JPH10144509A - 永久磁石用粉末並びにその製造方法および該粉末を用いた異方性永久磁石 - Google Patents

永久磁石用粉末並びにその製造方法および該粉末を用いた異方性永久磁石

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JPH10144509A
JPH10144509A JP8294049A JP29404996A JPH10144509A JP H10144509 A JPH10144509 A JP H10144509A JP 8294049 A JP8294049 A JP 8294049A JP 29404996 A JP29404996 A JP 29404996A JP H10144509 A JPH10144509 A JP H10144509A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安定して優れた磁気特性を有する永久磁石用
粉末並びにその製造方法および該粉末を用いた異方性永
久磁石を提供する。 【解決手段】 母体がFeまたはFeにCoを含む合金
の針状微粒子であって、該針状微粒子の表面にFe、S
mおよびNを含む硬質磁性層と、該硬質磁性層の外側に
希土類元素の酸化物からなる隔離層を備えている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モーター、スピー
カー、アクチュエーターなどに用いられるボンド永久磁
石材料に関するものであり、同一組織内にSm2Fe17
Xに代表される硬質磁性相と、FeまたはFe−Co
合金などの軟磁性相との複合構造を有する交換スプリン
グ磁石を対象とし、高い磁化と高い保磁力をバランスよ
く備えた新規な永久磁石用粉末並びにその製造方法およ
び該粉末を用いた異方性永久磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】交換スプリング磁石とは、上記両相間の
強い交換結合力により単一の硬質磁性材料のように振る
舞うが、同時に減磁曲線の第二象限で磁化が外部磁界の
変化に対して可逆的にスプリングバックする特異な挙動
を示すものであり、その効果を最適に利用する用途につ
いて近年注目を集めている。
【0003】磁石用合金内部に軟磁性相を共存させる方
法の提案には大別して二通りある。第一の区分に属する
方法は、調整された組成の合金溶湯からスタートして、
冷却凝固時あるいはその後の熱処理時に分相析出させる
ものであり、Nd−Fe−B系においてはFeの量を過
剰にして溶製、凝固、熱処理し、Fe3B 相(軟磁性
相)とNd2Fe14B 相(硬質磁性層)の微結晶集合体
を得る特開平5−135928号公報に記載の方法、あ
るいはSm−Fe−N系において同様にFeの量を過剰
にして溶製、凝固、熱処理し、Fe相(軟磁性相)とS
2Fe17X相(硬質磁性層)をそれぞれ0.5μm以
下の結晶粒径として共存させる特開平6−330252
号公報に記載の方法など多くの提案がある。しかし、こ
れらの方法によって得られる合金は等方性磁石合金にし
かなり得ず、将来の新規用途に対して特性的に限界があ
ること、また、合金の溶解と急冷凝固のための高額・大
規模な設備を必要とすることなどの不利な点がある。
【0004】第二の区分に属する方法は、針状鉄粉を母
体とし、その表面部分を化学処理と熱処理により硬質磁
性相に変化させるものであり、特開平7−272913
号公報には、針状鉄粉の表面に、リン酸アルミニウム被
覆層、希土類拡散層または希土類・鉄・ホウ素拡散層ま
たは希土類・ホウ素・窒素拡散層、リン酸アルミニウム
被覆層を順次有する永久磁石原料が開示され、その製法
として、FeOOH((ゲータイト)針状結晶をリン酸
アルミニウムで被覆した状態において水素雰囲気中で3
00〜500℃に加熱してFeOOHをFe(針状鉄
粉)に還元する工程、希土類または希土類とホウ素の存
在下においてアルゴン雰囲気中で650〜1000℃に
加熱して希土類または希土類とホウ素をリン酸アルミニ
ウム被覆針状鉄粉表面に拡散させる工程、窒素雰囲気中
において500〜300℃に加熱して窒素を表層に拡散
させる工程、およびアルゴン雰囲気中で300〜500
℃に加熱して再びリン酸アルミニウムで被覆する工程が
開示されている。この方法においては、リン酸アルミニ
ウムの二重被覆による酸化防止効果と磁壁としての作用
により、磁気特性が向上するとされるが、安定して優れ
た磁気特性を得ることはできない。というのは、Smの
蒸着・拡散において、Smの強い還元力によりリン酸ア
ルミニウムが分解・還元されてAlが鉄粉中に侵入し、
またSmは酸化されてSm−Fe−N系の硬質磁性相が
形成されにくく、磁気特性を損なうからであると考えら
れる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特に上記第
二の区分に属する方法による交換スプリング磁石の改良
に関するものであり、針状鉄微粒子の表面に均一に硬質
磁性層を拡散・形成することにより、安定して優れた磁
気特性を有する永久磁石用粉末並びにその製造方法およ
び該粉末を用いた異方性永久磁石を提供することを目的
とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明の永久磁石用粉末は、母体がFeまたはFeに
Coを含む合金の針状微粒子であって、該針状微粒子の
表面にFe、SmおよびNを含む硬質磁性層と、該硬質
磁性層の外側に希土類元素の酸化物からなる隔離層を備
えてなることを特徴としている。このような隔離層を有
することにより、各針状微粒子をセパレートし、針状微
粒子同士の接着・粒成長を抑制し、アスペクト比の低下
が抑えられる。その結果、形状異方性の優れた永久磁石
を得ることができる。
【0007】また、本発明の永久磁石用粉末は、そのよ
うな針状Fe微粒子の表面に硬質磁性層を有し、その硬
質磁性層の外側に隔離層を備えた針状微粒子から構成さ
れる粒径10〜100μmの焼結体粉末からなることを
特徴としている。そして、そのような隔離層を有するこ
とにより、焼結時に鉄相同士の結合が抑えられ、分散性
のよい高密度の焼結体を得ることができる。
【0008】さらに、隔離層をZn、Sn、Pbの1種
または2種以上の金属で被覆すれば、Smとこれら低融
点金属との間で金属間化合物が形成され、保磁力が大幅
に向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】すなわち、本発明は、母体がFe
またはFeにCoを含む合金の針状微粒子であって、該
針状微粒子の表面にFe、SmおよびNを含む硬質磁性
層と、該硬質磁性層の外側に希土類元素の酸化物からな
る隔離層を備えてなる永久磁石用粉末を第一の発明とし
ている。希土類元素としては、Nd、La、Ce、P
r、SmおよびYの一種または二種以上からなるものを
用いることができる。
【0010】また、母体がFeまたはFeにCoを含む
合金の針状微粒子であって、該針状微粒子の表面にF
e、SmおよびNを含む硬質磁性層と、該硬質磁性層の
外側に希土類元素の酸化物からなる隔離層を備えた針状
微粒子から構成される粒径10〜100μmの焼結体粉
末からなる永久磁石用粉末を第二の発明とする。
【0011】また、上記第一の発明において、隔離層を
Zn、Sn、Pbの1種または2種以上の金属で被覆し
てなる永久磁石用粉末を第三の発明とする。
【0012】上記のような永久磁石用粉末を製造するた
めに、長軸0.1〜3μm、短軸0.03〜0.4μm
の大きさの針状Fe微粒子またはFeにCoを含む針状
Fe−Co合金微粒子の表面を湿式析出法により希土元
素の水酸化物で被覆し、濾過・乾燥した後、水素ガスも
しく不活性ガスまたは両者の混合ガス雰囲気中で熱処理
し、得られた希土類元素の酸化物で被覆された針状Fe
微粒子または針状Fe−Co合金微粒子に真空中におい
て500〜1000℃でSmを被覆し、さらに熱処理を
行って上記針状Fe微粒子または針状Fe−Co合金微
粒子の表面にFeおよびSmを含む化合物層を形成し、
次いで、窒素含有ガス中で窒化処理を施すことを特徴と
する永久磁石用粉末の製造方法を第四の発明とする。
【0013】別の製造方法として、長軸0.1〜3μ
m、短軸0.03〜0.4μmの大きさのα−FeOO
H針状微粒子または該α−FeOOH微粒子にCoをド
ープしたα−FeOOH針状微粒子の表面を湿式析出法
により希土類元素の水酸化物で被覆し、濾過・乾燥した
後、水素ガス含有雰囲気中で熱処理し、得られた希土類
元素の酸化物で被覆された針状Fe微粒子または針状F
e−Co微粒子に真空中において500〜1000℃で
Smを被覆し、さらに熱処理を行って上記針状Fe微粒
子または針状Fe−Co合金微粒子の表面にFeおよび
Smを含む化合物層を形成し、次いで、窒素含有ガス中
で窒化処理を施すことを特徴とする永久磁石用粉末の製
造方法を第五の発明とする。
【0014】さらに別の製造方法として、長軸0.1〜
3μm、短軸0.03〜0.4μmの大きさの針状Fe
微粒子またはFeにCoを含む針状Fe−Co合金微粒
子の表面を湿式析出法により希土類元素の水酸化物で被
覆し、濾過・乾燥した後、水素ガスもしくは不活性ガス
または両者の混合ガス雰囲気中で熱処理し、得られた希
土類元素の酸化物で被覆された針状Fe微粒子または針
状Fe−Co合金微粒子に真空中において500〜10
00℃でSmを被覆し、さらに熱処理を行って上記針状
Fe微粒子または針状Fe−Co合金微粒子の表面にF
eおよびSmを含む化合物層を形成し、次いで、該針状
微粒子を磁場中で圧縮成型した後700〜1000℃で
焼結し、その後粒径10〜100μmに粉砕し、さら
に、窒素含有ガス中で窒化処理を施すことを特徴とする
永久磁石用粉末の製造方法を第六の発明とする。
【0015】さらに別の製造方法として、長軸0.1〜
3μm、短軸0.03〜0.4μmの大きさのα−Fe
OOH針状微粒子または該α−FeOOH微粒子にCo
をドープしたα−FeOOH針状微粒子の表面を湿式析
出法により希土類元素の水酸化物で被覆し、濾過・乾燥
した後、水素ガス含有雰囲気中で熱処理し、得られた希
土類元素の酸化物で被覆された針状Fe微粒子または針
状Fe−Co微粒子に真空中において500〜1000
℃でSmを被覆し、さらに熱処理を行って上記針状Fe
微粒子または針状Fe−Co合金微粒子の表面にFeお
よびSmを含む化合物層を形成し、次いで、該針状微粒
子を磁場中で圧縮成型した後700〜1000℃で焼結
し、その後粒径10〜100μmに粉砕し、さらに、窒
素含有ガス中で窒化処理を施すことを特徴とする永久磁
石用粉末の製造方法を第七の発明とする。
【0016】そして、上記第四または第五の発明におい
て、窒化処理に引き続きZn、Sn、Pbの1種または
2種以上の金属で表面を被覆する処理を行うことを特徴
とする永久磁石用粉末の製造方法を第八の発明とする。
【0017】また、上記した永久磁石用粉末を用いた永
久磁石として、母体がFeまたはFeにCoを含む合金
の針状微粒子であって、該針状微粒子の表面にFe、S
mおよびNを含む硬質磁性層と、該硬質磁性層の外側に
希土類元素の酸化物からなる隔離層を備えてなる永久磁
石用粉末を樹脂と混練し、磁場中で加熱圧縮成型するこ
とにより得られる異方性永久磁石を第九の発明とする。
【0018】さらに別の永久磁石として、母体がFeま
たはFeにCoを含む合金の針状微粒子であって、該針
状微粒子の表面にFe、SmおよびNを含む硬質磁性層
と、該硬質磁性層の外側に希土類元素の酸化物からなる
隔離層を備えた針状微粒子から構成される粒径10〜1
00μmの焼結体粉末からなる永久磁石用粉末を樹脂と
混練し、磁場中で加熱圧縮成型することにより得られる
異方性永久磁石を第十の発明とする。
【0019】さらに別の永久磁石として、母体がFeま
たはFeにCoを含む合金の針状微粒子であって、該針
状微粒子の表面にFe、SmおよびNを含む硬質磁性層
と、該硬質磁性層の外側に希土類元素の酸化物からなる
隔離層を備え、該隔離層をZn、Sn、Pbの1種また
は2種以上の金属で被覆してなる永久磁石用粉末を樹脂
と混練し、磁場中で加熱圧縮成型することにより得られ
る異方性永久磁石を第十一の発明とする。
【0020】さらに別の永久磁石として、母体がFeま
たはFeにCoを含む合金の針状微粒子であって、該針
状微粒子の表面にFe、SmおよびNを含む硬質磁性層
と、該硬質磁性層の外側に希土類元素の酸化物からなる
隔離層を備え、該隔離層をZn、Sn、Pbの1種また
は2種以上の金属で被覆してなる永久磁石用粉末を、該
金属をバインダーとして加熱・圧縮成型することにより
得られる異方性永久磁石を第十二の発明とする。
【0021】本発明において、FeまたはFe−Co合
金の針状微粒子の長軸は0.1〜3μmとし、短軸は
0.03〜0.4μmとし、形状異方性を発現するため
に、アスペクト比を2以上とするのが好ましい。しか
し、アスペクト比が15を超えると双晶が発生し、微粒
子の流動性が悪く、取り扱いが難しくなる。短軸が0.
03μm未満では、後続のFe−Sm化合物層形成にお
いて、Sm拡散層の厚みの制御が難しく、安定した磁気
特性が得られない。一方、短軸が0.4μmを超える
と、拡散後に残るFe(ソフト相)の厚みが大きすぎ、
磁気特性が劣化する。この針状Fe微粒子の製造方法と
しては、FeOOHを原料とする還元法、電解析出法等
を挙げることができる。
【0022】隔離層を構成する元素としては、希土類元
素またはCaOが好ましいが、希土類元素の中では、密
着性の点からPrまたはNdを好適に用いることができ
る。隔離層の目的は、上記したように針状微粒子同士を
セパレートし、アスペクト比の低下を抑えることにあ
る。かかる隔離層の目的を達成するために、隔離層構成
元素は硬質磁性層の構成元素より酸素親和力が大きいこ
とが好ましい。また、熱処理工程中における剥離を防止
するため、隔離層は高い密着性を有することが好まし
い。
【0023】また、一定厚さの希土類元素の酸化物の隔
離層でFeまたはFe−Co合金の針状微粒子を全面的
に覆い尽くすのではなく、微粒子状の希土類元素の酸化
物でポーラスな隔離層を形成することが重要であり、こ
れによりSmの蒸着が均一に進行し、FeまたはFe−
Co合金の針状微粒子上に一様に硬質磁性層が形成され
るのである。
【0024】また、隔離層の形成方法として、FeOO
H針状微粒子、針状Fe微粒子又はFe−Co針状微粒
子の懸濁液に希土類元素の塩を添加し、さらにNH4
H等を添加して溶液をアルカリ性にし、上記針状微粒子
表面に希土類元素の水酸化物を析出させて被覆すること
ができる。この湿式析出法としては、正添加・逆添加・
同時添加・ガス沈殿法・水熱処理法・共沈法等の公知の
方法を採用することができる。なお、溶液をアルカリに
する際にKOHおよびNaOHを添加するのは、Kまた
はNaの塩が針状Fe微粒子に残留し、磁石の耐食性を
劣化するので好ましくない。得られた水酸化物層は、引
き続く熱処理において分解し、ポーラスな酸化物層に変
化する。
【0025】針状Fe微粒子またはFe−Co針状微粒
子の表面に形成するFe−Smの化合物層の厚みは、両
側の和で0.01〜0.1μm、好ましくは0.02〜
0.08μm、さらに0.02〜0.05μmがより好
ましい。というのは、鉄微粒子が短軸方向で0.2μm
を超えると、磁壁が安定して存在し、著しく保磁力を低
下させるからである。
【0026】窒化処理は前記Fe−Sm化合物層にNを
導入し、Sm2Fe17X(X=約3)に代表される硬質
磁性層を形成させるものであり、窒素ガス、アンモニア
ガス、またはこれらに水素ガスを添加したN含有雰囲気
中で400〜600℃で熱処理することにより行われ
る。
【0027】また、隔離層をZn、Sn、Pbの1種ま
たは2種以上の金属で被覆した場合、硬質磁性層のSm
とこれら低融点金属との金属間化合物が生成し、保磁力
が大幅に向上する。しかし、Zn、Sn、Pb等の低融
点金属は非磁性であるため、低融点金属の被覆の厚さが
0.3μmを超えると、磁化の値が著しく低下する。一
方、低融点金属の被覆の厚さが0.01μm未満である
と、保磁力改善効果は得られない。
【0028】また、第二の発明である焼結体粉末からな
る永久磁石用粉末を第六の発明になる製造方法で得る場
合、焼結温度が700℃未満の場合、密度が上がらず、
一方、1000℃を超えると粒子の粗大化が起こり、磁
気特性が低下する。焼結した針状微粒子を粉砕して焼結
体粉末を得るには、粒径10〜100μmに粉砕するの
が好ましい。というのは、10μm未満では高い配向が
得られにくく、また100μmを超えると、圧粉密度が
低下するからである。
【0029】
【実施例】以下に、本発明の実施例として、スタート原
料に基づいて磁石成形体を得るまでの各工程を順に説明
する。
【0030】1.低温成形による磁石の製造 A.原料の準備から亜鉛被覆層の形成までの工程 (1)スタート原料 針状Fe微粒子を磁石用粉末の母体とする場合には、チ
タン工業株式会社製のタロックス合成酸化鉄黄色系統L
L−XLO、長軸平均0.7μm、短軸平均0.07μ
mの微細な針状α−FeOOH微粒子または水銀陰極に
よる鉄塩溶液の電解によって得られた(米国特許223
9144号参照)長軸0.5〜1.0μm、短軸約0.
03μmの微細な針状電解析出Fe微粒子を原料として
用いた。また、針状Fe−Co合金微粒子を磁石用粉末
の母体とする場合は、原子比でFe/Co=70/30
となる硫酸第一鉄と硫酸コバルトの混合水溶液に室温で
アンモニア水を添加してFeイオンとCoイオンを(F
0.7 Co0.3)(OH)2の形で共沈させ、これを溶液中
で70℃で空気酸化して(Fe0.7Co0.3)OOHの針
状微粒子とし、濾過・乾燥してスタート原料とした。こ
の原料針状微粒子の模式図を図1(a)に示す。また、
以下に説明する各処理内容を図2にフロー図として示
す。
【0031】(2)R(OH)3 被覆処理 以下、α−FeOOH針状微粒子をスタート原料とした
場合について述べる。純水1500mlに、上記α−F
eOOH針状微粒子75gを投入し、充分に撹拌を行い
懸濁液を得た。その後、その懸濁液に、ミッシュメタル
(Mm )用原料酸化物(La、Ce、Pr、Ndの混合
酸化物)の硝酸水溶液(濃度0.25mol/l)また
はNd(NO33水溶液(濃度0.25mol/l)を
所定の量だけ投入し、均一に混合されるまで、さらに1
時間撹拌した。その後、撹拌を続けながらこの懸濁液に
アンモニア水を投入し、さらに2時間撹拌することによ
ってpHをアルカリ側(pH=約9)に調整した。その
結果、α−FeOOH針状微粒子の表面にMm(OH)3
またはNd(OH)3(以下R(OH)3と記す)が析出
し、被覆処理が完了した。被覆処理を施されたα−Fe
OOH針状微粒子の模式図を図1(b)に示す。
【0032】(3)熱処理(還元処理) 以上のようにして得られたR(OH)3 を被覆したα−
FeOOH針状微粒子を、濾過・乾燥させ、得られた乾
燥ケーキを解砕して還元処理用の原料を得、その原料を
真空回転熱処理炉に装入し、水素ガスを毎分3リッター
の割合で通入しながら、500℃で1時間の還元処理を
行い、R23の微粒子を被覆した針状Fe微粒子を得
た。この場合、R23の被覆をより均一に行うために、
還元処理を行う前に原料微粒子を大気中で熱処理をして
もよい。R23の微粒子を被覆した針状Fe微粒子の模
式図を図1(c)に示す。なお、本実施例においては、
スタート原料としてα−FeOOH針状微粒子を用いた
ので、希土類元素の酸化物で被覆された針状Fe微粒子
を得るためには、熱処理時の雰囲気は水素ガスを含有す
るガスを使用するが、針状Fe微粒子をスタート原料と
する場合は、必ずしも水素ガス含有雰囲気とする必要は
なく、窒素、Ar等の不活性ガスを雰囲気ガスとして採
用することもできる。
【0033】(4)SmとFeの化合物の形成 上記工程に引き続き、真空回転熱処理炉内にArガスを
導入し、炉内に所定量のSm粉末を装入した。その後、
炉内を真空にし、同炉を回転させながら、800℃で1
時間の熱処理を行った。その結果、炉内にはSm蒸気が
充満し、引き続き徐冷することによって針状Fe微粒子
表面にSmが被覆された。その後、炉内にArガスを導
入し、800℃で3時間の熱処理を行った。その結果、
Fe微粒子表面でSmとFeの固相反応が進行し、針状
Fe微粒子表面に約0.02μmの厚さのSm2Fe17
の層が形成された。表面にSm2Fe17 の層が形成され
た針状Fe微粒子の模式図を図1(d)に示す。
【0034】(5)窒化処理およびZn被覆 上記工程に引き続き、真空回転熱処理炉を回転させなが
ら、大気圧下においてアンモニアガスを炉内に通入しな
がら、500℃で3時間の窒化処理を施した。その結
果、針状Fe微粒子表面にSm2Fe17X層が形成され
た。次に、炉内にArガスを通入しながら、炉内に重量
比で10%のZn粉末を装入し、炉内を10-3Torr
に減圧した後、同炉を回転させながら、400℃で1時
間の熱処理を行った。その結果、炉内にはZn蒸気が充
満し、引き続き徐冷することによって、隔離層を形成す
るR23の微粒子がZnによって被覆された。かかる針
状Fe微粒子の模式図を図1(e)に示す。亜鉛の被覆
処理としては、上記の他に亜鉛の光分解による被覆(ジ
エチル亜鉛/n−ヘキサン溶液に針状Fe微粒子を入れ
て、紫外線を照射することによってジエチル亜鉛を分解
させて金属亜鉛として被覆する方法)を採用することも
できる。また、亜鉛以外の低融点金属(錫、鉛など)を
併用することもできる。
【0035】B.低温成形 (1)実施例1 上記A(5)までの工程で作製した窒化処理−Zn被覆
針状Fe微粒子を、15kOeの磁場中で配向させなが
ら、2ton/cm2 の圧力でプレスを行うことによ
り、ペレット状とした。次に、このペレット状体のもの
をホットプレス装置にてArガス雰囲気中において、4
20℃で2時間、7ton/cm2 の圧力で熱間圧縮す
ることにより、図1(f)に示すような成形体を得た。
【0036】(2)実施例2 同上ペレット状体を、圧延機によって板厚が2cmとな
るように、300℃で熱間圧延成形し、得られた成形物
を切断・研削することにより、図1(f)に示すような
成形体を得た。
【0037】(3)実施例3 同上ペレット状体を、押出機によって300℃で熱間押
出成形し、得られた成形物を切断することにより、図1
(f)に示すような成形体を得た。
【0038】(4)実施例4 上記したA(5)まで作製した窒化処理−亜鉛被覆針状
Fe微粒子をエポキシ樹脂(原料微粒子の約3重量%)
と混合、混練し、15kOeの磁場中で配向させなが
ら、2ton/cm2 の圧力でプレスし、その後、12
0℃で1時間のキュアー処理を施すことにより樹脂ボン
ド永久磁石を得た。
【0039】2.焼結体粉末による磁石の製造 (1)実施例5 上記したA(4)までの工程で作製した、表面にSm2
Fe17 の層が形成された針状Fe微粒子を15kOe
の磁場中で配向させながら、2ton/cm2 の圧力で
プレスした後、電気炉に装入し、Arガス雰囲気中にお
いて、950℃で1時間の焼結を施すことにより、図1
(g)に示すような焼結体を得た。この焼結体を50〜
100μmの大きさに粉砕し、窒素ガス(アンモニアガ
スまたは水素とアンモニアの混合ガスなどを用いること
もできる)を通入しながら、500℃で3時間の窒化処
理を施した。その結果、針状Fe微粒子表面にSm2
17X層が形成された(図1(h))。この針状Fe微
粒子焼結体粉末をエポキシ樹脂(焼結体粉末の約2重量
%)と混合、混練し、15kOeの磁場中で配向させな
がら、2ton/cm2 の圧力でプレスし、その後、1
20℃で1時間のキュアー処理を施すことにより、図1
(i)に示すような樹脂ボンド永久磁石を得た。
【0040】3.比較例の磁石の製造 (1)比較例1 同上チタン工業株式会社製の微細な針状α−FeOOH
微粒子をスタート原料にして、隔離層の形成を行うこと
なく水素中500℃で直接還元処理し、還元後、同上条
件でSm−Fe化合物層を形成し、窒化処理、Zn被覆
処理を行い、実施例4と同じようにして樹脂ボンド磁石
を作製した。
【0041】(2)比較例2 同上チタン工業株式会社製の微細な針状α−FeOOH
微粒子をスタート原料にして、10%リン酸アルミニウ
ム−エタノール溶液を添加し、エタノールを加熱蒸発さ
せて、α−FeOOHの5モル%相当のリン酸アルミニ
ウムを被覆した後、同上還元処理し、還元後、同上条件
でSm−Fe化合物層を表面に形成し、以降実施例5と
同じようにして樹脂ボンド磁石を作製した 4.磁石性能の調査 以上のような方法で磁石を作製したが、そのスタート原
料としては、次の表1に示すように6種類を採用した。
表1中には、Sm−Fe化合物層形成後の金属元素を分
析した結果を原子比で表して示した。そして、得られた
磁石をすべて断面10mm×10mmに加工し、直流B
Hトレーサー(東芝工業社製)により各磁石の磁石性能
を測定した。その結果を以下の表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】表2に明らかなように、本実施例の全磁石
は残留磁束密度、保磁力、BHmaxのすべてにおいて、
優れた値を示している。しかし、比較例1の磁石では、
還元処理時およびSm−Fe化合物層形成熱処理時に粒
子間の結合と粒成長が生じ、アスペクト比が1〜3まで
低下しており、ほとんど磁石性能を示していない。ま
た、比較例2の磁石は、リン酸アルミニウムの被覆が希
土類元素により還元されるため、焼結時に試料内の有効
希土類元素が酸化されて体積膨張し、ほとんど原形をと
どめずに崩壊した。一応ボンド磁石化したが、ほとんど
磁石性能を示していない。
【0045】
【発明の効果】針状鉄微粒子の表面に均一に硬質磁性層
を拡散・形成することにより、安定して優れた磁気特性
を有する永久磁石用粉末並びにその製造方法および該粉
末を用いた異方性永久磁石を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁石原料から磁石成形体を得るまでの原料微粒
子の変化を模式的に示す図である。
【図2】磁石原料から磁石成形体を得るまでの処理工程
のフローを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01F 41/02 H01F 1/04 A

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 母体がFeまたはFeにCoを含む合金
    の針状微粒子であって、該針状微粒子の表面にFe、S
    mおよびNを含む硬質磁性層と、該硬質磁性層の外側に
    Rの酸化物からなる隔離層を備えてなる永久磁石用粉
    末。ただし、Rは、Nd、La、Ce、Pr、Smおよ
    びYの一種または二種以上からなる希土類元素である。
  2. 【請求項2】 母体がFeまたはFeにCoを含む合金
    の針状微粒子であって、該針状微粒子の表面にFe、S
    mおよびNを含む硬質磁性層と、該硬質磁性層の外側に
    Rの酸化物からなる隔離層を備えた針状微粒子から構成
    される粒径10〜100μmの焼結体粉末からなる永久
    磁石用粉末。ただし、Rは、Nd、La、Ce、Pr、
    SmおよびYの一種または二種以上からなる希土類元素
    である。
  3. 【請求項3】 隔離層を備えた永久磁石用粉末を更にZ
    n、Sn、Pbの1種または2種以上の金属で被覆して
    なる請求項1記載の永久磁石用粉末。
  4. 【請求項4】 長軸0.1〜3μm、短軸0.03〜
    0.4μmの大きさの針状Fe微粒子またはFeにCo
    を含む針状Fe−Co合金微粒子の表面を湿式析出法に
    よりRの水酸化物で被覆し、濾過・乾燥した後、水素ガ
    スもしくは不活性ガスまたは両者の混合ガス雰囲気中で
    熱処理し、得られたRの酸化物で被覆された針状Fe微
    粒子または針状Fe−Co合金微粒子に真空中において
    500〜1000℃でSmを被覆し、さらに熱処理を行
    って上記針状Fe微粒子または針状Fe−Co合金微粒
    子の表面にFeおよびSmを含む化合物層を形成し、次
    いで、窒素含有ガス中で窒化処理を施すことを特徴とす
    る永久磁石用粉末の製造方法。ただし、Rは、Nd、L
    a、Ce、Pr、SmおよびYの一種または二種以上か
    らなる希土類元素である。
  5. 【請求項5】 長軸0.1〜3μm、短軸0.03〜
    0.4μmの大きさのα−FeOOH針状微粒子または
    該α−FeOOH微粒子にCoをドープしたα−FeO
    OH針状微粒子の表面を湿式析出法によりRの水酸化物
    で被覆し、濾過・乾燥した後、水素ガス含有雰囲気中で
    熱処理し、得られたRの酸化物で被覆された針状Fe微
    粒子または針状Fe−Co微粒子に真空中において50
    0〜1000℃でSmを被覆し、さらに熱処理を行って
    上記針状Fe微粒子または針状Fe−Co合金微粒子の
    表面にFeおよびSmを含む化合物層を形成し、次い
    で、窒素含有ガス中で窒化処理を施すことを特徴とする
    永久磁石用粉末の製造方法。ただし、Rは、Nd、L
    a、Ce、Pr、SmおよびYの一種または二種以上か
    らなる希土類元素である。
  6. 【請求項6】 長軸0.1〜3μm、短軸0.03〜
    0.4μmの大きさの針状Fe微粒子またはFeにCo
    を含む針状Fe−Co合金微粒子の表面を湿式析出法に
    よりRの水酸化物で被覆し、濾過・乾燥した後、水素ガ
    スもしくは不活性ガスまたは両者の混合ガス雰囲気中で
    熱処理し、得られたRの酸化物で被覆された針状Fe微
    粒子または針状Fe−Co合金微粒子に真空中において
    500〜1000℃でSmを被覆し、さらに熱処理を行
    って上記針状Fe微粒子または針状Fe−Co合金微粒
    子の表面にFeおよびSmを含む化合物層を形成し、次
    いで、該針状微粒子を磁場中で圧縮成型した後700〜
    1000℃で焼結し、その後粒径10〜100μmに粉
    砕し、さらに、窒素含有ガス中で窒化処理を施すことを
    特徴とする永久磁石用粉末の製造方法。ただし、Rは、
    Nd、La、Ce、Pr、SmおよびYの一種または二
    種以上からなる希土類元素である。
  7. 【請求項7】 長軸0.1〜3μm、短軸0.03〜
    0.4μmの大きさのα−FeOOH針状微粒子または
    該α−FeOOH微粒子にCoをドープしたα−FeO
    OH針状微粒子の表面を湿式析出法によりRの水酸化物
    で被覆し、濾過・乾燥した後、水素ガス含有雰囲気中で
    熱処理し、得られたRの酸化物で被覆された針状Fe微
    粒子または針状Fe−Co微粒子に真空中において50
    0〜1000℃でSmを被覆し、さらに熱処理を行って
    上記針状Fe微粒子または針状Fe−Co合金微粒子の
    表面にFeおよびSmを含む化合物層を形成し、次い
    で、該針状微粒子を磁場中で圧縮成型した後700〜1
    000℃で焼結し、その後粒径10〜100μmに粉砕
    し、さらに、窒素含有ガス中で窒化処理を施すことを特
    徴とする永久磁石用粉末の製造方法。ただし、Rは、N
    d、La、Ce、Pr、SmおよびYの一種または二種
    以上からなる希土類元素である。
  8. 【請求項8】 窒化処理に引き続きZn、Sn、Pbの
    1種または2種以上の金属で表面を被覆する処理を行う
    ことを特徴とする請求項4または5記載の永久磁石用粉
    末の製造方法。
  9. 【請求項9】 母体がFeまたはFeにCoを含む合金
    の針状微粒子であって、該針状微粒子の表面にFe、S
    mおよびNを含む硬質磁性層と、該硬質磁性層の外側に
    Rの酸化物からなる隔離層を備えてなる永久磁石用粉末
    を樹脂と混練し、磁場中で加熱圧縮成型することにより
    得られる異方性永久磁石。ただし、Rは、Nd、La、
    Ce、Pr、SmおよびYの一種または二種以上からな
    る希土類元素である。
  10. 【請求項10】 母体がFeまたはFeにCoを含む合
    金の針状微粒子であって、該針状微粒子の表面にFe、
    SmおよびNを含む硬質磁性層と、該硬質磁性層の外側
    にRの酸化物からなる隔離層を備えた針状微粒子から構
    成される粒径10〜100μmの焼結体粉末からなる永
    久磁石用粉末を樹脂と混練し、磁場中で加熱圧縮成型す
    ることにより得られる異方性永久磁石。ただし、Rは、
    Nd、La、Ce、Pr、SmおよびYの一種または二
    種以上からなる希土類元素である。
  11. 【請求項11】 母体がFeまたはFeにCoを含む合
    金の針状微粒子であって、該針状微粒子の表面にFe、
    SmおよびNを含む硬質磁性層と、該硬質磁性層の外側
    にRの酸化物からなる隔離層を備え、該隔離層をZn、
    Sn、Pbの1種または2種以上の金属で被覆してなる
    永久磁石用粉末を樹脂と混練し、磁場中で加熱圧縮成型
    することにより得られる異方性永久磁石。ただし、R
    は、Nd、La、Ce、Pr、SmおよびYの一種また
    は二種以上からなる希土類元素である。
  12. 【請求項12】 母体がFeまたはFeにCoを含む
    合金の針状微粒子であって、該針状微粒子の表面にF
    e、SmおよびNを含む硬質磁性層と、該硬質磁性層の
    外側にRの酸化物からなる隔離層を備え、該隔離層をZ
    n、Sn、Pbの1種または2種以上の金属で被覆して
    なる永久磁石用粉末を、該金属をバインダーとして加熱
    ・圧縮成型することにより得られる異方性永久磁石。た
    だし、Rは、Nd、La、Ce、Pr、SmおよびYの
    一種または二種以上からなる希土類元素である。
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