JPH1025468A - 防曇剤組成物 - Google Patents

防曇剤組成物

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JPH1025468A
JPH1025468A JP8182264A JP18226496A JPH1025468A JP H1025468 A JPH1025468 A JP H1025468A JP 8182264 A JP8182264 A JP 8182264A JP 18226496 A JP18226496 A JP 18226496A JP H1025468 A JPH1025468 A JP H1025468A
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浩介 染矢
Shuhei Imon
修平 井門
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Mitsui Petrochemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フィルム等の成形品との比較的低温において
強固な塗膜を形成し密着性が良好でり、且つ、優れた防
曇持続性、耐ブロキング性等を有する防曇剤組成物を提
供する。 【解決手段】 無機コロイドゾル(a)、架橋剤
(b)、及び、ガラス転移温度が−50℃以上、35℃
未満であり、且つ、前記(b)と架橋反応性の少なくと
も1種の官能基を有するアクリル系ポリマー(c)の水
系エマルションを含む防曇剤組成物であって、該アクリ
ル系ポリマー(c)1重量部に対し架橋剤(b)0.0
01〜10重量部、及びアクリル系ポリマー(c)と架
橋剤(b)の合計量1重量部に対し無機コロイドゾル
(a)0.5〜4重量部を含むことを特徴とする防曇剤
組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は防曇剤組成物に関す
る。詳しくは、透明な材料、特に合成樹脂フィルム、シ
ート等の表面に塗布処理する事により光線透過性を損な
うことなく優れた防曇性を付与し、且つ、これらの効果
を長期間にわたり高度に持続させ得る防曇剤に関する。
【0002】
【従来の技術】透明な合成樹脂製材料、例えばポリエチ
レン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル
などのフィルムやシート類は、農業用資材、包装用資材
等として大量に使用されている。これらの用途のうち、
園芸ハウスの被覆材として利用される場合、ハウス内部
より発生する水蒸気が、外気と接している被覆材の内側
に凝縮して曇りを生じ、これによる遮光作用のため、太
陽光線の透過が妨げられ、作物に必要な有効光線の不足
による生育障害が起こったり、ハウス内の温度が上昇せ
ず、保温費用が過大となる等の不都合が生じる事があ
る。また、凝縮水がハウスの天井部にて水滴を形成し、
直接作物の上に次々と落下し、交配を妨げ、かつ病気を
発生させる原因となる等、栽培中の作物の生育を種々の
形で阻害したり、ハウス内の作業者に不快感を与えたり
する等、ハウスの管理および経営上大きな問題となって
いる。従って、これら透明な合成樹脂表面における曇り
を防止する、すなわち防曇性を付与することにより、被
覆材等の透明性を維持し、高度な光線透過性を長期にわ
たり持続せしめ、また天井からの水滴落下を防止するこ
とは、実用上極めて重要である。
【0003】これらの点を改良すべく行われている従来
の方法には、防曇剤として界面活性剤の如き親水性物質
を合成樹脂材料中に添加して、該親水性物質のブリード
によって防曇性を発揮させる方法がある。しかしなが
ら、この方法では樹脂中の親水性物質が全部流出すれば
防曇効果が無くなるので、該効果を長期間持続させるに
は不充分である。
【0004】或いは透明な樹脂シート等の表面に親水性
物質を塗布して使用する方法がある。塗布される物質に
は水溶性親水性高分子を用いたもの(特公昭46−13
252号公報)、親水性ポリマーと界面活性剤を用いた
もの(特公昭53−37075号公報)、架橋剤にて水
不溶化した水溶性親水性高分子を用いたもの(特公昭5
6−34219号公報)などがあるが、防曇性とその効
果の持続性について両立できず、満足できる改良ではな
い。
【0005】また、親水性物質として無機質水性ゾルを
利用し、これを防曇剤として透明な材料の表面に塗布し
て使用する方法も提案されている。シリカゾルと界面活
性剤を用いたもの(特公昭50−11348号公報)、
アルミナゾルと界面活性剤を用いたもの(特公昭49−
32668号公報)、シリカゾルとアルミナゾルを併用
したもの(特公昭58−29831号公報)等がある
が、これら無機コロイドは樹脂との親和性が悪く、密着
性に欠けるために、形成された塗膜は短時間で剥離脱落
し、防曇効果を長期間持続する事はできない。
【0006】上記問題を解決し得る防曇剤として、例え
ば、特公平6−47668号公報には、ガラス転移温度
が35〜80℃の範囲にある疏水性アクリル系樹脂の水
系エマルション及び無機コロイドゾルの2成分を有効成
分として含有し、無機コロイドゾルの配合量が固形分重
量比で、上記疎水性アクリル系樹脂に対して0.5以上
である防曇剤組成物が開示されている。
【0007】しかし、上記防曇剤組成物は、防曇効果と
その持続性がある程度改善されているが、まだ満足でき
るものではない。その上、通常、防曇剤組成物は、フィ
ルム等の成形品の表面に塗布、乾燥した後、加熱するこ
とにより防曇剤組成物の塗膜を形成するものであること
を考慮すると、バインダーである疎水性アクリル系樹脂
のガラス転移温度が高いために、強固な塗膜を形成する
ことが困難である。そのため、フィルム等の成形品の耐
熱性が充分でない場合には、加熱温度を低下せざるを得
ず、強固な塗膜を形成することができなくなり、剥離、
脱落等の原因となることがある。かかる観点において
も、上記防曇剤組成物は、長期にわたる防曇持続性を付
与し得る防曇剤組成物とはいえない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記の問題に鑑み、本
発明の目的は、長期にわたって防曇持続性を維持し得る
防曇剤組成物であって、フィルム等の成形品との密着性
が良好で、比較的低温において強固な塗膜を形成するこ
とができ、且つ、ブロッキングが発生することのない防
曇剤組成物を提供することにある。また、本発明の他の
目的は、長期間保存しても変質せずにポットライフが長
い防曇剤組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明らは、鋭意検討し
た結果、無機コロイドゾル、架橋剤、及び、特定の温度
範囲のガラス転移温度を有し、且つ、架橋反応性の官能
基を有するアクリル系ポリマーの3成分を特定の重量比
で含む防曇剤組成物が、上記目的を達成し得る防曇剤組
成物であることを見出し、本発明に到った。
【0010】すなわち、本発明により、無機コロイドゾ
ル(a)、架橋剤(b)、及び、ガラス転移温度が−5
0℃以上、35℃未満であり、且つ、前記(b)と架橋
反応性の少なくとも1種の官能基を有するアクリル系ポ
リマー(c)の水系エマルションを含む防曇剤組成物で
あって、該アクリル系ポリマー(c)1重量部に対し架
橋剤(b)0.001〜10重量部、及びアクリル系ポ
リマー(c)と架橋剤(b)の合計量1重量部に対し無
機コロイドゾル(a)0.5〜4重量部を含むことを特
徴とする防曇剤組成物が提供される。
【0011】本発明の防曇剤組成物の特徴は、ガラス転
移温度が−50℃以上、35℃未満であり、且つ、架橋
反応性の官能基を有するアクリル系ポリマー、及び、架
橋剤をバインダーとする、無機コロイドゾルを含む防曇
剤組成物である点にある。そのため、これを、樹脂フィ
ルム、シート等の成形品の表面に塗布、乾燥、加熱する
ことにより、それらの表面に強固な防曇剤組成物の塗膜
を形成することができる。従って、樹脂フィルム、シー
ト等の成形品に対し、長期にわたって優れた防曇持続性
を付与することができる。また、本発明の防曇剤組成物
により形成される塗膜は、樹脂フィルム、シート等の成
形品との密着性が良好で、しかも、35℃未満の如き比
較的低温において、強固な塗膜を形成することができる
ので、耐熱性の良否に関係なく、如何なる種類の樹脂フ
ィルム、シート等の成形品に対する防曇剤として使用し
得る。
【0012】また、上記架橋剤(b)として、特定の官
能基を有するアクリル系ポリマー(d)を用い、該アク
リル系ポリマーと上記アクリル系ポリマー(c)とでコ
アーシェル型粒子を形成することにより、長期間保存し
ても変質することのない、ポットライフが長い防曇剤組
成物とすることが可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の防曇剤組成物は、無機コ
ロイドゾル(a)、架橋剤(b)、及び、ガラス転移温
度が−50℃以上、35℃未満であり、且つ、前記
(b)と架橋反応性の少なくとも1種の官能基を有する
アクリル系ポリマー(c)の水系エマルション、の3成
分を特定の重量比で混合することにより製造される。以
下、本発明について詳細に説明する。
【0014】本発明に用いる無機コロイドゾルは、疎水
性のフィルム・シートの表面に塗布することにより、該
表面に親水性を付与する機能を果すものである。かかる
無機コロイドゾルとしては、例えば、シリカ、アルミ
ナ、水不溶性リチウムシリケート、水酸化鉄、水酸化ス
ズ、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機質水性コロイド
粒子を種々の方法で水又は親水性媒体中に分散させた水
性ゾルが挙げられる。これらは、単独で用いても併用し
てもよい。好ましいのは、シリカゾル、アルミナゾル等
である。
【0015】無機質コロイドの平均粒子径が5〜100
nmの範囲のものが好ましい。この範囲内にあれば、平
均粒子径の異なる2種以上のコロイドゾルを組合せて用
いてもよい。平均粒子径が100nmを超えると、得ら
れる塗膜が白く失透する傾向がでてくるので好ましくな
い。また、5nmに満たないときは、無機コロイドゾル
の安定性に欠ける恐れがある。
【0016】無機コロイドゾルは、その配合量が固形分
重量比で後述するアクリル系ポリマー(c)と架橋剤
(b)の合計量1重量部に対して0.5以上にすること
が肝要である。0.5に満たないときは、充分な防曇効
果が発揮できない。しかしながら、4倍を超えると無機
コロイドの基材に対する結着力が不足し、早期に脱落す
るので防曇性能の長期維持が困難となる。かかる観点か
ら、無機コロイドゾルは、架橋剤(b)と後述するアク
リル系ポリマー(c)の固形分の合計量1重量部に対し
て0.5〜4重量部の範囲で使用する。
【0017】本発明に用いるアクリル系ポリマー〔以
下、アクリル系ポリマー(c)という〕の水系エマルシ
ョンは、従来から知られている乳化重合法により製造す
ることができる。例えば、アクリル酸またはメタクリル
酸アルキルエステル、及び架橋剤(b)と架橋反応し得
る官能基を有する、α、β−エチレン性不飽和単量体を
含む単量体混合物を界面活性剤の存在下、水系媒質中で
乳化重合することにより得られる。水系エマルションの
アクリル系ポリマー(c)固形分濃度は、特に制限はな
いが、通常、10〜50重量%程度である。上記アクリ
ル系ポリマーの水系エマルションには、エマルションの
安定性を損なわない程度の範囲で少量の有機溶媒を含ま
せてもよい。後述するアクリル系ポリマー(d)の水系
エマルションについても同様である。
【0018】アクリル酸またはメタクリル酸アクリルエ
ステルとしては、例えば、アクリル酸メチルエステル、
アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−プロピル
エステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル
酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキ
シルエステル、アクリル酸デシルエステル、メタクリル
酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタ
クリル酸−n−プロピルエステル、メタクリル酸イソプ
ロピルエステル、メタクリル酸−n−ブチルエステル、
メタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、メタクリ
ル酸デシルエステル等が挙げられる。一般には、アルキ
ル基の炭素数が1〜20個のアクリル酸アルキルエステ
ル及び/又はアルキル基の炭素数が1〜20個のメタク
リル酸のアルキルエステルが使用される。これらの単量
体は、アクリル系ポリマー(c)中に少なくとも60モ
ル%含むことが好ましい。
【0019】アクリル系ポリマー(c)に架橋反応性を
持たせ、フィルム等の成形品に対する密着性、耐ブロッ
キング性等を付与するために、架橋剤(b)と架橋反応
し得る官能基を有する単量体を共重合させる。かかる官
能基として、カルボキシル基、水酸基、シアン基、アミ
ノ基、アミド基、メチロール基等が挙げられる。好まし
くはカルボキシル基及び水酸基である。さらに好ましく
はカルボキシル基である。
【0020】具体的単量体として、例えば、アクリル
酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ
ル酸、クロトン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性
不飽和カルボン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸のヒ
ドロキシエチル等の水酸基含有ビニル単量体;アクリロ
ニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;
アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールア
クリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド等
のビニルアマイド類等が挙げられる。
【0021】また、アクリル系ポリマー(c)に安定性
を付与する目的で上記の官能性単量体の他、エチレンス
ルホン酸のようなα,β−エチレン性不飽和スルホン酸
類;2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸;α,
β−エチレン性不飽和ホスホン酸類を併用してもよい。
【0022】これら共重合用単量体は、単独で用いても
よいし、2種以上を併用してもよい。使用量は、全単量
体混合物中に0.5〜40モル%の範囲で含ませること
が好ましい。40モル%を超えると、防曇持続性を低下
させるので好ましくない。また、0.5モル%未満で
は、架橋度が不足して耐ブロッキング性が低下したり、
防曇持続性が低下するので好ましくない。また、その他
の単量体、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビ
ニルトルエン等のアルケニルベンゼン類も本発明の目的
を損なわない範囲で使用しても差支えない。
【0023】上記のように、本発明に用いるアクリル系
ポリマー(c)は、アクリル酸またはメタクリル酸のア
ルキルエステルを主単量体とし、それらにカルボキシル
基、水酸基等の官能基を有する上記単量体を共重合する
ことにより得られるが、それらの内、特定の範囲のガラ
ス転移温度を有するポリマーが選択的に使用される。本
発明の目的を達成するためには、ガラス転移温度が−5
0℃以上、35℃未満の範囲にあるアクリル系ポリマー
(c)が用いられる。ガラス転移温度をかかる範囲とす
るには、上記各単量体の種類及び使用比率を選択するこ
とにより達成される。
【0024】尚、本発明におけるガラス転移温度(以
下、Tgという)は、次のトボルスキー(Tobols
ky)の数式(1)〔数1〕
【0025】
【数1】 〔式中、Tgは共重合体のガラス転移温度(°K)、T
ga、Tgb・・・は単量体a、b、・・・の各ホモポ
リマーのガラス転移温度(°K)、Wa、Wb・・・は
単量体単位a、b、・・・の各重量分率を示す)により
算出された値を単位換算(℃)したものである。
【0026】アクリル系ポリマー(c)のTgが−50
℃未満であると、得られる防曇剤組成物の塗膜の耐ブロ
ッキング性が低下するばかりでなく、塵芥を吸着して汚
れ易くなるので好ましくない。また、逆に、Tgが35
℃以上であると、防曇持続性が低下するばかりでなく、
強固な防曇剤組成物の塗膜を形成するために高温で加熱
することを要するので、特に、耐熱性が充分でないフィ
ルム等の成形品の防曇剤として使用することができなく
なり用途的に制限されることとなり好ましくない。
【0027】本発明の防曇剤剤組成物には、架橋剤
(b)を配合する事が重要である。即ち、架橋剤(b)
によってアクリル系ポリマー(c)同志が架橋し、フィ
ルム・シートの表面に形成された防曇剤組成物の塗膜の
耐久性が向上する一方、塗膜の弾性率が向上し、Tgが
35℃未満のアクリル系ポリマー(c)をバインダーと
して用いてもブロッキング等を防止することができる。
【0028】本発明の防曇剤組成物に配合する架橋剤
(b)としては、フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、ア
ミン化合物類、アジリジン化合物類、アゾ化合物類、イ
ソシアネート化合物類、エポキシ化合物類、シラン化合
物類等が挙げられるが、アミン化合物類、アジリジン化
合物類、エポキシ化合物類が好ましい。さらに好ましく
はエポキシ化合物類である。
【0029】アミン化合物類としては、ジエチレントリ
アミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジア
ミン等の脂肪族ポリアミン;3,3′−ジメチル−4,
4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジ
アミン等の脂環式アミン;4,4′−ジアミノジフェニ
ルメタン、m−フェニレンジアミン等の芳香族アミンが
挙げられる。アジリジン化合物類としては、トリス−
2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリ
アジン、トリメチロールブロパン−トリ−β−アジリジ
ニルプロピオネート、トリス[1−(2−メチル)アジ
リジニリル]ホスフィンオキシド、ヘキサ[−(2−メ
チル)−ジアリジニル]トリホスファトリアジン等が挙
げられる。
【0030】エポキシ化合物類としては、ビスフェノー
ルA又はビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反
応生成物、フェノール(又は置換フェノール)とホルム
アルデヒドとの樹脂反応生成物とエピクロルヒドリンの
反応により生成されるエポキシ化ノボラック樹脂、エピ
クロルヒドリン及び脂肪族多価アルコール例えばグリセ
ロール、1,4−ブタンジオール、ポリ(オキシプロピ
レン)グリコール又は類似の多価アルコール成分から生
成される樹脂状反応生成物及び過酢酸を用いるエポキシ
化により得られる樹脂等が挙げられる。エポキシ化合物
類では、さらに三級アミン類や四級アンモニウム塩類を
触媒として併用すると好ましい。
【0031】架橋剤の他の態様として、ポリマー連鎖中
に、上記アクリル系ポリマー(c)と架橋反応し得る官
能基を有するアクリル系ポリマー〔以下、アクリル系ポ
リマー(d)という〕が挙げられる。アクリル系ポリマ
ー(d)に用いる主単量体としては、上記アクリル系ポ
リマー(c)と同様のアクリル酸またはメタクリル酸ア
ルキルエステル等が用いられる。アクリル系ポリマー
(d)に、上記アクリル系ポリマー(c)と架橋反応し
得る官能基を持たせるための共重合用単量体として、グ
リシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエー
テル等のエポキシ誘導体類;ビニルトリクロロシラン、
ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メナキ
シエトキシ)シラン、γ−メタクリロイロキシプロピル
トリメトキシシラン等のビニルシラン類;(メタ)アク
リルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、
N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド等のビニ
ルアミド類;ジメチロールイタコンアミド等のメチロー
ル誘導体及びそのアルコオキシ化物類;アルキルアミノ
(メタ)アクリレート等のアミン類等が挙げられる。
【0032】これら架橋剤は、それらの添加量が上記ア
クリル系ポリマー(c)の固形分1重量部に対して0.
001〜10重量部の範囲で使用することが好ましい。
さらに好ましくは0.005〜6重量部の範囲である。
架橋剤(b)及びアクリル系ポリマー(d)の添加量
は、それらの分子量、架橋反応にあずかる官能基の数に
応じて変えることが好ましい。すなわち、架橋剤(b)
またはアクリル系ポリマー(d)の固形分重量(単位;
g)を架橋反応にあずかる官能基のモル数で除した商
(以下、この商をXという)が、300g/モル以下の
場合、アクリル系ポリマー(c)の固形分1重量部に対
して、架橋剤(b)またはアクリル系ポリマー(d)を
0.005〜0.3重量部の範囲で使用することがさら
に好ましい。また、Xが300g/モルを超える場合、
アクリル系ポリマー(c)の固形分1重量部に対して、
架橋剤(b)またはアクリル系ポリマー(d)を0.1
〜6重量部の範囲で使用することがさらに好ましい。上
記Xは、例えば架橋反応にあずかる官能基がエポキシ基
である場合、JIS−K7236に規定されるエポキシ
当量に相当する。
【0033】アクリル系ポリマー(d)のTgは、上記
アクリル系ポリマー(c)と同一の範囲にあることが好
ましい。また、架橋剤としてアクリル系ポリマー(d)
を用いる場合は、アクリル系ポリマー(c)と(d)の
混合物のTgが上記範囲内であれば、本発明の目的を達
成する上でさしたる支障はない。
【0034】架橋剤(b)またはアクリル系ポリマー
(d)に含有され架橋反応にあずかる官能基のモル数と
アクリル系ポリマー(c)に含有され架橋反応する官能
基のモル数の比は、5:95〜95:5が好ましい。さ
らに好ましくは10:90〜90:10である。
【0035】上記アクリル系ポリマー(c)及び(d)
の水性エマルションを製造する際に用いる界面活性剤と
しては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性
剤、非イオン系界面活性剤のいずれであってもよい。陰
イオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナト
リウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫
酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等の高級アル
コール硫酸エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナ
トリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等
のアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルナフタレ
ンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合
物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ジアルキルホスフェ
ート塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナト
リウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル
硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンサルフェート塩
等がある。
【0036】陽イオン系界面活性剤としては、例えば、
エタノールアミン類;ラウリルアミンアセテート、トリ
エタノールアミンモノステアレートギ酸塩;ステアラミ
ドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩;ラウリル
トリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメ
チルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアン
モニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウ
ムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウム
クロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウム
クロライド等の第4級アンモニウム塩等がある。
【0037】非イオン系界面活性剤としては、例えば、
ポリオキシエチレンラウリルアルコール、ポリオキシエ
チレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイル
エーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテ
ル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオ
キシエチレンノニルフェノール等のポリオキシエチレン
アルキルアリールエーテル類;ポリエチレングリコール
モノステアレート等のポリオキシエチレンアシルエステ
ル類;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付
加物;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポ
リオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;シュガ
ーエステル類;セルロースエーテル類等がある。
【0038】あるいは、1分子中に2種類以上のイオン
種の異なる親水基を持つ界面活性剤でも良い。例えば、
ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキ
シエチレンドデシルスルホン酸アンモニウム、ポリオキ
シエチレンオレイルエーテルカルボキシナトリウム等の
ポリオキシエチレン型とアニオン型の複合型界面活性
剤;ポリオキシエチレンラウリルトリメチルアンモニウ
ムクロライド、ポリオキシエチレンドデシルジエタノー
ルアミン酢酸塩等のポリオキシエチレン型とカチオン型
の複合型界面活性剤;ラウリルアミドプロピルベタイ
ン、ステアリルベタイン、ラウリルベタイン等の両性界
面活性剤がある。
【0039】これらは単独で用いても併用してもよい
が、配合する無機物の種類によって制限をうける。すな
わち、水溶液中で一般に陰電荷に帯電するシリカゾルと
陽イオン系界面活性剤、水溶液中で一般に陽電荷に帯電
するアルミナゾルと陰イオン系界面活性剤との組合せは
好ましくない。これらの組合せは、ゾルのゲル化や防曇
剤組成物の凝集・分離を起こしやすく、塗布を困難にす
る。
【0040】上記アクリル系ポリマー(c)及び(d)
の水性エマルションの製造に当って用いられる重合開始
剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリ
ウム等の過硫酸塩;アセチルパーオキサイド、過酸化ベ
ンゾイル等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、
単量体の仕込み合計量に対して0.1〜10重量%の範
囲で使用される。
【0041】本発明の水性エマルションを得るための重
合方法は、単量体の仕込方法が回分方式でも、連続送入
方式でもよい。また一部を先に重合した後、残部を連続
的に送入する方式でもよい。連続的に送入する単量体
は、そのままでもよいが、水と界面活性剤を用いて単量
体分散液として送入する方式が極めて好適である。
【0042】本発明の防曇剤組成物の構成成分である水
性エマルションは、上記のような界面活性剤の存在下、
乳化重合によって得られた水系エマルションをそのまま
使用することもでき、又はこのものに更に、液状分散媒
を加えて稀釈したものでもよく、また上記のような重合
によって生じた重合体を分別採取し、これを液状分散媒
に再分散させて水系エマルションとしたものでもよい。
【0043】また、上記アクリル系ポリマー(d)を架
橋剤として用いる場合には、上記アクリル系ポリマー
(c)及び(d)を別々に重合し、得られたそれぞれの
水系エマルションを防曇剤組成物を配合する際に混ぜ合
わせても良い。アクリル系ポリマー(c)及び(d)の
粒子径は、0.05〜10μm程度であることが好まし
い。さらに好ましくは0.1〜1μmである。
【0044】あるいは、予め、アクリル系ポリマー
(c)または(d)のいずれか一方を乳化重合して、し
かる後にその存在下で他方を乳化重合し、その粒子表面
に他方を被せる、所謂、コア・シェル型粒子を形成して
もよい。防曇剤組成物の配合液のポットライフが長い点
でコア・シェル型粒子を形成することが好ましい。コア
・シェル型粒子を形成する場合もその粒子径が0.05
〜10μm程度であることが好ましい。さらに好ましく
は0.1〜1μmである。
【0045】但し、上記アクリル系ポリマー(c)及び
(d)は、各々を別個に重合することが肝要である。
(c)及び(d)を構成する単量体を一括して同時に重
合した場合、重合中にエポキシ基、アジリジン基、アミ
ノ基等とカルボキシル基、水酸基等との架橋反応が進行
し、架橋反応にあずかる官能基の一方が完全に消費さ
れ、本発明の防曇剤組成物をフィルム、シート等に塗
布、乾燥するときに既に架橋反応性が失われ、目的の防
曇持続性が得られなくなることがある。
【0046】本発明の組成物には必要に応じて更に液状
分散媒を配合してもよい。かかる液状分散媒としては、
水を含む親水性ないし水混合性溶媒が含まれ、水;メチ
ルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコ
ール等の一価アルコール類;エチレングリコール、ジエ
チレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;
ベンジルアルコール等の環式アルコール類;セロソルブ
アセテート類;ケトン類等が挙げられる。これら水以外
の有機溶媒は造膜助剤としても作用し得るが、本発明の
防曇剤組成物では必ずしも必要としない。これら液状分
散媒は単独で用いても併用してもよいが、本発明に係る
防曇剤組成物の分散安定性、フィルム、シート等の表面
に塗布した後の濡れ性、液状分散媒除去の難易、経済性
を勘案して決めるのが好ましい。更に必要に応じて、消
泡剤、界面活性剤、可塑剤、増粘剤、顔料、顔料分散剤
等の慣用の添加剤を混合することができる。
【0047】本発明に係る防曇剤組成物は、フィルム・
シート等の成形品の表面に塗布し、強制乾燥又は室温に
おける自然乾燥により、液状分散媒を揮散させることが
できる。強制乾燥する方法としては、熱風乾燥法、赤外
線輻射法等が採用できる。強制乾燥するときの加熱温度
は、塗布された防曇剤組成物によって決定されるが、通
常、30〜180℃、好ましくは40〜150℃の範囲
である。しかし、本発明に係わる防曇剤組成物は、Tg
が35℃未満であるアクリル系ポリマー(c)をバイン
ダーとして使用するため、造膜助剤等の他の有機溶媒を
使用せずに、且つ、例えば室温等の如き低い温度で造膜
させても充分に強固な塗膜が得られる。そのため、例え
ば、施設園芸用ハウス等に既に展張されているフィルム
等に現地において塗布し、自然乾燥するだけで強固な塗
膜を形成することができる。
【0048】フィルム、シート等の成形品の表面に塗布
する方法には特に制限はなく、ロールコート法、ディッ
プコート法、ハケ塗り法、スプレーコート法、バーコー
ト法、ナイフコート法等の公知の如何なる方法が適用で
きる。フィルム・シート等の成形品の表面に防曇剤組成
物を塗布し、液状分散媒を乾燥、揮散させた後の塗膜の
付着量は、0.01〜10g/m2、好ましくは0.1
〜5g/m2程度の範囲である。
【0049】フィルム、シート等の成形品の表面に対す
る接着性、密着性を考慮して、防曇剤組成物の塗布前に
フィルム、シート等の表面にプラズマ処理、コロナ放電
処理等を施してそれらの表面をより親水性に改質する事
が好ましい。
【0050】本発明に係る防曇剤組成物を塗布すること
ができる成形品としては、ポリ塩化ビニル、ポリオレフ
ィン、ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等
の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のフィルム、シート等
が挙げられる。特に、施設園芸用ハウス等に用いられる
ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステルフィル
ム、シート等の防曇剤組成物として好適である。
【0051】
【実施例】以下、本発明を実施例にもとづいて詳細に説
明する。本発明は以下の例に限定されるものではない。
尚、実施例に示した各特性の評価は下記方法により実施
した。 (1)ポットライフ 防曇剤配合液を各々100gずつ栓付きポリエチレン瓶
に入れ、30℃の恒温室に静置する。所定の時間経過
後、配合液を100メッシュの金網で濾過し、金網上に
残留した残滓の重量を測定し、全固形分の重量と比較す
る。評価基準は次のとおりである。 5:残滓が確認できなかった。 4:残滓の重量が全固形分重量の15%未満。 3:残滓の重量が全固形分重量の15〜50%。 2:残滓の重量が全固形分重量の50%以上。 1:完全に固化して濾過不能。
【0052】(2)エポキシ当量 架橋剤(b)またはアクリル系ポリマー(d)に関し、
JIS K−7236に規定される方法に従ってエポキ
シ当量を測定する。但し、重合例9〜11で得られたア
クリル系ポリマー(d)については、芯部エマルション
を測定の対象とする。
【0053】(3)塗膜の評価 <塗膜の形成方法>軟質塩化ビニルまたはエチレン−酢
酸ビニル共重合体フィルムの表面にバーコート法によっ
て、乾燥後の塗布量(固形分として)が0.5g/m2
となるように防曇剤組成物を塗布し、温度25℃、相対
湿度50%の恒温恒湿室中に3時間放置し、水分を飛散
させ、塗膜を形成する。但し、比較例10では、比較例
1の防曇剤組成物を塗布した後、90℃の熱風中に1分
間滞留させて塗膜を形成する。 (3)−1塗膜密着性 軟質塩化ビニルまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体フ
ィルムの塗膜を形成した面に接着面積が10cm×2c
m(20cm2)となるようにセロハンテープを接着し
て、その全面を親指で押圧して、室温で1分間放置す
る。このセロハンテープの一端を把持して180度方向
に剥離し、塗膜面を肉眼で観察する。評価基準は、次の
とおりである。 5:塗膜が全く剥離せず完全に残ったもの。 4:塗膜の1/3未満が剥離したもの。 3:塗膜の1/3以上2/3未満が剥離したもの。 2:塗膜の2/3以上が剥離したもの。 1:塗膜が完全に剥離したもの。
【0054】(3)−2耐ブロッキング性 塗膜が形成された軟質塩化ビニルまたはエチレン−酢酸
ビニル共重合体フィルム(縦:10cm、横:10c
m)を2枚用意し、それらの塗膜形成面と塗膜非形成面
とを重ね、10kgの荷重が掛かるように重石を乗せ
て、温度50℃、相対湿度80%の恒温恒湿室中に12
時間放置する。その後、恒温恒湿室から取り出し、2枚
のフィルムを剥離する。この際の剥離状況及び剥離後の
塗膜の状態を肉眼で観察する。評価基準は、次のとおり
である。 5:剥離時にブロッキングが認められず、塗膜が全く剥
離せずに完全に残ったもの。 4:剥離時にブロッキングが認められ、塗膜の1/3未
満が剥離して塗膜非形成面側に転着したもの。 3:剥離時にブロッキングが認められ、塗膜の1/3〜
2/3が剥離して塗膜非形成面側に転着したもの。 2:剥離時にブロッキングが認められ、塗膜の2/3以
上が剥離して塗膜非形成面側に転着したもの。 1:2枚のフィルムが剥離しないもの、または、塗膜の
略全てが塗膜非形成面側に転着したもの。
【0055】(4)初期防曇性 軟質塩化ビニルまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体フ
ィルム(縦:30cm、横:15cm)の塗膜形成面を
水槽の水面に向けて水槽の表面に設置する。設置条件
は、塗膜形成面と水槽水面の間隔:20cm、水温:5
0℃外気温:20℃とする。30分間、2時間及び24
時間経過後、それぞれの時点における塗膜の表面を肉眼
で観察する。評価基準は次のとおりである。 5:水が薄膜状に付着し、水滴の付着が認められない状
態。 4:水が薄膜状に付着しているが、20%未満の面積に
おいて大粒の水滴の付着が認められる状態。 3:水が薄膜状に付着しているが、20〜50%の面積
において大粒の水滴の付着が認められる状態。 2:50%以上の面積において大粒の水滴の付着が認め
られる状態、または、20%以上の面積において細かい
水滴の付着が認められる状態。 1:全面に細かい水滴の付着が認められる状態。 尚、細かい水滴の付着とは、塗膜面から反対面を透視す
ることが困難な状態であり、具体的にはJIS−K71
05に規定されるヘイズ(曇価)が70%の梨地表面処
理農業用ビニルフィルムと略同水準に不透明であること
を意味する。また、大粒の水滴の付着とは、塗膜面から
反対面を透視することが可能な状態を意味する。
【0056】(5)持続防曇性 片屋根式ハウス(間口4m、奥行き15m、棟高3m、
屋根勾配20度)に、塗膜を設けた面をハウス内側にし
て展張し、10月から翌年の10月までの1年間展張試
験を行う。展張試験中に3ケ月毎に経時的に試料の塗膜
の表面を肉眼で観察する。評価基準は(4)項と同じと
する。
【0057】<アクリル系ポリマー(c)水性エマルシ
ョンの重合> 重合例1〜3、5〜6 攪拌機、温度計、還流コンデンサー付きのセパラブルフ
ラスコにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5
重量部及び水150重量部を仕込んで攪拌下に窒素置換
しながら75℃まで昇温した。内温を75℃に保ち、重
合開始剤として過硫酸カリウム0.5重量部を添加し、
〔表1〕に示した各単量体の混合物100重量部を3時
間にわたって滴下して反応させた。滴下終了後80℃に
2時間保持してから冷却し、アンモニア水で中和し、固
形分として約40重量%のアクリル系ポリマー(c)を
含む水性エマルション1〜3、及び5〜6を得た。使用
した単量体及びその使用量(重量部)、架橋反応する単
量体の単量体全体に対するモル比(%)、並びに得られ
た各水性エマルションに含まれるアクリル系ポリマー
(c)のTg(℃)を〔表1〕に示した。 重合例4 ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムをポリオキシエ
チレンラウリルエーテル0.5重量部に替え、〔表1〕
に示した各単量体の混合物100重量部を用いた以外、
重合例1と同様にして固形分として約40重量%のアク
リル系ポリマー(c)を含む水性エマルション4を得
た。用いた単量体及びその使用量(重量部)、架橋反応
する単量体の単量体全体に対するモル比(%)、並びに
得られた水性エマルション4に含まれるアクリル系ポリ
マー(c)のTg(℃)を〔表1〕に示した。
【0058】<アクリル系ポリマー(d)水性エマルシ
ョンの重合> 重合例7 〔表2〕に示した各単量体の混合物100重量部を用い
た以外、重合例Iと同様にして固形分として約40重量
%のアクリル系ポリマー(d)を含む水性エマルション
7を得た。用いた単量体及びその使用量(重量部)、並
びに得られた水性エマルション7に含まれるアクリル系
ポリマー(d)のTg(℃)を〔表2〕に示した。
【0059】<アクリル系ポリマー(c)及び(d)の
同時重合> 重合例8 〔表3〕に示した各単量体の混合物100重量部を用い
た以外、重合例Iと同様にして固形分として約40重量
%のアクリル系ポリマー(c)及び(d)を含む水性エ
マルション8を得た。用いた単量体及びその使用量(重
量部)、並びに得られた水性エマルション8に含まれる
アクリル系ポリマーのTg(℃)を〔表3〕に示した。
【0060】<アクリル系ポリマー(d)を芯部、アク
リル系ポリマー(c)を表層部とするコア・シェル型粒
子を含む水性エマルションの重合> 重合例9 重合例1と同様のセパラブルフラスコに、重合例7と同
様にして得られた水性エマルションを250重量部(固
形分量約100重量部)と水100重量部を仕込んで攪
拌下に窒素置換しながら75℃まで昇温した。内温を7
5℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5重
量部を添加し、さらに重合例2で使用したものと同種、
同量の各単量体の混合物100重量部をドデシルベンゼ
ンスルホン酸ナトリウム0.5重量部及び水50重量部
に乳化させた乳化液を3時間にわたって滴下して反応さ
せた。滴下終了後80℃に2時間保持してから冷却し、
アンモニア水で中和し、固形分として約40重量%のア
クリル系ポリマー(c)及び(d)を含む〔コア・シェ
ル型粒子:芯部がアクリル系ポリマー(d)、表層部が
アクリル系ポリマー(c)〕水性エマルション9を得
た。用いた単量体及びその使用量(重量部)、アクリル
系ポリマー(c)中で、架橋反応する単量体のアクリル
系ポリマー(c)の単量体全体に対するモル比(%)、
コア・シェル比、並びに得られた水性エマルション9に
含まれるアクリル系ポリマーのTg(℃)を〔表3〕に
示した。
【0061】重合例10 重合例7と同様にして得られた水性エマルションを50
重量部(固形分量約20重量部)と水180重量部を仕
込み、重合開始剤として過硫酸カリウム0.9重量部、
重合例2で使用したものと同種、同量の各単量体の混合
物180重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリ
ウム0.9重量部を水90重量部に乳化させた乳化液を
用いた他、重合例9と同様にして固形分として約40重
量%のアクリル系ポリマー(c)及び(d)を含む〔コ
ア・シェル型粒子:芯部がアクリル系ポリマー(d)、
表層部がアクリル系ポリマー(c)〕水性エマルション
10を得た。用いた単量体及びその使用量(重量部)、
アクリル系ポリマー(c)中で、架橋反応する単量体の
アクリル系ポリマー(c)の単量体全体に対するモル比
(%)、コア・シェル比、並びに得られた水性エマルシ
ョン10に含まれるアクリル系ポリマーのTg(℃)を
〔表3〕に示した。
【0062】重合例11 重合例7と同様にして得られた水性エマルションを45
0重量部(固形分量約170重量部)と水30重量部を
仕込み、重合開始剤として過硫酸カリウム0.15重量
部、重合例2で使用したものと同種、同量の各単量体の
混合物30重量部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナト
リウム0.15重量部を水15重量部に乳化させた乳化
液を用いた他、重合例9と同様にして固形分として約4
0重量%のアクリル系ポリマー(c)及び(d)を含む
〔コア・シェル型粒子:芯部がアクリル系ポリマー
(d)、表層部がアクリル系ポリマー(c)〕水性エマ
ルション11を得た。用いた単量体及びその使用量(重
量部)、コア・シェル比、並びに得られた水性エマルシ
ョン11に含まれるアクリル系ポリマーのTg(℃)を
〔表3〕に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】実施例1〜14、比較例1〜9 重合例1〜6で得られたアクリル系ポリマー(c)を含
む水性エマルション1〜6、無機コロイドゾルとしてコ
ロイダルシリカ(触媒化成工業(株)製、商品名:カタ
ロイド−S)またはアルミナゾル(日産化学(株)製、
商品名:アルミナゾル)、及び架橋剤としてエポキシ化
合物(長瀬産業(株)製、商品名:デナコールEX−3
13)または重合例7〜8、及び重合例9〜11で得ら
れたアクリル系ポリマー(d)を含む水性エマルション
7〜11をそれぞれ〔表4〕に記載した重量比率で混合
して各種防曇剤組成物を製造した。尚、実施例6、13
〜14では、重合例9〜11で得られたアクリル系ポリ
マー(d)を芯部、アクリル系ポリマー(c)を表層部
とするコア・シェル型粒子を含む水性エマルション9〜
11を用いた。また、比較例6ではアクリル系ポリマー
(c)及び(d)用の単量体を同時に重合した水性エマ
ルション8を用いた。用いた無機コロイドゾル、架橋剤
及び水性エマルションの種類とその量(重量部)、並び
に、防曇剤組成物が含む水量を〔表4〕に示した。得ら
れた各種防曇剤組成物のポットライフを上記方法により
測定し、その結果を〔表4〕に示した。次いで、得られ
た各種防曇剤組成物を、上記の塗膜の形成方法により、
軟質塩化ビニルフィルムの表面にバーコート法によって
塗布、乾燥して各種防曇剤組成物の塗膜を形成した。
尚、実施例2、比較例1及び10では、エチレン−酢酸
ビニル共重合体フィルムの表面に同様の方法で防曇剤組
成物の塗膜を形成した。比較例3では無機コロイドゾ
ル、比較例5では架橋剤を使用しなかった。得られた塗
膜の密着性、耐ブロッキング性、初期防曇性、持続防曇
性を上記方法により評価し、その結果を〔表5〕に示し
た。
【0067】
【表4】 注> *1:無機コロイドゾルの配合量は固形物重量部
で示す。 *2:水性エマルションの配合量は重合体固形物量で示
す。 *3:長瀬産業(株)社製ポリエポキシ化合物(商品
名:デナコール)。 *4:PL評価とはポットライフ評価を意味する。 *5:架橋剤たるポリマー(d)の配合量は重合体固形
物量示す。 *6:アクリル系ポリマー(c)及び(d)の合計量;
5重量部
【0068】
【表5】
【0069】<実施例の考察>アクリル系ポリマー
(d)を芯部、アクリル系ポリマー(c)を表層部とす
るコア・シェル型粒子を含む水性エマルション9〜11
を用いた実施例6、13〜14で得られた防曇剤組成物
は、優れたポットライフを有し良好な安定性を示した。
水性エマルション7または8を架橋剤として用いた実施
例5及び比較例6で得られた防曇剤組成物も可なり良好
な安定性を示した。実施例1〜14で得られた防曇剤組
成物は、自然乾燥するだけで何れも優れた膜密着性、耐
ブロッキング性、透明性、初期防曇性、持続防曇性を示
した。特に、水性エマルション7を架橋剤として用いた
実施例5で得られた防曇剤組成物は、)は優れた持続防
曇性を示した。コア・シェル型エマルション9〜11を
使用した実施例6、13〜14は、更に優れた持続防曇
性を示した。粒子径が大きい無機コロイドゾルを用いた
実施例12で得られた防曇剤組成物は持続防曇性と密着
性が低下した。
【0070】一方、Tgが高いアクリル系ポリマー
(c)を用いた場合(比較例1)は、自然乾燥では密着
性が低く、持続防曇性に欠ける。また、Tgが低いもの
(比較例2)は密着性は良いが、耐ブロッキング性低く
実用的でない。無機コロイドゾル(a)を含まないもの
(比較例3)は防曇性を示さない。アクリル系ポリマー
(c)を含まないもの(比較例4)は持続防曇性が全く
ない。架橋剤(b)を含まないもの(比較例5)は比較
例2と同様に耐ブロッキング性と持続防曇性が共に劣っ
ている。架橋性官能基である、カルボキシル基を有する
単量体とグリシジル基を有する単量体を同時に共重合し
て得られた水エマルションを用いたもの(比較例6)で
は持続防曇性が劣っている。架橋剤(b)が多過ぎるも
の(比較例7)は初期防曇性が劣り、無機コロイドゾル
(a)が少な過ぎるもの(比較例8)は耐ブロッキング
性と初期防曇性に問題がある。無機コロイドゾル(a)
が多過ぎるもの(比較例9)は初期防曇性は良いが、密
着性と持続防曇性が劣っている。塗膜の乾燥温度を高く
すればTgの高いアクリル系ポリマー(c)を用いた場
合(比較例10)でも優れた防曇性等を発揮するが、耐
熱性が劣るフィルム、シート等に塗膜を設ける場合に
は、フィルム、シート等に皺、縮み等が発生するので実
用的でない。
【0071】
【発明の効果】本発明の防曇剤組成物は、これをフィル
ム、シート等に塗布して室温近傍のような比較的低温で
乾燥した場合でも優れた密着性を有する塗膜を形成す
る。また、耐ブロッキング性、初期及び持続防曇性にも
優れている。本発明の好ましい態様である、アクリル系
ポリマー(c)とアクリル系ポリマー(d)とでコア・
シェル型粒子を形成せしめた水エマルションは、安定性
(ポットライフ)に優れるだけでなく、持続防曇性の点
でも極めて優れている。従って、本発明の防曇剤組成物
は、優れた防曇性が要求される、例えば、施設園芸用ハ
ウス等に使用されるフィルム、シート類の防曇剤組成物
として極めて有用である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機コロイドゾル(a)、架橋剤
    (b)、及び、ガラス転移温度が−50℃以上、35℃
    未満であり、且つ、前記(b)と架橋反応性の少なくと
    も1種の官能基を有するアクリル系ポリマー(c)の水
    系エマルションを含む防曇剤組成物であって、該アクリ
    ル系ポリマー(c)1重量部に対し架橋剤(b)0.0
    01〜10重量部、及びアクリル系ポリマー(c)と架
    橋剤(b)の合計量1重量部に対し無機コロイドゾル
    (a)0.5〜4重量部を含むことを特徴とする防曇剤
    組成物。
  2. 【請求項2】 アクリル系ポリマー(c)が、炭素数1
    〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステ
    ル及びメタクリル酸アルキルエステルから選ばれた少な
    くとも1種の単量体単位を少なくとも60モル%を含
    み、且つ、官能基が、カルボキシル基、水酸基から選ば
    れた少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請
    求項1記載の防曇剤組成物。
  3. 【請求項3】 架橋剤(b)が、エポキシ化合物、アジ
    リジン化合物及びアミン化合物から選ばれた少なくとも
    1種の化合物であることを特徴とする請求項1記載の防
    曇剤組成物。
  4. 【請求項4】 架橋剤(b)が、炭素数1〜20のアル
    キル基を有するアクリル酸アルキルエステル及びメタク
    リル酸アルキルエステルから選ばれた少なくとも1種の
    単量体単位を少なくとも60モル%を含み、且つ、エポ
    キシ基、アジリジン基及びアミノ基から選ばれた少なく
    とも1種の官能基を有するアクリル系ポリマー(d)で
    あることを特徴とする請求項1記載の防曇剤組成物。
  5. 【請求項5】 架橋剤(b)またはアクリル系ポリマー
    (d)の固形分重量を架橋反応にあずかる官能基のモル
    数で除した商が、300g/モル以下であって、アクリ
    ル系ポリマー(c)の固形分1重量部に対して、架橋剤
    (b)またはアクリル系ポリマー(d)を0.005〜
    0.3重量部含むことを特徴とする請求項3または4記
    載の防曇剤組成物。
  6. 【請求項6】 架橋剤(b)またはアクリル系ポリマー
    (d)の固形分重量を架橋反応にあずかる官能基のモル
    数で除した商が、300g/モル超であって、アクリル
    系ポリマー(c)の固形分1重量部に対して、架橋剤
    (b)またはアクリル系ポリマー(d)を0.1〜6重
    量部含むことを特徴とする請求項3または4記載の防曇
    剤組成物。
  7. 【請求項7】 アクリル系ポリマー(d)及び(c)
    が、それらのいずれか一方を芯部、他方を表層部として
    平均粒子径が0.05〜10μmのコアーシェル型粒子
    を形成していることを特徴とする請求項4記載の防曇剤
    組成物。
  8. 【請求項8】 アクリル系ポリマー(c)が有する官能
    基がカルボキシル基であり、且つ、アクリル系ポリマー
    (d)が有する官能基がエポキシ基であることを特徴と
    する請求項4〜7のいずれかに記載の防曇剤組成物。
  9. 【請求項9】 無機コロイドゾル(a)が、平均粒子径
    5〜100nmのシリカゾル及びアルミナゾルから選ば
    れた少なくとも1種のコロイドゾルであることを特徴と
    する請求項1記載の防曇剤組成物。
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