JP3647193B2 - 難燃性エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた積層板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン系難燃剤を使用しなくても優れた難燃性を有する積層板用難燃性エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた積層板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂はその優れた特性から電気及び電子機器部品等に広く使用されており、火災に対する安全性を確保するため難燃性が付与されている場合が多い。これらの樹脂の難燃化は従来臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン含有化合物を用いることが一般的であった。これらのハロゲン含有化合物は高度な難燃性を有するが、特に芳香族臭素化合物では熱分解で腐食性の臭素、臭化水素を分離するだけでなく、酸素存在下で分解した場合に毒性の高いポリブロムジベンゾフランやポリブロモジベンゾオキシンを形成する可能性がある。また、臭素を含有する老朽廃材やゴミの処理は極めて困難である。このような理由から臭素含有難燃剤に代わる難燃剤としてリン化合物が広く検討されている。しかし、エポキシ樹脂系にリン化合物を単独で用いると十分な難燃性を得るには多量のリン化合物を添加する必要があり、機械的、化学的、あるいは電気的特性を著しく低下させるという欠点が生じる。また、トリフェニルホスフェートのような通常積層板用に使用されるリン酸エステルを使用するとリン酸エステルの融点が低いためにBステージ化したプリプレグにタックが生じ、積層時のハンドリングに問題が生じていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、リン化合物と窒素化合物を併用することで、ノンハロゲンでエポキシ樹脂を難燃化できる。ところが、通常積層板用に使用される低融点のリン酸エステルを使用するとBステージ化したプリプレグにタックが生じる。この問題を解決するためには高融点のリン酸エステルを用いるとよいが、一般に高融点のリン酸エステルは溶媒に難溶であるという問題がある。本発明は、前述の問題点を解決すべく種々検討された結果なされたものであり、ハロゲン含有化合物を添加することなく、高度な難燃性を有し、Bステージ化されたプリプレグにタック性を生じない、かつ最終製品の特性を低下させない積層板用難燃性エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた積層板を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)フェノールノボラックエポキシ樹脂及び又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂を100重量部、(B)アミノ基を有するエポキシ樹脂硬化剤を10〜70重量部、及び(C)下記(1)式で示されるで示される芳香族ジホスフェートを、リンとして(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対し0.5〜5重量部を必須成分として含有する積層板用難燃性エポキシ樹脂組成物であり、さらにはこのエポキシ樹脂組成物を固形分全量のうち80重量%以上含有する積層板用難燃性エポキシ樹脂組成物、を要旨とするものである。
【0005】
【化1】
(式中、R1、R2、R3 及びR4 は同一もしくは異なる水素原子もしくは低級アルキル基、Yは−CH2−、−C(CH2)2−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−、もしくは−N2−、kは0又は1、mは0〜4の整数を示す)
【0006】
上記(1)式の芳香族ジホスフェートは溶媒に可溶であり、しかも高融点であるという特徴をもつ。本発明は、エポキシ樹脂に難燃性の高い骨格を持つフェノールノボラックエポキシ樹脂もしくはクレゾールノボラックエポキシ樹脂を使用し、リン成分と窒素成分を共存させることによる相乗効果によって難燃性を高め、更に融点の高い(C)芳香族ジホスフェートを使用することによりBステージ化されたプリプレグにタックを生じることなく、難燃性と耐熱性を両立させることを技術的な骨子とするものである。
【0007】
さらには、好ましくは上記のエポキシ樹脂組成物100重量部に対し無機充填材の全部又は一部として水酸化アルミニウムあるいは水酸化マグネシウム30〜300重量部を用いることにより一層高い難燃性を得ることができる。この理由は、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムは、300℃以上の高温において、配合されているリン成分と反応して難燃性の高いリン酸アルミニウム及びリン酸マグネシウムが生成するためである。
【0008】
本発明で用いる(A)成分としては、フェノールノボラックエポキシ樹脂あるいはクレゾールノボラックエポキシ樹脂が挙げられるが、メチル基が燃焼しやすいことを考えると、フェノールノボラックエポキシ樹脂が望ましい。
【0009】
本発明で使用されるアミノ基を有するエポキシ樹脂硬化剤(B)としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC2 〜C20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンナフタレン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアンジアミドなどが例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。耐熱性、硬化性等の点で、特に好ましい硬化剤は、ジアミノジフェニルメタン、ジシアンジアミドである。また、これらのうち何種類かを併用することができる。
【0010】
(C)成分の芳香族ジホスフェートは、上記(1)式で示される縮合燐酸エステルであり、融点が高く、種々の溶剤に対して優れた溶解性を有している。
【0011】
各成分の配合割合について説明する。
(B)成分のエポキシ樹脂硬化剤は(A)成分のエポキシ樹脂100重量部に対して10〜70重量部である。10重量部未満であると樹脂の硬化が不十分となり、70重量部を越えると未反応のアミノ基が硬化物中に残存し、耐湿性を低下させる可能性があるため好ましくない。(C)成分の芳香族ジホスフェートは、リンとして成分(A)及び(B)の合計100重量部に対し、0、5重量部未満であると難燃性に対する効果が小さく、5重量部を越えると耐熱性を低下させるため好ましくない。
【0012】
本発明は、この成分(A)、(B)及び(C)からなる難燃性エポキシ樹脂組成物を固形分全量のうち80重量%以上含む樹脂組成物が好ましい。即ち、成分(A)、(B)及び(C)の合計100重量部に対し、好ましくは25重量部までビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、フェノールノボラック等の硬化剤を併用することができる。
【0013】
また、難燃性を更に向上させるために、水酸化アルミニウムあるいは水酸化マグネシウムは前記エポキシ樹脂組成物に対して30〜300重量部含有することが好ましい。30重量部未満では難燃性向上に対する効果が小さく、300重量部を越えると耐熱性を低下させ、また、樹脂中への均一分散が困難となるため好ましくない。
【0014】
本発明の積層板用難燃性エポキシ樹脂組成物は種々の形態で使用されるが、積層板を得るために繊維基材に含浸する際には通常溶剤が使用される。用いられる溶剤は組成の一部に対して良好な溶解性を示すことが必要であるが、溶剤の一部として悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。
【0015】
本発明の積層板用難燃性エポキシ樹脂組成物を溶剤に溶解して得られるワニスは、ガラス織布、ガラス不織布、紙、あるいはガラス繊維以外を成分とする布等の繊維基材に塗布、含浸させ、80〜200℃で乾燥させることによりプリプレグを得ることが出来る。プリプレグは加熱加圧して積層板を製造するために用いられる。本発明の積層板用難燃性エポキシ樹脂組成物はハロゲン含有化合物を添加することなく高度な難燃性を有し、かつ積層板等の最終製品の特性を低下させない樹脂組成物であり、特に積層板に好適に使用されるものである。
【0016】
【実施例】
(実施例1)
フェノールノボラックエポキシ樹脂(大日本インキ化学製エピクロンN−770)100重量部、4,4’−ジアミノジフェニルメタン40重量部、及び芳香族ジホスフェートPX−200(大八化学製、リン含有率 9.0%)30重量部に、N,N−ジメチルホルムアミド/メチルエチルケトン=1/1の混合溶媒を加え、不揮発分濃度50%となるようにワニスAを調製した。
更に、このワニスの不揮発分100重量部に対し、水酸化アルミニウム(住友化学製CL−310)50重量部、及び水酸化マグネシウム(協和化学工業製キスマ5A)50重量部を加えワニスBを作製した。
このワニスBを用いて、ガラスペーパー(厚さ0.4mm、日本バイリーン製)100重量部に対しワニス不揮発分として1300重量部含浸させて、150℃の乾燥胴で5分乾燥させプリプレグを作成した。
また、ワニスAを用いて、ガラスクロス(厚さ0.18mm、日東紡績製)100重量部にワニス固形分で150重量部含浸させて、150℃の乾燥胴で5分乾燥させプリプレグを作成した。ガラスペーパー使用プリプレグ3枚の上下にガラスクロス使用プリプレグを各1枚重ね、更に上下に厚さ35μmの電解銅箔を重ねて、圧力20kgf/cm2 、温度170℃で120分加熱加圧成形を行い、厚さ1.6mmの両面銅張り積層板を得た。
【0017】
(実施例2、比較例1〜3)
表1に示した配合処方で、これ以外は全て実施例1と同様の方法で両面銅張り積層板を作成した。
(比較例4)
臭素化エポキシ樹脂を使用したCEM−3(住友ベークライト製ELC−4970)について特性を評価した。
【0018】
得られた積層板の特性の測定方法は以下の通りである。
1.難燃性は、UL−94規格に従い垂直法により評価を行った。
2.半田耐熱性は、JIS C 6481に準じて測定し、煮沸2時間の吸湿処理もしくは125℃プレッシャークッカー処理を30分行った後、260℃の半田槽に180秒浮かべた後の外観の異常の有無を調べた。
○:異常なし,×:フクレ発生
3.熱時曲げ強さはJIS C 6481の常態曲げ強さに準じた測定方法で行い、測定前に試験片を150℃で1時間処理しその状態で測定を行った。
【0019】
評価結果を表1に示す。実施例で得られた積層板は耐燃性に優れ、半田耐熱性、熱時曲げ強さも良好である。
【表1】
【0020】
【発明の効果】
本発明の積層板用難燃性エポキシ樹脂組成物は、ハロゲン含有化合物を添加することなく高度な難燃性及び優れた半田耐熱性を有し、かつ熱時剛性に優れ、今後要求されるハロゲン含有材料を使用しない積層板用として有用である。さらに、無機充填材の全部又は一部として水酸化アルミニウムあるいは水酸化マグネシウムを用いることにより一層高い難燃性を得ることができる。
Claims (4)
- 請求項1記載のエポキシ樹脂組成物を固形分全量のうち80重量%以上含有する積層板用難燃性エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1記載のエポキシ樹脂組成物100重量部に対し、無機充填材の全部又は一部として水酸化アルミニウム及び又は水酸化マグネシウムを30〜300重量部含有する積層板用難燃性エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1、2又は3記載のエポキシ樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグを1枚又は複数枚積層成形してなる積層板。
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