であるが、含有量を
正確に調整するために多大の努力が必要であるので、本発明においては0.25
重量%と1.20重量%の間の窒素含有量が望ましいことが分かった。
ホウ素(B):
合金にホウ素を0.010重量%まで添加すると対時間クリープ強度は増大す
る。ホウ素含有量がより高くなると、低融点相が結晶粒界が形成されるために熱
間成形性が低下する。含有量が0.001重量%未満であると効果がないことが
分かった。
ニッケル(Ni):
ニッケルの添加は、合金の耐酸化性のみならず耐炭化性に好ましい影響を与え
る。これは、特にニッケルとクロムが同時に存在するとニッケル−クロムスピネ
ル形成による。少なくとも64%のニッケル含有量が必須であるのはこの理由か
らではなく、この含有量を超えて十分な量のクロム窒化物が析出することが対時
間クリープ強度のために必須であるとの理由にのみである。
イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、ジルコニウム( Zr)、ハフニウム(Hf)及びタンタル(Ta)
:
これらの元素はすべて合金の熱間成形性を改良するのに有効である。
この理由により上記合金元素の少なくとも1種が、上記合金に過酷な熱間成形
操作を施す場合は、存在しなければならない。一方1種もしは数種の合金元素の
含有量が0.50重量%を超えると熱間加工性に有害である。
イットリウム、セリウム、ランタン、ジルコニウム、ハフニウム及びタンタル
は単独及
び組合わせると、合金の繰返し耐酸化性が著しく改善される。
以下、ニッケル基合金1から6を公知の標準合金8から11に比較してより詳
しく説明する。
合金1から11の実際の分析値は表1に示す。
図1は、本発明に係る合金1から6の一定温度1000℃における対時間クリ
ープ強度を標準的合金8から11に対比して示す。なお1000℃は後者の合金
の用途において典型的な温度である。この図では縦軸に引張り応力N/mm2を
示し、試料がこの応力を受けた時間は対数で横軸に示す。
合金1から6と合金8から11について二つの拡張帯状領域があるが、この領
域内に個々の合金の破断点が含まれている。本発明に係る合金1から6の対時間
クリープ強度が標準的合金8から11に比べて優れているのは、合金1から6の
拡張帯が高応力側に変位していることより明らかである。本発明に係る合金1か
ら6は標準的合金8から11に比べて約2.5倍高い対時間クリープ強度を達成
をしている。
図2は、本発明に係る合金1から6の耐熱性を標準的合金8から11に対比し
て示す。
この図では横軸の試験温度℃に対して引張強度N/mm2を縦軸に示す。
本発明に係る合金1から6の耐熱性を標準的合金8から11に対比すると、室
温から1200℃までの温度範囲全体で耐熱性が高い拡張帯領域内にある。
酸化試験の結果、窒素を合金元素として添加しても窒素を添加しない標準的合
金に比べて耐酸化性は劣化しないことが分かった。他方、標準的合金及び本発明
の合金は、750℃、1000℃及び1200℃での測定値は拡張帯状領域内で
変動していた。
図3は、本発明に係る合金1から6の繰返し耐酸化性を、750℃、1000
℃及び1200℃での測定温度について耐熱性を標準的合金8から11に対比し
て示す。図は質量変化g/m2hを試験時間及び試料表面積で標準化して示す。
試験は大気中で、試験時間での保持16時間、加熱2時間及び冷却6時間の24
時間の周期を繰返して行った。