JPH0657970B2 - プレキャストコンクリート製中空柱体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はビルディング等の建築構造物における柱に使用
して好適なプレキャストコンクリート製の中空柱体に関
する。

〔従来の技術〕

鉄筋コンクリート構造物における柱の施工は、現場にお
いて柱の施工箇所に竪方向に主筋を分散して配設すると
共に、この周面にフープ筋を配筋してから、その周りに
型枠を組み、当該型枠内にコンクリートを打設してコン
クリートの硬化後に型枠を取り外すことによって行われ
ていた。

また、現場における主筋とフープ筋の配筋後にいくつか
に分割されたプレキャストコンクリート製の柱部材を現
場において型枠の代わりに組み立て、当該組み合わせら
れたプレキャストコンクリート製の柱部材内にコンクリ
ートを打ち込んで柱を構築する方法がとられている。

〔発明が解決しようとする問題点〕

前記したように、従来は柱の構築にあたって現場におい
て主筋及びフープ筋の配筋が不可欠であり、建築構造物
が益々高層化するにしたがい現場作業が煩雑にあるとい
う問題点があった。

特に、型枠によるコンクリートの現場打設による方法で
は型枠組み、取り外しと多くの手間が掛かるという不具
合点があった。また、いくつかに分割されたプレキャス
トコンクリート製の柱部材を現場において鉄筋の周りに
組み立て、組み立てられた柱部材内にコンクリートを打
ち込む工法では、柱部材同志の接合が厄介なほか、プレ
キャスト柱部材は型枠材としては有効であったとして
も、現場打設のコンクリートとの接着性が悪く、構造的
には全く期待できないという問題点があった。

なお、特開昭６１−２４７３５号公報に、捨型枠として
用いる型枠本体の内面に、せん断補強筋をその内側が捨
型枠本体の内方に露出するように取り付けてなるコンク
リート打設用型枠が示されているが、このせん断補強筋
の外側は型枠本体の内面に埋め込まれた状態となってい
るので、前記従来技術と同様後打ちコンクリートとの接
着性が悪いという問題点がある。

また、特許第２６６７０号公報には、コンクリート躯体
内に装置した横鉄筋の一部を鐶状に屈曲させ内面一定の
位置に突出させて、当該鐶状突出部に長尺の縦鉄筋を引
き通して縦筋を正しく適当の位置に保持させるようにな
した分離塑造鉄筋混凝土が示されている。しかしがら、
これによったとしても現場打ちコンクリートの打設前に
横鉄筋の鐶状突出部を一種のガイドとして主筋を後から
配筋しなければならず、現場における作業性が悪いとい
う難点がある。

そこで本発明は、前記した従来技術の問題点をなくし、
建設現場において柱構築のための主筋及びフープ筋を配
筋する必要がないと共に、型枠の組み立て、取り外しも
なく、しかも後打ちコンクリートとの接着性が極めて良
好で建築構造体として充分な強度が得られるようになし
たプレキャストコンクリート製中空柱体を提供すること
を目的とするものである。

〔問題点を解決するための手段〕

前記目的を達成するための本発明の構成を詳述すれば、
主筋及びフープ筋を予め組み立てて一体となした鉄筋篭
を遠心成型機における型枠にセットした後、当該型枠内
にコンクリートを投入し遠心力によって内部を中空状に
形成してなるプレキャストコンクリート製の中空柱体で
あって、前記鉄筋篭はその一部が柱体をなすコンクリー
ト躯体内に埋設状態になっていると共に、当該埋設部分
を除いた鉄筋篭の他の部分が成型時の遠心力によってコ
ンクリート躯体から離れ柱体の内部空間に完全に露出し
ていることを特徴とするプレキャストコンクリート製中
空柱体である。

コンクリート躯体から離れ柱体の内部空間に突出する鉄
筋は主筋及びフープ筋の両方であってもよいし、あるい
はフープ筋または主筋のいずれか一方であってもよいも
のである。

また、柱体の横断面形状は方形、多角形等の角筒状であ
ってもよいし、円筒状であってもよい。

〔作用〕

本発明プレキャストコンクリート製中空柱体は、このよ
うに柱体のコンクリート躯体内に配筋される鉄筋が主筋
とフープ筋を予め組み立てて一体とした鉄筋篭となって
おり、当該鉄筋の一部が成型時の遠心力によりコンクリ
ート躯体から離れ、柱体の内部空間に完全に露出してい
るので、これを建設現場における柱の施工箇所の床版に
突出させてある鉄筋と接合する等した後、中空柱体内に
コンクリートを流し込むと当該コンクリートは全周面が
完全に露出している鉄筋の周囲に食い込み、鉄筋と固く
密着して一体となるので充分な強度をもった柱が構築で
き、建築構造体としても充分応えることができるもので
あり、現場打ちコンクリートの打設前に従来のように主
筋を配筋する必要もなくなり現場における作業性がきわ
めて良好となるものである。

〔実施例〕

以下、本発明プレキャストコンクリート製中空柱体の具
体的構成を図示の実施例に基づき詳細に説明する。

第１図は本発明柱体の一実施例を示す正面図、第２図は
第１図のII−II線に沿った断面図、第３図は本発明に係
る柱体の製造法の一例を示す概略図、第４図は本発明柱
体を用いた柱の構築方法の一例を示す説明図、第５図は
本発明柱体の他の実施例を示す横断面図であり、図中１
は内部を中空としたプレキャストコンクリート製の柱体
を示す。

柱体１は、第３図に示すような遠心成型機を用いて製造
することができる。すなわち、原動機２によって回転駆
動する回転タイヤ３と、この回転タイヤ３と所定の間隔
を存して対向位置した回転自在タイヤ４の上面に、型枠
５を内部に組み込んだ回転ドラム６を配置し、当該回転
ドラム６を回転させながら、ドラム６の開放端より型枠
５内にコンクリートを投入すると、コンクリートは遠心
力によって型枠５の内壁にきつく密着し、そのまま硬化
して内部が円筒状に形成された中空の柱体１が得られ
る。

第２図において、７は柱体１の内部空間を示す。本発明
は、この柱体１のコンクリート躯体内に鉄筋８の一部を
埋設状態にすると共に、当該埋設部分を除いた鉄筋８の
他の部分をコンクリート躯体から離れさせ柱体１の前記
内部空間７に突出させるようにしたもので、遠心成型機
における前記型枠５内に予じめ組み立てられた篭状をな
す鉄筋８をセットしておき、この状態で回転ドラム６の
回転中にコンクリートを型枠５内に投入すると第２図に
示すように外側形状が方形状で、内部空間７が円形状の
中空柱体１が得られ、鉄筋８は各隅角部分がコンクリー
ト躯体内に埋設されると共に、当該埋設部分を除いた鉄
筋８の他の部分は柱体１の内部空間７にその全外周部共
完全に突出した構造となる。

第２図に示す実施例では、鉄筋８は柱体１の長手方向に
沿って延びる主筋９と、この主筋９の周りに配筋される
フープ筋（配力筋）１０とからなっており、フープ筋１
０の各コーナー部及び当該コーナー部に付設してある主
筋９が柱体１のコンクリート躯体内に埋設状態となって
おり、フープ筋１０の各コーナー部を除いた各辺部中央
部分と当該各辺部に直交するように付設してある主筋９
が柱体１の内部空間７に突出した状態となっているもの
である。なお、施工の関係上、主筋９の上端部はコンク
リート躯体の上面から上方に突出させておくようにする
とよい（第１図）。

また、柱体１の下端部には主筋９に対応する金属製スリ
ーブ１１等を埋設しておくと後述するように施工上便利
であるが、柱体１の下端部下方に主筋９を突出させてお
いても施工上問題となることはない。

なお、遠心成型機における回転ドラム６内に組み込む型
枠５は交換可能であり、図示の方形状以外にも六角形、
八角形等の型枠を用いれば、所望の多角形状の中空柱体
１が得られるものである。また、第５図に示すように、
円筒状の柱体１となすことも可能であり、円筒状の柱体
１とする場合には、トラス筋１２を主筋９及びフープ筋
１０の他に躯体内に配筋し、当該トラス筋１２も部分的
に柱体１の内部空間７内に完全に突出させるようにする
こともできるものである。

このように、柱体１の横断面形状は、方形、多角形等の
角筒状であってもよいし、円筒状であってもよいが、い
ずれの横断面形状であっても、柱体１のコンクリート躯
体内に配筋されている鉄筋８が部分的に柱体１の内部空
間７に完全に突出していることを要するのはいうまでも
ない。

なお、柱体１の内部空間７内にその内面側及び外面側と
も完全に突出する鉄筋８は主筋９単独であってもよい
し、フープ筋１０単独であってもよく、また両者共部分
的に突出するような構造としてもよいものである。ま
た、柱体１の内部空間７内に突出する露出の程度も鉄筋
８の形状を種々変更することによりその突出度合を適宜
調整することができるものである。

次に、本発明プレキャストコンクリート製中空柱体を用
いた柱の構築例につき説明すれば、先づ第４図（Ａ）に
示すように、建設現場における柱の施工箇所にクレーン
等の昇降手段１３によって本発明に係る柱体１を吊り上
げる。

なお、柱の施工箇所の床版１４上には階下の柱に配筋さ
れている主筋２０が複数本突出している。そして、昇降
手段１３によって柱体１を下降させ、柱体１の下端部に
配設してある金属製スリーブ１１内に床版１４上の主筋
２０を挿着する。

それから、金属製スリーブ１１内にモルタル等の充填材
を注入して、第４図（Ｂ）に示すように、主筋９と主筋
２０をスリーブ１１を介して接続する。次いで、柱体１
の上方からコンクリートを柱体１の内部空間７内に投入
すると、コンクリート１５は第４図（Ｃ）に示すよう
に、内部空間７内に突出している主筋９、フープ筋１０
等からなる鉄筋８の全周面に密着して鉄筋８と一体にな
ると共に、階上の床版をなす型枠１６の上面にもコンク
リートを打ち込んで一連の作業を終了する。

〔発明の効果〕

本発明プレキャストコンクリート製中空柱体は以上のよ
うな構成からなり、柱体の中空部内に、コンクリート躯
体内に配筋してある鉄筋が成型時の遠心力により部分的
且つ完全に突出しているので、当該突出した鉄筋の全周
面に現場打設による後打ちコンクリートが強固に密着
し、一体となるので充分な強度が得られ、建築構造体と
して極めて有効である。

その他、本発明によれば、建設現場において柱用の鉄筋
を組む必要がなくなると共に、型枠の組み付け、取り外
し作業も不要となる。従って、現場作業が軽減され、工
期の短縮が可能となるものである。また、柱体表面の素
地仕上げが不要となり、遠心成型の際に柱体の表面に化
粧タイルを組み込むことも可能となるし、従来の分割さ
れたプレキャストコンクリート製柱部材と異なり、柱部
材同志の繋ぎ面の接合が不要となる等の効果も奏するこ
とができるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明柱体の一実施例を示す正面図、第２図は
第１図のII−II線に沿った断面図、第３図は本発明に係
る柱体の製造法の一例を示す概略図、第４図は本発明柱
体を用いた柱の構築方法の一例を示す説明図、第５図は
本発明柱体の他の実施例を示す横断面図である。 １：柱体、７：内部空間 ８：鉄筋、９：主筋 １０：フープ筋、１１：スリーブ １２：トラス筋

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】主筋及びフープ筋を予め組み立てて一体と
   なした鉄筋篭を遠心成型機における型枠内にセットした
   後、当該型枠内にコンクリートを投入し、遠心力によっ
   て内部を中空状に形成してなるプレキャストコンクリー
   ト製の中空柱体であって、前記鉄筋篭はその一部が柱体
   をなすコンクリート躯体内に埋設状態になっていると共
   に、当該埋設部分を除いた鉄筋篭の他の部分が成型時の
   遠心力によってコンクリート躯体から離れ柱体の内部空
   間に完全に露出していることを特徴とするプレキャスト
   コンクリート製中空柱体。