JPH08387Y2 - 織機における開口装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、ジャックレバーに作用
する引張バネのバネ力とカム機構の駆動力との協働によ
って複数の綜絖枠を上下動する消極開口装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】特開昭６２−１４１１４７号公報に開示
されるタイプの開口装置には、図６に示すような綜絖枠
の引下ロープの掛け止め機構が採用されている。即ち、
カムレバー３１に歯部３１ａを刻設し、この歯部３１ａ
に噛合するノッチドプレート３２にブッシュ３４を介し
てロープコネクタ３３の基端側連結子３３ａを取着する
と共に、ロープコネクタ３３の先端側連結子３３ｂには
引下ロープ３５を巻掛け接続している。この引下ロープ
３５の両端はそれぞれ綜絖枠の左右両側に連結されてい
る。

【０００３】実開昭５９−３７３７８号公報に開示され
る開口装置においては、固定軸を中心として揺動可能な
開口レバーの先端に固定軸を中心とした円弧状の溝部を
形成し、この溝部に引下ロープを係合させた後にロープ
先端を開口レバー上に止着している。又、開口レバーに
歯部を刻設し、この歯部に噛合する連結ロッドによりカ
ムの回転によって揺動するカムレバーと前記開口レバー
とを作動連結している。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、図６の
構成ではブッシュ３４と基端側連結子３３ａとの間の摺
接部位には引張バネのバネ作用が集中するために摩耗損
傷が生じ易く、そのために潤滑油切れとならないよう配
慮が必要となる。かかる給油のための保守管理は煩雑で
あり、しかも、カムレバー３１の揺動による油の飛び散
りも問題となる。又、一本の引下ロープ３５によって綜
絖枠の左右両側とカムレバー３１とを連結しているの
で、引下ロープ３５のどこかに損傷を生じた場合ロープ
全体を取り替えねばならず、あまり経済的でない。又、
カムレバー３１を高速揺動させた場合、カムレバーと綜
絖枠との間に設けられたガイドローラ（図示略）とロー
プコネクタ３３との間で引下ロープ３５が上下方向に振
動する。かかる振動が綜絖枠に伝達されると、綜絖枠の
円滑な上下動が阻害され、織機の運転に支障を来す。

【０００５】実開昭５９−３７３７８号公報の構成によ
れば、カムレバーの揺動に伴って開口レバーが揺動して
も、引下ロープは常に溝部が形成する円弧の接線に沿っ
ており、開口レバーとガイドローラとの間で引下ロープ
が上下に振動するということはない。しかし、カムレバ
ーと連結ロッドとの間においてブッシュ及び連結子を含
む摺動連結構成を避けることができず、依然として給油
に関する問題が存在する。又、カムレバー、連結ロッ
ド、開口レバーという多くの部材を使用しており、メカ
ニズムが複雑なことと相まって駆動重量が大きいため
に、カムレバーの高速揺動に対する引下ロープの追従性
が低下し、綜絖枠の駆動タイミングが不正確になるとい
う問題を有する。

【０００６】本考案の目的は、上述のような従来の問題
点を一挙に解消し、カムレバーとロープとの間での給油
を必要とすることなく、高速運転時においても綜絖枠を
円滑に上下動することができる織機における開口装置を
提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本考案は、カム機構を構成するカムレバーには綜絖枠
に繋がる一対のロープを連結する掛け止め連結具を取り
付け、掛け止め連結具には弧状のロープガイドをカムレ
バーの揺動方向に沿って設け、各ロープ経路がロープガ
イドの接線方向に一致するようなガイド関係を保ちつつ
各ロープをロープガイドに接合すると共に、各ロープ端
部を掛け止め連結具に反転接合し、各ロープ端部の反転
接合位置には各ロープ端部を進入させて固定する固定部
を掛け止め連結具に形成すると共に、この固定部には各
ロープ端部の進入経路に対して窪んだ凹部と、この凹部
内にロープ端部を屈曲させて圧接固定するロープ押圧具
とを設けることにより、開口装置を構成した。

【０００８】

【作用】カムレバーと綜絖枠とを繋ぐロープはカムレバ
ーの揺動に追随してロープ経路方向に往復動するが、こ
の往復動に伴いロープは掛け止め連結具のロープガイド
に対して摺動することなく接離を繰り返す。従って、カ
ムレバーとロープとの間で給油を行う必要がなく、カム
レバーの揺動による油の飛び散りの問題を生じない。

【０００９】ロープ端部を進入させて固定する固定部を
掛け止め連結具に形成すると共に、この固定部に設けた
凹部とロープ押圧具とによりロープを圧接固定している
ので、掛け止め連結具を構成する部材点数が少なく掛け
止め連結具全体が軽量化される。従って、カムレバーの
揺動時における慣性が小さくなってカムレバーの高速揺
動が可能となる。

【００１０】ロープ端部はロープ押圧具によって固定部
の凹部内に屈曲状態で圧接固定されるため、掛け止め連
結具からのロープ抜けを生じない。又、綜絖枠に繋がる
一対のロープを掛け止め連結具に連結しているので、一
方のロープが損傷した場合にその一方のみを取り替える
ことができ、経済的である。

【００１１】

【実施例】以下に本考案を具体化した一実施例を図１〜
図４に従って説明する。図１に示すように、織機の両サ
イドフレーム１（一方のみ図示）上の各開口ブラケット
２にはそれぞれジャックレバー３が支軸３ａを介して回
動可能に支持されており、各ジャックレバー３の内端部
には吊下ロープ４が止着されると共に、吊下ロープ４の
下端には可動取り付け体５が止着されている。

【００１２】一方のサイドフレーム１の側方には機台回
転に同期して回転するタペットカム６及びカムレバー７
からなるカム機構がカムボックス８内に収納されてい
る。タペットカム６とカムレバー７上の回転子７ａとの
接触部位はカムボックス８内のオイルに浸けられてい
る。そして、ガイドローラ１４を経由する一対の引下ロ
ープ１５，１６によって、左右一対の各可動取り付け体
５とカムレバー７先端部とが連結されている。

【００１３】ジャックレバー３の外端部には連結ロープ
９の一端が止着され、連結ロープ９の他端部にはハンガ
ー１０が止着されている。ジャックレバー３の外端部の
直下でサイドフレーム１の外側面にはハンガーブラケッ
ト１１が止着されており、ハンガーブラケット１１とハ
ンガー１０との間には引張バネ１２が張設されている。
従って、引張バネ１２のバネ作用によってカムレバー７
の回転子７ａがタペットカム６に押接され、タペットカ
ム６の回転が可動取り付け体５の上下動に変換される。
これにより両可動取り付け体５間に架設支持された綜絖
枠１３が上下動される。

【００１４】図２及び図３に示すように、カムレバー７
には掛け止め連結具１８が一対のボルト１９によって取
り付け位置調節可能に締め付け固定されており、ボルト
１９とカムレバー７との間には圧接片２０が介在されて
いる。掛け止め連結具１８はコ字状の支持枠体２１と、
支持枠体２１の両側板２１ａ，２１ｂを連結する連結板
２２と、両側板２１ａ，２１ｂの先端部間に挟持固定さ
れたガイド板２３とからなり、ボルト１９の締め付けに
よって圧接片２０及び連結板２２がカムレバー７の側縁
に圧接される。

【００１５】図２〜図４に示すように、ガイド板２３の
周縁には上縁から右側縁にわたる二条のガイド溝２５，
２６が並設されている。ガイド板２３の下側に突出した
固定部２７には窓２８が設けられると共に、窓２８に達
する一対の挿通孔２９が各ガイド溝２５，２６の延長線
上に設けられている。窓２８を挟んで両挿通孔２９を延
長した位置には、一対のロープ保持孔３０が凹設されて
いる。綜絖枠１３を支持する左右一対の可動取り付け体
５の下端に止着された引下ロープ１５，１６の他端部は
ガイドローラ１４を経由してガイド溝２５，２６に巻掛
け接合され、その先端部は挿通孔２９及び窓２８を通っ
てロープ保持孔３０に挿入される。これにより引下ロー
プ１５，１６がガイド溝２５，２６に沿って反転接合す
る。

【００１６】固定部２７には止めネジ４１が窓２８に達
するように螺着され、窓２８には凹部４２が止めネジ４
１と対向して形成されている。窓２８内において引下ロ
ープ１５，１６の先端部と止めネジ４１との間にはプレ
スロッド４３が介在されており、止めネジ４１の締め付
け作用によってプレスロッド４３が凹部４２内で屈曲圧
接される。凹部４２とプレスロッド４３との対向面は曲
率の異なる相似曲面に形成されており、両引下ロープ１
５，１６は両対向面にぴったりと接合する。

【００１７】図１及び図２に示す掛け止め連結具１８の
カムレバー７に対する取り付け位置において、両ガイド
溝２５，２６はカムレバー７の回動中心Ｃ₁ を中心とす
る角度範囲θ₁ にわたり回動中心Ｃ₁ を中心とする円弧
Ｃに沿うように形成されている。ここで、カムレバー７
が揺動する角度範囲をθ₂ とし、カムレバー７が右方向
へ傾動して綜絖枠１３が最下動位置にあるときには、各
引下ロープ１５，１６が角度範囲θ₂ の左側境界線ｒ₁
とガイド溝２５，２６との交点における接線に一致する
と仮定する。すると、カムレバー７が左方向へ傾動して
綜絖枠１３が上動位置にあるときには、引下ロープ１
５，１６は角度範囲θ₂ の右側境界線ｒ₂とガイド溝２
５，２６との交点における接線に一致する。

【００１８】即ち、カムレバー７及び引下ロープ１５，
１６は互いに相対移動するが、引下ロープ１５，１６と
ガイド溝２５，２６とが接触を開始する位置（接触開始
点Ｐと呼ぶ）は常に同一高さの同一位置になる。そのた
め、引下ロープ１５，１６は角度範囲θ₂ 内でガイド溝
２５，２６に対して摺動することなく単に接離を繰り返
すのみであり、引下ロープ１５，１６はガイド溝２５，
２６との接触開始点Ｐとガイドローラ１４との間におい
て常に図１及び図２に示す位置に保たれ、上下に振動す
ることがない。

【００１９】尚、支持枠体２１はボルト１９の作用に基
づきカムレバー７に沿って上下に取り付け位置変更可能
であり、この変更によって綜絖枠１３の上下移動量、ひ
いては経糸開口角を変更することができる。円弧Ｃの半
径は比較的大きいため、支持枠体２１を少々位置変更し
てガイド溝２５，２６が円弧Ｃからずれることがあって
も引下ロープ１５，１６の振動は極めて少ない。

【００２０】このように本実施例によれば、ガイド板２
３に固定部２７を一体形成すると共に、この固定部２
７、止めネジ４１及びプレスロッド４３という必要最小
限の構成で引下ロープ１５，１６の端部を固定してい
る。それ故、構造が簡単で部材点数も少ないため、掛け
止め連結具１８が軽量化されると共にカムレバー７を含
めた掛け止め連結構成の慣性モーメントがかなり小さく
なる。従って、従来以上にカムレバー７を高速揺動する
ことができる。カムレバー７を高速揺動させても引下ロ
ープ１５，１６が振動を生ずることがないため、タペッ
トカム６のカムプロフィルを忠実に反映して綜絖枠１３
を円滑かつ正確に上下動することができる。又、固定部
２７をガイド板２３に一体形成したことにより、強度向
上が図られている。

【００２１】固定部２７にロープ保持孔３０を設けたこ
とにより、各引下ロープ１５，１６を滑らかに反転配置
した状態でロープ端部をロープ保持孔３０に保持するこ
とができる。従って、プレスロッド４３で引下ロープ１
５，１６を押圧した際に引下ロープ１５，１６が挿通孔
２９方向へ後退して無用に弛むことがないように、引下
ロープ１５，１６を容易に組み付けることができる。

【００２２】引下ロープ１５，１６端部は固定部２７の
凹部４２に屈曲状態で圧接固定されているので、固定部
２７へのロープ進入経路に沿って真っ直ぐにロープを配
置した状態で圧接する場合に比較して引き抜きに強く、
ロープ抜けを確実に防止することができる。又、凹部４
２とプレスロッド４３の頭部とは相似曲面に形成されて
いるので、引下ロープ１５，１６の屈曲部位全体を凹部
４２とプレスロッド４３との間に挟着することができ、
引下ロープ１５，１６を局部的に損傷することがない。

【００２３】左右一対の引下ロープ１５，１６を掛け止
め連結具１８に対し別々に固定しているので、いずれか
一本が切損した場合でもその切損したロープのみを取り
替えることができ、保守管理上極めて経済的である。更
に、摺接のない引下ロープ１５，１６とガイド溝２５，
２６との接離関係は両者の接触部における確実な摩耗回
避をもたらし、この接触部への給油を不要とする。従っ
て、特別な給油機構を設ける必要がなく、給油保守管理
の煩雑さ及びカムレバー７の高速揺動による油の飛び散
り等の問題が存在しない。

【００２４】尚、本考案は上記実施例に限定されるもの
ではなく、次の態様にて実施することもできる。即ち、 （１）図５に示すように、プレスロッド４５頭部の曲率
を固定部２７の凹部４２の曲率よりも小さく設定するこ
と。これにより、プレスロッド４５頭部の周縁部４５
ａ，４５ｂと凹部４２の周縁部４２ａ，４２ｂとの間に
おいて引下ロープ１５，１６を一層強く挟着することが
できる。 （２）固定部２７をガイド板２３と別体とし、その固定
部２７を支持枠体２１の両側板２１ａ，２１ｂ間にピン
等で固着すること。 （３）ロープガイドを円弧に近い滑らかな曲線形状にす
ること。

【００２５】

【考案の効果】以上詳述したように本考案によれば、掛
け止め連結具には弧状のロープガイドをカムレバーの揺
動方向に沿って設け、各ロープ経路がロープガイドの接
線方向に一致するようなガイド関係を保ちつつ各ロープ
をロープガイドに接合すると共に、各ロープ端部を掛け
止め連結具に反転接合したので、ロープの振動、摩擦損
傷、潤滑油の飛び散り等の問題を生ずることがなく、高
速運転時においても綜絖枠を円滑に上下動することがで
きる。

【００２６】又、各ロープ端部の反転接合位置には各ロ
ープ端部を進入させて固定する固定部を掛け止め連結具
に形成すると共に、この固定部には各ロープ端部の進入
経路に対して窪んだ凹部と、この凹部内にロープ端部を
屈曲させて圧接固定するロープ押圧具とを設けたので、
掛け止め連結具の軽量化が図られてカムレバーが高速揺
動することができると共に、掛け止め連結具からのロー
プ抜けが確実に防止されるという優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案を具体化した一実施例を示す開口装置の
一側の正面図である。

【図２】掛け止め連結具の拡大縦断面図である。

【図３】掛け止め連結具の拡大平面図である。

【図４】図２のＡ−Ａ線断面図である。

【図５】本考案の別例を示す掛け止め連結具の拡大縦断
面図である。

【図６】従来の開口装置の要部正面図である。

【符号の説明】

３ ジャックレバー、７ カムレバー、１２ 引張バ
ネ、１３ 綜絖枠、１５，１６ 引下ロープ、１８ 掛
け止め連結具、２５，２６ ロープガイドとしてのガイ
ド溝、２７ 固定部、４１ ロープ押圧具を構成する止
めネジ、４２ 凹部、４３ ロープ押圧具を構成するプ
レスロッド。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ジャックレバーに作用する引張バネのバ
   ネ力とカム機構の駆動力との協働によって綜絖枠を上下
   動する消極開口装置において、カム機構を構成するカム
   レバーには綜絖枠に繋がる一対のロープを連結する掛け
   止め連結具を取り付け、掛け止め連結具には弧状のロー
   プガイドをカムレバーの揺動方向に沿って設け、各ロー
   プ経路がロープガイドの接線方向に一致するようなガイ
   ド関係を保ちつつ各ロープをロープガイドに接合すると
   共に、各ロープ端部を掛け止め連結具に反転接合し、各
   ロープ端部の反転接合位置には各ロープ端部を進入させ
   て固定する固定部を掛け止め連結具に形成すると共に、
   この固定部には各ロープ端部の進入経路に対して窪んだ
   凹部と、この凹部内にロープ端部を屈曲させて圧接固定
   するロープ押圧具とを設けた織機における開口装置。