JP3965869B2 - Ni基耐熱合金 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、クリープ破断強度が高く、耐浸炭性に優れたNi基耐熱合金に係わり、特にナフサ、プロパン、エタンおよびガスオイル等の原料を水蒸気とともに800℃以上の高温で分解し、エチレン、プロピレン等の石油化学基礎製品を製造するエチレンプラント用分解炉管に使用される管の素材として好適なNi基耐熱合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレンプラント用分解炉管の使用温度は、エチレン収率向上の観点から高温化の傾向が強くなってきている。
【0003】
このような分解炉管用の材料としては、内面が浸炭雰囲気に曝されるため、クリープ破断強度等の高温強度と共に耐浸炭性が要求される。また一方では、操業中に分解炉管内表面で炭素が析出(この現象はコーキングと呼ばれる)し、その析出量の増加に伴い管内圧力の上昇や加熱効率低下などの操業上の弊害が生じる。
【0004】
したがって、実操業においては定期的に空気や水蒸気で析出した炭素を除去する、いわゆるデコーキング作業がおこなわれており、その間の操業停止や作業の工数などが大きな問題になる。このようなコーキングとそれに伴う諸問題は、分解炉管のサイズが収率向上に有利な小径管になるほど深刻になる。
【0005】
コーキング防止を目的とした従来技術として、例えば特開平2−8336号公報には、合金中に28%以上のCrを含有させて合金表面に強固で安定なCr23皮膜を形成させ、炭素析出を促進する触媒元素であるFeおよびNiの表面への露出を防止し、コーキングを抑制する方法が開示されている。
【0006】
一方、耐浸炭性を改善するには、例えば特開昭57−23050号公報に開示されているように、合金中のSi含有量を高めることが有効である。しかしながら、上述の従来技術には次のような問題点がある。
【0007】
コーキング防止の点から特開平2−8336号公報に開示されているような高Cr合金を高温強度部材として適用する場合には、合金中のNi量を高めて金属組織をオーステナイト化する必要があるが、高温強度は従来合金に比べて低いので単独では高温強度部材として適用することは難しい。特開平2−8336号公報には、他の高温強度部材と組み合わせて二重管とし使用することが開示されているが、二重管は製造コストや信頼性の点で問題が多い。
【0008】
本発明者らは、Ni基合金中のAl量を4.5〜12%と高め、強固で緻密なAl23皮膜をメタル表面に生成させれば、従来の合金に比較して耐浸炭性および耐コーキング性が著しく向上すること、およびこのような高Al合金ではNi量を高めることにより高温での使用中にγ′相がマトリックス中に微細析出し、クリープ破断強度も大幅に向上することを見出し、先に特許出願した(特開平5−239577号公報、同平6−207235号公報)。
【0009】
しかし、エチレンプラント用分解炉管を製造する場合のように、大きな熱間加工が必要になる場合上記のような合金は適していない。また、前述したようにエチレンプラント用分解炉管の使用温度が、エチレン収率向上の観点から1100〜1150℃へと高温化の傾向にあり、このような高温域では、さらに高い強度が要求される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、エチレンプラント用分解炉管がおかれる環境、すなわち浸炭、酸化および温度変動が繰り返される環境下において、1100〜1150℃の高温で使用しても優れたクリープ破断強度を有すると共に、優れた耐浸炭性、耐コーキング性をも有し、しかも熱間加工性にも優れたNi基耐熱合金を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記のとおりである。
【0012】
(1)質量%で、C:0.1%超え0.7%以下、Si:5%以下、Mn:0.05〜5%、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Cr:12〜25%およびAl:2.1〜12%Mo:0.01〜15%とW:0.01〜9%のうちの1種以上を合計で2.5〜15%、ならびに、N:0.05%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなるNi基耐熱合金。
【0013】
(2)Niの一部に代えて、質量%で、更に、下記のa)〜d)のグループのうちの少なくとも1グループの中から選ばれた1種以上の元素を含む上記(1)に記載のNi基耐熱合金。
a)Cu:15%以下およびCo:15%以下から選択される1種以上
b)Ti:3%以下
c)Fe:20%以下
d)Nb:1%未満、V:1%未満およびTa:2.0%未満から選択される1種以上
(3)Niの一部に代えて、質量%で、更に、下記のe)およびf)のグループのうちの少なくとも1グループの中から選ばれた1種以上の元素を含む上記(1)または(2)に記載のNi基耐熱合金。
e)B:0.03%以下、Zr:0.20%以下およびHf:0.9%以下から選択される1種以上で、かつ合計含有量が1.1%以下
f)Mg:0.0005〜0.01およびCa:0.0005〜0.01から選択される1種以上
(4)Niの一部に代えて、質量%で、更に、下記のg)およびh)のグループのうちの少なくとも1グループの中から選ばれた1種以上の元素を含む上記(1)から(3)までのいずれかに記載のNi基耐熱合金。
g)La:0.001〜0.10、Ce:0.001〜0.10およびNd:0.001〜0.10から選択される1種以上
h)Y:0.10%以下
【0014】
本発明者は、1100〜1150℃の高温域において、長時間使用しても破断しないクリープ特性を有すると共に、優れた耐浸炭性、耐コーキング性を備え、熱間加工性に優れたNi基合金を開発するため、化学組成を種々変えたNi合金を溶製し、実験検討した結果下記の知見を得るに至った。
【0015】
a) Ni基合金においては、Alは熱間加工性を低下させ、特に含有量が4.5%以上と多量になると熱間加工性を著しく低下させる。熱間加工性を改善するには粒界の強化が重要かつ有効である。通常不純物として鋼中に混入するSおよびPは、粒界に偏析して結晶粒の結合力を弱め、熱間加工性を劣化させるので、Sは0.01%以下、Pは0.04%以下に低減する必要がある。特にPは、1000℃以下の温度でCrリン化物を形成し粒界に析出して粒界を脆弱化させるので低減効果は大きい。
【0016】
b) 熱間加工性を確保するために、Al含有量を1%まで低めても、合金表面に保護性酸化皮膜を形成させることができ、良好な耐浸炭性と耐コーキング性を付与することができる。
【0017】
c)しかし、Al含有量が1〜4.5%未満と低い場合、高温でNi−Al系金属間化合物の析出が少なくなり、クリープ破断強度が低下する。
【0018】
c)C含有量を0.1%以上に高めると、粒内および粒界にCrを主体とした炭化物が多量に形成され、炭化物により粒界が被覆されて、Al含有量が1〜4.5%未満と低い場合でもクリープ破断時間を著しく長時間側に移行させることができる。また、Al含有量が4.5%以上の場合は、クリープ破断強度は特に問題とはならないが、C含有量を0.1%以上に高めることにより一層強度が高まる。
【0019】
d)Nは、一般に耐熱鋼においては固溶強化による高温強度を高める作用があるが、多量のAlを含有するNi基合金ではその効果は期待できず、むしろAl系窒化物を形成して熱間加工性を阻害するので、S、P含有量の低減以外に、Nを0.05%以下に制限すると熱間加工性が一層改善される。
【0020】
e)Mo、Wは、一般に耐熱鋼において固溶強化による高温強度を高める作用があるが、特に高温ではその効果が大きく、その効果を得るためには、MoとWの1種以上を合計で2.5〜15%を含有させる必要がある。
【0021】
本発明者らは、Ni基合金におけるクリープ破断時間に及ぼすC量の影響を調べるため、C含有量が種々異なる合金を溶製し、クリープ破断試験片を製作して、下記条件で試験を実施した。なお、用いた合金中のAl含有量は1〜10%であった。
【0022】
試験温度:1150℃
負荷応力:9.8MPa
図1は、クリープ破断試験結果を示す図である。同図から明らかなように、Al含有量が比較的低くとも、C含有量が0.1%以上の場合には、破断時間は約500時間以上と長時間になることが分かる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の合金の化学組成と作用効果について説明する。なお、合金元素の%表示は質量%を示す。
C:
Cは、本発明において重要な元素で、高温で粒内、粒界にCrを主体とした炭化物を形成し、耐熱鋼として必要な引張強さやクリープ破断強度を向上させる作用を有する。このような炭化物による析出強化を発揮させるには0.1%を超える含有量が必要である。しかしながら、0.7%を超えると、合金の延性および靭性の低下が大きくなるので、上限を0.7%とした。望ましい範囲は0.15%超え0.5%以下、さらに望ましくは0.2%超え0.5%以下である。
【0024】
Si:
Siは、溶鋼の脱酸作用があり、さらに耐酸化性や耐浸炭性改善にも寄与する元素であるが、熱間加工性の点からはSiは低い程よく、上限を5%とした。望ましいSiの含有量は4%以下、さらに望ましいSi含有量は0.01〜3%である。
【0025】
P:
P含有量の規制は、本発明において最も重要である。Pは粒界に偏析し、粒界の結合力を弱め、熱間加工性を劣化させる極めて有害な元素である。さらに、Crリン化物を形成、粒界に析出することで著しく粒界を脆弱化させる。そのため、Pは極力低減するのが好ましい。熱間加工性を改善するためには0.04%以下が有効である。望ましくは0.025%以下、さらに望ましくは0.015%以下である。
【0026】
S:
Sは、粒界に偏析して粒界の結合力を弱め、熱間加工性を劣化させる極めて有害な元素で、上限の規制が極めて重要である。Al含有Ni基合金では粒界強化が重要となるため、特にAl含有量が多い合金ではSは極力低減するのが好ましい。熱間加工性を改善するためには0.01%以下が有効である。望ましくは0.005%以下、さらに望ましくは0.003%以下である。
【0027】
Cr:Cr は、耐酸化性、耐浸炭性や耐コーキング性の改善に有効な元素であり、皮膜の生成初期において均一に生成させる作用がある。また、炭化物を形成しクリープ破断強度の向上にも寄与する。さらに、本発明で規定する化学組成の合金においては熱間加工性の向上に寄与する。これらの効果を得るためには12%以上含有させる必要がある。一方、Crを過剰に含有させると靭性の低下が著しくなる。従って、本発明ではCr含有量を12〜25%とした。望ましくは12〜23%である。
【0028】
Al:Alは、耐浸炭性及び耐コーキング性の向上さらには高温強度の向上に極めて有効な元素であるが、その効果を発揮させるためには、アルミナ酸化皮膜を生成させる必要がある。また一方で、γ′相[Ni3(Al、Ti)金属間化合物]を形成し、析出強化作用が期待できる。これらの効果を得るためには少なくとも2.1%のAl含有量が必要である。一方、Al含有量が12%を超えると熱間加工性が極端に低下し、P、SおよびN含有量を規制しても改善することができない。したがって、Al含有量を2.1〜12%とする。望ましくは2.1〜10%、さらに望ましくは4.5〜10%である。
【0029】
MoおよびW:
MoおよびWは、主として固溶強化元素として有効であり、基地のオーステナイト相を強化することによりクリープ破断強度を上昇させる。この効果を発揮させるためには、Mo:0.01〜15%とW:0.01〜9%のうちの1種以上を合計で2.5〜15%含有させることが必要である。しかしながら、過剰に含有させると靭性低下の要因となる金属間化合物が析出するだけでなく、耐浸炭性や耐コーキング性も劣化するので、合計量を15%以下にする必要がある。
【0030】
前述したように、Al含有量1〜4.5%未満と少なく、γ´相による析出強化による効果が小さい場合でもCを高めることでクリープ破断強度は改善されるが、さらにMoおよびWの含有量を高めると、これらの相乗効果が発揮されより優れたクリープ特性が得られる。
【0031】
Ni:
本発明の合金は、上記の元素および下記のような必要により含有させる元素以外は実質的にNiからなるものである。Niは安定なオーステナイト組織を得るため、および耐浸炭性確保の点から欠かすことのできない元素であり、特にγ′相による析出強化の効果を高めるためには多いほど望ましい。望ましくは50.1%以上、さらに望ましくは60.1%以上である。
【0032】
Mn:Mnは、脱酸元素として有効であり、また熱間加工性に悪影響を及ぼすS,Oを固定する働きがあるので、これらの効果を得るために0.05%以上含有させる。一方、過剰添加はスピネル型酸化物の生成を促し、初期のアルミナ皮膜の均一形成を阻害することから上限を5%とする。好ましくは0.1〜5%以下である。さらに好ましくは0.2%以上3%以下である。
本発明の課題を解決するためには、少なくとも上記の化学組成を有する合金とする必要があるが、さらに下記に示すような元素を必要により含有させたり、Nを低減することが できる。
【0033】
CuおよびCo:
これらの元素は、オーステナイト組織を安定にする作用があるため、クリープ破断強度の向上に有効である。しかしながら、過剰に含有させると熱間加工性および靭性を低下させる。そのため、含有させる場合は15%以下の添加とする。好ましくは10%以下とする。さらに好ましくは8%以下とする。
【0034】
Ti:
Tiは、γ′相の析出を促進しクリープ破断強度を向上させる元素である。さらに粒界強化にも寄与する。ただし過剰に含有させるとγ′相が過剰析出し熱間加工性及び溶接性が著しく劣化する。そのため含有させる場合は3%以下とする。
【0035】
B、ZrおよびHf:
これらの元素は主として合金の粒界強化に有効な元素で、熱間加工性、溶接性の改善が図られるので含有させる場合は、1種以上を含有させるのがよい。しかしながら、過剰に含有させるとクリープ破断強度の低下を引き起こすため、上限はBで0.03%、Zrで0.20%、Hfで0.9%であり、合計で1.1%とする。望ましくはHfで0.8%以下、かつ合計で1%以下である。
【0036】
Fe:
Feは、クリープ延性を改善しクリープ破断強度を高め、さらに熱間加工性や冷間加工性の改善にも寄与する。ただし過剰に含有させると逆にクリープ破断強度、熱間加工性とも低下するため上限は20%以下とする。望ましくは15%以下、さらに望ましくは10%未満である。
【0037】
Nb、VおよびTa:
これらの元素はオーステナイト相中に固溶するとともにγ´相やCr炭化物、窒化物中にも固溶してクリープ破断強度の向上に寄与する。しかしながら、過剰に含有させると靭性低下を招くのでNbおよびVで1.0%未満、Taで2.0%未満とする。なお、2種以上併用する場合にも両者の合計で3.0%未満とするのが望ましい。
【0038】
La、CeおよびNd:
これらの元素は、主として熱サイクル条件下でのアルミナ皮膜の剥離を防止し、温度が変動する環境下での使用においても耐浸炭性及び耐コーキング性を向上させる。その効果を発揮させるためにはLa、CeおよびNdともそれぞれ0.001%以上が必要である。しかしながら、過剰に含有させると加工性が悪化し、またアルミナ皮膜剥離防止の効果も飽和するので、上限はLa、CeおよびNdともそれぞれ0.10%とする。これらの元素は1種だけ含有させてもよいし、また2種以上複合で含有させてもよい。
【0039】
Y:
Yは、La、Ce、Ndと同様、主として熱サイクル条件下でのアルミナ皮膜の剥離を防止し、温度が変動する環境下での使用においても耐浸炭性及び耐コーキング性を向上させる。しかしながら、Feと金属間化合物を形成しやすく、熱間加工性の低下を招くこととなる。耐浸炭性および耐コーキング性を向上させる効果を発揮させるためには0.10%以下を含有させてもよいが、熱間加工性を重視する場合には、0.01%未満とする。
【0040】
MgおよびCa:
これらの元素は、主として熱間加工性に有害なSを硫化物として固定し、粒界強度を高めるので、熱間加工性を改善する場合に必要に応じて含有させる。含有させる場合はMg、Caとも0.0005%以上で効果を発揮する。しかしながら、過剰に含有させると固溶状態で鋼中に存在し、逆に熱間加工性及び溶接性を低下させる。そのため、上限をMg、Caとも0.01%とするのがよい。
【0041】
N:Nは、元来固溶強化により高温での強度を高めるのに有効であるが、Al含有Ni基合金では、鋼中でAlNとして析出するために固溶強化が期待できないばかりか熱間加工性、溶接性を著しく阻害する。これらの弊害を防止するには0.05%以下にする必要がある。可能な限り低減することが好ましく、望ましくは0.02%未満、さらに望ましくは0.015%未満である。前述したように、S、Pの低減で著しく熱間加工性は改善されるが、さらNを低減するとこれらの相乗効果が発揮されより優れた熱間加工性が得られる。
【0042】
本発明合金は、通常の溶解及び精錬工程で溶製した後、製品の形状に鋳造して製品にすることができる。また、鋳造の後さらに熱間加工、冷間加工等の加工工程を経て管などの製品とすることができる。また、粉末冶金法で製品にしてもよい。熱処理は組織の均一化を促進し、本発明合金の性能向上に寄与する。通常、1100〜1300℃での均一化処理が施されるが、熱処理を施さないで鋳造あるいは加工のままで使用することもできる。さらに、鋳造後、加工後あるいは熱処理後に表面を、ショットブラストやグラインダー等の研削もしくは酸洗等により表面調整を施し使用することもできる。
【0043】
【実施例】
表1および表2に示す化学組成の合金を50kg真空高周波炉で溶解後、鍛造により15mm厚の板材とし、1200℃で固溶化熱処理を施して供試材とした。耐浸炭性、高温強度、熱間加工性を評価するため、以下に示す要領で各試験を実施した。
【0044】
【表1】
Figure 0003965869
【表2】
Figure 0003965869
(1) 固体浸炭試験(耐浸炭性評価)
試験片 :厚さ4mm、幅20mm、長さ30mm
試験方法:浸炭剤中に試験片を挿入し、1150℃に加熱、48時間保持後、試験片の板厚方向の中央部から試料を採取して分析
(2) クリープ破断試験(高温強度評価)
試験片 :平行部直径6mm、長さ70mmの丸棒、標点間距離30mm
試験方法:保持時間1150℃、負荷応力9.8MPaの条件で破断までの時間を測定
(3) グリーブル試験(熱間加工性評価)
試験片 :平行部直径10mm、長さ130mmの丸棒試験方法:1200℃で5分加熱した後、1000℃まで100℃/分で冷却し、その後5/sの歪速度で引張り、破断後Heガスで室温まで冷却して絞り値を測定
試験結果を表3および表4に示す。
【0045】
【表3】
Figure 0003965869
【表4】
Figure 0003965869
本発明においては、各試験結果は下記のように評価する。
固体浸炭試験:C増加量が0.2%以下であれば耐浸炭性に優れている
クリープ破断試験:破断時間が500時間以上であれば高温強度良好
グリーブル試験:絞り値が50%以上であれば熱間加工性良好
表3および表4から明らかなように、Alを1%以上12%以下含有する本発明の合金は、Al含有量が本発明で規定する量よりも少ない比較合金Aに比べ耐浸炭性、クリープ破断強度共に良好である。また、Al含有量が本発明で規定する上限を超えている比較合金Bは、グリーブル絞りが12.5%と低いことが分かる。また、Sが高い比較合金C、Pが高い比較合金D、Mnが低い比較合金E、さらにはSiが高い比較合金Fとも熱間加工性を満足していない。
【0046】
また、Mnが本発明で規定する量より高い比較合金Gは耐浸炭性に劣り、Crが規定する量より少ない比較合金Hは耐浸炭性、クリープ破断強度とも目標を満足していないことが分かる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた耐浸炭性と耐コーキング性を有し、かつ高温強度部材として使用するに十分なクリープ破断強度を有し、しかも熱間加工性に優れた合金が得られ、エチレンプラント用分解炉管等の浸炭、酸化および温度変動が繰り返される熱分解、熱サイクル環境下において優れた効果を発揮する。その結果、本発明の合金を使用することにより、より高温での操業が可能となり連続操業時間の延長、さらには耐久性向上による新材との取り替えスパンの長期化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】C含有量とクリープ破断強度との関係を示す図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.1%超え0.7%以下、Si:5%以下、Mn:0.05〜5%、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Cr:12〜25%およびAl:2.1〜12%、Mo:0.01〜15%とW:0.01〜9%のうちの1種以上を合計で2.5〜15%、ならびに、N:0.05%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなることを特徴とするNi基耐熱合金。
  2. Niの一部に代えて、質量%で、更に、下記のa)〜d)のグループのうちの少なくとも1グループの中から選ばれた1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1に記載のNi基耐熱合金。
    a)Cu:15%以下およびCo:15%以下から選択される1種以上
    b)Ti:3%以下
    c)Fe:20%以下
    d)Nb:1%未満、V:1%未満およびTa:2.0%未満から選択される1種以上
  3. Niの一部に代えて、質量%で、更に、下記のe)およびf)のグループのうちの少なくとも1グループの中から選ばれた1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のNi基耐熱合金。
    e)B:0.03%以下、Zr:0.20%以下およびHf:0.9%以下から選択される1種以上で、かつ合計含有量が1.1%以下
    f)Mg:0.0005〜0.01およびCa:0.0005〜0.01から選択される1種以上
  4. Niの一部に代えて、質量%で、更に、下記のg)およびh)のグループのうちの少なくとも1グループの中から選ばれた1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のNi基耐熱合金。
    g)La:0.001〜0.10、Ce:0.001〜0.10およびNd:0.001〜0.10から選択される1種以上
    h)Y:0.10%以下
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