JPH10237270A - 積層板用エポキシ樹脂組成物、その製造方法及びプリプレグ - Google Patents

積層板用エポキシ樹脂組成物、その製造方法及びプリプレグ

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JPH10237270A
JPH10237270A JP3878497A JP3878497A JPH10237270A JP H10237270 A JPH10237270 A JP H10237270A JP 3878497 A JP3878497 A JP 3878497A JP 3878497 A JP3878497 A JP 3878497A JP H10237270 A JPH10237270 A JP H10237270A
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善彦 中村
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康雄 福原
Naoto Ikegawa
直人 池川
Yukihiro Hatsuta
行大 八田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 含浸性が優れたプリプレグが得られる、実質
的に無溶剤の積層板用エポキシ樹脂組成物を提供する。
また、そのプリプレグが得られるエポキシ樹脂組成物の
製造方法を提供する。また、含浸性が優れたプリプレグ
を提供する。 【解決手段】 エポキシ樹脂組成物に、ポリシロキサン
系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の、それを配合す
ることによりエポキシ樹脂組成物の表面張力を低下させ
る化合物をも、その表面張力が10%以上低下するよう
に配合する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、銅張り積層板等の
製造に使用される実質的に無溶剤のエポキシ樹脂組成
物、及びその製造方法、及びそのエポキシ樹脂組成物を
用いたプリプレグに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、プリント配線板の製造に用いられ
るエポキシ樹脂積層板は、例えばガラスクロス等の基材
にエポキシ樹脂組成物を含浸した後、乾燥して半硬化さ
せることによってプリプレグを製造し、このプリプレグ
を所要枚数重ねるとともに、必要に応じて銅箔等の金属
箔をその片側又は両側に配して積層した後、加熱加圧し
て製造されている。そして、上記エポキシ樹脂組成物
は、基材内部にまで含浸するのに適する粘度にするため
に溶剤を配合して粘度調整することが一般に行われてい
る。
【0003】しかし、溶剤を配合して粘度調整したエポ
キシ樹脂組成物を用いる場合、溶剤を大量に使用するた
め、作業環境や安全性等に問題があった。そのため、例
えば特公昭60−39288号に記載されたような、分
子内にエポキシ基を複数有するエポキシ樹脂とフェノー
ル樹脂と硬化剤等を加熱溶融して混合することにより、
実質的に無溶剤の液状エポキシ樹脂組成物を製造し、こ
の液状エポキシ樹脂組成物を基材に含浸してプリプレグ
を製造する方法や、特開平8−132537号に記載さ
れたような、分子内にエポキシ基を複数有するエポキシ
樹脂と硬化剤等を配合した実質的に無溶剤のエポキシ樹
脂組成物を基材の片面に塗工した後、加熱して粘度を低
下させて含浸する方法等が提案されている。
【0004】しかし、これらの特公昭60−39288
号や特開平8−132537号に記載されたような方法
に用いる実質的に無溶剤のエポキシ樹脂組成物は、溶剤
を配合したエポキシ樹脂組成物と比較すると粘度が高
く、得られるプリプレグは、内部に樹脂が含浸されない
部分が多数残留したり、一般に「はじき」と呼ばれる表
面に樹脂付着量の特に少ない部分が多数形成されたり、
樹脂付着量の表裏の差が大きくなる場合があり、含浸性
が低いという問題があった。
【0005】この内部に樹脂が含浸されない部分が多数
残留したプリプレグや、表面に樹脂付着量の特に少ない
部分が多数形成されたプリプレグを用いて製造した積層
板は、内部に気泡が残留する場合があり、吸湿耐熱性や
電気的信頼性が低いという問題があった。また、樹脂付
着量の表裏の差が大きなプリプレグを用いて製造した積
層板は、表裏の電気特性が異なる場合があり、電気的信
頼性が低いという問題があった。そのため、実質的に無
溶剤のエポキシ樹脂組成物であって、含浸性が優れたプ
リプレグが得られる積層板用エポキシ樹脂組成物が望ま
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を改善するために成されたもので、その目的とするとこ
ろは、含浸性が優れたプリプレグが得られる、実質的に
無溶剤の積層板用エポキシ樹脂組成物を提供することに
ある。
【0007】また、含浸性が優れたプリプレグが得られ
る、実質的に無溶剤の積層板用エポキシ樹脂組成物の製
造方法を提供することにある。また、含浸性が優れたプ
リプレグを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る
積層板用エポキシ樹脂組成物は、分子内にエポキシ基を
複数有するエポキシ樹脂と、その硬化剤とを配合した実
質的に無溶剤の積層板用エポキシ樹脂組成物において、
エポキシ樹脂組成物に、それを配合することによりエポ
キシ樹脂組成物の表面張力を低下させる化合物をも、そ
の表面張力が10%以上低下するように配合しているこ
とを特徴とする。
【0009】本発明の請求項2に係る積層板用エポキシ
樹脂組成物は、請求項1記載の積層板用エポキシ樹脂組
成物において、エポキシ樹脂組成物の表面張力を低下さ
せる化合物を配合する量が、エポキシ樹脂組成物100
重量部に対し0.01〜3重量部であることを特徴とす
る。
【0010】本発明の請求項3に係る積層板用エポキシ
樹脂組成物は、請求項1又は請求項2記載の積層板用エ
ポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂組成物の表面
張力を低下させる化合物として、ポリシロキサン系界面
活性剤を配合していることを特徴とする。
【0011】本発明の請求項4に係る積層板用エポキシ
樹脂組成物は、請求項1又は請求項2記載の積層板用エ
ポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂組成物の表面
張力を低下させる化合物として、フッ素系界面活性剤を
配合していることを特徴とする。
【0012】本発明の請求項5に係る積層板用エポキシ
樹脂組成物は、請求項1から請求項4のいずれかに記載
の積層板用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂
組成物の融点が、80℃以下であることを特徴とする。
【0013】本発明の請求項6に係る積層板用エポキシ
樹脂組成物の製造方法は、請求項1から請求項5のいず
れかに記載の積層板用エポキシ樹脂組成物の製造方法で
あって、エポキシ樹脂組成物の表面張力を低下させる化
合物を配合する方法が、エポキシ樹脂及びその硬化剤の
うちの少なくとも1成分と、エポキシ樹脂組成物の表面
張力を低下させる化合物とを閉鎖した容器に満たし、混
合して配合する方法であることを特徴とする。
【0014】本発明の請求項7に係る積層板用エポキシ
樹脂組成物の製造方法は、請求項1から請求項5のいず
れかに記載の積層板用エポキシ樹脂組成物の製造方法で
あって、エポキシ樹脂組成物の表面張力を低下させる化
合物を配合する方法が、エポキシ樹脂及びその硬化剤の
うちの少なくとも1成分と、エポキシ樹脂組成物の表面
張力を低下させる化合物とを減圧した容器に収容し、混
合して配合する方法であることを特徴とする。
【0015】本発明の請求項8に係るプリプレグは、請
求項1から請求項5のいずれかに記載の積層板用エポキ
シ樹脂組成物を、基材の少なくとも一方の面に塗工した
後、加熱して基材に含浸してなる。
【0016】本発明によると、それを配合することによ
りエポキシ樹脂組成物の表面張力を低下させる化合物
を、エポキシ樹脂組成物の表面張力が10%以上低下す
るように配合した後、混合して他の成分に溶解または分
散させると、エポキシ樹脂組成物の表面張力が低下し
て、基材に対しての濡れ性が向上し、基材内部までエポ
キシ樹脂組成物が浸透しやすくなる。また基材の表面に
露出している部分に対しての濡れ性も向上するため、は
じき状の表面に樹脂付着量の特に少ない部分が形成され
難くなる。そのため実質的に無溶剤の積層板用エポキシ
樹脂組成物を用いた場合であっても、含浸性が優れたプ
リプレグが得られる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明に係る積層板用エポキシ樹
脂組成物は、分子内にエポキシ基を複数有するエポキシ
樹脂と、その硬化剤と、それを配合することによりエポ
キシ樹脂組成物の表面張力を低下させる化合物(以下、
張力低下剤と記す)とを少なくとも配合した実質的に無
溶剤の積層板用エポキシ樹脂組成物である。
【0018】なお、エポキシ樹脂組成物中に、張力低下
剤を、それを配合することによりエポキシ樹脂組成物の
表面張力が10%以上低下するように配合していること
が重要である。配合していない場合、及び表面張力の低
下が10%未満の配合量の場合には含浸性が低く、得ら
れるプリプレグの内部に樹脂が含浸されない部分が多数
残留したり、はじき状の表面に樹脂付着量の特に少ない
部分が多数形成されたり、樹脂付着量の表裏の差が大き
くなる場合がある。
【0019】張力低下剤を、それを配合することにより
エポキシ樹脂組成物の表面張力が10%以上低下するよ
うに配合した後、混合して他の成分に溶解または分散さ
せると、エポキシ樹脂組成物の表面張力が低下して、基
材に対しての濡れ性が向上し、基材内部までエポキシ樹
脂組成物が浸透しやすくなる。そのため基材内部の樹脂
が含浸されない部分が減少したり、エポキシ樹脂組成物
を供給した側の基材表面から他方の面に移動する樹脂量
が多くなって樹脂付着量の表裏の差が小さくなる。また
基材の表面に露出している部分に対しての濡れ性も向上
するため、はじき状の表面に樹脂付着量の特に少ない部
分が形成され難くなる。
【0020】なお、本発明の表面張力は、一般にウィン
ヘルミー法(垂直板法、吊板法及びCBVP法ともい
う)と呼ばれる、鉛直に吊された板を液体中に浸したと
きの板に働く力より求める値を用いる。そして、張力低
下剤を除く他の全成分を混合したものと、張力低下剤を
含めた全成分を混合したものの表面張力を、両者が共に
液体状態である温度であり、かつ同じ温度で測定し、そ
の両者の値より張力低下剤を配合することによりエポキ
シ樹脂組成物の表面張力を低下させる比率を求める。な
お、この測定温度は、測定しようとするものが共に液体
状態であり、かつ同じ温度で測定する場合には、温度を
変更しても表面張力を低下させる比率はほぼ一定の値と
なるため特に限定するものではないが、測定しようとす
るものの融点より80℃程度高い温度で測定すると効率
的に測定可能である。
【0021】なお、張力低下剤を配合することによりエ
ポキシ樹脂組成物の表面張力を低下させる値の最大値
は、100%以下であれば特に限定するものではない
が、張力低下剤の量をあまり多く配合すると、得られる
積層板の耐熱性が低下する場合があるため、エポキシ樹
脂組成物100重量部に対し0.01〜3重量部の範囲
内で配合すると好ましい。3重量部を越える場合は得ら
れる積層板の耐熱性が低下する場合がある。なお一般
に、3重量部を越える量配合しても、エポキシ樹脂組成
物の表面張力を低下させる効果はほとんど差がないた
め、経済的でないという問題も発生する。また、0.0
1重量部未満配合するだけで、エポキシ樹脂組成物の表
面張力を10%以上低下させる化合物は一般的でない。
【0022】この張力低下剤は一般に界面活性剤と呼ば
れている化合物であり、例えば、ポリエーテル変性ジメ
チルポリシロキサン共重合物、アラルキル変性ポリシロ
キサン、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン
等のポリシロキサン系界面活性剤や、フッ素化アルキル
エステル、パーフロロアルキルアルコキシレート、パー
フロロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フロロ
アルキルカルボン酸、パーフロロアルキルカルボン酸等
のフッ素原子を構造中に有するフッ素系界面活性剤や、
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂
肪酸エステル、等が挙げられ、併用することもできる。
なお、ポリシロキサン系界面活性剤及びフッ素系界面活
性剤を用いた場合、少量の配合でエポキシ樹脂組成物の
表面張力を低下させることが可能なため、得られる積層
板の耐熱性が優れ好ましい。
【0023】なお、用いる張力低下剤が、エポキシ樹脂
等を溶解させる液体化合物のため、溶剤としても用いる
ことが可能な化合物の場合であっても、本発明の場合は
溶剤には含めず、このような張力低下剤を配合したエポ
キシ樹脂組成物であっても、実質的に無溶剤の積層板用
エポキシ樹脂組成物に含めるものである。
【0024】本発明で用いるエポキシ樹脂は、1分子内
にエポキシ基を複数有するエポキシ樹脂であり、例え
ば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノール
F型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹
脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレ
ゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹
脂、芳香族アミン系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニル
メタン型エポキシ樹脂及びこれらのエポキシ樹脂構造体
中の水素原子の一部をハロゲン化することにより難燃化
したエポキシ樹脂等の単独、変性物、混合物が挙げられ
る。なお、エポキシ樹脂1分子内のエポキシ基の数は、
2個以上であれは特に限定するものではないが、あまり
多いとエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなって、基材へ
の含浸性が低下するため、2〜30個の範囲のものを使
用すると好ましい。なお、分子内にエポキシ基を1個有
するエポキシ樹脂をも併用することもできる。
【0025】本発明で用いる硬化剤は、エポキシ樹脂と
反応して硬化させるものであれば特に限定するものでは
なく、例えば、ジシアンジアミド、脂肪族ポリアミド等
のアミド系硬化剤や、芳香族アミン等のアミン系硬化剤
や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノール
ノボラック、クレゾールノボラック、ピロガロール等の
フェノール性化合物や、ジアミノマレオニトリルや、ヒ
ドラジド化合物や、酸無水物等が挙げられ、これらを併
用することもできる。なお、硬化剤としてジシアンジア
ミドを含有する場合、得られるプリプレグの保存安定
性、及び得られる積層板の耐熱性が優れ好ましい。
【0026】なお、エポキシ樹脂組成物の融点が、80
℃以下、より好ましくは室温以下となるようにエポキシ
樹脂及び硬化剤等を選ぶと、基材への含浸性が優れたプ
リプレグを容易に得ることができ好ましい。80℃を越
える場合は加熱するための設備が大がかりになって、生
産性が低下しやすい。なお、硬化剤としてフェノール性
化合物を含有させると、エポキシ樹脂組成物の融点を低
下しやすく好ましい。なお、エポキシ樹脂組成物の融点
の下限は、室温・常圧で液状又は固体状のエポキシ樹脂
組成物が得られるものであれば特に限定するものではな
いが、−100℃以上のものが一般的に用いられる。
【0027】なお、エポキシ樹脂組成物には硬化反応を
促進するために、硬化促進剤の配合が現実的である。用
いることができる硬化促進剤としては、例えば、2−メ
チルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾー
ル、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、
1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−
7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等
の三級アミン類、トリブチルホスフィン、トリフェニル
ホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホス
ホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフ
ィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン
塩等が例示でき、これらは単独で用いてもよく、2種類
以上併用してもよい。通常、硬化促進剤の配合量は、エ
ポキシ樹脂組成物100重量部に対して1重量部以下程
度である。
【0028】更にエポキシ樹脂組成物には、必要に応じ
て無機充填材、難燃剤等をも配合することができる。
【0029】本発明のエポキシ樹脂組成物は、分子内に
エポキシ基を複数有するエポキシ樹脂とその硬化剤と張
力低下剤等を配合した後、必要に応じて加熱溶融させな
がら、均一に混合して製造する。
【0030】なお、張力低下剤を他の成分と混合する場
合には、エポキシ樹脂及びその硬化剤のうちの少なくと
も1成分(複数種のエポキシ樹脂や硬化剤を併用する場
合、その中の少なくとも1成分)と張力低下剤とを、必
要に応じて加熱溶融させた後、閉鎖した容器に満たして
混合する方法や、エポキシ樹脂及びその硬化剤のうちの
少なくとも1成分(同上)と張力低下剤とを、必要に応
じて加熱溶融させた後、減圧した容器に収容して混合す
る方法で混合した後、残る他の成分と混合するようにす
ると、得られるプリプレグや積層板の内部に微細な気泡
が多数残留することが少なくなり好ましい。
【0031】これは、張力低下剤と他の成分を外気に露
出した状態で一般の方法で撹拌すると、外気を抱き込ん
でエポキシ樹脂組成物中に微細な空気の泡を多量に含み
やすい。そしてこの微細な空気の泡を含んだエポキシ樹
脂組成物を基材に含浸した場合、この微細な空気の泡が
樹脂中に残留し、このプリプレグを用いて製造した積層
板の内部にも微細な気泡が残留して吸湿後の耐熱性を低
下させる場合がある。しかし、上記閉鎖した容器に満た
して混合する方法又は上記減圧した容器に収容して混合
する方法で混合した場合、撹拌するとき外気を抱き込み
難いため、得られるプリプレグ及び積層板中に微細な空
気の泡が残留し難くなる。
【0032】なお、上記閉鎖した容器に満たして混合す
る方法に用いる具体的設備としては、スタティックミキ
サー、パイプラインミキサー、ニーダー等の撹拌部にエ
ポキシ樹脂組成物を満たして比較的静的に混合する撹拌
機が挙げられる。また、上記減圧した容器に収容して混
合する方法の場合には、容器内を100Torr以下の
減圧度にすると、エポキシ樹脂組成物中に微細な空気の
泡が特に残留し難くなり好ましい。
【0033】本発明で得られたエポキシ樹脂組成物を基
材に含浸させ、加熱乾燥してプリプレグを製造する。基
材としては、特に限定するものではないが、ガラス繊
維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等
の繊維を使用したクロス、マットもしくは不織布、また
はクラフト紙、リンター紙等の紙などを使用することが
できる。加熱乾燥する条件としては特に限定するもので
はなく、エポキシ樹脂組成物が半硬化する条件で乾燥を
行う。
【0034】なお、エポキシ樹脂組成物を基材に含浸さ
せる方法としては、浸漬法や、ロールコーター法や、ダ
イコーター法等が挙げられる。ダイコーターを用いて基
材の一方の面に塗工した後、加熱することによってエポ
キシ樹脂組成物を基材に含浸する方法の場合、ダイコー
ターから供給するエポキシ樹脂組成物の量を調整するこ
とで所望の樹脂付着量のプリプレグが得やすく好まし
い。なお、含浸する樹脂量は、特には限定しないが、3
0〜60重量%とすると、得られる積層板の耐熱性およ
び板厚偏差が優れ好ましい。
【0035】
【実施例】
(実施例1〜11、比較例1〜3)エポキシ樹脂組成物
の原料として、下記の3種類のエポキシ樹脂、2種類の
硬化剤、1種類の硬化促進剤及び5種類の張力低下剤を
使用した。 ・エポキシ樹脂1:エポキシ当量が500であり、融点
が約80℃である臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹
脂[東都化成株式会社製、商品名YDB500] ・エポキシ樹脂2:エポキシ当量が220であり、融点
が約90℃であるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂
[大日本インキ化学工業株式会社製、商品名EPICL
ON N690] ・エポキシ樹脂3:エポキシ当量が190であり、室温
で液体のビスフェノールA型エポキシ樹脂[油化シェル
エポキシ株式会社製、商品名エピコート828] ・硬化剤1:ジシアンジアミド[油化シェルエポキシ株
式会社製、商品名DICY7] ・硬化剤2:ビスフェノールA[試薬を使用] ・硬化促進剤:2−エチル−4−メチルイミダゾール
[試薬を使用] ・張力低下剤A:フッ素化アルキルエステル[住友スリ
ーエム株式会社製、商品名FC430] ・張力低下剤B:パーフロロアルキルアルコキシレート
[住友スリーエム株式会社製、商品名FC171] ・張力低下剤C:パーフロロアルキルポリオキシエチレ
ンエタノール[住友スリーエム株式会社製、商品名FC
170c]。 ・張力低下剤D:アラルキル変性メチルアルキルポリシ
ロキサン[ビックケミー株式会社製、商品名BYK32
2] ・張力低下剤E:ポリエーテル変性ジメチルポリシロキ
サン共重合物[ビックケミー株式会社製、商品名BYK
302] 上記エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び張力低下剤
を表1に示す重量部配合した後、100℃に加温し、次
いで外気に露出した状態で混合して無溶剤のエポキシ樹
脂組成物を得た。
【0036】
【表1】
【0037】このエポキシ樹脂組成物の表面張力と融点
を求めた。その結果を表1に示す。なお、表面張力の測
定は、ウィンヘルミー法を用いた表面張力計[協和界面
科学社製、商品名CBVP式表面張力計A3型]で、実
施例1〜9及び比較例1,2は100℃、実施例10,
11及び比較例3は160℃で測定した。そして、実施
例1〜9の張力低下剤を配合することによりエポキシ樹
脂組成物の表面張力を低下する比率を、張力低下剤を配
合していないこと以外は同じ配合である比較例1の値を
用いて、また実施例10,11の張力低下剤を配合する
ことによりエポキシ樹脂組成物の表面張力を低下する比
率を、同様に比較例3の値を用いて、計算して求めた。
【0038】次いで、このエポキシ樹脂組成物を、ダイ
コーターのホッパーに供給し、そのホッパー内のエポキ
シ樹脂組成物をダイコーターのリップ部から吐出させ
て、厚さ0.18mmのガラスクロス基材[旭シュエー
ベル株式会社製、商品名 7628]の片面に塗工し、
次いで実施例1〜9及び比較例1,2は120℃、実施
例10,11及び比較例3は170℃のヒーターで加熱
して基材に含浸した後、180℃で150秒加熱してプ
リプレグを得た。
【0039】また、得られたプリプレグを4枚重ね、そ
の両側に厚さ18μmの銅箔を積層した後、170℃、
3.0MPaの条件で70分加熱加圧して銅張り積層板
を得た。
【0040】(実施例12)エポキシ樹脂、硬化剤、硬
化促進剤及び張力低下剤を配合した後、100℃に加温
し、次いでパイプラインミキサーに投入して撹拌するこ
とにより、上記閉鎖した容器に満たして混合する方法で
混合したこと以外は実施例1と同様にしてプリプレグ及
び銅張り積層板を得た。
【0041】(実施例13)エポキシ樹脂、硬化剤、硬
化促進剤及び張力低下剤を配合した後、100℃に加温
し、次いでその配合した容器内を80Torrに減圧し
た状態で撹拌することにより、上記減圧した容器に収容
して混合する方法で混合したこと以外は実施例1と同様
にしてプリプレグ及び銅張り積層板を得た。
【0042】(評価)各実施例及び各比較例で得られた
プリプレグの含浸性の評価として、樹脂浸透性、はじき
発生数及び樹脂量の表裏差を評価した。また、各実施例
及び各比較例で得られたプリプレグの樹脂内に残留して
いる、微細な気泡量を評価した。
【0043】樹脂浸透性は、得られたプリプレグを20
倍の拡大鏡を用いて、ガラスクロスの繊維間への樹脂の
浸透状況を観察し、浸透していない部分が少ない場合を
○とし、浸透していない部分が多数ある場合を×とし、
それらの中間の場合を△とした。
【0044】はじき発生数は、50×50cmのプリプ
レグの表面に形成された、はじき状の樹脂付着量の特に
少ない部分のうち、φ2mm以上の大きさのものの数を
目視で数えた。
【0045】樹脂量の表裏差は、得られたプリプレグを
断面観察して、表裏の樹脂の厚みの差が5μm未満の場
合を○とし、差が5〜20μmの場合を△とし、差が2
0μmを越える場合を×とした。
【0046】微細な気泡量は、得られたプリプレグを5
倍の拡大鏡を用いて、樹脂内に残留している微細な気泡
を観察し、気泡の量が少ない場合を○とし、気泡の量が
多い場合を×とした。
【0047】また、各実施例及び各比較例で得られた銅
張り積層板について、吸湿耐熱性を測定した。その方法
は、表面の銅箔を除去した後、50×50mmに切断
し、次いで、133℃、相対湿度100%のプレッシャ
ークッカーテスト処理を2時間行った後、260℃のハ
ンダに20秒浸漬し、ふくれ、剥がれ等の異常が観察さ
れない場合を合格として、測定試料5枚中の合格の数を
求めた。
【0048】(結果)評価結果は表1に示した通り、張
力低下剤以外の配合は同じである、実施例1〜9及び実
施例12,13で得られたプリプレグは比較例1,2で
得られたプリプレグと比べ、実施例10,11で得られ
たプリプレグは比較例3で得られたプリプレグと比べ、
樹脂浸透性、はじき発生数及び樹脂量の表裏差が共に優
れており、各実施例で得られたプリプレグは含浸性が優
れていることが確認された。
【0049】また、用いたエポキシ樹脂組成物の融点が
80℃以下である実施例1〜9及び実施例12,13で
得られたプリプレグは、実施例10,11で得られたプ
リプレグと比べ、特に樹脂浸透性が優れていることが確
認された。
【0050】また、上記閉鎖した容器に満たして混合す
る方法又は上記減圧した容器に収容して混合する方法で
混合したエポキシ樹脂組成物を用いた実施例12,13
は、実施例1〜11と比べ、プリプレグの樹脂内に残留
している微細な気泡が少なく、張力低下剤を配合してい
ない比較例1と同等であることが確認された。
【0051】また、張力低下剤の配合量が、エポキシ樹
脂組成物100重量部に対し0.01〜3重量部の範囲
内である実施例1〜4及び実施例6〜13で得られた銅
張り積層板は、実施例5で得られた銅張り積層板と比
べ、吸湿耐熱性が優れていることが確認された。
【0052】
【発明の効果】本発明の請求項1から請求項5に係る積
層板用エポキシ樹脂組成物は、張力低下剤を、それを配
合することによりエポキシ樹脂組成物の表面張力が10
%以上低下するように配合しているため、実質的に無溶
剤であっても、含浸性が優れたプリプレグが得られる。
【0053】本発明の請求項2に係る積層板用エポキシ
樹脂組成物は、上記の効果に加え、吸湿耐熱性が優れた
積層板が得られる。
【0054】本発明の請求項6及び請求項7に係る積層
板用エポキシ樹脂組成物の製造方法を用いると、含浸性
が優れると共に、樹脂内に残留している微細な気泡が少
ないプリプレグが得られる。
【0055】本発明の請求項8に係るプリプレグは、そ
れを配合することによりエポキシ樹脂組成物の表面張力
が10%以上低下するように張力低下剤を配合したエポ
キシ樹脂組成物を用いているため、含浸性が優れたプリ
プレグとなる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 83:04) (C08L 63/00 71:00) (72)発明者 八田 行大 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分子内にエポキシ基を複数有するエポキ
    シ樹脂と、その硬化剤とを配合した実質的に無溶剤の積
    層板用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂組成
    物に、それを配合することによりエポキシ樹脂組成物の
    表面張力を低下させる化合物をも、その表面張力が10
    %以上低下するように配合していることを特徴とする積
    層板用エポキシ樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 エポキシ樹脂組成物の表面張力を低下さ
    せる化合物を配合する量が、エポキシ樹脂組成物100
    重量部に対し0.01〜3重量部であることを特徴とす
    る請求項1記載の積層板用エポキシ樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 エポキシ樹脂組成物の表面張力を低下さ
    せる化合物として、ポリシロキサン系界面活性剤を配合
    していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の
    積層板用エポキシ樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 エポキシ樹脂組成物の表面張力を低下さ
    せる化合物として、フッ素系界面活性剤を配合している
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の積層板用
    エポキシ樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 エポキシ樹脂組成物の融点が、80℃以
    下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいず
    れかに記載の積層板用エポキシ樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1から請求項5のいずれかに記載
    の積層板用エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、エ
    ポキシ樹脂組成物の表面張力を低下させる化合物を配合
    する方法が、エポキシ樹脂及びその硬化剤のうちの少な
    くとも1成分と、エポキシ樹脂組成物の表面張力を低下
    させる化合物とを閉鎖した容器に満たし、混合して配合
    する方法であることを特徴とする積層板用エポキシ樹脂
    組成物の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1から請求項5のいずれかに記載
    の積層板用エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、エ
    ポキシ樹脂組成物の表面張力を低下させる化合物を配合
    する方法が、エポキシ樹脂及びその硬化剤のうちの少な
    くとも1成分と、エポキシ樹脂組成物の表面張力を低下
    させる化合物とを減圧した容器に収容し、混合して配合
    する方法であることを特徴とする積層板用エポキシ樹脂
    組成物の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1から請求項5のいずれかに記載
    の積層板用エポキシ樹脂組成物を、基材の少なくとも一
    方の面に塗工した後、加熱して基材に含浸してなるプリ
    プレグ。
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