JP2627779B2 - アンチスキッド/トラクション制御式ブレーキ装置 - Google Patents

アンチスキッド/トラクション制御式ブレーキ装置

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JP2627779B2
JP2627779B2 JP18069188A JP18069188A JP2627779B2 JP 2627779 B2 JP2627779 B2 JP 2627779B2 JP 18069188 A JP18069188 A JP 18069188A JP 18069188 A JP18069188 A JP 18069188A JP 2627779 B2 JP2627779 B2 JP 2627779B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は車両用の液圧ブレーキ装置に関するものであ
り、特にアンチスキッド制御とトラクション制御との両
方が可能な液圧ブレーキ装置の改良に関するものであ
る。
従来の技術 アンチスキッド制御は、車両の制動時に車輪に加えら
れる制動トルクが路面の摩擦係数との関係において過大
であるために、車輪がロックして路面上を滑ることを防
止する制御であり、トラクション制御は車両の加速時に
駆動輪に加えられる駆動トルクが路面の摩擦係数との関
係において過大であるために駆動輪が路面上を滑って車
両が有効に加速されない事態の発生を回避する制御であ
る。このアンチスキッド制御とトラクション制御との両
方が可能な車両用液圧ブレーキ装置は、特開昭57−2294
8号公報によって既に知られている。
この液圧ブレーキ装置においては、電磁液圧制御装置
のブレーキ液排出ポートにリザーバとトラクション制御
用液圧源とがパイロット式切換弁によって択一的に連通
させられるようになっており、マスタシリンダのブレー
キ液圧がパイロット圧として使用されている。マスタシ
リンダの液圧が高い状態では、パイロット式切換弁が電
磁液圧制御装置のブレーキ液排出ポートをリザーバに連
通させてアンチスキッド制御が可能状態とする一方、ブ
レーキ操作が行われておらず、マスタシリンダの液圧が
作用しない状態では、パイロット式切換弁が電磁液圧制
御装置のブレーキ液排出パートをトラクション制御用液
圧源に連通させ、トラクション制御が可能な状態とする
ようにされているのである。トラクション制御中にホイ
ールシリンダから排出されるブレーキ液は、電磁液圧制
御装置とマスタシリンダとを接続する液通路を経てマス
タシリンダに収容される。さらに、この液圧ブレーキ装
置においては、アンチスキッド制御用液圧源のポンプと
トラクション制御用液圧源のポンプとがユニット化され
て、共通のモータで駆動されるようになっている。
この液圧ブレーキ装置は、アンチスキッド制御装置と
トラクション制御装置とが巧みに重ね合わされ、単純な
構成でアンチスキッド制御とトラクション制御との両方
を行い得るようにされている。したがって、アンチスキ
ッド制御装置とトラクション制御装置とが全ての車両に
装備される場合には、装置コストを低減させることがで
きる。
発明が解決しようとする課題 しかし、アンチスキッド制御装置のみが設けられる仕
様とアンチスキッド制御装置およびトラクション制御装
置が両方とも設けられる仕様との両仕様がある車種にお
いては、アンチスキッド制御のみが可能な装置を別個に
製造することが必要であり、かえって装置コストが高く
なってしまうという問題が生ずる。
課題を解決するための手段 本願は、上記の課題を解決するために、ブレーキ操作
部材の操作に応じてマスタシリンダに発生させられたブ
レーキ液圧が車両の駆動輪の回転を抑制するブレーキの
ホイールシリンダに供給されるとともに、駆動輪のスリ
ップ状態を検出するスリップ状態検出手段とホイールシ
リンダの液圧を制御する電磁液圧制御装置とを備えて駆
動輪のスリップ率が過大となることを防止するアンチス
キッド制御装置が設けられたアンチスキッド制御式ブレ
ーキ装置において、(a)トラクション制御用液圧源
と、(b)そのトラクション制御用液圧源と前記マスタ
シリンダとを択一的に前記電磁液圧制御装置に連通させ
るとともに、トラクション制御用液圧源を前記液圧制御
装置に連通させる状態ではその電磁液圧制御装置のブレ
ーキ液排出ポートをリザーバに連通させ、マスタシリン
ダを電磁液圧制御装置に連通させる状態ではリザーバと
の連通を遮断する電磁切換装置とを設けたものである。
作用および効果 上記発明におけるように、トラクション制御用液圧源
をアンチスキッド制御用の液圧源とは別個に設け、電磁
切換装置を介してアンチスキッド制御式液圧ブレーキ装
置に接続することとすれば、アンチスキッド制御のみが
必要な場合はこれを接続せず、アンチスキッド制御とト
ラクション制御との両方が必要な場合にはこれを接続す
ることによって容易に両仕様の車両を製造することがで
きる。
また、アンチスキッド制御用の液圧源とトラクション
制御用の液圧源とをそれぞれの目的に最も適したものと
することができ、アンチスキッド制御のみが必要な場合
には液圧ブレーキ装置のコストを低減させ得ることは勿
論であるが、アンチスキッド制御とトラクション制御と
の両方が必要な液圧ブレーキ装置においても装置コスト
を比較的低く抑えることができて、結局、アンチスキッ
ド制御のみが必要な仕様とアンチスキッド制御およびト
ラクション制御の両方が必要な仕様とを含む車種全体と
して製造コストを低減することが可能となる。
実施例 以下、本発明の実施例として、後輪駆動自動車の液圧
ブレーキ装置を図面に基づいて説明する。
第1図において、10はブレーキ操作部材としてのブレ
ーキペダルであり、ブースタ12を介してマスタシリンダ
14に接続されている。マスタシリンダ14は2つの独立し
た加圧室を備えたタンデム式であり、一方の加圧室に発
生した液圧は液通路16を経て前輪のブレーキを作動させ
るフロントホイールシリンダに供給されるが、本発明と
は直接関係がないため、この系統の図示および説明は省
略する。
他方の加圧室に発生したブレーキ液圧は液通路18,20
および22を経て、後輪のブレーキを作動させる左右のリ
ヤホイールシリンダ24に供給される。液通路20は二股に
分かれており、その分かれた各部と液通路22との間にそ
れぞれ電磁液圧制御装置としての3位置弁26が設けられ
ている。この3位置弁26の代わりに2個の2位置弁を直
列に組み合わせる等、他の態様で電磁液圧制御装置を構
成することも可能である。
3位置弁26は、コンピュータを主体とするアンチスキ
ッド制御ユニット28によって、3つの位置、すなわちリ
ヤホイールシリンダ24をマスタシリンダ14に連通させる
増圧位置と、リザーバ30に連通させる減圧位置と、いず
れにも連通させない保圧位置とに切り換えられるもので
ある。減圧時にリヤホイールシリンダ24からリザーバ30
へ排出されたブレーキ液はポンプ32により汲み上げられ
て液通路20へ戻される。ポンプ32を駆動するモータ34は
アンチスキッド制御ユニット28によって制御される。各
液通路22と20との間には、3位置弁26をバイパスするバ
イパス通路36が設けられ、これらバイパス通路36には液
通路22側から液通路20側へのブレーキ液の流れは許容す
るが、逆向きの流れは阻止する逆止弁38がそれぞれ設け
られている。以上の3位置弁26,リザーバ30,ポンプ32,
モータ34,バイパス通路36および逆止弁38がユニット化
されてアンチスキッド制御用アクチュエータ40を構成し
ている。そして、このアクチュエータ40は前記制御ユニ
ット28とともにアンチスキッド制御装置を構成してい
る。アンチスキッド制御ユニット28にはコンピュータを
主体とするスリップ率等演算ユニット42が接続されてお
り、右左の前輪および後輪にそれぞれ設けられた4個回
転センサ44からの信号に基づいて各車輪の速度,加速度
およびスリップ率等を演算し、アンチスキッド制御ユニ
ット28に供給する。上記スリップ率等演算ユニット42お
よび回転センサ44がスリップ状態検出手段を構成してい
る。
前記液通路18と20との間に、トラクション制御用アク
チュエータ50が接続されている。このアクチュエータ50
は3位置弁52を備えている。この3位置弁52は、トラク
ション制御ユニット54によって、3つの位置、すなわち
マスタシリンダ14をアンチスキッド制御用3位置弁26に
連通させる通常位置と、トラクション制御用液圧源56を
3位置弁26に連通させるトラクション制御位置と、マス
タシリンダ14も液圧源56も3位置弁26に連通させない遮
断位置とに切り換えられるものである。トラクション制
御用液圧源56はマスタシリンダ14にブレーキ液を供給す
るリザーバ58からブレーキ液を汲み上げるポンプ60と、
その汲み上げられたブレーキ液を加圧下に蓄えるアキュ
ムレータ62とを備えている。ポンプ60を駆動するモータ
64は、圧力スイッチ66の出力信号に基づいてトラクショ
ン制御ユニット54により制御され、アキュムレータ62に
は常に一定範囲内の液圧でブレーキ液が蓄えられるよう
になっている。68はリリーフバルブであり、上記制御が
正常に行われない場合にアキュムレータ62の蓄液圧が過
大となることを防止するために設けられている。
また、アキュムレータ62とリザーバ58との間には、常
閉の電磁開閉弁70が設けられている。この電磁開閉弁70
はトラクション制御ユニット54により、電源投入毎に一
度開かれ、アキュムレータ62に蓄えられている全てのブ
レーキ液をリザーバ58に排出するために設けられてい
る。アキュムレータ62は高圧窒素ガス等の高圧ガスを封
入したガス封入式であり、高圧ガスはシール部材を浸透
してブレーキ液に溶け込み、気泡となって蓄液室に蓄積
され、アキュムレータ62の蓄液容量を低下させるため、
この蓄液容量低下を防止するために、アキュムレータ62
内のブレーキ液を時々新しいブレーキ液と置換すること
が望ましいのである。
前記アンチスキッド制御用の3位置弁26のブレーキ液
排出ポートと、リザーバ58とを接続する排液通路72が設
けられており、この排液通路72に電磁開閉弁74が設けら
れている。この開閉弁74は常には閉じられているが、ト
ラクション制御が必要となった場合に前記3位置弁52が
トラクション制御位置に切り換えられると同時に開か
れ、トラクション制御中にリヤホイールシリンダ24から
3位置弁26を経て排出されるブレーキ液をリザーバ58へ
還流させる。上記3位置弁52および電磁開閉弁74が電磁
切換装置を構成し、これら3位置弁52,電磁開閉弁74と
共にトラクション制御用液圧源56,圧力スイッチ66,リリ
ーフバルブ68,電磁開閉弁70等がユニット化されてトラ
クション制御用アクチュエータ50を構成している。した
がって、このアクチュエータ50と前記トラクション制御
ユニット54とを付加するか否かによって、アンチスキッ
ド制御のみが可能な液圧ブレーキ装置と、アンチスキッ
ド制御とトラクション制御との両方が可能な液圧ブレー
キ装置とを簡単に造り分けることができる。
トラクション制御ユニット54はステップモータ76を介
して第二スロットルバルブ78を制御し、アクセルペダル
80による第一スロットルバルブ82の制御とは別にエンジ
ン出力を制御する機能を備えているが、この点は公知で
あり、また、本発明とは直接関係がないため、詳細な説
明は省略する。
上記トラクション制御ユニット54は第2図に示すよう
に、CPU90,ROM92,RAM94およびそれらを接続するバス96
を備えている。バス96には入力インタフェース98が接続
され、その入力インタフェース98には前記スリップ率等
演算ユニット42と共にブレーキペダル10の踏込みを検出
するブレーキスイッチ102およびアクセルペダル80の踏
込みを検出するアクセルスイッチ104が接続されてい
る。バス96にはまた、出力インタフェース106が接続さ
れており、その出力インタフェース106には前記アンチ
スキッド制御ユニット28が接続され、これを介して3位
置弁26の制御が行われるとともに、駆動回路110および1
12を介して前記3位置弁52および電磁開閉弁74がそれぞ
れ接続されている。なお、図示は省略するが、モータ6
4,電磁開閉弁70,ステップモータ76等もそれぞれ駆動回
路を介して出力インタフェース106に接続されている。R
AM94には第3図に示すように、フラグ114,第一,第二お
よび第三レジスタ116,118および120,第一および第二カ
ウンタ122および124等が設けられている。ROM92には、
第5図および第6図のフローチャートで示されるトラク
ション制御とそのトラクション制御終了後の制御(以
下、終了時制御という)との制御ルーチンを含む第4図
のメインルーチンと、第7図の割込みルーチンとが格納
されている。この割込ルーチンは、メインルーチンに対
してそのサイクルタイムより短い一定時間毎、例えばメ
インルーチンのサイクルタイム5msに対して1msの一定短
時間毎に割込を行い、メインルーチンの実行によってRA
M94内の各レジスタに格納される指令を読み出し、出力
インタフェース106を介して各駆動回路110,112に信号を
出力することにより、3位置弁52および電磁開閉弁74の
制御を行うものである。
次に、装置全体の作動を通して、第8図を参照しつつ
説明する。
自動車の通常走行時には、3位置弁26,52および電磁
開閉弁70,74が第1図の状態にある。したがって、マス
タシリンダ14がリヤホイールシリンダ24に連通し、トラ
クション制御用液圧源56はリヤホイールシリンダ24から
遮断されている。
ブレーキペダル10が踏み込まれれば、第8図(e)に
示されているように、リヤホイールシリンダ24の液圧が
上昇する。その結果、後輪の回転速度が低下することと
なるが、この速度に対応する信号が回転センサ44からス
リップ率等演算ユニット42に供給され、各車輪の速度,
加速度,車両の走行速度および各車輪のスリップ率等が
演算される。アンチスキッド制御ユニット28はブレーキ
ペダル10の踏込みを検出するブレーキスイッチ102から
の信号に基づいて作動を開始し、いずれかの車両のスリ
ップ率が設定値を超えた場合には、図示を省略するアン
チロック制御ルーチンの実行によって3位置弁26を第8
図(d)に示されているように、減圧位置へ切り換え
る。その結果、リヤホイールシリンダ24からリザーバ30
へブレーキ液が排出され、ホイールシリンダ液圧は第8
図(e)に示されているように減圧されている。それに
よって後輪の回転速度が回復すれば、アンチスキッド制
御ユニット28が3位置弁26を保圧位置あるいは増圧位置
へ切り換え、後輪のスリップ率が適正範囲内に保たれる
ように、リヤホイールシリンダ24内のブレーキ液圧を制
御する。なお、上記のように3位置弁26が減圧位置へ切
り換えられると同時に、第8図(c)に示されているよ
うにポンプ32が起動され、リヤホイールシリンダ24から
リザーバ30へ排出されたブレーキ液を液通路20および18
を経てマスタシリンダ14へ還流させる。
ブレーキペダル10の踏込みが解除されれば、それをブ
レーキスイッチ102が検出し、その検出信号に基づいて
アンチスキッド制御ユニット28がアンチスキッド制御を
終了する。3位置弁26が増圧位置に切り換えらえ、ポン
プ32が停止させられるのである。また、ブレーキペダル
10の踏込み解除に伴ってマスタシリンダ14の液圧が低下
させられ、リヤホイールシリンダ24からバイパス通路36
を経て、ブレーキ液が速やかにマスタシリンダ14へ還流
し、ブレーキが非作動状態に復帰する。
自動車を加速する必要が生じて、アクセルペダル80が
踏み込まれれば、その踏込みがアクセルスイッチ104に
よって検出され、その検出信号に基づいてトラクション
制御ユニット54が作動を開始する。そして、スリップ率
等演算ユニット42により演算された駆動輪たる後輪のス
リップ率が設定値を超えれば、トラクション制御を実行
し、第8図(a)および(b)に示されているように、
3位置弁52をトラクション制御位置へ切り換えると同時
に電磁開閉弁74を開く。3位置弁52がトラクション制御
位置に切り換えられれば、アキュムレータ62からブレー
キ液が3位置弁26を経てリヤホイールシリンダ24に供給
され、ブレーキが作動する。それと同時に、トラクショ
ン制御ユニット54はアンチスキッド制御ユニット28を介
してブレーキ液圧制御を行い、3位置弁26の切換えによ
ってリヤホイールシリンダ24の、ブレーキ液圧を後輪の
スリップ率が適正範囲となるように制御する。そして、
後輪のスリップ率が設定値以下となるか、あるいは自動
車の走行速度が設定値を超えた場合にトラクション制御
ユニット54は制御を終了し、リヤホイールシリンダ24の
液圧が低下させられて、後輪に対する制動が解除され
る。
上記のようにトラクション制御中は、3位置弁52がト
ラクション制御位置に切り換えられるのであるが、連続
的にトラクション制御位置に保たれるのではなく、第8
図(a)に示されているように、一定時間T1毎に短時間
遮断位置に切り換えらえる。トラクション制御位置に保
たれる時間T1に遮断位置に保たれる時間を加えた時間T2
とすれば、トラクション制御中においては3位置弁52が
時間T2のサイクルで切換制御されることとなる。この制
御は、トラクション制御ユニット54の故障やそのユニッ
ト54の主体を成すコンピュータの暴走等によって3位置
弁52がトラクション制御位置に連続的に切り換えられる
態様とは異なっている。したがって、この切換えの態様
を自己診断用のコンピュータに監視させればトラクショ
ン制御ユニットの故障やコンピュータの暴走を逸早く検
知し、トラクション制御ユニット54の電源を断ち、運転
者に警報する等必要な処置を採ることができる。
3位置弁52に代えて、遮断位置を有しない2位置弁を
採用することも可能であるが、この場合にはトラクショ
ン制御時に第8図(a)に示されているような遮断位置
への切換えを含む制御を行うことができず、故障時等に
おける状態と同じになるため、自己診断用コンピュータ
によってトラクション制御ユニット54等の故障を発見す
ることができない。トラクション制御中、3位置弁52が
第8図(a)のように制御される場合には、第9図に示
すようにリヤホイールシリンダ24の液圧は、増圧の過程
に短時間ずつの保圧過程を含むこととなるが、この程度
の外乱はトラクション制御に殆ど影響を及ぼすことがな
く、許容される。これに対して、遮断位置を有しない2
位置弁を3位置弁52に代えて使用し、第10図に示すよう
に、トラクション制御中一定時間毎にごく短時間通常位
置へ切り換える制御を行えば、トラクション制御ユニッ
ト54等の故障を発見することは可能となるが、リヤホイ
ールシリンダ24の液圧が第10図に示すように一定時間毎
に減圧されることとなり、この外乱は大きくてトラクシ
ョン制御に悪影響を及ぼす。
トラクション制御ユニット54が制御を終了した後は、
前述のようにリヤホイールシリンダ24の液圧が低下させ
られるのであるが、この低下は終了制御時によって行わ
れる。まず、トラクション制御の終了とともに、3位置
弁52が遮断位置に切り換えられ、電磁開閉弁74がひき続
き開位置に保たれるとともに、アンチスキッド制御ユニ
ット28を介して3位置弁26が減圧位置に切り換えられ
る。この状態はトラクション制御の終了時から時間T3
間保たれる。その結果、リヤホイールシリンダ24から3
位置弁26,排液通路72および電磁開閉弁74を経てブレー
キ液がリザーバ58へ排出され、リヤホイールシリンダ24
液圧は第8図(e)に示されているように減圧される。
時間T3の経過後、3位置弁52が遮断位置に保持されたま
まで3位置弁26が増圧位置に切り換えらえ、その状態が
時間T4の間保たれる。これにより、3位置弁52と26との
間の液通路20の液圧が解放され、その後3位置弁52が通
常位置に切り換えられる。そして、時間T5の経過後に電
磁開閉弁74が閉位置に復帰させられる。
したがって、トラクション制御終了後にリヤホイール
シリンダ24のブレーキ液はすべて排液通路72からリザー
バ58へ戻され、かつ、液通路20に閉じ込められている高
い液圧が解放されてからリヤホイールシリンダ24がマス
タシリンダ14に連通させられることとなり、この制御が
行われることなく3位置弁52が通常位置に切り換えられ
た場合に高い液圧が急激にマスタシリンダ14に伝達され
ることにより発生する振動や騒音が回避される。
以上のトラクション制御および終了時制御は、第4図
ないし第7図のフローチャートで表されるプログラムの
実行によって行われる。
電源投入時にステップ1(以下、S1と略記する。他の
ステップについても同じ。)において初期設定が行わ
れ、フラグ114,第一,第二および第三レジスタ116,118
および120,第一および第二カウンタ112,124等がリセッ
トされるとともに、電磁開閉弁70が開かれる。電磁開閉
弁70は、アキュムレータ62に蓄えられている全てのブレ
ーキ液がリザーバ58に排出された後、閉じられる。その
後S2以下のステップが5msのサイクルタイムで繰返し実
行される。まず、S2およびS3が実行され、ブレーキペダ
ル10もアクセルペダル80も踏み込まれていなければ、S
2,S3の判断が共にNOとなり、S2,S3のループの実行が繰
り返されるが、ブレーキペダル10が踏み込まれておらず
アクセルペダル80が踏み込まれていれば、S4が実行され
る。S4においてはフラグ114がリセット状態にあるか否
かが判断され、S4が最初に行われる場合にはYESの判断
となってS5に移行する。S5においてはスリップ率等演算
ユニット42により演算された最新のスリップ率が第1お
よび第2設定値のうち上限の第1設定値より大きいか否
かが判断される。これはトラクション制御を開始する条
件であるため、YESの判断によりS6およびS7が実行され
る。なお、S5の判断がNOである場合には、トラクション
制御の必要がないため、S2に戻る。S6においてフラグ11
4がセットされ、S7において1回目のトラクション制御
が実行された後、S2に戻る。そして、S2,S3を経てS4が
2回目に行われる場合には、フラグ114が既にセットさ
れているため、判断がNOとなってS8に移行する。S8にお
いては、前記スリップ率が下限の第2設定値より小さい
か否かが判断され、S9において車速Vが設定車速V0より
大きいか否かが判断される。これらの判断がいずれもNO
の場合にはS7においてトラクション制御が続行される。
このように2回目以降はS2〜4,S8およびS9を経てS7のト
ラクション制御が実行されるのであるが、この実行の最
中に車速Vが設定車速V0より大きくなった場合には、S9
の判断がYESとなってS10の終了時制御が行われ、またス
リップ率が第2設定値より小さくなった場合にも、S8の
YESの判断によりS10が実行される。S2〜4,S8あるいはそ
れにS9を加えたステップを経てS10の終了時制御が実行
されるのである。
なお、トラクション制御あるいは終了時制御のプログ
ラムが実行されている間にブレーキスイッチ102がONと
なった場合には、S2の判断がYESとなり、S11において3
位置弁52が直ちに通常位置に復帰させられる。
次に第5図に示されるフローチャートに基づいてトラ
クション制御を詳細に説明する。
まず、S20において第一カウンタ122のカウント値C1
設定値C10より小さいか否かが判断される。C10は前記時
間T1をメインルーチンのサイクルタイム5msで除したも
のである。第一カウンタ122は初期設定時にリセットさ
れているため、S20が最初に実行される場合にはYESの判
断となり、S21において3位置弁52をトラクション制御
位置へ切り換えるべき旨の指令が第一レジスタ116に格
納され、S22において電磁開閉弁74を開くべき旨の指令
が第二レジスタ118に格納される。これらの指令は第7
図に示す割込ルーチンによって1ms毎に実行され、駆動
回路110,112によって3位置弁52,電磁開閉弁74がそれぞ
れトラクション制御位置,開位置へ切り換えられ、ある
いはその位置に保たれる。
続いてS23において、スリップ率が適性値となるよう
に3位置弁26の切換位置の指令が決定され、このトラク
ション制御ユニット54からの指令に基づきアンチスキッ
ド制御ユニット28によって3位置弁26の制御が行われる
が、この制御はよく知られており、また本発明の理解に
不可欠ではないため、詳細な説明は省略する。なお、ト
ラクション制御時においてはポンプ32は起動されず、リ
ヤホイールシリンダ24からリザーバ30へ排出されたブレ
ーキ液は排液通路72および電磁開閉弁74を経てリザーバ
58へ還流する。したがって、ポンプ32の起動に伴う騒音
の発生を回避し得る。S23の実行後、S24においてカウン
ト値C1が1増加させられ、S25において第二カウンタ124
がクリアされた後、プログラムの実行はメインルーチン
に戻る。
そして、トラクション制御ルーチンが繰返し実行され
ている間に、カウント値C1がC10より大きくなれば、す
なわち、時間T1が経過すればS20の判断がNOとなってS26
に移行し、C1がC20より小さいか否かが判断される。C20
は前記時間T2を前記サイクルタイム5msで除したもので
ある。この判断がYES、すなわちC10<C1<C20である場
合には、S27において3位置弁52を遮断位置に切り換え
るべき旨の指令が第一レジスタ116に格納され、上記と
同様にして3位置弁52が遮断位置に切り換えられ、ある
いはその位置に保たれる。その後はS22〜S25が実行され
てメインルーチンに戻る。そして、C1がC20より大きく
なれば、すなわち、時間T2が経過すれば、S26の判断がN
OとなりS28においてカウント値C1がクリアされた後、S2
1〜S25が実行される。すなわち、3位置弁52が遮断位置
からトラクション制御位置に切り換えられ、次回にこの
ルーチンが実行される場合には最初の制御サイクルと同
様にS20,S21〜S25のステップが実行されるのである。
次に第6図に示すフローチャートに基づいて、終了時
制御を詳細に説明する。
まず、S40において第二カウンタ124のカウント値C2
設定値C30より小さいか否かが判断される。C30は前記時
間T3をメインルーチンのサイクルタイム5msで除したも
のである。最初にS40が実行される場合にはこの判断はY
ESであるため、S41が実行され、3位置弁52を遮断位置
に切り換えるべき旨の指令が第一レジスタ116に格納さ
れ、S42において電磁開閉弁74を開位置にするべき旨の
指令が第二レジスタ118に格納される。そして前述した
のと同様にして、駆動回路110,112によって3位置弁52,
電磁開閉弁74がそれぞれ遮断位置,開位置に切り換えら
え、あるいはそれらの位置に保たれる。続いてS43にお
いて3位置弁26を減圧位置に切り換えるべき旨の指令が
第三レジスタ120に格納され、この指令がアンチスキッ
ド制御ユニット28により実行される。これらS41,42およ
び43の実行によりリヤホイールシリンダ24の液圧が減圧
される。その後、S44においてカウント値C2が1増加さ
せられ、S45において第一カウンタ122がクリアされた
後、メインルーチンに戻る。
この処理が繰返し実行される間に時間T3が経過してS4
0の判断がNOとなれば、S46に移行し、カウント値C2が設
定値C40より小さいか否かが判断される。C40は前記時間
T4をメインルーチンのサイクルタイム5msで除したもの
である。この判断がYES、すなわち、C30<C2<C40であ
る場合にはS46の判断がYESとなり、S47において3位置
弁52を遮断位置に、S48において電磁開閉弁74を開位置
に、S49において3位置弁52を増圧位置に切り換えるべ
き旨の指令が各レジスタ116,118および120に格納され
る。これらS47,48および49の実行により、液通路20に閉
じ込められていた高い液圧が解放され、その後はS44,45
を経てメインルーチンに戻る。
S46の判断がNOとなれば、S50においてC2が設定値C50
より小さいか否かが判断される。C50は前記時間T5をメ
インルーチンのサイクルタイム5msで除したものであ
る。C40<C2<C50である場合にはこの判断がYESとな
り、S51において3位置弁52を通常位置に切り換えるべ
き旨の指令が第一レジスタ116に格納され、これに基づ
いて3位置弁52が通常位置へ復帰させられる。続いてS5
2およびS53が実行されるが、ここで第二レジスタ118お
よび第三レジスタ120に格納される各指令は前記S48,S49
において格納される指令とそれぞれ同じであって、電磁
開閉弁74は開位置に、3位置弁26は増圧位置に保たれ
る。
C2>C50となってS50の判断がNOとなれば、すなわち、
時間T5が経過すれば、S54,S56においてそれぞれS51,S53
と同じ指令が格納される一方、S55において電磁開閉弁7
4を閉じるべき旨の指令が第二レジスタ118に格納され
る。つまり、時間T5が経過するまでは電磁開閉弁74が開
かれているのであり、この時まではブレーキ液が排液通
路72を経てリザーバ58へ還流することが許容される。S5
4,55および56の実行後、S57においてフラグ114がリセッ
トされ、S44,S45を経てプログラムはメインルーチンに
戻る。S57においてフラグ114がリセットされ、かつ、S4
5においてカウント値C1がクリアされることにより、ト
ラクション制御ユニット54は最初の状態に復帰する。
また、以上の実施例における3位置弁52に代えて、第
11図に示すように閉位置と開位置とを有する2個の開閉
弁130および132を採用することもできる。この場合に
は、第5図および第6図のフローチャートにおいて、S2
1の指令を開閉弁130を閉位置に切り換えるとともに、開
閉弁132を開位置に切り換えるものとし、S27,S41および
47の指令を開閉弁130および132を共に閉位置に切り換え
るものとし、S51および54の指令を開閉弁130を開位置に
切り換えるとともに、開閉弁132を閉位置に切り換える
ものとすれば、3位置弁52を使用する場合と同じ制御を
行うことができ、また、開閉弁132を開位置、すなわち
トラクション制御位置から閉位置に切り換える態様を自
己診断用のコンピュータに監視させれば、3位置弁52を
使用する場合と同じ効果を得ることができる。
以上、本発明の実施例を詳細に説明したが、これは文
字通り例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変
形,改良を施した態様で、実施し得ることは勿論であ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例である液圧ブレーキ装置の系統
図である。第2図は第1図の液圧ブレーキ装置を制御す
る制御装置のうち、トラクション制御および終了時制御
を行う制御ユニットの構成を示すブロック図である。第
3図は第2図の制御ユニットのRAMに割り当てられたレ
ジスタ,カウンタ等のうち、本願に関連の深いものを取
り出して示す示す図である。第4図,第5,第6図および
第7図は第2図の制御ユニットのROMに記憶されたプロ
グラムを取り出して示すフローチャートである。第8図
は第1図の液圧ブレーキ装置におけるアンチスキッド制
御とトラクション制御とを概念的に示すタイムチャート
である。第9図および第10図は電磁切換装置として、3
位置弁を含むものを使用することの意義を説明するため
のグラフである。第11図は本発明の別の実施例である2
個の開閉弁を備えた液圧ブレーキ装置の要部を示す図で
ある。 10:ブレーキペダル、14:マスタシリンダ 24:リヤホイールシリンダ 26:3位置弁 28:アンチスキッド制御ユニット 40:アンチスキッド制御用アクチュエータ 42:スリップ等演算ユニット 44:回転センサ 50:トラクション制御用アクチュエータ 52:3位置弁 54:トラクション制御ユニット 56:トラクション制御用液圧源 58:リザーバ、60:ポンプ 62:アキュムレータ、70:電磁開閉弁 72:排液通路、74:電磁開閉弁
フロントページの続き (72)発明者 伊勢 清貴 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (72)発明者 大槻 弘巳 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本 電装株式会社内

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ブレーキ操作部材の操作に応じてマスタシ
    リンダに発生させられたブレーキ液圧が車両の駆動輪の
    回転を抑制するブレーキのホイールシリンダに供給され
    るとともに、駆動輪のスリップ状態を検出するスリップ
    状態検出手段とホイールシリンダの液圧を制御する電磁
    液圧制御装置とを備えて駆動輪のスリップ率が過大とな
    ることを防止するアンチスキッド制御装置が設けられた
    アンチスキッド制御式ブレーキ装置において、 トラクション制御用液圧源と、 そのトラクション制御用液圧源と前記マスタシリンダと
    を択一的に前記電磁液圧制御装置に連通させるととも
    に、トラクション制御用液圧源を前記液圧制御装置に連
    通させる状態ではその電磁液圧制御装置のブレーキ液排
    出ポートをリザーバに連通させ、マスタシリンダを電磁
    液圧制御装置に連通させる状態ではリザーバとの連通を
    遮断する電磁切換装置と を設けたことを特徴とするアンチスキッド/トラクショ
    ン制御式ブレーキ装置。
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