JPH10180866A - 低熱収縮性ポリエステルフィルム及びその製造方法 - Google Patents

低熱収縮性ポリエステルフィルム及びその製造方法

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JPH10180866A
JPH10180866A JP28505397A JP28505397A JPH10180866A JP H10180866 A JPH10180866 A JP H10180866A JP 28505397 A JP28505397 A JP 28505397A JP 28505397 A JP28505397 A JP 28505397A JP H10180866 A JPH10180866 A JP H10180866A
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film
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temperature
less
polyester film
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JP28505397A
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Masayoshi Asakura
正芳 朝倉
Mika Aeba
美加 饗場
Tetsuya Tsunekawa
哲也 恒川
Kenji Tsunashima
研二 綱島
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低熱収縮性を必要とするOHPや電気絶縁材
料などの用途において、収縮やカ−ル、たるみなどの問
題が生じることのない平面性の良好な低熱収縮ポリエス
テルフィルムとその製造方法が提供される。 【解決手段】 二軸配向されたポリエステルフィルムで
あって、フィルムの平均屈折率とポリエステルの無配向
フィルムの平均屈折率との差が0.033以上、0.0
37以下であり、かつ、厚み方向の屈折率が1.500
以上であり、さらに、フィルムの長手方向、幅方向の1
50℃で30分の熱収縮率が0.3%以下である低熱収
縮性ポリエステルフィルムである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二軸延伸されたポ
リエステルフィルム及びその製造方法に関するものであ
り、更に詳しくは、熱収縮率が小さく、平面性が良好な
ポリエステルフィルムとその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルフィルムは、その物理的お
よび熱的特性に応じて、さまざまな分野で利用されてい
る。特に、縦方向と横方向の二軸方向に延伸されたポリ
エステルフィルムは、機械的特性などに優れるため、よ
り好ましく用いられている。ポリエステルの中でも、特
にポリエチレンテレフタレート(PETとも称する)や
ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PENとも称す
る)は、その機械的および熱的特性が優れ、また、特に
PETは低価格であることなどから、低熱収縮性を必要
とする用途、例えば、複写機やプリンタなどに使用され
るオーバーヘッドプロジェクタ(OHP)用のシートや
製図用原紙、モーターやトランスなどにおける電気絶縁
用材料、また、FPC基板用やペイスト基板、セラミッ
ク工程離型紙、EL原反、リライトカードなどの用途に
広範に使用されている。
【0003】ここで、ポリエステルの二軸延伸フィルム
は、延伸により分子配向させることで、ヤング率などの
機械的特性を向上させたものであるが、このフィルムに
は延伸による歪が分子鎖に残留するため、加熱されるこ
とでこの分子鎖の歪が解放され、熱収縮するという性質
をもっている。この熱収縮特性は、包装用のシュリンク
フィルムなどへ展開して利用されているが、一般には、
この熱収縮特性は障害となることが多い。
【0004】そこで二軸延伸後に、横延伸に用いられる
テンタの中で、横延伸に引続き、熱処理(熱固定とも呼
ばれる)を行なうことで、この分子鎖の歪を解放するこ
とが行なわれているが、一般に熱収縮量がこの熱処理の
温度に応じて低下していくが、かかる熱処理だけでは歪
を完全に除去することができず、熱収縮が残留するとい
う問題が生じる。従来、この残留歪を除去するために、
テンタのレール幅を先細りになるようにして(トウイ
ン、リラックスなどと呼ばれる)、幅方向に若干収縮さ
せるようにして、この残留歪を完全除去する方法が採用
されている。
【0005】しかしながら、この方法では、幅方向の熱
収縮は除去可能であるが、長手方向の熱収縮を除去する
ことはできない。このため、長手方向の熱収縮を除去す
る方法について、過去いろいろな方法が検討されてい
る。例えば、特公平4−28218号公報では、テンタ
のクリップ間隔が徐々に狭くなるようにすることで、長
手方向にリラックス処理を行なう方法が提案されてい
る。しかしながら、この方法では、装置上の問題でリラ
ックスの量に上限があり、また、リラックスの量を大き
くすると、リラックス処理前のクリップの間隔が広くな
り、クリップ把持部と、非把持部の物性のむらが大きく
なるという問題があり、熱収縮の低減効果が十分でない
という問題が生じる。また、一旦フィルムを巻取った後
に、ゆっくりと巻き出しながらオーブンで加熱処理し、
その際に長手方向に速度差をつけてリラックス処理を行
なう方法が行なわれているが、この方法ではフィルムが
幅固定されていないため、フィルム面が波打つような状
況が生じて、平面性が悪化するという問題が生じる。ま
た、特公昭60−226160号公報には、フィルムの
製造工程中に、オーブンによる長手方向のリラックス処
理装置を設ける方法が提案されているが、フィルムの製
造速度との兼ね合いで、処理温度を高めると、フィルム
の平面性が悪化するため、温度をあまり高められず、結
果として特に150℃や200℃のような高温にさらさ
れた際の熱収縮が十分に除去されないという問題が生じ
るため、低熱収縮性、平面性に優れたフィルムが得られ
ていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、かか
る問題を解決し、優れた機械特性などを損なわずに、二
軸延伸フィルムの宿命である熱収縮を、長手方向および
幅方向ともに十分に低減させ、かつ、平面性の良いポリ
エステルフィルムを提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、簡単な工程改善によ
って上記低熱収縮率ポリエステルフィルムを製造する方
法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の低熱収縮性ポリエステルフィルムは、二軸配向され
たポリエステルフィルムであって、フィルムの平均屈折
率とポリエステルの無配向フィルムの平均屈折率との差
が0.033以上、0.037以下で、かつ、厚み方向
の屈折率が1.500以上であり、さらに、フィルムの
長手方向と幅方向の150℃で30分の熱収縮率がいず
れも0.3%以下であることを特徴とするものである。
【0009】そして本発明の低熱収縮性ポリエステルフ
ィルムは次のような好ましい実施態様を含んでいる。
【0010】(a) 示差走査熱量計(DSC)による結晶
融解前に現れる微少吸熱ピーク(Tmeta)が融点
(Tm)以下、(Tmー30)℃以上の範囲であるこ
と。
【0011】(b) 熱機械特性試験機(TMA)による昇
温および降温時の伸縮量から求めた、フィルムの長手方
向の真の収縮量の微分曲線において、ガラス転移点以
上、200℃以下の範囲で収縮量微分値(dL/dT)
が、0.01%/℃以下であること。
【0012】また、本発明の上記低熱収縮性ポリエステ
ルフィルムを製造する方法は、二軸延伸前の無配向フィ
ルムの平均屈折率と二軸延伸後のフィルムの平均屈折率
との差が0.010以上、0.032以下となるように
二軸延伸した後、融点(Tm)以下、(Tm−30)℃
以上の温度で熱処理を施し、熱処理から冷却する工程に
おいて弛緩率が長手方向に2.5%以下、幅方向に5%
以下となるようにリラックス処理を施すことを特徴とす
るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】本発明において、ポリエステルとは、ジオ
ールとジカルボン酸とから縮重合により得られるポリマ
ーであり、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソ
フタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピ
ン酸、セバチン酸、などで代表されるものであり、ま
た、ジオールとは、エチレングリコール、トリメチレン
グリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサ
ンジメタノールなどで代表されるものである。具体的に
は例えば、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレン
テレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、
ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4
−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチ
レン−2,6−ナフタレートなどが挙げられる。これら
のポリエステルは、ホモポリマであってもコポリマであ
ってもよく、共重合成分としては、例えば、ジエチレン
グリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレン
グリコールなどのジオール成分、アジピン酸、セバチン
酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカ
ルボン酸などのジカルボン酸成分が挙げられる。
【0015】本発明において、特にポリエチレンテレフ
タレートを主成分とするポリエステル、あるいはポリエ
チレン−2,6−ナフタレートを主成分とするポリエス
テルが機械的強度、耐熱性、耐薬品性および耐久性など
の観点から好ましい。なかでも、ポリエチレンテレフタ
レートは、価格が安く最も好ましい。
【0016】また、このポリエステルの中には、各種添
加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無
機粒子および有機粒子などが添加されていてもよい。特
に無機粒子や有機粒子は、フィルム表面に易滑性を与
え、フィルムの取扱い性を高めるために有効である。
【0017】また本発明のフィルムは、積層構造をとっ
ていることも好ましい。積層構造としては、共押出によ
る積層や塗布による積層などが挙げられる。塗布による
積層としては、フィルムを横延伸する前に塗材をフィル
ムに塗布して、テンタ内で溶媒の乾燥、横延伸および熱
処理を行なう方法が好ましく行なわれる。これらの積層
構造は、主に、その用途に応じた表面特性を付与するた
めに行なわれる。例えば、インクやトナーなどの易接着
性、静電気を抑える帯電防止性など多用な特性の付与が
可能である。
【0018】本発明における二軸配向されたポリエステ
ルフィルムとは、フィルムの長手方向と、長手方向と直
角な方向(幅方向)に、延伸を行なったフィルムを言
う。具体的には、溶融押出しした実質的に無配向なポリ
エステルフィルムを、長手方向に延伸後に幅方向に延伸
する方法、幅方向に延伸後に長手方向に延伸する方法、
あるいは、長手方向と幅方向同時に延伸する方法があ
り、また、長手方向の延伸と幅方向の延伸を複数回組み
合わせて行なってもよい。
【0019】本発明においては、ポリエステルからなる
二軸配向フィルムにおいて、フィルムの平均屈折率とポ
リエステルの無配向フィルムの平均屈折率との差が0.
033以上、0.037以下であり、かつ、厚み方向の
屈折率が1.500以上であであることが必要である。
好ましくは、フィルムの平均屈折率とポリエステルの無
配向フィルムの平均屈折率との差が0.034以上、
0.036以下であり、厚み方向の屈折率が1.505
以上であることが望ましい。屈折率はフィルムの配向状
態を示し、熱収縮を押さえるためにはフィルムの面方向
の配向を抑え、厚み方向の屈折率を高くする必要があ
る。ここで平均屈折率とは、フィルムの長手方向と幅方
向と厚み方向の屈折率の和を3で除した平均値である。
ポリエステルの無配向フィルムとは、配向フィルムを加
熱装置を具備したプレス板の間で、フィルムの配向を除
去する温度で溶融した後、加圧して100〜200μm
の厚さのシ−トとしてプレス機から取りだして、ただち
に水槽などで急冷し、配向を消去したフィルムである。
具体的には、小片にしたサンプルを真空乾燥した後、プ
レス機で、加熱溶融する。フィルムの配向を除去する加
熱温度としては、PETでは290℃、PENでは32
0℃とし、十分に溶融する時間、例えば5〜10分プレ
ス板の間で保持した後、サンプル内の空気を脱気しなが
ら、加圧して所定の厚さのシ−トにし、さらに5分間保
持した後、サンプルを取りだして、ただちに20℃の水
中で急冷する。該シ−トの3軸方向の屈折率を測定して
平均屈折率を求める。発明者らが測定した結果、PET
の無配向フィルムの平均屈折率は1.578、PENの
無配向フィルムの平均屈折率は1.648であり、これ
らを本発明の無配向フィルムの平均屈折率とする。この
値を用いると、本発明の二軸配向PETフィルムの平均
屈折率は1.611以上、1.615以下の範囲であ
り、また二軸配向PENフィルムの平均屈折率は1.6
81以上、1.685以下の範囲である。
【0020】通常の方法でポリエステルフィルムを製造
すると、フィルムの厚み方向の屈折率は1.480から
1.500未満になるが、これでは熱収縮の低減が十分
にできないため、低熱収縮性に優れたフィルムを得るに
は、厚み方向の屈折率が1.500以上である必要があ
る。また、一般に、厚み方向の屈折率を高めるために、
延伸条件を弱め、フィルム面の配向を落とす方法が用い
られているが、この方法ではフィルムの強度やヤング率
を落とすことになる。フィルムのヤング率、低熱収縮性
ともに優れたフィルムを得るには、本発明の二軸配向ポ
リエステルフィルムの平均屈折率とポリエステルの無配
向フィルムの平均屈折率との差が0.033以上、0.
037以下である必要がある。
【0021】また本発明においては、フィルムの長手方
向および幅方向の150℃で30分の熱収縮率がいずれ
も0.3%以下であることが必要であり、好ましくは
0.1%以下である。熱収縮率が0.3%を超えると、
使用中にフィルムのたるみなどの平面性悪化を招いた
り、収縮による締め付けなどの不具合が生じる。特に、
最近は複写機やプリンター、印刷機などの機械におい
て、高速化のためかなりの熱がかかるものがあり、その
ために、150℃といった高温の熱収縮率の小さいフィ
ルムが求められる。
【0022】また、本発明においては、DSCによる微
小吸熱ピ−ク(Tmeta)が融点(Tm)以下、(T
m−30)℃以上の範囲であることが好ましく、さらに
好ましくは(Tm−5)℃以下、(Tm−25)℃以上
である。このTmetaはテンタで、熱処理しようとす
る温度に加熱された熱風などでフィルムを加熱し、その
時フィルムが昇温した到達温度であり、微小ピーク(フ
ィルムの融解吸熱曲線と重なる場合はラダ−ピ−クとな
る場合がある)として観測される。これは熱処理によっ
て形成された結晶構造のうち、DSCでの再加熱によっ
て、不完全な部分が融解するために生じるものである。
フィルム延伸歪みを完全に除去するには、フィルムの構
造が一部融解するような温度で処理することが好まし
い。つまり、二軸配向ポリエステルフィルムのTmet
aがTm以下、(Tm−30)℃以上の範囲であること
が好ましい。
【0023】なお、フィルムのTmetaと結晶融解温
度と重なり、Tmetaが観測できない場合があるが、
このような場合はTmをTmetaとした。
【0024】本発明においては、熱機械特性試験機(Th
ermo Mechanical Analyzerを略して、以下、TMAと言
う)による昇温、降温時の伸縮量から求めた、フィルム
の長手方向の真の収縮量の微分曲線において、ポリエス
テルのガラス転移点以上、200℃以下の範囲で、収縮
量微分値(dL/dT)が、0.01%/℃以下である
ことが好ましい。TMAとは、電気炉の中にセットした
フィルムに無荷重あるいは一定の荷重をかけておき、長
さの変化を炉の温度を一定速度で昇温あるいは降温しな
がら測定する装置で、温度変化に伴うフィルムの伸縮量
が測定できるものである。
【0025】ここで、一般に、二軸配向フィルムの長手
方向についてTMAにより伸縮量を測定した場合の挙動
を説明する。フィルムを一定速度で昇温していくと、ポ
リマの熱膨張によりフィルムが伸長する。この熱膨張は
可逆的な挙動であり、温度が下がれば元の長さに戻る。
さらに昇温を続けると、ポリマのガラス転移点近傍か
ら、熱膨張に加えて延伸による歪が解放されるため、フ
ィルムの収縮が始める。この収縮は、一旦収縮すると元
に戻らない不可逆変化である。次に、ある温度まで昇温
してから、一定温度で降温すると、可逆的な熱膨張分が
元の長さに戻るため、不可逆変化の部分がフィルムの熱
収縮分として観察される。これら一連の挙動を図1に示
す。ここで、本発明者らは、二軸配向ポリエステルフィ
ルムの低熱収縮化を図るにあたって、上述の可逆的な伸
縮挙動と不可逆的な収縮挙動を分離する必要があること
を見出し、以下のような処理を行った。すなわち、図1
において上述の昇温時の測定曲線は、可逆伸縮と不可逆
収縮が合わせられたものであり、降温時の測定曲線は可
逆伸縮のみが表現されている。
【0026】そこで、TMAからの測定出力を、ADコ
ンバータを介してデジタル値に変換してコンピュータに
取込み、数値化した。ここで、昇温曲線と降温曲線の室
温における長さを、それぞれ0として、表現し直してか
ら、昇温曲線から降温曲線の値を差引く処理を行なっ
た。この処理により、可逆的な伸縮分が消去され不可逆
収縮のみを表した曲線(Lとする)を得ることができ
る。この曲線を、真の収縮量の曲線と呼ぶことにする。
次にこの曲線を、ダグラス・アバキアン法により温度T
で数値微分して、真の収縮量の微分曲線(dL/dT)
を得た。この微分曲線により、どの温度でどれだけの収
縮が生じているかを調べることができる。すなわち、横
軸(温度軸)と微分曲線で囲まれた部分の面積が不可逆
的な収縮量になっている。これらの処理の状況を図2に
示す。なお、これらの処理方法の詳細は、後述する。
【0027】本発明者らは、フィルムをTMAで測定し
上述の処理を行うことにより、フィルムの不可逆的な収
縮挙動を解析し、二軸配向フィルムの低熱収縮化には、
フィルムの長手方向について、上述の真の収縮量の微分
曲線において、そのポリエステルのガラス転移点以上2
00℃以下の範囲で収縮量微分値(dL/dT)が、
0.01%/℃以下であることが好ましいことを見出し
た。すなわち、通常の方法で製造されたフィルムは、図
3に示すように、ガラス転移点から150℃の間に一つ
のdL/dTのピークを有し、また、150℃以上の領
域に二つ目のピークを有している。これらは共に0.0
1%/℃を越えるような大きなピークであり、熱収縮を
増大させている。本発明者らは、鋭意検討の結果、ガラ
ス転移点から200℃までの範囲でdL/dTを0.0
1%/℃以下にする方法を見出し、このような条件を満
たすフィルムは熱収縮を非常に低く抑えることができる
ことを見出した。
【0028】本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの
長手方向と幅方向のトータルヤング率は、フィルムの素
材によって異なるが、ト−タルヤング率が大きい場合
(フィルムが高度に配向した場合)、低熱収縮化あるい
はフィルムの平面性が阻害されやすくなるので好ましく
ない。また延伸配向度を低下してト−タルヤング率を小
さくすると、フィルムの腰が弱く、少量の張力でも伸び
やすくなるため、複写機やプリンター、印刷機などで使
用した際に、搬送時に機内に詰まったり、搬送後の平面
性悪化を招くなどの問題が生じやすくなるので好ましく
ない。本発明の二軸配向ポリエチレンテレフタレートフ
ィルムのト−タルヤング率は、7.8GPa以上、1
1.8GPa以下であることが好ましく、さらに好まし
くは8.3GPa以上、10.8GPa以下である。ま
た本発明の二軸配向ポリエチレン−2,6−フタレート
フィルムのトータルヤング率は、10GPa以上、15
GPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは1
0.5GPa以上、14GPa以下である。
【0029】本発明における低熱収縮性に優れたポリエ
ステルフィルムの製造方法の例としては、まず、二軸延
伸前の無配向フィルムの平均屈折率と二軸延伸後のフィ
ルムの平均屈折率との差が0.010以上、0.032
以下となるように、延伸方式、温度、延伸倍率を適宜、
選定して二軸延伸した後、熱処理および弛緩処理を施す
方法がある。例えば、PETの場合の二軸延伸後のフィ
ルムの平均屈折率としては、1,588以上、1.61
0以下の範囲が好ましく、PENの場合の二軸延伸後の
フィルムの平均屈折率としては、1.658以上、1.
680以下の範囲が好ましい。二軸延伸後のフィルムの
二軸延伸前の無配向フィルムの平均屈折率と二軸延伸後
のフィルムの平均屈折率との差が上記範囲をはずれる
と、その後の工程である、熱処理および弛緩処理したフ
ィルムの平均屈折率とポリエステルの無配向フィルムの
平均屈折率との差を0.033以上、0.037以下、
かつ、厚み方向の屈折率を1.500以上にすることが
困難になり好ましくない。この時の熱処理ゾ−ンの加熱
温度は、(Tm+5)〜(Tm−35)℃程度(熱処理
ゾ−ンの加熱温度よりフィルムのTmetaは低い傾向
にある)にし、融点(Tm)以下、(Tm−30)℃以
上の温度に熱処理を行なうのが好ましく、上記の温度で
熱処理を行なうことにより、フィルムの結晶化度が高ま
り、より好ましい状態のフィルムを得ることができ、上
述したような150℃以上の高温領域の熱収縮を抑制す
ることが可能となる。しかしながら、このような熱処理
を行なうだけでは、ガラス転移点から150℃における
範囲のdL/dTを抑えることは不可能であり、熱処理
温度から冷却する工程で、フィルムを定長状態で冷却し
た場合、冷却時の収縮で残留応力として発生して、ガラ
ス転移点から150℃の範囲にdL/dTのピークとし
て発現してくる。そこで、このピークを抑え、150℃
以下の熱収縮率を抑えるためには、熱処理から冷却する
工程において、この冷却に伴う収縮残留応力分を吸収さ
せるように長手方向に2.5%以下のリラックス処理を
施すことが好ましい。また、幅方向の熱収縮を抑えるた
めに、幅方向に5%以下のリラックス処理を施すことも
好ましい。これらのリラックス処理としては、各種の方
法が考えられるが、特に平面性を維持し、熱収縮率を抑
えるためには、長手方向については、フィルムをテンタ
のクリップで把持しながらクリップ間隔を狭めてリラッ
クスを行ない、また、幅方向については熱処理時にテン
タのレール幅を狭めてリラックスを行なうことが好まし
い。
【0030】次に本発明の製造法について具体的に説明
するが、かかる例に限定されるものではない。ここで
は、ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート
を用いた例を示すが、樹脂により、乾燥条件、押出条
件、延伸温度などの条件は異なる。 まず常法に従っ
て、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化
し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコー
ルのエステル交換により、ビス−β−ヒドロキシエチル
テレフタレート(BHT)を得た。次にこのBHTを重
合槽に移し、撹拌しながら真空下で280℃に加熱して
重合反応を進めた。ここで、撹拌のトルクを検出して、
所定のトルクになったところで反応を終了した。
【0031】次に、重合したポリエチレンテレフタレー
トのペレットを180℃で5時間真空乾燥した後、27
0〜300℃の温度に加熱された押出機に供給し、Tダ
イよりシート状に押出す。この溶融されたシートを、ド
ラム表面温度25℃に冷却されたドラム上に静電気力に
より密着固化し、実質的に非晶状態の成形フィルムを得
る。このフィルムを、80〜120℃の加熱ロール群で
加熱し縦方向に3〜6倍に一段もしくは多段階で縦延伸
し、20〜50℃のロール群で冷却する。続いて、テン
タに導いてこのフィルムの両端をクリップで把持しなが
ら、80〜140℃に加熱された熱風雰囲気中で予熱
し、横方向に3〜6倍に横延伸し、平均屈折率が1.5
88以上、1.610以下となる二軸延伸フィルムを得
る。
【0032】ここで、本発明においては、150℃以上
におけるdL/dTのピークを抑え、150℃以上の高
温部の熱収縮を抑えるために、ポリエチレンテレフタレ
ートの場合には、225℃〜255℃の温度で熱処理を
行うことが好ましい。次いで、120〜210℃の温度
範囲の冷却ゾ−ンに導き、この冷却区間においては、幅
方向に5%以下のリラックス処理を行ない、この後、長
手方向に2.5%以下のリラックス処理を行なうことが
好ましい。このようにして得たフィルムを室温まで徐冷
して巻き取ることで、フィルムのヤング率を落とさず
に、低熱収縮性、平面性に優れた本発明のフィルムを得
た。
【0033】
【物性値の評価法】
(1)平均屈折率、厚み方向の屈折率 株式会社アタゴ製のアッベ屈折率4型を用い、接眼レン
ズ部に偏光板を挿入して、屈折計のプリズムにヨウ化メ
チレンを1滴垂らして、屈折率1.74の測定用プリズ
ムを乗せて、サンプルの長手方向、および、横方向から
の測定を行ない、また、サンプルの表裏面両面から測定
を行ない屈折率を求めたものであり、厚み方向の屈折率
とは、それぞれの方向、面から測定された厚み方向の屈
折率の平均値を採用し、また、平均屈折率とは、長手方
向、横方向、厚み方向の屈折率の平均値を採用した。ま
た、屈折率が大きすぎてこの屈折計で測定できない場合
は、王子計測機器(株)製 OPTICAL BIRE
FRINGENCE ANALYZER KOBRA−
21ADH型で測定した。あらかじめ、アッペ屈折計で
測定した基準サンプルを用い、アッペ屈折計の測定値と
同調するように調整する。
【0034】(2)150℃、30分の熱収縮率 幅10mm、長さ250mmにサンプリングした試料
に、約200mm間隔で点を打ち、その間隔の長さを定
規により測定し、これをL0 (mm)する。このサンプル
を、150℃に加熱されたオーブン中で30分間処理
し、その後、室温で2時間冷却した後、再び、点の間隔
を定規で正確に測定し、これをL(mm)とする。熱収
縮率を次式で求め、n数5で測定し、その平均値を採用
した。
【0035】 熱収縮率=((L0 −L)/L0)×100(%) (3)トータルヤング率 オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置テ
ンシロンAMF/RTAー100を用いて、幅10m
m、試長100mm、引張速度300mm/分にて、フ
ィルムの長手方向、幅方向について引張試験を行ない、
応力ー伸びの曲線の初期の立ち上がり部の接線からヤン
グ率を求め、長手方向と幅方向のヤング率の和をトータ
ルヤング率とした。
【0036】(4)熱特性 示差走査熱量計として、セイコー電子工業株式会社製
“ロボットDSCーRDC220”を用い、データー解
析装置として、同社製“ディスクセッション”SSC/
5200を用いて、サンプル約5mgを採取し、室温か
ら昇温速度20℃/分で300℃まで加熱していく過程
でTmeta、Tmを測定した。引き続き300℃で5
分間保持した後、液体窒素で急冷し、昇温速度20℃/
分でTgを測定した。融解のピークに付随するTmet
aが観測しにくい場合は、データ解析部にてピーク付近
を拡大し、ピークを読みとった。
【0037】(5)TMAによる真の収縮量の微分曲線 サンプルを幅2mmにサンプリングし、試長15mmに
なるように、真空理工株式会社製TMA TM−300
0および、加熱制御部TA−1500にセットした。こ
こで、伸縮量の出力を記録計に描かせるとともに、カノ
ープス電子株式会社製ADコンバータADX−98Eを
介して、日本電気株式会社製パーソナルコンピュータP
C−9801にデータを取込むように設置した。ここ
で、荷重を1gかけ、室温から昇温速度10℃/分でT
MAを昇温し、200℃まで昇温したら、10℃/分で
室温まで降温した。この際の昇、降温時の伸縮量を、1
℃ごとにパーソナルコンピュータに取込み、このデータ
を、ロータス株式会社製表計算ソフト1−2−3に取込
んだ。このデータを表計算ソフト上で、昇温時のデー
タ、および、降温時のデータそれぞれを、30℃におけ
る伸縮量の値を0%として、各温度における値を、30
℃からの伸びあるいは縮み量(試長15mmで割って1
00を掛けて、%表示とする)に変換する。このときの
昇温時の伸縮量をLu (%)、降温時の伸縮量をLd
(%)として、L=Lu −Ld (%)を各温度で計算し
て、Lを真の収縮量とした。次に、このLを温度Tによ
って、表計算ソフト上で数値微分した。数値微分の方法
は、ダグラス・アバキアン法(例えば、平田、須田、竹
本 著、「パソコンによる数値計算」 株式会社朝倉書
店 34頁に記載)により行なった。
【0038】なお、Lにおいてノイズなどによる細かな
変動が大きい場合には、5℃ずつの移動平均を取り、ス
ムージングしてから微分処理を行なった。移動平均と
は、例えば、T1 におけるLの値を、(T1 −2)〜
(T1 +2)℃までの5点のLの平均値で表す方法であ
る。
【0039】(6)平面性 富士ゼロックス株式会社製複写機「Vivace50
0」において、A4サイズにカットした厚み約100μ
mのフィルムの複写機通過前と通過後の平面性を、フィ
ルムを台の上に広げて、目視で判断した。
【0040】 ○:湾曲部分が見られないもの △:湾曲部分が3箇所以下であるもの ×:湾曲部分が3箇所以を越えるもの
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0042】実施例1 極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(ガラ
ス転移点温度78℃)のペレットを180℃ので5時間
真空乾燥した後に、270℃〜300℃に加熱された押
出機に供給し、Tダイよりシート状に成形した。さらに
このフィルムを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電気
力で密着固化して未延伸フィルム得た。
【0043】この未延伸フィルムを、80〜120℃の
加熱ロール群で加熱し縦方向に3.3倍一段階で縦延伸
し、20〜50℃のロール群で冷却した。続いて、テン
タへ導き、そのフィルムの両端をクリップで把持しなが
ら、90℃の温度に加熱された熱風雰囲気中で予熱し、
95℃の温度の熱風雰囲気中で横方向に3.5倍に横延
伸し、平均屈折率が1.595の二軸延伸フィルムを得
た。
【0044】このようにして二軸延伸されたフィルムを
そのまま、テンタ中で引続き、250℃の温度で熱処理
を行ない、熱処理後、一旦200℃の温度まで緊張下で
冷却し、200〜120℃の温度範囲の冷却区間でテン
タのレール幅を縮めて幅方向に3%、また、テンタのク
リップの間隔を縮めて長手方向に2.5%リラックス処
理を施し、テンタから取出し、フィルムの両端部のエッ
ジ部分をトリミングして巻きとり、厚み100μmの二
軸延伸フィルムを得た。
【0045】得られたフィルムの長手方向の真の収縮量
の微分曲線は、図4の曲線1に示すとおりであり、物性
は表1および表2のとおりであった。ガラス転移点から
200℃までの範囲で収縮のピークが見られず、熱収縮
率も小さなフィルムが得られた。また、平面性も良いフ
ィルムを得ることができた。このフィルムをA4版に切
り、富士ゼロックス株式会社製複写機Vivace50
0に通したところ、カールや部分的なたるみなどの見ら
れない、平面性の良い状態で、排出された。
【0046】比較例1 実施例1と同様にして縦延伸、横延伸を施した平均屈折
率が1.595のフィルムを、テンタ中で引続き、22
0℃の温度で熱処理を行った後、一旦200℃の温度ま
で緊張下で冷却し、200℃〜120℃の温度範囲の冷
却区間でテンタのレール幅を縮めて幅方向に3%、ま
た、テンタのクリップの間隔を縮めて長手方向に2.5
%リラックス処理を施し、テンタから取出し、フィルム
の両端部のエッジ部分をトリミングして巻きとり、厚み
100μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0047】得られたフィルムの長手方向の真の収縮量
の微分曲線は、図4の曲線2に示すとおりであり、物性
は表1および表2のとおりであった。ガラス転移点か
ら、200℃までの範囲で、100〜140℃にはピー
クは認められないが、170℃以上に大きなピークが見
られた。また、平面性は比較的良好な状態で採取できた
が、熱収縮率は大きかった。このフィルムをA4版に切
り、富士ゼロックス株式会社製複写機Vivace50
0に通したところ、カールが大きく面内に部分的なたる
みが発生した。
【0048】実施例2 実施例1と同様にして縦延伸、横延伸を施した平均屈折
率が1.595の二軸延伸フィルムをテンタ中で引続
き、250℃の温度で熱処理を行った後、一旦200℃
の温度まで緊張下で冷却し、200℃〜120℃の温度
範囲の冷却区間でテンタのレール幅を縮めて幅方向に1
%、また、テンターのクリップの間隔を縮めて長手方向
に2.5%リラックス処理を施し、テンターから取出
し、フィルムの両端部のエッジ部分をトリミングして巻
きとり、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0049】得られたフィルムの長手方向の真の収縮量
の微分曲線は、図4の曲線3に示すとおりであり、物性
は表1および表2のとおりであった。ガラス転移点から
200℃までの範囲で、収縮のピークが見られず、熱収
縮率も小さく、比較的平面性のよい状態で得られた。こ
のフィルムをA4版に切り、富士ゼロックス株式会社製
複写機Vivace500に通したところ、カールや部
分的なたるみが若干発生したが、比較的平面性の良い状
態で得られた。
【0050】実施例3 実施例1と同様にして、縦延伸、横延伸を施した平均屈
折率が1.595の二軸延伸フィルムを、テンター中で
引続き240℃の温度で熱処理を行ない、熱処理後、一
旦200℃の温度まで緊張下で冷却し、200〜120
℃の温度範囲の冷却区間でテンタのレール幅を縮めて幅
方向に3%、また、テンタのクリップの間隔を縮めて長
手方向に1%リラックス処理を施し、テンタから取出
し、フィルムの両端部のエッジ部分をトリミングして巻
きとり、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0051】得られたフィルムの長手方向の真の収縮量
の微分曲線は、図4の曲線4に示すとおりであり、物性
は表1および表2のとおりであった。ガラス転移点から
200℃までの範囲で、実施例1に比較すると、130
℃付近と、200℃近傍にピークが見られるが、まだ、
十分に小さなピークであった。また、熱収縮率も小さ
く、平面性も良好なフィルムが得られた。このフィルム
をA4版に切り、富士ゼロックス株式会社製複写機Vi
vace500に通したところ、カールや部分的なたる
みなどはそれほど大きくなく、平面性の良い状態で排出
された。
【0052】実施例4 実施例1と同様にして縦延伸、横延伸を施した平均屈折
率が1.595の二軸延伸フィルムを、テンタ中で引続
き、240℃の温度で熱処理を行った後、一旦200℃
の温度まで緊張下で冷却し、200℃〜120℃の温度
範囲の冷却区間でテンタのレール幅を縮めて幅方向に5
%、また、テンタのクリップの間隔を縮めて長手方向に
1.5%のリラックス処理を施し、テンタから取出し、
フィルムの両端部のエッジ部分をトリミングして巻きと
り、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0053】得られたフィルムの長手方向の真の収縮量
の微分曲線は、図5の曲線5に示すとおりであり、物性
は表1および表2のとおりであった。ガラス転移点から
200℃までの範囲で、実施例1に比較すると、130
℃付近にピークが見られるが、まだ十分に小さいピーク
であった。また、熱収縮率も小さく、平面性もよい状態
で得られた。このフィルムをA4版に切り、富士ゼロッ
クス株式会社製複写機Vivace500に通したとこ
ろ、カールや部分的なたるみがそれほど大きくなく、比
較的平面性の良い状態であった。
【0054】比較例2 実施例1と同様にして縦延伸、横延伸を施した平均屈折
率が1.595の二軸延伸フィルムを、テンタ中で引続
き、250℃の温度で熱処理を行ない、熱処理後、特に
リラックス処理を施すことなく、120℃の温度まで徐
冷した後、テンタから取出し、フィルムの両端部のエッ
ジ部分をトリミングして巻きとり、厚み100μmの二
軸延伸フィルムを得た。
【0055】得られたフィルムの長手方向の真の収縮量
の微分曲線は、図5の曲線6に示すとおりであり、物性
は表1および表2のとおりであった。ガラス転移点から
200℃までの範囲で、100〜140℃付近に大きな
ピークが観られたが、160℃以上には、特にピークは
認められなかった。また、リラックス処理が施されてい
ないため、熱収縮率は大きいが平面性は比較的良好な状
態で採取できた。このフィルムをA4版に切り、富士ゼ
ロックス株式会社製複写機Vivace500に通した
ところ、カールが大きく、面内に部分的なたるみが発生
した。
【0056】比較例3 実施例1と同様にして、縦、横の延伸倍率を縦方向に、
2.5倍、横方向に3.0倍に変更して得られた、平均
屈折率が1.581の二軸延伸フィルムを、テンタ中で
引続き、250℃の温度で熱処理を行なった後、一旦2
00℃の温度まで緊張下で冷却し、200℃〜120℃
の温度範囲の冷却区間でテンタのレール幅を縮めて幅方
向に3%、また、テンタのクリップの間隔を縮めて長手
方向に2.5%リラックス処理を施し、テンタから取出
し、フィルムの両端部のエッジ部分をトリミングして巻
きとり、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0057】得られたフィルムの長手方向の真の収縮量
の微分曲線は、図5の曲線7に示すとおりであり、物性
は表1および表2のとおりであった。ガラス転移点から
200℃までの範囲で収縮のピークが見られず熱収縮率
は小さいが、分子配向が弱いため、平均屈折率が低く、
また、ヤング率も低いため、フィルムに腰がなく、平面
性の悪化が若干見られた。このフィルムをA4版に切
り、富士ゼロックス株式会社製複写機Vivace50
0に通したところ、カールや、面内に部分的なたるみが
発生した。
【0058】実施例5 極限粘度0.65のポリエチレン−2,6−ナフタレー
ト(ガラス転移点温度124℃)のペレットを180℃
ので5時間真空乾燥した後に、290℃〜310℃に加
熱された押出機に供給し、Tダイよりシート状に成形し
た。さらにこのフィルムを表面温度25℃の冷却ドラム
上に静電気力で密着固化して未延伸フィルム得た。
【0059】この未延伸フィルムを、130〜150℃
の加熱ロール群で加熱し縦方向に4.0倍一段階で縦延
伸し、20〜50℃のロール群で冷却した。続いて、テ
ンタへ導き、このフィルムの両端をクリップで把持しな
がら、130℃の温度に加熱された熱風雰囲気中で予熱
し、135℃の温度の熱風雰囲気中で横方向に3.8倍
に横延伸し、平均屈折率が1.680の二軸延伸フィル
ムを得た。
【0060】このようにして二軸延伸されたフィルムを
そのまま、テンタ中で引続き、250℃の温度で熱処理
を行ない、熱処理後、一旦200℃の温度まで緊張下で
冷却し、200〜120℃の温度範囲の冷却区間でテン
タのレール幅を縮めて幅方向に2.5%、また、テンタ
のクリップの間隔を縮めて長手方向に1.5%リラック
ス処理を施し、テンタから取出し、フィルムの両端部の
エッジ部分をトリミングして巻きとり、厚み100μm
の二軸延伸フィルムを得た。
【0061】得られたフィルムの物性は表1および表2
のとおりであった。長手方向の真の収縮量の微分曲線で
は、ガラス転移点から200℃までの範囲で収縮のピー
クが見られず、190〜200℃の高温領域のdL/d
Tは0.003%/℃と小さいものであった。熱収縮率
が小さく、平面性の良いフィルムを得ることができた。
このフィルムをA4版に切り、富士ゼロックス株式会社
製複写機Vivace500に通したところ、カールや
部分的なたるみなどの見られない、平面性の良い状態
で、排出された。
【0062】
【表1】
【表2】
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、熱収縮率が小さく平面
性の良いポリエステルフィルムを簡易な製造方法にて得
ることができ、低熱収縮性を必要とするOHPや電気絶
縁材料などの用途において、収縮やカールやたるみなど
の問題が生じることのない材料を提供することが可能に
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 TMAにおける、熱膨張、熱収縮の挙動を示
した図である。◎
【図2】 TMAの測定曲線から、真の収縮量の微分曲
線を求める処理を示した図である。◎
【図3】 通常の方法で製造された二軸延伸フィルムを
TMAで測定し、真の収縮量の微分曲線に変換した図で
ある。◎
【図4】 実施例1〜3と比較例1のフィルムの長手方
向のTMAによる真の収縮量の微分曲線を表した図であ
る。◎
【図5】 実施例4と比較例2、3のフィルムの長手方
向のTMAによる真の収縮量の微分曲線を表した図であ
る。
【符号の説明】
1: 実施例1の長手方向のTMAによる真の収縮量の
微分曲線 2: 比較例1の長手方向のTMAによる真の収縮量の
微分曲線 3: 実施例2の長手方向のTMAによる真の収縮量の
微分曲線 4: 実施例3の長手方向のTMAによる真の収縮量の
微分曲線 5: 実勢例4の長手方向のTMAによる真の収縮量の
微分曲線 6: 比較例2の長手方向のTMAによる真の収縮量の
微分曲線 7: 比較例3の長手方向のTMAによる真の収縮量の
微分曲線
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B29L 7:00 C08L 67:02 (72)発明者 綱島 研二 滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株 式会 社滋賀事業場内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二軸配向されたポリエステルフィルムに
    おいて、フィルムの平均屈折率とポリエステルの無配向
    フィルムの平均屈折率との差が0.033以上、0.0
    37以下で、かつ、厚み方向の屈折率が1.500以上
    であり、さらに、フィルムの長手方向と幅方向の150
    ℃で30分の熱収縮率がいずれも0.3%以下であるこ
    とを特徴とする低熱収縮性ポリエステルフィルム。
  2. 【請求項2】 示差走査熱量計(DSC)による結晶融
    解前に現れる微少吸熱ピーク(Tmeta)が融点(T
    m)以下、(Tmー30)℃以上の範囲であることを特
    徴とする請求項1記載の低熱収縮性ポリエステルフィル
    ム。
  3. 【請求項3】 熱機械特性試験機(TMA)による昇温
    および降温時の伸縮量から求めた、フィルムの長手方向
    の真の収縮量の微分曲線において、ガラス転移点以上、
    200℃以下の範囲で収縮量微分値(dL/dT)が、
    0.01%/℃以下であることを特徴とする請求項1ま
    たは請求項2記載の低熱収縮性ポリエステルフィルム。
  4. 【請求項4】ポリエステルがポリエチレンテレフタレー
    トであること特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか
    に記載の低熱収縮性ポリエステルフィルム。
  5. 【請求項5】 二軸配向されたポリエチレンテレフタレ
    ートフィルムにおいて、フィルムの平均屈折率が1.6
    11以上、1.615以下であることを特徴とする請求
    項4記載の低熱収縮性ポリエステルフィルム。
  6. 【請求項6】ポリエステルがポリエチレン−2,6−ナ
    フタレートであることを特徴とする請求項1〜請求項3
    のいずれかに記載の低熱収縮性ポリエステルフィルム。
  7. 【請求項7】 二軸配向されたポリエチレン−2,6−
    ナフタレートフィルムにおいて、フィルムの平均屈折率
    が1.681以上、1.685以下であることを特徴と
    する請求項6記載の低熱収縮性ポリエステルフィルム。
  8. 【請求項8】 二軸延伸前の無配向フィルムの平均屈折
    率と二軸延伸後のフィルムの平均屈折率との差が0.0
    10以上、0.032以下となるように二軸延伸した
    後、融点(Tm)以下、(Tm−30)℃以上の温度で
    熱処理を施し、熱処理から冷却する工程において、弛緩
    率が長手方向に2.5%以下、幅方向に5%以下となる
    ようにリラックス処理を施すことを特徴とする低熱収縮
    性ポリエステルフィルムの製造方法。
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