JPH08276839A - 液圧ブレーキ装置 - Google Patents

液圧ブレーキ装置

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JPH08276839A
JPH08276839A JP7080162A JP8016295A JPH08276839A JP H08276839 A JPH08276839 A JP H08276839A JP 7080162 A JP7080162 A JP 7080162A JP 8016295 A JP8016295 A JP 8016295A JP H08276839 A JPH08276839 A JP H08276839A
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reservoir
wheel cylinder
rear wheel
hydraulic fluid
pressure
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JP7080162A
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Kiyoyuki Uchida
清之 内田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 二輪一系統で、ホイールシリンダをマスタシ
リンダから遮断し、リザーバの作動液を利用してアンチ
スキッド制御を行う液圧ブレーキ装置において、リザー
バ液量を容易に推定し得るようにする。 【構成】 リザーバ液量を、フロント,リヤ両ホイール
シリンダ16,20の液圧が減圧される減圧時間と、ポ
ンプ38の作動時間とに基づいて推定する。フロントホ
イールシリンダ16に減圧モードが設定されて第二開閉
弁40および第三開閉弁46が共に開状態に切り換えら
れれば、リヤホイールシリンダ20の液圧も減圧され
る。したがって、フロントホイールシリンダ16に減圧
モードが設定される時間を検出すれば、フロント,リヤ
両ホイールシリンダ16,20の液圧が減圧される時間
を検出したことになる。そのため、従来のリザーバ液量
推定手段による場合より容易にリザーバ液量を推定する
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アンチスキッド制御の
可能な液圧ブレーキ装置に関するものであり、マスタシ
リンダをホイールシリンダから遮断した状態でアンチス
キッド制御を行う液圧ブレーキ装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】特開平1─119462号公報には、こ
の種の液圧ブレーキ装置の1つが記載されている。この
液圧ブレーキ装置は、(a) 1つの加圧室を備えたマスタ
シリンダと、(b) そのマスタシリンダの加圧室に接続さ
れた1つの車輪のホイールシリンダと、(c) 作動液を収
容するリザーバと、(d) そのリザーバの作動液を汲み上
げてホイールシリンダに加圧して供給するポンプと、
(e) ホイールシリンダをマスタシリンダに連通させ、リ
ザーバから遮断する第一状態と、マスタシリンダからも
リザーバからも遮断する第二状態と、マスタシリンダか
ら遮断してリザーバに連通させる第三状態とに切換可能
な第一弁装置と、(f) ポンプとリザーバとを連通させる
連通状態と遮断する遮断状態とに切換可能な第二弁装置
と、(g) ポンプを作動状態に保つとともに、第一弁装置
を第二状態と第三状態とに切り換え、第二弁装置を連通
状態と遮断状態とに切り換えることによって、ホイール
シリンダの液圧を、車輪のスリップ率がほぼ適正値にな
るように制御するアンチスキッド制御手段とを備えたも
のであり、アンチスキッド制御手段が、第一弁装置が第
三状態に切り換えられた減圧時間と、第二弁装置が連通
状態に切り換えられた増圧時間とに基づいてリザーバに
収容されている作動液量(以下、リザーバ液量と称す
る)を推定するリザーバ液量推定手段を有している。
【0003】この液圧ブレーキ装置において、第一弁装
置が第三状態に切り換えられればホイールシリンダがリ
ザーバに連通させられ、ホイールシリンダの作動液が流
出させられてリザーバに流入させられる。第二弁装置が
連通状態に切り換えられれば、リザーバに収容された作
動液がポンプにより汲み上げられてホイールシリンダに
供給される。したがって、ホイールシリンダの作動液が
リザーバに流入させられる減圧時間と、ホイールシリン
ダに作動液が供給される増圧時間とに基づいてリザーバ
液量を推定することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この液圧ブレーキ装置
においては、リザーバおよびポンプが各ホイールシリン
ダ毎に設けられており、そのために液圧ブレーキ装置全
体のコストが高くなり、車両の重量が重くなるという問
題があった。この問題は、液圧ブレーキ装置を、ダイヤ
ゴナル式液圧ブレーキ装置のように二輪一系統のものと
すれば解決することができる。二輪一系統の液圧ブレー
キ装置においては、2個のホイールシリンダについてリ
ザーバ,ポンプが1個でよいため、その分重量を軽くす
ることができるのである。しかし、その場合には、リザ
ーバ液量の推定が複雑になるという別の問題が生じる。
減圧時間,増圧時間の検出が複雑になったり、検出され
た減圧時間,増圧時間に基づいてリザーバ液量を推定す
る際の演算が複雑になったりするのである。
【0005】以下、従来の液圧ブレーキ装置と同様なリ
ザーバ液量推定手段によって、図7に示す二輪一系統の
液圧ブレーキ装置におけるリザーバ液量を推定する場合
を考える。図7の液圧ブレーキ装置は、(1) 2個の加圧
室を備えたマスタシリンダ300と、(2) そのマスタシ
リンダ300の2個の加圧室の各々から互いに独立して
延びる2個の液通路の各々に接続された前輪のフロント
ホイールシリンダ304および後輪のリヤホイールシリ
ンダ306と、(3) それらフロントおよびリヤの両ホイ
ールシリンダ304,306とマスタシリンダ300と
を連通させる連通状態と、それらを遮断する遮断状態と
に切換可能な第一開閉弁310と、(4)作動液を収容す
るリザーバ312と、(5) そのリザーバ312に収容さ
れた作動液を汲み上げ、前記フロントおよびリヤの両ホ
イールシリンダ304,306に加圧して供給するポン
プ314と、(6) フロントおよびリヤの両ホイールシリ
ンダ304,306の作動液のリザーバ312への流出
を許容する第一状態と、リヤホイールシリンダ306の
作動液のリザーバ312への流出を許容し、フロントホ
イールシリンダ304の作動液の流出を阻止する第二状
態と、フロントおよびリヤの両ホイールシリンダ30
4,306の作動液の流出を阻止し、それら両ホイール
シリンダ304,306の少なくとも一方へのポンプ3
14から吐出された作動液の流入を許容する第三状態と
に切換可能な弁装置316と、(7) 第一開閉弁310を
遮断状態に切り換えた状態において、ポンプ314の作
動を制御するとともに、弁装置316を第一状態,第二
状態および第三状態のいずれかに切り換えることによっ
て、フロントおよびリヤの両ホイールシリンダ304,
306の液圧を、前輪および後輪の制動スリップがほぼ
適正値になるように制御するアンチスキッド制御手段3
18とを備えたものである。
【0006】弁装置316は、本液圧ブレーキ装置にお
いては、第二開閉弁320と第三開閉弁322とを備え
たものである。第二開閉弁320は、フロントホイール
シリンダ304とリザーバ312とを接続する液通路の
途中に設けられ、第三開閉弁322は、リヤホイールシ
リンダ306とリザーバ312とを接続する液通路と、
第二開閉弁320とリザーバ312とを接続する液通路
との共通部分に設けられている。したがって、第二開閉
弁320および第三開閉弁322が共に開状態にされれ
ば、フロント,リヤホイールシリンダ304,306が
共にリザーバ312に連通させられ、第二開閉弁320
が閉状態にされ、第三開閉弁322が開状態にされれ
ば、リヤホイールシリンダ306のみがリザーバ312
に連通させられる。前者の場合が第一状態,後者の場合
が第二状態である。
【0007】フロントホイールシリンダ304と第二開
閉弁320との間には、フロントホイールシリンダ30
4から第二開閉弁320への作動液の流れは許容する
が、逆向きの流れは液圧差が開弁圧以下の間は阻止する
減圧装置324が設けられている。この減圧装置324
と第二開閉弁320との間にポンプ314の吐出口が接
続されている。第三開閉弁322が閉状態にされれば、
フロント,リヤ両ホイールシリンダ304,306が共
にリザーバ312から遮断され、両ホイールシリンダ3
04,306からの作動液の流出が阻止されるが、この
状態において、第二開閉弁320が閉状態にある場合に
は、減圧装置324が開いてポンプ314の吐出口がフ
ロントホイールシリンダ304に連通させられ、フロン
トホイールシリンダ304への作動液の流入が許容され
る。それに対して、第二開閉弁320が開状態にある場
合には、フロント,リヤ両ホイールシリンダ304,3
06にポンプ314の吐出口が連通させられ、両ホイー
ルシリンダ304,306への作動液の流入が許容され
る。これらの状態が弁装置316の第三状態である。な
お、いずれの場合においても、フロントホイールシリン
ダ304には、ポンプ314から吐出された作動液が、
減圧装置324を経て供給されることになる。
【0008】前者の場合には、ポンプ314から吐出さ
れた作動液が必ずフロントホイールシリンダ304へ供
給されるが、後者の場合には、フロント,リヤ両ホイー
ルシリンダ304,306へ供給される場合と,リヤホ
イールシリンダ306のみに供給される場合とがある。
フロントホイールシリンダ304とポンプ314の吐出
口との間に設けられた減圧装置324によって、液圧差
が開弁圧以下の間はフロントホイールシリンダ304へ
の作動液の流入が阻止されるからである。また、液圧差
が開弁圧に達すれば、フロントホイールシリンダ304
への流入も許容されるが、この場合には、作動液が開弁
圧分だけ減圧されて供給されることになる。
【0009】アンチスキッド制御が開始されれば、前輪
および後輪のスリップ率がほぼ適正値に保たれるよう、
表1に示す各モードが設定され、それに応じて第一,第
二,第三開閉弁310,320,322がそれぞれ切り
換えられる。表1については〔実施例〕において詳述す
るが、たいていの場合には、第四モード〜第七モードが
設定され、第一開閉弁310は閉じられたままであり、
ポンプ314は作動状態に保たれる。
【0010】
【表1】
【0011】第七モードが設定されれば、第二開閉弁3
20,第三開閉弁322が共に開状態にされ、フロン
ト,リヤ両ホイールシリンダ304,306の作動液の
リザーバ312への流出が許容される。フロント,リヤ
両ホイールシリンダ304,306の液圧が減圧される
のである。第六モードが設定されれば、第二開閉弁32
0が閉状態に、第三開閉弁322が開状態にされ、リヤ
ホイールシリンダ306の作動液のリザーバ312への
流出が許容され、フロントホイールシリンダ304の作
動液の流出が阻止されてポンプ314から吐出された作
動液の流入が許容される。リヤホイールシリンダ306
の液圧が減圧され、フロントホイールシリンダ304の
液圧が増圧されるのである。
【0012】第五モードが設定されれば、第二,第三開
閉弁320,322が共に閉状態にされ、フロント,リ
ヤ両ホイールシリンダ304,306が共にリザーバ3
12から遮断される。第二開閉弁320が閉状態にある
ため、ポンプ314から吐出された作動液がフロントホ
イールシリンダ304にのみ供給される。フロントホイ
ールシリンダ304の液圧は増圧されるが、リヤホイー
ルシリンダ306の液圧は保持される。第四モードが設
定されれば、第二開閉弁320が開状態にされ,第三開
閉弁322が閉状態にされる。第五モードが設定された
場合と同様に、フロント,リヤ両ホイールシリンダ30
4,306はリザーバ312から遮断される。この場合
には、ポンプ314から吐出された作動液はリヤホイー
ルシリンダ306にはそのまま供給されるが、フロント
ホイールシリンダ304には減圧装置324を経て供給
される。そのため、前述のように、液圧差が開弁圧以下
の場合には、リヤホイールシリンダ306の液圧のみが
増圧されるが、開弁圧に達すれば、フロント,リヤ両ホ
イールシリンダ304,306の液圧が共に増圧され
る。
【0013】フロントホイールシリンダ304の液圧が
減圧されるのは、第七モードが設定された場合であり、
リヤホイールシリンダ306の液圧が減圧されるのは、
第七モードが設定された場合と第六モードが設定された
場合とである。したがって、フロントホイールシリンダ
304における減圧時間は第七モードが設定された第一
減圧時間であるが、リヤホイールシリンダ306におけ
る減圧時間は、上記第一減圧時間と第六モードが設定さ
れる第二減圧時間とである。換言すれば、第一減圧時間
の間には、フロント,リヤ両ホイールシリンダ304,
306から作動液が流出させられてリザーバ312に流
入させられるが、第二減圧時間の間には、リヤホイール
シリンダ306から流出させられた作動液のみが流入さ
せられることになる。これら減圧時間に基づいてリザー
バ312に流入させられる作動液流入量が推定される。
【0014】また、フロントホイールシリンダ304の
液圧が増圧されるのは、第五,第六モードが設定された
場合であり、リヤホイールシリンダ306の液圧が増圧
されるのは、第四モードが設定された場合である。フロ
ントホイールシリンダ304における増圧時間は、第五
モードが設定された時間と第六モードが設定された時間
との和になり、リヤホイールシリンダ306における増
圧時間は第四モードが設定された時間である。これら増
圧時間に基づいてリザーバ312から流出させられる作
動液流出量が推定される。本液圧ブレーキ装置において
は、この作動液流出量と前記作動液流入量とに基づいて
リザーバ液量が推定されるのであるが、以下に示すよう
に推定が複雑になる。
【0015】第一に、減圧時間や増圧時間を検出する場
合において、弁装置316等が複数の状態にある時間を
それぞれ検出しなければならず、検出が複雑になるとい
う問題がある。すなわち、弁装置316等が特定の1つ
の状態にある時間を検出するのではないのである。作動
液流入量は、前述のように、フロントホイールシリンダ
304から流出させられる作動液量とリヤホイールシリ
ンダ306から流出させられる作動液量との和に基づい
て推定される。リヤホイールシリンダ306の液圧が減
圧されるのは、弁装置316が第七モードに設定された
状態(第二,第三開閉弁320,322が共に閉状態)
にある場合と第六モードが設定された状態(第二開閉弁
320が閉状態、第三開閉弁322が開状態)にある場
合とである。そのため第七モードが設定された時間(第
一減圧時間)と、第六モードが設定された時間(第二減
圧時間)とをそれぞれ検出しなければならないのであ
る。
【0016】もっとも、リヤホイールシリンダ306に
減圧モードが設定されている時間を検出すれば、第一減
圧時間と第二減圧時間との和の時間を直接検出すること
ができる。しかし、前述のように、第七モードが設定さ
れた場合には、フロント,リヤ両ホイールシリンダ30
4,306から流出させられた作動液がリザーバ312
に流入させられるが、第六モードが設定された場合に
は、作動液はリヤホイールシリンダ306から流出させ
られるだけである。これら両方の場合においては、単位
時間当たりにリヤホイールシリンダ306から流出させ
られる作動液量が異なるため、これらを一律に考えるこ
とができない。したがって、第一減圧時間と第二減圧時
間とを別個に検出し、リザーバ312への作動液流入量
の推定をこれら2つの場合については別個に考慮しなけ
ればならず、減圧時間の検出および作動液流入量の推定
の演算が複雑になる。また、フロントホイールシリンダ
304から作動液が流出させられてリザーバ312に流
入させられる時間は、上述の第一減圧時間に対応する
が、作動液流入量を推定する場合には、フロントホイー
ルシリンダ304から流出させられた作動液量も加える
必要がある。
【0017】作動液流出量を推定する場合においても、
リヤホイールシリンダ306に増圧モードが設定された
増圧時間、すなわち、弁装置316が第四モードが設定
された状態(第二,第三開閉弁320,322が閉状
態)にある時間と、フロントホイールシリンダ304に
増圧モードが設定された時間、すなわち、第五モードあ
るいは第六モードが設定された状態(第三開閉弁322
が閉状態)にある時間とをそれぞれ別個に検出しなけれ
ばならない。アンチスキッド制御中においては、フロン
ト,リヤ両ホイールシリンダ304,306の液圧は互
いに同じとは限らないため、これらを同様に扱うことが
できないのである。
【0018】第二に、アンチスキッド制御中は常に、フ
ロント,リヤ両ホイールシリンダ304,306におけ
る減圧時間,増圧時間を検出しなければならない。換言
すれば、前輪および後輪のいずれか一方の車輪に対して
アンチスキッド制御が行われていれば、他方の車輪に対
してアンチスキッド制御が行われていなくても、両方の
車輪のホイールシリンダ304,306における減圧時
間および増圧時間を検出しなければならないのである。
2個のホイールシリンダ304,306に対して、1個
のポンプ314およびリザーバ316しか設けられてい
ないからである。
【0019】例えば、前輪に対してのみアンチスキッド
制御が行われている場合において、フロントホイールシ
リンダ304のみの減圧時間と増圧時間とに基づいてリ
ザーバ液量を推定すると、実際には、リザーバ312に
作動液がないにもかかわらず、あると誤って推定される
場合がある。フロントホイールシリンダ304において
は、減圧時間は第七モードが設定された時間であり、増
圧時間は第五モード,第六モードが設定された時間であ
る。そのため、減圧時間に基づいて推定された作動液流
入量が、増圧時間に基づいて推定された作動液流出量よ
り多い場合には、第四モードが設定されている保持時間
が長くても短くても、リザーバ312には作動液がある
と推定される。しかし、実際には、第四モードが設定さ
れれば、リザーバ312の作動液がリヤホイールシリン
ダ306に供給される。したがって、第四モードが設定
された時間等によっては、作動液流出量が多くなり、リ
ザーバ312に作動液がなくなってしまうことがあるの
である。
【0020】以上の事情を背景として、第一発明の課題
は、二輪一系統の液圧ブレーキ装置において、リザーバ
液量を容易に推定し得るようにすることにあり、第二発
明の課題は、さらに、リザーバ液量の推定精度を向上さ
せることにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】上記第一発明の課題は、
前記(1) マスタシリンダ,(2) フロントホイールシリン
ダおよびリヤホイールシリンダ,(3) 第一開閉弁,(4)
リザーバ,(5) ポンプ,(6) 弁装置,(7) アンチスキッ
ド制御手段を含む液圧ブレーキ装置において、アンチス
キッド制御手段を、弁装置が第一状態にある減圧時間
と、ポンプの作動時間とに基づいてリザーバに収容され
ている作動液量を推定するリザーバ液量推定手段を含む
ものとすることによって解決される。
【0022】ここで、弁装置は、第一状態,第二状態,
第三状態に切換可能なものであるが、第三状態にある場
合においては、ポンプによって吐出された作動液の、フ
ロントホイールシリンダのみへの流入を許容するもので
あっても、リヤホイールシリンダのみへの流入を許容す
るものであっても、フロント,リヤ両ホイールシリンダ
への流入を許容するものであってもよく、これらの3つ
の状態のうちの任意の2つ以上の状態を含むものであっ
てもよい。例えば、弁装置を、前述の図7に示すよう
に、第二開閉弁320および第三開閉弁322を含む弁
装置316とすれば、弁装置316が第三状態にある場
合には、ポンプ314によって吐出された作動液の、フ
ロント,リヤ両ホイールシリンダ304,306への流
入を許容する場合とフロントホイールシリンダ304の
みへの流入を許容する場合とがある。また、弁装置を、
第二,第三開閉弁320,322の他に、減圧装置32
4も含むものとすれば、上述のフロント,リヤ両ホイー
ルシリンダ304,306への流入を許容する場合とフ
ロントホイールシリンダ304のみへの流入を許容する
場合との他に、リヤホイールシリンダ306のみへの流
入を許容する場合もあるのである。
【0023】また、第二発明の課題は、リザーバ液量推
定手段を、車両の減速度を取得する減速度取得手段を含
み、その減速度取得手段により取得された車体減速度
と、減圧時間およびポンプの作動時間とに基づいてリザ
ーバ液量を推定するものとすることによって解決され
る。
【0024】
【作用】第一発明の液圧ブレーキ装置においては、弁装
置が第一状態にある減圧時間と、ポンプの作動時間とに
基づいてリザーバ液量がリザーバ液量推定手段によって
推定される。減圧時間が長ければ、フロントおよびリヤ
両ホイールシリンダから流出させられてリザーバに流入
させられる作動液流入量が多くなり、ポンプの作動時間
が長ければ、リザーバから汲み上げられる作動液流出量
が多くなる。したがって、リザーバ液量は、減圧時間が
長いと多く、ポンプの作動時間が長いと少ないと推定さ
れる。
【0025】減圧時間は、弁装置が第一状態にある時間
である。弁装置が第一状態にある場合にはフロントホイ
ールシリンダの作動液の流出が許容されるが、第二状態
にある場合には流出が許容されない。それに対して、リ
ヤホイールシリンダの作動液の流出は、弁装置が第一状
態にある場合にも第二状態にある場合にも許容される。
フロントホイールシリンダの作動液の流出が許容される
状態にあれば、弁装置が第一状態にあることがわかり、
リヤホイールシリンダの作動液の流出も許容される状態
にあることがわかる。したがって、フロントホイールシ
リンダにおいて作動液の流出が許容される状態にある時
間を検出すれば、弁装置が第一状態にある時間、すなわ
ち、フロント,リヤ両シリンダの液圧が減圧される減圧
時間を検出することができる。従来のリザーバ液量推定
手段による場合のように、複数の状態にある時間をそれ
ぞれ検出する必要がなく、特定の1つの状態にある時間
を検出すればよい。また、アンチスキッド制御対象が前
輪のみであっても、前輪および後輪であっても、フロン
トホイールシリンダの作動液の流出が許容される状態に
あるか否かのみを検出すればよく、リヤホイールシリン
ダにおける状態を検出しなくてもよいのである。
【0026】この場合に、弁装置が第二状態にある時
間、すなわち、リヤホイールシリンダのみの作動液の流
出が許容される時間を考慮しないのは、リヤホイールシ
リンダの方がフロントホイールシリンダより容量が小さ
く、リヤホイールシリンダから流出させられる作動液量
が、フロントホイールシリンダからのそれより少ないこ
とが主な理由である。また、リザーバに流入させられる
作動液量は少なめに推定された方が、多めに推定される
より望ましいのも理由の1つである。
【0027】本発明の液圧ブレーキ装置においては、上
述のように、フロント,リヤ両ホイールシリンダから流
出させられてリザーバに流入させられる作動液流入量
が、検出された減圧時間に基づいて推定され、リザーバ
から流出させられる作動液流出量がポンプの作動時間に
基づいて推定される。そのため、作動液流入量,作動液
流出量を推定する場合に複雑な演算が不要となる。さら
に、リザーバ液量がポンプの作動時間に基づいて推定さ
れ、フロント,リヤ両ホイールシリンダにおけるそれぞ
れの増圧時間に基づいて推定されるわけではない。その
ため、フロント,リヤ両ホイールシリンダにおける増圧
時間をそれぞれ検出する必要がない。
【0028】第二発明の液圧ブレーキ装置においては、
リザーバ液量を推定する場合に、減圧時間,ポンプの作
動時間に加えて、減速度取得手段によって取得された車
体減速度が考慮される。車体減速度が大きいほど車両全
体の制動力が大きく、フロントホイールシリンダおよび
リヤホイールシリンダの液圧が高いと推定される。そし
て、フロント,リヤ両ホイールシリンダの液圧が高いほ
ど、少なくともリザーバに流入させられる作動液流入流
量(単位時間当たりの作動液流入量)が大きいと推定さ
れる。さらに、ポンプによってリザーバから汲み上げら
れる作動液流出流量(単位時間当たりの作動液流出量)
が小さいと推定されるようにしてもよい。
【0029】ホイールシリンダからリザーバへ作動液が
流入させられる場合には、ホイールシリンダの液圧とリ
ザーバの液圧との差が大きいほど作動液流入流量が大き
くなるのであるが、リザーバの液圧はほぼ一定であるた
め、上記作動液流入流量はホイールシリンダの液圧が高
いほど大きくなるのである。また、ポンプによって汲み
上げられた作動液がホイールシリンダに供給される場合
には、通常、ホイールシリンダの液圧が高いほどポンプ
の回転速度が低くなり、吐出量が小さくなる。作動液流
出流量はホイールシリンダの液圧が高いほど小さくなる
ことが多いのである。
【0030】
【発明の効果】以上のように、第一発明の液圧ブレーキ
装置によれば、リザーバ液量を、従来のリザーバ液量推
定手段による場合より、容易に推定することができる。
さらに、第二発明の液圧ブレーキ装置によれば、第一発
明の効果に加え、リザーバ液量の推定精度を向上させる
ことができる。
【0031】
【発明の望ましい実施態様】以下、本発明の望ましい実
施態様を列挙するとともに、必要に応じて関連説明を行
う。 (1)前記リザーバ液量推定手段が、前記減圧時間に基
づいて前記リザーバへの作動液流入量を推定する流入量
推定手段を含み、かつ、その流入量推定手段が、車体の
減速度を取得する減速度取得手段を含み、その減速度取
得手段によって取得された車体減速度と前記減圧時間と
に基づいて作動液流入量を推定するものである請求項1
に記載の液圧ブレーキ装置。車体減速度が大きい場合に
は、フロントホイールシリンダとリヤホイールシリンダ
との液圧が高いと推定され、リザーバへの作動液流入流
量が大きいと推定される。減速度の大きさの変化に応じ
てリザーバへの作動液流入流量が連続的に変化するよう
に推定されても、減速度の大きさが複数段階に分けら
れ、各段階毎にリザーバへの作動液流入流量が段階的に
変化するように推定されてもよい。
【0032】(2)前記リザーバ液量推定手段が、前記
減圧時間に基づいて前記リザーバへの作動液流入量を推
定する流入量推定手段を含み、かつ、その流入量推定手
段が、少なくとも前記フロントホイールシリンダの液圧
を検出する液圧検出装置を含み、その液圧検出装置によ
り検出されたフロントホイールシリンダ液圧と前記減圧
時間とに基づいて前記作動液流入量を推定するものであ
る請求項1に記載の液圧ブレーキ装置。車体減速度に基
づいてホイールシリンダ液圧を推定するより、直接検出
した方が作動液流入量の推定精度を向上させることがで
きる。また、フロントホイールシリンダの液圧とリヤホ
イールシリンダの液圧との両方を検出してもよいが、い
ずれか一方のホイールシリンダの液圧のみを検出する場
合には、フロントホイールシリンダのそれを検出するこ
とが望ましい。
【0033】フロント,リヤホイールシリンダから流出
させられる作動液量は、上記液圧の他、各々のホイール
シリンダの容量,リザーバまでの流路抵抗等に左右され
るものであり、一般的に、容量が大きいほど流出量が多
くなる。容量は、フロントホイールシリンダの方がリヤ
ホイールシリンダのそれより大きいため、この点からフ
ロントホイールシリンダの液圧を検出することが望まし
いのである。また、後輪側にプロポーショニングバルブ
が設けられている場合には、マスタシリンダ圧がプロポ
ーショニングバルブの折れ点圧より高くなれば、フロン
トホイールシリンダの液圧がリヤホイールシリンダの液
圧より高くなる。アンチスキッド制御は、多くの場合、
マスタシリンダの液圧が折れ点圧より高い状態で開始さ
れる。したがって、リザーバに流入する作動液は、フロ
ントホイールシリンダから流出させられた作動液の方が
リヤホイールシリンダからのそれより多くなるため、フ
ロント,リヤのいずれか一方のホイールシリンダの液圧
のみを検出する場合には、フロントホイールシリンダの
液圧を検出することが望ましいのである。
【0034】(3)前記リザーバ液量推定手段が、前記
ポンプの作動時間に基づいて前記リザーバから汲み上げ
られた作動液流出量を推定する流出量推定手段を含み、
かつ、その流出量推定手段が、前記車体の減速度を取得
する減速度取得手段を含み、その減速度取得手段により
取得された減速度と前記作動時間とに基づいて前記リザ
ーバからの作動液流出量を推定するものである請求項
1,態様1,2のいずれか1つに記載の液圧ブレーキ装
置。車体減速度が大きい場合には、フロントホイールシ
リンダとリヤホイールシリンダとの液圧が高いと推定さ
れ、作動液流出流量が小さいと推定される。減速度の大
きさの変化に応じて作動液流出流量が連続的に変化する
ように推定されても、減速度の大きさが複数段階に分け
られ、各段階毎に作動液流出流量が段階的に変化するよ
うに推定されてもよい。
【0035】(4)前記リザーバ液量推定手段が、前記
ポンプの作動時間に基づいて前記リザーバから汲み上げ
られた作動液流出量を推定する流出量推定手段を含み、
かつ、その流出量推定手段が、前記ポンプを駆動するモ
ータに流れる電流を検出する電流検出装置を含み、その
電流検出装置により検出された電流と前記作動時間とに
基づいて前記リザーバからの作動液流出量を推定するも
のである請求項1,2,態様1〜3のいずれか1つに記
載の液圧ブレーキ装置。ポンプを駆動するモータには、
通常、一定の電圧が印加され、ポンプにかかる負荷が大
きければモータに流れる電流(アマチュアコイルに流れ
る電流)が大きくなるが、ポンプの回転速度は低下して
単位時間当たりの吐出量(以下、単に吐出量と略称す
る)が低下する。また、負荷が小さければ電流は小さく
なるが、ポンプの回転速度は増して吐出量が大きくな
る。したがって、モータに流れる電流に基づいて吐出量
を推定し得、リザーバからの作動液流出量を推定するこ
とができる。電流の大きさの変化に応じて作動液流出流
量が連続的に変化するように推定されても、電流の大き
さが複数段階に分けられ、各段階毎に作動液流出流量が
段階的に変化するように推定されてもよい。
【0036】(5)前記弁装置が、前記フロントホイー
ルシリンダと前記リザーバとを接続する前輪側液通路の
途中に設けられた第二開閉弁と、前記前輪側液通路の第
二開閉弁とリザーバとの間の部分と、前記リヤホイール
シリンダとリザーバとを接続する後輪側液通路との共通
部分に設けられた第三開閉弁とを備え、かつ、前記ポン
プの吐出口が前記前輪側液通路のフロントホイールシリ
ンダと第二開閉弁との間に接続された請求項1,2,態
様1〜4のいずれか1つに記載の液圧ブレーキ装置。 (6)前記弁装置が、さらに、前記前輪側液通路の、前
記フロントホイールシリンダと前記第二開閉弁との間に
設けられ、フロントホイールシリンダから前記リザーバ
への作動液の流れは許容するが、逆向きの流れは液圧差
が開弁圧以下の間は阻止する減圧装置を含み、かつ、前
記ポンプの吐出口が、前記減圧装置と第二開閉弁との間
に接続された態様5に記載の液圧ブレーキ装置。第三開
閉弁が開状態にあり、第二開閉弁も開状態にある場合に
は、フロントホイールシリンダとリヤホイールシリンダ
とが共にリザーバに連通させられる。フロントおよびリ
ヤの両ホイールシリンダの作動液の流出が許容される。
弁装置は第一状態とされ、フロント,リヤ両ホイールシ
リンダの液圧が減圧される。また、第三開閉弁が開状態
にあり、第二開閉弁が閉状態にある場合には、リヤホイ
ールシリンダがリザーバに連通させられるが、フロント
ホイールシリンダはリザーバから遮断される。リヤホイ
ールシリンダからの作動液の流出のみが許容される。弁
装置は第二状態とされ、リヤホイールシリンダの液圧の
みが減圧される。
【0037】第三開閉弁が閉状態にある場合には、フロ
ントおよびリヤの両ホイールシリンダがリザーバから遮
断される。この場合において、第二開閉弁が閉状態にあ
る場合には、ポンプの吐出口がフロントホイールシリン
ダに連通させられ、リヤホイールシリンダから遮断され
るが、第二開閉弁が開状態にある場合には、フロントお
よびリヤの両ホイールシリンダに連通させられる。これ
らの状態が第三状態である。後者の第三開閉弁が閉状態
にあり、第二開閉弁が開状態にある場合には、ポンプか
ら吐出された作動液がフロント,リヤ両ホイールシリン
ダに供給される場合とリヤホイールシリンダのみに供給
される場合とがある。減圧装置が設けられていない場合
には、前者の場合となるが、減圧装置が設けられている
場合には、前者の場合と後者の場合との両方が含まれ
る。態様5の液圧ブレーキ装置においては、弁装置が第
二開閉弁および第三開閉弁を含んだものであるが、液圧
ブレーキ装置に減圧装置が設けられていても、いなくて
もよい。
【0038】それに対して、態様6の液圧ブレーキ装置
においては、弁装置が第二開閉弁および第三開閉弁に加
えて減圧装置を含むものとした。したがって、弁装置を
第三状態とした場合、すなわち、第二開閉弁が開状態,
第三開閉弁が閉状態にされた場合には、ポンプから吐出
された作動液は、そのままリヤホイールシリンダに供給
される一方、フロントホイールシリンダには減圧装置を
経て供給される。ただし、減圧装置においては、液圧差
が開弁圧以下の間には、第二開閉弁からフロントホイー
ルシリンダへの作動液の流れが阻止される。ポンプから
吐出された作動液は、リヤホイールシリンダに流入させ
られるが、フロントホイールシリンダには供給されない
ことになる。その後、液圧差が開弁圧に達すれば、フロ
ントホイールシリンダにも作動液が供給されるが、その
場合には、開弁圧分だけ減圧させられて供給されること
になる。このように、弁装置が第二,第三開閉弁に加え
て減圧装置も含むものとすれば、第三開閉弁が閉状態に
あり、第二開閉弁が開状態にある場合においては、リヤ
ホイールシリンダのみへの作動液の流入が許容される場
合と、フロント,リヤ両ホイールシリンダへの作動液の
流入が許容される場合とがある。
【0039】上述の場合において、第三,第二開閉弁が
開状態にある場合には、フロント,リヤ両ホイールシリ
ンダの作動液が連続的に流出させられ、両ホイールシリ
ンダの液圧が減圧される。それに対して、第三開閉弁が
開状態に保たれた状態において、第二開閉弁が開状態と
閉状態とに交互に切り換えられれば、フロントホイール
シリンダにおいては、作動液の流出が許容される状態
と、流入が許容される状態とに交互に切り換えられる。
作動液の流出が許容される状態に対する流入が許容され
る状態の比率が保持比率である場合には液圧が保持さ
れ、保持比率より小さければ減圧され、保持比率より大
きければ増圧されることになる。いずれにしても、第二
開閉弁が開状態にされてフロント,リヤ両ホイールシリ
ンダの作動液の流出が許容される状態は、フロントホイ
ールシリンダの作動液の流出が連続的に許容される状態
ではないため、第一状態に含まれないと考えることも可
能であるが、僅かであっても、作動液の流出は許容され
るため、第一状態に含まれると考えることも可能であ
る。前者の場合においては、減圧時間は、フロントホイ
ールシリンダに減圧モードが設定された時間を計測する
ことによって検出されるが、後者の場合においては、第
二,第三開閉弁が共に開状態にある時間(図7の液圧ブ
レーキ装置において第七モードが設定された時間に対
応)を計測することによって検出される。いずれにして
も、検出する対象が異なるだけであって、ある特定され
た1つの状態にある場合の時間を計測することによって
減圧時間が検出されることには変わりはない。
【0040】前者の場合においては、リザーバ液量推定
手段が、フロントホイールシリンダに減圧モードが設定
された時間を計測する減圧モード対応減圧時間検出手段
を含むものとすることができ、後者の場合には、第二開
閉弁および第三開閉弁が共に開状態にある時間を計測す
る弁装置対応状態減圧時間検出手段を含むものとするこ
とができる。
【0041】(7)前記アンチスキッド制御手段が、ア
ンチスキッド制御中には、前記ポンプを常に作動状態に
保つポンプ継続作動手段を含む請求項1,2,態様1〜
6のいずれか1つに記載の液圧ブレーキ装置。アンチス
キッド制御中には、モータを継続的に駆動しても、増圧
時等必要時のみに駆動してもよいが、継続的に駆動する
方が望ましい。前回のリザーバ液量推定時から今回の推
定時までにポンプによって汲み上げられた作動液量は、
ポンプの作動時間に基づいて推定されるのであるが、本
態様においては、ポンプの作動時間は、前回の推定時か
ら今回の推定時までの経過時間となる。また、アンチス
キッド制御開始時から今回の推定時までの作動液流出量
を推定する場合には、ポンプの作動時間は、アンチスキ
ッド制御開始時から推定時までの経過時間となる。この
ように、アンチスキッド制御中にポンプが作動状態に保
たれれば、ポンプの作動時間の検出が容易となる。ま
た、ポンプの作動も安定し、作動液流出量の推定精度が
向上する。
【0042】(8)当該液圧ブレーキ装置が、前記リザ
ーバ液量推定手段によって推定されたリザーバ液量が設
定量以下であるとされた場合に、前記第一開閉弁を遮断
状態から連通状態に切り換える第一開閉弁制御手段を含
む請求項1,2,態様1〜7のいずれか1つに記載の液
圧ブレーキ装置。リザーバ液量が設定量以下になった場
合に、第一開閉弁が連通状態に切り換えられてマスタシ
リンダの作動液がホイールシリンダに供給されれば、作
動液不足が生じることが事前に回避される。設定量は0
であってもよい。
【0043】(9)当該液圧ブレーキ装置が、前記リザ
ーバ液量推定手段によって推定されたリザーバ液量が設
定量以下になった場合に、前記ポンプを作動状態から非
作動状態に切り換えるポンプ作動状態制御手段を含む請
求項1,2,態様1〜8のいずれか1つに記載の液圧ブ
レーキ装置。リザーバ液量が0になると、モータが空回
りすることになる。それを回避するためには、リザーバ
液量が設定量以下になった場合に、モータの駆動を停止
させればよい。この場合には、モータによる騒音を低減
させることができる。
【0044】(10)前記アンチスキッド制御手段が、
前記モータに供給する電流を制御する電流制御手段を含
む請求項1,2,態様1〜9のいずれか1つに記載の液
圧ブレーキ装置。モータへの供給電流が大きければポン
プの吐出量が大きくなる。ポンプから吐出された作動液
が過剰になれば、マスタシリンダに戻されるようになっ
ている場合において、ホイールシリンダに必要であると
推定される作動液量(制御目的液圧)に基づいてモータ
に供給する電流が制御されれば、マスタシリンダに戻さ
れる作動液量が少なくなり、その分、リザーバ液量の減
少速度を遅くすることができる。
【0045】また、ポンプによってリザーバから汲み上
げられた作動液量を推定する場合には、電流制御手段に
よって制御されて供給された電流に基づいて推定するこ
とができる。電流をデューティ制御する場合には、その
デューティ比に基づいてポンプの作動時間を決定するこ
ともできる。さらに、ポンプの回転速度が常時ほぼ一定
になるようにモータへの供給電流が制御されれば、ホイ
ールシリンダの液圧のいかんを問わず作動液流出流量が
ほぼ一定となり、作動液流出量の推定精度が向上する。
態様4においては、モータに一定の電圧が印加される状
態において、モータに流れる電流に基づいて(モータに
かかる負荷に基づいて)ポンプの吐出量が推定されるよ
うになっていたが、本態様においては、モータに供給す
る電流を積極的に制御して、ポンプの吐出量を制御する
のである。
【0046】
【実施例】以下、第一発明および第二発明に共通の一実
施例である液圧ブレーキ装置について図面に基づいて詳
細に説明する。図3に示す液圧ブレーキ装置は、ダイヤ
ゴヤル2系統式のアンチスキッド型ブレーキ装置であ
る。図において、符号10はマスタシリンダである。マ
スタシリンダ10は互いに独立した2つの加圧室が直列
に並んだタンデム型であり、ブースタ11を介してブレ
ーキ操作部材としてのブレーキペダル12に連結させら
れている。運転者によるブレーキペダル12の操作力に
応じて2つの加圧室には互いに等しい高さの液圧がそれ
ぞれ機械的に発生させられる。
【0047】マスタシリンダ10の一方の加圧室には右
前輪14のフロントホイールシリンダ16と左後輪18
のリヤホイールシリンダ20とがそれぞれ接続され、他
方の加圧室には、図示しない左前輪のフロントホイール
シリンダと右後輪のリヤホイールシリンダとがそれぞれ
接続されている。マスタシリンダ10の各加圧室から延
びる2つのブレーキ系統が互いに独立してダイヤゴナル
に構成されているのである。以下、フロントホイールシ
リンダ16とリヤホイールシリンダ20とが接続された
ブレーキ系統のみを詳細に説明し、他のブレーキ系統に
ついては構成が同じであるため、説明を省略する。
【0048】マスタシリンダ10の一方の加圧室は前輪
ブレーキ通路22によりフロントホイールシリンダ16
に接続されている。その前輪ブレーキ通路22の途中か
ら後輪ブレーキ通路24が分岐させられており、その先
端にリヤホイールシリンダ20が接続されている。前輪
ブレーキ通路22のうちの後輪ブレーキ通路24の接続
位置よりマスタシリンダ10の側の部分には、常開の第
一開閉弁30が設けられている。前輪ブレーキ通路22
には、また、第一開閉弁30をバイパスする戻り通路3
2が接続されており、その途中に逆止弁34が設けられ
ている。逆止弁34は、マスタシリンダ10からフロン
トホイールシリンダ16に向かう向きの作動液の流れは
阻止するが、逆向きの流れは許容するものである。この
逆向きの流れを許容する際の開弁圧は実質的に0であ
る。戻り通路32,逆止弁34は、ブレーキペダル12
の踏込みが緩められた場合に、フロントホイールシリン
ダ16の作動液をマスタシリンダ10に早急に戻すため
に設けられたものである。
【0049】後輪ブレーキ通路24にはプロポーショニ
ングバルブ(以下、単にPバルブと略称する)36が設
けられている。このPバルブ36は、よく知られたもの
であるため、詳細な説明は省略するが、入力圧が折れ点
圧以下である場合には、入力圧をそのまま出力圧として
リヤホイールシリンダ20に伝達し、入力圧が折れ点圧
を越えれば、後輪ロックを回避するために、入力圧を一
定比率で減圧した液圧を出力圧としてリヤホイールシリ
ンダ20に伝達するものである。
【0050】Pバルブ36には、通常制動時には、マス
タシリンダ10の作動液が供給されるが、アンチスキッ
ド制御時には、ポンプ38から吐出された作動液が供給
される。前者の場合には、入力圧は、マスタシリンダ圧
となり、後者の場合には、ポンプ38の吐出圧となる。
通常制動時には、図5に示すように、前後制動力配分点
は、マスタシリンダ圧の増加に伴って第一基本配分線に
沿って移動させられ、マスタシリンダ圧(フロントホイ
ールシリンダ圧に対応)が折れ点圧を越えると、第一折
れ線に沿って移動させられることになる。この第一基本
配分線の折れ点圧以下の部分と第一折れ線とによって形
成される線が実制動力配分線であり、本実施例において
は、後述するが、液圧源がポンプ38の場合における実
制動力配分線と区別するために第一実制動力配分線と称
することにする。
【0051】後輪ブレーキ通路24のPバルブ36より
マスタシリンダ10側の部分には常開の第二開閉弁40
が設けられている。また、後輪ブレーキ通路24の、第
二開閉弁40とPバルブ36との間には、リザーバ通路
42が接続されている。リザーバ通路42はリザーバ4
4から延びており、その途中には、常閉の第三開閉弁4
6が設けられている。
【0052】リザーバ44からは、前記ポンプ38が設
けられたポンプ通路48が延びている。ポンプ38はリ
ザーバ44の作動液を汲み上げて加圧してフロント,リ
ヤ両ホイールシリンダ16,20に供給するものであ
り、モータ52によって駆動される。ポンプ通路48は
後輪ブレーキ通路24のうちの第二開閉弁40よりマス
タシリンダ10側の部分に接続されている。
【0053】後輪ブレーキ通路24の第二開閉弁40と
Pバルブ36との間の部分とマスタシリンダ10とは戻
り通路54によって接続されている。戻り通路54に
は、逆止弁56が設けられている。逆止弁56は、マス
タシリンダ10からリヤホイールシリンダ26に向かう
方向の作動液の流れを阻止するが、逆向きの流れを許容
するものである。この逆向きの流れを許容する際の開弁
圧は実質的には0である。戻り通路54,逆止弁56
は、戻り通路32,逆止弁34と同様に、リヤホイール
シリンダ20の作動液をマスタシリンダ10に早急に戻
すために設けられたものである。
【0054】後輪ブレーキ通路24のうちポンプ通路4
8が接続された部分よりマスタシリンダ10側には減圧
装置60が設けられている。減圧装置60は、第一逆止
弁62と第二逆止弁64とを備えたものであり、これら
が互いに逆向きに、かつ並列に配設されている。第一逆
止弁62は、フロントホイールシリンダ16から第二開
閉弁40への作動液の流れは阻止するが、逆向きの流れ
は許容するものであるが、その場合の開弁圧は0ではな
い。第二逆止弁64は、フロントホイールシリンダ16
から第二開閉弁40への作動液の流れは許容するが逆向
きの流れは阻止するものであり、開弁圧は実質的に0で
ある。
【0055】ここで、マスタシリンダ10,ポンプ3
8,減圧装置60,フロントホイールシリンダ16およ
びリヤホイールシリンダ20間での作動液の流れを図4
に基づいて説明する。通常ブレーキ状態では、ポンプ3
8は作動せず、第一開閉弁30は開状態にある。マスタ
シリンダ10からの作動液が第一開閉弁30を経てフロ
ントホイールシリンダ16に供給されるとともに、第一
開閉弁30および第二逆止弁64を経てリヤホイールシ
リンダ20に供給される。第二逆止弁64の開弁圧は実
質的に0であるから、フロントホイールシリンダ16と
リヤホイールシリンダ20とには、それぞれ等しい高さ
の液圧の作動液が供給される。また、ブレーキ状態が解
除されれば、フロントホイールシリンダ16の作動液
は、逆止弁34を経てマスタシリンダ10に戻され、リ
ヤホイールシリンダ20の作動液は、逆止弁56を経て
それぞれマスタシリンダ10に戻される。
【0056】アンチスキッド制御時にはポンプ38が作
動状態にある。第一開閉弁30が閉状態にある場合に
は、ポンプ38から吐出された作動液がそのままリヤホ
イールシリンダ20に供給されるとともに、第一逆止弁
62を経てフロントホイールシリンダ16に供給され
る。第一逆止弁62は一定の開弁圧を有しているため、
フロントホイールシリンダ16には、リヤホイールシリ
ンダ20より第一逆止弁62の開弁圧だけ低い液圧の作
動液が供給されることになる。
【0057】すなわち、液圧源がマスタシリンダ10の
場合には、前輪制動力と後輪制動力とは互いに等しくな
るが、液圧源がポンプ38の場合には、後輪制動力は前
輪制動力より相対的に開弁圧に相当する制動力分(以
下、開弁圧分と略称する)だけ大きくなる。図5に示す
第二基本配分線が、ポンプ38が液圧源の場合における
前後制動力配分線である。
【0058】以上説明した機械的なブレーキ構成部品の
うち図3において破線で囲まれた領域内に存在するもの
はユニット化されており、車両のフロント側に搭載され
ている。その結果、後輪ブレーキ通路24の第二開閉弁
40とPバルブ36との間の部分が長くなり、その部分
における流路抵抗が大きくなる。そのために、後述する
ように、アンチスキッド制御中のフロントホイールシリ
ンダ16に対する減圧制御時に、フロントホイールシリ
ンダ16から流出させられた作動液が、リヤホイールシ
リンダ20に流入し難くなっている。
【0059】本液圧ブレーキ装置は、コントローラ70
を備えている。コントローラ70は、CPU,ROM,
RAMおよびバスを含むコンピュータ,A/Dコンバー
タ等を主体として構成されたものである。入力部には、
右前輪14,左後輪18の回転速度を検出する車輪速セ
ンサ72,74,図示しない左前輪,右後輪の回転速度
を検出する車輪速センサ,モータ52に流れる電流を検
出する電流センサとしての電流計76等が接続され、出
力部には、第一〜第三開閉弁30,40,46のソレノ
イドおよびモータ52等が、図示しない駆動回路を介し
て接続されている。
【0060】ROMには、図1のフローチャートで表さ
れるリザーバ液量推定プログラム,図2のフローチャー
トで表される制御マップ選択プログラムの他、推定車体
速度等演算プログラム,アンチスキッド制御プログラ
ム,ポンプ汲み上げ量推定プログラム,制御マップA,
制御マップB,係数KFLUID決定マップ等種々のプ
ログラムやマップが格納されている。
【0061】推定車体速度等演算プログラムの実行によ
って、車輪速センサ72,74等の出力信号に基づいて
推定車体速度が求められるとともに、その推定車体速度
を時間で微分することによって車体減速度が求められ
る。また、車輪速センサ72,74の出力信号と推定車
体速度とに基づいて各車輪14,18のスリップ率が求
められる。
【0062】アンチスキッド制御プログラムにおいて
は、上述の推定車体速度等演算プログラムの実行により
求められた推定車体速度,車体減速度,各車輪14,1
8のスリップ率等に基づき、制御マップA,Bに従っ
て、表1に示す各モードが決定され、各開閉弁30,4
0,46のソレノイドやモータ52が駆動回路を介して
制御される。モータ52は、アンチスキッド制御の開始
時に駆動開始され、アンチスキッド制御中は継続して駆
動される。また、アンチスキッド制御が終了した後も一
定時間だけ駆動され、リザーバ44内に収容された作動
液がすべてマスタシリンダ10に戻される。したがっ
て、アンチスキッド制御開始時には、リザーバ液量は0
である。
【0063】本実施例においては、制御マップ選択プロ
グラムの実行により制御マップAと制御マップBとのい
ずれかが選択される。リザーバ液量推定プログラムの実
行によりリザーバ液量が推定されると、制御マップ選択
プログラムが実行され、推定されたリザーバ液量に基づ
いて制御マップAあるいはBが選択されるのである。図
2のフローチャートにおいて、ステップ1(以下、S1
と略称する。他のステップについても同様とする)にお
いて、推定されたリザーバ液量CRES(n) が0以上か
否かが判定される。0以上の場合には、S1における判
定がYESとなり、S2において制御マップAが選択さ
れ、0より小さい場合には、判定がNOとなり、S3に
おいて制御マップBが選択される。すなわち、リザーバ
44に作動液があると推定された場合には制御マップA
が選択され、作動液がないと推定された場合には制御マ
ップBが選択されるのである。なお、リザーバ液量CR
ES(n) は、イグニッションスイッチのON操作に応じ
て実行される初期設定においてクリアされ、また、1回
のアンチスキッド制御終了時にもクリアされるため、各
アンチスキッド制御の開始時には0になっている。リザ
ーバ液量推定プログラムについては後述する。
【0064】まず、制御マップAに基づいてアンチスキ
ッド制御が行われる場合について説明する。制御マップ
Aは、表2に示される。
【0065】
【表2】
【0066】アンチスキッド制御が、最初に、右前輪1
4に対して開始されるか、左後輪18に対して開始され
るか、右前輪14および左後輪18の両方に対して同時
に開始されるかは、路面の状態や制動力の大きさ等によ
り決まるが、説明が簡単であるため、まず、左後輪18
に対してアンチスキッド制御が最初に開始される場合に
ついて説明する。左後輪18のスリップが右前輪14よ
り先に増大傾向かつ過大になると(以下、単に、スリッ
プが過大であると称する)、第三モードが設定され、第
一開閉弁30が開状態に、第二開閉弁40が閉状態に、
第三開閉弁46が開状態に切り換えられる。リヤホイー
ルシリンダ20の作動液のみが流出させられてリザーバ
44に流入させられる。また、第一開閉弁30が開状態
にあるため、フロントホイールシリンダ16にはマスタ
シリンダ10の作動液が供給される。リヤホイールシリ
ンダ20の液圧が減圧される一方、フロントホイールシ
リンダ16の液圧は増圧を許容され、リヤホイールシリ
ンダ20には減圧モードが、フロントホイールシリンダ
16には増圧モードがそれぞれ設定されるのである。
【0067】また、左後輪18のスリップが回復傾向に
なれば、第二モードが設定される。第一開閉弁30が開
状態に保たれたまま、第二開閉弁40,第三開閉弁46
が閉状態に切り換えられる。リヤホイールシリンダ20
の液圧が保持され、フロントホイールシリンダ16の液
圧は、上記と同様に、増圧を許容される。さらに、左後
輪18のスリップが回復すれば、第一モードと第二モー
ドとが交互に設定される。第一開閉弁30が開状態に、
第三開閉弁46が閉状態に保たれたまま、第二開閉弁4
0が開状態と閉状態とに交互に切り換えられるのであ
る。リヤホイールシリンダ20に対しては、増圧制御と
保持制御とが交互に行われ、液圧は緩増圧される。緩増
圧モードは、本実施例においては増圧モードに含まれる
ことにする。
【0068】このように、左後輪18に対してのみアン
チスキッド制御が行われている間に右前輪14のスリッ
プが過大になれば、右前輪14に対してもアンチスキッ
ド制御が開始され、第四モード〜第七モードが設定され
る。左後輪18に対してのみアンチスキッド制御が行わ
れる場合には、第一〜第三モードが設定され、第一開閉
弁30は開状態に保たれるのであるが、後述するよう
に、右前輪14に対してのみアンチスキッド制御が行わ
れる場合あるいは右前輪14および左後輪18に対して
行われる場合には、原則として第四〜第七モードが設定
されて、第一開閉弁30が閉状態に保たれる。第一開閉
弁30の開閉を伴う制御を行うことも可能なのである
が、この場合にはブレーキペダル12にキックバックが
生じ、また、液圧の脈動が大きくなり易いため、第一開
閉弁30は閉状態に保たれることが望ましいのである。
【0069】また、左後輪18に対して、右前輪14に
対してより先にアンチスキッド制御が開始されるのは、
例えば、車両制動がまたぎ路上で行われる場合であっ
て、路面の摩擦係数が高い部分に前輪が接し、低い部分
に後輪が接する場合や、車両の左旋回中に制動が行われ
る場合である。この場合には、前輪がロックしない範囲
でできる限りフロントホイールシリンダ圧を高めること
が路面の利用率を高めて制動距離の短縮を図る上で望ま
しい。したがって、本実施例においては、左後輪18に
対してのみアンチスキッド制御が行われる場合には、第
一〜第三モードが設定されて第一開閉弁30が開状態に
保たれ、フロントホイールシリンダ16には常にマスタ
シリンダ10の作動液が供給されるようにされているの
である。
【0070】次に、左後輪18に対してアンチスキッド
制御が開始される前に右前輪14に対してアンチスキッ
ド制御が開始される場合について説明する。右前輪14
のスリップが過大になると、第七モードが設定される。
第一開閉弁30が閉状態に切り換えられるとともに、第
二開閉弁40および第三開閉弁46が開状態に切り換え
られ、フロント,リヤ両ホイールシリンダ16,20が
リザーバ44に連通させられるのである。フロントホイ
ールシリンダ16の作動液が流出させられ、第二逆止弁
64,第二開閉弁40,第三開閉弁46を経てリザーバ
44に流入させられ、リヤホイールシリンダ20から流
出させられた作動液は、第三開閉弁46を経てリザーバ
44に流入させられる。
【0071】本液圧ブレーキ装置においては、フロント
ホイールシリンダ16の液圧のみを減圧することができ
ないため、フロントホイールシリンダ16の液圧を減圧
する場合には、必ずリヤホイールシリンダ20の液圧も
左後輪18のスリップ状態とは無関係に減圧される。フ
ロントホイールシリンダ16とリヤホイールシリンダ2
0との両方に減圧モードが設定されることになるのであ
る。しかし、前述のように、後輪ブレーキ通路24の第
二開閉弁40とPバルブ36との間においては流路抵抗
が大きくされているため、リヤホイールシリンダ20か
らは作動液が流出し難く、フロントホイールシリンダ1
4からの作動液の流出が速やかに行われる。
【0072】第七モードが設定されたことにより、右前
輪14のスリップが回復傾向になれば、第四モードが設
定され、第二開閉弁40が開状態,第三開閉弁46が閉
状態にされる。フロント,リヤ両ホイールシリンダ1
6,20がリザーバ44から遮断されてポンプ38の吐
出口に連通させられるのである。この時点においては、
リザーバ44に作動液があるため、リザーバの作動液が
ポンプ38によって汲み上げられ、第二開閉弁40,P
バルブ36を経てリヤホイールシリンダ20に供給さ
れ、液圧が増圧される。また、フロントホイールシリン
ダ16には、第一逆止弁62を経て供給されるのである
が、ポンプ38から吐出された作動液の液圧とフロント
ホイールシリンダ16の液圧との液圧差が開弁圧に達す
るまでの間は供給されない。その間においては液圧は保
持される。この場合には、フロントホイールシリンダ1
6には保持モードが設定され、リヤホイールシリンダ2
0には増圧モードが設定されることになる。
【0073】第七モードの後に第四モードが設定された
場合には、ポンプ38によって汲み上げられた作動液
は、リヤホイールシリンダ20に供給される。そのた
め、リヤホイールシリンダ20の液圧が、本来減圧する
必要がない場合に第七モードが設定されることによって
減圧された場合に、リヤホイールシリンダ20の液圧を
早急に回復させることが可能となるのである。
【0074】第四モードが比較的長い時間設定されてい
る場合や第四モードに設定された時点におけるリヤホイ
ールシリンダ20の液圧がそれほど低くない場合には、
フロントホイールシリンダ16にも、第一逆止弁62を
経て作動液が供給されることになる。その場合には、フ
ロントホイールシリンダ16には増圧モードあるいは緩
増圧モードが設定される考えることも可能である。しか
し、本実施例においては、フロントホイールシリンダ1
6の液圧を保持する目的で第四モードが設定されるた
め、保持モードが設定されるとみなされるのである。
【0075】右前輪14のスリップが回復すれば、第四
モードと第五モードとが交互に設定される。すなわち、
第三開閉弁46が閉状態に保たれたまま、第二開閉弁4
0が開状態と閉状態とに交互に切り換えられるのであ
る。第二開閉弁40が閉状態に切り換えられた場合に
は、フロント,リヤ両ホイールシリンダ16,20はリ
ザーバ44から遮断される一方、ポンプ38の吐出口が
フロントホイールシリンダ16に連通させられる。ポン
プ38から吐出された作動液は、リヤホイールシリンダ
20に供給されないで、フロントホイールシリンダ16
のみに供給される。それに対して、第二開閉弁40が開
状態に切り換えられた場合には、ポンプ38から吐出さ
れた作動液は、主としてリヤホイールシリンダ20に供
給される。第四モードと第五モードとが交互に設定され
れば、フロントホイールシリンダ16に対しては、保持
制御と増圧制御とが交互に行われ、液圧は緩増圧され
る。リヤホイールシリンダ20に対しては、フロントホ
イールシリンダ16に対する制御とは反対の時期に増圧
制御と保持制御とが交互に行われ、やはり緩増圧され
る。
【0076】このように、右前輪14に対してのみアン
チスキッド制御が行われる場合には、右前輪14のスリ
ップ率の大きさに基づいて第七モード,第四モード,第
五モードが設定されるのであるが、第七モードが設定さ
れると、前述のように、フロントホイールシリンダ16
の液圧と共に、リヤホイールシリンダ20の液圧も減圧
される。そのため、右前輪14に対してアンチスキッド
制御が先に開始された場合に、左後輪18に対してアン
チスキッド制御が開始され難くなる。左後輪18のスリ
ップが過大にならないように、予防的にホイールシリン
ダ20の液圧が減圧されたのと同じことになるからであ
る。
【0077】しかし、第七モードが設定された後に第四
モードが設定され、さらに、第四モードと第五モードと
が交互に設定されれば、リヤホイールシリンダ20の液
圧が増圧されるため、左後輪18のスリップが過大にな
る可能性も生じる。その場合には、左後輪18に対して
もアンチスキッド制御が開始されることになる。これ
は、右前輪14に対してアンチスキッド制御が行われて
いる場合に左後輪18に対してアンチスキッド制御が開
始される一因であるが、他にも、路面の状態変化等によ
って、右前輪14に対してアンチスキッド制御が行われ
ている間に左後輪18に対してアンチスキッド制御が開
始される場合もある。また、稀にではあるが、右前輪1
4および左後輪18の両方に対して同時にアンチスキッ
ド制御が開始される場合もある。
【0078】以下、右前輪14および左後輪18の両方
の車輪に対してアンチスキッド制御が行われる場合につ
いて説明する。ただし、少なくとも右前輪14のスリッ
プが過大である場合、すなわち、右前輪14および左後
輪18の両方の車輪のスリップが過大である場合あるい
は右前輪14のみのスリップが過大である場合には、前
述のように第七モードが設定されてフロント,リヤ両ホ
イールシリンダ16,20の液圧が減圧される。
【0079】また、右前輪14のスリップが回復傾向に
あり、左後輪18のスリップが過大である場合には、第
六モードと第七モードとが交互に設定される。第六モー
ドが設定され、第二開閉弁40が閉状態に、第三開閉弁
46が開状態に切り換えられれば、リヤホイールシリン
ダ20のみがリザーバ44に連通させられ、減圧され
る。ポンプ38から吐出された作動液は第一逆止弁62
を経てフロントホイールシリンダ16に供給される。ま
た、第七モードに設定されれば、上述のようにフロン
ト,リヤ両ホイールシリンダ16,20がリザーバ44
に連通させられる。したがって、第六モードと第七モー
ドとが交互に設定されれば、フロントホイールシリンダ
16に対しては増圧制御と減圧制御とが交互に行われ、
液圧が保持される。リヤホイールシリンダ20に対して
減圧制御が行われ、液圧は減圧される。フロントホイー
ルシリンダ16には保持モードが設定され、リヤホイー
ルシリンダ20には減圧モードが設定されるのである。
【0080】右前輪14のスリップが回復し、左後輪1
8のスリップが過大である場合には、第六モードが設定
され、リヤホイールシリンダ20の液圧が減圧され、フ
ロントホイールシリンダ16の液圧が増圧される。フロ
ントホイールシリンダ16には増圧モードが設定され、
リヤホイールシリンダ20には減圧モードが設定される
のである。
【0081】右前輪14および左後輪18のスリップが
共に回復傾向にある場合には、第五モードと第七モード
とが交互に設定される。第二開閉弁40,第三開閉弁4
6が共に閉状態と共に開状態とに交互に切り換えられる
のである。フロントホイールシリンダ16に対しては、
増圧制御と減圧制御とが交互に行われ、また、リヤホイ
ールシリンダ20に対しては、保持制御と減圧制御とが
交互に行われるのである。ここでは、第二開閉弁40,
第三開閉弁46の切換えが、フロントホイールシリンダ
16の液圧を保持することを目的として制御されるた
め、リヤホイールシリンダ20の液圧は緩減圧となる。
【0082】右前輪14のスリップが回復し、左後輪1
8のスリップが回復傾向にある場合には、第五モードが
設定され、第二開閉弁40および第三開閉弁46が共に
閉状態に切り換えられる。フロントホイールシリンダ1
6の液圧は増圧され、リヤホイールシリンダ20の液圧
は保持される。フロント,リヤホイールシリンダ16,
20には、増圧モード,保持モードがそれぞれ設定され
るのである。また、右前輪14のスリップが回復傾向に
あり、左後輪18のスリップが回復した場合には、第四
モードが設定され、左後輪18および右前輪14の両方
のスリップが回復した場合には、第四モードと第五モー
ドとが交互に設定される。
【0083】なお、アンチスキッド制御中は、前述のよ
うに、ポンプ38は作動状態に保たれる。そのため、ポ
ンプ38から吐出された作動液が過剰となれば、戻り通
路32を経てマスタシリンダ10に戻される。換言すれ
ば、フロントホイールシリンダ16の液圧はマスタシリ
ンダ10の液圧より高くはならないのであり、逆止弁3
4は、リリーフ弁としての機能も備えることになる。
【0084】さて、制御マップAに基づいてアンチスキ
ッド制御が行われている間(右前輪14に対してのみ行
われる場合あるいは右前輪14および左後輪18の両方
に対して行われる場合)は、第一開閉弁30が閉状態に
保たれるため、制御途中において、リザーバ液量が0に
なるおそれがある。リザーバ液量が0になると、フロン
トホイールシリンダ16やリヤホイールシリンダ20に
作動液を供給することができなくなり、増圧できなくな
る。それで、本実施例においては、リザーバ液量が推定
され、0以下であるとされれば、アンチスキッド制御が
制御マップBに基づいて行われるようにされている。
【0085】制御マップBに基づく制御について説明す
る。制御マップBは表3に示される。表2と表3とにお
いては、右前輪14のスリップが回復した場合(右前輪
14および左後輪18の両方のスリップが回復した場合
を含む)における制御が異なるが、それ以外の場合にお
ける制御は同じである。
【0086】
【表3】
【0087】右前輪14のスリップが回復した場合以外
においては作動液が不足するおそれはないからである。
右前輪14に対してアンチスキッド制御が行われていな
い場合には、左後輪18のスリップ状態に応じて第一モ
ード〜第三モードが設定されるが、これらにおいては第
一開閉弁30が開状態に保たれるため問題はない。右前
輪14のスリップが過大である場合には、減圧が行われ
てリザーバ液量が増大するためやはり問題はない。それ
に対して、右前輪14のスリップが回復傾向にある場合
には、第四〜第七モードが設定され、増圧が行われる場
合があるが、右前輪14について言えば、第四モード単
独,第六モードと第七モードとの交互繰返し,第五モー
ドと第七モードとの交互繰返しのいずれにおいても、増
圧と減圧とが交互に繰り返され、リザーバ液量が大きく
減少することはない。また、左後輪18について言え
ば、第六モードと第七モードとの交互繰返しおよび第五
モードと第七モードとの交互繰返しでは、いずれも保持
と減圧とが交互に繰り返され、リザーバ液量は増大す
る。第四モードに設定された場合には、右前輪14にお
いて保持が行われ、左後輪において増圧が行われるた
め、リザーバ液量が減少するが、第四モードは必ず第七
モードの実行によりリザーバ液量が増大した直後に設定
され、かつ、左後輪18のリヤホイールシリンダ20は
容量が比較的小さいため、増圧に要する作動液の量が少
なく、作動液が不足するおそれはない。
【0088】結局、第一開閉弁30が閉状態にあって、
作動液不足が生じるおそれがあるのは、上述のように、
右前輪14のスリップが回復した場合だけである。換言
すれば、少なくともフロントホイールシリンダ16に増
圧モードが設定される場合(フロント,リヤ両ホイール
シリンダ16,20に増圧モードが設定される場合も含
む)であるため、本実施例においては、フロントホイー
ルシリンダ16に増圧モードが設定された場合にのみリ
ザーバ液量が推定されるようになっている。
【0089】右前輪14のみに対してアンチスキッド制
御が行われている場合において、右前輪14のスリップ
が回復した場合には、制御マップAに基づく制御によれ
ば、第四モードと第五モードとが交互に設定されるが、
制御マップBに基づく制御によれば、第一モード,第四
モード,第二モードおよび第五モードが交互に設定され
ることになる。第三開閉弁46が閉状態に保たれた状態
において、第一開閉弁30と第二開閉弁40とが開状態
と閉状態とに交互に切り換えられるのであり、第一開閉
弁30が開状態にされることによってマスタシリンダ1
0の作動液がフロントホイールシリンダ16やリヤホイ
ールシリンダ20に供給されるため、作動液不足が生じ
ることが回避される。
【0090】また、右前輪14および左後輪18の両方
に対してアンチスキッド制御が行われており、右前輪1
4のスリップが回復し、左後輪18のスリップが過大で
ある場合には、第三モードと第六モードとが交互に設定
される。第二開閉弁40が閉状態,第三開閉弁46が開
状態にある状態において、第一開閉弁30が開状態と閉
状態とに交互に切り換えられるのであり、第一開閉弁3
0が開状態にされることによってマスタシリンダ10の
作動液がフロントホイールシリンダ16に供給される。
右前輪14のスリップが回復し、左後輪18のスリップ
が回復傾向にある場合には、第五モードと第二モードと
が交互に設定される。第二開閉弁40および第三開閉弁
46が共に閉状態に保たれたままで第一開閉弁30が交
互に開閉され、マスタシリンダ10の作動液がフロント
ホイールシリンダ16に供給される。右前輪14および
左後輪18のいずれのスリップも回復した場合には、前
述の右前輪14のみに対してアンチスキッド制御が行わ
れている場合において右前輪14のスリップが回復した
場合と同様である。
【0091】本液圧ブレーキ装置において、制動が行わ
れた場合の前輪制動力と後輪制動力との関係を図5に基
づいて説明する。通常制動時には、前述のように、マス
タシリンダ10が液圧源として機能する。第一〜第三開
閉弁30,40,46は、図示の原位置にあり、ブレー
キペダル12の踏込みに伴って、マスタシリンダ10の
作動液がフロント,リヤホイールシリンダ16,20に
供給される。前輪制動力と後輪制動力との前後制動力配
分点は、点0から第一実制動力配分線に沿って移動させ
られる。
【0092】車両が軽積載状態の一例である空車状態に
ある場合において、右前輪14がロックする直前の状態
に至ると、前後制動力配分点が、第一実制動力配分線が
空車時前輪ロック線と交差する点aに至る。この状態か
ら、さらにブレーキペダル12が踏み込まれると、フロ
ントホイールシリンダ16の液圧が増加させられ、右前
輪14のスリップ傾向が過大となり、アンチスキッド制
御が開始される。第七モードが設定され、フロント,リ
ヤホイールシリンダ16,20の液圧が減圧される。前
後制動力配分点は、図の左方へ移動させられ、第一実制
動力配分線上の点bに至る。
【0093】その後、右前輪14のスリップが回復傾向
に転じ、第四モードが設定されると、前後制動力配分点
は、図の上方へ移動させられ点cに至る。第四モードが
設定されて、第二開閉弁40が開状態に、第三開閉弁4
6が閉状態に切り換えられると、リザーバ44の作動液
がポンプ38によって汲み上げられてリヤホイールシリ
ンダ20に供給されるが、フロントホイールシリンダ1
6には、第一逆止弁62が開かれるまで供給されない。
つまり、フロントホイールシリンダ16の液圧は保持さ
れ、リヤホイールシリンダ20の液圧のみが増圧される
のである。
【0094】点cは、第一実制動力配分線を第一逆止弁
62の開弁圧分だけ図の左方へ平行移動した第二実制動
力配分線上にある。第二実制動力配分線は、第二基本配
分線の折れ点圧以下の部分および第二折れ線によって形
成される。第二基本配分線は、前述のように、第一基本
配分線が開弁圧分だけ前輪制動力が相対的に小さくなる
方向に移動させられた線であり、第二折れ線は、第一折
れ線が第一基本配分線と同様に移動させられた線であ
る。液圧源がポンプ38の場合には、Pバルブ36には
マスタシリンダ10の作動液ではなくポンプ38から吐
出された作動液が供給されるため、第一折れ線も、第一
基本配分線と同様に移動させられるのである。第二折れ
線と第二基本配分線との交点はPバルブ36の折れ点圧
であり、ポンプ38の吐出圧が折れ点圧になった場合の
フロントホイールシリンダ16の液圧である。それの大
きさは、当然、入力圧がマスタシリンダ液圧である場合
のフロントホイールシリンダ18の液圧(マスタシリン
ダ圧と同じ)と同じである。前記前後制動力配分点は点
cに至った後、第二実制動力配分線に沿って移動させら
れ、空車時後輪ロック線と交差する点dに至り、その
後、左後輪18のスリップもほぼ適正値になるようにア
ンチスキッド制御が行われる。
【0095】車両が、重積載状態の一例である積車状態
である場合には、ブレーキペダル12の踏み込みに伴っ
て、前後制動力配分点が第一実制動力配分線に沿って移
動させられる。右前輪14がロックする直前の状態に至
った時は、前後制動力配分点は点eに至る。その状態か
ら、さらに、ブレーキペダル12が踏み込まれれば、ア
ンチスキッド制御が開始され、第七モードが設定され
る。上述の場合と同様に、前後制動力配分点は図の左方
へ移動する。スリップが回復傾向に転じ、第四モードが
設定されれば、前後制動力配分点は、上述の場合と同様
に、第一実制動力配分線上の点から上方に移動して第二
実制動力配分線上の点に至り、第二実制動力配分線に沿
って右方へ移動させられる。その後、第二実制動力配分
線と積車時前輪ロック線との交点である点fに至り、右
前輪14のスリップがほぼ適正値になるようにアンチス
キッド制御が行われる。
【0096】本液圧ブレーキ装置においては、減圧装置
60が設けられ、ポンプ38から吐出された作動液が減
圧装置60を経てフロントホイールシリンダ16に供給
されるようになっていため、アンチスキッド制御開始当
初において、後輪制動力を早急に大きくすることが可能
となる。また、後輪制動力の前輪制動力に対する相対的
な増加が、従来の液圧ブレーキ装置における場合より、
後輪ロックに至り難い領域において可能となる。さら
に、アンチスキッド制御中には、前後制動力配分点を、
第二実制動力配分線に沿って移動させることが可能とな
るため、積車時に理想配分線に近づけた制御が可能とな
る。
【0097】次に、リザーバ液量推定プログラムについ
て説明する。リザーバ液量は、リザーバ44に流入した
と推定される作動液流入量と、リザーバ44からポンプ
38によって汲み上げられたと推定される作動液流出量
とに基づいて推定される。作動液流入量は、フロントホ
イールシリンダ16に減圧モードが設定された減圧時間
および減圧モードが設定された時点(減圧が開始された
時点)の車体減速度に基づいて推定され、作動液流出量
は、ポンプ汲み上げ量推定プログラムの実行によって推
定される。
【0098】作動液流入量は、(減圧時間)×(単位時
間当たりにフロント,リヤ両ホイールシリンダ16,2
0から流出させられてリザーバ44に流入する作動液の
流入量(流入流量))に基づいて推定される。減圧時間
は、フロントホイールシリンダ16に減圧モードが設定
された時間であり、フロントホイールシリンダ16およ
びリヤホイールシリンダ20から作動液が流出させられ
る時間である。前述のように、本実施例においてはフロ
ントホイールシリンダ16のみに減圧モードが設定され
ることはないため、フロントホイールシリンダ16に減
圧モードが設定されれば、リヤホイールシリンダ20に
も減圧モードが設定されたことになる。リヤホイールシ
リンダ20のみに減圧モードが設定される場合を考慮し
ないのは、以下の理由による。
【0099】一つは、図5に示すように、アンチスキッ
ド制御が開始されるのは、通常、マスタシリンダ10の
液圧がPバルブ36の折れ点圧以上になった時期であ
り、その場合には、リヤホイールシリンダ20の液圧が
フロントホイールシリンダ16の液圧より低いからであ
る。ホイールシリンダからリザーバへ作動液が流入させ
られる作動液量は、ホイールシリンダとリザーバとの差
圧が大きいほど大きくなる。それに対して、リザーバ4
4の液圧は、常時、ほぼ一定である。したがって、リヤ
ホイールシリンダ20から流出させられる作動液量は、
フロントホイールシリンダ16から流出させられる作動
液量より少ないのである。
【0100】別の理由は、リヤホイールシリンダ20の
容量がフロントホイールシリンダ16の容量より小さい
ことである。減圧時にホイールシリンダから流出させら
れる作動液量は、上述の液圧差,シリンダの容量,ホイ
ールシリンダとリザーバとの間の流路抵抗等種々の要因
に基づいて決定されるが、一般的には、シリンダ容量が
小さいシリンダから流出させられる作動液量は、大きい
シリンダから流出させられる作動液量より小さくリザー
バ44に流入する作動液量が小さいのである。
【0101】リヤホイールシリンダ20のみに減圧モー
ドが設定される頻度が非常に低いことも理由の一つであ
る。図5に示すように、第一実制動力配分線が前輪ロッ
ク線と交差する点は、後輪ロック線と交差する点より、
制動力が小さい側にある。そのため、通常は、アンチス
キッド制御は後輪に対して開始されるより先に前輪に対
して開始され、左後輪18に対して先に開始されるのは
稀である。前述のように、またぎ路走行中,旋回中等特
殊な場合のみであるため、左後輪18に対してのみアン
チスキッド制御が行われ、減圧モードが設定される頻度
は低いのである。
【0102】本実施例においては、減圧時間は減圧モー
ドが設定された時間である。第七モードが設定された時
間としないのは、特許請求の範囲にいう「作動液の流出
を許容する状態」を連続的に流出させられる状態と解す
るからである。第七モードとそれ以外のモードとが交互
に設定される場合には、第七モードが設定される時間は
非常に短く、流出させられる作動液量も僅かである。そ
のため、減圧時間として計測しなくても差し支えない。
それに、少なめに推定される方が、多めに推定されるよ
り望ましい。多めに推定される場合には、実際にはリザ
ーバ44に作動液がないのにマスタシリンダ10から補
給されず、増圧モードが設定されても実際には増圧が行
われず、制動距離が無用に長くなってしまう事態が生じ
るおそれがあるのに対し、少なめに推定される場合に
は、リザーバ44の作動液量が多めになるのみで殆ど実
害がないからである。交互に切り換えられる場合におい
て第七モードが設定された時間を考慮しなければ、減圧
時間が短めに検出され、リザーバ44に流入する作動液
の量が少なめに推定されることになる。リヤホイールシ
リンダ20のみに減圧モードが設定された時間を考慮し
ないのも一つにはこのためである。
【0103】前記流入流量は、車体減速度と上記減圧時
間とに基づいて、図6に従って決定される。流入流量は
一定ではなく、車体減速度が大きいほど大きく、また、
減圧時間の経過に伴って小さくなる。本実施例において
は、流入量の推定を容易にするために、流入流量を減圧
時間と車体減速度との関数とみなし、これらの関係をテ
ーブル化し、減圧時間と車体減速度との組合わせに応じ
て係数KFLUIDが決定されるようにされている。係
数KFLUIDは、図6から明らかなように、車体減速
度が大きいほど大きく、減圧時間が長いほど小さい。
【0104】上記車体減速度は、本実施例においては、
減圧モードが設定された時点に検出される。車体減速度
が大きいということは車両全体の制動力が大きいという
ことであり、フロントホイールシリンダ16およびリヤ
ホイールシリンダ20の液圧が高いということである。
減圧時間中においては、フロントホイールシリンダ16
からもリヤホイールシリンダ20からも作動液が流出さ
せられ、これらがリザーバ44に流入するが、両流出量
を別個に推定することは面倒であり、また、通常は両流
出量がほぼ比例するため、別個に考える必要性が低い。
また、流入流量(ホイールシリンダからの流出流量)
は、ホイールシリンダとリザーバとの差圧が大きいほど
大きいが、リザーバの液圧はほぼ一定であるためホイー
ルシリンダの液圧が高いほど大きいくなる。したがっ
て、車体減速度と流入流量との間にはほぼ一義的な関係
が存在する。
【0105】また、流入流量は、減圧時間が長いと小さ
くなる。一回の継続減圧時間が長くなり、ホイールシリ
ンダから流出させられる作動液量は増えればホイールシ
リンダの液圧が低くなるからである。
【0106】作動液流出量、すなわち、ポンプ38によ
って汲み上げられる作動液は、ポンプ汲み上げ量推定プ
ログラムの実行によって検出される。作動液流出量は、
(ポンプ38の作動時間)×(ポンプ38の吐出量)に
基づいて推定され、ポンプの吐出量は、電流計76の出
力信号または車体減速度に基づいて推定される。
【0107】ポンプ38の作動時間は、本実施例におい
てはポンプ38がアンチスキッド制御中は作動状態に保
たれるので、前回推定時と今回推定時との間の時間であ
り、アンチスキッド制御開始後最初に推定される場合に
は、アンチスキッド制御開始時から推定時までの時間で
ある。ポンプ38の作動時間が長いほど作動液流出量が
多くなる。
【0108】ポンプ38の吐出量は、モータ52に流れ
る電流(厳密に言えば、アマチュアコイルに流れる電
流)が大きいほど小さくなる。モータ52には、常に一
定電圧が印加されている。したがって、モータ52にか
かる負荷が大きいほど流れる電流が大きくなるが、回転
数が小さくなり、吐出量が小さくなるのである。逆に、
負荷が小さいほど流れる電流が小さくなるが、回転数が
大きくなり、吐出量が大きくなる。
【0109】また、ポンプ38の吐出量は、車体減速度
が大きいほど小さくなる。ポンプ38から吐出される作
動液の吐出圧は、作動液が供給される先のホイールシリ
ンダの液圧が高いほど小さくなり、ホイールシリンダの
液圧が低いほど大きくなる。したがって、車体減速度が
大きくフロント,リヤ両ホイールシリンダ16,20の
液圧が高いほど、吐出量が小さくなるのである。ホイー
ルシリンダの液圧の吐出量に対する影響は、ホイールシ
リンダ液圧の変化が大きいと大きくなる。ただし、車体
減速度に基づくポンプ38の吐出量の推定精度は、モー
タ52の電流に基づく推定精度より低いのが普通である
ため、本実施例においては電流計76が設けられ、モー
タ52の電流に基づいて吐出量が推定されるようになっ
ている。
【0110】以下、リザーバ液量推定プログラムの実行
について、図1のフローチャートに基づいて説明する。
S11において、アンチスキッド制御が右前輪14に対
して行われているか否かが判定され、S12において、
フロントホイールシリンダ16に増圧モードが設定され
ているか否かが判定される。S11における判定がYE
Sとなり、S12が最初に実行される際には多くの場
合、判定はNOとなる。アンチスキッド制御開始時に
は、多くの場合、フロントホイールシリンダの減圧が必
要になり、減圧モードが設定されるからである。S12
における判定がNOであれば、S13において、さら
に、フロントホイールシリンダ16に減圧モードが設定
されているか否かが判定される。
【0111】アンチスキッド制御開始時であって、保持
モードでなく、減圧モードが設定されている場合には、
S13における判定がYESとなり、S14において、
前回も減圧モードが設定されたか否かが判定される。ア
ンチスキッド制御開始後最初に減圧モードが開始された
場合、あるいは増圧モード,保持モード等が設定された
後に減圧モードが設定された場合には、判定はNOとな
り、減圧モード設定中にはYESとなる。アンチスキッ
ド制御開始当初においては、判定はたいていの場合NO
となり、S15において、車体減速度が読み込まれ、S
16において、減圧時間CTGENが0にされる。その
後、S17において、減圧時間CTGENに本プログラ
ムのサイクルタイムTが加えられ、S11に戻される。
【0112】フロントホイールシリンダ16に減圧モー
ドが設定されている間は、S11の判定がYES,S1
2の判定がNO,S13の判定がYESとなるが、前回
も減圧モードが設定されていた場合には、S14におけ
る判定がYESとなる。S15,16が実行されない
で、S17において、減圧時間CTGENにさらにサイ
クルタイムTが加えられる。以下、減圧モードが設定さ
れている間中、S11〜14,17が繰り返し実行さ
れ、減圧時間CTGENが計測される。
【0113】それに対して、保持モードが設定されてい
る場合には、S13における判定がNOとなり、そのま
まS11の実行に戻される。すなわち、S11〜17の
実行において、フロントホイールシリンダ16に減圧モ
ードが設定されているか否かが判定され、設定されてい
る場合には、減圧時間が計測されるのである。
【0114】フロントホイールシリンダ16に対して、
増圧モードが設定されれば、S12における判定がYE
Sとなり、リザーバ液量が推定される。本実施例におい
ては、リザーバ液量は、第一開閉弁30が閉状態にあ
り、かつ、作動液不足が生じるおそれがある場合にのみ
推定され、その推定結果に基づいて制御マップA,Bの
選択が行われる。前述のように、それ以外の場合には、
作動液不足が生じるおそれがないため制御マップを変更
する必要がなく、リザーバ液量が推定されないのであ
る。
【0115】S18において、前回減圧モードあるいは
保持モードが設定されていたか否かが判定される。最初
に増圧モードが設定される場合には、前回は保持モード
あるいは減圧モードが設定されていた場合が大部分であ
るため、判定はYESとなり、S19において、リザー
バ液量が、式 CRES(n) =CRES(n-1) +CTGEN*KFLU
ID−KPUMPUP に基づいて推定される。ここで、リザーバ液量CRES
の添字nは、今回値を、添字n−1は前回値を表してお
り、減圧時間CTGEN*係数KFLUIDはリザーバ
44に流入させられたと推定される作動液流入量で、係
数KFLUIDは、S15において読み込まれた車体減
速度とS17において計測された減圧時間CTGENと
から、図6に示すマップに従って決定される。KPUM
PUPは、前回の推定時から今回の推定時の間にポンプ
38によって汲み上げられ、リザーバ44から流出させ
られた作動液流出量であり、ポンプ汲み上げ量推定プロ
グラムの実行によって求められる。
【0116】なお、今回アンチスキッド制御が開始され
てから、最初にS19が実行される場合には、リザーバ
液量の前回値CRES(n-1) は0である。前述のよう
に、アンチスキッド制御終了時にリザーバ44内の作動
液がマスタシリンダ10にすべて戻され、リザーバ液量
CRESがクリアされるからである。
【0117】それに対して前回実行時に増圧モードが設
定されていた場合には、リザーバ液量CRESは、S2
0において、式 CRES(n) =CRES(n-1) −KPUMPUP に基づいて推定される。前回推定時から今回推定時まで
の間にリザーバ44には作動液が新たに流入していない
ため、作動液流入量(CTGEN*KFLUID)の項
がなく、ポンプ38によって新たに汲み上げられた作動
液流出量KPUMPUPが引かれるだけである。
【0118】以上のように、本実施例の液圧ブレーキ装
置においては、リザーバ液量を従来のリザーバ液量推定
手段による場合より簡易に推定される。作動液流入量の
推定の基礎となる時間としては、フロントホイールシリ
ンダ16に減圧モードが設定された時間が使用され、ま
た、作動液流出量の推定の基礎となる時間としてはポン
プ38の作動時間が使用されるため、フロント,リヤ両
ホイールシリンダ16,20それぞれについて減圧モー
ドや増圧モードが設定された時間が別個に検出される必
要がないのである。さらに、減圧時間中には、必ずフロ
ント,リヤ両ホイールシリンダ16,20から作動液が
共に流出させられ、両ホイールシリンダから流出させら
れる作動液の量がまとめて推定され、各々のホイールシ
リンダから流出させられる作動液量が別個に推定される
わけではない。また、リザーバからの作動液流出量もポ
ンプ38の作動時間に基づいて推定され、フロント,リ
ヤ両ホイールシリンダ16,20へ供給される作動液量
が別個に推定されるわけではない。
【0119】また、作動液流入量および作動液流出量の
推定にホイールシリンダ圧が加味されるため推定精度が
向上し、結果的にリザーバ液量の推定精度が向上する。
しかも、ホイールシリンダ圧を加味するために、それぞ
れホイールシリンダ圧と密接な関係がある車体減速度お
よびポンプ38を駆動するモータ52の電流が使用され
るため、液圧センサが不要であり、コストアップを回避
することができる。その上、作動液流入量の推定に関し
ては、車体減速度が推定車体速度を微分することによっ
て取得されるため、アンチスキッド制御に必要な車輪速
センサ72,74等以外のセンサが不要となる。
【0120】そして、推定されたリザーバ液量が0より
小さくなると制御マップAに基づく制御から制御マップ
Bに基づく制御に切り換えられるため、ホイールシリン
ダ圧を増圧するための作動液が不足することが回避さ
れ、制動力不足の発生が良好に回避される。また、ポン
プ38の作動時間がアンチスキッド制御継続時間とされ
ているため、作動液流出量が多めに推定され、減圧時間
が減圧モードが設定された時間とされているため、作動
液流入量が少なめに推定される。その結果、リザーバ液
量が少なめに推定されることになり、作動液不足が生じ
ることを確実に回避することができる。
【0121】なお、上記実施例のリザーバ液量推定プロ
グラムによれば、S12,13,14における判定が、
液圧制御モード(増圧モード,減圧モード,保持モー
ド)に基づいて行われたが、開閉弁制御モード(第一〜
第七モード)に基づいて行われるようにしてもよい。上
記実施例においては、第七モードと第六モードとが交互
に設定された場合や第四モードと第七モードとが交互に
設定された場合には、保持モードとされていたため、こ
れらの制御が行われる場合において第七モードが設定さ
れた場合については減圧時間が計測されなかった。それ
に対して、本実施例においては、保持モードが設定され
た場合にも第七モードが設定された場合には減圧時間と
されるため、その分、作動液流入量の推定精度を向上さ
せることができる。特許請求の範囲にいう「作動液の流
出を許容する状態」を、ホイールシリンダの液圧が減圧
されても、されなくても、作動液の流出が許容される状
態にある場合であると解すれば、「弁装置が第一状態に
ある時間」は、第七モードが設定された時間とされ、本
態様のようになるのである。
【0122】また、上記リザーバ液量推定プログラムに
おいては、増圧モードが設定された場合にのみリザーバ
液量が推定されるようになっていたが、減圧モードが設
定された場合や保持モードが設定された場合において
も、リザーバ液量が推定されるようにしてもよい。減圧
モードが設定されている場合には、式 CRES(n) =CRES(n-1) +CTGEN*KFLU
ID−KPUMPUP に基づいて推定され、保持モードが設定されている場合
には、式 CRES(n) =CRES(n-1) −KPUMPUP に基づいて推定されるようにすることができる。減圧モ
ードが設定されている場合には、リザーバ44に流入す
る作動液量が逐次加えられ、保持モードが設定されてい
る場合には、ポンプ38によって汲み上げられる作動液
量が逐次引かれるのである。
【0123】この場合には、増圧モードが設定された場
合だけでなく、減圧モードが設定された場合や保持モー
ドが設定された場合にも制御マップ選択プログラムが実
行され、制御マップAあるいはBが選択されることにな
る。保持モードが設定されている場合には、前回リザー
バ液量CRES(n-1) と今回リザーバ液量CRES(n)
とが同じであると推定してもよい。
【0124】さらに、リザーバ液量推定プログラムにお
いて、アンチスキッド制御開始時から推定時までの作動
液流入量と作動液流出量とをそれぞれ推定し、これら作
動液流入量と、作動液流出量とに基づいてリザーバ液量
を推定してもよい。例えば、作動液流入量CRESIN
を、式 CRESIN(n) =CRESIN(n-1) +CTGEN*
KFLUID に基づいて推定する。すなわち、アンチスキッド制御開
始時から推定時までに、減圧モードが設定されてリザー
バ44に流入させられた作動液の総量が推定されるので
ある。また、この場合には、作動液流出量CRESOU
(n) は、アンチスキッド制御開始時から推定時までの
間にポンプ38によってリザーバ44から汲み上げられ
た作動液の総量となり、ポンプ作動時間はアンチスキッ
ド制御継続時間となる。リザーバ液量CRESは、式 CRES(n) =CRESIN(n) −CRESOUT(n) に基づいて推定されることになる。
【0125】また、上記実施例においては、作動液流入
量を推定する場合においても、作動液流出量を推定する
場合においても、ホイールシリンダ圧が考慮されていた
が、作動液流入量を推定する場合にのみ考慮されるよう
にしても、作動液流出量を推定する場合にのみ考慮され
るようにしてもよい。さらに、作動液の推定精度を向上
させるために、フロントホイールシリンダ16の液圧を
検出する液圧センサ等を設けたり、車体減速度を直接検
出する減速度センサ等を設けたりしてもよい。逆に、推
定精度をそれほど向上させる必要がない場合には、電流
計76を省略することができる。また、第一発明によれ
ば、車体減速度を考慮しないで、リザーバ液量を推定す
ることも可能であり、その場合には、係数KFLUID
を減圧時間のみの関数としても、一定値としてもよい。
【0126】さらに、上記実施例の制御マップ選択プロ
グラムにおいては、リザーバ液量が0より小さくなると
制御マップAから制御マップBへ切り換えられるれるよ
うにされていたが、0以外の設定量以下になると切り換
えられるようにしてもよい。
【0127】また、上記実施例においては、制御マップ
選択プログラムが格納されていたが、制御マップ選択プ
ログラムの代わりに、第一開閉弁制御プログラムが格納
されていてもよい。例えば、推定されたリザーバ液量が
設定量以下になった後に第一開閉弁30が閉状態から開
状態に切り換えられるようにするのである。第一開閉弁
30が閉状態から開状態に切り換えられるのは、フロン
トホイールシリンダ16に増圧モードが設定された場合
のみであっても、設定されたモードに係わらず設定時間
だけ切り換えられるようにしてもよい。いずれの場合に
おいても、マスタシリンダ10の作動液が第一開閉弁よ
りリザーバ44側の部分に供給されるため、作動液不足
が生じることが良好に回避される。
【0128】さらに、制御マップA,Bは、上記実施例
のものに限定されるわけではない。例えば、右前輪1
4,左後輪18のスリップが共に回復傾向にある場合に
は、上記実施例においては、第五モードと第七モードと
が交互に設定されるようになっていたが、第四モードと
第七モードとが交互に設定されるようにしてもよい。こ
の場合には、リヤホイールシリンダ20に対しては増圧
制御と減圧制御とが交互に行われ、フロントホイールシ
リンダ16に対しては保持制御と減圧制御とが交互に行
われることになる。ここでは、第四モードと第七モード
との切換えが、上述の場合と同様に、フロントホイール
シリンダ16,リヤホイールシリンダ20の液圧の変化
をなくしあるいは緩慢にするために行われる。したがっ
て、フロントホイールシリンダ16およびリヤホイール
シリンダ20に保持モードが設定されたと見なすことが
できる。
【0129】また、上記液圧ブレーキ装置においては、
弁装置が2個の第二開閉弁40,第三開閉弁46を含む
ものであったが、1個の3位置の方向切換弁を含むもの
としてもよい。さらに、減圧装置60を弁装置の構成要
素と考えてもよい。また、減圧装置60,Pバルブ36
は不可欠ではない。さらに、係数KFLUID決定マッ
プは上記実施例におけるものに限らない等いちいち例示
することはしないが、特許請求の範囲を逸脱することな
く当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した態
様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一発明および第二発明に共通の一実施例であ
る液圧ブレーキ装置のコントローラのROMに格納され
たリザーバ液量推定プログラムを示すフローチャートで
ある。
【図2】上記液圧ブレーキ装置のコントローラのROM
に格納された制御マップ選択プログラムを示すフローチ
ャートである。
【図3】上記液圧ブレーキ装置の回路図である。
【図4】上記液圧ブレーキ装置の一部回路図である。
【図5】上記液圧ブレーキ装置における制動力配分線を
示す図である。
【図6】上記液圧ブレーキ装置のコントローラのROM
に格納された係数決定マップを表す図である。
【図7】二輪一系統の液圧ブレーキ装置において従来の
方法でリザーバ液量を推定すると仮定した場合を説明す
るための図である。
【符号の説明】
10 マスタシリンダ 16 フロントホイールシリンダ 20 リヤホイールシリンダ 30 第一開閉弁 38 ポンプ 40 第二開閉弁 44 リザーバ 46 第三開閉弁 52 モータ 70 コントローラ 72,74 車輪速センサ

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2個の加圧室を備えたマスタシリンダ
    と、 そのマスタシリンダの2個の加圧室の各々から互いに独
    立して延びる2個の液通路の各々に接続された前輪のフ
    ロントホイールシリンダおよび後輪のリヤホイールシリ
    ンダと、 それらフロントおよびリヤの両ホイールシリンダと前記
    マスタシリンダとを連通させる連通状態と、それらを遮
    断する遮断状態とに切換可能な第一開閉弁と、 作動液を収容するリザーバと、 そのリザーバに収容された作動液を汲み上げ、前記フロ
    ントおよびリヤの両ホイールシリンダに加圧して供給す
    るポンプと、 前記フロントおよびリヤの両ホイールシリンダの作動液
    の前記リザーバへの流出を許容する第一状態と、リヤホ
    イールシリンダの作動液のリザーバへの流出を許容し、
    フロントホイールシリンダの作動液の流出を阻止する第
    二状態と、フロントおよびリヤの両ホイールシリンダの
    作動液の流出を阻止し、それら両ホイールシリンダの少
    なくとも一方への前記ポンプから吐出された作動液の流
    入を許容する第三状態とに切換可能な弁装置と、 前記第一開閉弁を遮断状態に切り換えた状態において、
    前記ポンプの作動を制御するとともに、前記弁装置を第
    一状態,第二状態および第三状態のいずれかに切り換え
    ることによって、前記フロントおよびリヤの両ホイール
    シリンダの液圧を、前記前輪および後輪の制動スリップ
    がほぼ適正値になるように制御するアンチスキッド制御
    手段とを含む液圧ブレーキ装置において、 前記アンチスキッド制御手段が、 前記弁装置が第一状態にある減圧時間と、前記ポンプの
    作動時間とに基づいて前記リザーバに収容されている作
    動液量を推定するリザーバ液量推定手段を含むことを特
    徴とする液圧ブレーキ装置。
  2. 【請求項2】 前記リザーバ液量推定手段が、車両の減
    速度を取得する減速度取得手段を含み、その減速度取得
    手段によって取得された車体減速度と、前記減圧時間お
    よびポンプの作動時間とに基づいてリザーバ液量を推定
    するものであることを特徴とする請求項1に記載の液圧
    ブレーキ装置。
JP7080162A 1995-04-05 1995-04-05 液圧ブレーキ装置 Pending JPH08276839A (ja)

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KR1019960010577A KR100196959B1 (ko) 1995-04-05 1996-04-04 유체량 추정 장치를 구비한 유압 제어 장치 및 유압 제동 시스템
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014507321A (ja) * 2010-12-28 2014-03-27 ボルボ コンストラクション イクイップメント アーベー ホイール式建設機械のブレーキ制御装置

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