JPH08215731A - 熱間圧延用セラミック治具及びその製造方法 - Google Patents

熱間圧延用セラミック治具及びその製造方法

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JPH08215731A
JPH08215731A JP7022030A JP2203095A JPH08215731A JP H08215731 A JPH08215731 A JP H08215731A JP 7022030 A JP7022030 A JP 7022030A JP 2203095 A JP2203095 A JP 2203095A JP H08215731 A JPH08215731 A JP H08215731A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 Si34、焼結助剤成分及び微量不純物から
構成される焼結体よりなる熱間圧延用セラミック工具で
ある。Si34粒子間が結晶化されており、その粒子間
の結晶相が80%以上のJ相、10%以下のH相及び5
%以下のK相からなる。 【効果】 鉄及び水との反応が抑えられ、圧延時の摩耗
が低減される。鋼材との焼付きがないため製品の傷発生
が著しく低減される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄、鉄系合金の熱間圧
延用として好適に用いることができるガイドローラー、
圧延ロール、誘導管などのセラミック治具に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来、条鋼、線材等を製造する熱間圧延
ラインに使用されるガイドローラーや圧延ロールなどの
治具は、金属製のものが主流であった。しかし、これら
金属製の熱間圧延用治具は、一般に摩耗が激しく短寿命
であった。耐摩耗性に優れたWC超鋼合金等からなるも
のも開発されているが、このような治具においても、耐
熱性も不十分であるため被圧延材と接触して肌荒れや焼
付きが発生し易い等の問題があった。更に、これら金属
製の治具は重量が重いため取付や交換作業も容易ではな
かった。
【0003】そこで、近年、このような金属製の熱間圧
延用治具に代わるものとして、セラミックスの有する優
れた耐摩耗性、耐熱性、軽量性等の特性を利用したセラ
ミックス製の熱間圧延用治具の開発が盛んに行われてい
る。このような熱間圧延用セラミック治具の構成材料と
しては、高強度セラミックスとして知られる窒化珪素の
焼結体が主に用いられるが、窒化珪素は難焼結物質であ
るため、その製造に際しては、通常、Y23 、Al2
3 、MgO等の各種酸化物が焼結助剤として添加さ
れ、窒化珪素粒子間に形成されるガラス相を介して焼結
の促進を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようにして製造された従来の窒化珪素焼結体からなる熱
間圧延用治具を、鉄及び鉄系合金の熱間圧延ラインにお
いて使用した場合、Si34 粒子間に残留しているガ
ラス相が、被圧延材中の鉄や冷却水と反応することによ
り腐食され、使用時の摩耗量が著しく増大するという問
題があった。本発明は、かかる問題点に鑑みてなされた
ものであり、上記のような窒化珪素粒子間の腐食が抑制
され、耐摩耗性が大幅に改善された窒化珪素製の熱間圧
延用セラミック治具を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明によれば、Si34 、焼結助剤成分及び微
量不純物から構成される焼結体よりなる熱間圧延用セラ
ミック工具であって、Si34 粒子間が結晶化されて
おり、その粒子間の結晶相が80%以上のJ相、10%
以下のH相及び5%以下のK相、好ましくは90%以上
のJ相、5%以下のH相及び1%以下のK相からなり、
高温下の強度は1200℃以上でも強度低下を生ずるこ
とがない熱間圧延用セラミック治具、が提供される。な
お、本発明において、J相はカスピディン構造の結晶
相、Hはアパタイト構造の結晶相、K相は珪灰石構造の
結晶相を表しており、これらの結晶相はCuK α線による
X線回折の結果から求められる。
【0006】また本発明によれば、Si34 粉末に焼
結助剤を添加して得た原料粉末を所望形状に成形した後
焼成し、次いで、更に窒素雰囲気下1100〜1300
℃の温度範囲において熱処理してSi34 粒子間を結
晶化することを特徴とする熱間圧延用セラミック治具の
製造方法、が提供される。
【0007】
【作用】本発明は、通常の焼結方法により得られる窒化
珪素焼結体に対し、さらに所定の条件で熱処理を加える
ことにより、焼結体のSi34 粒子間のガラス層を結
晶化することができるとの知見に基づいてなされたもの
である。即ち、本発明の熱間圧延用セラミック治具は、
窒化珪素粉末に所定の焼結助剤を添加・混合して得た原
料粉末を所望形状に成形して加熱焼成し、一応の焼結が
完了した後、更に所定条件で熱処理することにより、窒
化珪素粒子間を結晶化して得られる。
【0008】このようにして得た本発明の熱間圧延用セ
ラミック治具は、その窒化珪素粒子間が結晶化されてい
るため、高温強度の低下が一般の窒化珪素焼結体より少
なく、又、被圧延材中に含まれる鉄及び水との反応が抑
えられ、この結果、窒化珪素粒子間に多量のガラス相が
存在する従来品に比して、圧延時の摩耗量が大幅に低減
する。
【0009】本発明の熱間圧延用セラミック治具におい
て、窒化珪素粒子間に形成された結晶相は、具体的には
J相80%以上、H相10%以下、K相5%以下であ
り、好ましくはJ相90%以上、H相5%以下、K相1
%以下である。J相が80%未満では焼結体粒界の鉄、
水に対する反応性が高くなり、H相が10%もしくはK
相が5%を超えても同様な結果を示す。これは各結晶の
鉄、水との反応性の差と推定される。
【0010】また本発明の熱間圧延用セラミック工具を
構成する焼結体の組成としては、具体的には、次のよう
なものが好ましい例として挙げられる。 (a) Y23 1〜10wt%、Yb23 3〜20
wt%、残部がSi34 および不純物。 (b) Y23 1〜10wt%、MgO 1〜10wt
%、ZrO2 0.01〜5wt%、残部がSi34
および不純物。 (c) Y23 1〜10wt%、Al23 0.01
〜20wt%、残部がSi34 および不純物。
【0011】焼結体における結晶相中のJ相、H相及び
K相の割合は、製造時における焼結助剤の種類及び量
と、窒化珪素粒子間のガラス相を結晶化する際の熱処理
温度とによってほぼ制御することができる。この場合、
上記した焼結体の組成例からわかるように、好ましい焼
結助剤の組成の例としては、下記のものが挙げられる。 (a) Y23 1〜10wt%、Yb23 3〜20
wt%。 (b) Y23 1〜10wt%、MgO 1〜10wt
%、ZrO2 0.01〜5wt%。 (c) Y23 1〜10wt%、Al23 0.01
〜20wt%。
【0012】また、熱処理温度としては1100〜13
00℃、好ましくは1200〜1300℃の範囲とす
る。熱処理雰囲気としては窒素雰囲気あるいは不活性雰
囲気であることが必要である。また、結晶化を行うため
の熱処理は通常の焼成工程後に全く別の工程として設け
ても良く、あるいは焼成工程の中に熱処理工程を含め
る。即ち焼成終了後、焼成温度から熱処理温度まで降温
し、この温度で所定の時間熱処理を行い、室温まで降温
するという工程でも良い。このような焼結助剤の種類及
び量、熱処理温度などの熱処理条件によって、前記した
割合の結晶相を有する窒化珪素焼結体が得られる。
【0013】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
【0014】(実施例1、比較例1)窒化珪素原料87
重量%に、焼結助剤としてY、Mg、Zrの化合物を、
それぞれY23 に換算して6重量%、MgOに換算し
て4重量%およびZrO2 に換算して3重量%配合した
後、ジルコニア磁器製玉石を用いたボールミルにて充分
混合した。この混合原料粉末をゴム型に充填し、圧力
2.5ton/cm2 の静水圧プレスにより4個成形した。
【0015】各成形体をNC旋盤にチャックし、所定形
状に加工した後、窒素雰囲気大気圧下にて1650℃に
て2時間焼成した。このうち2個の焼成体を更に窒素雰
囲気下1200℃にて1時間熱処理した。
【0016】これらの焼成体の軸部、端面、カリバー部
をダイヤモンド砥石にてそれぞれ研削加工し、焼成後熱
処理を行ったもの2個、及び熱処理を行わなかったもの
2個、計4個の圧延用ガイドローラーを作製した。各ロ
ーラーをX線回折装置にて分析したところ、1650℃
×2時間で焼成したままのローラーの窒化珪素粒子間は
ガラス層であり、1200℃の熱処理を施したものは9
5%J相、5%K相からなる結晶層であった。
【0017】これらのガイドローラー及び比較として従
来から用いられているWC超硬合金製ガイドローラー
を、それぞれ仕上げ圧延機入口のガイドローラーとして
それぞれ取付け、SCM系鉄合金材をそれぞれ1000
0t圧延した。鋼材のガイドローラー取付部での速度は
30m/sec 、温度は約900℃であった。圧延終了後ロ
ーラーのカリバー部を外観観察し、さらに同部位のプロ
ファイルを形状測定機にて測定することにより摩耗量を
調べた。結果を表1に示した。
【0018】
【表1】
【0019】表1の結果からわかるように、熱処理なし
のSi34 粒子間がガラス層であるNo.3、4のロ
ーラーはカリバー部の表面状態は良好で、圧延鋼材のキ
ズの発生も見られなかったが、カリバー部の摩耗量が大
きく、圧延処理の途中で寸法精度を維持するために改削
修正する必要が生じた。一方、No.5、6のWC超硬
合金製ローラーは摩耗量はNo.3、4に比べ少なかっ
たが、ローラー表面が肌荒れおよび焼付きをおこし、鋼
材にも傷の発生が認められた。これらに対し、No.
1、2の熱処理ありの結晶化させたローラーはローラー
表面状態が良好でかつ摩耗量もWC超硬合金製ローラー
とほぼ同等であった。
【0020】(実施例2、比較例2)窒化珪素原料粉末
及び各種焼結助剤を表2に示す材料組成となるように配
合した後、実施例1と同一の条件で混合、成形及び焼成
を行なった。次いでさらに表2に示す熱処理温度で熱処
理して圧延用ガイドローラーを作製した。
【0021】作製した圧延用ガイドローラーの結晶相
を、X線回折装置を用いて分析した。さらに、圧延用ガ
イドローラーを仕上げ圧延機入口に取付け、実施例1と
同様に圧延試験を行ない、カリバー部の摩耗量を測定し
た。測定結果を表2に示す。
【0022】ここで、「J相」とは、Ca3(Si
27)CaF2で示される単斜晶系の結晶のカスピディ
ン構造を有する結晶相であり、本発明の窒化珪素焼結体
の粒界相が結晶化しているのもは、Caの結晶学的位置
をCa、Y等の希土類元素、Mg、Fe、Ni等が占
め、Siの結晶学的位置をSi、Al等が占め、Oの結
晶学的位置をF、O、N等が占めるものである。これら
の結晶相は、粉末X線回折法により同定され、JCPDS カー
ト゛ 32-1451 で示されるSi34 ・4Y23・SiO2
と同じ型の回折線をもつ。また、J相の焼結体における
量は、次の方法により算出した値を便宜的に焼結体中の
J相の量とした。すなわち、β型窒化珪素の(101)
と(210)面からのX線回折強度をIβ(101),Iβ
(210)、α型窒化珪素の(102)と(210)面から
のX線回折強度をIα(102),Iα(210)と定義する。さ
らにJ相の(131)面からのX線回折強度をIJ(131)
とするとき、J相の量:y(%)を と定義したものである。K相とは JCPDS カート゛ 32-1462
に示される結晶構造を有し、YSiO2N の組成式で示
される結晶もしくはその固溶体である。また、H相は J
CPDS カート゛ 30-1462 に示される結晶構造を有し、Y
5(SiO43 Nの組成結晶もしくはその固溶体であ
り、各々の定量にはIJ(131)の代わりにK相では I
K(2θ=19.5℃、CuKα) 、H相では I
H(112)+IH(300) を用いて定量値と定義した。
【0023】
【表2】
【0024】表2の結果から明らかなように、熱処理温
度が本発明方法の範囲外である場合には、得られた圧延
用ガイドローラーを構成する焼結体の結晶相がJ相が8
0%未満、H相が10%超、K相が5%超と本発明のセ
ラミック治具を構成する焼結体の結晶相の範囲外とな
り、カリバー部の摩耗量が大きくなることがわかる。ま
た、熱処理温度が本発明方法の範囲内であっても、焼結
体の組成(材料組成)(即ち、焼結助剤組成)が本発明
の好ましい例でない場合には、焼結体の結晶相が本発明
範囲を外れる傾向があり、その結果、カリバー部の摩耗
量が大きくなることがわかる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の窒化珪素
製熱間圧延用セラミック治具は、通常の焼成工程後さら
に所定の熱処理を施したことによって、窒化珪素粒子間
が結晶化されているため、鉄及び水との反応が抑えら
れ、圧延時の摩耗が低減される。また、鋼材との焼付き
がないため製品の傷発生が著しく低減される。この傾向
は圧延材の融点が高いステンレス鋼等ではその差がより
顕著となってくることが確認されている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C04B 35/64 A C

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si34 、焼結助剤成分及び微量不純
    物から構成される焼結体よりなる熱間圧延用セラミック
    工具であって、Si34 粒子間が結晶化されており、
    その粒子間の結晶相が80%以上のJ相、10%以下の
    H相及び5%以下のK相からなることを特徴とする熱間
    圧延用セラミック治具。
  2. 【請求項2】 Si34 粒子間の結晶相が90%以上
    のJ相、5%以下のH相及び1%以下のK相からなる請
    求項1記載の熱間圧延用セラミック治具。
  3. 【請求項3】 Si34 粒子間が結晶化されており、
    1200℃以上の高温下において強度低下を生じること
    がないことを特徴とする請求項1記載の熱間圧延用セラ
    ミック治具。
  4. 【請求項4】 熱間圧延用セラミック工具を構成する焼
    結体の組成が、Y231〜10wt%、Yb23
    3〜20wt%、残部がSi34 および不純物である
    請求項1記載の熱間圧延用セラミック治具。
  5. 【請求項5】 熱間圧延用セラミック工具を構成する焼
    結体の組成が、Y231〜10wt%、MgO 1〜
    10wt%、ZrO2 0.01〜5wt%、残部がS
    34 および不純物である請求項1記載の熱間圧延用
    セラミック治具。
  6. 【請求項6】 熱間圧延用セラミック工具を構成する焼
    結体の組成が、Y231〜10wt%、Al23
    0.01〜20wt%、残部がSi34 および不純物
    である請求項1記載の熱間圧延用セラミック治具。
  7. 【請求項7】 Si34 粉末に焼結助剤を添加して得
    た原料粉末を所望形状に成形した後焼成し、次いで、更
    に窒素雰囲気下1100〜1300℃の温度範囲におい
    て熱処理してSi34 粒子間を結晶化することを特徴
    とする熱間圧延用セラミック治具の製造方法。
  8. 【請求項8】 焼結助剤として希土類酸化物を4〜25
    wt%添加する請求項7記載の熱間圧延用セラミック治
    具の製造方法。
  9. 【請求項9】 焼結助剤として、Y23 1〜10w
    t%、Yb23 3〜20wt%を添加する請求項7
    記載の熱間圧延用セラミック治具の製造方法。
  10. 【請求項10】 焼結助剤として希土類酸化物を4〜1
    5wt%、MgO 1〜10wt%、ZrO2 0.0
    1〜5wt%を添加する請求項7記載の熱間圧延用セラ
    ミック治具の製造方法。
  11. 【請求項11】 焼結助剤として、Y23 1〜10
    wt%、MgO 1〜10wt%、ZrO2 0.01
    〜5wt%を添加する請求項7記載の熱間圧延用セラミ
    ック治具の製造方法。
  12. 【請求項12】 焼結助剤として、Y23 1〜10
    wt%、Al23 0.01〜20wt%を添加する
    請求項7記載の熱間圧延用セラミック治具の製造方法。
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