JPH07189028A

JPH07189028A - レース用ナイロン６６フィラメント糸

Info

Publication number: JPH07189028A
Application number: JP33118193A
Authority: JP
Inventors: Tetsuya Kato; 哲也加藤
Original assignee: Toray Industries Inc
Current assignee: Toray Industries Inc
Priority date: 1993-12-27
Filing date: 1993-12-27
Publication date: 1995-07-25

Abstract

(57)【要約】【構成】結晶化温度が１９０〜２１０℃、９８重量
％硫酸相対粘度が２．７〜３．５であり、共重合アミド
単位の割合が２．５〜１０重量％であるナイロン６６系
共重合体からなるレース用のナイロン６６フィラメント
糸である。このナイロン６６フィラメント糸はレースの
地糸に好適である。【効果】透明性に優れているので、レースの地糸に
用いた時、レース柄を際立たせる上で大きな効果が発揮
される。さらに、フィラメント糸がタフであり、厳しい
編成条件にも耐えて生産性が高く、また、破裂強さの高
いナイロン６６レース地が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、美観及び強さに優れた
ナイロン６６レース地を得るために好適なレース用ナイ
ロン６６フィラメント糸に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】エンブロイダルレース、ラッセルレー
ス、リバーレース等のレース地は、一般にレース柄用の
柄糸と生地用の地糸とから構成される。

【０００３】それら柄糸や地糸には、外観の美しさ、強
さ、ソフトさなどの点からナイロンフィラメント糸、特
にナイロン６フィラメント糸が多用されてきている。例
えば、レース柄を引立てるために、地糸は透明感の高い
繊維からなる細い糸条であることが好ましいので、ナイ
ロン６フィラメント糸が用いられてきたが、最近は、寸
法安定性や耐熱性の良さ等からナイロン６６フィラメン
ト糸も用いられ始めてきている。

【０００４】また、それらレース用ナイロンフィラメン
ト糸には、通常の衣料用ナイロン糸同様に、９８重量％
硫酸相対粘度が２．４〜２．６程度のポリマが用いられ
てきた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが、ナイロン６
６は結晶化速度が大きいので紡糸工程における結晶化が
早く、そのために失透現象が生じ易く、透明性の高いナ
イロン６６フィラメント糸とすることが難しいという問
題があった。

【０００６】そこで、美しくかつ繊細なナイロン６６レ
ース製品を得るために、レース用ナイロン６６フィラメ
ント糸の透明感を高めることが強く要求されてきてい
た。

【０００７】また、美しくかつ繊細なレース製品を得る
ためには地糸の糸条繊度を細くすることも必要である
が、糸条繊度を細くすると強度が低下してレースの強さ
が損われるという別の問題が生じ、糸条繊度を十分に細
くすることが困難であった。

【０００８】そこで、本発明は、上記のような従来技術
の欠点を解消し、レース柄が鮮明で際立ちがよくしかも
布帛強度にも優れたナイロン６６レース地を得るための
レース用ナイロン６６フィラメント糸を提供することを
主な目的とする。

【０００９】さらに、レース地の生産性や加工性を改善
するために好適なレース用ナイロン６６フィラメント糸
を提供することを別の目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、本発明のレース用ナイロン６６フィラメント糸は、
結晶化温度が１９０〜２１０℃、かつ、９８重量％硫酸
相対粘度が２．７〜３．５であるナイロン６６系共重合
体からなることを特徴とする。

【００１１】そして、このナイロン６６系共重合体は、
ヘキサメチレンアジパミド単位９０〜９７．５重量％
と、ヘキサメチレンアジパミド以外のアミド単位２．５
〜１０重量％からなる共重合体であることが好ましい。

【００１２】また、繊維中に含有される酸化チタンの量
は、０〜０．３重量％のように、含まれないか或いは少
ないことが好ましい。

【００１３】さらにまた、このレース用ナイロン６６フ
ィラメント糸は地糸として特に好適である。

【００１４】本発明のレース用ナイロン６６フィラメン
ト糸は、上述したとおり、特定の結晶化温度、及び、特
定の９８重量％硫酸相対粘度を有するものであり、それ
ら値は次の方法により測定される。

【００１５】結晶化温度：パーキンエルマー１Ｂ型
（パーキンエルマー社製）の測定機により測る。試料３
ｍｇを測定セルにセットし、５０℃から２８５℃まで８
０℃／分の昇温速度で加熱し、２８５℃に達してから６
分間保った後、同じ速度で降温する。この間の吸熱・発
熱曲線における結晶化ピーク値から結晶化温度を読みと
る。

【００１６】硫酸相対粘度：ポリマ濃度０．２５ｇ／
２５ccの９８重量％硫酸溶液、測定温度２５℃で測定し
た相対粘度である。

【００１７】本発明で特定した糸の結晶化温度１９０〜
２１０℃は、ナイロン６６単独ポリマ糸の結晶化温度
（２１５〜２２５℃程度）よりも低いものであり、この
結晶化温度水準とすることによりレース用に好適な物性
を具備させることができる。

【００１８】これに対し、糸の結晶化温度を１９０℃未
満と低くし過ぎると、繊維の収縮率が大きくかつ融点が
低くなり過ぎレースの寸法安定性が悪くなるし、しか
も、熱セット時の繊維の強力低下が大きくなるので、レ
ース用には実用上使用困難である。逆に、糸の結晶化温
度が２１０℃を越えて高過ぎると、失透現象の抑制効果
が不十分であるのでレース用に必要な透明感を得ること
ができない。

【００１９】この糸の結晶化温度の調節手段は種々ある
が、最も有効でかつ溶融紡糸に障害のない手段は、請求
項２のようなナイロン６６系共重合体を用いることであ
る。即ち、ナイロン６６重合原料に、２．５〜１０重量
％の共重合モノマを添加して共重合させることである。
その共重合モノマとしては、ε−カプロラクタムやラウ
ロラクタムなどのラクタム類、及び／又は、ヘキサメチ
レンアジパミド以外の重合性ナイロン塩類、例えば、ア
ジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸等の二塩基酸と、
ヘキサメチレンジアミン、パラアミノシクロヘキシルメ
タン、メタキシリレンジアミン等の二酸塩基との反応に
よるナイロン塩（ヘキサメチレンアジパミドを除く）を
用いればよい。その共重合モノマの種類の数は特に限定
しないが一般的には１〜２種類であればよい。

【００２０】また、２．５〜１０重量％の他のアミド単
位を共重合させると重合条件の変化による結晶化温度の
変動を十分吸収できるので、この点からも溶融紡糸時の
失透現象を抑制することができる実際に結晶化温度を所
望の水準に調整するためには、これら共重合モノマの種
類（構造や分子量）や添加量を適宜選択すればよい。

【００２１】さらに透明感を向上させるためには、この
ナイロン６６糸中に酸化チタンが含有されないか、又は
その含有量が０．３重量％以下、好ましくは０．１重量
％以下と少ないことが好ましい。

【００２２】また、重合、製糸途中で生成される異物等
が極力含まれないことも透明感と強度を向上させるため
に好ましい。

【００２３】なお、透明性を実質的に阻害しない範囲内
ならば他の添加剤が配合されていてもよい。

【００２４】本発明のナイロン６６糸は、９８重量％硫
酸相対粘度が２．７〜３．５で表される重合度を有する
ことが必要である。この範囲内の重合度とすることによ
り、細繊度糸条としてもレース地糸用に必要な強力を付
与することができる。このため、高張力かつ高速という
過酷なレース編成条件下でも糸切れすることがなく高い
生産性でレース地を編成することができる。さらにま
た、レース地の強さを損なうことなく糸条繊度をより小
さくすることも可能となり、透明性を一層高めることが
できる。

【００２５】これに対し、硫酸相対粘度が２．７未満で
は、強力が不十分であって上記した効果が得られ難い。
逆に、硫酸相対粘度が３．５を越えるほどに高過ぎると
溶融紡糸性が大幅に悪くなり工業的に製糸することが困
難である。

【００２６】本発明のレース用ナイロン６６糸は、糸条
繊度１５〜５０デニール程度であればよい。特に地糸に
使用される場合にはレース地の美観を一層高めるために
糸条繊度２０〜４０デニールが好ましい。

【００２７】本発明のレース用ナイロン６６フィラメン
ト糸は、結晶化温度が１７０〜１９０℃程度でかつ９８
重量％硫酸相対粘度が２．７〜３．５程度のナイロン６
６系共重合体ペレットを、通常の方法で溶融紡糸するこ
とにより製造することができる。

【００２８】例えば、ヘキメチレンジアミンとアジピン
酸との塩（以下ＡＨ塩と略す）に共重合成分を２．５〜
１０重量％配合して常法どおりに重合し、ナイロン６６
系共重合体を得る。この共重合体を溶融紡糸機を用い
て、常法どおりに溶融紡糸、延伸してナイロン６６フィ
ラメント糸とする。例えば、未延伸糸巻取後に延伸する
二工程法、低速での引取りに続いて延伸する直接紡糸延
伸法、高速で引取り、続いて低倍率延伸し或いは延伸す
ることなく高速巻取りする高速紡糸（延伸）法をとれば
よい。

【００２９】このように溶融紡糸、延伸することにより
結晶化温度は２０℃程度高くなるので、結晶化温度１９
０〜２１０℃のナイロン６６糸を得るためには、溶融紡
糸に供するポリマの結晶化温度はそれより２０℃程度低
くすればよい。

【００３０】このようにして得られるレース用ナイロン
６６フィラメント糸の繊維特性は、紡糸口金断面形状と
フィラメント数、溶融吐出量、紡糸速度、延伸倍率など
の紡糸条件によって調節すればよい。

【００３１】このレース用ナイロン６６フィラメント糸
は地糸として好適であり、生糸のまま地糸としてレース
編み機に供給されて通常の方法でレース地に編成されれ
ばよい。

【００３２】レース地は、エンブロイダルレース、ラッ
セルレース、リバーレース等の通常の編組織とすればよ
い。

【００３３】

【実施例】以下における物性値は、次の方法によった。

【００３４】ナイロン６６糸の繊度、強度、伸度、沸騰
水収縮率：ＪＩＳ法に準拠して測定する。

【００３５】ナイロン６６糸の沸騰水処理後の強力：
綛状で無緊張下３０分間、沸騰水中で処理し、その後の
強力を上記と同様に測定する。

【００３６】ナイロン６６糸の染色鮮明性：試料糸を
幅１０ｃｍ程度の筒編みにし、この筒編み地を常法によ
って精錬、染色する。染料は "Diacid Alizaline Sky B
lueB"、染料濃度は０．５％owf.、浴比は１：３０と
し、１０５℃で４０分間染色する。得られた染色編み地
の明度及び彩度を分光色差計（カラーマシン社製、ＣＭ
−２０型）により測定する。即ち、Ｌ値（明度）、ａ
値、ｂ値を測定し、彩度（ａ²＋ｂ²）^1/2を求める。
色の鮮明さは彩度が大きいほど良好である。彩度が１．
０以上異なれば通常の人でも目視によりその違いが容易
に判る。

【００３７】ナイロン６６糸の透明度：試料糸を透明
なアクリル樹脂板に幅５ｃｍのすだれ状に配列させる。
このサンプルの裏に標準白板あるいは標準黒板をあて、
白色光を照射したときの反射光の強さを前述のカラーマ
シンで測定する。白板を当てた時のＬ値と黒板を当てた
時のＬ値との差（ΔＬ）を求め、透明度の尺度とする。

【００３８】レース柄の鮮明性：試料レースにおける
柄と地糸部とのコントラストを肉眼により相対評価す
る。

【００３９】レース地の風合、外観：試料レースの表
面タッチ、柄の乱れ、柔らかさ等を肉眼と手触りによる
官能検査により評価し、相対評価でもって示す。

【００４０】レース地の破裂強さ：試料レースの地糸
部についての破断強度を、ＪＩＳＬ０１８、Ｂ法により
測定し、相対評価でもって示す。

【００４１】［実施例１］ＡＨ塩に、それぞれ、０、
１、３、５、１０、そして１３重量％のε−カプロラク
タムを配合し、常法によって重合し、９８重量％硫酸相
対粘度が２．７１〜２．７４のナイロン６６系共重合体
（酸化チタンを含有せず）を得た。

【００４２】これらポリマをエクストルーダ型紡糸機を
用い、２８６℃で溶融紡糸した後、引続き３．６倍に延
伸して、円形断面の３０デニール１０フィラメントのナ
イロン６６フィラメント糸とした。

【００４３】得られたナイロン６６フィラメント糸をレ
ースの地糸に用い、また、７０デニール４８フィラメン
ト、酸化チタン含有量０．４重量％のナイロン６６フィ
ラメント糸を柄糸に用いて、通常の方法でラッセルレー
スを編成した。

【００４４】地糸の繊維特性そしてレースの特性を評価
し、表１に示した。

【００４５】

【表１】

【００４６】結晶化温度が１９０〜２１０℃である本発
明のレース用ナイロン６６糸（ No.３〜５）は透明性が
高いので、これを地糸としたレース地は、地と柄とのコ
ントラストが強くレース柄が際立ち鮮明性に優れてい
た。

【００４７】これに対し、結晶化温度が２１０℃を越え
る共重合ポリマの場合は（ No.２）、未変性ナイロン６
６ポリマの場合（ No.１）と同様に、レース柄の鮮明性
が劣り、外観も劣っていた。

【００４８】逆に、結晶化温度が１９０℃未満の場合
は、沸騰水処理後の糸の強力が低過ぎ、その結果、染色
後の強力低下が大きくてレースの破裂強さが大幅に劣っ
ていた。しかも、沸騰水収縮率が高過ぎるので布帛の収
縮のために粗硬となりその外観が著しく悪いレース地で
あった。

【００４９】［実施例２］ＡＨ塩に、４重量％の共重合
成分：ε−カプロラクタム（ＣＬと略す）、イソフタル
酸とヘキサメチレンジアミンとの塩（６Ｉと略す）、そ
してアジピン酸とメタキシリレンジアミンとの塩（ＭＸ
Ｄ６と略す）、をそれぞれ配合し、常法によって重合し
９８重量％硫酸相対粘度がそれぞれ２．７２〜２．７５
のナイロン６６系共重合体（酸化チタンを含有せず）を
得た。

【００５０】得られたポリマを実施例１と同様の方法で
溶融紡糸、延伸して、２５デニール７フィラメントのナ
イロン６６フィラメント糸とした。

【００５１】得られたフィラメント糸を地糸とし、ま
た、７０デニール４０フィラメントの未変性ナイロン６
６仮撚り加工糸を柄糸として、通常の方法でラッセルレ
ースを編成した。

【００５２】地糸の繊維特性そしてレース地の特性を表
２に示した。

【００５３】

【表２】

【００５４】共重合成分がラクタム、他のアミドと異な
っていても、結晶化温度及び硫酸相対粘度が本発明で特
定した範囲内である場合（ No.８〜１０）は、透明性に
優れたナイロン６６糸が得られ、これを地糸に用いてな
るレース地は柄が鮮やかであった。さらに、地糸が高強
力であるので、２５デニールと細い地糸であっても、３
０デニールの地糸からなる従来のレース地と同程度の破
裂強さを有していた。

【００５５】［実施例３］共重合成分として、ヘキサメ
チレンジアミンとイソフタル酸とからのナイロン塩を４
重量％配合し、重合度調節剤の酢酸の添加量を変えて、
９８重量％硫酸相対粘度が２．５５〜３．９０と重合度
の異なるナイロン６６系共重合体（酸化チタンを含有せ
ず）を得た。

【００５６】得られたポリマを用いて、実施例１と同様
の方法で溶融紡糸、延伸して、２０デニール７フィラメ
ントのナイロン６６フィラメント糸を製造した。

【００５７】得られたフィラメント糸を地糸に、また、
７０デニール４０フィラメントの未変性ナイロン６６仮
撚り加工糸を柄糸に用いて通常の方法でリバーレースを
編成した。

【００５８】地糸の繊維特性そしてレース地の特性を表
３に示した。

【００５９】

【表３】

【００６０】地糸が細くしかも透明性に優れていること
から、得られたレースのレース柄は従来では得られなか
ったほどに際立ち、鮮明性が極めて優れていた。

【００６１】しかし、硫酸相対粘度が３．９０と高過ぎ
た場合（ No.１４）、溶融紡糸時の糸切れが多く、又、
レース編成時に毛羽が多発し連続生産が困難であった。
逆に、硫酸相対粘度が２．５０と低過ぎた場合（ No.１
１）、強度が不足し、レース地の破裂強度は大幅に低か
った。

【００６２】

【発明の効果】本発明のレース用ナイロン６６フィラメ
ント糸は、透明性に優れているので、レースの地糸に用
いたとき、レース柄を際立たせるために大きな効果があ
り、特にレース地の地糸用に好適である。

【００６３】さらに、重合度の高いポリマを使用するの
でフィラメント糸はタフとなり、厳しいレース編成条件
にも耐えて高い生産性でナイロン６６レース地が生産で
きる。しかもレース地の破裂強度を大幅に高くできる。
一方、レース地強度を落とすことなく、編成糸を細くす
る事も可能となるので、より透明性に優れかつ柄の鮮明
さに優れたナイロン６６レース地とすることができる。

【００６４】しかも、実質的にナイロン６６からなるの
で、寸法安定性や耐熱性等も良好である。

【００６５】さらにまた、請求項３の場合、染色時の色
の鮮明性を高くすることができるので、ナイロン６６レ
ース地の美観をさらに高めることができる。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】結晶化温度が１９０〜２１０℃、か
つ、９８重量％硫酸相対粘度が２．７〜３．５であるナ
イロン６６系共重合体からなることを特徴とするレース
用ナイロン６６フィラメント糸。
【請求項２】ナイロン６６系共重合体が、ヘキサメ
チレンアジパミド単位９０〜９７．５重量％と、ヘキサ
メチレンアジパミド以外のアミド単位２．５〜１０重量
％からなることを特徴とする請求項１記載のレース用ナ
イロン６６フィラメント糸。
【請求項３】繊維中の酸化チタン含有量が０〜０．
３重量％であることを特徴とする請求項１又は２記載の
レース用ナイロン６６フィラメント糸。
【請求項４】レースの地糸用であることを特徴とす
る請求項１、２又は３記載のレース用ナイロン６６フィ
ラメント糸。