JPH093132A - 2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体 - Google Patents

2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体

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JPH093132A
JPH093132A JP8174777A JP17477796A JPH093132A JP H093132 A JPH093132 A JP H093132A JP 8174777 A JP8174777 A JP 8174777A JP 17477796 A JP17477796 A JP 17477796A JP H093132 A JPH093132 A JP H093132A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】生体適合性に優れた2−メタクリロイルオキシ
エチルホスホリルコリン共重合体を提供する。 【解決手段】一般式 【化5】 〔ただし、aは0.03〜0.70、bは0.30〜
0.97、nは2以上の整数、RはH、OR’(R’は
脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)を示す〕で示さ
れる繰り返し単位を有し、分子量5000以上を有する
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメ
タクリル酸エステルの共重合体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体適合性に優れ
た高分子、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリル
コリンと疎水性のモノマーとから得られる共重合体に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、合成高分子材料は、人工臓器をは
じめとして医用高分子材料に広く用いられている。その
代表的なものは、医用高分子材料としてはポリ塩化ビニ
ル、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸
エステル及び含フッ素樹脂などの疎水性高分子やポリビ
ニルアルコール、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエ
チル)及びポリアクリルアミドなどの親水性高分子であ
る。リン脂質は生体内に広く存在し、生体膜の主要な構
成成分であり、細胞の膜様構造部分に特異的に存在して
おり、膜機能の発現に及ぼすリン脂質の役割が解明され
つつある。リン脂質の極性基と同一の構造を有するモノ
マーのいくつかについてはすでに知られている。また2
−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MP
C)およびメタクリル酸メチル(MMA)との共重合体
についても一部報告されている〔高分子論文集(Kobuns
hi Ronbunshu),Vol.35,No.7,PP423-427(July1978)〕。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、医療技術の進歩
に伴って、生体組織や血液と材料が接触する機会が増加
している。この場合、常に材料の生体親和性が問題とな
る。中でも蛋白質や血球などの生体成分が材料表面に吸
着し、変性することは、血栓形成、炎症反応などの、通
常では認められない悪影響を生体側に引き起こすばかり
ではなく、材料の劣化にもつながり、医用材料の根本的
かつ緊急に解決しなければならない重要な課題である。
従来の前記のポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどの疎水
性高分子材料やポリビニルアルコール、ポリ(メタクリ
ル酸2−ヒドロキシエチル)などの親水性高分子材料
は、いずれも生体親和性において満足できるものではな
い。又、MPCのモノマー及びポリマーは水溶性であ
り、医用材料として利用することはできない。またMP
CとMMAの共重合体については、MPC組成を高く
し、MPCの特徴を発現させようとすると、水に溶解す
るかあるいは著しく膨潤し機械的強度が低下するため安
全性が重視される医用材料への利用は極めて困難であ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、生体中の
組織を構成している生体膜の表面が極めて良好な生体適
合性、特に生体成分の非吸着性、非活性化特性を示すこ
とに着目し、従来のリン脂質ポリマーが有する欠点を改
善し、医用材料への応用可能なポリマーの検討を行なっ
た結果、新たに合成された、生体膜の主成分であるリン
脂質(ホスファチジルコリン)の極性基と同一の構造を
有するモノマー、2−メタクリロイルオキシエチルホス
ホリルコリン(MPC)と疎水性のモノマーから得られ
る共重合体、即ち、MPCと共重合するメタクリル酸エ
ステルの共重合体において、メタクリル酸エステルの置
換基の選定及び組成の制御により、リン脂質ポリマーの
特性を維持したまま、良好な機械的強度ならびに成型性
を有する共重合体が得られ、前記の問題点が解決できる
ことを見出し、本発明に到達したものである。即ち、本
発明は 一般式
【0005】
【化2】
【0006】〔ただし、aは0.03〜0.70、bは
0.30〜0.97、nは2以上の整数、RはH、O
R’(R’は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)を
示す〕で示される繰り返し単位を有し、分子量5000
以上を有する2−メタクリロイルオキシエチルホスホリ
ルコリンとメタクリル酸エステルの共重合体に関する。
【0007】本発明の共重合体において、2−メタクリ
ロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)は以下
の化学構成式を有する化合物である。
【0008】
【化3】
【0009】このMPCは、例えば、2−ブロモエチル
ホスホリルジクロリドと2−ヒドロキシエチルメタクリ
レートを反応させ、2−メタクリロイルオキシエチル
2’−ブロモエチルリン酸(MBP)を得、このMBP
をトリメチルアミンのメタノール溶液中で反応させて得
ることができる。共重合成分であるメタクリル酸エステ
ルは、
【0010】
【化4】
【0011】〔ただし、n:2以上の整数、RはH又は
OR’(R’:脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)
を示す〕であり、脂肪族炭化水素基はアルキル基、アル
ケニル基等、芳香族基はフェニル基等である。nが2未
満の場合は、MPCとの共重合体とした際に疎水性及び
ガラス転移温度が低いためにMPCの効果を発現させる
ためにMPCの組成を高くすると、水に溶解するか、著
しく膨潤し、強度が低下する。メタクリル酸エステルの
具体例としてはメタクリル酸エチル、メタクリル酸プロ
ピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メ
タクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリ
ル酸オクチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸
2−エトキシエチル、メタクリル酸2−エトキシプロピ
ル、メタクリル酸2−フエノキシエチル、メタクリル酸
2−ブトキシエチル等である。
【0012】本発明のリン脂質ポリマーは共重合体表面
にMPC由来のリン脂質極性基が存在するため生体内由
来のリン脂質分子と強く相互作用し、材料表面に生体膜
類似の配向したリン脂質吸着層を安定に形成するため、
優れた生体適合性を獲得できるという、これまでにない
全く新しい概念により分子設計されている。したがっ
て、蛋白質や血球などの生体成分の吸着が極めて少な
く、また血栓形成を誘引する血小板の活性化を抑制する
ことができる。それ故、本発明のリン脂質ポリマーの利
用分野としては、医用材料、臨床検査用材料、製剤用材
料、光学材料など直接生体成分と接触して用いることが
主たる目的となる材料として有用であり、例えば人工血
管、血液バッグ、血液透析膜、カテーテル、カプセル化
材料、酵素電極、コンタクトレンズ等に用いることがで
きる。そして、このような材料として本発明のリン脂質
ポリマーを用いる場合、ポリマー自体を材料として用い
成型する方法のみならず、ポリマーを溶剤に溶解し、こ
の溶液を材料表面に塗布し表面を改質することも可能で
ある。又ポリマーを他の高分子とブレンドして使用する
こともできる。
【0013】
【発明の実施の形態】共重合体の製造は、例えばMPC
とメタクリル酸エステルを溶媒中で開始剤の存在中下、
反応させて得られる。溶媒としては、モノマーが溶解す
ればよく、具体的には水、メタノール、エタノール、プ
ロパノール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、ジ
メチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホル
ム及びこれらの混合物等である。開始剤としては、通常
のラジカル開始剤ならばいずれを用いても良く、2,
2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾ
ビスマレノニトリル等の脂肪族アゾ化合物や、過酸化ベ
ンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過
硫酸カリウム等の有機過酸化物を例示することができ
る。共重合体中のMPC成分(a)とメタクリル酸エス
テル成分(b)との比は0.03から2.33の範囲で
あり、a/bが0.03未満ではMPCの効果が発現し
ないため好ましくなく、一方a/bが2.33を超える
場合は共重合体が水中で過度に膨潤するために強度低下
をまねく。本発明のポリマーはその目的に応じて分子量
を種々に変化させることができるが、得られる共重合体
の材料としての強度の観点より5000以上、好ましく
は10000以上である。
【0014】
【実施例】以下に、本発明の実施例を記載するが、本発
明はこれらの実施例に限定されるものではない。 実施例1MPC−メタクリル酸n−ブチル(BMA)共重合体の
合成 MPCとBMAのモノマー仕込みモル比がMPC/BM
A=10/90,総モノマー濃度が1.0mol/リッ
トル及び開始剤濃度10mmol/リットルとなるよう
に、MPC0.562g(1.9mmol),BMA2.
44g(17.1mmol)を重合用ガラス反応管に秤
取し、これに重合開始剤として2,2’−アゾイソブチ
ロニトリル(AIBN)0.0327g,重合溶媒とし
てメタノール(MeOH)5ml及びテトラヒドロフラ
ン(THF)15mlを加えた。反応管内に充分にアル
ゴン置換した後、容封した。これを16時間60℃に加
温することにより重合反応を行なった。反応混合物を氷
冷した後、1000mlのヘキサン−ジエチルエーテル
(3:2)混合液に滴下することによりポリマーを沈殿
した。これを瀘別し、充分にヘキサン−ジエチルエーテ
ル(3:2)混合液にて洗浄した後減圧乾燥して白色粉
末状のポリマーを得た。収量1.17g、重合率37.
2%。 IR(cm~1)3200−2900(CH2,CH3),
1720(C=0),1100−1200(C−0−
C),1250(P=0) 分子量はポリマーのTHF溶液をGPCを用いて分析す
ることにより測定した結果、ポリスチレン換算にて37
000であった。ポリマー0.5gを5mlのMeOH
−THF(1:1)混合溶媒に溶解し、これを25cm
2のテフロン板上に流延した。溶媒を室温にて留去した
後、減圧乾燥することにより厚さ100μmのポリマー
膜を作製した。膜の表面をESCA(X線光電子分光
計)にて分析し、リン原子と炭素原子の分析値よりポリ
マー中のMPCモル組成を算出した結果、11.0%で
あった。予め重量を測定しておいたポリマー膜を30℃
の水中に10日間浸漬して含水した膜の重量を測定し
た。重量の増加より膜中に含まれる水の重量を算出し、
含水した膜の重量との比を求めることにより含水率を求
めたところ35.7%であった。
【0015】実施例2−7 MPCとBMAの仕込みモノマー組成比を種々に変化さ
せた以外は実施例1と同様の方法でMPC−BMA共重
合体を得た。結果を表1に示す。 実施例8−9 BMAをメタクリル酸トリデシル(TDMA)に替え、
MPCとTDMAとの仕込みモノマー組成比を変化させ
て実施例1と同様の方法でMPC−TDMA共重合体を
得た。結果を表1に示す。 実施例10−11 BMAをメタクリル酸2−フェノキシエチル(PEM
A)に替えMPCとPEMAとの仕込みモノマー組成比
を変化させて実施例1と同様の方法でMPC−PEMA
共重合体を得た。結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】血小板粘着率の測定 ウサギ新鮮血を遠心分離することにより血小板を1×1
8コ/ml含む血小板多血漿(PRP)を調製した。
リン脂質ポリマーの0.5%(MeOH−THF1:
1)溶液を調製し、これにアクリルビーズ(直径200
−600μm)を浸漬した。10分後、ビーズを瀘別し
て溶媒を留去することによりポリマー被覆ビーズを調製
した。このビーズ0.52gを長さ10cm,内径3mmの
ポリ塩化ビニル製のチューブに最密充填し、カラムとし
た。このカラムに1mol/リットルの塩化カルシウム
溶液119μlを加えたPRPを流速0.23ml/分
で20分間通過させた。カラムから流出してくる血小板
数をコールターカウンターにて計測し、血小板流出曲線
を得た。結果を図1に示す。また血小板粘着率を次式に
より算出した。
【0018】
【数1】
【0019】結果を表2に示す。同様にポリ(BM
A),ポリ(MMA),ポリ(メタクリル酸2−ヒドロ
キシエチル、HEMA)を被覆したビーズ及びガラスビ
ーズを用いた場合の結果を比較例として示す。
【0020】
【表2】
【0021】血小板流出率に与えるMPC組成の効果 血小板流出率に与えるMPC組成による効果をみるため
前記と同様にしてMPC組成の異なるポリマーを被覆し
たアクリルビーズをカラムに充填し、前記と同様に血小
板を通過させた。結果は図1に示すとおりである。MP
C組成が0であるポリ(BMA)被覆ビーズでは血小板
を通過させ始めて12分より流出率の低下が認められ、
17分で流出が認められなくなった。MPC組成の増加
に伴い血小板流出率の低下が抑制される傾向となり、M
PC組成が0.320の共重合体においては血小板の流
出率がほぼ1.0の値を示した。タンパク質吸着率の測定 リン脂質ポリマーの0.5%(MeOH−THF1:
1)溶液を調製し、これに石英板(長さ 40mm,幅
9mm,厚さ 3mm)を浸漬した。10分間放置
後、石英板を取り出し、室温にて一晩放置することによ
り溶媒を揮散させ、ポリマーを被覆した。このポリマー
被覆石英板をアルブミン(0.45g/dl),γ−グ
ロブリン(0.16g/dl)及びリゾチーム(0.4
5g/dl)のリン酸緩衝溶液(pH7.4)に30分
間浸漬して蛋白質を吸着させた後、リン酸緩衝溶液にて
充分にリンスした。分光光度計にて石英板の吸光度を測
定することにより、表面に吸着した蛋白質の量を定量し
た。結果を表3に示す。同様にポリ(BMA),ポリ
(MMA),ポリ(HEMA)を被覆した石英板を用い
た場合の結果を比較例として示す。
【0022】
【表3】
【0023】MPC−BMA共重合体ハイドロゲル膜の
薬物放出特性 実施例1と同様にして得られた共重合体のクロロホルム
溶液に1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン
(DHEB)を加え、キャスト法により膜を作成した。
この膜より1cm×1cmのデバイスをつくり、pH緩
衝液に浸し、放出されたDHEB量をUVを用いて測定
した。共重合体組成を変えて作成したデバイスからのD
HEB放出特性を図2に示す。MPC組成が増すにつれ
てDHEB放出速度が増加した。又図3に温度を変化さ
せた時のDHEBの放出量を示す。これから明らかなよ
うに30℃→40℃→30℃と温度を変えることにより
可逆的に放出速度が変化することが認められる。これは
デバイスの膨潤度変化に対応する結果と考えられ、MP
C−BMA共重合体ハイドロゲル膜が医薬用担体、カプ
セル用材料、カテーテル材料等としての応用が可能であ
ることを示すものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】MPC−BMA共重合体中のMPC組成に対す
る血小板流出曲線を示すグラフである。
【図2】各種MPC組成のMPC−BMA共重合体デバ
イスからのDHBEの放出特性を示すグラフである。
【図3】温度変化に応じたMPC−BMA共重合体デバ
イスからのDHBEの放出特性を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08F 220/26 MML C08F 230/02 MNS 230/02 MNS A61J 1/00 331Z

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 【化1】 〔ただし、aは0.03〜0.70、bは0.30〜
    0.97、nは2以上の整数、RはH、OR’(R’は
    脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)を示す〕で示さ
    れる繰り返し単位を有し、分子量5000以上を有する
    2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメ
    タクリル酸エステルの共重合体。
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